説明

遠位端部のプラスチック製注入/吸引チップ

一つの実施形態では、注入スリーブ(102)と、吸引チューブ(108)と、注入/吸引チップ(104)とを含む器具(100)が提供される。スリーブは、注入経路(103)を画成する本体を含むことができる。チューブは注入経路内にあり且つ吸引経路(105)を画成することができる。チップはチューブの遠位端部に適合することができる。チップは、スリーブとチューブとの間の隙間をシールし、且つ、スリーブの外形に対応する外形(例えばテーパー部)を有するフランジ(114)を含むことができる。スリーブ及びチップは、スリーブが流体を一つの方向に差し向け且つチップがその方向から垂直に流体を引き込むようにキー止めされうる。チップの吸引経路はその吸引ポート(110)を越えて遠位方向に延在することができる。チップは、スリーブの注入ポート(106)に近接した位置まで延在することができる。器具と共に使用される、(吸引チューブ及び注入/吸引チップを含む)使い捨て可能な部品が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概して、眼科手術の分野に関し、特に白内障を取り除くための器具及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最も簡潔な表現において、人間の眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分を通して光を透過させ且つ水晶体によって網膜上に画像を結像することによって視力を提供するように機能する。結像される画像の質は、眼の大きさ及び形状、並びに角膜及び水晶体の透明度を含む多くの要因に依存する。
【0003】
加齢、病気、外傷等によって水晶体の透明度が低下すると、網膜に透過されうる光が減少するので、視力が悪化する。眼の水晶体におけるこの欠陥は、医学的には白内障として知られている。この状態について一般的に認容された治療法は、外科的に水晶体を取り除いてその水晶体を人工的な眼内レンズ(IOL)に置き換えることである。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において記述される実施形態では、眼の手術中における注入及び吸引のための器具が提供される。
【0005】
一つの実施形態では、注入スリーブと、吸引チューブと、注入/吸引チップとを含む器具が提供される。注入スリーブは、注入経路(infusion channel)を画成する本体を含むことができる。吸引チューブは注入経路内に定置され且つ吸引経路を画成することができる。注入/吸引チップは吸引チューブの遠位端部に結合し且つ適合することができる。注入/吸引チップは注入スリーブと吸引チューブとの間の隙間をシールすることができる。さらに、いくつかの実施形態では、注入/吸引チップは、注入スリーブの外形に対応する外形(例えばテーパー部)を有するフランジを含むことができる。いくつかの実施形態では、注入スリーブ及び注入/吸引チップは、注入スリーブが一つの方向に流体を差し向け且つ注入/吸引チップが別の方向から物質を吸引するようにキー止めされうる。注入方向と吸引方向とは互いに対して垂直でありうる。注入/吸引チップの吸引経路は吸引ポートを越えて遠位方向に延在することができる。いくつかの実施形態では、注入/吸引チップは、スリーブの注入ポートに近接した位置まで近位方向に延在することができる。
【0006】
一つの実施形態では、眼科手術器具と共に使用される、単回使用の使い捨て可能な部品が提供される。器具は、細長い本体を具備する注入スリーブを含み、注入スリーブは、注入経路を画成し、且つ、近位端部と、遠位端部と、細長い本体の長さに沿った長手方向の軸線とを有し、一方、使い捨て可能な部品は吸引チューブ及び注入/吸引チップを含むことができる。吸引チューブは吸引経路を画成し且つ近位端部及び遠位端部を有することができる。使い捨て可能な部品が器具内に位置するとき、吸引チューブは注入経路内に定置されうる。注入/吸引チップは吸引チューブの遠位端部に結合し且つ適合することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、使い捨て可能な部品が器具に結合されるとき、隙間が注入スリーブの遠位端部と吸引チューブの遠位端部との間に存在しうる。使い捨て可能な部品が器具に結合されるとき、注入/吸引チップは隙間をシールすることができる。注入/吸引チップは吸引ポートを画成することができ、吸引ポートは、使い捨て可能な部品の長手方向の軸線と、使い捨て可能な部品が器具に結合されるときに注入スリーブの注入ポートが注入流体を差し向ける方向とに対して垂直な方向から、周囲から物質を引き込むように方向付けられる。いくつかの実施形態では、使い捨て可能な部品が器具に結合されるとき、注入/吸引チップは、長手方向の軸線に沿った方向において、注入ポートに近接した位置まで延在することができる。
【0008】
実施形態では、白内障の摘出及び他の眼科処置中に患者の外傷を減少させる器具が提供される。実施形態では、特に、様々な器具上の微小なバリに起因する、水晶体嚢における切裂の可能性をなくせないとしても低下させる器具が提供される。実施形態では、安価であり且つ使い捨て可能な、眼科器具用の吸引チューブが提供される。いくつかの実施形態では、注入流体が注入スリーブと注入/吸引チップとの間で漏れることがなくなり又は大いに低減されうる。実施形態では、様々な眼科手術器具の吸引チューブ及び注入/吸引チップを手術後に清潔にする必要性が取り除かれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、眼科手術を受けている眼の断面図である。
【図2】図2は、眼科手術器具の一つの実施形態の斜視図である。
【図3】図3は、眼科手術器具の一つの実施形態の断面図である。
【図4】図4は、湾曲した眼科器具の一つの実施形態の図表示である。
【図5】図5は、曲がった眼科器具の一つの実施形態の図表示である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面と併せて以下の記述を参照することによって、本発明のより完全な理解及び利点が習得され、添付の図面において同様の参照番号は同様の特徴を示す。好ましい実施形態が図において示され、同様の番号は、概して、様々な図面の同様の又は対応する部分を参照するのに用いられる。
【0011】
本明細書において用いられるような、「具備する」、「具備している」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」といった表現、又はその他これらの変形表現は、非排他的な包含に及ぶことが意図される。例えば、要素のリストを具備する、処理、製品、物品、又は装置は、これら要素のみに必ずしも限定されるものではなく、リストされていることが明確ではない他の要素、又は斯かる処理、製品、物品、又は装置に特有ではない他の要素を含むことができる。更に、明確に反対のことが記載されていない限り、「又は」は、包含的な意味であって、排他的な意味ではない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか一つによって満たされる。すなわち、Aは真であり(又は存在し)且つBは偽である(又は存在しない)とき、Aは偽であり(又は存在せず)且つBは真である(又は存在する)とき、並びにA及びBは真である(又は存在する)ときである。
【0012】
加えて、本明細書において示されるあらゆる例又は説明は、例又は説明に利用されるあらゆる用語又は表現への抑制、限定、又はそれらの明確な定義としては決して見なされるべきでない。代わりに、これら例又は説明は、単なる例示として、一つの特定の実施形態に対して記述されていると見なされるべきである。これら例又は説明において利用されるあらゆる用語又は表現が、本明細書のその箇所において又は他の箇所において与えられ又は与えられないかもしれない、他の実施形態も網羅し、且つ斯かる全ての実施形態がこれら用語又は表現の範囲内に含まれることが意図されていることを当業者は理解するであろう。斯かる限定されるものではない例及び説明を指定する言葉として、「例えば」、「例として」、「例」、及び「一つの実施形態では」が含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
従来、外科職員が、眼から水晶体を取り除くために、注入スリーブ及び吸引チューブを中に備えた眼科器具を使用することがあった。また、外科職員は、シリコンから製造され且つ吸引流体のために中に穴を有するスリーブを使用した。外科職員は、吸引チューブの上にスリーブを滑らせ、その後、眼科手術のためにその器具を使用した。しかしながら、スリーブは、使用するのに困難なことが多かった。例えば、スリーブは裂けることがあり、このため、損傷したスリーブを取り除いて取り替えることが必要とされた。加えて、これらスリーブは、一旦、吸引チューブ上で吸引チューブから滑り落ちると、吸引チューブ上での取替えが必要とされた。さらに、これらスリーブは吸引チューブと注入チューブとの間の空間を部分的に満たすのみだったので、注入流体の一部が器具の遠位端部から漏れて前方の方向において眼内に移動することがあった。この状況は、外科職員が、典型的には、器具が器具の遠位端部から長手方向に物質を吸引しつつ注入流体を器具から垂直に差し向けることを好むので、望ましくないことがある。
【0014】
以下、図1を参照すると、眼科手術を受けている眼10の断面図が示される。図示された処置は白内障の摘出でありうる。眼10は、強膜12、視神経14、網膜16、水晶体18、水晶体嚢19、虹彩20、角膜22、及び瞳孔24を含む。通常、水晶体18は、角膜22及び瞳孔24を通る光を網膜16上に集光する。網膜16は、光を神経インパルスに変換して、その神経インパルスを視神経14に沿って脳に送る。虹彩20は、瞳孔24及び水晶体18を通る光の量を制御し、これによって、眼10が、変化する光のレベルに順応することを可能とする。水晶体嚢19は、水晶体18を所定位置に保持し、且つ、光が水晶体嚢19を通過することができるように透明である。このため、視神経14に沿って進む神経インパルスは、眼10に可視化可能な光景に相当する。
【0015】
しかしながら、様々な病気、状況、傷等によって、水晶体18が、眼10から水晶体18を摘出することが望ましいほど、曇り、透明でなくなること等がもたらされる場合がある。斯かる状況において、病気に冒された患者は、「白内障」を有していると言われることがある。水晶体18が眼10から取り除かれる(すなわち、白内障が摘出される)ときに、外科職員は水晶体18を人工水晶体に置き換えることが多く、これによって、病気に冒された患者に視力が復元される。(テキサス州フォートワースの)アルコンラボラトリーズインコーポレイティドがアクリソフ(登録商標)眼内レンズのような模範的な人工水晶体を提供する。外科職員は、水晶体18を取り除くために器具100を使用することがある。図1によって示されるように、器具100は、細長い注入スリーブ102、注入/吸引チップ104、及びハンドピース113を含むことができる。眼科用チューブ(ophthalmic tubing)115が、ハンドピース113において器具100に接続されて、注入/吸引機から器具100に注入流体を供給し、且つ、眼10から吸引される物質を注入機/吸引機に戻すことができる。ハンドピース113は、眼科用チューブ115と、注入スリーブ102及び注入/吸引チップ104との間に連通経路を提供することができる。加えて、ハンドピース113は注入スリーブ102と結合することができ且つ(1以上の内部部品を介して)注入/吸引チップ104と間接的に結合することができ、これによって、これら部品102及び104は、互いに対して固定された作動関係において保持される。
【0016】
外科職員は白内障を摘出すべく角膜22及び水晶体嚢19において切開創を作ることができる。外科職員は切開創を通して水晶体18内に器具100の注入/吸引チップ104を挿入することができる。外科職員は、器具100を使用して、注入/吸引チップ104から注入流体を水晶体18内に差し向けることができ、これによって、水晶体18は分離せしめられる。注入/吸引チップ104は、注入流体と、皮質と、水晶体18の分離せしめられた部分とを水晶体嚢19から引き込むことができる。その後、外科職員は、眼10から器具100を引き出し、眼10の水晶体嚢19内に人工水晶体を挿入して、切開創を閉じることができる。
【0017】
従来、斯かる処置の間、従来から入手可能な器具の表面上の微小なバリが水晶体嚢19に引っ掛かり且つ水晶体嚢19を切り裂くことがあった。さらに、従来から入手可能な器具から注入流体が前方に漏れることによって、水晶体嚢19からの物質の吸引が妨げられることがあった。前方への漏れは、様々な外科技術の効率を低下させ、且つ、斯かる技術を行うのに必要な時間を増加させうる。しかしながら、実施形態の器具100は、微小なバリが比較的ない滑らかな表面を有することができる。したがって、実施形態の器具100によって、様々な眼科技術のスピード及び効率を増加させつつ、微小なバリによってもたらされる水晶体嚢19の切裂をなくせないとしても減少させることができる。
【0018】
図2は、注入スリーブ102、注入/吸引チップ104、注入ポート106、吸引チューブ108、吸引ポート110、注入スリーブ102の遠位端部112、注入/吸引チップ104のフランジ114、注入/吸引チップ104の近位端部116、注入/吸引チップ104のテーパー部118、注入/吸引チップ104の遠位端部120、及び器具100の長手方向の軸線122を含む器具100を更に示す。吸引チューブ108は注入スリーブ102内において同軸上に収まることができ、吸引チューブ108及び注入スリーブ102はこれらそれぞれの近位端部においてハンドピース113(図1参照)に結合することができる。ハンドピース113は眼科用チューブ115(図1参照)から注入スリーブ102及び吸引チューブ108それぞれへの往復の連通路を提供することができる。したがって、注入流体は注入スリーブ102を通って遠位方向に差し向けられ且つ長手方向の軸線122に対して垂直な方向において注入ポート106を通って外側に差し向けられうる。注入/吸引チップ104の吸引ポート110は、例えば吸引チューブ108を介して注入/吸引機へ戻すために、その周囲(例えば図1の水晶体18)から物質を引き込むことができる。吸引ポート110が物質を引き込むことができる方向は、注入ポート106が流体を差し向ける方向に対して垂直でありうる。
【0019】
図3は器具100の一つの実施形態の断面図を示す。さらに、図3は、注入スリーブ102、注入経路103、灌流/吸引チップ104、吸引経路105、注入ポート106、吸引チューブ108、吸引経路109、吸引開口部110、注入スリーブ102の遠位端部112、注入/吸引チップ104のフランジ114、注入/吸引チップ104の近位端部116、注入/吸引チップ104のテーパー部118、注入/吸引チップ104の遠位端部120、長手方向の軸線122、及び吸引チューブ108の遠位端部124を示す。特に、図3は、吸引チューブ108の遠位端部124に結合され且つ適合する注入/吸引チップ104を示す。いくつかの実施形態では、注入/吸引チップ104は吸引チューブ108上にオーバーモールドされうる。注入/吸引チップ104の吸引経路105は吸引チューブ108の吸引経路109に整列し且つ対応することができる。いくつかの実施形態では、注入/吸引チップ104の吸引経路105は吸引ポート110を越えて遠位方向に延在することができる。注入/吸引チップ104の吸引経路105は吸引ポート110と連通することができ、このことによって、器具100は、吸引ポート110と、注入/吸引チップ104の吸引経路105と、吸引チューブ108の吸引経路109と(更に、廃棄のための眼科用チューブ115と)を通して、注入/吸引チップ104に概して近接した物質を吸引することができるようになる。吸引チューブ108の吸引経路109から吸引された物質は眼科用チューブ115(図1参照)を介して注入/吸引機(又は他の廃棄用システム)に戻されうる。
【0020】
注入/吸引チップ104のフランジ114は注入スリーブ102の遠位端部112に当接して注入スリーブ102の遠位端部112からの漏れに対して注入経路103をシールすることができる。注入/吸引チップ104は注入経路103内にいくらかの距離だけ延在することができ、このことによって、注入スリーブ102の内壁に対するシールも提供される。さらに、注入/吸引チップ104は、注入ポート106の一部に近接した位置まで注入スリーブ102内に延在することができ、これによって、注入経路103を通した流れがブロックされて、注入ポート106を通して外側に注入流体が差し向けられる。いくつかの実施形態では、注入スリーブ102の内面は注入ポート106の近くにおいて注入/吸引チップ104から離れる方向に先細にされることができ、これによって、注入/吸引チップ104を通過した、注入ポート106を通した流れが可能となる。いくつかの実施形態では、注入/吸引チップ104は、注入経路103内における圧力に関わらず、注入/吸引チップ104と注入スリーブ102の内壁との間における摩擦によって注入スリーブ102内に保持されうる。例えば、注入/吸引チップ104及び注入スリーブ102は、注入/吸引チップ104が注入スリーブ102内に挿入されるときに締まり嵌めを生成するように形成され且つ寸法が決められうる。代替的に、いくらかのクリアランスが注入/吸引チップ104と注入スリーブ102との間に存在しうる。いくつかの実施形態では、注入/吸引チップ104は、吸引チューブ108によってハンドピース113(図1参照)に間接的に結合されることができ、このことによって、注入スリーブ102内の圧力に関わらず注入スリーブ102内に留まることができるようになる。注入/吸引チップ104とハンドピース113との間接的な結合によって、注入/吸引チップ104は注入スリーブ102の遠位端部112に対して保持されることができ、このことによって、これら二つの部品104と102との間にシールが生成される。したがって、注入/吸引チップ104は長手方向の軸線122に沿った方向において注入流体が注入スリーブ102から漏れることを防ぐことができる。
【0021】
図3は、テーパー部118を含む注入/吸引チップ104も示す。テーパー部118は注入/吸引チップ104の近位端部116における直径を有することができ、この直径は注入スリーブ102の遠位端部112の直径とほぼ同一である。したがって、注入/吸引チップ104の外形は注入スリーブ102の外形に対応することができる。テーパー部118は、注入/吸引チップ104の近位端部116からいくらかの距離だけ、別のより小さな直径まで先細になりうる。このため、注入/吸引チップ104と注入スリーブ102との間の接合部(interface)は、滑らかであるので、眼10(図1参照)内への器具100の挿入に対して抵抗をほとんど与えず又は全く与えないことができる。テーパー部118の遠位端部からの注入/吸引チップ104の表面はおおよそテーパー部118から吸引ポート110のおおよそ遠位縁にかけて長手方向の軸線122に対して平行でありうる。
【0022】
注入/吸引チップ104は、様々なプラスチック、エラストマー等から形成されることができ、一方、注入スリーブ102及び吸引チューブ108は、ステンレス鋼、チタン、又はその他の生体適合性材料から形成されうる。いくつかの実施形態では、注入/吸引チップ104は(ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエルマテリアルサイエンス有限会社(Bayer MaterialScience L.L.C.)から入手可能な)マクロロン(登録商標)2558のようなプラスチック材料から作られる。したがって、注入/吸引チップ104は、シャープな縁、微小なバリ等がない滑らかな表面を有することができる。したがって、様々な実施形態の注入/吸引チップ104は水晶体嚢19の切裂を回避することができ、このことによって、患者の回復が早められ、且つ、所定の眼科手術処置に関連した患者の不快感が低減される。
【0023】
さらに、器具100は外科職員によって迅速に組み立てられうる。器具100は、(上にオーバーモールドされた注入/吸引チップ104を備える)吸引チューブ108を注入スリーブ102内に摺動することによって組み立てられうる。注入/吸引チップ104が注入スリーブ102の遠位端部112に接近するとき、外科職員は注入/吸引チップ104と注入スリーブ102の遠位端部112とを整列させることができる。外科職員は注入/吸引チップ104を注入経路103内に押すことができ、これによって注入スリーブ102の遠位端部112はシールされる。外科職員は、所望のとき、ハンドピース113、眼科用チューブ115等(図1参照)に注入スリーブ102及び吸引チューブ108を接続することができる。
【0024】
外科職員は眼10の付近に器具100を誘導して注入/吸引チップ104の遠位端部120を眼10内の切開創内に挿入し始めることができる。注入/吸引チップ104が眼10に入るとき、注入/吸引チップ104の滑らかな表面は、水晶体嚢19が切り裂かれることなく、さもなければ眼10が傷つけられることなく、注入/吸引チップが衝突する組織を逸らすことができる。また、外科職員が眼10内に器具100を前進させるとき、テーパー部118も、水晶体嚢19が切り裂かれることなく、さもなければ眼10が傷つけられることなく、組織を逸らすことができる。したがって、外科職員は白内障及び所望の他の組織を摘出すべく器具100を操作することができる。所望のとき、外科職員は眼10から器具100を引き出すことができる。
【0025】
外科職員は器具100を分解して注入/吸引チップ104及び吸引チューブ108を廃棄することができる。注入/吸引チップ104及び吸引チューブ108は製造するのが比較的安価であり、このことによって、注入/吸引チップ104及び吸引チューブ108の斯かる単回使用が可能となる。したがって、実施形態では、外科職員が様々な外科処置後に注入/吸引チップ104及び吸引チューブ108を清潔にし且つ殺菌する必要性が軽減される。さらに、注入/吸引チップ104及び吸引チューブ108は予め殺菌されることができるので、外科職員が、所定の眼科手術処置の前に、(注入スリーブ102と注入/吸引チップ104との間に存在しうる任意の割れ目(crevice)を含む)注入/吸引チップ104及び吸引チューブ108を清潔にし且つ殺菌する必要性が様々な実施形態によって軽減されうる。
【0026】
前述の実施形態では、外科器具は概して真っ直ぐな外形を有する。一方、図4では、手術器具300が、湾曲した外形を有することができる。図4では、器具300は、吸引スリーブ302と、注入/吸引チップ304と、ハンドピースへの取付けのための取付部306とを含むことができる。吸引チューブ302の湾曲した半径部分は、吸引チューブ302の全長又は長さの一部だけに延在せしめられるように選択されうる。吸引チューブ302の1以上の区域が、チューブが湾曲しているときに真っ直ぐなままでありうる。図5において示されるように、湾曲区域は比較的小さく且つ小さな半径を有してもよく、一方、吸引チューブ302の残部は、曲がった外観を器具に与えるべく真っ直ぐなままである。例えば、真っ直ぐな部分は取付部306から湾曲区域まで延びることができ、別の真っ直ぐな部分は湾曲区域から注入/吸引チップ304まで延びることができる。他の実施形態では、曲がった外形は真っ直ぐな区域間の湾曲していない接合部を使用して実現されうる。
【0027】
本開示が特定の実施形態を参照して記述されてきたが、実施形態が例示的であり且つ発明の範囲がこれら実施形態に制限されるものではないことが理解されるべきである。上述された実施形態に対する、多くの変更、修正、付加、及び改良が可能である。これら変更、修正、付加、及び改良が、以下の特許請求の範囲において詳細に述べられるような本発明の範囲内に含まれると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術器具であって、
細長い本体を具備する注入スリーブであって、注入経路を画成し、且つ、近位端部と、遠位端部と、前記細長い本体の長さに沿った長手方向の軸線とを有する注入スリーブと、
吸引経路を画成する吸引チューブであって、近位端部及び遠位端部を有し且つ前記注入経路内に定置される吸引チューブと、
前記吸引チューブの遠位端部に結合され且つ適合する、プラスチックから形成された注入/吸引チップであって、前記吸引チューブ上にオーバーモールドされる注入/吸引チップと
を具備する、眼科手術器具。
【請求項2】
隙間が前記注入スリーブの遠位端部と前記吸引チューブの遠位端部との間に存在し、前記注入/吸引チップが前記隙間をシールする、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記注入/吸引チップがテーパー部を画成する、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記注入スリーブが、前記長手方向の軸線に対して垂直な第1方向に前記注入経路から注入流体を差し向けるように方向付けられた注入ポートを画成する、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記注入/吸引チップが、前記長手方向の軸線に対して垂直な第2方向において周囲から物質を引き込むように方向付けられた吸引ポートを画成し、前記第1方向と前記第2方向とが互いに対して垂直である、請求項4に記載の器具。
【請求項6】
前記吸引チューブが吸引経路を画成し、前記注入/吸引チップが、前記吸引ポートを越えて遠位方向に延在する前記吸引経路の延長部を画成する、請求項5に記載の器具。
【請求項7】
前記注入/吸引チップが、前記長手方向の軸線に沿った方向において、前記注入ポートに近接した位置まで延在する、請求項4に記載の器具。
【請求項8】
眼科手術器具であって、
細長い本体を具備する注入スリーブであって、注入経路を画成し、近位端部と、遠位端部と、前記細長い本体の長さに沿った長手方向の軸線とを有し、前記長手方向の軸線に対して垂直な第1方向に前記注入経路から注入流体を差し向けるように方向付けられた注入ポートを画成する注入スリーブと、
吸引経路を画成する吸引チューブであって、近位端部及び遠位端部を有し且つ前記注入経路内に定置される吸引チューブと、
注入/吸引チップであって、当該注入/吸引チップが、テーパー部を画成し、且つ、前記吸引チューブの遠位端部に結合され且つ適合し、隙間が前記注入スリーブの遠位端部と前記吸引チューブの遠位端部との間に存在し、当該注入/吸引チップが、前記隙間をシールし、且つ、前記長手方向の軸線に対して垂直な第2方向において周囲から物質を引き込むように方向付けられた吸引ポートを画成し、前記第1方向と前記第2方向とが互いに対して垂直であり、前記吸引チューブが吸引経路を画成し、当該注入/吸引チップが、前記吸引ポートを越えて遠位方向に延在する前記吸引経路の延長部を画成し、且つ、前記長手方向の軸線に沿った方向において、前記注入ポートに近接した位置まで延在する、注入/吸引チップと
を具備する、眼科手術器具。
【請求項9】
眼科手術器具に結合されるべき単回使用の使い捨て可能な部品であって、前記器具が、細長い本体を具備する注入スリーブであって、注入経路を画成し、且つ、近位端部と、遠位端部と、前記細長い本体の長さに沿った長手方向の軸線とを有する注入スリーブを含み、当該部品が、
吸引経路を画成する吸引チューブであって、近位端部及び遠位端部を有し且つ前記注入経路内に定置されるべき吸引チューブと、
前記吸引チューブの遠位端部に結合され且つ適合する、プラスチックから形成された注入/吸引チップであって、前記吸引チューブ上にオーバーモールドされる注入/吸引チップとを具備する、単回使用の使い捨て可能な部品。
【請求項10】
前記使い捨て可能な部品が前記器具に結合されるとき、隙間が前記注入スリーブの遠位端部と前記吸引チューブの遠位端部との間に存在し、前記注入/吸引チップが前記隙間をシールする、請求項9に記載の使い捨て可能な部品。
【請求項11】
前記注入/吸引チップがテーパー部を画成する、請求項9に記載の使い捨て可能な部品。
【請求項12】
前記注入スリーブが、前記長手方向の軸線に対して垂直な第1方向に前記注入経路から注入流体を差し向けるように方向付けられた注入ポートを画成する、請求項9に記載の使い捨て可能な部品。
【請求項13】
前記注入/吸引チップが、前記長手方向の軸線に対して垂直な第2方向において周囲から物質を引き込むように方向付けられた吸引ポートを画成し、前記使い捨て可能な部品が前記器具に結合されるときに前記第1方向と前記第2方向とが互いに対して垂直である、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記吸引チューブが吸引経路を画成し、前記注入/吸引チップが、前記吸引ポートを越えて遠位方向に延在する前記吸引経路の延長部を画成する、請求項13に記載の使い捨て可能な部品。
【請求項15】
前記使い捨て可能な部品が前記器具に結合されるとき、前記注入/吸引チップが、前記長手方向の軸線に沿った方向において、前記注入ポートに近接した位置まで延在する、請求項12に記載の使い捨て可能な部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−508612(P2012−508612A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536360(P2011−536360)
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/060315
【国際公開番号】WO2010/056448
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)