説明

遮光性立体編物

【課題】人間が着用する衣服に関し、特にスポーツ用途、例えば野球、サッカーや陸上競技などの太陽の下で行う各種運動競技やそれに準ずる運動をするために着用される、太陽光遮蔽性と通気性を有する衣服に好ましく用いられる布帛を得る。
【解決手段】開口部を有する表裏地組織とこの表裏地組織部を連結する連結糸よりなる立体構造経編地であって、各開口部分が所定の間隔で配列され、それぞれ表裏で互いに位置をずらせて編成されてなる遮光性立体編物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人間が着用する衣服に関し、特にスポーツ用途、例えば野球、サッカーや陸上競技などの太陽光の下で行う各種運動競技やそれに準ずる運動をするために着用される、太陽光遮蔽性と通気性を有する衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運動用の衣服に於いては、従来運動機能及び運動を妨げないように伸縮性の高い基布が用いられてきた。
更に、運動において出る汗をすばやく吸収し発散させる技術もいろいろ開発されてきた。
また、運動には室内と室外の運動がありとりわけ室外の運動に関しては太陽光により体温が上昇し発汗量が多くなり体力の消耗をはやめるおそれがある。
そこで衣服はクーリング機能を持たせるため、衣服の通気性を上げて体温の上昇を抑えるべく、衣服に小さな開口部を設け体熱の放散や汗の蒸発を促進させる構造を衣服が開発されている。
しかし、通気性を上げるために、開口部を大きくすると、太陽光が肌に直接照射されやすくなり、そのために体温が上昇してしまうおそれがあった。更に、長時間太陽光にさらされることで、皮膚が炎症を起こしてしまうなどの問題が発生するおそれがあった。このように通気性を上げ、体力の消耗を抑えるための方策が、逆に体力を消耗させてしまうという問題があった。
また、多数の開口部を設けた布帛からなる衣服の着用を繰り返すと布帛の保形成が悪くなり布帛が変形してしまうという問題もあった。
、これらの問題を解決するために、開口部を有する布帛を同士を貼り合わせて、太陽の光を遮断する技術も開発されている。
しかし、貼り合わせの精度やコスト、貼り合わせによる基布の風合いの硬化と剥離の問題があり、更に、貼り合わせによるコスト増加、重量の増加なども問題となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、太陽光による体温の上昇を抑え且つ通気性に優れた運動衣服に好ましく用いられる遮光性を有する立体編物を提供する。
本発明の立体編物は丸編、横編、経編の編物で2枚の地組織で編成される編物が良いが、特に保型性に優れた経編のダブルラッセル編機で編成されたものが良い。
丸編、横編は編地の編成は1本の糸で編地を編成するため、伝線と呼ばれる編地の解れ、又は、編地の連結が横方向に編成されるため、衣服として使用する場合縦方向に衣服の重量で伸びて戻らない衣服の保型性に乏しい。
本発明は表裏地組織を連結糸で連結された開口部を有する立体編物を使用することがもっとも好ましい。
表裏地組織面の開口部と開口部の周りの地組織を任意にコース方向、ウエル方向に異なる位置にて編成する事により、表裏開口部同士が同一位置で編成された場合に比べて、通気性は変わらず太陽の光を遮断する事により身体の温度の上昇を抑え運動機能を維持することが出来る事を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上述の問題を解決するためになされたもので、太陽光遮蔽性と通気性を有する、クーリング効果に優れた特性を有するようになされたスポーツ衣料用途に適した立体編物である。すなわち、(1)に、開口部を有する表裏地組織とこの表裏地組織部を連結する連結糸よりなる立体構造経編地であって、各開口部分が所定の間隔で配列され、それぞれ表裏で互いに位置をずらせて編成されてなる遮光性立体編物である。
また、(2)に表裏地組織の開口部が一方の開口部面積に対して5〜100%ずれていることを特徴とする(1)記載の遮光性立体編物である。
また、(3)に、遮光率が35〜90%であることを特徴とする(1)乃至(2)記載の遮光性立体編物である。
また、(4)に、表裏地組織を連結糸で連結された表裏開口部を有する立体編物の地組織の開口率が25〜75%である(1)乃至(3)記載の遮光性立体編物である。
また、(5)に、厚さが0.5〜3.0mmである(1)乃至(4)記載の遮光性立体編物である。
また(6)に、裏地組織を連結糸で連結された表裏開口部を有する立体編物の地組織の編成糸が高収縮糸、又は、伸縮性を有する弾性糸などを用いて編成されたことを特徴とする(1)乃至(5)記載の立体編物である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の立体編物は上記のような構成を有するため、太陽光を直接受ける部分を減らし、かつ十分な通気性を有しているため、屋外で活動する際も、衣服内の温度上昇を抑え、更に開口部から照射される太陽光の透過による日焼けを低減することができる、スポーツ衣料に適した立体編物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明者らは、前述の問題点を解決すべく鋭意研究の結果、表裏の2枚の地組織と両地組織を連結糸で連結してなる立体編地において、図1に模式的に示すように前記表裏地組織の両方に開口部を有し、更に表裏地組織の開口部が互いに位置をずらせて編成されてなることを特徴とする遮光性を有する立体編物である。
表裏開口部のズレ率は、表裏地組織の開口部が一方の開口部面積に対し5〜100%ずれていることが好ましい。ズレ率が5%未満であると太陽光の遮蔽効果が十分に得られず、100%を越えると太陽光遮蔽効果は得られるが、通気性が損なわれるおそれがある。ズレの方向は特に限定されず、コース方向ウエル方向など適宜に設定することができる。
また、その遮蔽率は35〜90%であることが好ましい。遮蔽率が35%未満であると、太陽光の遮蔽が十分行われず、体温が上昇したり、皮膚が日焼けによる障害を起こすおそれがある。また、90%以上になると、布帛が硬くなったりして風合いが損なわれるおそれがあり、更に布帛の重量が大きくなりすぎて衣服にした時の着用感が悪くなるおそれがある。
また、地組織の開口率は25〜75%であることが好ましい。開口率が25%未満であると通気性が損なわれるおそれがあり、更に布帛重量が大きくなるおそれがある。また開口率が75%より大きくなると布帛の強度が十分保てなくなるおそれがあり、更には、十分に太陽光を遮蔽することができなくなるおそれがある。
また、布帛の厚みは1.0〜3.0mmが好ましい。布帛厚みが1.0mmより小さいと布帛の強度が十分保てなくなるおそれがあり、太陽光を十分に遮蔽することが難しくなる。また、布帛厚みが3.0mmより厚くなると、布帛の重量が大きくなりすぎたり、布帛の風合いが硬いものになるおそれがある。
また、本発明の布帛は地組織の編成に伸縮性を有する弾性糸を含んで編成されることが好ましい。伸縮性のある布帛を編成することにより、スポーツ用途などに好ましく用いることができる。
更に、本発明の布帛において、表裏の開口部が同一組織で編成されていることが好ましい。
【実施例】
【0007】
以下、実施例を用いて本発明の立体編地及びその評価方法を具体的に説明する。
〔遮光率〕
JIS L―1055 B法に準じて測定した。
〔通気度〕
JIS L−1096.27.A法に準じて測定した。
〔開口率〕
被試験布を7cm×7cmの大きさにカットした。表面(開口面)にスタンプ用のインク(シャチハタスタンプ台)を万遍なく付着させた後、白紙を載せた。その上から直径7cmの円柱形の錘5kgを載せて、10秒間放置した。その後、被試験布から白紙を取り除き、5cm×5cmの大きさに整えた後、白紙に付着したインクの面積(接地面積)を測定した。なお、面積の測定は5cm×5cmの大きさに整えた紙をスキャナーでパソコン内に読み込み、インクと白紙の色を2値化してインク色のドットを積分により集計して行った。開口率は下記の式を用いて求めた。
開口率(%)=白紙の面積/インク付着面積×100
[実施例1]
【0008】
マイヤー製RD6DPLM−77E−22Gを使用して筬L−1:L−2で裏面開口部を有する地組織を編成し、筬L-4、L-5で表面開口部を有する地組織を編成した。筬L−3は連結糸であり表裏地組織を連結し立体編物を編成した。
裏面開口部を編成する筬L−1:L−2と表面開口部を編成する筬L−4:L−5の編み糸は3本編み糸を入れ1本糸抜きの配列をウエル方向に繰り返して編成した。
表面地組織の開口部と裏面地組織の開口部の編成組織は同一で編成し表面開口部に対して裏面開口部をコース方向にずらして編成した。
表面開口部に対して裏面開口部は25%ウエル方向にずれていた。
厚み2.2mmの立体編物を作成した。
仕上がり性量及び評価は表1に示す。
[実施例2]
【0009】
マイヤー製RD6DPLM−77E−22Gを使用して筬L−1:L−2で裏面開口部を有する地組織を編成し、筬L-4、L-5で表面開口部を有する地組織を編成した。筬L−3は連結糸であり表裏地組織を連結し立体編物を編成した。
裏面開口部を編成する筬L−1:L−2と表面開口部を編成する筬L−4:L−5の編み糸は3本編み糸を入れ1本糸抜きの配列をウエル方向に繰り返して編成した。
表面地組織の開口部と裏面地組織の開口部の編成組織は同一で編成し表面開口部に対して裏面開口部をコース方向にずらして編成した。
表面開口部に対して裏面開口部は50%ウエル方向にずれていた。
厚み0.8mmの立体編物を作成した。
仕上り性量及び評価は表1に示す。
[実施例3]
【0010】
マイヤー製RD6DPLM−77E−22Gを使用して筬L−1:L−2で裏面開口部を有する地組織を編成し、筬L-4、L-5で表面開口部を有する地組織を編成した。筬L−3は連結糸であり表裏地組織を連結し立体編物を編成した。
裏面開口部を編成する筬L−1:L−2と表面開口部を編成する筬L−4,L−5の編み糸は3本編み糸を入れ1本糸抜きの配列をウエル方向に繰り返して編成した。
表面地組織の開口部と裏面地組織の開口部の編成組織は同一で編成し表面開口部に対して裏面開口部をコース方向にずらして編成した。
表面開口部に対して裏面開口部は75%コース方向にずれていた。
厚み1.2mmの立体編物を作成した。
仕上り性量及び評価は表1に示す。
[比較例1]
【0011】
トリコット編機KS−3−28G(マイヤー製)を使用して、図に示すように筬L−1と
L-2で1枚の地組織を編成した。地組織を編成する筬L−1:L−2の編糸は3本編み糸を入れ1本糸抜きの配列をウエル方向に繰り返して開口部を有する地組織を編成した。
厚み0.6mmの編地を作成した。
仕上がり性量及び評価は表1に示す。
【0012】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の表裏の地組織の開口部がずれている様子を示した概略図です。
【符号の説明】
【0014】
1・・・表面地組織の開口部
2・・・裏面地組織の開口部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する表裏地組織とこの表裏地組織部を連結する連結糸よりなる立体構造経編地であって、各開口部分が所定の間隔で配列され、それぞれ表裏で互いに位置をずらせて編成されてなる遮光性立体編物。
【請求項2】
表裏地組織の開口部が一方の開口部面積に対して5〜100%ずれていることを特徴とする請求項1記載の遮光性立体編物。
【請求項3】
遮光率が35〜90%であることを特徴とする請求項1乃至2記載の遮光性立体編物。
【請求項4】
表裏地組織を連結糸で連結された表裏開口部を有する立体編物の地組織の開口率が25〜75%である請求項1乃至3記載の遮光性立体編物。
【請求項5】
厚さが0,5〜3.0mmである請求項1乃至4記載の遮光性立体編物。
【請求項6】
表裏地組織を連結糸で連結された表裏開口部を有する立体編物の地組織の編成糸が高収縮糸、又は、伸縮性を有する弾性糸などの編成糸を用いて編成されたことを特徴とする請求項1乃至5記載の立体編物。



【図1】
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【公開番号】特開2007−23439(P2007−23439A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209313(P2005−209313)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】