説明

遠隔計測システム

【課題】携帯電話網を利用した遠隔計測システムにおいて、携帯電話網の制限を回避して計測端末と接続された携帯電話端末をさらに増やすことができる遠隔計測システムを提供する。
【解決手段】計測データを定期的に取得し、通信回線網4を用いて送信可能な計測端末5と、通信回線網4を用いて複数の計測端末5と通信する通信回線連係装置3と、通信回線連係装置3を介して複数の計測端末5からの計測データを収集して計測量を管理する計測ホスト2と、を含む遠隔計測システム1において、通信回線連係装置3は、計測ホスト2の計測スケジュールに応じて、計測端末5が通信回線連係装置3に接続起動する時刻を各計測端末に予め設定する接続時刻設定手段を有し、計測端末5は、予め設定された時刻に計測端末から通信回線連係装置3に接続起動して通信回線連係装置3と計測端末5とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
計測データを定期的に取得し、通信回線網を用いて送信可能な計測端末と、通信回線網を用いて複数の計測端末と通信する通信回線連係装置と、通信回線連係装置を介して複数の計測端末からの計測データを収集して計測量を管理する計測ホストと、を含む遠隔計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IT技術のめざましい発展に伴い、インターネット又は無線機器を使用した電気、ガス、水道等の自動検針機器の研究開発により、コントロールセンタの計測ホストから遠く離れた計測器の計測データを収集して管理する遠隔計測システムが知られるようになった。
【0003】
特に、電気に関しては電力供給に関する規制が緩和されるに伴い、電力会社に卸電力を供給する発電事業者(IPP)の参入が増加し、既存の電力会社以外から自由に電力を購入可能になった。
【0004】
また、規制緩和は、安い電力を購入する機会を与えるだけでなく、地球温暖化を防止することを目的とした二酸化炭素の排出を抑える技術の発展に伴い、工場や各事業所等に排熱発電設備、燃料電池発電設備、太陽光発電設備等の発電設備を導入しようとする機運をもたらしている。また、発電事業者には、余分に発電した電力を積極的に販売しようとする動きがある。このような電力小売自由化に伴い、30分値同時同量監視等の詳細な電力量を計測する検針サービス提供への要求が高まっている。
【0005】
検針サービスを提供する遠隔計測システムに関し、特許文献1には、固定電話のノーリンギング通信サービスを用いて中央のコントロールセンタに居ながら各需要家庭に設置された電力量計のデータを読み出す遠隔計測システムが開示されている。しかしながら、固定電話回線を使用して遠隔検針を行うシステムでは、遠隔検針のために固定電話回線に関する接続工事が必要であり、工事作業が繁雑であった。
【0006】
そこで、特許文献2には、電話回線の工事が不要なPHS端末(無線機)を利用して無線機から基地局へ送信し、基地局からは既設の双方向CATV網を利用して回線制御装置へ送信し、回線制御装置から電力会社の計測ホストへ送信する遠隔計測システムが開示されている。さらに、特許文献3には、電力量計の電力量を検針して計測ホストに送信する遠隔計測システムに関し、インターネットを介した通信に対応が容易であり、システム内でのローカルな情報収集動作の信頼性が高く、しかもセキュリティ面でも優れた遠隔計測システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−303152号公報
【特許文献2】特開2001−266277号公報
【特許文献3】特開2002−325144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、コントロールセンタが、電話回線の工事が不要であるPHS端末や携帯電話端末を用いて途中で通信が途切れること無く、所定の時間間隔にて連続測定するためには、必然的にコントロールセンタが主体的に遠隔計測を行うことが必要となる。携帯電話端末は電波を使って通信することから移動が自由であり、このような携帯電話端末と通信するために用いられる通信網は、固定電話網やインターネット網等と異なった仕組みを有している。
【0009】
携帯電話端末と通信するための携帯電話網には、移動可能な携帯電話端末と直接無線通信するため各地に設けられた基地局と、各基地局と無線通信可能な携帯電話端末からその携帯電話端末の電話番号や位置等を受け取って管理する位置登録サーバと、位置登録サーバに記憶された情報に基づいて携帯電話端末同士又は携帯電話端末と固定電話端末とを接続する移動通信交換局等と、が設けられている。
【0010】
例えば、遠隔計測ホスト1台当たり、約500端末を管理可能な遠隔計測システムの場合、需要増により携帯電話端末を増設して、例えば、約1000端末まで接続可能であるシステムの場合、携帯電話網の位置登録サーバの負荷集中に起因する制限のため、さらに遠隔計測ホストを追加しても約1000端末を超える携帯電話端末と通話ができない場合が発生し、円滑な計測ができないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明に係る遠隔計測システムは、一般公衆回線の一つである携帯電話網の制限を回避して計測端末と接続された携帯電話端末をさらに増やすことができる遠隔計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る遠隔計測システムは、計測データを定期的に取得し、通信回線網を用いて送信可能な計測端末と、通信回線網を用いて複数の計測端末と通信する通信回線連係装置と、通信回線連係装置を介して複数の計測端末からの計測データを収集して計測量を管理する計測ホストと、を含む遠隔計測システムにおいて、通信回線連係装置は、計測ホストの計測スケジュールに応じて、計測端末が通信回線連係装置に接続起動する時刻を各計測端末に予め設定する接続時刻設定手段を有し、計測端末は、予め設定された時刻に計測端末から通信回線連係装置に接続起動して通信回線連係装置と計測端末とを接続することを特徴とする。ここで、遠隔計測システムは、遠隔地の計測端末で計測される電気、ガス、水道、その他の物理量を一括して計測する遠隔計測一般に使用できる汎用的な遠隔計測システムである。
【0013】
また、その他の好適な発明である遠隔計測システムにおいて、通信回線連係装置は、通信回線連係装置における単位時間当たりの処理可能な計測端末となるように各計測端末が接続起動する時刻を各計測端末に割り当てることを特徴とする。通信回線連係装置が、各計測端末からの計測データを取りこぼすことなく取得するためには、通信回線連係装置が負荷調整の機能を有することが重要である。
【0014】
また、その他の好適な発明である遠隔計測システムにおいて、通信回線連係装置は、計測ホストが通信回線連係装置を介して計測端末からの計測データを収集する前に、通信回線連係装置と計測端末との接続を確認する接続確認手段と、接続確認手段により計測端末との接続が切れていると判断した場合には、計測端末へ接続起動して接続する再接続手段と、を有することを特徴とする。このように、計測端末から通信回線連係装置への一方の接続起動だけでなく、通信回線連係装置による計測端末への接続起動を補完的に用いることにより、通信接続における信頼性を向上させることが可能となる。
【0015】
また、その他の好適な発明である遠隔計測システムにおいて、通信回線連係装置は、計測ホストからの計測要求を受信する前に計測端末へ計測要求を送信し、計測端末から計測データを受信して記憶する記憶手段と、計測ホストからの計測要求を受信した後に記憶した計測データを計測ホストへ送信する中継手段と、を有することを特徴とする。この中継手段により、計測ホストの待ち時間を減少させることが可能となり、計測ホストの負荷低減及び、計測ホスト1台当たりの計測端末数の増加が可能となり、全体的なシステムコストの低減が可能となる。
【0016】
さらに、その他の好適な発明である遠隔計測システムにおいて、通信回線連係装置は、記憶した計測データを他の計測ホストに送信する計測データ送信手段を有することを特徴とする。他の計測ホストに送信する計測データ送信手段により、計測データの活用を容易にすることで計測データの利用を拡大することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る遠隔計測システムを用いることにより、携帯電話網の制限を回避して計測端末と接続された携帯電話端末をさらに増やすことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における遠隔計測システムの構成を示す全体構成図である。
【図2】図1の実施形態において、特に電力量計の検針を行う遠隔電力検針システムの構成を示す全体構成図である。
【図3】図2の遠隔電力検針システムに係る実施形態において、検針端末による接続起動を実行することにより電力量計の検針データを検針ホストに送信する一連の処理の流れを示すフローチャート図である。
【図4】図2の遠隔電力検針システムに係る実施形態において、検針端末による接続起動を実行すると共に、通信回線連携装置が検針データを記憶し、検針ホストの検針要求に応じて記憶した検針データを検針ホストに送信する一連の処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】図3又は図4に示した一連の処理の流れを毎時60分のタイムテーブルに表した説明図である。
【図6】図3又は図4に示した検針端末の接続起動時刻を説明する説明図である。
【図7】図2の遠隔電力検針システムに係る実施形態において、本発明に係る実施形態を理解する上で参考となる実施形態(参考例)であって、通信回線連係装置による接続起動を実行する際の携帯電話網の役割を説明する説明図である。
【図8】図7の参考例に示す通信回線連係装置において、検針ホストが検針データを収集する処理の流れを示すフローチャート図である。
【図9】図8に示した一連の処理の流れを毎時60分のタイムテーブルに表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0020】
図1は本実施形態における遠隔計測システムの一般形を示し、遠隔計測システム1は電気、ガス、水道、その他の遠隔計測一般に使用できる汎用的な遠隔計測システムである。遠隔計測システム1は、遠隔計測を司る計測ホスト2aと、各計測器(6a,6b)から測定値を取得した各計測端末(5a,5b)から携帯電話網4aやインターネット4bを介して計測ホスト2a又は計測ホスト2bに送信する通信回線連係装置3と、システム全体を監視する計測ホスト2bと、を含んでいる。通信回線網4は、携帯電話網4aや光ケーブルなどのインターネット4bを利用したパケット通信環境であり、通信事業者により接続サービスが提供されている。特に、携帯電話網4aを利用したパケット通信環境では、計測端末5aに接続された携帯電話端末と通信を行う基地局8やデータを伝送するパケット通信処理装置7が設けられている。
【0021】
次に、電力量計の検針に特化した遠隔計測システムである遠隔電力検針システムについて述べる。
【0022】
図2は、図1の実施形態において、特に、電力量計の検針を行う遠隔電力検針システム10の構成を示している。遠隔電力検針システム10は、例えば、電力会社の基幹ネットワークに接続され、遠隔計測を司る検針ホスト11aと、電力供給の系統監視等を行う系統監視ホスト11bと、電力量計24から測定値を取得した複数の検針端末23から電力値をそれぞれ収集する通信回線連係装置12と、通信回線連係装置12と複数の検針端末23とを接続する携帯電話網14aやインターネット14bと、電力会社の基幹ネットワークのセキュリティを確保するための認証装置13と、を有している。また、携帯電話網14aには、各地に配置された基地局22と、パケット通信を処理するためのパケット通信処理装置21と、を有している。なお、図2の本実施形態では、ショート・メッセージ・サービスによるメッセージの伝送サービスや、リモート・アクセス・サービスやパケット通信回線サービスによる伝送サービスを使用した。
【0023】
図2の遠隔電力検針システムに係る実施形態において、本発明に係る実施形態を理解する上で参考となる実施形態(以下、参考例という。)について図7を用いて説明する。図7は、2台の通信回線連係装置(12a、12b)が、携帯電話網14aを介して各検針端末23から検針データを収集する構成を示している。携帯電話網14aは、認証装置13とパケット通信処理装置21と位置登録サーバ15と複数の基地局22と携帯電話端末と接続された検針端末23とを有している。検針端末(23a,23b、23c)は、最寄りの基地局(22a,22b,22c)と無線通信を行い、携帯電話網14aを介して通信回線連係装置(12a,12b)と通信することが可能である。
【0024】
参考例である図7の通信回線連係装置12は、検針端末にショート・メッセージによる起動信号を送信することにより、通信回線連係装置と検針端末との間のパケット通信回線の接続を行っている。このような回線接続により、1台当たり約500端末の検針端末から検針データを取得することが可能であり、2台の通信回線連係装置で合計約1000台の検針端末が接続できる。しかしながら、図7の通信回線連係装置12から送信された起動信号は、接続先の検針端末23と通信可能な基地局22の情報を位置登録サーバ15から取得する必要があり、位置登録サーバにアクセスが集中すると、検針端末と通信できない場合があった。そこで、このような問題が発生するメカニズムについて述べる。
【0025】
図8は、図7に示す参考例における検針ホストが検針データを収集する処理の流れを示している。図8の左側から順番に、電力量計、検針端末、携帯電話網、認証装置、通信回線連係装置及び、検針ホストである。参考例では、通信回線連係装置から検針端末にショート・メッセージによる起動信号を送信することでパケット通信回線の接続を行うものである。ショート・メッセージは、通信回線連係装置から検針端末に、接続起動に必要な起動信号を送り、検針端末は、その起動信号に基づいて、認証処理を実行して携帯電話網と接続して通信回線連係装置と通信を行う。次に、処理の詳細について述べる。処理が開始されると、最初に通信回線連係装置から携帯電話網に対して検針端末の電話番号とメッセージとを含んだパケット通信回線接続要求を送信する(ステップS100)。パケット通信回線接続要求を受信した携帯電話網は、位置登録サーバにアクセスして検針端末と通信している基地局に対してパケット通信回線接続要求を送信し(ステップS102)、パケット通信回線接続要求が受け付けられたことを通信回線連係装置に返信する(ステップS104)。次に、パケット通信回線接続要求を受信した検針端末は、正しく送達されたことを示す送達通知を携帯電話網に送信する(ステップS106)。携帯電話網は、受信した送達通知を通信回線連係装置に送信する(ステップS108)。通信回線連係装置は送達通知を受け取ったことを示す送達応答を携帯電話網に送信する(ステップS110)。次に、検針端末は、回線接続のためのIDとパスワードを携帯電話網に送信し(ステップS112)、携帯電話網は認証(ステップS114)行うためにIDとパスワードを認証装置に送信する(ステップS116)。認証が終了すると、認証装置から認証結果通知が検針端末に送信され(ステップS118)、検針端末と携帯電話網のパケット通信回線が接続(ステップS120)されることになる。
【0026】
次に、通信回線連係装置から検針端末に接続確認要求を送信し(ステップS122)、検針端末から通信回線連係装置に接続確認応答が送信(ステップS124)されることにより通信回線連係装置と検針端末とが接続(ステップS126)されることになる。上記接続がなされると、以後定期的に接続確認のため、通信回線連携装置から検針端末に向けて受信応答が送信される(ステップS127)。
【0027】
次に、予め決められた時間に実行される検針の一例(定時処理)について説明する。図8の定時処理は、検針ホスト主導型の定時処理であり、最初に、検針ホストが通信回線連係装置に対して複数の電力量計への検針要求を送信する(ステップS128)。次に、通信回線連係装置は検針端末に検針要求を伝送(ステップS130)し、検針端末は電力量計に検針要求を送信(ステップS132)する。検針要求を受信した電力量計は、検針した検針データを検針端末に送信(ステップS134)する。電力量計から検針データを受信した検針端末は、電力量計のIDや検針時刻などの情報を検針データ応答情報として通信回線連係装置に送信する(ステップS136)。検針データ応答情報を受信した通信回線連係装置は、検針ホストから要求された複数の電力量計における検針データであることを確認した後、各電力量計の検針データを検針ホストに送信する(ステップS138)。その後、通信回線連係装置は、検針端末に対して検針が終了したことを検針応答として送信(ステップS142)する。検針応答を受信した検針端末は、検針が正常に終了したことを確認する。以上で、一連の定時処理が終了することになる。
【0028】
図9は、図7に示した連係装置1及び連係装置2における図8の一連の処理の流れを毎時60分のタイムテーブルで示したものである。1回目の検針において、連係装置1では、毎時00分からショート・メッセージによる起動信号処理(図8のステップS100〜S124)となり、毎時10分からパケット通信回線を用いた検針ホストによる検針処理(図8のステップS128〜S142)となり、さらに毎時15分から検針ホストによる検針データの取りまとめ処理時間となる。また、連係装置2では、連係装置1の起動信号処理の前の毎時50分から起動信号処理(図8のステップS100〜S124)となり、毎時00分からパケット通信回線による接続確認(図8のステップS127)となり、毎時10分以降が検針ホストによる検針処理(図8のステップS128〜S142)と検針データ取りまとめとなる。このようなタイムテーブルとなった理由は、連係装置1と連係装置2が同時にショート・メッセージによる起動信号によってアクセスすると、上述した位置登録サーバへの負荷集中により回線が接続できなくなるという問題を回避するため、負荷集中とならないように連係装置1と連係装置2の起動信号処理をずらす必要があったためである。
【0029】
次に2回目の検針のタイムスケジュールについて述べる。2回目の検針では、連係装置1では、毎時30分からショート・メッセージによる起動信号処理となり、毎時40分からパケット通信回線を用いた検針ホストによる検針処理となり、毎時45分から検針ホストによる検針データの取りまとめ処理時間となる。また、連係装置2では、連係装置1の起動信号処理の前の毎時20分から起動信号処理となり、毎時30分からパケット通信回線による接続確認となり、毎時40分以降が検針ホストによる検針処理と検針データ取りまとめとなる。しかしながら、連係装置毎にタイムスケジュールを調整することにより、参考例では約1000端末までの処理が限度であった。そこで、携帯電話網の制限を回避した本実施形態について説明する。
【0030】
図3は、図2の遠隔電力検針システムにおける実施形態において、検針端末によるパケット通信回線を用いた接続起動を実行することにより電力量計の検針データを検針ホストに送信する一連の処理の流れを示している。本実施形態における検針方法の特徴的な事項の一つは、従来、通信回線連係装置が行っていたショート・メッセージによる接続起動を検針端末からのパケット通信回線を用いた接続起動に変更することで、携帯電話網の制限を回避して携帯電話端末数を増加させたことである。
【0031】
すでに述べたように、他のシステムでは、検針ホストが電力量計の電力値を収集する前に、通信回線連係装置又は認証装置から検針端末にショート・メッセージによる接続起動を行うことにより回線を接続することが行われている。これに対して本実施形態では、予め決められた時刻に検針端末から携帯電話網にパケット通信回線におけるPPPによる接続起動(PPP:ポイント対ポイント プロトコルによる端末発呼と認証)を行うこととした。その理由は、検針端末の携帯電話端末は絶えず微弱な電波を出して最寄りの基地局と通信を行っており、自ら固定電話に接続起動を行う場合には、すでに通信を行っている基地局から固定電話に接続起動を行うことにより、上述した位置登録サーバへのアクセスを必要としない。このため、携帯電話端末で電話網の制限となる位置登録サーバへのアクセスを無くすことにより、携帯電話端末数を増加することが可能となるからである。
【0032】
以下、図3を用いて検針データを検針ホストに送信する一連の処理の流れを説明する。図3の左側から順番に、電力量計、検針端末、携帯電話網、認証装置、通信回線連係装置及び、検針ホストである。なお、携帯電話網は標準時計により同期が取られており、接続された検針端末も同期が取られている。検針端末は、予め設定されている所定時刻になると携帯電話網のパケット通信回線に接続するため、検針端末のID番号とパスワードを携帯電話網に送信(ステップS10)する。携帯電話網は検針端末の認証を行うため、認証装置に検針端末のID番号とパスワードを送信して検針端末の認証(ステップS12,S14)を行い、認証装置は認証結果通知を検針端末に送信(ステップS16)してPPPによる接続が完了する(ステップS18)。
【0033】
通信回線連係装置は、検針端末との接続を確認するため予め決められた接続確認要求を検針端末に送信する(ステップS20)。接続確認要求を受信した検針端末は、通信が正常であることを確認した後、接続確認応答を通信回線連係装置に送信する(ステップS22)。通信回線連係装置は、接続確認要求に対応する接続確認応答が返信されたことにより検針端末と通信回線連係装置との接続が完了したことを認識する(ステップS24)。通信回線連係装置は、数百台の検針端末との接続を行うと、接続した回線の維持のために、各検針端末に対して定期的に受信応答を送信する(ステップS26)。同様に、各検針端末は通信回線連係装置からの受信応答を受信することにより、回線が維持されていることを認識することができる。このような機能を用いることにより、検針毎に接続と切断が必要であったものが、長時間接続を保つことが可能となる。
【0034】
図3の定時処理は、検針ホスト主導型の定時処理であり、図8の定時処理と同一であることから、図3のステップS28からステップS40の説明は割愛する。検針ホスト主導型の定時処理は、電力量計から確実に検針データを収集することを主眼にした処理であるため、検針ホストが検針要求を出してから検針データを取得するまでの処理時間中は待ち時間となりさらなる効率化が難しい。そこで、図3の定時処理を改良した通信回線連係装置主導型の定時処理を次に示す。
【0035】
図4は、図2の実施形態において、検針端末による接続起動を実行すると共に、通信回線連係装置が検針データを記憶し、検針ホストの検針要求に応じて記憶した検針データを検針ホストに送信する通信回線連係装置主導型の流れを示している。図3と同様に左側から、電力量計、検針端末、携帯電話網、認証装置、通信回線連係装置及び、検針ホストである。検針端末は、予め設定されている所定時刻になると携帯電話網のパケット通信回線に接続するため、ステップS10からステップS26までの処理を実行することになる。なお、ステップS10からステップS26までの処理は図3の処理と同じため、説明を割愛し、ステップS68〜S80までの通信回線連係装置主導型の定時処理を説明する。
【0036】
図4の定時処理は、通信回線連係装置主導型の定時処理であり、最初に、通信回線連係装置が検針ホストの検針に先立ち検針端末に検針要求を伝送(ステップS68)する。検針端末は電力量計に検針要求を伝送(ステップS70)する。検針要求を受信した電力量計は、検針した検針データを検針端末に送信する(S72)。検針端末は、電力量計のIDや検針時刻などの情報を検針データ応答情報として通信回線連係装置に送信する(ステップS74)。通信回線連係装置は、受信した検針データ応答情報を記憶部に記憶する(ステップS75)。ここで、通信回線連係装置は、検針ホストからの検針要求を待つことになる。
【0037】
検針ホストが通信回線連係装置に対して複数の電力量計への検針要求を送信する(ステップS76)と、通信回線連係装置は、検針ホストから要求された複数の電力量計における検針データであることを確認した後、各電力量計の検針データを検針ホストに送信する(ステップS78)。次に、通信回線連係装置は、検針端末に対して検針が終了したことを検針応答として送信し(ステップS80)、検針端末は、検針が正常に終了したことを確認する。以上で、一連の定時処理が終了することになる。
【0038】
このような処理により、図4の検針ホストからの検針要求(ステップS76)を送信してから検針データを受信(ステップS78)するまでは、通信回線連係装置の記憶部との通信となり、短時間に多くの検針データを検針ホストに送信することで、検針ホストの待ち時間が解消され、検針ホストの負荷低減が可能となるばかりでなく、検針ホスト1台当たりの対応可能な検針端末数(携帯電話端末数)を増やすことが可能となる。
【0039】
図5は、検針端末からの接続起動を行った一連の処理の流れを毎時60分のタイムテーブルに示したものである。図5には、2台の通信回線連係装置(連係装置1,連係装置2)のタイムテーブルが示されており、毎時50分から各検針端末からの接続起動(端末発呼)を行い、PPPによるパケット通信回線の接続をする(図4のステップS10〜S24)。次に、毎時00分からパケット通信回線の接続確認(ステップS26)を行った後、毎時10分から検針ホスト又通信回線連係装置が電力量計から検針データを収集する(図4のステップS68〜S80)。次に、検針ホストが収集した検針データの取りまとめ処理を毎時15分から行い、30分サイクルの1回目の検針が終了する。
【0040】
さらに、30分サイクルの2回目の検針は、毎時20分から各検針端末から通信回線連係装置への接続起動であり、毎時30分からパケット通信回線の接続確認であり、毎時40分から電力量計から検針データの収集であり、毎時45分から検針データの取りまとめ処理である。このように、検針端末からの接続起動を行うことにより、各通信回線連係装置のタイムテーブルは同一となり、同一の通信回線連係装置を増やすことにより、携帯電話網の制限を回避しつつ、検針端末からの遠隔電力検針数を増やすことが可能となる。
【0041】
図6は、検針端末の接続起動時刻の起動タイミングの一例を示した表であり、左からグループ番号、端末番号、接続起動時間を示している。本実施形態で特徴的な事項の一つは、検針端末の接続起動のタイミングを通信回線連係装置の処理能力を超えることがないように通信回線連係装置で管理したことである。具体的には、通信回線連係装置の単位時間当たりの処理可能な端末数を基準とし、同時に同じ基地局にアクセスしないように採番された端末番号を各検針端末に割り当てると共に、約500台の検針端末の開始時刻を割り当てるようにしたことである。なお、30分サイクルの1回目接続起動は毎時50分から行い、2回目接続起動は毎時20分から行うが、本実施形態では、20分から20分50秒までと、50分から50分50秒までの接続起動時間となる。
【0042】
ここで、毎時50分からと毎時20分から実行する接続起動における通信回線連係装置の単位時間当たりの端末数は、例えば、10台/秒とした。これにより、接続起動時間は接続起動時間(例えば、毎時20分(毎時1200秒)からの経過秒)に端末番号(例えば、1〜500)を単位時間当たりの端末数で割った商(整数)を加えることで求められる。具体的には、端末番号が16の検針端末の場合、接続起動のディレイは、端末番号÷単位時間当たりの端末数+接続起動時間=16÷10+1200秒=1201秒(毎時20分1秒に接続起動)となる。このようにして求めた接続起動時間は、検針ホストが検針処理をしていない空き時間に検針端末に送信することで設定をした。
【0043】
以上、上述したように、本実施形態に係る遠隔計測システム又は遠隔電力検針システム等を用いることにより、携帯電話網の制限を回避して検針端末数を増加させることが可能になる。なお、本実施形態では、通信回線連係装置の単位時間当たりの端末数を10台/秒、60分のタイムテーブル等を一例として説明したが、これに限定するものではなく、使用するシステム毎に適切な値を設定することが好適である。また、電力の検針に限定するものでもなく、ガス、水道、その他の各種遠隔測定に用いることができる。さらに、本実施形態に係る携帯電話網は、同様の形態を持つ他のネットワークで代用することもでき、使用する通信回線網は携帯電話網に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1 遠隔計測システム、2 計測ホスト、3 通信回線連係装置、4 通信回線網、4a,14a 携帯電話網、4b,14b インターネット、5 計測端末、6 計測器、7 パケット通信処理装置、8,22 基地局、10 遠隔電力検針システム、11a 検針ホスト、11b 系統監視ホスト、12 通信回線連係装置、13 認証装置、15 位置登録サーバ、21 パケット通信処理装置、23 検針端末、24 電力量計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測データを定期的に取得し、通信回線網を用いて送信可能な計測端末と、通信回線網を用いて複数の計測端末と通信する通信回線連係装置と、通信回線連係装置を介して複数の計測端末からの計測データを収集して計測量を管理する計測ホストと、を含む遠隔計測システムにおいて、
通信回線連係装置は、計測ホストの計測スケジュールに応じて、計測端末が通信回線連係装置に接続起動する時刻を各計測端末に予め設定する接続時刻設定手段を有し、
計測端末は、予め設定された時刻に計測端末から通信回線連係装置に接続起動して通信回線連係装置と計測端末とを接続することを特徴とする遠隔計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔計測システムにおいて、
通信回線連係装置は、通信回線連係装置における単位時間当たりの処理可能な計測端末となるように各計測端末が接続起動する時刻を各計測端末に割り当てることを特徴とする遠隔計測システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遠隔計測システムにおいて、
通信回線連係装置は、
計測ホストが通信回線連係装置を介して計測端末からの計測データを収集する前に、通信回線連係装置と計測端末との接続を確認する接続確認手段と、
接続確認手段により計測端末との接続が切れていると判断した場合には、計測端末へ接続起動して接続する再接続手段と、
を有することを特徴とする遠隔計測システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の遠隔計測システムにおいて、
通信回線連係装置は、
計測ホストからの計測要求を受信する前に計測端末へ計測要求を送信し、計測端末から計測データを受信して記憶する記憶手段と、
計測ホストからの計測要求を受信した後に記憶した計測データを計測ホストへ送信する中継手段と、
を有することを特徴とする遠隔計測システム。
【請求項5】
請求項4に記載の遠隔計測システムにおいて、
通信回線連係装置は、記憶した計測データを他の計測ホストに送信する計測データ送信手段を有することを特徴とする遠隔計測システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−124949(P2011−124949A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283351(P2009−283351)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000204424)大井電気株式会社 (25)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】