説明

遠隔操作棒の先端連結工具およびこれを用いた遠隔操作取付工法

【課題】被取付器具を安定、且つ確実に支持できるとともに、大きな操作力を要することなく容易に被取付器具から取り外すことができる先端連結工具およびこの先端連結工具を用いて被取付器具を電線などに安定、且つ確実に取り付けることができる取付工法を提供する。
【解決手段】外周面にねじ溝7が形成された工具基体部4と、操作軸12が外方に突設されてねじ溝7に螺合された固定ねじ11と、工具基体部4の一端側に連設され、遠隔操作棒2に対しこれの先端に一体回転可能に連結される操作棒側連結部6と、工具基体部4の他端側に設けられ、被取付器具3のジョイント部材33の内部に回転自在に嵌入される器具側連結部10と、器具側連結部10の外面に突設され、ジョイント部材33に形成された垂直溝37a、水平溝37bおよび止端溝37cが連続する係合スリット37に係脱する係合軸13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作棒の先端に連結されて、接続クランプ器具や電線把持器などの汎用の被取付器具を遠隔操作により主に電線などに取り付ける用途に用いられる遠隔操作棒の先端連結工具およびこの工具を用いた遠隔操作取付工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、架線の配線工事などの電設作業は、既設架線である高圧線に電源を供給した活線状態で行われることが多い。これは、上記電設作業を行う高圧線の電源供給側回路を遮断した状態で配線工事を行うと、その工事中に広範囲の電力需要者に停電の影響が及ぶからである。このような電設作業は、一般に以下のような手順で行われる。すなわち、先ず、空中に架線された被覆電線の所要箇所を切断したのち、その切断により分離された一方の停電側の被覆電線に、開閉器を介設したバイパス用リードケーブルの一端を電気的に接続するとともに、そのリードケーブルの他端側を接続クランプ器具に電気的接続状態に連結する。続いて、接続クランプ器具は、地上または作業車上からの遠隔操作棒を用いた遠隔操作により、上記分離された他方の活線側の被覆電線に取り付けられる。このとき、接続クランプ器具はリードケーブルを被覆電線の芯線に電気的接続する状態に取り付けられる。これにより、リードケーブルが停電側および活線側の両被覆電線を互いに電気的接続してバイパスする。
【0003】
上記接続クランプ器具を遠隔操作棒を用いた遠隔操作により被覆電線に取り付ける作業について、これの理解を容易にするための説明の便宜上、本発明の一実施形態を示す図2および図4を参照しながら説明する。図4において、接続クランプ器具には、これの接続端子部29にリードケーブル30の端部が針状電極部である接触刃24に電気的接続状態に取り付けられている。この接続クランプ器具の下端部には、有頭円筒体に係合スリット37が形成された汎用のジョイント部材33が設けられている。前記係合スリット37は、端部開口からジョント部材33の軸心に沿って延びる垂直溝37aと、この垂直溝37aの上端からジョイント部材33の円周方向に延びる水平溝37bと、この水平溝37bの端部からジョイント部材33の軸心方向に沿って端部側に延出する止端溝37cとが連続的に形成されたものである。一方、図2に示すように、先端連結工具1には、接続クランプ器具に連結する器具側連結部10に、上記係合スリット37に摺動自在に挿入する径を有する係合軸13部と、圧縮コイルばね17により突出方向に常時付勢されて出入自在に設けられたスライダー14とを有している。
【0004】
そして、接続クランプ器具を活線側の被覆電線に取り付けてリードケーブル30を被覆電線の芯線に電気的接続するに際しては、先ず、先端連結工具1の係合軸13を、係合スリット37に挿入して図4の矢印で示すように摺動させながら、止端溝37cに嵌め入れる。このとき、スライダー14は、ジョイント部材33の天板部(図示せず)に当接したのち圧縮コイルばね17を圧縮させながら器具側連結部10に没入されるので、係合軸13が、圧縮された圧縮コイルばね17の復元力によって止端溝37c内に保持される。これにより、接続クランプ器具が先端連結工具1を介して遠隔操作棒2の先端に取り付けられる。この状態で遠隔操作棒2により接続クランプ器具がリードケーブル30の接続位置まで持ち上げられたのち、遠隔操作棒2による遠隔操作により、接続クランプ器具の電線保持溝28aに被覆電線を嵌め込ませ、続いて、遠隔操作棒2を回転操作して接続クランプ器具の接触刃28を上昇させることにより、この接触刃28を被覆電線の絶縁被覆材を貫通して芯線に接触させ、接触刃28と芯線との電気的導通を得る。これにより、接続クランプ器具は、リードケーブル30を芯線に電気的接続させた状態で被覆電線に取り付けられる。
【0005】
上述のようにして接続クランプ器具の取り付けが終了したならば、遠隔操作棒2を上述の取り付け時とは逆の手順に操作して、係合軸13を係合スリット37から抜脱することにより、先端連結工具1が接続クランプ器具から取り外される。これにより、リードケーブル30が停電側および活線側の両被覆電線を互いに電気的接続してバイパスした状態となるので、開閉器を投入することにより、停電側の被覆電線も活線状態となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の先端連結工具は、圧縮コイルばね17の圧縮による復元力により係合軸13を係合スリット37における止端溝37cに保持させることで接続クランプ器具との連結を保って支持されているだけである。そのため、遠隔操作棒2による遠隔操作で接続クランプ器具を被覆電線に取り付ける作業を行うに際しては、接続クランプ器具がぐらつく不安定な状態で先端連結工具に支持されているため、操作が容易でないから、手間取って時間を要する問題がある。また、先端連結工具に重量の大きな被取付器具3を取り付ける場合には、被取付器具3が自量により僅かに下降したときに、係合軸13が係合スリット37の止端溝37cから抜け出して、接続クランプ器具の支持が一層不安定となるので、ときには接続クランプ器具が電線から脱落することがある。
【0007】
上記問題を解消するために、圧縮コイルばね17のばね力を強く設定することが考えられるが、そのようにした場合には、接続クランプ器具を電線に取り付けたのちに先端連結工具を接続クランプ器具から取り外すに際して、係合軸13を止端溝37cから抜き出すときに、強いばね力の圧縮コイルばね17を圧縮させるために大きな押し上げ操作力を必要とするだけでなく、その大きな押し上げ力を保持したまま遠隔操作棒2を回転操作して係合軸13を水平溝37bを介して垂直溝37aの端部まで変位させる必要があるので、取り外し操作が困難となる。しかも、先端連結工具を大きな押し上げ力で接続クランプ器具に押し付けた状態で遠隔操作棒2により先端連結工具を回すので、接続クランプ器具が先端連結工具と共回りして、接続クランプ器具の電線に対する取付力が緩んでしまい、接続クランプ器具の電線への取付状態が不安定になる。
【0008】
本発明は前記従来の課題に鑑みてなされたもので、被取付器具を安定、且つ確実に支持できるとともに、大きな操作力を要することなく容易に被取付器具から取り外すことができる先端連結工具およびこの先端連結工具を用いて被取付器具を電線などに安定、且つ確実に取り付けることができる取付工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明の遠隔操作棒の先端連結工具は、遠隔操作棒の先端に連結されて被取付器具が着脱自在に取り付けられるものであって、外周面にねじ溝が形成された工具基体部と、操作軸が外方に突設されて前記ねじ溝に螺合された固定ねじと、前記工具基体部の一端側に連設され、前記遠隔操作棒に対しこれの先端に一体回転可能に連結される操作棒側連結部と、前記工具基体部の他端側に連設され、前記被取付器具のジョイント部材の内部に回転自在に嵌入される器具側連結部と、前記器具側連結部の外面に突設され、前記ジョイント部材に形成された垂直溝、水平溝および止端溝が連続する係合スリットに係脱する係合軸とを備え、前記固定ねじの締結により、この固定ねじと前記係合軸とにより前記ジョイント部材を挟み付けて前記被取付器具を固定することを特徴としている。
【0010】
請求項2に係る発明の先端連結工具を用いた遠隔操作取付工法は、請求項1に係る発明の先端連結工具を用いて被取付器具を電線などの取付対象物に遠隔操作棒による遠隔操作により取り付ける遠隔操作取付工法であって、前記先端連結工具の操作棒側連結部を、前記遠隔操作棒の先端に一体回転可能に連結する工程と、前記先端連結工具の器具側連結部を前記被取付器具のジョイント部材内に嵌入し、且つ前記器具側連結部の係合軸を前記被取付器具の係合スリットの止端溝に嵌入させたのちに、操作軸による回転操作で固定ねじを前記ジョイント部材の端部に押し当てて締結することにより、前記係合軸と前記固定ねじとにより前記ジョイント部材を挟み付けて前記先端連結工具に前記被取付器具を固定する工程と、前記遠隔操作棒により前記被取付器具を持ち上げて、前記被取付器具を前記取付対象物に前記遠隔操作棒の回転操作により取り付ける工程と、棒状体により前記固定ねじの前記操作軸を叩く操作により前記固定ねじを緩めたのち、前記遠隔操作棒の遠隔操作により前記係合軸を前記係合スリットから抜脱させて前記先端連結工具を前記被取付器具から取り外す工程とを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、遠隔操作棒の先端に取り付けた先端連結工具の係合軸を、被取付器具におけるジョイント部材の係合スリットの垂直溝および水平軸を介して止端溝内に嵌入させて、被取付器具を仮固定した状態とし、操作軸により固定ねじを回転操作してジョイント部材の下端面に圧接状態に締め付けると、被取付器具のジョイント部材が係合軸と固定ねじとにより挟み付けられて、被取付器具を、先端連結工具に対しぐらつくおそれのない強固な結合状態で安定に連結できるので、重量の大きな被取付器具を取り付ける場合であっても、この被取付器具を先端連結工具に確実、且つ安定に支持できる状態に取り付けることができる。したがって、遠隔操作棒による遠隔操作で被取付器具を被覆電線などに取り付けるに際しては、その取り付けのための遠隔操作を容易に行えるので、手間を要することなく短時間で作業を終了して、被取付器具を電線などに脱落することのない安定な状態に取り付けできる。また、先端連結工具を被取付器具から取り外すに際しても、操作棒により固定ねじを緩めることにより、先端連結工具と被取付器具との連結ロック状態を解除できるので、大きな操作力を要することなく、係合軸を係合スリットから容易に抜脱して取り外すことができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、被取付器具を取付対象物に取り付けたのち、先端連結工具を被取付器具から取り外すに際しては、先端連結工具の操作軸を、固定ねじが緩む方向に棒状体で叩くように操作すれば、固定ねじが緩んで先端連結工具と被取付器具との連結ロック状態を解除できるので、遠隔操作棒を操作して、係合軸を、係合スリットの止端溝から水平溝を通って垂直溝から抜き出すことにより、先端連結工具を被取付器具から簡単に取り外しできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1および図2は本発明の一実施形態に係る先端連結工具1を示す平面図および正面図である。この先端連結工具1は、図3において後述する遠隔操作棒2の先端に連結されて、図4において後述する被取付器具3を支持しながら被覆電線に取り付ける用途に用いられるものである。この先端連結工具1は、円筒状の外体の外周面にねじ溝7が形成された工具基体部4と、この工具基体部4の一端(図の下端)にストッパ部8を介在して連設された操作棒側連結部6と、この操作棒側連結部6に設けられた連結プラグ9と、径方向両側から操作軸12が突設されてねじ溝7に自体の雌ネジ部(図示せず)が螺合された固定ねじ11と、工具基体部4の他端(図の上端)に連設された器具側連結部10と、器具側連結部10の径方向両側から突設された係合軸13と、器具側連結部10の他端部(図の上端部)に出入自在に設けられたスライダー14と、このスライダー14を突出方向に付勢する圧縮コイルばね17とを備えて構成されている。スライダー14は、通常時、圧縮コイルばね17の付勢力によりストッパピン18が器具側連結部10の外体の内面に当接した状態に保持されている。
【0014】
この先端連結工具1は、図3に示す遠隔操作棒2の先端に連結して用いられるものである。遠隔操作棒2は、周知のものであるので、簡単に説明すると、全体として電気絶縁製素材により形成された棒状を呈し、下端部に設けられた回転操作部19と、作業員が一方の手で把持するためのグリップ部20と、このグリップ部20の上端に設けられた鍔部21と、この鍔部21と先端との中間部に設けられた雨覆22とを備えている。上記回転操作部19には、回転量が予め設定されるトルクリミッター(図示せず)が装備されているとともに、この遠隔操作棒2の内部には回転操作部19と一体回転する回転部材が収容されている。
【0015】
上記遠隔操作棒2の先端に先端連結工具1を連結するに際しては、遠隔操作棒2の上端開口から先端連結工具1の操作棒側連結部6を挿入させて、図2に2点鎖線で示すように、遠隔操作棒2の上端面を先端連結工具1のストッパ部8に当接させた時点で、遠隔操作棒2に内装された上記回転部材が連結プラグ9に一体回転可能に連結されて、先端連結工具1が遠隔操作棒2の先端に取り付けられる。この連結状態では、遠隔操作棒2の回転操作部19を何れかの方向に回転操作すると、その回転操作方向に先端連結工具1の全体が一体回転されるようになっている。
【0016】
続いて、先端連結工具1に取り付ける被取付器具3について説明する。被取付器具3としては、種々のものが先端連結工具1の取付対象となるが、この実施形態では、被取付器具3として、バイパス線用のリードケーブルを活線側の被覆電線に電気的導通状態で機械的に取り付ける用途に用いられる接続クランプ器具を例示してある。この接続クランプ器具からなる被取付器具3は、図4に示すように、ほぼC字状の形状となったクランプ本体23の下方箇所に、後述する被覆電線の絶縁被覆材を貫通する接触刃24を装備した可動接触台27が配置されている。接触刃24は断面正三角形の三角柱形状を有している。クランプ本体23の上部には、接触刃24と相対向する配置で電線保持部28が設けられており、この電線保持部28には、保持すべき被覆電線の直径にほぼ等しい径の半円部分を有するほぼU字形状の電線保持溝28aが形成されている。この電線保持溝28aは、これに嵌め入れられた被覆電線の外周面に密着する圧着状態で面接触して、被覆電線を動かないように確実に保持できる形状になっている。
【0017】
上記可動接触台27には、その一端部(図4の右端部)から斜め下方に向け延出した接続端子部29が一体形成されており、この接続端子部29にバイパス用リードケーブル30の端部が電気的接続状態で取り付けられている。このように、リードケーブル30は、接続端子部29に取り付けられることにより、可動接触台27の内部配線を通じて接触刃24に電気的に導通状態となる。
【0018】
上記可動接触台27の底部には、クランプ本体23の下端基部のねじ孔23aに螺合したねじ軸31の頭部が回転可能に接続されている。一方、クランプ本体23には、ねじ軸31と平行に延びるスライドガイド部23bが設けられており、このスライドガイド部23bに、可動接触台27の他端部(図4の左端部)から延設された係合腕部32がスライド可能に係合している。これにより、ねじ軸31が回転されたときには、可動接触台27が、回転することなしにスライドガイド部23bに沿って図の上下方向に移動されるので、接触刃24は、電線保持溝28aに対し接近方向または離間方向に移動される。
【0019】
上記ねじ軸31の下端部は、本体部分が有頭円筒状となったジョイント部材33に対し固定ねじ34により固定されている。このジョイント部材33の有頭円筒状の本体部分には、係合軸13が挿抜される係合スリット37が形成されている。この係合スリット37は、係合軸13の直径よりも僅かに大きな幅を有し、下端からジョイント部材33の軸心に沿って延びる垂直溝37aと、この垂直溝37aの上端からジョイント部材33の円周方向に延びる水平溝37bと、この水平溝37bの溝端から垂直溝37aと平行に下方に延びる止端溝37cとが連続して形成されている。なお、図2に示すように、先端連結工具1は、器具側連結部10の径方向両側からそれぞれ突設された2つの係合軸13を有しているので、これに対応して、被取付器具3のジョイント部材33にも、これの径方向両側に図4に示したと同形状の係合スリット37がそれぞれ形成されている。
【0020】
つぎに、上記先端連結工具1を先端に連結した遠隔操作棒2による遠隔操作により被取付器具3を被覆電線に取り付ける工法について説明する。先ず、先端連結工具1の操作棒側連結部6を遠隔操作棒2に対し上端開口から挿入させて、遠隔操作棒2の上端面を操作棒側連結部6のストッパ部8に当接させると、遠隔操作棒2に内装された回転部材が連結プラグ9に一体回転可能に連結されることにより、図3に示すように、先端連結工具1を遠隔操作棒2の先端に連結する。
【0021】
続いて、地上において、図4の矢印で示すように、遠隔操作棒2の先端に取り付けた先端連結工具1の係合軸13を、被取付器具3におけるジョイント部材33の係合スリット37の垂直溝37aに沿わせて挿入しながら、器具側連結部10をジョイント部材33内に嵌入させ、係合軸13が垂直溝37aの上端に達したのち、水平溝37bに沿って移動するように被取付器具3または先端連結工具1を相対回転させ、係合軸13が水平溝37bの左端に達した時点で、先端連結工具1をジョイント部材33へ挿入している操作力を緩めると、図2の圧縮コイルばね17を圧縮させながら器具側連結部10内に没入されているスライダー14が圧縮コイルばね17の復元力で器具側連結部10から突出される力を受けて、係合軸13が止端溝37c内に自動的に押し込まれたのち、この状態に保持される。これにより、図5に示すように、被取付器具3が先端連結工具1に仮固定された状態となる。
【0022】
上記被取付器具3を仮固定した状態において、操作軸12により固定ねじ11を回転操作することにより、固定ねじ11を、ねじ軸31に沿って上方へ螺進させて、図5に示すように、ジョイント部材33の下端面に圧接状態に締め付ける。したがって、被取付器具3は、ジョイント部材33の下部が係合軸13と固定ねじ11とにより上下から挟み付けられて、先端連結工具1に対し、ぐらつくおそれのない強固な結合状態で安定に連結されるので、被取付器具3が重量の大きなものであっても、この被取付器具3を先端連結工具1に確実、且つ安定に支持できる状態に取り付けることができる。
【0023】
上述のように、遠隔操作棒2の先端に先端連結工具1を介して被取付器具3を取り付けたならば、遠隔操作棒2を持ち上げて、図5に示すように、被取付器具3の電線保持溝28a内に、接続端子部29に接続しているリードケーブル30を接続すべき被覆電線39を嵌入させるように遠隔操作棒2を操作して、被覆電線39に引っ掛ける。続いて、図3の遠隔操作棒2の下端の回転操作部19を把持して正方向に回転操作すると、この回転が、遠隔操作棒2に収容されている回転部材、先端連結工具および被取付器具3のジョイント部材33を介してねじ軸31に伝達される。そのため、ねじ軸31は、クランプ本体23に対し、ねじ孔23aから上方へ突出する相対方向に移動されていくので、このねじ軸31の上端が回転自在に支持されている可動接触台27が上昇されて接触刃24が被覆電線39に向かって進んでいく。
【0024】
そして、図6に示すように、接触刃24の刃先は、被覆電線39の絶縁被覆材39bに切り込んでいき、やがて芯線39aに接触して電気的に導通する。このとき、遠隔操作棒2の回転操作部19をこれに内蔵されたトルクリミッターが「カチッ」と音がなるまで回転操作して締め付けることにより、接触刃24と芯線39aとの確実な電気的導通を得ることができる。これにより、一端が停電側の被覆電線に予め接続されたリードケーブル30は、その他端側が活線側の被覆電線39に接続されるので、リードケーブル30が、切断して分離した両側の被覆電線39を互いに接続するバイパス線となる。
【0025】
続いて、先端連結工具1を被取付器具3から取り外すに際しては、図6に示すように、先端連結工具1の何れか一方の操作軸12を、固定ねじ11が緩む方向に棒状体40で叩くように操作して、2本の操作軸12を棒状体で交互に同じ方向に叩く操作を繰り返す。この結果、図7に示すように、固定ねじ11が緩んで先端連結工具1と被取付器具3との連結ロック状態が解除される。続いて、図8に示すように、遠隔操作棒2を操作して、係合軸13を、係合スリット37の止端溝37cから水平溝37bを通って垂直溝37aから抜き出すと、先端連結工具1が被取付器具3から外れる。この取り外し操作時には、図2の圧縮コイルばね17のばね力が係合軸13を止端溝37cに保持するように作用しているが、この先端連結工具1は、従来工具のように圧縮コイルばね17のばね力で被取付器具3を保持するものとは異なり、固定ねじ11の締結により被取付器具3を強固に連結して支持する構造になっているから、圧縮コイルばね17は弱いばね力に設定されており、先端連結工具1の被取付器具3から取り外し操作に際し大きな操作力を必要とせず、容易に取り外しできる。
【0026】
上記実施形態の先端連結工具1は、既存の先端連結工具に対して、工具基体部4にねじ溝7を形成して、このねじ溝7に固定ねじ11を螺合させる改造を行うことで安価に製作することができる。そのため、上記実施形態では、既存の先端連結工具が有する圧縮コイルばね17およびスライダー14をそのまま残存した場合を例示しているが、この圧縮コイルばね17およびスライダー14は、固定ねじ11の締結により被取付器具3を強固に連結して支持できることから、除外することもできる。除外した場合には、構成の簡素化に伴ってコストダウンを図ることができるとともに、係合軸13を係合スリット37に対し係合および係合解除する際にばね力が作用しないことから、先端連結工具1の被取付器具3に対する取り付けおよび取り外しの操作が一層容易となる利点がある。
【0027】
なお、上記実施形態では、被取付器具3として、接触刃24を有する接続クランプ器具を用いる場合を例示して説明したが、本発明の先端連結工具1は、被覆電線39の絶縁被覆材39bを所定長さだけ剥がして露出させた芯線39aに固定ダイスと可動ダイスを挟着させて電気的導通を得るタイプの接続クランプ器具や電線把持器などを被取付器具の対象として用いる場合にも適用することができる。但し、その場合、それらの被取付器具には、垂直溝37a、水平溝37bおよび止端溝37cが連続形成されてなる係合スリット37を有する汎用のジョイント部材33を備えていることが条件となる。また、係合スリット37は、図4に2点鎖線で示すように、垂直溝37a、水平溝37bおよび止端溝37cを線対象に一対ずつ備えたほぼT字形状とすることもでき、その場合、取付時において、先端連結工具1または被取付器具3を相対回転させるときの回転方向が任意となる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、係合軸を被取付器具におけるジョイント部材の係合スリットに嵌入させて被取付器具を仮固定したのちに、操作軸により固定ねじを回転操作してジョイント部材の下端面に圧接状態に締め付けることにより、被取付器具のジョイント部材を係合軸と固定ねじとにより挟み付けて被取付器具をぐらつくおそれのない強固な結合状態で安定に連結できる構成を有しているので、重量の大きな被取付器具を取り付ける場合であっても、この被取付器具を確実、且つ安定に支持できる状態に取り付けることができるとともに、被取付器具から取り外すに際しても、操作棒により固定ねじを緩めることにより、先端連結工具と被取付器具との連結ロック状態を解除できるので、大きな操作力を要することなく、係合軸を係合スリットから容易に抜脱して取り外すことができる顕著な効果を奏する先端連結工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る先端連結工具を示す平面図
【図2】同上の先端連結工具を示す正面図
【図3】同上の先端連結工具を遠隔操作棒に連結した状態の正面図
【図4】同上の先端連結工具に被取付器具を取り付ける際の相対位置を示す正面図
【図5】同上の先端連結工具に被取付器具を取り付けた状態の正面図
【図6】同上の被取付器具を被覆電線に電気的導通状態で取り付けた状態の正面図
【図7】同上の先端連結工具と被取付器具との連結ロック状態を解除した状態の正面図
【図8】同上の先端連結工具を被取付器具から取り外した状態の正面図
【符号の説明】
【0030】
1 先端連結工具
2 遠隔操作棒
3 被取付器具
4 工具基体部
6 操作棒側連結部
7 ねじ溝
10 器具側連結部
11 固定ねじ
12 操作軸
13 係合軸
33 ジョイント部材
37 係合スリット
37a 垂直溝
37b 水平溝
37c 止端溝
39 被覆電線(取付対象物)
40 棒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作棒の先端に連結されて被取付器具が着脱自在に取り付けられる先端連結工具であって、
外周面にねじ溝が形成された工具基体部と、
操作軸が外方に突設されて前記ねじ溝に螺合された固定ねじと、
前記工具基体部の一端側に連設され、前記遠隔操作棒に対しこれの先端に一体回転可能に連結される操作棒側連結部と、
前記工具基体部の他端側に連設され、前記被取付器具のジョイント部材の内部に回転自在に嵌入される器具側連結部と、
前記器具側連結部の外面に突設され、前記ジョイント部材に形成された垂直溝、水平溝および止端溝が連続する係合スリットに係脱する係合軸とを備え、
前記固定ねじの締結により、この固定ねじと前記係合軸とにより前記ジョイント部材を挟み付けて前記被取付器具を固定することを特徴とする遠隔操作棒の先端連結工具。
【請求項2】
請求項1に記載の先端連結工具を用いて被取付器具を電線などの取付対象物に遠隔操作棒による遠隔操作により取り付ける遠隔操作取付工法であって、
前記先端連結工具の操作棒側連結部を、前記遠隔操作棒の先端に一体回転可能に連結する工程と、
前記先端連結工具の器具側連結部を前記被取付器具のジョイント部材内に嵌入し、且つ前記器具側連結部の係合軸を前記被取付器具の係合スリットの止端溝に嵌入させたのちに、操作軸による回転操作で固定ねじを前記ジョイント部材の端部に押し当てて締結することにより、前記係合軸と前記固定ねじとにより前記ジョイント部材を挟み付けて前記先端連結工具に前記被取付器具を固定する工程と、
前記遠隔操作棒により前記被取付器具を持ち上げて、前記被取付器具を前記取付対象物に前記遠隔操作棒の回転操作により取り付ける工程と、
棒状体により前記固定ねじの前記操作軸を叩く操作により前記固定ねじを緩めたのち、前記遠隔操作棒の遠隔操作により前記係合軸を前記係合スリットから抜脱させて前記先端連結工具を前記被取付器具から取り外す工程とを有していることを特徴とする先端連結工具を用いた遠隔操作取付工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−148401(P2008−148401A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330178(P2006−330178)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)