説明

運転支援装置

【課題】運転支援装置において、GPSモジュールにより検出される、自車両の位置、進行方位、走行速度の精度を判定する。
【解決手段】GPSモジュール3と、他車両情報取得手段11と、衝突可能性判定手段12と、情報提供手段6とを備える運転支援装置2において、自車両から出力される車速パルスに基づいて走行速度を検出する車速検出手段13と、車速検出手段により検出された走行速度とGPSモジュール3により検出された走行速度との速度差に基づいて、GPSモジュール3の検出結果の有効性を判定するGPS有効性判定手段14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は運転支援装置に係り、特に、GPSモジュールによって得られる自車両の情報の精度を判定することができる運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、自車両に接近して衝突しそうな他車両、歩行者等が有る場合に、衝突可能性の情報を運転者に提供することで、運転者に警告を発して注意を喚起する運転支援装置を搭載しているものがある。運転支援装置では、自車両の位置、進行方位、走行速度の情報を検出するGPSモジュールを搭載し、車車間通信で他車両との間で自車両の位置、進行方位、走行速度の情報を交換している。
しかし、最近では、GPSモジュールに加えて電子地図を搭載し、マップマッチング処理を行わないと正確な運転支援を行うことが出来ない(信号の有無、一時停止の有無、道路の優先順位などの情報が必要不可欠)との判断から、電子地図を搭載することが必要不可欠となっている。例えば、特許文献1では、GPSモジュールで検出した自車両の検出位置の情報を地図データベースの情報に組み合わせることで、交差点までの距離情報として利用している。
また、車車間通信を用いた運転支援装置では、GPS技術を使って自車両、他車両の位置(緯度・経度)を把握しており、特許文献2のように、ナビゲーションやハイブリッドGPSの場合、地図とのマップマッチングの結果や、センサのデータと比較することで、GPSの精度を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−72617号公報
【特許文献2】特開2008−157705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記電子地図を前提とする運転支援装置は、すべての車両に搭載することは現実的に困難であり、車車間通信をどのように普及させていくかが課題となっている。車車間通信をあらゆる車両に搭載させ普及させるためには、出来る限り安価なシステムも必要となる。安価なシステムを実現させる為には、センサを用いないGPS単体で測位位置を算出するGPSモジュールを採用することは避けられない。センサを用いないGPS単体機能のGPSモジュールでは、精度の把握が問題となる。
GPSモジュールの精度を示す指数として、一般的にはDOP値が用いられている。DOP(Dilution of Precision)値とは、測位した衛星の幾何学的な配置によって精度が劣化する程度を示す指数である。しかし、最近のGPSモジュールは高感度であるため、位置ずれ発生の可能性が高い高架下やビルの谷間などでもDOP値は悪くならず、位置ずれとDOP値には相関関係はみられない。そのため、GPS単体の場合、自車両の測位位置の精度をどのような方法で把握するかが課題となっている。
【0005】
この発明は、GPS単体で測位位置を算出するGPSモジュールを採用した運転支援装置において、GPSモジュールにより検出される、自車両の位置、進行方位、走行速度の精度を判定することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、GPSを測位することによって自車両の位置、進行方位、走行速度を検出するGPSモジュールと、車車間通信により他車両の位置、進行方位、走行速度を取得する他車両情報取得手段と、前記GPSモジュールにより検出された情報と前記他車両情報取得手段により取得された情報とに基づいて自車両と他車両とが衝突する可能性があるか否かを判定する衝突可能性判定手段と、前記衝突可能性判定手段により自車両と他車両とが衝突する可能性があると判定された場合に自車両の運転者に報知する情報提供手段とを備える運転支援装置において、自車両から出力される車速パルスに基づいて走行速度を検出する車速検出手段と、前記車速検出手段により検出された走行速度と前記GPSモジュールにより検出された走行速度との速度差に基づいて、前記GPSモジュールの検出結果の有効性を判定するGPS有効性判定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の運転支援装置は、自車両が出力する車速パルスの情報を利用して、GPSモジュールにより検出される、自車両の位置、進行方位、走行速度の精度を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】運転支援装置のシステム構成を示すブロック図である。(実施例)
【図2】運転支援装置の精度判定のフローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図2は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は車両、2は運転支援装置である。車両1は、自車両1Aと他車両1Bとからなり、それぞれ運転支援装置2を搭載している。運転支援装置2は、電子地図を搭載しない簡易なシステムからなり、GPS(Global Positioning System)モジュール3と、通信モジュール4と、判断モジュール5と、情報提供モジュール6とを備えている。運転支援装置2は、車両1から電源を供給される。
前記GPSモジュール3は、複数のGPS衛星からGPS信号を受信するGPSアンテナ7を有している。GPSモジュール3は、GPS信号から自車両1Aの現在位置を測位することによって、自車両1Aの位置、進行方位、走行速度を検出する。
前記通信モジュール4は、受信手段8及び送信手段9を備え、他車両1Bとの間で信号を送受信する通信アンテナ10を有している。通信モジュール4は、自車両1A及び他車両1B間で自車両情報及び他車両情報(車両1の位置、進行方位、走行速度)を送受信する車車間通信機からなる。
前記判断モジュール5は、他車両情報取得手段11と、衝突可能性判定手段12とを備え、GPSモジュール3から自車両1Aの位置、進行方位、走行速度の情報を入力するとともに、通信モジュール4との間で自車両情報及び他車両情報を入出力する。
前記他車両情報取得手段11は、通信モジュール4の車車間通信により他車両1Bの位置、進行方位、走行速度を取得する。前記衝突可能性判定手段12は、GPSモジュール3により検出された情報と他車両情報取得手段11により取得された情報とに基づいて、自車両1Aと他車両1Bとが衝突する可能性があるか否かを判定する。前記判断モジュール5は、衝突可能性判定手段12により自車両1Aと他車両1Bとが衝突する可能性があると判定された場合に、自車両1Aの運転者に情報提供手段である前記情報提供モジュール6によって報知する。
前記情報提供モジュール6は、前記判断モジュール5から入力するHMI要求に応じて、スピーカの音声、ブザーの警告音、LEDの点滅灯等により、運転者に自車両1Aは他車両1Bと衝突する可能性があるとの運転支援の情報を提供する。
【0011】
前記運転支援装置2は、判断モジュール5に、車速検出手段13と、GPS有効性判定手段14とを備えている。前記車速検出手段13は、自車両1Aに搭載された車速パルス出力手段15から出力される車速パルスに基づいて、自車両1Aの走行速度を検出する。前記GPS有効性判定手段14は、前記車速検出手段13により検出された走行速度とGPSモジュール3により検出された走行速度との速度差に基づいて、GPSモジュール3の検出結果の有効性を判定する。
この運転支援装置2は、安価なシステムを実現させる為には、センサを用いないGPS単体で測位位置を算出するGPSモジュール3を採用している。GPS単体で測位位置を算出するGPSモジュール3では、測位位置の変化分のみを利用して、進行方向「GPS方位」と走行速度「GPS速度」を算出している。「位置ずれ」が発生した場合、その位置を元に算出された「GPS方位」と「GPS速度」もずれている可能性が高い。
車速パルスから車速検出手段13が算出した走行速度である「パルス速度」とGPS信号からGPSモジュール3が検出した走行速度である「GPS速度」との差「速度差」を算出し、この「速度差」と「位置ずれ」のポイントとを比較したところ、「速度差」と「位置ずれ」には相関があることがわかった。
そこで、この運転支援装置2は、判断モジュール5に必要最低限の車両信号「車速パルス」の入力を追加し、車速パルスから検出した走行速度「パルス速度」とGPS信号から検出した走行速度「GPS速度」との「速度差」を用いて、GPSモジュール3が検出する自車両1Aの位置(緯度・経度)の精度を判定する。
【0012】
前記GPS有効性判定手段14は、精度の判定に、以下のような位置精度低下判定条件と正常復帰判定条件とを設定している。
・位置精度低下判定条件:
自車両1Aの走行速度である「パルス速度」が判定走行速度A(km/h)以上の場合、「速度差」が一度でも判定速度差B(km/h)以上となれば、判断モジュール5の検出する自車両1Aの位置の精度が低下したと判断し、自車両1Aの位置の有効性フラグを「無効」にする。
・正常復帰判定条件:
自車両1Aの走行速度である「パルス速度」が判定走行速度A(km/h)以上の場合、「速度差」が判定回数C回連続で、判定速度差D(km/h)以下となれば、判断モジュール5の検出する自車両1Aの位置の精度が正常復帰したと判断し、自車両1Aの位置の有効性フラグを「有効」にする。(ただし、B>Dである。)
【0013】
この運転支援装置2は、図2に示すように、判断モジュール5が検出する自車両1Aの位置の精度を判定する。
運転支援装置2は、判定の処理がスタートすると(A01)、自車両1Aの走行速度である「パルス速度」が判定走行速度A以上であるかを判断する(A02)。この判断(A02)がNOの場合は、処理をエンドにする(A06)。この判断(A02)がYESの場合は、自車両1Aの位置の有効性フラグが「有効」であるかを判断する(A03)。
この判断(A03)がNOの場合は、後述する判断(A07)に移行する。この判断(A03)がYESの場合は、車速パルスから検出した走行速度「パルス速度」とGPS信号から検出した走行速度「GPS速度」との「速度差」が判定速度差B(km/h)以上であるかを判定する(A04)。
この判断(A04)がNOの場合は、自車両1Aの位置の有効性フラグを「有効」の状態で、処理をエンドにする(A06)。この判断(A04)がYESの場合は、自車両1Aの位置の有効性フラグを「無効」にし(A05)、処理をエンドにする(A06)。
【0014】
前記判断(A03)において、自車両1Aの位置の有効性フラグが「有効」でなく、NOの場合は、「速度差」が判定速度差D以下であるかを判断する(A07)。この判断(A07)がYESの場合は、「速度差」が判定速度差D以下となった回数を計数する復帰カウンタをインクリメント(増加)し(A08)、復帰カウンタの値が判定回数C以上であるかを判断(A09)する。
この判断(A09)がYESの場合は、復帰カウンタを0に初期化し(A10)、自車両1Aの位置の有効性フラグを「有効」にし(A11)、処理をエンドにする(A06)。この判断(A09)がNOの場合は、処理をエンドにする(A06)。また、前記判断(A07)において、「速度差」が判定速度差D以下でなく、NOの場合は、復帰カウンタを0に初期化し(A12)、処理をエンドにする(A06)。
【0015】
このように、運転支援装置2は、自車両1Aから出力される車速パルスに基づいて走行速度を車速検出手段13により検出し、検出された走行速度とGPSモジュール3により検出された走行速度との速度差に基づいて、GPS有効性判定手段14によりGPSモジュール3の検出結果の有効性を判定する。
これにより、運転支援装置2は、自車両1Aが出力する車速パルスの情報を利用して、GPSモジュール3により検出される、自車両1Aの位置、進行方位、走行速度の精度を判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、GPSモジュールにより検出される、自車両の位置、進行方位、走行速度の精度を判定することができる運転支援装置であり、四輪車だけでなく、搭載がスペース的・コスト的に困難な二輪車にも適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 車両
1A 自車両
1B 他車両
2 運転支援装置
3 GPSモジュール
4 通信モジュール
5 判断モジュール
6 情報提供モジュール
7 GPSアンテナ
8 受信手段
9 送信手段
10 通信アンテナ
11 他車両情報取得手段
12 衝突可能性判定手段
13 車速検出手段
14 GPS有効性判定手段
15 車速パルス出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPSを測位することによって自車両の位置、進行方位、走行速度を検出するGPSモジュールと、
車車間通信により他車両の位置、進行方位、走行速度を取得する他車両情報取得手段と、
前記GPSモジュールにより検出された情報と前記他車両情報取得手段により取得された情報とに基づいて自車両と他車両とが衝突する可能性があるか否かを判定する衝突可能性判定手段と、
前記衝突可能性判定手段により自車両と他車両とが衝突する可能性があると判定された場合に自車両の運転者に報知する情報提供手段とを備える運転支援装置において、
自車両から出力される車速パルスに基づいて走行速度を検出する車速検出手段と、
前記車速検出手段により検出された走行速度と前記GPSモジュールにより検出された走行速度との速度差に基づいて、前記GPSモジュールの検出結果の有効性を判定するGPS有効性判定手段とを備えることを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−68940(P2012−68940A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213791(P2010−213791)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】