説明

適応型ペイロード監視システム

掘削機(10)のペイロード監視システム(50)が開示される。このペイロード監視システムは、ツール(16)と、ツールの速度を示す第一の信号を生成するように構成された第一のセンサ(64)と、ツールの持ち上げ力を示す第二の信号を生成するように構成された第二のセンサ(62B)を有していてもよい。ペイロード監視システムはまた、第一のセンサと第二のセンサと通信するコントローラ(60)を備えていてもよい。コントローラは、第一と第二の信号に基づいて、1作業サイクル中のツールの速度と持ち上げ力を記録し、この作業サイクルを、積載状態移動区間を含む複数の区間に分割するように構成されていてもよい。コントローラはまた、積載状態移動区間内の、ツールの速度が略一定である期間を特定し、その期間中に記録された持ち上げ力に基づいて、ツールのペイロードを計算するように構成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に監視システム、より詳しくは、適応型ペイロード監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
掘削機、たとえば油圧掘削機、ドラグライン掘削機、ホイールローダ、フロントショベルは、掘削と掘削土砂の積込みからなる周知のサイクルにしたがって動作する。一般的なサイクルには、掘削する区間、トラックまで揺動する区間、放土する区間、および掘削溝まで揺動する区間が含まれる。これらの区間の各々で、掘削機の動作が異なる。たとえば、掘削区間中はツールを地中に最適な進入角度で押し込むために大きな力と高い精度が必要であるのに対し、トラックまでの揺動区間または掘削溝までの揺動区間では、速い速度が必要であるが、精度はさほど求められない。そのため、掘削機械の制御は、その時点で作業サイクル中のどの区間が実行されているかに応じて変えられることが多い。さらに、各区間中に機械が制御される方法は、機械の生産性と、その生産性を測定、分析する方法に影響を与えうる。
【0003】
生産性を測定するための一般的な方法は、各作業サイクル中にその機械によって掘削され、運搬されるペイロードを監視することである。ペイロードの監視は、掘削機のツールをそのフレームに連結するアクチュエータおよび/または結合部に関連付けられた圧力センサやロードセルによって行うことができる。測定された圧力または力と機械の較正に基づいて、ツール内の土砂の重量を判断することができる。
【0004】
圧力センサまたはロードセルを用いたペイロード測定は、ある程度有効ではあるものの、ツールの動作中は困難な場合がある。すなわち、一般にはペイロード監視のために作業サイクルが中断されることはない。したがって、ペイロードは、作業サイクル実行のためにツールが動作している間に監視しなければならない。作業サイクルの実行中にツールを監視する場合、ツールの運動による(すなわち、ツールの速度および/または加速度の変化による)測定誤差がなるべく生じないように、注意を払うべきである。さらに、必ず作業サイクルの中の掘削区間が完了しており(すなわち、その作業サイクルについてのツールが満杯になっていること)、放土区間がまだ始まっていない(すなわち、監視前に掘削土砂が意図的に減らされていない)ように注意を払うべきである。
【0005】
作業サイクルの実行中に使用できる1つのペイロード監視システムが、1988年2月3日に大塚らに発行された(特許文献1)(以下、「‘719号特許」という)において開示されている。(特許文献1)は、掘削および積み込み装置のための作業負荷検出システムを開示している。この作業負荷検出システムは、バケットを垂直に枢支するシリンダの底圧を測定する底圧センサ検出システムと、検出された底圧に基づいてバケット内の土砂の重量を計算する、バケット内土砂量計算システムとを備える。底圧センサ検出システムは、継続的に底圧を測定し、時間Tdの0.1秒前から0.1秒後までに監視された圧力の平均値を計算する。時間Tdは、バケット放土信号が入力されるタイミングの直前の所定の期間(たとえば2秒)に対応する。次に、平均圧力に基づいて、バケット内土砂量計算システムが、メモリ内に記憶されたマップを参照することによって、バケット内の土砂の重量を計算する。放土が行われる直前に測定された圧力の平均値に基づいて重量を計算することによって、計算の精度は高いかもしれない。
【0006】
(特許文献1)のシステムは、マイナスの影響を避けるために、一般的な作業サイクルの中で概して信頼できる期間にペイロードを計算しているかもしれないが、計算精度はまだ改善できる。すなわち、作業サイクルの中でペイロードを計算するのに最良の期間は常に同じとは限らない。具体的には、オペレータの制御、でこぼこの地形上の移動、環境条件および、制御不能なその他の要因から、最も高い精度で測定できる時間帯は異なる可能性がある。測定を各サイクル中の一定の期間に限定してしまうと、精度を欠いた測定が含まれることになるかもしれない。さらに、(特許文献1)のシステムは、測定期間中のツールの動きを考慮していない。
【0007】
本願で開示するシステムは、上記の問題の1つまたは複数を克服することに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,714,719号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の1つの態様は、ペイロード監視システムに関する。ペイロード監視システムは、ツールと、ツールの速度を示す第一の信号を生成するように構成された第一のセンサと、ツールの持ち上げ力を示す第二の信号を生成するように構成された第二のセンサとを備える。ペイロード監視システムはまた、第一のセンサと第二のセンサと通信するコントローラも備えていてもよい。コントローラは、第一と第二の信号に基づいて、1つの作業サイクル中のツールの速度と持ち上げ力を記録し、その作業サイクルを、積載状態移動区間を含む複数の区間に分割するように構成されていてもよい。コントローラはまた、積載状態移動区間の中で、ツールの速度が略一定である期間を特定し、その期間中に記録された持ち上げ力に基づいてツールのペイロードを計算するように構成されていてもよい。
【0010】
本発明の別の態様は、ペイロードの測定方法に関する。この方法は、1つの作業サイクルについて、ツールの速度を感知するステップと、ツールの持ち上げ力を感知するステップと、ツールの速度と持ち上げ力を記録するステップとを含む。この方法はまた、その作業サイクルを、積載状態移動区間を含む複数の区間に分割するステップと、積載状態移動区間の中で、ツールの速度が略一定の期間を特定するステップを含んでいてもよい。この方法はさらに、期間中に記録された持ち上げ力に基づいてツールのペイロードを計算するステップをさらに含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願による機械の一例を示す概略図である。
【図2】図1の機械とともに使用できる、本願で開示する制御システムの一例を示す構成図式である。
【図3】図2の制御システムが使用できる、本願で開示する制御マップの例である。
【図4】図3に示される制御マップの一部の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、協働して掘削し、掘削土砂を付近の運搬車両12に積み込む複数のシステムと構成要素を有する例示的な機械10を示す。一例として、機械10は油圧掘削機であってもよい。しかしながら、機械10は他の種類の掘削機、たとえばバックホー、フロントショベル、ドラグライン掘削機またはその他同様な機械であってもよいと想定される。機械10は、他の要素に加え、作業ツール16を掘削溝内の掘削位置18と運搬車両12の上方の放土位置20の間で移動させるように構成された動作システム(implement system)14と、動作システム14をマニュアル制御するための運転室22とを備えていてもよい。
【0013】
動作システム14は、流体アクチュエータによる作用を受けて、作業ツール16を移動させる連結構造を有していてもよい。具体的には、動作システム14は、1対の隣接する複動油圧シリンダ28(図1にのみ示される)によって作業面26に関して垂直に旋回するブーム部材24を備えていてもよい。動作システム14はまた、1本の複動油圧シリンダ36によって水平軸32の周囲で垂直に旋回するスティック部材30を備えていてもよい。動作システム14は、水平旋回軸40を中心に垂直に作業ツール16を旋回させるように、作業ツール16に動作的に連結された、1本の複動油圧シリンダ38を備えていてもよい。ブーム部材24は、機械10のフレーム42に旋回可能に連結されていてもよい。フレーム42は、下部走行体44に旋回可能に連結され、揺動モータ49によって、垂直軸46の周囲で揺動されてもよい。スティック部材30は、旋回軸32、40によってブーム部材24を作業ツール16に旋回可能に連結してもよい。希望に応じて、動作システム14に含める流体アクチュエータは上記より多くても、または少なくてもよく、これらを上記以外の方法で連結してもよい。
【0014】
1台の機械10に、何種類もの作業ツール16を取り付けて、運転室22から制御することができる。作業ツール16は、特定の作業を実行するのに使用されるどのような器具であってもよく、たとえばバケット、フォーク装置、ブレード、ショベルまたはその他、当業界で周知のあらゆる作業実行器具がある。作業ツール16は、図1の実施形態においては機械10に関して旋回し、揺動するように連結されているが、その代わりに、またはそれに加えて、回転、スライドまたはその他、当業界で周知のどのような方法で動いてもよい。
【0015】
運転室22は、機械のオペレータからの、所望の作業ツールの運動を示す入力を受け取るように構成されていてもよい。具体的には、運転室22は、運転席(図示せず)の付近に位置付けられた単軸または多軸ジョイスティックとして実現される1つまたは複数のオペレータ入力装置48を備えていてもよい。オペレータ入力装置48は、特定の方向への作業ツールの所望の速度および/または力を示す、作業ツール位置信号を生成することによって、作業ツール16の位置および/または方位を決定するように構成された比例型コントローラであってもよい。この位置信号を使って、油圧シリンダ28、36、38および/または揺動モータ49のうちの任意の1つまたは複数を作動してもよい。その代わりに、またはそれに加えて、別のオペレータ入力装置を運転室22に設けてもよいと想定され、これにはたとえば、(自動車用の)ハンドル(wheels)、ノブ、プッシュプル型装置、スイッチ、ペダル、その他当業界で周知のものがある。
【0016】
図2に示すように、機械10は、作業ツール16の動き(図1参照)を監視、記録および/または制御するように構成された制御システム50を備えていてもよい。特に、油圧制御システム50は、複数のセンサと通信するコントローラ60を含んでいてもよい。ある実施形態において、コントローラ60は、第一のブームセンサ62A、第二のブームセンサ62B、揺動センサ64、バケットセンサ65およびスティックセンサ67と通信してもよい。コントローラ60は、これらのセンサから受け取った入力に基づいて、機械10によって実行された一般的な作業サイクルを複数の区間、たとえば掘削区間、トラックまでの揺動区間(すなわち、積載状態での揺動区間)、放土区間および掘削溝までの揺動区間(すなわち、空状態での揺動区間)等に分割し、これらの区間の中から選択された1つの区間のペイロードを監視するように構成されていてもよく、これについて以下に詳細に説明する。
【0017】
コントローラ60は、制御システム50の動作を実行するための手段を備える1つのマイクロプロセッサまたは複数のマイクロプロセッサとして実現してもよい。多数の市販のマイクロプロセッサを、コントローラ60の機能を実行するように構成することができる。コントローラ60は、機械の多数の機能を制御できる一般的な機械用マイクロプロセッサで容易に実現できることがわかるであろう。コントローラ60は、メモリ、二次的記憶デバイス、プロセッサおよび、アプリケーションを実行するためのその他の構成要素を備えていてもよい。コントローラ60には、各種のその他の回路、たとえば電源回路、信号処理回路、ソレノイド駆動回路およびその他の種類の回路を関連付けてもよい。
【0018】
センサ62A、62B、64、65、67からの信号を一般的な掘削作業サイクルの異なる区間に関係付ける1つまたは複数のマップ66を、コントローラ60のメモリの中に記憶させてもよい。これらのマップの各々は、表、グラフおよび/または等式の形態のデータの集合を含んでいてもよい。一例として、区間の1つまたは複数の開始および/または終了に関連する閾値の速度をマップに記憶させてもよい。別の例として、区間の1つまたは複数の開始および/または終了に関連する閾値の力をマップに記憶させてもよい。また別の例においては、作業ツール16の速度および/または力を、1回の掘削作業サイクル全体を通じてマップの中に記録し、その後、コントローラ60が掘削作業サイクルの分割中にこれらを分析してもよい。コントローラ60は、機械10のオペレータが、サイクルの分割および/またはペイロードの監視を行うために、これらのマップを直接変更し、および/またはコントローラ60のメモリに記憶された利用可能な関係マップから特定のマップを選択できるように構成してもよい。上記に加えて、または上記の代わりに、希望に応じて、マップを機械の動作モードに基づいて自動的に選択可能としてもよいと想定される。
【0019】
第一のブームセンサ62Aは、油圧シリンダ28によって与えられる作業ツール16の垂直旋回運動に関連付けられていてもよい(すなわち、フレーム42に対するブーム部材24の上昇および下降運動に関連付けられていてもよい)。具体的には、第一のブームセンサ62Aは、ブーム部材24とフレーム42の間の軸継手に関連付けられる角度位置または速度センサ、油圧シリンダ28に関連付けられる変位センサ、作業ツール16をフレーム42に連結する連結部材または作業ツール16自体に関連付けられるローカルまたはグローバル座標位置または速度センサ、オペレータ入力装置48の動きに関連付けられる変位センサ、あるいは機械10の旋回位置または速度を示す信号を生成できる、当業界で周知のその他どのような種類のセンサであってもよい。この信号は、各掘削サイクル中にコントローラ60に送信されてもよい。コントローラ60は、希望に応じて、第一のブームセンサ62Aからの位置信号と経過時間に基づいて旋回速度を導き出してもよいと想定される。
【0020】
第二のブームセンサ62Bは、油圧シリンダ28によって与えられる作業ツール16の垂直旋回力に関連付けられていてもよい(すなわち、フレーム42に関するブーム部材24の持ち上げ力に関連付けられていてもよい)。具体的には、第二のブームセンサ62Bは、測定された圧力または圧力差に基づいてその力を判断するために使用される、油圧シリンダ28に関連付けられる圧力センサ、ブーム部材24とフレーム42の連結に関連付けられるひずみゲージ、ある種のロードセル、あるいは、力を監視し、それに応答して信号を生成する、当業界で周知のその他どのような装置であってもよい。この信号は、各掘削サイクル中にコントローラ60に送信されてもよい。
【0021】
揺動センサ64は、揺動モータ49によって与えられる作業ツール16の略水平な揺動(すなわち、下部走行体44に対するフレーム42の運動)に関連付けられていてもよい。具体的には、揺動センサ64は、揺動モータ49の動作に関連付けられる回転位置または速度センサ、フレーム42と下部走行体44の間の軸連結に関連付けられる角度位置または速度センサ、作業ツール16を下部走行体44に連結する連結部材または作業ツール16自体に関連付けられるローカルまたはグローバル座標位置または速度センサ、オペレータ入力装置48の運動に関連付けられる変位センサ、あるいは、機械10の揺動位置または速度を示す信号を生成できる、当業界で周知のその他どのような種類のセンサであってもよい。この信号は、各掘削サイクル中にコントローラ60に送信され、記録されてもよい。あるいは、希望に応じて、コントローラ60は、揺動センサ64からの位置信号と経過時間に基づいて、揺動速度を導き出してもよいと想定される。
【0022】
バケットセンサ65は、油圧シリンダ38によって与えられる作業ツール16の旋回力に関連付けられていてもよい。具体的には、バケットセンサ65は、油圧シリンダ38内の1つまたは複数のチャンバに関連付けられる圧力センサ、作業ツール16とスティック部材3の間の軸連結に関連付けられるひずみゲージ、ロードセル、あるいは、作業ツール16の掘削および放土動作中の機械10の旋回力を示す信号を生成する、当業界で知られているその他どのような種類のセンサであってもよい。この信号は、各掘削サイクル中にコントローラ60に送信されてもよい。
【0023】
スティックセンサ67は、油圧シリンダ36によって与えられる作業ツール16の垂直旋回力に関連付けられてもよい(すなわち、ブーム部材24に対するスティック部材30の持ち上げ力に関連付けられてもよい)。具体的には、第二のスティックセンサ67は、測定された圧力または圧力差に基づいてその力を判断するために使用される油圧シリンダ36に関連付けられる圧力センサ、スティック部材30とブーム部材24との連結に関連付けられるひずみゲージ、ある種のロードセルあるいは、力を監視し、それに応答して信号を生成する、当業界で周知のその他どのような装置でもよい。この信号は、各掘削サイクル中にコントローラ60に送信されてもよい。
【0024】
図3に関して、曲線68は、センサ64から受信した信号に基づいてコントローラ60によって記録された、掘削作業サイクルの各区間の機械10の揺動速度を表し得る。掘削区間の大部分において、揺動速度は一般に、ほぼゼロでありうる(すなわち、機械10は、掘削動作中は概して揺動しないかもしれない)。掘削ストロークが終了すると、機械10は一般に、作業ツール16を待機中の運搬車両12(図1参照)へと揺動させるように制御されるかもしれない。したがって、機械10の揺動速度は、掘削区間の終了に向かって増大を開始するかもしれない。掘削作業サイクルの中のトラックまでの揺動区間が進むと、揺動速度は、作業ツール16が掘削位置18と放土位置20の略中間で最大となり、その後、トラックまでの揺動区間の終了に向かって低下するかもしれない。放土区間の大部分において、揺動速度は一般にほぼゼロかもしれない(すなわち、機械10は、放土動作中は概して揺動しないかもしれない)。放土が終了すると、機械10は一般に、再び作業ツール16を掘削位置18(図1参照)に揺動させるように制御されるかもしれない。したがって、機械10の揺動速度は、放土区間の終了に向かって増加するかもしれない。掘削サイクルの中の掘削溝までの揺動区間が進むと、揺動速度は、トラックまでの揺動区間の揺動方向と反対の方向において最大限に到達するかもしれない。この最大速度は一般に、作業ツール16が放土位置20と掘削位置18の略中央にあるときに到達されるかもしれない。作業ツール16の揺動速度はその後、掘削溝までの揺動区間の終了に向かって、作業ツール16が掘削位置18に近づくにつれて低下するかもしれない。
【0025】
コントローラ60は、現在の掘削作業サイクルを、センサ62A、64、65から受け取った信号に基づいて、前の掘削作業サイクルに関して記録された機械10の揺動速度と旋回力を参照して(マップ66の曲線68を参照して)、上記の4つの区間に分割するかもしれない。通常、コントローラ60は掘削作業サイクルの分割を、少なくとも3つの異なる条件が満足されたことに基づいて行ってもよく、1つの条件はセンサ62Aによって測定された揺動運動に関するもの、1つの条件はセンサ64によって測定された旋回運動に関するもの、1つの条件はセンサ65によって測定された旋回力に関するものである。たとえば、コントローラ60は、現在の掘削作業サイクルを分割するのに、現在の機械10の揺動速度が前のトラックまでの揺動区間中に記録された最大揺動速度の量を超え、旋回速度が閾値速度の数値を超え、かつ旋回力が閾値より小さいときに、掘削区間とトラックまでの揺動区間との区切りとしてもよい。一例として、この量は、前のトラックまでの揺動区間中に記録された最大揺動速度の約20%であってもよく、閾値速度は約5°/秒であってもよい。閾値旋回力は、機械10の大きさとその用途に基づいて変わるかもしれない。希望に応じて、閾値旋回力は、揺動速度と同様に、前に記録されたサイクル中に発生された最大力に基づいていてもよいと想定される。
【0026】
掘削作業サイクルを分割するのに、上記と同様の方法で、トラックまでの揺動区間と放土区間との間を区切ってもよい。特に、コントローラ60は、現在の掘削作業サイクルを分割するのに、機械10の現在の揺動速度が前のトラックまでの揺動区間中に記録された最大揺動速度の約20%未満へと低下し、旋回速度が約5°/秒未満へと低下し、かつ旋回力が閾値を超えたときに、トラックまでの揺動区間と放土区間との間の区切りとしてもよい。
【0027】
掘削区間およびトラックまでの揺動区間と異なり、放土区間の完了は、旋回速度に関係なく、現在の揺動速度、現在の旋回方向、および旋回力に基づいて判断してもよい。すなわち、コントローラ60は、機械10の現在の揺動速度が前の掘削溝までの旋回区間中に記録された最大揺動速度の約20%を超え、旋回方向が掘削位置18に向かっており(すなわち、トラックまでの揺動区間の旋回方向の反対方向または重力の向く方向と同じ方向)、かつ旋回力が閾値より小さくなったときに、掘削作業サイクルの分割において放土区間と掘削溝までの揺動区間との間の区切りとしてもよい。曲線68はマイナスの速度として示されているが、揺動速度のこのマイナス部分は、揺動速度の方向がトラックまでの揺動区間に見られた揺動方向と反対であることを示すにすぎない点に注意するべきである。状況により、トラックまでの揺動区間と掘削溝までの揺動区間の最大揺動速度は略同じ大きさであることがある。
【0028】
コントローラ60は、機械10の現在の揺動速度が前の掘削溝までの揺動区間中に記録された最大揺動速度の約20%より低下し、旋回速度が約5°/秒より低下し、かつ旋回力が閾値の量より大きくなったときに、掘削溝までの揺動区間を掘削区間から区切ってもよい。この分割が行われた後、コントローラ60は、すでに記録されている次の掘削作業サイクルに関して、上記のプロセスを繰り返してもよい。
【0029】
状況により、各掘削作業サイクルおよび/または各掘削作業サイクルの各区間に、経過時間または特定の発生時間に応じてインデックスをつけることが有利かもしれない。このような状況では、制御システム50は、コントローラ60と通信するタイマ70を備えていてもよい。コントローラ60は、タイマ70から信号を受け取り、その信号に関連付けられる動作情報を記録するように構成されていてもよい。たとえば、コントローラ60は、使用者が決定した期間内に完了したサイクルの総数、各サイクルを完了するのに要した時間、使用者が決定した期間中に完了した区間の数、各区間を完了するための時間、各サイクルの発生時間、各サイクルの各区間の発生時間等を記録するように構成されていてもよい。各作業サイクルは、各放土区間が発生し、検出された後に完了したとみなしてもよい。この情報は、機械10の生産性および/または効率を判断するのに利用してもよい。
【0030】
コントローラ60はまた、第二のブームセンサ62A、揺動センサ64およびスティックセンサ67からの信号に基づいて、また分割された作業サイクルに基づいて、作業ツール16のペイロードを動的に測定するように構成されていてもよい。特に、作業サイクルを上記の4つの区間に分割した後、コントローラ60は、ペイロード測定のためにトラックまでの揺動区間(すなわち、土砂を積載した状態での揺動区間)を選択してもよい。ペイロード測定のためにトラックまでの揺動区間を選択することにより、コントローラ60は、作業ツール16に積載される土砂のすべてがすでに積載され(すなわち、掘削区間が完了し)、測定前に土砂が意図的に減らされていない(すなわち、放土区間がまだ完了していない)ようにするのに役立つかもしれない。コントローラ60はその後、トラックまでの揺動区間内で、ペイロードを最も正確に測定できるサンプリング期間を特定してもよい。
【0031】
サンプリング期間は、トラックまでの揺動区間の中で作業ツール16の速度が略一定の期間(すなわち、揺動速度の変化が最も小さい期間)であってもよい。曲線68からわかるように、揺動速度は、トラックまでの揺動区間全体の略中間の地点で最高となり、サンプリング期間は一般に、概してこの最大速度地点に位置付けてもよい。サンプリング期間は一般に開始時と終了時が略同じ速度で(すなわち、サンプリング期間の境界は、略同じ速度で関連付けられていてもよい)、その長さは最大揺動速度とサンプリング期間中に採取されたペイロードサンプルの質に基づいて変化するかもしれない。ある実施形態において、サンプリング期間の開始時と終了時の速度は約15°/秒であってもよく、作業ツール16のペイロードを正確に測定するのに必要な質の高いペイロードサンプルの数は、約100であってもよい。
【0032】
コントローラ60は、所定の基準に基づいて、各ペイロードサンプルの適格性を認定してもよい。すなわち、コントローラ60はセンサ62B、67からの力信号とセンサ62A、64からの速度信号を継続的にサンプリングしてもよいが、作業サイクル完了後の後処理を通じて、コントローラ60は所定の基準を満たすサンプルだけを使用してもよい。このようにして、ペイロード測定の精度を確保してもよい。したがって、サンプリング期間の長さは異なるかもしれず、サンプリング期間の境界となる開始時と終了時の速度は、100の適格サンプルを生成するのに要した期間内のサンプル総数に基づいて変化するかもしれない。所定の基準は、機械10のオペレータにより要求される作業ツール16の方向転換の回数、ブーム部材24とスティック部材30の速度安定性、油圧シリンダ28、36の伸展状態、サンプリング期間中の作業ツール16からの掘削土砂漏出量に関連付けられていてもよい。一例として、適格サンプルでは、方向転換が要求または実行されないかもしれない。別の例として、適格サンプルでは、ブーム部材24とスティック部材30の速度は閾値内で一定でなければならない。さらに別の例として、適格サンプルでは、油圧シリンダ28、36は端部停止位置にないか、また静止摩擦状態から移動していないかもしれない。他の例として、適格サンプルでは、作業ツール16からの掘削土砂漏出が閾値の量より少なくなくてはならない。この閾値の量は異なっていてもよく、特定の機械や用途に基づいていてもよい。これらの基準を満たす、コントローラ60が採用する各サンプルを適格サンプルとみなし、ペイロード測定に使用してもよい。
【0033】
コントローラ60は、適格サンプルを利用して、コントローラ60のメモリに記憶された1つまたは複数のマップを参照することによって、ペイロードを判断してもよい。具体的には、これらのマップは、センサ62A、62B、64、67からの信号のうち上記の品質基準を満たした信号を、作業ツール16のペイロードに関係付けてもよい。これらのマップの各々は、表、グラフおよび/または等式の形態のデータの集合を含んでいてもよい。一例として、センサ62B、67から受信した信号の関数として計算された力に関する数値と、センサ62A、64からの信号の関数として計算された速度に関する数値が、マップ中のペイロードの数値に関係付けられてもよい。1つの実施形態において、力に関する数値を計算するのに使用される関数は、サンプリング期間中に取得した100の適格サンプルを考慮に入れた平均関数(averaging function)であってもよい。同様に、速度に関する数値を計算するのに使用される関数も、サンプリング期間中に取得した100の適格サンプルを考慮に入れた平均関数であってもよい。
【0034】
機械10が老化し、点検または修理され、あるいはその構成要素が交換されると、コントローラ60は、ペイロード測定の正確さを確保するのに役立てるために、較正を要求するかもしれないと想定される。1つの実施形態において、較正は、通常の作業サイクル中に現場で実行することができる。すなわち、較正は作業サイクルの、作業ツール16が実質的に空であるときの掘削溝までの揺動区間中に実行してもよい。較正は、空状態揺動区間中にペイロードを測定し、測定されたペイロードを、コントローラ60のメモリに記憶された作業ツール16の既知の重量と比較することによって実行してもよい。上記の代わりに、あるいは上記に加えて、希望に応じて、既知の重量を較正工程中に作業ツール16に積載させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願で開示する制御システムは、略反復的な作業サイクルを実行し、作業サイクル中に移動されるペイロードに関する知識が重要ないかなる掘削機に適用してもよい。本願で開示する制御システムは、作業サイクルの中で、最も正確な数値が得られる可能性のある最適なサンプリング期間を決定することによって、作業サイクルを中断することなく、ペイロードを動的に測定できる。最適なサンプリング期間は、積載状態揺動区間中に、作業ツール16の速度が最も安定しているときに選択してもよい。
【0036】
本願で開示する制御システムは、いくつかの利点を伴うかもしれない。第一に、コントローラ60は速度と力に応じて掘削作業サイクルを分割し、ペイロード決定のために積載状態揺動区間(すなわち、トラックまでの揺動区間)だけを選択してもよいため、測定プロセスが異なっていてもよい。そして、コントローラ60は、作業ツール16の速度が最も安定している期間をサンプリング期間として選択するため、測定精度を高くすることができる。さらに、そのサンプリング期間を機械10に対する制御の変化に基づいて適応させることにより、作業サイクル間で分割の正確さを保つことができる。
【0037】
当業者にとって、本願で開示するペイロード監視システムに、さまざまな変更や改変を加えることができることは明らかであろう。本願で開示するペイロード監視システムの仕様と実践から考えれば、他の実施形態も当業者には明らかであろう。たとえば、本願で開示するシステムでは、トラックまでの揺動区間中の、最大揺動速度を中心としたサンプリング期間に焦点が当てられているが、希望に応じて、上記に加えて、あるいは上記の代わりに、トラックまでの揺動区間中の開始時および/または終了時の、速度が略安定しているときにペイロード監視を行ってもよいと想定される。同様に、最も正確にペイロードの監視を行うことのできる時間に対応する速度を常に測定するのではなく、希望に応じて、掘削位置と放土位置の間のペイロード監視に最適な位置または速度に対応する地点を測定し、利用してもよいと想定される。仕様と例は単に説明のための例示として考えるべきであり、実際の範囲は、以下の特許請求範囲およびそれと同等のものによって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツール(16)と、
ツールの速度を示す第一の信号を生成するように構成された第一のセンサ(64)と、
ツールの持ち上げ力を示す第二の信号を生成するように構成された第二のセンサ(62B)と、
第一のセンサと第二のセンサと通信し、
第一と第二の信号に基づいて、作業サイクル中のツールの速度と持ち上げ力を記録し、
作業サイクルを、積載状態移動区間を含む複数の区間に分割し、
積載状態移動区間の中の、ツールの速度が略一定の期間を判定し、
当該の期間中に記録された持ち上げ力に基づいて、ツールのペイロードを計算する
ように構成されたコントローラ(60)と、
を備えるペイロード監視システム(50)。
【請求項2】
速度は、持ち上げ力の方向に略垂直な揺動方向の速度である、請求項1に記載のペイロード監視システム。
【請求項3】
記録された速度は、当該の期間内に最大に達する、請求項1に記載のペイロード監視システム。
【請求項4】
当該の期間の境界において記録された速度が、ある作業サイクルについて略等しい、請求項3に記載のペイロード監視システム。
【請求項5】
コントローラは、当該の期間中に取得した、必要最低個数の持ち上げ力のサンプルを平均するようにさらに構成され、当該の期間の長さは必要最低個数と速度によって異なる、請求項1に記載のペイロード監視システム。
【請求項6】
コントローラは、
各持ち上げ力サンプルを、オペレータが要求したツールの方向転換、ツールの移動に関わる少なくとも1つのアクチュエータの伸張状態、ツールの運動の安定性または、各持ち上げ力サンプルが取得されたときに発生するペイロード漏出量のうちの少なくとも1つに基づいて、適格であると認定し、
必要最低個数の適格持ち上げ力サンプルが取得されるまで、当該の期間を延長する
ようにさらに構成される請求項5に記載のペイロード監視システム。
【請求項7】
ツール(16)の速度を感知するステップと、
ツールの持ち上げ力を感知するステップと、
作業サイクル中に、ツールの速度と持ち上げ力を記録するステップと、
作業サイクルを、積載状態移動区間を含む複数の区間に分割するステップと、
積載状態移動区間の中で、ツールの速度が略一定の期間を判定するステップと、
当該の期間中に記録された持ち上げ力に基づいて、ツールのペイロードを計算するステップと、
を含むペイロード測定方法。
【請求項8】
記録された速度は、当該の期間内に最大に達し、
当該の期間の境界で記録された速度は、ある作業サイクルについて略等しい、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
当該の期間中に取得された、必要最低個数の持ち上げ力サンプルを平均するステップと、
各持ち上げ力サンプルの適格性を認定するステップであって、この認定は、オペレータが要求したツールの方向転換、ツールの移動に関わる少なくとも1つのアクチュエータの伸張状態、ツールの運動の安定性または、各持ち上げ力サンプルが取得されたときに発生するペイロード漏出量のうちの少なくとも1つに基づいて行われるステップと、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ツール(16)と、
ツールに旋回可能に連結された連結部材(24)と、
連結部材を第一の方向に揺動させるように構成された第一のアクチュエータ(50)と、
ツールの揺動速度を示す第一の信号を生成するように構成された第一のセンサ(64)と、
第一の方向に略垂直な第二の方向に連結部材を持ち上げるように構成された第二のアクチュエータ(28)と、
ツールの持ち上げ力を示す第二の信号を生成するように構成された第二のセンサ(62B)と、
第一のセンサと第二のセンサと通信し、
第一と第二の信号に基づいて、ある作業サイクル中にツールの揺動速度と持ち上げ力を継続的に記録し、
作業サイクルを、掘削区間、積載状態移動区間、放土区間および空状態移動区間に分割し、
積載状態移動区間の中で、ツールの速度が略一定で、最大値に到達する期間を判定し、
作業サイクル完了後に、当該の期間中に記録された、必要最低個数の認定持ち上げ力サンプルに基づいてツールのペイロードを計算する
ように構成されたコントローラ(50)と、
を備える機械(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−516755(P2011−516755A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549888(P2010−549888)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/036208
【国際公開番号】WO2009/111650
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】