説明

遮光装置及び表示装置

【課題】複数の表示装置に遮光装置を装着した状態で、表示画像間の距離を短くする構造を提案すること。
【解決手段】モニタ1、2は隣接して横並びに配置され、フード3はモニタ1、2の上面を覆う第1の遮光部(左天面部4a、右天面部4b)と、左右両端の側面を覆う第2の遮光部(左側面フード5aと右側面フード5b)を備える。左天面部4aと右天面部4bは回動可能に結合され、フード3の回動中心は、モニタ1、2の側縁部同士が接する部分、つまりベゼル垂直部1b、2bの稜線の延長線上に位置する。左天面部4a、右天面部4bは、リンク構造体と該リンク構造体で囲まれた遮光シートを有し、リンク構造体を連結する回動軸6aを中心に回動可能である。リンク構造体が保持する遮光シートは遮光性と伸縮性を有する。モニタ1、2が角度をなす配置で使用してもフード3はモニタ配置に追従して外光を遮光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表示画面を見易くするために用いる遮光フード(シェード)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ画面やコンピュータ画面の表示、広告表示、医療用途などに画像表示装置が用いられる。表示画面を長時間注視する仕事、あるいは画像の質感や色彩などに関する創作や編集の作業で使用される画像表示装置では、使用環境、特に画面への外光の映り込みを使用者は煩わしいと感ずることがある。この対策として、画像表示装置に遮光フードを装着して、天井照明光や壁面反射光を遮光する方法が知られている。
【0003】
図12は従来の装置例を示し、医療従事者が2枚のレントゲン画像を比較するために複数台の画像表示装置を並べた状況を示す斜視図である。なお、モニタ101、102は液晶を用いた高精細度の表示部を有する。両者は同様の構成を有するので、一方のモニタ101だけを説明する。表示面101aには、レントゲン画像を詳細に映し出し、また外光反射で見辛くないようにするため、反射防止処理を施している。ベゼル101bは表示部を保護する外装部品であり、樹脂を射出成形し、表面には反射防止のために凹凸処理(梨地処理)を施している。フードは天井照明光や壁面反射光を遮光する部材である。モニタ101の上部を覆う天面フード101cは室内天井からの照明光を遮光し、モニタ101の側部を覆う側面フード101dは室内壁面からの反射光などを遮光する。
図12では左側のモニタ101と右側のモニタ102とが、水平面内の角度Nをなして出来る限り寄せて配置されている。その理由は下記の通りである。
・観察者の目に対して各表示面を正確に対向させ、2つの表示画像を比較できるようにするため。
・表示画像の水平間隔(距離A参照)を出来る限り短くし、2つの表示画像を比較し易くするため(どこの部位が左右の画面でどう変化しているかを観察者が容易に視認できるようにするため)。
なお、下記の特許文献1には、遮光フードの天面部が伸縮可能で、様々なサイズモニタに装着可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第03057854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示す構成では、外光を遮って表示画面を見易くするためのフード同士の干渉が問題となる。モニタ同士で側面フード101dと102dが接触しないようにするには、距離Aを大きくとる必要があるので、2つの表示画像を極力近づけて比較したいという使用者の要請に応えられないという問題が生じる。換言すれば、使用者が距離Aを短くしようとしてモニタ同士を近づけた場合、フードをモニタに装着できなくなってしまう。
そこで本発明は、複数の表示装置に遮光装置を装着した状態で、表示画像間の距離を短くする構造の提案を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、隣接して配置される複数の表示装置の上面を覆う第1の遮光部と、該複数の表示装置の左右両端の側面を覆う第2の遮光部を備える遮光装置であって、前記第1の遮光部を構成する前記複数の遮光部材は、リンク構造体と該リンク構造体で囲まれた遮光シートを有し、前記リンク構造体は複数の支持部材を用いて矩形枠状に形成されて前記遮光シートを支持している。前記第1の遮光部は前記複数の遮光部材を回動可能に連結し、その回動中心を前記複数の表示装置の側縁部が接する稜線の延長線上に位置させる構造を有する。前記第2の遮光部は、前記リンク構造体を構成する支持部材のうち、前記複数の表示装置の左右両端に位置する支持部材に固定されており、前記複数の表示装置の表示面が角度をなして配置されて前記複数の遮光部材が回動した状態では、前記表示面と直交する方向に対して当該表示面から離れる方向に傾いた状態になる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の表示装置に遮光装置を装着した状態で、表示画像間の距離を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図2乃至7と併せて本発明の第1実施形態を説明するために、遮光フードを装着した2台のモニタ例を示す概略斜視図である。
【図2】図1の遮光フードの動作を説明するために、モニタ画面の平面配置(A)と、モニタ画面同士に角度をつけた状態(B)を示す概略図である。
【図3】図2の回動部(B部)の断面図である。
【図4】図2の角部(C部)を示す平面図(A)と正面図(B)である。
【図5】図2の長辺バー11(D部)の断面図である。
【図6】遮光フードの縦断面を示す概略図(A)とH部の断面図(B)である。
【図7】図2のG部におけるモニタの概略断面図である。
【図8】図9乃至11と併せて本発明の第2実施形態を説明するために、遮光フードを装着したモニタ例を示す概略斜視図である。
【図9】遮光フードの動作を説明する図である。
【図10】遮光フードの中央部を示す断面図である。
【図11】図9の遮光フードのI部断面図(A)、J部断面図(B)、K矢視図(C)である。
【図12】従来の装置例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について添付図面を用いて説明する。尚、本発明は遮光装置と、該遮光装置を備えた表示装置に適用することができる。
【0010】
[第1実施形態]
図1乃至7を用いて本発明の第1実施形態を説明する。
図1のように、画像表示装置は隣接したモニタ1(左側)およびモニタ2(右側)で構成される。モニタ1、2はその内部に液晶パネルを用いた表示面1a、2aをそれぞれ有し、背面にある電気回路と共に外装部材で覆われている。表示面1a、2aには表示画像を見易くするために、液晶パネルの表面に低反射処理が施されている。ベゼル垂直部1b、2bは表示面1a、2aの前面周囲をそれぞれ保護する外装部材の一部であり、その表面には反射防止のために梨地処理(粉き凹凸)が施されている。筐体内には液晶パネルのCOF(Chip On Film)などの信号線(図示せず)が収納されている。
フード3はモニタ1、2の上面を覆う第1の遮光部と、モニタ1、2の左右両端の側面を覆う第2の遮光部を備える。第1の遮光部を構成する遮光部材は、遮光性材料を素材として使用し、後述するリンク機構で繋がっている。フード3は両モニタの表示面1a、2aに外光が入射しないように遮る。フード3の左天面部4aは左モニタ1の上部に装着されて天井からの光を遮光する。また右天面部4bは右モニタ2の上部に装着されて天井からの光を遮光する。両者はフード3の中央部、つまりモニタ1と2との境界部付近で回動可能に結合している。側面フード5a、5bは、表示面1a、2aに横方向からの光が入射しないように設けられた第2の遮光部である。これらは黒色アルマイト処理したアルミニウム板の内側に黒色のフェルトを接着して表示画面の光反射も防止する構造を有する。
【0011】
図2はフード3の動作を説明する平面図であり、図2(A)は破線で示すモニタ1、2の各表示面が同一平面上にある状態を示し、図2(B)はモニタ1、2が角度をつけて配置された状態を示す。
図2(A)および図3(図2(A)に示すB部の断面図)に示すように、回動軸6aはフード3の中央部に位置し、左天面部4aと右天面部4bとを回動可能に結合するための金属製の軸部品であり、先端に雄ネジが形成されている。ナット6bは回動軸6aの先端部に取り付けられ、これらは左天面部4aと右天面部4bを回動可能に支持する。上側の金具7は、回動軸6aを上方で支持するための金属製の板材であり、左天面部4aと右天面部4bの上面に位置する。また下側の金具8は左天面部4aおよび右天面部4bとナット6bとの間に位置する金属製の板材であり、左天面部4aおよび右天面部4bの下面に配置される。なお、図1、図2(B)では金具7,8の図示を省略している。
図2に示す支持部材11、12は平面で見て矩形枠状の4節リンク構造体を形成する。対をなす支持部材11(以下、長辺バーという)はモニタの表示面に平行な左右方向に延びる。支持部材12(以下、短辺バーという)は、図2(A)では表示面に対して直交する方向に延び、図2(B)では当該方向に対して後述する角度(E/2)をなす方向に延びている。なお、左天面部4aに係る4節リンク構造体の角部9a乃至dは、平面図で見て右前隅(9a)から反時計回り方向に沿って四角形の各頂点に位置する。また右天面部4aに係る4節リンク構造体の角部10a乃至dは、平面図で見て左前隅(10a)から時計回り方向に沿って四角形の各頂点に位置する。図4には図2(A)のC部を示し、図4(A)に平面図、図4(B)に正面図を示す。また図2(A)のD部の断面図を図5に示す。
【0012】
長辺バー11は4節リンク構造体を構成する金属製部品であり、ダイキャスト加工により断面形状がコ字状に形成されている。長辺バー11の両端部には図4(B)に示す凸部11aが形成され、当該部分には穴あけ加工により貫通穴が形成されている。短辺バー12も4節リンク構造体を構成する金属製部品であり、押し出し加工により断面形状がコ字状に形成されている。短辺バー12の両端部には穴あけ加工により挿通穴が形成されている。つまり、図4(B)に示すように、長辺バー11の凸部11aが短辺バー12の凹部12aに挿合する。機構軸13を短辺バー12の挿通穴および長辺バー11の貫通穴に通して機構軸13の抜け止めを行うことにより、長辺バー11と短辺バー12が回動可能に連結される。尚、左天面部4aと右天面部4bにおける結合部側の短辺バー12には、回動軸6aの貫通穴を有するフランジ(図示せず)が溶接されている。また、モニタ1、2の左右方向の外側面に位置する短辺バー12には、左側面フード5aと右側面フード5bがスポット溶接でそれぞれ固定されている。
【0013】
図2(A)にて、4節リンク構造体の角部9a乃至dの内角をそれぞれ∠9a乃至dと記すとき、∠9a=∠9b=∠9c=∠9d=90°である。例えば、角部9aの内角は、前面側の長辺バー11と右側の短辺バー12とがなす角度に相当する。同様に、図2(A)にて、4節リンク構造体の角部10a乃至dの内角をそれぞれ∠10a乃至dと記すとき、∠10a=∠10b=∠10c=∠10d=90°である。
図2(B)では、モニタ1、2が角度Eをもって相対的に斜めの状態で配置されており、各4節リンク構造体が平行四辺形をなしている。つまり、∠9a=∠9c、∠9b=∠9d、∠10a=∠10c、∠10b=∠10dであり、いずれも90°とは異なる(幾何学的関係については後述する)。
【0014】
次に図4に示す長辺バー11と短辺バー12の連結について説明する。
機構軸13は上部にツバを備え、長辺バー11と短辺バー12とを回動可能に連結するための金属製の軸部品である。機構軸13は、短辺バー12の凹部12aに長辺バー11の凸部11aを差込んだ後、両者に形成した穴に挿通されてカシメで固定される。尚、長辺バー11の凸部11aと短辺バー12の凹部12aとの関係は逆にしてもよい。その場合、長辺バー11の凹部に短辺バー12の凸部を差込んだ後、機構軸13が両者の穴に通されてカシメで固定される。
【0015】
図5に示す接着剤14は、長辺バー11の凹部11bと短辺バー12の凹部(不図示)の内面にディスペンサーにより塗布される。接着剤14には、クロロプレンゴムやニトリルゴムなどのゴム系接着剤が使用される。4節リンク構造体の保持する遮光シート15は、可視光に対する遮光性及び伸縮性を有する弾性シートで矩形状に形成される。例えば、クロロプレンゴムやニトリルゴムなどのゴム素材に遮光性の高い顔料や、カーボンを練りこんだ伸縮性に富むゴムシートが使用される。遮光シート15の周縁部は接着剤14で長辺バー11と短辺バー12の凹部内面に固定される。
【0016】
図6はフードおよびモニタの縦断面構造を示す。
リアカバー16は、モニタ2の表示部と電気回路を収納する外装部材の一部をなし、金属薄板でプレス加工により所望の形状に成形され、ネジなどでモニタ2に組み付けられる。尚、モニタ1にも同形状のリアカバーが採用されている。
フード3をモニタに取り付ける取付部は、保持部17、18で各モニタの上部を挟持する構造を有する。前側の保持部17および後側の保持部18は、モニタ2の外装部材(ベゼル垂直部2bの上部およびリアカバー16の上部)を挟むことで、フード3を各モニタの上端部に取り付けるための部材である。保持部17には、厚み調整用の調整ネジ20を締結する雌ネジが加工されており、上部には長辺バー11を固定するための貫通穴が形成されている。尚、本構造はモニタ1についても同様である。
図6(B)は図6のH部を示す要部の断面図である。調整ネジ20はモニタへの取り付け間隔を調整する調整機構を構成し、保持部17と18との間隔を変更するために操作される。保持部18には調整ネジ20用の長穴18aが形成されており、保持部17には雌ネジ17aが形成されている。調整ネジ20は、保持部18の長穴18aを通して保持部17の雌ネジ17aに螺合されて両者を結合する。作業者が調整ネジ20を緩めた状態では、保持部17と18の間隔を変更できるので、フード3を外装厚みの異なる各種モニタに使用できる。固定ネジ21は、長辺バー11を保持部17に取り付けるのに使用され、保持部17に形成した挿通穴に下方から挿入され、長辺バー11に形成した雌ネジに螺合する。
【0017】
図7はフード3の回動中心19を示す。モニタ1、2のベゼル垂直部1b、2bの稜線上、つまり、前面から側面に回りこむ外装部材の側縁部が接する稜線の延長線上に回動中心19が位置する。これはモニタ同士がなす角度Eの中心である。
【0018】
次に、フード3の使用方法を説明する。
使用者はまず、モニタ1のベゼル垂直部1bとモニタ2のベゼル垂直部2bの側面同士が接するように並べる。次に、モニタ1、2の表示面1a、2aがほぼ同じ平面に並ぶように調節する(図2(A)参照、角度E=0°)。使用者はフード3を取り出して、保持部17と18の間に、左モニタ1と右モニタ2の上部をそれぞれ挿入した後、保持部18の調整ネジ20を操作してフード3を両モニタに固定する。
【0019】
次にフード3を構成する4節リンク構造体の動きについて説明する。
使用者は自らが使い易い向きにモニタ1、2を並べて、表示面1aと2aとの間になす角度を付ける。この際、フード3の左天面部4aと右天面部4bはモニタ1、2の上部にそれぞれ固定されているので、ベゼル垂直部1bと2bの密着部分には隙間が生じないように規制されている。使用者は図2(B)に示すように、所望の角度Eに調整して作業を終了する。
表示面1a、2aの角度を付ける動作により、フード3は以下のような動きをする。図2(A)では各モニタの表示面がほぼ同一平面上に並んだ状態である。回動軸6aはフード3の回動中心19、つまりベゼル垂直部1b、2bが側面で接する稜線の延長線上にある。また、回動軸6aに接する短辺バー12同士は、モニタの表示面1a、2aに対して垂直な方向を向いて、互いに平行に並んでいる。フード3の左天面部4aおよび右天面部4bにて短辺バー12と長辺バー11は長方形を形成し、内角はいずれも90度である。よって各短辺バー12に接合している左側面フード5aと右側面フード5bは、モニタ1、2の各表示面1a、2aに対して90°をなして垂直に延びる状態で外光を遮断する。
【0020】
相対的に角度をなすように配置したモニタ1、2の場合、図2(B)、図7に示すように、表示面同士は角度(180°−E)をなした状態になる。つまりフード3の回動軸6aを中心に角度Eをもってモニタ1、2が配置され、ベゼル垂直部1b、2bの稜線同士が接する状態である。左天面部4aでは短辺バー12と長辺バー11が平行四辺形を形成し、∠9a=∠9c=90°+E/2である。右天面部4bでは短辺バー12と長辺バー11の成す角度は、∠10a=∠10c=90°+E/2となる。よって、左側面フード5aがモニタ1の表示面1aに対してなす角度をFaとし、右側面フード5bがモニタ2の表示面2aに対してなす角度Fbとすると、Fa=Fb=90°+E/2となる。すなわち左側面フード5aと右側面フード5bは、モニタ1、2の表示面1a、2aに対して垂直な方向よりも「+E/2」の角度だけ傾いて開いた状態になり、角度Fa、Fbで外光を遮断する。尚、フード3の遮光シート15は伸縮性の高いゴム製であるため、短辺バー12と長辺バー11の成す角度が変わっても形状変形に追従可能であり、任意の角度Eにおいて天井方向からの光を遮断できる。
【0021】
以上に説明した構成をまとめると、以下のようになる。
1.モニタ1、2に装着するフード3は左右方向で2分割され、左天面部4aと右天面部4bが回動機構で連結され、任意の角度で回動可能であること。
2.フード3の回動中心19は、モニタ1、2の各ベゼル垂直部1b、2bの側縁部が接する稜線(モニタ前面から側面に回りこむ外装部材の稜線)の延長線上に位置すること。
3.上記回動機構は、左天面部4aと右天面部4bを金具7、8で挟み、回動軸6aを貫通させた構造をもつこと。
4.左天面部4a、右天面部4bはいずれも2本ずつの長辺バー11と短辺バー12と遮光シート15で構成され、機構軸13を用いてリンクバー同士が回動可能に連結されていること。
5.長辺バー11、短辺バー12はコ字形断面をもち、両端部に凹部や凸部を形成した両者を挿合させて連結部が形成されること。
6.回動軸6a側の短辺バー12には、該回動軸6aの貫通穴を有するフランジが溶接で固定され、また左右側面側の短辺バー12には、左側面フード5aと右側面フード5bがそれぞれ溶接で固定されていること。
7.遮光シート15は遮光性と伸縮性をもつ弾性シートで形成され、その周縁部を長辺バー11と短辺バー12の凹部に接着剤14で固定したこと。
8.長辺バー11の下側に設けた保持部17と18でモニタ1、2の外装部材の上部を挟持する構造とし、更に保持部18には、保持部17との間隔を調整する調整機構が設けられていること。
【0022】
以上の構成により、本実施形態では以下の効果を奏する。
1.複数のモニタを密着して並べた状態で遮光フードを装着し、外光が表示画面に映りこまないように防止できるので、使用者は表示画面が見易く、表示画像を比較し易い。
2.使用者はモニタの表示画面同士を近づけた状態で表示画面の向きを任意の角度で変更できるため、視野角特性による各表示画面の色や明るさの変化がなく、表示画像を比較する際の作業性が向上する。
3.従来のフードを装着した2台のモニタを密着させたまま、表示画面の向きを変更した場合、左右側面のフードが内向きに寄ってしまう(図12参照)。このため、モニタ前の作業スペースが狭くなってしまう場合や、複数人で表示画面を見る場合に横方向からではフードで画面の一部が見えない場合がある。これに対して本実施形態では、表示画面につけた角度に応じて左右側面のフードが外向きに開くので(図2参照)、上記の問題を解消できる。つまり、各モニタの表示画面を使用者側に向けても、左右側面のフードは内向きに寄らないので、モニタ前の作業スペースが確保でき、横方向から見ても左右側面のフードが邪魔にならない。
4.フードの取付部でモニタ上部を挟む構造としたため、幅の異なるモニタ機種同士でも使用できるので汎用性が高く、利便性が向上する。
尚、本実施形態は3台以上のモニタにおいても適用可能である。フードを3以上に分割して各部を回動可能に結合し、更に天面部のリンク機構、遮光構造、およびモニタへの取り付け構造を実現すれば、リンク構造体の変形および遮光シートの伸縮によってフードの形状をモニタ配置に追従させることができる。
【0023】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態を説明する。尚、第1実施形態と同様の構成部品や機能については、既に使用した符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
図8に示すモニタ1、2の上部に装着されたフード30は、後述のリンク機構及び伸縮機構を有し、各モニタの表示面への外光入射を防ぐ。フード30の中央部に位置する左天面部31a、右天面部32aは、モニタ同士が側縁部で接する外装部材の上面を覆う第1の天面部であり、遮光部材を用いて構成される。両者はフード3の中央部付近で回動可能に結合している。また左天面部31b、右天面部32bはモニタ1、2の表示面に平行な方向に沿う第2の天面部であり、遮光部材を用いて構成され、左天面部31a、右天面部32aに対してそれぞれ相対的に摺動可能である。
【0024】
図9に示すように、左天面部31a、右天面部32aはそれぞれに2対のバー33、34を用いて矩形状の4節リンク構造体として構成される。モニタの奥行き方向にて互いに平行に延びる2つのバー33は金属製であり、押し出し加工によりコ字状の断面をもち、両端部には穴あけ加工により角部が形成されている。尚、図10に示すように、左天面部31aと右天面部32aとの結合部側に位置する各バー33には、フランジ33aが溶接されている。フランジ33aは回動軸6aの貫通穴を有し、左天面部31aと右天面部32aを構成する各バー33については、各フランジの位置を上下にずらしている。
モニタ表示面に平行な方向に沿って延びる2つのバー34は金属製であり、ダイキャスト加工によりコ字形の断面をもつ。その両端部には凹部が形成され、更に穴あけ加工によりリンク構造体の角部が形成されている。バー33、34で構成される4節リンク構造体は四角形を形成し、図9の平面図にて4つの角部をもつ。左天面部31aを構成するリンク構造体の角部35は左モニタ1の前方右付近に位置し、角部36は角部35の対角側にあり、左モニタ1の後方に位置している。また右天面部32aを構成するリンク構造体の角部37は右モニタ2の前方左付近に位置し、角部38は角部37の対角側にあり、右モニタ2の後方に位置している。遮光シート39、40は、クロロプレンゴムやニトリルゴムなどのゴム素材に遮光性の高い顔料やカーボンを練りこんだ伸縮性に富むゴムシートである。遮光シート39、40の周縁部は後述の接着剤44(図11(A)参照)でバー33、34に固定されている。
左天面部31b、右天面部32bは短辺バー41と長辺バー42を用いた4節リンク構造体として構成される。短辺バー41は金属製部材であり、プレス加工により矩形断面の板状に形成され、両端部には長辺バー42との連結部が設けられて貫通穴が形成されている。モニタ1、2の左右の側面側に位置する短辺バー41には、第1実施形態の場合と同様に、左側面フード5aと右側面フード5bがスポット溶接でそれぞれ固定されている。また長辺バー42は金属製部材であり、プレス加工により矩形断面の板状に形成され、両端部には短辺バー41との連結部が形成されている。この連結部には雌ねじ加工がなされ、リンク構造体の角部を構成する。
【0025】
図11(A)は図9に示すI部の拡大断面図である。長辺バー42はバー34の凹部内に受け入れられて摺動可能である。
バー34の凹部には、摺接部材43a、43bが不図示の皿ネジで固定されている。互いに対向した摺接部材43a、43bには、摩擦係数の小さいPOM(ポリオキシメチレン)やポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂板が使用され、長辺バー42が摺動する際のガイド部材として当該バーの動きを滑らかにするための部材である。
遮光シート39、40はバー34、33の凹部内面に接着剤44で固定されている。接着剤44は、各バーの凹部内面にディスペンサーによって塗布される、クロロプレンゴムやニトリルゴムなどのゴム系接着剤である。なお遮光シート15は接着剤14によって短辺バー41、長辺バー42にそれぞれ固定されている。
図11(B)は図9に示すJ部の拡大断面部であり、図11(C)は図9に示すK矢視での拡大図である。
段付きネジ45はツバ部と回転摺動部と雄ネジ部からなり、下部にツバを備えて、短辺バー41と長辺バー42を回動可能に連結するための金属製軸部品である。短辺バー41と長辺バー42の両端部に形成した連結部同士を係合させた後で、段付きネジ45は短辺バー41の挿入穴に下側から挿通され、長辺バー42の雌ネジに螺合されて締結固定される。この連結部はリンク構造体の角部をなし、短辺バー41と長辺バー42は相対的に回動可能である。
【0026】
次に、フード30の動きについて説明する(図9および第1実施形態の図2を参照)。
モニタ1、2の表示面同士の角度に対応する左天面部31a、右天面部32aのリンク構造体の動きについては第1実施形態の場合と同様であるので説明を省略する。
図2に示すように、モニタ1、2が角度Eをもって表示面を相対的に傾けて配置した状態でフード30がモニタ1、2に取り付けられた状態を想定する。この場合、左天面部31aのリンク構造体の角部35、36は、それらの内角が、∠35=∠36=90°+E/2となる。また右天面部32aのリンク構造体の角部37、38は、それらの内角が∠37=∠38=90°+E/2となる。図9で示すように、モニタの奥行き方向におけるリンク構造体の距離LはE=0°の場合よりも短くなる。するとバー34のコ字状凹部に嵌合する長辺バー42が追従し、天面部31b、32bのリンク構造体の距離M(モニタの奥行き方向における距離)がE=0°の場合に比べて縮むことになる。左天面部31b、右天面部32bのリンク構造体は平行四辺形となって、左右側面に位置する短辺バー41に固定されている左側面フード5aと右側面フード5bの向きが変わる。左側面フード5aがモニタ1の表示面1aに対してなす角度をFaとし、右側面フード5bがモニタ2の表示面2aに対してなす角度をFbとすると、Fa=Fb=90°+E/2となる。つまり、左側面フード5aと右側面フード5bは、表示面1a、2aに対する垂直方向よりも「+E/2」だけ側方にそれぞれ開いた状態になり、角度Fa、Fbで外光を遮断する。
【0027】
次にフード30の左天面部31b、右天面部32bに関するスライド動作について説明する。
図11(A)に示すように左天面部31a、右天面部32aのバー34の凹部内面には摺接部材43a、43bが対向して取り付けられている。左天面部31b、右天面部32bの長辺バー42は摺接部材43aと43bとの間で摺動可能である。よって、左天面部31b、右天面部32bは左天面部31a、右天面部32aに対して、モニタ1、2の表示面1a、2aに平行な方向に沿って相対的に移動可能である。モニタ1、2の大きさ(左右方向の横幅)が変わった場合や、モニタの画面を縦配置から横配置に変更した場合(ローテーション機構を有する表示装置)などにおいて、本構造によりフード30の横幅を調整できる。第2実施形態でも第1実施形態の場合と同様に、モニタの上部を挟持する取付構造を長辺バー42が有している。左天面部31b、右天面部32bはモニタへの取付位置に追従し、左天面部31a、右天面部32aに対して相対的に横幅方向へ移動できる。その際、低摩擦素材を用いた摺接部材43a、43bの効果により、長辺バー42は円滑に摺動できる。
【0028】
第2実施形態の構成について、第1実施形態との相違点をまとめると以下のようになる。
1.モニタ1、2の上部に装着するフード30の天面部を左右方向にて4分割し、中央寄りの左天面部31aと右天面部32aを回動可能に結合したこと(図10参照)。
2.左天面部31a、右天面部32aは、夫々2本のバー33、34及び遮光シート39、40で構成し、バー同士が回動可能に連結されていること。
3.左天面部31a、右天面部32aに対して、左天面部31b、右天面部32bがそれぞれ相対的に摺動可能であり、伸縮機構によりフード30の幅が可変であること。
4.左天面部31a、右天面部32aのバー34にはその凹部内面に摺接部材43a、43bが固定されていること。
5.左天面部31b、右天面部32bはそれぞれ、2本の短辺バー41と2本の長辺バー42及び遮光シート15で構成され、段付きネジ45を用いてバー同士が回動可能に連結されていること。
第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えてさらに汎用性が高まる。すなわち、フードの天面部を4分割して幅方向に伸縮可能にしているため、モニタの大きさ(横幅)が変わっても使用可能である。また、同じモニタの画面を縦配置で使用する場合と横配置で使用する場合のいずれにも対応できるので使用者の利便性が向上する。
【符号の説明】
【0029】
1,2 モニタ
1a,2a 表示面
3 フード
4a,4b 天面部
5a,5b 側面フード
6a 回動軸
11,12 バー
15 遮光シート
17,18 保持部
19 回動中心
20 調整ネジ
30 フード
31a,32a 第1の天面部
31b,32b 第2の天面部
39,40 遮光シート
43a,43b 摺接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して配置される複数の表示装置の上面を覆う第1の遮光部と、該複数の表示装置の左右両端の側面を覆う第2の遮光部を備える遮光装置であって、
前記第1の遮光部を構成する前記複数の遮光部材は、リンク構造体と該リンク構造体で囲まれた遮光シートを有し、
前記リンク構造体は複数の支持部材を用いて矩形枠状に形成されて前記遮光シートを支持しており、
前記第1の遮光部は前記複数の遮光部材を回動可能に連結し、その回動中心を前記複数の表示装置の側縁部が接する稜線の延長線上に位置させる構造を有し、
前記第2の遮光部は、前記リンク構造体を構成する支持部材のうち、前記複数の表示装置の左右両端に位置する支持部材に固定されており、前記複数の表示装置の表示面が角度をなして配置されて前記複数の遮光部材が回動した状態では、前記表示面と直交する方向に対して当該表示面から離れる方向に傾いた状態になることを特徴とする遮光装置。
【請求項2】
前記遮光シートは、可視光に対する遮光性、及び伸縮性を有する弾性シートであることを特徴とする請求項1記載の遮光装置。
【請求項3】
前記複数の遮光部材を前記複数の表示装置に取り付ける取付部は、対をなす保持部によって前記表示装置の上部を挟持する構造を有し、前記保持部の間隔を調整する調整機構を備えることを特徴とする請求項1または2記載の遮光装置。
【請求項4】
前記複数の遮光部材は、前記複数の表示装置が側縁部で接する外装部材の上面を覆う第1の天面部と、該第1の天面部に対して前記表示装置の表示面に平行な方向に沿って相対的に摺動可能に支持された第2の天面部とからなる伸縮機構を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の遮光装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の天面部をそれぞれ構成するリンク構造体は、前記表示装置の表示面に平行な方向に沿う支持部材および前記表示装置の表示面に直交する方向に沿う支持部材を用いて矩形枠状に形成されて遮光シートを支持し、
前記第1の天面部を構成するリンク構造体の支持部材には、その凹部内面に複数の摺接部材が配置され、前記第2の天面部を構成するリンク構造体の支持部材が前記摺接部材によりガイドされることを特徴とする請求項4記載の遮光装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の遮光装置を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−124628(P2012−124628A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272261(P2010−272261)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】