説明

過昇温防止照明装置

【課題】温度変化の激しい環境、冷却条件の大きく変わる環境、放熱条件の厳しい環境等下で用いられる過度の温度上昇を抑えた照明装置を供給する。
【解決手段】発光素子6と前記発光素子に印加する電力を可変できる電源3と、発光素子の温度を計測可能な温度センサー4と、前記温度センサー4の値に応じて前記電源を制御する制御回路5を備え、前記温度センサー4の検出温度が特定の設定温度になるように発光素子に印加する電力量を制御することを特徴とする照明装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度変化の激しい環境、冷却条件の大きく変わる環境、放熱条件の厳しい環境等、例えば水中または海水中と大気中の両環境で用いられる照明装置、従来の照明装置の取り付けが困難である狭い場所等で用いられる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来特許(特開2005‐294816)では、発光素子の温度を安定させるためにペルチェ素子を利用し発光素子を強制冷却している。この方法で発光素子が急激に温度上昇するような環境の下で使用される照明装置を考える場合は、発光素子を強力に冷却するために大きな電力が必要であることが前提条件となる。
また、特願2006‐539931では、温度が一定の値を超えた場合に電流を制御する方法を取っているが、温度が設定値を超えてからの制御になるので、どうしても急激な環境の変化にスムースに対応するのが困難で、温度の超過量が大きく発光源のダメージを回避することは困難である。
また、最近照明用発光素子としてLEDが使用されることが多くなってきている。LEDは従来の電球、蛍光灯などと比較すると発光素子が極端に小さいので、従来光源では考えられないような小形の高輝度の照明装置を製作することが可能である。しかし、LEDの発熱は少ないとは言え、それなりに電力をかけると発光素子が過熱し、発光寿命が短くなったり、最悪の場合壊れたりすることが起こる。LEDの小形光源を従来では照明装置が設置できなかったような狭い場所に設置するとき、ほとんどのケースでそのような狭い場所は空気の流れが悪かったりして放熱環境はよくないので、LEDに印加する電力を冷却状況の変化を検討し過度の安全率を設定した上で決定するので、どうしても暗くなってしまう。
従来は、照明装置といえば照明輝度を一定にすることが一般的で、かつ重要であった。したがって、照明装置には過昇温時の対策として冷却装置を内蔵したり、大きな放熱装置を装備したりすることが常であり、照明装置も照明装置を保持する部材も大掛かりになりっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005‐294816
【特許文献2】特願2006‐539931
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中で使用する漁業用の光源などは主として水中で使用するために、照明装置が水冷され空気中で使用するよりも大きな放熱効果が得られるので、比較的小形でも大電力を印加して光らせることが可能である。
しかし、照明装置を水中から引き上げる場合は、水中から引き上げられ大気中にさらされると急激に照明装置の温度が上昇し、光源が劣化したり、最悪の場合壊れたりすることがある。これは、照明装置を沈める場合も同様であり、大気中で電源を入れたまま行えば水中に入る前に光源が過昇温し照明装置の寿命縮めることになる。すなわち、電源を切った状態でなければ、沈めたり引き上げたりすることができなかった。
大気中でも使用可能にすると放熱器が必要になり、照明装置が大型になってしまう。
【0005】
感熱式のカットアウトスイッチを用いて温度保護を実施するケースも考えられるが、この場合、照明装置が点滅し連続照明することができない。同様に一定の値まで電力を絞る場合も同様にチラツキが生じ、必要以上に輝度を下げることになる。また、設定値を越えてからの対応となるので、短時間的には温度上昇が設定値を大きく上回る危険性も含んでいる。
本発明は以上の問題点を鑑みたものであり、小形でかつ照明装置を取り巻く急激な環境の変化にも対応し、長寿で輝度変動の少ない水中気中両用の照明装置を提供することにある。
【0006】
本発明は、また設置環境に順応して自主的に照度を変動させることを特徴とする。
例えば、水中照明の場合、水中は光の透過性が悪く暗いので照明装置には大きな輝度が要求される。しかし水中から引き上げた場合、当然大気中は水中よりも明るいし、光の透過性がよいので水中に比較すると必要とされる照度は低い。
また、屋外灯の場合、特殊な設置環境でない限り昼間は明るいので照明は必要なく、かつ外気温度が高く、日暮れから深夜にかけて照明が必要になるにつれて、外気温度も下がる。
言い換えれば、外気温度が下がるにつれて照明装置に要求される照度も上がってくる場合が多い。
以上のような設置環境で本発明の示す照明装置を使用すれば、小形で放熱板を最小化した、つまり使用する部材を極力切り詰めた小形、軽量である照明装置を提供することが可能であり、照明装置が小形、軽量であるので、これを保持する部材も少なくすることが可能である。したがって、金属などの資源の使用が削減でき、地球環境に非常に配慮したものとなる。

【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発光素子と発光素子に印加する電力を可変できる電源と、照明装置の温度を計測する温度センサーと、温度センサーの値により前記発光素子に印加する電源を制御する制御回路を具備することにより、照明装置の温度が制御帯に入ると設定温度になるように発光素子に印加する電力をPID制御する。要するに発光素子の温度が設定温度になるようにそれまでの温度上昇・降下の蓄積データを元に発光素子に印加する電力を制御するので、過昇温を防止することができる。当然水中などの環境では、大きな冷却能力が期待できるので発光素子に印加する電力が照明装置の持つ最大出力になっても目標の設定温度には至らないので、常に最大光量で使用することが可能である。
【0008】
また、設定温度までは発光素子に電力を常時供給する制御回路を備えることにより、設置された環境に応じて照明装置が主体的に発光素子に印加する電力量を判断し決定するため、その時点の環境に応じた最大輝度を引き出すことが可能であり、必要以上に輝度を下げることがなく、連続制御により急激な輝度変化(点滅、チラツキ等)を回避することできる。また、素子の冷却のための電力を消費しない。したがって、急激に環境が変わっても安定して使用可能であり、長寿命で消費電力にも配慮した環境に順応する照明装置を提供することができる。

【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の照明装置は設置された環境に応じて照明装置が主体的に発光素子に印加する電力量を判断し決定するため、その時点の環境に応じた最大輝度を引き出すことが可能であり、必要以上に輝度を下げることがなく、連続制御により急激な輝度変化を回避することができる。また、小形、軽量、長寿命で消費電力の少ない照明装置を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の照明装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の水中と気中の両方で使用される照明装置の断面図例である。
【図3】本発明の水中と気中の両方で使用される照明装置の上面図例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
本発明に係わる照明装置の一実施例を図に従って説明する。図1は本発明に係わる照明装置の構成を示したブロック図である。図1に示すように本発明の一実施例の形態に係わる照明装置1は、照明部2と、照明部2に電力を供給する電源部3、照明部2の温度を検出する温度センサー4と、温度センサー4の検出信号により電源部3の出力電力を制御する制御部5により構成される。
照明部2の光源6には、高輝度な白色発光ダイオードまたは電球色の発光ダイオードを複数個使用する。また、これらの発光ダイオードは、アルミもしくはCEM−3などの熱伝導率が高い材料の基板7に実装される。
電源部3には発光ダイオードを効率よく点灯させるため、定電流の電源回路が使用され、照明部2の発光ダイオードを所定の一定の電流値により駆動することができる。また、制御部5からの制御信号により、出力電流を可変する機能を有する。
温度センサー4は、前記照明部2の発光ダイオードが実装されている熱伝導率が高い基板7に実装される。発光ダイオードと温度センサー4を熱伝導率が高い同一基板7上に実装することにより、発光ダイオードのジャンクション温度にほぼ等しい温度を温度センサー4が検出できる。
【0012】
当然ではあるが、温度センサー4は発光ダイオードが実装された基板7の最も温度上昇が高いと考えられる部分、すなわち発光ダイオードが最も密集している部分の発光ダイオード近傍に実装される。
制御部5にはマイクロコンピュータが使用される、マイクロコンピュータは温度センサー4の出力値をA/D変換、またはシリアル通信などの方法により読み込む機能を有しているものを使用する。マイクロコンピュータには、予め目標の温度設定値が入力されている。この温度設定値は外部からの通信、設定スイッチなどによって可変できるものとしてもよい。
【0013】
また、マイクロコンピュータにはPI制御もしくはPID制御の演算式がプログラミングされており、常時前記温度計測値と目標温度設定値から電源部3に出力する制御値が演算される。この制御値は、D/Aコンバーターにより電圧値に変換され、もしくはシリアル通信などの通信手段により電源部3に出力される。PIもしくはPID制御の制御定数を最適化することにより、外部環境の急激な変化に対応し、照明部2はオーバーシュートがほとんど無く一定の温度を保つ事ができ、かつ電源部3に出力する制御値の急激な変化による発光ダイオードの点滅、チラツキをなくし、発光ダイオードの安定した点灯を実現することが可能である。
【0014】
この照明装置1が水中などの放熱特性が優れた環境で使用される場合、電源部3から最大出力の電流値が照明部2に供給されても温度センサー4の検出値が目標設定値に達しない。したがって、水中などの環境では最大出力値で安定した照度を得ることができる。
以上のように図1に示すブロック図により、温度センサー4により検出される計測値が目標設定値になるように照明部2に供給される電力を制御する照明装置1が提供される。
前述のように、照明部2の発光ダイオードを実装する基板7に温度センサー4を実装するが、制御部5および電源部3が、発光ダイオードが実装された同一基板7上に実装されていても、または別基板に実装されていても本発明を実施する上においては何ら問題ない。
【0015】
次に、本発明は集魚灯などの水中と気中の両方で使用される照明装置について、もっとも効果を発揮するものであり、この場合の実施例について説明する。
水中と気中の両方で使用される照明装置20は、図2の断面図、図3の上面図で示すようにSUS316のような錆に強い金属もしくは表面に防錆処理が実施されたアルミ金属の放熱板を兼ねたベースプレート21に、発光ダイオード30と温度センサー31が実装された基板23が、シリコングリスなどの高熱伝導のペースト24を介してビス27で固定されており、さらに、透明もしくは半透明の樹脂製カバー22をシリコンゴムもしくはフッ素ゴム製のOリング25を挟み込んだ形でビス26によりベースプレート21に固定することにより防水処理が実施される。電力を供給する電線35は、図3で示すようにカバー22に固定されたOリング等で防水処理が実施されたコードブッシュ28を介して、外部より照明装置20内部に引き込まれる。
防水処理はOリング25および防水のコードブッシュ28で実施される。基板23は、高熱伝導のCEM−3基板もしくは、アルミ基板が用いられ、この実施例では基板23の上面にパターンが形成され、表面実装の形態で発光ダイオード30などの電子部品が実装されている。
【0016】
発光ダイオード30が発熱した熱は、基板23と高熱伝導ペースト24を介して直接ベースプレート21に伝導される。このような構造であれば、発光ダイオード30の熱が熱伝導物質を介して直接ベースプレート21に伝達される。放熱特性が良い水中環境では、水に直接接しているベースプレート21から水中に十分に熱が放熱されて温度上昇が抑えられるため、このベースプレート21に接している高熱伝導ペースト24、基板23や発光ダイオード30も過昇温することが無いので、特別な放熱板を使用することなく小形化が可能である。

【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の照明装置は設置された環境に応じて照明装置が主体的に発光素子に印加する電力量を判断し決定するため、その時点の環境に応じた最大輝度を引き出すことが可能であり、必要以上に輝度を下げることがなく、連続制御により急激な輝度変化を回避することが出来るので、特に温度変化の激しい環境、放熱条件の厳しい環境等、水中と気中の両環境で用いられる照明装置等に有用である
【符号の説明】
【0018】
1 照明装置
2 照明部
3 電源部
4 温度センサー
5 制御部
6 光源
7 基板
20 照明装置
21 ベースプレート
22 樹脂製カバー
23 基板
24 高熱伝導のペースト
25 Oリング
26 ビス
27 ビス
28 コードブッシュ
30 発光ダイオード
31 温度センサー
35 電線












【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置であって、発光素子と前記発光素子に印加する電力を可変できる電源と、発光素子の温度を計測可能な温度センサーと、前記温度センサーの値に応じて前記電源を制御する制御回路を備え、前記温度センサーの検出温度が特定の設定温度になるように発光素子に印加する電力量を制御することを特徴とする照明装置
【請求項2】
前記温度センサーの値に応じて発光素子に印加する電力量を制御する制御方法がPI制御またはPID制御であることを特徴とする請求項1記載の照明装置
【請求項3】
前記発光素子が、UV光源であることを特徴とする請求項1または2記載の照明装置
【請求項4】
前記発光素子が、発光ダイオードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の照明装置
【請求項5】
防水処理されていて、水中または海水中および気中で使用することが可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の照明装置
【請求項6】
発光素子の発する熱が直接熱伝導物質を介して、水または海水および大気に直接放熱されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の照明装置



























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−14867(P2012−14867A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147801(P2010−147801)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(591104295)藤崎電機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】