説明

遮音性能体験システム及び遮音性能の表現方法

【課題】遮音性能を体験希望者に印象深く体験してもらうことができる、遮音性能体験システム及び遮音性能の表現方法を提供する。
【解決手段】遮音性能体験目的でない目的で体験のために発音が行われる非目的体験ゾーン7と、遮音性能を体験する目的体験ゾーン6とが、遮音層8で仕切られ、前記非目的体験ゾーン7で発する音を目的体験ゾーン6での遮音性能体験の音源とし、非目的体験ゾーン7での体験を行った後、目的体験ゾーン6での体験を行ってもらう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音性能体験システム及び遮音性能の表現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遮音壁を挟む一方の室にスピーカー等の音源を設置し、該発音手段から発する音を、遮音壁を挟むもう一方の室で聞いてもらうことは、遮音壁の遮音性能を人に理解してもらう最も基本的な方法として行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような方法によれば、体験者は確かに「遮音壁が音を遮っている」という認識をもつことはできるが、ただそれだけのことで、体験者の印象に残りにくいという問題があった。
【0004】
本発明は、遮音性能を体験希望者に印象深く体験してもらうことができる、遮音性能体験システム及び遮音性能の表現方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題において、発明者は、その原因を究明するため、思考と研究を重ねた結果、その大きな原因が、上記のような方法では、音源から発する音が、体験者にとっては、自らとは関わりのないところで勝手に設定された音であって、その音を自らの体験と結びつけることができない、という点にあることを突き止め、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、遮音性能体験目的でない目的で体験のために発音が行われる非目的体験ゾーンと、遮音性能を体験する目的体験ゾーンとが、遮音層で仕切られ、前記非目的体験ゾーンで発する音を目的体験ゾーンでの遮音性能体験の音源とし、非目的体験ゾーンでの体験を行った後、目的体験ゾーンでの体験を行うことができるようになされていることを特徴とする遮音性能体験システムによって解決される。
【0007】
また、この遮音性能体験システムを用い、体験希望者に、非目的体験ゾーンでの体験を行ってもらった後、目的体験ゾーンでの体験を行ってもらうことを特徴とする遮音性能の表現方法によって解決される。
【0008】
なお、本発明における「遮音層」の語は、音の反射、吸音、緩衝等を通じて一方のゾーンからもう一方ゾーンへの音の伝播を遮断することができるような層を意味する概念で用いられている。
【0009】
上記のシステム及び方法によれば、体験希望者に、非目的体験ゾーンでの体験を行ってもらった後、目的体験ゾーンでの体験を行ってもらうことにより、体験者は、非目的体験ゾーンにおいて自らとの関わりのなかで発せられた音と同じ音を目的体験ゾーンでの遮音性能体験のための音源として聞くことができ、それによって、音の意味を理解することができ、その音が遮音層によって遮音されているのを体験することを通じて、印象深い遮音性能体験を行うことができる。
【0010】
しかも、非目的体験ゾーンでの体験は、遮音性能体験の目的でない目的の体験であり、その体験のなかで発せられる音は、体験者に、自らが音の原因者、即ち加害者であるという罪悪意識を潜在的であるか顕在的であるかを問わず抱かせこともあり、そのような場合には、そういう意識を抱いてもらってから目的体験ゾーンでの体験をしてもらうことにより、体験者に音の原因者ではあったけれども加害行為をしてはいなかったというホットした安心感をもってもらうことができ、非目的体験ゾーンでの体験と目的体験ゾーンでの体験の両方をドキドキしながら印象深く行ってもらうことができる。
【0011】
上記の表現方法において、目的体験ゾーンでの体験は、後行する体験希望者の前記非目的体験ゾーンでの体験によって発せられる音を利用して行う場合は、上記のような遮音性能の体験を、限られた時間のなかで多くの体験希望者に体験をしてもらうことができ、主催者側の手間も省くことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のとおりのものであるから、遮音性能を体験希望者に印象深く体験してもらうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示す実施形態は、体験システムを建物1に組み込んで構成したもので、建物1は、第1階段2を通じて二階フロアー3に行くことができるようになっていて、二階フロアー3には一つ以上の体験ゾーン7が備えられ、該体験ゾーン7での体験を終えたのち、第2階段4を降りて、一階フロアー5に行くことができるようになされており、一階フロアー5にも一つ以上の体験ゾーン6が備えられ、該体験ゾーン6での体験を終えたのち、外に出られるようになされている。
【0015】
そして、一階フロアー5には、体験ゾーンとして、遮音性能を体験する目的体験ゾーン6が備えられ、また、二階フロアー3には、目的体験ゾーン6の真上に位置して、遮音性能体験目的でない目的で体験のために発音が行われる非目的体験ゾーン7が備えられ、両ゾーン6,7は、遮音層8で仕切られている。
【0016】
本実施形態では、二階の非目的体験ゾーン7は、床フローリング材の耐傷性を確認する体験ゾーンとなっていて、床面に床フローリング材9が置かれ、硬質片10の落下による床フローリング材9の表面の傷の発生の有無、傷の程度を体験希望者に確認してもらうことができるようになされている。
【0017】
遮音性能の体験は、上記の建物1を用い、次のようにして行われる。即ち、主催者側の誘導や、表示にしたがって、体験希望者11に、第1階段2をのぼって二階フロアー3に上がってもらい、非目的体験ゾーン7で、床フローリング材9の耐傷性を確認する体験を行ってもらう。この体験は、硬質片10の落下を主催者側が行うようにしてもよいし、体験希望者11に行ってもらうのもよい。
【0018】
この体験において、体験者は、床フローリング材9への硬質片10の落下により、床フローリング材9の表面の傷の発生の有無、傷の程度を実際に目で見て手で触って確認することができると共に、この体験において発せられる硬質片10の落下衝撃音に対し、その落下を主催者側が行うか自らが行うかを問わず、自らが音の原因者、即ち加害者であり、周りから非難を受けないだろうかという罪悪意識を心のどこかに抱き、ドキドキした気分になるとよい。
【0019】
そういう意識をどこかに抱きつつ、適宜、他の体験ゾーンで体験を行った後、第2階段4を降り、一階フロアー5に移動し、目的体験ゾーン6に入る。そこは、床フローリング材の耐傷性体験を行った非目的体験ゾーン7の真下であり、二階フロアー3の非目的体験ゾーン7では、主催者側の誘導により、後行する体験希望者11が床フローリング材の耐傷性体験を行っており、目的体験ゾーン6で、さきほど自らが体験した床フローリング材の耐傷性体験で発する硬質片10の落下衝撃音を聞かされることになる。
【0020】
即ち、加害者の側から被害者の側にまわるようなものであるが、両ゾーン6,7は遮音層8で仕切られているので、硬質片10の落下衝撃音は一階の目的体験ゾーン6においてごく小さな音として伝わる程度であり、目的体験ゾーン6で遮音性能を体験している者11は、被害者意識をもつことはなく、そのため、先ほどの加害者意識は払拭され、ほっとした気分になることができ、非常に印象深い遮音性能の体験をすることができる。
【0021】
なお、目的体験ゾーン6での遮音性能の体験において、その音源が、非目的体験ゾーン7での床フローリング材の耐傷性体験において行われる硬質片10の落下衝撃音であることは、目的体験ゾーン6での主催者側からの説明や、目的体験ゾーン6に設置した表示によって体験希望者に伝えられるようにすることで、体験希望者11にドキドキした印象深い遮音性能体験をしてもらうことができる。
【0022】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、非目的体験ゾーン7と目的体験ゾーン6とを一階と二階に設定し、それらの間を水平な遮音層8で仕切った場合を示しているが、非目的体験ゾーンでの体験の種類や内容に応じて、両ゾーン6,7を同じフロアーに隣り合わせで設定し、それらを遮音間仕切り壁で仕切るようにするのもよいし、また、非目的体験ゾーンを屋外に目的体験ゾーンを屋内に設定し、それらを遮音外壁で仕切るようにするのもよい。
【0023】
また、上記の実施形態では、非目的体験ゾーン7での体験内容を床フローリング材の耐傷性とした場合を示したが、室内音響、即ち室内での音の響きやすさを体験してもらうことを内容とするものであってもよいし、トイレで排水に必要な水の量などを体験的に確認してもらうことを内容とするものであってもよいし、ひざに優しい床材の上で歩行や飛び跳ねを行ってもらって床材の緩衝性を体験的に確認してもらうことを内容とするものであってもよいし、屋外階段の昇降音や段鼻のノンスリップ加工の有無による昇降安全性確認のための体験を内容とするものであってもよいし、閉まり方による扉の高級感の違いを体験してもらうことを内容とするものであってもよい。要は、遮音性能体験目的でない目的で体験のために発音が行われるような体験ゾーンであればよい。
【0024】
また、非目的体験ゾーン7での体験による音は、体験者に被害者意識をもたせるものでなくてもよく、日常的な音にすぎないと思わせる程度の音であってもよく、その場合であっても、目的体験ゾーン6での遮音性能の体験において、さっきの音がこの程度の音になるのかという印象を与えることができれば、それで充分である。
【0025】
また、上記の実施形態では、目的体験ゾーン6での体験のため音を、非目的体験ゾーン7での後行する体験希望者の体験によって生じさせるようにした場合を示しているが、非目的体験ゾーン7での発音は主催者側が行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態のシステムを建物に組み込んだ場合を示す内部開放正面図である。
【符号の説明】
【0027】
6…目的体験ゾーン
7…非目的体験ゾーン
8…遮音層
9…床フローリング材
10…硬質片
11…体験希望者(体験者)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮音性能体験目的でない目的で体験のために発音が行われる非目的体験ゾーンと、遮音性能を体験する目的体験ゾーンとが、遮音層で仕切られ、前記非目的体験ゾーンで発する音を目的体験ゾーンでの遮音性能体験の音源とし、非目的体験ゾーンでの体験を行った後、目的体験ゾーンでの体験を行うことができるようになされていることを特徴とする遮音性能体験システム。
【請求項2】
請求項1の遮音性能体験システムを用い、体験希望者に、非目的体験ゾーンでの体験を行ってもらった後、目的体験ゾーンでの体験を行ってもらうことを特徴とする遮音性能の表現方法。
【請求項3】
目的体験ゾーンでの体験は、後行する体験希望者の前記非目的体験ゾーンでの体験によって発せられる音を利用して行う請求項2に記載の遮音性能の表現方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−106092(P2006−106092A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288870(P2004−288870)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】