説明

過給エンジン用燃料組成物

【課題】プレイグニッションを抑止した過給エンジン用燃料組成物を提供する。
【解決手段】発火点指標が90.3以上、リサーチ法オクタン価(RON)が96.0以上、15℃における密度が0.710g/cm以上0.783g/cm以下、10容量%留出温度(T10)が70℃以下、50容量%留出温度(T50)が75℃以上110℃以下、90容量%留出温度(T90)が180℃以下、硫黄分が10質量ppm以下であることを特徴とする過給エンジン用燃料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給エンジン用燃料に関し、詳しくは、自動車の運転性悪化の原因となるプレイグニッション(早期着火)を抑制した過給エンジン用燃料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年CO排出量削減の観点から、省燃費エンジンの開発が求められている。代表的な省燃費エンジンとして、ターボチャージャーやルーツブロアーなどの過給機を使用して、エンジンの吸入空気量を強制的に増やし、エンジンの排気量を小さくして高出力を維持する技術、すなわち過給ダウンサイジングエンジン(過給エンジンともいう。)が開発されつつある。ただし、過給ダウンサイジングエンジンは燃焼室内の温度や圧力がNAエンジン(自然吸気エンジン)に比べて高くなる為に、スパークプラグによる点火よりも早く燃焼を起こしてしまうプレイグニッション(早期着火)といった異常燃焼が起こりやすくなると考えられる。プレイグニッションを抑制する方法としては、特許文献1のような燃料噴射制御装置があるが、プレイグニッションを抑制する燃料は知られておらず、過給ダウンサイジングエンジンにおいてプレイグニッションが発生しない燃料の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−236035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のガソリンを過給エンジンに使用した場合に懸念されるプレイグニッションを抑止することができる新規な燃料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題について鋭意研究を重ねた結果、特定の性状を有する燃料組成物により、課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明は、発火点指標が90.3以上、リサーチ法オクタン価(RON)が96.0以上、15℃における密度が0.710g/cm以上0.783g/cm以下、10容量%留出温度(T10)が70℃以下、50容量%留出温度(T50)が75℃以上110℃以下、90容量%留出温度(T90)が180℃以下、硫黄分が10質量ppm以下であることを特徴とする過給エンジン用燃料組成物に関する。
【0007】
また本発明は、直鎖飽和炭化水素含有量が7.5容量%以下であることを特徴とする前記記載の過給エンジン用燃料組成物に関する。
また本発明は、芳香族分が38容量%以上であることを特徴とする前記記載の過給エンジン用燃料組成物に関する。
また本発明は、シクロペンタン類の含有量が2容量%以上であることを特徴とする前記記載の過給エンジン用燃料組成物に関する。
また本発明は、蒸留初留点(IBP)が20℃以上37℃以下、70容量%留出温度(T70)が95℃以上135℃以下、終点(EP)が220℃以下であることを特徴とする前記記載の過給エンジン用燃料組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の過給エンジン用燃料組成物は、過給エンジンを搭載した自動車用燃料として、優れたプレイグニッション抑止効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳述する。
本発明の過給エンジン用燃料組成物は、発火点指標が90.3以上、リサーチ法オクタン価(RON)が96.0以上、15℃における密度が0.710g/cm以上0.783g/cm以下、10容量%留出温度(T10)が70℃以下、50容量%留出温度(T50)が75℃以上110℃以下、90容量%留出温度(T90)が180℃以下、硫黄分が10質量ppm以下のものである。
【0010】
本発明の過給エンジン用燃料組成物の発火点指標は90.3以上であることが必要であり、プレイグニッション抑止の観点から90.9以上が好ましく、91.5以上がより好ましい。一方、上限は100以下が好ましく、98以下がより好ましく、96以下がさらに好ましい。発火点指標が100を超える場合、エンジン内での未燃炭化水素焼物が増加し、デポジットの生成に繋がる点で好ましくない。
なお、ここでいう発火点指標とは、本発明に係る過給エンジン用燃料組成物およびイソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)の発火点をそれぞれ測定し、イソオクタンの発火点を100とした場合の過給エンジン用燃料組成物の発火点の相対値を意味するものであり、発火点測定値の測定機関による差をなくすための指標である。また、ここでいう発火点は、ASTM E659“Standard Test Method for Autoignition Temperature of Liquid Chemicals”に準拠して測定される発火点(K)を意味する。
【0011】
本発明の過給エンジン用燃料組成物のリサーチ法オクタン価(RON)はノッキングを防止し、運転性を向上させる観点から、96.0以上であることが必要であり、特に過給エンジンを搭載したプレミアムガソリン仕様車に使用する場合は、該自動車の性能を最大限引き出すために、好ましくは97.0以上であり、さらに好ましくは98.0以上である。
ここでいうリサーチ法オクタン価(RON)とは、JIS K 2280「オクタン価及びセタン価試験方法」により測定されるリサーチ法オクタン価を意味する。
【0012】
本発明の過給エンジン用燃料組成物の15℃における密度は、0.710g/cm以上0.783g/cm以下であることが必要である。本発明の過給エンジン用燃料組成物の15℃における密度が0.710g/cmに満たない場合は燃費が悪化する可能性があり、一方、0.783g/cmを超える場合は加速性の悪化やプラグのくすぶりを生じる可能性がある。かかる理由から、密度の下限は0.710g/cm以上であることが必要であり、0.735g/cm以上が好ましく、0.740g/cm以上がより好ましい。密度の上限は0.783g/cm以下であることが必要であり、0.770g/cm以下が好ましく、0.760g/cm以下がより好ましい。
ここでいう15℃における密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される値(g/cm)を意味する。
【0013】
本発明の過給エンジン用燃料組成物の蒸留性状としては、10容量%留出温度(T10)が70℃以下、50容量%留出温度(T50)が75℃以上110℃以下、90容量%留出温度(T90)が180℃以下を満たす必要がある。
【0014】
T10は、低温始動性が低下することを抑制するために70℃以下であることが必要であり、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。一方、排出ガス中の炭化水素の増加、ベーパーロックによる高温運転性の低下を抑制するために、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは45℃以上である。
【0015】
T50は、燃費の悪化を抑制するために75℃以上であることが必要であり、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上である。一方、常温運転性の悪化を防止するために110℃以下であることが必要であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。
【0016】
T90は、冷機時の低温及び常温運転性の悪化、エンジンオイルのガソリンによる希釈の増加、炭化水素排出ガスの増加、エンジンオイルの劣化及びスラッジの発生等の現象を防止できる観点から180℃以下であることが必要であり、好ましくは175℃以下、より好ましくは165℃以下である。
【0017】
本発明の過給エンジン用燃料組成物の蒸留初留点(IBP)、70容量%留出温度(T70)、終点(EP)は、特に限定されるものではないが、次の性状を有することが好ましい。
IBPは、好ましくは20℃以上、より好ましくは23℃以上、さらに好ましくは25℃以上である。IBPが20℃に満たない場合は排出ガス中の炭化水素が増加する可能性がある。一方、IBPは、好ましくは37℃以下、より好ましくは35℃以下、さらに好ましくは33℃以下である。IBPが37℃を超える場合には、低温運転性が低下する可能性がある。
T70は、好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは125℃以下である。T70が135℃を超える場合は冷機時の中低温運転性が低下する可能性があり、また、排出ガス中の炭化水素の増加、吸気バルブデポジットの増加、燃焼室デポジットが増加する可能性がある。一方、T70は、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは105℃以上である。T70が95℃を下回る場合には、燃費が悪化する場合がある。
EPは、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。EPが220℃を超える場合は吸気弁デポジットや燃焼室デポジットが増加する可能性があり、また、点火プラグのくすぶりが発生する可能性がある。
なお、ここでいうIBP、T10、T50、T70、T90、EPとは、JIS K2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値(℃)を意味する。
【0018】
本発明の過給エンジン用燃料組成物の硫黄分は10質量ppm以下であることが必要であり、好ましくは8質量ppm以下である。硫黄分が10質量ppmを越える場合、排出ガス処理触媒の性能に悪影響を及ぼし、排出ガス中のNOx、CO、HCの濃度が高くなるおそれがあり、またベンゼンの排出量も増加するおそれがあり好ましくない。
ここでいう硫黄分とは、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」により測定される値(質量ppm)を意味する。
【0019】
本発明の過給エンジン用燃料組成物の直鎖飽和炭化水素(ノルマルパラフィン)含有量は7.5容量%以下であることが好ましく、より好ましくは7.2容量%以下、さらに好ましくは7.0容量%以下、特に好ましくは6.8容量%以下、最も好ましくは6.4容量%以下である。直鎖飽和炭化水素含有量が7.5容量%を超える場合、プレイグニッションが発生しやすくなるため好ましくない。
ここでいう直鎖飽和炭化水素含有量とは、JIS K 2536「石油製品−成分試験方法−ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」により測定される各々の直鎖飽和炭化水素含有量の合計(容量%)を意味する。
【0020】
本発明の過給エンジン用燃料組成物の芳香族分は38容量%以上であることが好ましく、より好ましくは40容量%以上、さらに好ましくは42容量%以上、最も好ましくは44容量%以上である。一方、上限は50容量%以下が好ましく、49容量%以下がより好ましく、48容量%以下がさらに好ましい。芳香族分が38容量%未満の場合プレイグニッションが発生しやすくなる点で好ましくなく、50容量%を超える場合燃焼室デポジットが増加する可能性がある。
ここでいう芳香族分とは、JIS K 2536「石油製品−成分試験方法−ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」により測定される各々の芳香族炭化水素含有量の合計(容量%)を意味する。
【0021】
本発明の過給エンジン用燃料組成物のシクロペンタン類は2容量%以上であることが好ましく、より好ましくは2.5容量%以上、さらに好ましくは3容量%以上、最も好ましくは4容量%以上である。一方、上限は10容量%以下であることが好ましく、9容量%以下がより好ましく、8容量%以下がさらに好ましい。シクロペンタン類が2容量%未満の場合プレイグニッションが発生しやすくなる点で好ましくなく、10容量%を超える場合ガソリンとしてのバランスが崩れる点で好ましくない。
ここでいうシクロペンタン類とは、JIS K 2536「石油製品−成分試験方法−ガスクロマトグラフによる全成分の求め方」により測定される5員環を有するナフテン系炭化水素含有量の合計(容量%)を意味する。なお、5員環を有するナフテン系炭化水素としては、シクロペンタンの他、メチルシクロペンタンおよびジメチルシクロペンタン等のアルキルシクロペンタン類を挙げることができる。
【0022】
本発明の過給エンジン用燃料組成物は、一種又は二種以上のガソリン基材を配合し、所望により後述の清浄分散剤やその他の添加剤を添加することで調製することができる。
本発明の過給エンジン用燃料組成物に用いるガソリン基材は、従来公知の任意の方法で製造することができる。具体的には、原油を常圧蒸留して得られる軽質ナフサ、重質ナフサ、重質ナフサを脱硫処理して得られる脱硫重質ナフサ、接触分解法で得られる接触分解ガソリン、水素化分解法で得られる水素化分解ガソリン、接触改質法で得られる改質ガソリン、改質ガソリンより芳香族分を抽出した残分であるラフィネート、オレフィン分の重合によって得られる重合ガソリン、イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加(アルキル化)することによって得られるアルキレート、軽質ナフサを異性化装置でイソパラフィンに転化して得られる異性化ガソリン、脱ノルマルパラフィン油、ブタン、芳香族炭化水素化合物、パラフィン炭化水素化合物、ナフテン炭化水素化合物、オレフィン炭化水素化合物、ETBE(エチル−tert−ブチルエーテル)、プロピレンを二量化し、続いてこれを水素化して得られるパラフィン留分、ハイオクガソリン、合成原油ナフサ(オイルサンド油を熱分解プロセス等でアップグレーディング後、蒸留により得られたナフサ留分)、天然ガス等を一酸化炭素と水素に分解した後にF−T(Fischer−Tropsch)合成で得られるGTL(Gas to Liquids)の軽質留分等の基材を一種又は二種以上を混合することで製造することができる。
【0023】
本発明の過給エンジン用燃料組成物は、含酸素化合物を含有していてもよい。
含酸素化合物としては、例えば、炭素数2〜4のアルコール類、炭素数4〜8のエーテル類などが含まれる。具体的な含酸素化合物としては、例えば、エタノール、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)、エチル−tert−ブチルエーテル(ETBE)、tert−アミルメチルエーテル(TAME)、tert−アミルエチルエーテルなどを挙げることができる。なかでもエタノール、MTBE、ETBEが好ましい。特に、製造時の二酸化炭素排出量など環境への影響を考慮すると、バイオマス由来のエタノール、バイオマス由来のエタノールを原料として製造したETBEを好ましく使用することができる。なお、メタノールは排出ガス中のアルデヒド濃度が高くなる可能性があり、腐食性もあるので、JIS K 2536「石油製品−成分試験方法」の規定により試験したときに検出されない(0.5容量%以下)ことが好ましい。またこれらの化合物は本来原料中に含まれているもので、1種又は2種以上のガソリン基材を混合して目的の性状の燃料組成物を調製する工程でその含有量が決まる。
含酸素化合物の含有量は、過給エンジン用燃料組成物中の含酸素率でその上限が4.3質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2.7質量%以下、更に好ましくは1.3質量%以下である。4.3質量%を超える場合は、排出ガス中のNOxが増加する可能性がある。
【0024】
本発明の過給エンジン用燃料組成物は、清浄分散剤を含有していてもよい。清浄分散剤としては、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどのガソリン清浄分散剤として公知の化合物を用いることができる。これらの中でも空気中300℃で熱分解を行った場合にその残分が無いものが望ましい。好ましくはポリイソブテニルアミン及び/またはポリエーテルアミンを使用するのが良い。清浄分散剤の添加により吸気バルブデポジットを防止することができる。清浄分散剤の含有量は燃料組成物全量基準で25〜1000mg/Lであることが好ましく、吸気バルブデポジットを防止する点から、50〜500mg/Lがさらに好ましく、100〜300mg/Lが最も好ましい。
本発明の過給エンジン用燃料組成物に添加することができるその他の燃料油添加剤としては、具体的には、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤、N,N’−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパンのようなアミンカルボニル縮合化合物等の金属不活性化剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、多価アルコールあるいはそのエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、高級アルコール硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤、アゾ染料などの着色剤、有機カルボン酸あるいはそれらの誘導体類、アルケニルコハク酸エステル等の防錆剤、ソルビタンエステル類等の水抜き剤、キリザニン、クマリンなどの識別剤、天然精油合成香料などの着臭剤、高級カルボン酸モノグリセリドや高級カルボン酸のアミド化合物の混合物などの摩擦調整剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、1種または2種以上を添加することができ、その合計添加量は燃料組成物全量基準で0.1質量%以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0026】
[実施例1〜4および比較例1〜3]
表1に示すノルマルブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、アルキレート、トルエン、軽質分解ガソリン、中質分解ガソリン、重質分解ガソリン、軽質改質ガソリン、重質改質ガソリン、ETBEなどの基材を表2に示す割合で配合し、実施例1〜4の試験燃料1〜4を調製した。一方、比較例1〜3は市販のハイオクガソリンを用いた。用いた基材の性状を表1に、調製した試験燃料及び比較例の諸性状を表3に示す。
次に、得られた試験燃料を用いて、以下に示すプレイグニッション試験方法試験を行い、プレイグニッションの有無を評価した。
【0027】
(性状測定)
本実施例および比較例における試験燃料の性状は以下の方法により測定した。
発火点指標は、イソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)の発火点を100とした場合の相対値を意味する。また、ここでいう発火点は、ASTM E659“Standard Test Method for Autoignition Temperature of Liquid Chemicals” により測定される値(K)である。
オクタン価(RON)は、JIS K 2280「オクタン価及びセタン価試験方法」により測定されるリサーチ法オクタン価である。
密度(@15℃)は、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定した値である。
硫黄分は、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」により測定される値である。
蒸留性状(T10、T50、T90)は、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される値である。
ノルマルパラフィン分、芳香族分、シクロペンタン類の含有量、は、JIS K 2536「石油製品−成分試験方法」により測定されるガソリン中の直鎖飽和炭化水素の合計含有量、芳香族炭化水素の合計含有量、5員環を有するナフテン系炭化水素であるシクロペンタン類の合計含有量である。
【0028】
(プレイグニッション試験方法)
(1)プレイグニッションの計測
(a)エンジン諸元
エンジンA:直列4気筒
:排気量 1794cc
:圧縮比 15
:噴射方式 ポート噴射式
(b)測定方法
上記緒元のエンジンAを用いてプレイグニッション試験を行い、プレイグニッションの発生の有無を計測した。
運転条件:回転数 4400rpm
負荷 WOT
【0029】
プレイグニッションを発生させるために、点火プラグを熱源として用いた。点火時期を進角させることで点火プラグの温度を高め、点火プラグの温度が860℃におけるプレイグニッションの有無を判定した。なお、点火以前に点火コイルにイオン電流が検出された場合、プレイグニッションが発生したと判断した。
【0030】
実施例、比較例のプレイグニッション試験結果を表3に併記する。表3の試験結果から明らかなように、本発明の過給エンジン用燃料組成物(実施例1〜4)を用いた場合は、比較例1〜3の試験燃料と比べて、プレイグニッションが抑制されていることがわかる。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の過給エンジン用燃料組成物は、従来のガソリン以上に優れたプレイグニッション抑制効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発火点指標が90.3以上、リサーチ法オクタン価(RON)が96.0以上、15℃における密度が0.710g/cm以上0.783g/cm以下、10容量%留出温度(T10)が70℃以下、50容量%留出温度(T50)が75℃以上110℃以下、90容量%留出温度(T90)が180℃以下、硫黄分が10質量ppm以下であることを特徴とする過給エンジン用燃料組成物。
【請求項2】
直鎖飽和炭化水素含有量が7.5容量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の過給エンジン用燃料組成物。
【請求項3】
芳香族分が38容量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の過給エンジン用燃料組成物。
【請求項4】
シクロペンタン類の含有量が2容量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の過給エンジン用燃料組成物。
【請求項5】
蒸留初留点(IBP)が20℃以上37℃以下、70容量%留出温度(T70)が95℃以上135℃以下、終点(EP)が220℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の過給エンジン用燃料組成物。

【公開番号】特開2012−72227(P2012−72227A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216826(P2010−216826)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)