説明

遠隔操作棒セット

【課題】種々の遠隔作業に適応させることができるにもかかわらず、遠隔操作棒の数を減らし、また、準備しなければならない遠隔操作棒全体の嵩だかさを減らすことができる遠隔操作棒セットを提供する。
【解決手段】複数種類の基端側操作棒1、2、3と、いずれの基端側操作棒に対してもその先端に着脱可能に取付けられる1種類の先端側操作棒5と、先端側操作棒5の先端に着脱可能に取付けられる工具6、7とからなる遠隔操作棒セットである。複数種類の基端側操作棒は、少なくとも、第1種〜第3種の基端側操作棒を含んでいる。第1種基端側操作棒1と第2種基端側操作棒2は、一重パイプからなり、両者間には長さに長短の差がある。第3種基端側操作棒3は、二重パイプからなり、内側のパイプは、回転可能に外側のパイプに支持されると共に、回転力を受け入れる回転力入力部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線配設工事などで使われる遠隔操作棒セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線配設工事には、種々の工事があり、これを遠隔操作するために、先端に各種工具を取付けた遠隔操作棒が使用されている。
【0003】
例えば、電柱や鉄塔に配設された変圧器、架線係止具等の取付金具を、作業車や地上から遠隔操作で、締付けたり、緩めたりするのに、先端に回転部係止用フック工具やドライバー工具が取付けられた遠隔操作棒が用いられる。
【0004】
また、電線を掴持するための掴線器を保持して所定の箇所にセットするために、先端に保持用フック工具等が取付けられた遠隔操作棒が用いられている。
【0005】
これら遠隔操作棒は、その用途や工事現場の環境に応じて、その長さに長短各種のものがあり、また、先端に取付けた工具を、手元の操作により回転させるための構造を必要とするもの(先端回転タイプ、特許文献1参照)や、反対に、手元と工具との間が安定確固とした関係にあることが要求されて、棒先端から基端までを一体構造としたもの(一体構造タイプ)がある。
【0006】
このため、電設工事作業者は、種々のタイプの遠隔操作棒を準備しておき、これらを対象工事に応じて使い分けていたのである。
【特許文献1】特開2000−13943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、電設工事に際しては、作業の種類に応じた各種遠隔操作棒を準備しておかなければならず、その数が大となって購入費が嵩み、また、地上車から作業を行う場合に、この地上車の狭い空間にこれら多数本の遠隔操作棒を立てかけておくことが困難であるという問題がある。
【0008】
また、同じ工具を使う作業であっても、作業対象位置が遠近各種ある場合が多く、この場合には、例えば長い遠隔操作棒から短い遠隔操作棒にチェンジして作業を行うことになる。そして、通常は、これら先端に取付ける工具は、1つしか用意されていないことが多いので、長い遠隔操作棒先端から当該工具を外し、次いで、短い遠隔操作棒先端に前記工具を取付けることが行われており、その際、一々遠隔操作棒の先端を手元に持ってきて工具交換を行わなければなら無いので、作業能率を損ねるという問題があった。
【0009】
このような問題は、同じ工具を使って両タイプの作業が可能である場合において、作業対象が回転を要求されるもの(先端回転タイプで対応)と非回転状態での保持を要求されるもの(一体構造タイプで対応)との一方から他方へのチェンジにおいても生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明の遠隔操作棒セットは、複数種類の基端側操作棒と、いずれの基端側操作棒に対してもその先端に着脱可能に取付けられる1種類の先端側操作棒と、先端側操作棒の先端に着脱可能に取付けられる工具とからなる遠隔操作棒セットであって、先端側操作棒は、遠隔操作時に作業者と被作業物との間の絶縁安全距離をとるに十分な長さを有する絶縁パイプで構成され、複数種類の基端側操作棒は、少なくとも、第1種基端側操作棒、第2種基端側操作棒、第3種基端側操作棒を含み、第1種基端側操作棒は、一重パイプからなりその周囲が握部となり、その先端に前記先端側操作棒を着脱可能に固定する取付け部が形成されたものであり、第2種基端側操作棒は、一重パイプからなりその周囲が握部となり、その先端に前記先端側操作棒を着脱可能に固定する取付け部が形成され、かつ、前記第1種基端側操作棒より長寸のものであり、第3種基端側操作棒は、二重パイプからなり、外側のパイプは、その周囲が握部となり、内側のパイプは、回転可能に外側のパイプに支持されると共に、回転力を受け入れる回転力入力部を備え、かつその先端に前記先端側操作棒を着脱可能に固定する取付部が形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数種類の工具、及び複数種類の基端側操作棒からそれぞれ1種類のものを選択し、これらと共通の先端側操作棒とを組み合わせることにより、種々の遠隔作業に適応させることができ、遠隔操作棒の数を減らし、また、準備しなければならない遠隔操作棒全体の嵩だかさを減らすことができる。
【0012】
また、先端側操作具に対しての工具交換をせずに、基端側操作棒を交換することにより、同一工具を用いての、遠方の作業と近くの作業との一方から他方への変更や、先端回転タイプの作業と一体構造タイプの作業の一方から他方への変更を、容易迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施の形態の遠隔操作棒セットは、3種類の基端側操作棒1、2、3と、いずれの基端側操作棒1、2、3に対してもその先端に着脱可能に取付けられる1種類の先端側操作棒5と、先端側操作棒5の先端に着脱可能に取付けられる2種類の工具6、7とから構成されている。
【0015】
先端側操作棒5は、図3に示すように、遠隔操作時に作業者と被作業物との間の絶縁安全距離をとるに十分な長さを有するFRP製の絶縁パイプ9で主構成されている。その先端には工具6、7を固定するための工具取付具10を有している。その基端には、基端側操作棒1、2、3のいずれにも固定されるための被取付具11を有している。前記絶縁パイプ9の中間部位には、水切り鍔4、限界鍔8が取付けられている。
【0016】
前記工具取付具10は、図3、図7に示すように、円筒状の外体の外周面にねじ溝12が形成された基体部13と、この基体部13の一端に連設された操作棒側連結部14と、径方向両側から操作軸15が突設されてねじ溝12に螺合された固定用ナット16と、基体部13の他端に連設された工具側連結部17と、工具側連結部17の径方向両側から突設された係合軸18、18と、工具側連結部17の端部に出入自在に設けられたスライダー19と、このスライダー19を突出方向に付勢する圧縮コイルばね(図示省略)とを備えて構成されている。
【0017】
前記被取付具11は、図3に示すように、円筒本体21に係合スリット20が形成されてなるものである。前記係合スリット20は、端部開口から先端側操作棒5の軸心に沿って延びる垂直溝20aと、この垂直溝20aの先端から先端側操作棒5の円周方向両側に延びる水平溝20b、20bと、それぞれの水平溝20bの先端から前記軸心方向に沿って端部側に延びる止端溝20c、20cとが連続的に形成されたものである。
【0018】
先端側操作棒5は、上述のように、遠隔操作時に作業者と被作業物との間の絶縁安全距離をとるのに十分な長さを有するように構成されている。図示例では、全長Pが965mm、工具取付具10の基端から水切り鍔4までの距離Qが300mm、工具取付具10の基端から限界鍔8までの距離Rが600mmとなるように設定している。このように構成することにより、基端側操作棒1、2、3の絶縁性能の如何(極端な場合、絶縁性能がゼロの場合)にかかわらず、作業者の安全を図れるようにしているのである。
【0019】
3種類の基端側操作棒として、第1種基端側操作棒1、第2種基端側操作棒2、第3種基端側操作棒3を有している。
【0020】
第1種基端側操作棒1は、図4に示すように、FRP製の絶縁一重パイプから主構成され、その周囲が握部22となり、その先端に前記先端側操作棒5を着脱可能に固定する取付部23が形成されたものである。この取付部23は、前記工具取付具10と同様の構成を有する取付具を絶縁一重パイプの先端に取付けて構成したものであるが、前記操作軸15に相当するものを有していない点で、前記工具取付具10と異なっている。したがって、前記取付部23は、前記工具取付具10の場合と同様の機能を有する、係合軸24、スライダー25、固定用ナット26を有している。この第1種基端側操作棒1は、後記第2種基端側操作棒2と比較して、短寸(具体的には、例えば全長390mm)に形成されている点だけで、相違する。
【0021】
第2種基端側操作棒2は、図5に示すように、FRP製の絶縁一重パイプから主構成され、その周囲が握部22aとなり、その先端に前記先端側操作棒5を着脱可能に固定する取付部23aが形成されたものである。この取付部23aは、第1種基端側操作棒1の取付部23と全く同様の構成を有している。したがって、前記取付部23aは、前記取付部23と全く同様の機能を有する、係合軸24a、スライダー25a、固定用ナット26aを有している。この第2種基端側操作棒2は、前記第1種基端側操作棒1と比較して、長寸(具体的には、例えば全長590mm)に形成されている。
【0022】
第3種基端側操作棒3は、図6に示すように、FRP製の外パイプ27とFRP製の内パイプ28との二重パイプから主構成され、前記内パイプ28は、軸心まわりに回転自在の状態で、前記外パイプ27に支持されている。外パイプ27の中央部周囲は、握部22bとなり、内パイプ28の先端に前記先端側操作棒5を着脱可能に固定する取付部23bが形成され、内パイプ28の基端に回転力入力部29が取付けられている。
【0023】
前記取付部23bは、前記取付部23、23aの場合と同様の機能を有する、係合軸24b、スライダー25b、固定用ナット26bを有している。前記回転力入力部29は、ラチェットハンドルの入力軸(図示省略)に嵌合する、角穴部30を備えている。片手で前記握部22bを把持し、前記入力軸を前記角穴部30に嵌合させた状態で、他方の手でラチェットハンドルのハンドルを回すことにより、前記内パイプ28を回転させ、ひいては、前記取付部23bを回転させることができる。
【0024】
第3種基端側操作棒3は、前記回転入力部29と共に、或いはこれに代えて、操作棒側方から回転力を入力できる周知の回転力入力部を備えた構成とすることができる。
【0025】
先端側操作棒5の先端に着脱可能に取付けられる2種類の工具として、タイスティック6とフックバー7を有している。
【0026】
前記タイスティック(工具)6は、図1、図7に示すように、先端側操作棒5の工具取付具10に着脱可能に取付けられる有頂円筒状の被取付部31を有すると共に、前記被取付部31の上端部から一側方に延びるハンマー部32と、他側方に延びるフック部39とを有している。この工具6は、原則として非回転状態で使用される工具であり、第1種基端側操作棒1又は第2種基端側操作棒2と組み合わせて使用される。前記被取付部31は、前記先端側操作棒5の被取付具11と基本的には同様に構成され、円筒本体に係合スリット33が形成されてなるものである。前記係合スリット33は、端部開口から軸心に沿って延びる垂直溝33aと、この垂直溝20aの先端から先端側操作棒5の円周方向片側に延びる水平溝33bと、その水平溝33bの先端から前記軸心方向に沿って端部側に延びる止端溝33cとが連続的に形成されたものである。
【0027】
前記フックバー(工具)7は、図2に示すように、先端側操作棒5の工具取付具10に着脱可能に取付けられる有頂円筒状の被取付部31aを有すると共に、前記被取付部31aの上端から延びるフック部34と、このフック部34の途中から側方に延びるバー部35とを有している。この工具7は、原則として回転状態で使用される工具であり、第3種基端側操作3と組み合わせて使用される。前記被取付部31aは前記タイスティック6の被取付部31と同様に構成され、同様の係合スリット33aを備えている。
【0028】
上記先端側操作棒5には、上述の場合、タイスティック6又はフックバー7を選択して取付けることができる。いずれの場合もその取付け方法は同じであるので、タイスティック6の場合について、図7を参照して説明する。先ずタイスティック6の被取付部31の係合スリット33内に、先端側操作棒5の工具取付具10の係合軸18を図中の矢印方向に挿入する。
【0029】
垂直溝33aに係合軸18が挿入されると、スライドスライダー19は没入して、係合軸18は水平溝33bに達する。そこでタイスティック6を回転させると、係合軸18は止端溝33cに達し、タイスティック6を押す力を緩めると、圧縮コイルばねによって係合軸18は止端溝33cの係合端に達し、タイスティック6と先端側操作棒5とが仮結合される。この状態を維持するため、前記固定用ナット16を締付けて、前記係合軸18と固定用ナット16との間に前記被取付部31を挟むようにして、本固定する。
【0030】
上記操作は、一般に地上において手元で行うことになるが、例えば、遠隔操作で工具を先端側操作棒5から取り外したいような場合には、前記操作軸15を利用し、これを打撃するなどして、固定用ナット16を回転し、これを緩めればよい。
【0031】
図1に示すセットされた遠隔操作棒は、先端側操作棒5の先端にタイスティック6を取付け、基端に第1種基端側操作棒1を取付けたものである。先端側操作棒5の被取付具11に、第1種基端側操作棒1の取付部23を着脱可能に取付ける方法は、先端側操作棒5にタイスティック6を着脱可能に取付ける方法と同様であるので、説明を省略する。
【0032】
図1に示すセットされた遠隔操作棒は、工具非回転状態での遠隔操作に利用し、ハンマー部32で打撃作業に用いたり、フック部39で物品を支持して移動さす作業に用いたりするのに、適している。上記作業よりも遠くの作業を遠隔で行いたいときには、第1種基端側操作棒1よりも長寸の第2種基端側操作棒2を用いると好適である。その際には、先端側操作棒5の先端にタイスティック6を取付け、基端の被取付具11に第2種基端側操作棒2を取付ければよいことは言うまでもない。
【0033】
図2に示すセットされた遠隔操作棒は、先端側操作棒5の先端にフックバー7を取付け、基端に第3種基端側操作棒3を取付けたものである。先端側操作棒5の被取付具10に、第3種基端側操作棒3の取付部23bを着脱可能に取付ける方法は、第1図の場合と同様である。
【0034】
図2に示すセットされた遠隔操作棒は、工具回転作業状態での遠隔操作に利用し、例えば、フック部34を操作棒軸心まわりに回転させ、リング係合頭部を有するねじ軸などに係合させて、これを回転させるのに適している。このような遠隔操作を行うには、第3種基端側操作棒3の回転力入力具29にラチェットハンドルの入力軸を嵌合させた状態で、片手で前記握部22bを把持し、他方の手でラチェットハンドルのハンドルを回すことにより、第3種基端側操作棒3の内パイプ28、前記取付部23bを回転させ、これに結合した先端側操作棒5を、その軸心まわりに回転させることによって、その先端に固定したフックバー7を回転させればよい。
【0035】
上記作業は、工具回転作業に関するものであるが、前記フック部34とバー部35とを利用して、物品の支持作業のように、工具非回転状態の遠隔操作に利用したい場合がある。このときには、第3種基端側操作棒3に代えて、例えば第2種基端側操作棒2を、先端にフックバー7が取付けられた先端側操作棒5に、取付ければ良いことは言うまでもない。
【0036】
本発明は、上記実施の形態に示すほか、種々の態様に構成でき、例えば先端側操作棒5の先端に取付けられる工具として、図1、図2に示す工具6,7の他、種々の工具を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態におけるセットされた遠隔操作棒の一例を示す正面図。
【図2】本発明の実施形態におけるセットされた遠隔操作棒の他の例を示す正面図。
【図3】先端側操作棒を示す正面図。
【図4】第1種基端側操作棒を示す正面図。
【図5】第2種基端側操作棒を示す正面図。
【図6】第3種基端側操作棒を示す正面図。
【図7】先端側操作棒と工具との結合方法を示す正面図。
【符号の説明】
【0038】
1 第1種基端側操作棒
2 第2種基端側操作棒
3 第3種基端側操作棒
6 工具(タイスティック)
7 工具(フックバー)
23、23a、23b 取付け部
22、22a、22b 握部
29 回転力入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の基端側操作棒と、いずれの基端側操作棒に対してもその先端に着脱可能に取付けられる1種類の先端側操作棒と、先端側操作棒の先端に着脱可能に取付けられる工具とからなる遠隔操作棒セットであって、
先端側操作棒は、遠隔操作時に作業者と被作業物との間の絶縁安全距離をとるに十分な長さを有する絶縁パイプで構成され、
複数種類の基端側操作棒は、少なくとも、第1種基端側操作棒、第2種基端側操作棒、第3種基端側操作棒を含み、
第1種基端側操作棒は、一重パイプからなりその周囲が握部となり、その先端に前記先端側操作棒を着脱可能に固定する取付け部が形成されたものであり、
第2種基端側操作棒は、一重パイプからなりその周囲が握部となり、その先端に前記先端側操作棒を着脱可能に固定する取付け部が形成され、かつ、前記第1種基端側操作棒より長寸のものであり、
第3種基端側操作棒は、二重パイプからなり、外側のパイプは、その周囲が握部となり、内側のパイプは、回転可能に外側のパイプに支持されると共に、回転力を受け入れる回転力入力部を備え、かつその先端に前記先端側操作棒を着脱可能に固定する取付部が形成されたものである
ことを特徴とする遠隔操作棒セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−239839(P2010−239839A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87631(P2009−87631)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)