説明

遠隔操作用ヤットコに用いるアダプタ

【課題】作業に応じて適宜アダプタを取り替えることにより、一の遠隔操作用ヤットコのみで、種々の作業を行なうことができる遠隔操作用ヤットコに用いるアダプタを提供する。
【解決手段】主軸1と、この主軸1の先端に設けた被把持物を掴むことができる1対の把持部2と、この主軸1の基部に設けた操作部3とを備えた遠隔操作用ヤットコに用いるアダプタ10であって、前記1対の把持部2のそれぞれに着脱可能に取付けることのできる1対のアダプタ本体11と、この1対のアダプタ本体11に取付けられ、被把持物を、挟持、切断、切込み、又は計測の作業の内の少なくとも1つの作業を行なうための工具12a…とを備え、それぞれのアダプタ本体11には、前記把持部2の先端部が挿入される挿入部15が形成されてこの挿入部15に前記1対の把持部2の先端部がそれぞれ挿脱可能に固定されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線工事において、架線その他の部品を遠隔操作で把持等する遠隔操作用ヤットコに、工具を備えた種々のアダプタを着脱可能に取付け得る遠隔操作用ヤットコに用いるアダプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の遠隔操作用ヤットコは、図5(a)、(b)に示すように、中間部に絶縁傘5を嵌合固定した絶縁性の主軸1と、この主軸1の先端に取付けられた把持部2と、この主軸1の基部に取付けた操作部3と、前記把持部2の可動顎6の連結部7と前記操作部3の操作レバー8の連結部9とを連結し、この操作レバー8の手動操作を把持部2の把持操作に伝達する絶縁性の連結軸4とを備えている。
【0003】
前記把持部2は、図5に示すように、所定形状に形成されており、架線工事において遠隔操作で安全に作業を行うことが可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例に示すような構成では、把持部が所定の形状に形成されているため、架線工事における架線その他の被把持物を、挟持、切断、切込み、又は計測等の作業を行なう場合には、それぞれに応じた形状の把持部を備えた遠隔操作用ヤットコを別途複数用意しなければならなかった。このように複数種類の遠隔操作用ヤットコを用意するには、コストがかかるという問題点があった。さらに、複数種類の遠隔操作用ヤットコが作業現場に持ち込まれるため、部品点数が増加するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、被把持物を、挟持、切断、切込み、又は計測等の作業を行ない得る種々のアダプタを、一の遠隔操作用ヤットコに着脱可能に取付けることにより、複数種類の遠隔操作用ヤットコを用意することなく、種々の作業を行なうことができ、コスト低減、部品点数の減少を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、主軸と、この主軸の先端に設けた被把持物を掴むことができる1対の把持部と、この主軸の基部に設けた操作部とを備えた遠隔操作用ヤットコに用いるアダプタであって、前記1対の把持部のそれぞれに着脱可能に取付けることのできる1対のアダプタ本体と、この1対のアダプタ本体に取付けられ、被把持物を、挟持、切断、切込み、又は計測の作業の内の少なくとも1つの作業を行なうための工具とを備え、それぞれのアダプタ本体には、前記把持部の先端部が挿入される挿入部が形成されてこの挿入部に前記1対の把持部の先端部がそれぞれ挿脱可能に固定されるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被把持物を、挟持、切断、切込み、又は計測等の作業を行なうための工具を備えたアダプタを、遠隔操作用ヤットコの把持部に着脱可能に取付けできる結果、作業に応じて適宜アダプタを取り替えることにより、一の遠隔操作用ヤットコのみで、種々の作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態の遠隔操作用ヤットコの構成は、図5に示すように、従来例のものと同様であるため、その説明を省略し、遠隔操作用ヤットコに用いるアダプタについて詳細に説明する。
【0009】
図1〜図4に示すように、アダプタ10は、被把持物を、挟持、切断、切込み、又は計測等の作業を行なうための種々の工具12a〜12cを、遠隔操作用ヤットコの把持部2に着脱可能に取付けできるアダプタ本体11(図1参照)に適宜備えた構成をしている。
【0010】
前記アダプタ本体11は金属からなり、図1(a)〜(c)に示すように、上面に前記把持部2に係合する係合手段13を備え、正面には前記把持部2が挿入する挿入口14が開口し、前記挿入口14から内部に凹状の挿入部15が形成されている。さらに前記上面には前記挿入口14の開口端面の所定の部位(把持部の表面に形成されたリブ部16(図5(b)参照)に対応する部位)から把持部2の挿入方向に所定長さに延びるスリット17が形成されている。また、アダプタ本体11の所定部位には、工具12a〜12cを固定する工具取付け部18が工具形状に応じて適宜設けられている。
【0011】
前記係合手段13は、図1、図3に示すように、遠隔操作用ヤットコの把持部2表面に係合する係合ピン19と、アダプタ本体11上面に外側に向けて隆起すると共にその中央に前記挿入部15に連通し係合ピン19が摺動するピン孔20を有するピン受け部21と、一端を前記ピン孔20内に取付け他端を係合ピン19に取付けることにより係合ピン19を前記把持部2に向けて付勢させるコイルスプリング22と、前記係合ピン19を係合解除位置に停止させる位置決め手段23とから構成されている。なお、前記係合ピン19は、ヘッド部24と軸部25から構成され、前記軸部25の側面には凸部26が突設されている。また前記ピン孔20内には、その開口から所定長さ係合ピン19の摺動方向に凹溝27が形成されており、係合ピン19が摺動する際に、係合ピン19の凸部26がピン孔20内の凹溝27に沿うことによって、ガイド機能を有する構成となっている。
【0012】
このように係合手段13は前記係合ピン19の軸部25先端が前記挿入部15に突出するように常に付勢されており、その付勢は係合ピン19のヘッド部24が前記ピン受け部21に当接することで制限されている。
【0013】
前記位置決め手段23は、係合ピン19の凸部26とピン受け部21とから構成されている。すなわち、係合ピン19を、その凸部26がピン孔20より外に露出する程度、付勢に抗して引上げた後、係合ピン19を軸部25を中心に回動させることで、係合ピン19の凸部26はピン受け部21のピン孔20開口周辺に引っ掛ることができ、これにより係合ピン19を係合解除位置に停止させることができる。
【0014】
前記スリット17は、アダプタ10を把持部2に取付ける際に、把持部2の外側面に形成された凸状の補強用のリブ部16との干渉を防ぐとともに、ガイド機能の効果を奏することができる。
【0015】
前記工具としては、図2に示すような被把持物を挟持するラジオペンチ12aや、図3に示すような切断するハサミ12bや、図4に示すような切断或いは切込みを入れる切込みバサミ12c等がある。また図に示さないが、ノギスのような被把持物を計測するための工具も考えることができる。
【0016】
上述のように、アダプタ10は金属から構成されているが、樹脂等の絶縁体で構成したり、また絶縁体でコーティングすることで、被把持物とその被把持物近傍の他の物体との短絡を防止するなどの安全性の高いものとすることができる。
【0017】
次にアダプタ10と把持部2の着脱動作を説明する。
【0018】
まず、係合ピン19のヘッド部24を掴みその付勢に抗して引上げる。その時、前記軸部25は前記ピン孔20内に入り込み、その先端が前記挿入部15に突出しない着脱可能状態となる。次に、把持部2をその表面に形成されたリブ部16、16とアダプタ本体11に形成されたスリット17、17とが一致するように配した後、把持部2をアダプタ本体11の挿入口14から前記挿入部15内に所定長さ押し込む。そして、係合ピン19を手放せば、付勢力により係合ピン19が把持部2表面に当接し、アダプタ10と把持部2は係合状態となる。なお上記着脱可能状態の際に係合ピン19を回動させて前記位置決め手段23の作用を利用すると便利である。
【0019】
また、アダプタ10を取外す動作は、これと逆の動作を行なえばよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態のアダプタ本体を示し、(a)はその斜視図、(b)はその縦断面図、(c)はその係合手段の横断面図である。
【図2】一実施形態のアダプタを示し、(a)はその斜視図、(b)はヤットコに取付けた状態の側面図である。
【図3】他の実施形態のアダプタをヤットコに取付けた状態を示す一部縦断面図である。
【図4】他の実施形態のアダプタを示し、(a)はその斜視図、(b)はその側面図である。
【図5】本実施形態の遠隔操作用ヤットコを示し、(a)はその側面図、(b)はその上面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 主軸
2 把持部
3 操作部
4 連結軸
6 可動顎(可動部)
8 操作レバー(可動部)
12a ラジオペンチ(工具)
12b ハサミ(工具)
12c 切込みバサミ(工具)
13 係合手段
14 挿入口
17 スリット
19 係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、この主軸の先端に設けた被把持物を掴むことができる1対の把持部と、この主軸の基部に設けた操作部とを備えた遠隔操作用ヤットコに用いるアダプタであって、前記1対の把持部のそれぞれに着脱可能に取付けることのできる1対のアダプタ本体と、この1対のアダプタ本体に取付けられ、被把持物を、挟持、切断、切込み、又は計測の作業の内の少なくとも1つの作業を行なうための工具とを備え、それぞれのアダプタ本体には、前記把持部の先端部が挿入される挿入部が形成されてこの挿入部に前記1対の把持部の先端部がそれぞれ挿脱可能に固定されるように構成されていることを特徴とする遠隔操作用ヤットコに用いるアダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−194822(P2008−194822A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76686(P2008−76686)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【分割の表示】特願2001−369664(P2001−369664)の分割
【原出願日】平成13年12月4日(2001.12.4)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】