説明

過熱蒸気調理実験装置

【課題】過熱蒸気の温度および供給量を調節可能にすることである。
【解決手段】飽和蒸気生成部(20)と、該飽和蒸気生成部(20)の飽和蒸気から過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部(50)と、該過熱蒸気供給路(47)の過熱蒸気が供給される調理庫(60)とを備えている。そして、調理庫(60)の電気ヒータ(63,64)の加熱温度を調節する加熱温度調節手段(81)と、過熱蒸気生成部(50)の過熱用電気ヒータ(53)を調節して過熱蒸気温度を調節する蒸気温度調節手段(82)と、飽和蒸気生成部(20)の飽和蒸気が過熱蒸気生成部(50)へ流れる飽和蒸気供給路(44)に設けた流量調整弁(35)を調節して調理庫(60)への過熱蒸気供給量を調節する供給量調節手段(83)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱蒸気調理実験装置に関し、特に、多種多様の調理条件に関するデータを採取すべく多機能化に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、加熱調理装置としては、ガス燃焼によって加熱するオーブンやグリル、マイクロ波によって加熱する電子レンジなどがある。また、近年では、熱伝達力に優れ、ほぼ無酸素状態で食材を速やかに加熱することができるとして、過熱蒸気によって加熱調理する過熱蒸気調理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この過熱蒸気調理装置は、食品を入れる調理室と、水の蒸発手段と、水蒸気の過熱手段と、水の供給手段とを備えている。上記調理装置では、供給手段から供給された水が蒸発手段で加熱されて水蒸気となる。この水蒸気は、調理室へ供給される際、過熱手段で過熱されて過熱蒸気となり、この過熱蒸気によって食材が加熱調理される。
【0004】
ところで最近では、加熱調理における調理品質として、仕上がりの美味しさだけでなく、外見、食感および風味などに優れたものが望まれている。これらの調理品質は、加熱温度や加熱時間などの様々な調理条件によって大きく左右される。したがって、例えばコンビニエンスストアやファーストフード店などへ食材を仕入れる食品メーカにおいては、新食品を開発する上で、優れた調理品質とするために調理条件を様々に変更しながら調理実験を行うことが重要となってきている。
【特許文献1】特開2004−138345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した調理実験においては、実機の調理装置を用いて行っているのが現状であり、調理条件として変更できるパラメータが非常に少ないという問題があった。すなわち、従来の過熱蒸気調理装置では、蒸気温度(加熱温度)や加熱時間の調節しかできず、蒸気供給量などを調節しようとすると、その供給量に見合う新たな実機を製作する必要があった。その結果、新商品の開発費や開発時間が掛かってしまうという問題があった。そこで、様々な調理条件を変更できる調理実験装置の出現が望まれていた。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、過熱蒸気の温度だけでなく、少なくとも過熱蒸気の供給量も調節可能とした過熱蒸気の調理実験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的に、第1の発明は、調理物を収容する調理庫(60)と、該調理庫(60)内に設けられて調理物を加熱する電気加熱部(63,64)と、過熱蒸気を生成して上記調理庫(60)へ供給する過熱蒸気供給手段(S)とを備えて調理物を試験的に加熱調理する過熱蒸気調理実験装置を前提としている。そして、上記電気加熱部(63,64)の加熱温度を調節する加熱温度調節手段(81)と、上記調理庫(60)へ供給する過熱蒸気の温度を調節する蒸気温度調節手段(82)と、上記調理庫(60)への過熱蒸気の供給量を調節する供給量調節手段(83)とを備えている。
【0008】
上記の発明では、電気加熱部(63,64)のみによる加熱、過熱蒸気のみによる加熱、および電気加熱部(63,64)と過熱蒸気の両方による加熱の何れかの加熱方法によって調理物の加熱調理実験が行われる。ここで、調理条件としての電気加熱部(63,64)の加熱温度と、過熱蒸気の温度と、過熱蒸気の供給量とが別個独立に調節可能であるので、それぞれの加熱方法の下でこれらの調理条件を任意に変更して調理実験が行われる。したがって、上記電気加熱部(63,64)の加熱温度や過熱蒸気温度や過熱蒸気供給量に基づく調理物の出来映え(味、歯触り、焼き目、香ばしさなど)が判断される。
【0009】
また、第2の発明は、上記第1の発明において、上記過熱蒸気供給手段(S)が、飽和蒸気を生成する飽和蒸気生成部(20)と、該飽和蒸気生成部(20)の飽和蒸気を過熱して過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部(50)と、上記飽和蒸気生成部(20)から上記過熱蒸気生成部(50)へ飽和蒸気を流す第1蒸気供給路(44)と、上記過熱蒸気生成部(50)から調理庫(60)へ過熱蒸気を流す第2蒸気供給路(47)とを備えている。そして、上記供給量調節手段(83)は、上記第1蒸気供給路(44)に設けられた流量調整弁(35)を備え、該流量調整弁(35)を調節することによって調理庫(60)への過熱蒸気の供給量を調節するように構成されている。
【0010】
上記の発明では、流量調整弁(35)を調節することによって第1蒸気供給路(44)から過熱蒸気生成部(50)へ流れる飽和蒸気の流量が調節されるので、過熱蒸気生成部(50)における過熱蒸気の生成量が調節される。したがって、上記過熱蒸気生成部(50)から調理庫(60)への過熱蒸気の供給量が調節される。つまり、上記流量調整弁(35)を調節するだけで、調理庫(60)への過熱蒸気の供給量を容易に且つ確実に変更して調理実験が行われる。
【0011】
また、第3の発明は、上記第2の発明において、上記電気加熱部(63,64)が調理物の上方から加熱する上部ヒータ(63)と、調理物の下方から加熱する下部ヒータ(64)とで構成されている。一方、上記調理庫(60)は、第2蒸気供給路(47)の過熱蒸気を調理物の上方から吹き出す上部吹出部(61)と、調理物の下方から吹き出す下部吹出部(62)とを備えている。そして、上記加熱温度調節手段(81)は、上記上部ヒータ(63)および下部ヒータ(64)の加熱温度を別個独立に調節するように構成されている。また、上記供給量調節手段(83)は、上記上部吹出部(61)と下部吹出部(62)との過熱蒸気の吹出量を調節する吹出量調節手段(41,42)を備えている。さらに、上記蒸気温度調節手段(82)は、上記過熱蒸気生成部(50)に設けられて飽和蒸気を過熱する過熱ヒータ(53)の過熱温度を調節することによって上部吹出部(61)および下部吹出部(62)の過熱蒸気の吹出温度を調節するように構成されている。
【0012】
上記の発明では、加熱温度調節手段(81)により、上部ヒータ(63)と下部ヒータ(64)とで互いに異なった加熱温度に設定すれば、調理物の上方と下方とで異なった加熱温度状態での調理実験が可能になる。さらに、上記両ヒータ(63,64)の一方を加熱停止状態とした調理実験も可能である。また、上記吹出量調節手段(41,42)により、調理物の上方からと下方からとで過熱蒸気の吹出量が異なった状態での調理実験が可能である。また、上記過熱ヒータ(53)を調節するだけで、両吹出部(61,62)より吹き出す過熱蒸気温度を容易に且つ確実に変更して調理実験が行われる。
【0013】
また、第4の発明は、上記第3の発明において、上記上部ヒータ(63)および下部ヒータ(64)の加熱温度、上記過熱ヒータ(53)の過熱温度、上記流量調整弁(35)、および吹出量調節手段(41,42)のうち少なくとも1つを調節することによって調理庫(60)の庫内上部温度および庫内下部温度とを調節するように構成されている。
【0014】
上記の発明では、庫内上部温度および庫内下部温度が任意に変更して調理実験が行われる。つまり、調理条件としての調理物の周囲温度に基づいた調理物の出来映えが判断される。
【0015】
また、第5の発明は、上記第3の発明において、上記調理庫(60)が、上部吹出部(61)および下部吹出部(62)と調理物との距離が調整可能な調理物トレイ(67)を備えている。
【0016】
上記の発明では、調理物の上方からと下方からとの過熱蒸気の吹出距離を任意に変更して調理実験が行われる。つまり、調理条件としての過熱蒸気の吹出距離に基づく調理物の出来映えが判断される。
【0017】
また、第6の発明は、上記第2の発明において、調理時における調理物の重量測定手段(70)を備えている。
【0018】
上記の発明では、調理物の重量を計測しながら調理実験が行われる。つまり、調理中における調理物の重量変化に基づく調理物の出来映えが判断される。
【0019】
また、第7の発明は、上記第2の発明において、上記調理庫(60)に、調理時における調理物の中身および表面の温度を測定するためのセンサ差込口(8)が設けられている。
【0020】
上記の発明では、調理中にセンサ差込口(8)より温度センサを挿通して調理物の表面に当てるか中に差し込むことにより、調理物の表面温度や中身温度が計測される。これにより、調理中における調理物の温度変化に基づく調理物の出来映えが判断される。
【0021】
また、第8の発明は、上記第3の発明において、上記調理庫(60)には、複数の貫通孔を有し、且つ、調理庫(60)内を上部ヒータ(63)および上部吹出部(61)が設置される上部空間と調理物の収容空間と下部ヒータ(64)および下部吹出部(62)が設置される下部空間とに仕切る仕切板(68)が設けられている。
【0022】
上記の発明では、上部吹出部(61)および下部吹出部(62)より上部空間および下部空間へ過熱蒸気が吹き出す。そして、この過熱蒸気は、仕切板(68)の貫通孔を通じて収容空間へ均一に吹き出す。したがって、調理物が全体に亘って均一に加熱調理される。
【0023】
また、第9の発明は、上記第3の発明において、調理時における過熱蒸気生成部(50)に流れる飽和蒸気の温度および流量と、調理庫(60)へ供給される過熱蒸気の温度と、調理庫(60)の庫内上部温度および庫内下部温度のデータ取出部(84)を備えている。
【0024】
上記の発明では、データ取出部(84)により採取された各種データと調理物の出来映えとの関係が明確に判断される。
【0025】
また、第10の発明は、上記第3の発明において、可搬式に構成されている。
【0026】
上記の発明では、任意の場所で容易に且つ簡易に調理実験が行われる。
【発明の効果】
【0027】
したがって、第1の発明によれば、電気加熱部(63,64)の加熱温度と、過熱蒸気の温度と、過熱蒸気の供給量のそれぞれを独立して調節するようにしたので、これら過熱蒸気の供給量などの調理条件を任意に変更して調理実験を行うことができる。したがって、これら過熱蒸気の供給量などに基づいた調理物の出来映えを判定することができる。この結果、各種調理物に対する最適な調理条件を見付けることができる。
【0028】
特に、第2の発明によれば、過熱蒸気生成部(50)へ流す飽和蒸気の流量を流量調整弁(35)で調節することによって調理庫(60)への過熱蒸気の供給量を調節するようにしたので、容易に且つ確実に過熱蒸気の供給量を調節することができる。
【0029】
また、第3の発明によれば、調理物の上方および下方の両方に電気ヒータ(63,64)を設け、それぞれの加熱温度を別個独立に調節するようにしたので、互いに異なった加熱温度または何れか一方のみを加熱した条件の下で調理実験を行うことができる。さらに、調理物の上方および下方の両方に過熱蒸気の吹出部(61,62)を設けると共に、各吹出部(61,62)の吹出量を調節するようにしたので、上方からの吹出量を多くまたは下方からの吹出量を多くした条件の下で調理実験を行うことができる。また、過熱ヒータ(53)を調節するだけで、両吹出部(61,62)より吹き出す過熱蒸気温度を容易に且つ確実に変更することができる。
【0030】
また、第4の発明によれば、庫内上部温度および庫内下部温度を調節可能にしたので、これらを任意に変更して調理実験を行うことができる。したがって、調理条件としての調理物の周囲温度に基づく調理物の出来映えを判定することができる。
【0031】
また、第5の発明によれば、調理物と両吹出部(61,62)との距離が調整可能な調理物トレイ(67)を備えるようにしたので、調理物に対する過熱蒸気の吹出距離を任意に変更して調理実験を行うことができる。したがって、調理条件としての過熱蒸気の吹出距離に基づく調理物の出来映えを判定することができる。
【0032】
また、第6の発明によれば、調理時における調理物の重量測定手段(70)を設けるようにしたので、調理中の調理物の重量変化に基づく調理物の出来映えを判定することができる。
【0033】
また、第7の発明によれば、調理時における調理物の表面および中身の温度を測定するためのセンサ差込口(8)を設けるようにしたので、調理中の調理物の温度変化に基づいた調理物の出来映えを判定することができる。
【0034】
また、第8の発明によれば、複数の貫通孔を有し、調理庫(60)内を上部吹出部(61)の上部空間と調理物の収容空間と下部吹出部(62)の下部空間とに仕切る仕切板(68)を設けるようにしたので、上部空間および下部空間に吹き出した過熱蒸気を仕切板(68)の複数の貫通孔を通じて収容空間へ均一に供給させることができる。これにより、調理物を全体に亘って均一に加熱調理することができる。
【0035】
また、第9の発明によれば、飽和蒸気流量や飽和蒸気温度などの各種調理条件のデータを採取するデータ取出部(84)を設けたので、各種調理条件と調理物の出来映えとの関係をより明確に判定することができる。
【0036】
また、第10の発明によれば、可搬式としたので、任意の場所で容易に調理実験を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0038】
《発明の実施形態》
図1〜図6に示すように、本実施形態の調理実験装置(1)は、過熱蒸気または電気加熱を利用して、または過熱蒸気および電気加熱の両方を利用して食材(調理物)を試験的に加熱調理する過熱蒸気調理実験装置である。この調理実験装置(1)は、縦長の略直方体状のケーシング(2)内に、調理物を収容する調理庫(60)と、過熱蒸気を生成して上記調理庫(60)へ供給する過熱蒸気供給手段(S)とを備えて1つのユニットに構成されている。
【0039】
上記過熱蒸気供給手段(S)は、飽和蒸気生成部(20)と、蒸気供給部(30)と、過熱蒸気生成部(50)とを備えている。図2および図3に示すように、上記ケーシング(2)内において、上記飽和蒸気生成部(20)が下側の後部に配設され、上記過熱蒸気生成部(50)がやや中央部に配設され、上記調理庫(60)が上側の前部に配設され、図示しないが上記蒸気供給部(30)が主として調理庫(60)の後側に配設されている。また、上記ケーシング(2)内の下側の前部には、コントロール盤(3)および配電盤(4)が配設されている。なお、図2は、左側が前部を、右側が後部をそれぞれ示している。
【0040】
上記飽和蒸気生成部(20)は、水を蒸発させて飽和蒸気を生成するボイラー本体(21)と、該ボイラー本体(21)へ給水する給水部(10)とを備えている。具体的に、上記給水部(10)は、給水タンク(11)を備えている。この給水タンク(11)には、開閉弁である給水弁(SV1)を有し、給水源から給水タンク(11)へ水が流れる第1給水路(15)が接続されている。この第1給水路(15)は、例えば水道の蛇口とホースで接続可能に構成されている。そして、上記給水タンク(11)には、給水ポンプ(12)を有し、該給水ポンプ(12)によって給水タンク(11)の水を上記ボイラー本体(21)へ供給する第2給水路(16)が接続されている。
【0041】
なお、上記給水タンク(11)は、満水位センサ(13)および低水位センサ(14)を有している。また、上記第2給水路(16)には、ボイラー本体(21)から給水ポンプ(12)側への水の逆流を防止するための逆止弁(CV)が設けられている。
【0042】
上記ボイラー本体(21)は、水の加熱手段である蒸発用電気ヒータ(22)を有している。つまり、上記ボイラー本体(21)は、第2給水路(16)より供給された水を蒸発用電気ヒータ(22)によって加熱して蒸発させ、飽和蒸気を生成するように構成されている。また、上記ボイラー本体(21)は、開閉弁である排水弁(SV2)を有する排水管(26)が設けられている。
【0043】
なお、上記ボイラー本体(21)は、内部の飽和蒸気圧力が所定値になると出力信号を発信する圧力スイッチ(23)と、内部の飽和蒸気圧力が所定の高圧になると開く圧力安全弁(24)とを有している。また、上記ボイラー本体(21)は、内部の水位を検出するための水位センサ(25)と、排水管(26)より排水される水温を検出するための排水温度センサ(27)とを有している。
【0044】
上記過熱蒸気生成部(50)は、本体(51)に内装された蒸気流路(52)と過熱用電気ヒータ(53)とを備えている。そして、上記過熱蒸気生成部(50)は、飽和蒸気生成部(20)にて生成された飽和蒸気が蒸気供給部(30)によって供給される。上記蒸気流路(52)は、蛇行状に形成され、蒸気供給部(30)より供給された飽和蒸気が流れる通路になっている。上記過熱用電気ヒータ(53)は、蒸気流路(52)を流れる飽和蒸気を過熱して過熱蒸気を生成する過熱ヒータを構成している。また、この過熱蒸気生成部(50)には、過熱用電気ヒータ(53)で過熱された過熱蒸気温度を検出するための温度センサ(54)が設けられている。
【0045】
上記蒸気供給部(30)は、飽和蒸気供給路(44)と過熱蒸気供給路(47)を備えている。上記飽和蒸気供給路(44)は、一端が飽和蒸気生成部(20)のボイラー本体(21)に、他端が過熱蒸気生成部(50)における蒸気流路(52)の始端にそれぞれ接続され、飽和蒸気生成部(20)から過熱蒸気生成部(50)へ飽和蒸気を流す第1蒸気供給路を構成している。一方、上記過熱蒸気供給路(47)は、一端が過熱蒸気生成部(50)における蒸気流路(52)の終端に、他端が2つに分岐して調理庫(60)の上部および下部にそれぞれ接続され、過熱蒸気生成部(50)から調理庫(60)へ過熱蒸気を流す第2蒸気供給路を構成している。
【0046】
上記飽和蒸気供給路(44)には、飽和蒸気生成部(20)側から順に、開閉弁である蒸気供給弁(SV3)、減圧弁(31)、蒸気流量計(34)およびスケールフィルタ(36)が設けられている。上記蒸気流量計(34)は、小流量の計測に適しているとされる体積式の流量計である。上記減圧弁(31)は、圧力調整手段であり、蒸気の圧力変動を抑制して蒸気流量計(34)の計測を安定にするためのものである。上記スケールフィルタ(36)は、飽和蒸気に含まれる不純物を除去するためのものである。また、上記飽和蒸気供給路(44)は、減圧弁(31)と蒸気流量計(34)との間に飽和蒸気圧力計(32)および飽和蒸気温度センサ(33)が設けられている。一方、上記過熱蒸気供給路(47)には、過熱蒸気圧力計(39)および過熱蒸気温度センサ(43)が設けられている。
【0047】
また、上記蒸気供給部(30)には、第1バイパス通路(45)と第2バイパス通路(46)が設けられている。上記第1バイパス通路(45)は、一端が飽和蒸気供給路(44)における蒸気供給弁(SV3)の上流に接続され、他端が飽和蒸気供給路(44)における蒸気流量計(34)とスケールフィルタ(36)との間に接続されている。そして、上記第1バイパス通路(45)には、上流から順に、開閉弁である第1バイパス弁(SV4)とオリフィス弁(37)とが設けられている。このオリフィス弁(37)は、流路の絞りが固定式のものである。上記第2バイパス通路(46)は、一端が第1バイパス通路(45)における第1バイパス弁(SV4)の上流に接続され、他端が過熱蒸気供給路(47)における過熱蒸気圧力計(39)の上流に接続されている。そして、上記第2バイパス通路(46)には、上流から順に、開閉弁である第2バイパス弁(SV5)と流量調整弁(38)とが設けられている。
【0048】
上記蒸気供給部(30)は、蒸気供給弁などの3つの開閉弁(SV3〜SV5)を切り換えることにより、飽和蒸気供給路(44)にのみ飽和蒸気が流れる調理運転モードと、第1バイパス通路(45)にのみ飽和蒸気が流れる待機運転モードと、第2バイパス通路(46)にのみ飽和蒸気が流れる洗浄運転モードとに切り換えるように構成されている。
【0049】
具体的に、上記調理運転モードは、調理実験を行う際に使用するモードであり、蒸気供給弁(SV3)を開状態、2つのバイパス弁(SV4,SV5)を閉状態とし、過熱蒸気を調理庫(60)へ供給して調理物を加熱調理するようになっている。上記待機運転モードは、調理実験の合間に使用するモードであり、蒸気供給弁(SV3)および第2バイパス弁(SV5)を閉状態とし、第1バイパス弁(SV4)を連続的または間欠的に開状態とし、過熱蒸気を調理庫(60)へ連続的または間欠的に供給して庫内を予熱すると共に、ボイラー本体(21)および過熱蒸気生成部(50)も予熱するようになっている。上記洗浄運転モードは、例えば調理実験の開始前に使用するモードであり、蒸気供給弁(SV3)および第1バイパス弁(SV4)を閉状態、第2バイパス弁(SV5)を開状態とし、飽和蒸気を調理庫(60)へ直接供給して庫内を殺菌洗浄するようになっている。
【0050】
上記調理庫(60)は、庫内の上部および下部に設けられた上部電気ヒータ(63)および下部電気ヒータ(64)を備えている。この上部電気ヒータ(63)および下部電気ヒータ(64)は、調理物を上方および下方から加熱する電気加熱部を構成している。また、上記調理庫(60)は、庫内の上部および下部に設けられた過熱蒸気の上部吹出部(61)および下部吹出部(62)を備えている。この上部吹出部(61)および下部吹出部(62)は、上述した過熱蒸気供給路(47)の2つに分岐した他端に接続され、調理物に対して上方および下方から過熱蒸気を吹き出すように構成されている。
【0051】
図4〜図6に示すように、上記調理庫(60)は、庫内を上下方向に3つの空間に区画する2つのパンチングプレート(68)が設けられている。つまり、この2つのパンチングプレート(68)は、調理庫(60)内を上部電気ヒータ(63)および上部吹出部(61)が配設される上部空間と、下部電気ヒータ(64)および下部吹出部(62)が配設される下部空間と、上部空間と下部空間との間に形成されて調理物を収容する収容空間とに仕切る仕切板を構成している。そして、上記パンチングプレート(68)は、複数の貫通孔が全体に亘って形成され、各吹出部(61,62)より吹き出した過熱蒸気が上部空間および下部空間から収容空間の全体に且つ均等に吹き出すように構成されている。これにより、調理物全体が均等に過熱蒸気によって加熱される。また、上記調理庫(60)は、上部空間および下部空間の温度を検出するための庫内上部温度センサ(65)および庫内下部温度センサ(66)が設けられている。
【0052】
上記調理庫(60)の収容空間には、調理物を載せる調理物トレイ(67)が設けられている。この調理物トレイ(67)は、収容空間の両側部に設けられたトレイ支持部(69)によって支持されている。上記トレイ支持部(69)は、調理物トレイ(67)の支持高さを3段階に変更できるように構成されている。つまり、上記調理物トレイ(67)は、調理物と上部吹出部(61)および下部吹出部(62)との距離、また調理物と上部電気ヒータ(63)および下部電気ヒータ(64)との距離が調整可能に構成されている。したがって、この加熱距離を調理条件の1つとして任意に変更することができる。また、上記調理物トレイ(67)は、下方からの過熱蒸気およびヒータ熱が調理物へ到達しやすいように網状に形成されている。
【0053】
上記調理実験装置(1)は、調理時における調理物の重量測定手段(70)を備えている。この重量測定手段(70)は、調理物を吊り皿(図示せず)に載せ、該吊り皿をワイヤ(図示せず)で吊って重量を測定するものである。すなわち、重量測定する場合は、調理物を上述した調理物トレイ(67)ではなく吊り皿に載せた状態で調理する。したがって、調理中において、調理物の重量変化を計測することができる。具体的に、上記重量測定手段(70)は、電子秤(74)と、該電子秤(74)を載せる設置台(72)と、ワイヤのガイド管(71)とを備えている。
【0054】
上記ガイド管(71)は、ケーシング(2)の上板に3つ設けられている。この各ガイド管(71)は、上下方向に延びて、ケーシング(2)の外部と調理庫(60)内とが連通するように形成されている。上記3つのガイド管(71)は、ケーシング(2)の幅方向に並んで設けられている。そして、上記ガイド管(71)は、吊り皿を吊るワイヤを調理庫(60)内からケーシング(2)の外部へ導く導入口を構成している。上記設置台(72)は、ケーシング(2)の上板の外面に設けられている。上記設置台(72)は、箱状に形成され、その開口側をケーシング(2)の上板に向けて3つのガイド管(71)の上方を覆い、所定の空間を形成するように構成されている。上記電子秤(74)は、設置台(72)の上に載置され、ガイド管(71)によって導かれたワイヤが設置台(72)を貫通して繋がれている。そして、上記設置台(72)の内部には、拡散用ファン(73)が設けられている。この拡散用ファン(73)は、調理庫(60)からガイド管(71)を通じて設置台(72)の内部へ流入した過熱蒸気や熱風を拡散し、設置台(72)の側面に設けられた排気口(図示せず)から排出させるように構成されている。つまり、上記拡散用ファン(73)は、設置台(72)の内部を換気し、電子秤(74)に過熱蒸気や熱風が接触するのを抑制するようにしている。これにより、電子秤(74)を過熱蒸気等から保護して正確な重量測定を行うことができる。また、調理物の大きさや数量に応じて、3つのうち1つのガイド管(71)を任意に選択して吊り位置を変更することができる。
【0055】
また、上記ケーシング(2)の側部には、温度センサを外部から調理物の収容空間へ差し込むためのセンサ差込口(8)が3つ形成されている。この3つのセンサ差込口(8)は、調理物の収容空間における前部、中央部および後部に対応するようにケーシング(2)の前後方向に並んで形成されている。そして、このセンサ差込口(8)は、差し込んだ温度センサを調理物の表面に当て、また調理物の中に差し込むことにより、調理物の表面温度や中身の温度を測定し、また調理物の周囲温度も測定するように構成されている。つまり、上記センサ差込口(8)は、調理物およびその周囲の温度検出手段を構成している。これにより、調理中であっても、任意のタイミングで且つ調理物の任意の場所の温度を計測することができる。なお、このセンサ差込口(8)は、温度センサを差し込む際や温度計測中において、調理庫(60)内の過熱蒸気および熱がケーシング(2)の外部へ漏れないように構成されている。
【0056】
本実施形態の調理実験装置(1)は、各種調理条件を変更するための各種調節手段を備えている。つまり、上記調理実験装置(1)は、調理庫(60)の電気ヒータ(63,64)の加熱温度を調節する加熱温度調節手段(81)と、調理庫(60)へ供給する過熱蒸気の温度を調節する蒸気温度調節手段(82)と、調理庫(60)への過熱蒸気の供給量を調節する供給量調節手段(83)とを備えている。
【0057】
上記加熱温度調節手段(81)は、電気ヒータ(63,64)の通電量を調節することによって電気ヒータ(63,64)の加熱温度を調節するように構成されている。さらに、この加熱温度調節手段(81)は、上部電気ヒータ(63)および下部電気ヒータ(64)の通電量を別個独立に調節可能に構成されている。したがって、調理物を上方と下方とから異なった温度で電気加熱調理することができる。
【0058】
上記蒸気温度調節手段(82)は、過熱蒸気生成部(50)における過熱用電気ヒータ(53)の通電量を調節することによって過熱用ヒータ(52)の過熱温度を調節するように構成されている。つまり、上記蒸気温度調節手段(82)は、調理庫(60)における上部吹出部(61)および下部吹出部(62)の過熱蒸気の吹出温度を調節するように構成されている。したがって、任意の過熱蒸気温度で加熱調理することができる。
【0059】
上記供給量調節手段(83)は、蒸気供給部(30)に設けられる流量調整弁(35)と、上部オリフィス弁(41)および下部オリフィス弁(42)とで構成されている。上記流量調整弁(35)は、飽和蒸気供給路(44)における蒸気流量計(34)と第1バイパス通路(45)の他端の接続点との間に設けられている。一方、上記上部オリフィス弁(41)は過熱蒸気供給路(47)における上部吹出部(61)へ接続される分岐路に設けられ、上記下部オリフィス弁(42)は過熱蒸気供給路(47)における下部吹出部(62)へ接続される分岐路に設けられている。
【0060】
上記流量調整弁(35)は、蒸気流量計(34)を目視しながら手動で開度調節することによって過熱蒸気生成部(50)へ流す飽和蒸気の流量を調節するように構成されている。つまり、上記過熱蒸気生成部(50)への飽和蒸気の供給量が調節されることにより、調理庫(60)への過熱蒸気の供給量が調節される。したがって、供給する過熱蒸気量を任意に変更しながら調理することができる。
【0061】
上記上部オリフィス弁(41)および下部オリフィス弁(42)は、流路の絞りが固定式のものであり、取替容易に構成されている。そして、この各オリフィス弁(41,42)は、流路の絞りが互いに異なるように選択されている。つまり、上記各オリフィス弁(41,42)は、調理庫(60)における上部吹出部(61)と下部吹出部(62)との過熱蒸気の吹出量を調節する吹出量調節手段を構成している。したがって、上記両オリフィス弁(41,42)を適宜交換することにより、調理物における上方からの過熱蒸気量と下方からの過熱蒸気量とのバランスを任意に変更して調理することができる。なお、上記上部吹出部(61)および下部吹出部(62)より吹き出す過熱蒸気量を同量にする場合は、両オリフィス弁(41,42)を省略して調理することになる。
【0062】
また、これら各種調節手段(81,82,83)は、調理庫(60)における上部空間および下部空間の温度を調節するように構成されている。すなわち、上記上部電気ヒータ(63)および下部電気ヒータ(64)の加熱温度と、過熱用電気ヒータ(53)の過熱温度と、流量調整弁(35)の開度と、上部オリフィス弁(41)および下部オリフィス弁(42)の絞りのうち少なくとも1つを調節することによって調理庫(60)の庫内上部温度と庫内下部温度とが調節される。そして、これら各電気ヒータ(53,63,64)の温度調節は、ケーシング(2)前面のコントロール盤(3)に設けられた調節器によって行われる。
【0063】
上記調理実験装置(1)は、調理運転モードにおいて、3種類の調理モードを備えている。すなわち、この調理実験装置(1)は、調理庫(60)の電気ヒータ(63,64)のみによって加熱調理する第1調理モードと、過熱蒸気生成部(50)より供給される過熱蒸気のみによって加熱調理する第2調理モードと、電気ヒータ(63,64)および過熱蒸気の両方で加熱調理する第3調理モードとに切換可能に構成されている。
【0064】
上記調理実験装置(1)は、データ取出部(84)を備えている。このデータ取出部(84)には、飽和蒸気供給路(44)における飽和蒸気温度センサ(33)および蒸気流量計(34)の検出値および計測値、過熱蒸気供給路(47)における過熱蒸気温度センサ(43)の検出値、調理庫(60)における庫内上部温度センサ(65)および庫内下部温度センサ(66)の検出値、重量測定手段(70)の電子秤(74)の計測値、およびセンサ差込口(8)より差し込んだ温度センサの検出値が数秒毎に入力される。すなわち、上記データ取出部(84)は、調理時における、過熱蒸気生成部(50)へ流れる飽和蒸気の温度および流量と、調理庫(60)へ供給される過熱蒸気の温度と、調理庫(60)の庫内上部温度および庫内下部温度と、調理物の重量変化と、調理物およびその周囲の温度がデータとして採取される。
【0065】
この調理実験装置(1)のケーシング(2)には、図2および図3に示すように、下面の前部に2本の固定脚(6)と、下面の後部に2つのキャスター(7)が設けられている。つまり、本実施形態の調理実験装置(1)は、前側を持ち上げて移動できる可搬式に構成されている。したがって、任意の場所に容易に移動でき、給水源および電源と接続するだけで簡易的に調理実験を行うことができる。なお、上記ケーシング(2)は、調理庫(60)内の酸素などを排気する排気口(5)が設けられ、調理庫(60)がほぼ無酸素状態とされる。
【0066】
−運転動作−
次に、上述した調理実験装置(1)の運転動作について説明する。この調理実験装置(1)は、調理運転モードと待機運転モードと洗浄運転モードとが切り換えられる。以下に、各運転モードについて説明する。
【0067】
上記調理運転モードでは、蒸気供給部(30)の蒸気供給弁(SV3)が開状態に、2つのバイパス弁(SV4,SV5)が閉状態にそれぞれ設定される。なお、この調理運転モードでは、第1〜第3調理モードが切り換えられるが、ここでは電気ヒータ(63,64)および過熱蒸気の両方により加熱調理する第3調理モードについて説明する。
【0068】
先ず、上記調理庫(60)内に調理物(例えば、魚)を調理物トレイ(67)に載せて収容する。この状態で、給水弁(SV1)を開状態に切り換え、給水ポンプ(12)を駆動すると共に、蒸発用電気ヒータ(22)と過熱用電気ヒータ(53)と調理庫(60)の電気ヒータ(63,64)とに通電する。これにより、給水源から給水タンク(11)へ給水されると同時に、給水タンク(11)の水が給水ポンプ(12)によってボイラー本体(21)へ流れる。このボイラー本体(21)では、水が蒸発用電気ヒータ(22)によって加熱されて蒸発し、飽和蒸気(約100℃)が生成される。そして、この飽和蒸気は、飽和蒸気供給路(44)へ流れる。
【0069】
上記飽和蒸気供給路(44)に流れた飽和蒸気は、流量調整弁(35)で任意の流量に調整され、スケールフィルタ(36)で不純物が除去された後、過熱蒸気生成部(50)の蒸気流路(52)へ流れる。その際、飽和蒸気の圧力は、減圧弁(31)によってほぼ一定に保たれることから、蒸気流量計(34)の計測値が安定するので、目標の飽和蒸気流量となるように流量調整弁(35)で確実に調節することができ、また正確な飽和蒸気流量のデータを採取することができる。
【0070】
上記過熱蒸気生成部(50)では、飽和蒸気が蒸気流路(52)を流れる間に過熱用電気ヒータ(53)によって過熱されて目標の過熱温度(例えば、約250℃)の過熱蒸気が生成される。この過熱蒸気は、過熱蒸気供給路(47)へ流れて調理庫(60)の上部吹出部(61)と下部吹出部(62)とへ分岐して流れる。その際、例えば、上部オリフィス弁(41)の絞りが下部オリフィス弁(42)の絞りより大きく設定されている場合、下部吹出部(62)より上部吹出部(61)へ流れる過熱蒸気の流量が多くなる。上記調理庫(60)では、各吹出部(61,62)から上部空間および下部空間へ過熱蒸気が吹き出す。この過熱蒸気の吹出量は、下部吹出部(62)より上部吹出部(61)が多くなる。上記上部空間および下部空間の過熱蒸気は、パンチングプレート(68)の貫通孔を通じて調理物の収容空間へ均一に吹き出す。これにより、調理物の全体を均一に加熱することができる。一方、調理物は、上部電気ヒータ(63)および下部電気ヒータ(64)によっても加熱される。
【0071】
上述した調理中においては、数秒毎にデータ取出部(84)によって飽和蒸気温度、飽和蒸気流量、過熱蒸気温度、調理庫(60)の庫内上部温度および庫内下部温度のデータが採取される。また、上記調理中において、任意の時間毎に、温度センサをセンサ差込口(8)より差し込んで調理物の表面温度および中身の温度、また調理物の周囲温度をそれぞれ計測する。この計測値は、データ取出部(84)によってデータとして採取される。そして、調理物の調理中の状態や調理完了後の出来映え(味、歯触り、焼き目、香ばしさなど)を検査する。
【0072】
また、調理物の重量を測定する場合、調理物を調理物トレイ(67)ではなく、所定の吊り皿に載せた状態で調理庫(60)に収容される。この状態で、上述した加熱調理が行われる。ここで、調理中において、例えば調理物の温度や味見を検査する場合があるが、その場合は、重量測定用の他に温度計測用および味見用の3つの調理物を調理庫(60)に収容することになる。これにより、調理物の重量変化を計測しながら、調理物の温度変化や出来映えの検査も行うことができる。
【0073】
上述した調理実験は、加熱温度調節手段(81)、蒸気温度調節手段(82)および供給量調節手段(83)をそれぞれ独立に調節し、上部電気ヒータ(63)および下部電気ヒータ(64)の加熱温度、飽和蒸気流量(過熱蒸気の供給量)、過熱蒸気の温度、また庫内上部温度および庫内下部温度の設定値を変更しながら繰り返し行われる。また、上記調理物トレイ(67)の支持高さを変更すれば、調理物への加熱距離を変更しながらも実験が行われる。また、上記第1調理モードや第2調理モードに切り換えれば、電気ヒータ(63,64)のみによる加熱調理や過熱蒸気のみによる加熱調理における各種データを採取することができる。
【0074】
また、上記上部電気ヒータ(63)および下部電気ヒータ(64)において、互いに異なった加熱温度に設定した状態、または何れか一方のみへ通電した状態での各種データも採取することができる。
【0075】
このように、電気ヒータ(63,64)の過熱温度、過熱蒸気の供給量や温度などの調理条件を多種に亘って変更することができる。したがって、調理条件と調理物の出来映えとの関係を数多くデータ採取することができるので、各種調理物に対して最適な調理条件を見付けることができる。
【0076】
次に、上記待機運転モードについて説明する。この運転モードは、上述した各調理実験の合間、つまり調理庫(60)に調理物が収容されていない状態で行われる。この運転モードでは、蒸気供給部(30)の蒸気供給弁(SV3)および第2バイパス弁(SV5)が閉状態に、第1バイパス弁(SV4)が連続的または間欠的に開状態にそれぞれ設定される。この場合、ボイラー本体(21)の飽和蒸気は、第1バイパス通路(45)へ流れ、過熱蒸気生成部(50)で過熱蒸気となって調理庫(60)へ供給される。したがって、上記ボイラー本体(21)および過熱蒸気生成部(50)が予熱されると共に、調理庫(60)内が過熱蒸気によって予熱される。これにより、その後の調理実験において調理庫(60)内の温度が目標温度に速やかに到達するので、実験時間を短縮することができる。また、飽和蒸気を飽和蒸気供給路(44)へ流さなくてもよいので、次の調理実験のために既に設定された流量調整弁(35)の開度を変更しなくてもよい。したがって、その後の調理実験を一層速やかに行うことができる。
【0077】
次に、上記洗浄運転モードについて説明する。この運転モードは、1回目の調理実験を開始する前に行われる。この運転モードでは、蒸気供給部(30)の蒸気供給弁(SV3)および第1バイパス弁(SV4)が閉状態に、第2バイパス弁(SV5)が開状態にそれぞれ設定される。この場合、ボイラー本体(21)の飽和蒸気は、第2バイパス通路(46)へ流れてそのまま調理庫(60)へ供給される。そして、上記調理庫(60)が飽和蒸気によって殺菌洗浄される。これにより、衛生的に安全な調理実験を行うことができる。
【0078】
−実施形態の効果−
以上のように、本実施形態によれば、電気ヒータ(63,64)の加熱温度と、過熱蒸気の温度と、過熱蒸気の供給量のそれぞれを独立して調節するようにしたので、これら過熱蒸気の供給量などの調理条件を変更しながら調理実験を行うことができる。したがって、これら過熱蒸気の供給量などに基づいた調理物の出来映えを判定することができる。この結果、各種調理物に対する最適な調理条件を見付けることができる。
【0079】
また、上記過熱蒸気生成部(50)へ流す飽和蒸気の流量を流量調整弁(35)で調節することによって調理庫(60)への過熱蒸気の供給量を調節するようにしたので、容易に過熱蒸気の供給量を調節することができる。特に、上記流量調整弁(35)の調節は、蒸気流量計(34)を目視しながら手動で行うようにしたので、確実に目標流量に調節することができる。
【0080】
また、上記蒸気流量計(34)を流れる飽和蒸気の圧力を減圧弁(31)によってほぼ一定になるようにしたので、蒸気流量計(34)が飽和蒸気の圧力変動による影響を受けずにすむので、飽和蒸気の流量を正確に計測することができる。したがって、飽和蒸気の流量を一層確実に調節することができる。
【0081】
また、調理物の上方および下方の両方に電気ヒータ(63,64)を設け、それぞれの加熱温度を別個独立に調節するようにしたので、互いに異なった加熱温度または何れか一方のみを加熱した条件の下で調理実験を行うことができる。
【0082】
また、調理物の上方および下方の両方に過熱蒸気の吹出部(61,62)を設けると共に、各吹出部(61,62)へ過熱蒸気を流す過熱蒸気供給路(47)の分岐路に互いに絞りの異なる上部オリフィス弁(41)および下部オリフィス弁(42)を設けて各吹出部(61,62)の吹出量を調節するようにしたので、上方からの吹出量を多くまたは下方からの吹出量を多くした条件の下で調理実験を行うことができる。
【0083】
また、調理物を載せる調理物トレイ(67)の支持高さを変更可能にし、各吹出部(61,62)および各電気ヒータ(63,64)との距離を調節可能にしたので、調理条件としての過熱蒸気の吹出距離に基づく調理物の出来映えを判定することができる。
【0084】
また、調理時における調理物の重量測定手段(70)を設けるようにしたので、調理時における調理物の重量変化に基づいた調理物の出来映えを判定することができる。
【0085】
また、調理時における調理物の表面および中身の温度、またその周囲温度を計測するための温度センサのセンサ差込口(8)を設けるようにしたので、調理中の調理物およびその周囲の温度変化に基づいた調理物の出来映えを判定することができる。
【0086】
また、上記調理庫(60)内を、上部吹出部(61)の上部空間と調理物の収容空間と下部吹出部(62)の下部空間とに仕切るパンチングプレート(68)を設けるようにしたので、上部空間および下部空間に吹き出した過熱蒸気をパンチングプレート(68)の複数の貫通孔を通じて収容空間へ均一に供給させることができる。これにより、調理物を全体に亘って均一に加熱調理することができる。
【0087】
また、飽和蒸気流量や飽和蒸気温度などの各種調理条件のデータを採取するデータ取出部(84)を設けたので、各種調理条件と調理物の出来映えとの関係をより明確に示すことができる。
【0088】
また、上記調理実験装置(1)を可搬式としたので、任意の場所で調理実験を行うことができる。特に、上記ケーシング(2)に給水部(10)と飽和蒸気生成部(20)と過熱蒸気生成部(50)と調理庫(60)とを備えるようにし、給水源および電源とに繋ぐだけにしたので、容易に且つ簡易に調理実験を行うことができる。
【0089】
また、各調理実験の合間に調理庫(60)を予熱する待機運転モードを備えるようにしたので、実験時間を短縮することができる。さらに、1回目の調理実験を行う前に調理庫(60)を殺菌洗浄する洗浄運転モードを備えるようにしたので、衛生的に安全な調理実験装置(1)とすることができる。
【0090】
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0091】
例えば、上記供給量調節手段(83)の上部オリフィス弁(41)および下部オリフィス弁(42)に代えて、それぞれを流量調整弁としてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、飽和蒸気生成部(20)を備えるようにしたが、これに代えて、例えば工場のボイラー室で発生する蒸気をケーシング(2)に供給するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明は、過熱蒸気を用いた調理実験装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施形態に係る調理実験装置の全体を示す構成図である。
【図2】実施形態に係る調理実験装置を示す概略側面図である。
【図3】実施形態に係る調理実験装置を示す概略正面図である。
【図4】実施形態に係る調理庫を示す正面視の断面図である。
【図5】実施形態に係る調理庫を示す側面視の断面図である。
【図6】実施形態に係る調理庫を示す平面視の断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 調理実験装置
S 過熱蒸気供給手段
8 センサ差込口
20 飽和蒸気生成部
35 流量調整弁
41,42 上部,下部オリフィス弁(吹出量調節手段)
44 飽和蒸気供給路(第1蒸気供給路)
47 過熱蒸気供給路(第2蒸気供給路)
50 過熱蒸気生成部
53 過熱用電気ヒータ(過熱ヒータ)
60 調理庫
61,62 上部,下部吹出部
63,64 上部,下部電気ヒータ(電気加熱部)
67 調理物トレイ
68 パンチングプレート(仕切板)
70 重量測定手段
81 加熱温度調節手段
82 蒸気温度調節手段
83 供給量調節手手段
84 データ取出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物を収容する調理庫(60)と、該調理庫(60)内に設けられて調理物を加熱する電気加熱部(63,64)と、過熱蒸気を生成して上記調理庫(60)へ供給する過熱蒸気供給手段(S)とを備えて調理物を試験的に加熱調理する過熱蒸気調理実験装置であって、
上記電気加熱部(63,64)の加熱温度を調節する加熱温度調節手段(81)と、上記調理庫(60)へ供給する過熱蒸気の温度を調節する蒸気温度調節手段(82)と、上記調理庫(60)への過熱蒸気の供給量を調節する供給量調節手段(83)とを備えている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記過熱蒸気供給手段(S)は、飽和蒸気を生成する飽和蒸気生成部(20)と、該飽和蒸気生成部(20)の飽和蒸気を過熱して過熱蒸気を生成する過熱蒸気生成部(50)と、上記飽和蒸気生成部(20)から上記過熱蒸気生成部(50)へ飽和蒸気を流す第1蒸気供給路(44)と、上記過熱蒸気生成部(50)から調理庫(60)へ過熱蒸気を流す第2蒸気供給路(47)とを備え、
上記供給量調節手段(83)は、上記第1蒸気供給路(44)に設けられた流量調整弁(35)を備え、該流量調整弁(35)を調節することによって調理庫(60)への過熱蒸気の供給量を調節するように構成されている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記電気加熱部(63,64)は、調理物の上方から加熱する上部ヒータ(63)と、調理物の下方から加熱する下部ヒータ(64)とで構成される一方、
上記調理庫(60)は、第2蒸気供給路(47)の過熱蒸気を調理物の上方から吹き出す上部吹出部(61)と、調理物の下方から吹き出す下部吹出部(62)とを備え、
上記加熱温度調節手段(81)は、上記上部ヒータ(63)および下部ヒータ(64)の加熱温度を別個独立に調節するように構成され、
上記供給量調節手段(83)は、上記上部吹出部(61)と下部吹出部(62)との過熱蒸気の吹出量を調節する吹出量調節手段(41,42)を備え、
上記蒸気温度調節手段(82)は、上記過熱蒸気生成部(50)に設けられて飽和蒸気を過熱する過熱ヒータ(53)の過熱温度を調節することによって上部吹出部(61)および下部吹出部(62)の過熱蒸気の吹出温度を調節するように構成されている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記上部ヒータ(63)および下部ヒータ(64)の加熱温度、上記過熱ヒータ(53)の過熱温度、上記流量調整弁(35)、および吹出量調節手段(41,42)のうち少なくとも1つを調節することによって調理庫(60)の庫内上部温度および庫内下部温度とを調節するように構成されている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。
【請求項5】
請求項3において、
上記調理庫(60)は、上部吹出部(61)および下部吹出部(62)と調理物との距離が調整可能な調理物トレイ(67)を備えている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。
【請求項6】
請求項2において、
調理時における調理物の重量測定手段(70)を備えている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。
【請求項7】
請求項2において、
上記調理庫(60)には、調理時における調理物の中身および表面の温度を測定するためのセンサ差込口(8)が設けられている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。
【請求項8】
請求項3において、
上記調理庫(60)には、複数の貫通孔を有し、且つ、調理庫(60)内を上部ヒータ(63)および上部吹出部(61)が設置される上部空間と調理物の収容空間と下部ヒータ(64)および下部吹出部(62)が設置される下部空間とに仕切る仕切板(68)が設けられている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。
【請求項9】
請求項3において、
調理時における過熱蒸気生成部(50)に流れる飽和蒸気の温度および流量と、調理庫(60)へ供給される過熱蒸気の温度と、調理庫(60)の庫内上部温度および庫内下部温度のデータ取出部(84)を備えている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。
【請求項10】
請求項3において、
可搬式に構成されている
ことを特徴とする過熱蒸気調理実験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−46670(P2006−46670A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223733(P2004−223733)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000108890)株式会社ダイキンアプライドシステムズ (4)