説明

選択吸収性ワイヤーグリッド偏光素子

【課題】入射光を偏光し、一偏光を選択的に吸収するための選択吸収性ワイヤーグリッド偏光機器の提供。
【解決手段】入射光12を偏光するための選択吸収性ワイヤーグリッド偏光素子10aは、基体14の上側に配設され、光の波長の半分よりも短い周期を有する延設金属素子26のワイヤーグリッド配列からなる薄膜積層18を備えている。それらの層の1つは、前記基体の屈折率よりも大きい屈折率を有する薄膜層である。層30a、30bは、非金属素子の誘電体配列である。層34aは、入射光に対して光学的吸収性を有する材料を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、選択吸収性を有する可視及び近可視スペクトル用ワイヤーグリッド偏光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーグリッド偏光素子(WGP)は、ガラスのような基体の表面に配設された平行配線の配列である。通常、ワイヤーグリッド偏光素子は、基体上の配線の単一の周期的な配列である。その配線の周期が光の波長の概ね半分より大きいときには、グリッドは、回折格子として振る舞う。配線の周期が光の波長の概ね半分より小さいときには、グリッドは、偏光子として振る舞う。
【0003】
WGPについては、ある偏光については全透過し、ある偏光については全反射することが望ましいものの、完璧な偏光素子は存在しない。現実のWGPは、両方の偏光のいくらかを透過し、両方の変更のいくらかを反射してしまう。光が、ガラス板のような透明材料の表面に入射するとき、僅かな光が反射する。例えば、通常の入射の場合、約4%の入射光が、ガラスの各表面で反射する。
【0004】
いくつかの応用においては、WGPについて、ある偏光については全透過し、他の偏光の全て、又はほとんどは、その光学系から排除されることが望ましい。
【0005】
例えば青色光のような、可視スペクトルの一部の性能を改良するために、WGPの下に、又は配線と基体との間に、膜を配設し、一次回折光を短波長側にずらすということが提案された。米国特許第6,122,103号参照。その膜は、基体の屈折率よりも小さい屈折率を有している。基体又は下層にエッチングを施し、ワイヤーグリッドの下の実効屈折率を更に減らすということが提案された。米国特許第6,122,103号参照。各配線を、金属と誘電体の交互の層の複合体として形成することが提案された。米国特許第6,532,111号参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,986,730号
【特許文献2】米国特許第6,081,376号
【特許文献3】米国特許第6,108,131号
【特許文献4】米国特許第6,122,103号
【特許文献5】米国特許第6,208,463号
【特許文献6】米国特許第6,234,634号
【特許文献7】米国特許第6,243,199号
【特許文献8】米国特許第6,288,840号
【特許文献9】米国特許第6,348,995号
【特許文献10】米国特許第6,447,120号
【特許文献11】米国特許第6,452,724号
【特許文献12】米国特許第6,532,111号
【特許文献13】米国特許第6,666,556号
【特許文献14】米国特許第6,710,921号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ある配向の偏光を選択的に吸収できるワイヤーグリッド偏光素子を開発することが有益であることが認識されてきた。加えて、光学的設計に大幅な変更を加えることなく多くの光学系に組み込むことが容易であり、かつ無機であって耐久性を有する偏光素子を開発することが有益であることが認識されてきた。加えて、ワイヤーグリッド偏光素子は、ある偏光状態を反射するための金属とし振る舞うことができ、また他の偏光状態に対して損失性誘電体の薄膜として振る舞うことができるということが認識されてきた。従って、構造性複屈折及び実効屈折率が、ワイヤーグリッド偏光素子に適用できることが認識されてきた。更に、損失性誘電体として振る舞う薄膜が、ある偏光のエネルギーを優先的に吸収するように設計し構成できる。加えて、ワイヤーグリッド偏光素子は、薄膜層として扱うことができ、光学的な積層に組み込むことが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡単で一般的な言葉でいうと、本発明は、入射光を偏光し、ある偏光を選択的に吸収するための選択吸収性ワイヤーグリッド偏光機器を意図している。偏光ワイヤーグリッド層は、基体の上側に配設され、入射光の波長の半分よりも短い周期を有する平行金属配線の配列を有している。誘電体層が基体の上側に配設され、誘電材料を含んでいる。吸収層が基体の上側に配設され、ある偏光を実質的に吸収してしまうような入射光光学的吸収性を有する材料を含んでいる。吸収層は、また、誘電体層の屈折率とは異なる屈折率を有している。
【0009】
本発明の更なる特徴及び利点が、添付の図面と共に、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。添付図面はいずれも発明の特徴を例示で表すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】本発明の一実施形態による選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子の側方断面図である(各図面は、一定の縮尺で描かれているのではなく、特徴部分は、明確化のために非常に誇張して示されている)。
【図1b】本発明の他の実施形態による他の選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子の側方断面図である(各図面は、一定の縮尺で描かれているのではなく、特徴部分は、明確化のために非常に誇張して示されている)。
【図2】本発明の他の実施形態による他の選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子の側方断面図である(各図面は、一定の縮尺で描かれているのではなく、特徴部分は、明確化のために非常に誇張して示されている)。
【図3】本発明の他の実施形態による他の選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子の側方断面図である(各図面は、一定の縮尺で描かれているのではなく、特徴部分は、明確化のために非常に誇張して示されている)。
【図4】本発明の他の実施形態による他の選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子の側方断面図である(各図面は、一定の縮尺で描かれているのではなく、特徴部分は、明確化のために非常に誇張して示されている)。
【図5】本発明の他の実施形態による他の選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子の側方断面図である(各図面は、一定の縮尺で描かれているのではなく、特徴部分は、明確化のために非常に誇張して示されている)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に表された実施形態を参照するが、ここでは、その実施形態を記述するために具体的な言語が使用される。しかしながら、それにより発明の範囲を限定することを意図するものではない、ということが理解されるであろう。
【0012】
ある偏光に対して、ワイヤーグリッド偏光素子は、光(又はその光のある1つの偏光)を反射する金属として実質的に振る舞い、一方、他の偏光に対して、ワイヤーグリッド偏光素子は、光(又はその光の他の偏光)を透過する損失性誘電体の薄膜として実質的に振る舞う。従って、2つの概念、すなわち構造性複屈折及び実効屈折率、が、偏光素子の性能を改良するために適用できる。
【0013】
ワイヤーグリッド偏光素子は、構造性複屈折の一例としては典型的には考慮されていない。一般的には、複屈折というのは、ある材料が、異なる偏光に対して異なる屈折率を有していることを意味している。複屈折は、水晶等の結晶質や、延伸重合体においては、非常に一般的なものである。構造性複屈折とは、材料の形状に起因する複屈折のことである。
【0014】
ある材料が、密度等の材料特性において、ばらつきを有し、そのばらつきの範囲が、光の波長よりも小さい場合、屈折率は、均一バルク材料の屈折率とは異なっている。実効屈折率、すなわち均一な薄膜が有し、光に対して同様の影響を及ぼす指標が存在している。この効果を理論的に取り扱った場合、有効媒質理論と呼ばれている。この現象は、蛾眼反射防止膜のようなものを作り上げるときの誘電体材料に利用される。
【0015】
加えて、ワイヤーグリッド偏光素子は、薄膜としては典型的には考えられていない。光学的には、誘電体材料に対してのみ、構造性複屈折及び実効屈折率の双方がとりわけ考慮されている。しかしながら、ワイヤーグリッド偏光素子を、実効屈折率を有した等価複屈折薄膜として扱うことにより、それを薄膜積層の中の一要素として考えることができ、特定の性能目標を持って薄膜設計技法を使用できることとなることが認識されている。
【0016】
本発明は、金属ワイヤーグリッド偏光素子との組み合わせで薄膜を利用し、偏光素子の性能を改良している。また、言い換えれば、その性能に対して技巧を施している。一般的に、これはワイヤーグリッドの下側及び上側に膜を有している。これらの膜はいずれも均一であるか、又は誘電体グリッドである。そのワイヤーグリッドは、複合体グリッドであるか、又は複合配線とすることができる。ワイヤーグリッドを異なる材料の多層膜と組み合わせて、異なる屈折率を有するようにすることにより、透過することが望まれる偏光の反射が抑えられる。例えば、ワイヤーグリッドは、p偏光を透過するように構成できる。上で議論のように、全てのp偏光を透過することが望まれるものの、典型的なワイヤーグリッドは、双方の偏光のいくらかを透過し、双方の偏光のいくらかを反射してしまう。しかしながら、ワイヤーグリッドを複屈折薄膜として扱い、ワイヤーグリッドを多層薄膜と組み合わせることにより、p偏光の反射が抑えられることが既に分かっている。いくつかの応用においては、また、ワイヤーグリッド偏光素子は、全てのp偏光を透過する一方、s偏光を、例えばそのワイヤーグリッド偏光素子内で熱として吸収することにより、光学系からs偏光を全て、又はほとんど排除することが望ましい。このように、ワイヤーグリッド偏光素子は、広い用途を有する一般の重合体ベースの偏光素子と同様に実質振る舞う。これにより、光学的設計を大幅に変更することなく、多くの光学系にワイヤーグリッド偏光素子を組み込むことが更に容易となる。同時に、多くの光学系が、ワイヤーグリッド偏光素子のような無機偏光素子の長い耐久性の恩恵を受けることができるであろうことになる。従って、ワイヤーグリッドは、s偏光を僅かに反射するように、換言すれば、s偏光を反射せずに大幅に吸収するように構成できる。このことは、ワイヤーグリッドを、いくつかが光学的吸収特性を有する異なる材料からなる多層構造を組み合わせることにより達成できる。故に、ワイヤーグリッドが、s偏光に対する有効反射板であるか、吸収板であるかは、設計選択事項である。どちらの結果も、ワイヤーグリッドの下側又は上側に誘電体膜又はグリッドを適切に選択して設けることにより有効となる。
【0017】
図1a乃至図4に表しているように、一般記号10a−eで示す選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光機器は、それぞれ、本発明の実施形態として示されており、入射光12を偏光し、つまり、ある偏光状態を直交する偏光状態から実質的に分離する一方で、ある偏光状態を吸収するものである。かかる機器は、可視光の応用領域では、実質的に有用であると信じられており、つまり、概ね400−700nm(ナノメーター)即ち0.4−0.7μm(マイクロメーター又はミクロン)の可視光に対して使用されるものである。かかる可視光の応用領域には、プロジェクター等の投影表示機器が含まれている。ここで記述される多層ワイヤーグリッド偏光機器は、偏光器、ビームスプリッター、アナライザー等の各種の異なる機能機器において利用可能である。ここでの機器は、また、紫外線及び/又は赤外線のような近可視光の応用領域において有用であり、つまり、概ね250−400nmもしくは700−10,000nmの範囲の光と共に使用されるものである。従って、語句“光”は、ここでは広い意味で使用して、可視光、紫外線光及び赤外線光、つまり250−10,000nmの範囲の電磁波のことを言っている。
【0018】
偏光素子10a−eは、ワイヤーグリッド又はワイヤーグリッド層22を含む複数の積層膜18を担持又は支持する基体14を有している。基体14は、扱う光に対して透過性を有している。例えば、基体は、ガラス(Bk7)である。他の基体としては、水晶や、プラスチックや、石英ガラスである。加えて、基体14は、残りの薄膜層に対して実質の厚さtsを有している。更に、基体は、屈折率nsを有している。例えば、ガラス基体(Bk7)は、1.52の屈折率ns(550nmにおいて)を有している(なお、屈折率は、波長によって僅かに変動することに注意すべきである)。
【0019】
ワイヤーグリッド又はワイヤーグリッド層22は、延設金属素子又は配線26のワイヤーグリッド配列から成っている。素子26は、光の波長よりも長い長さを有しており、また、光の波長の半分よりも短い周期Pで概ね平行に配列されている。従って、可視光と共に使用する場合、素子26は、可視光の波長より長い、つまり700nm(0,7μm)より大きい長さを有している。素子26は、可視光の波長の半分よりも短い、つまり350nm(0.36μm)よりも小さい、中心から中心までの間のピッチ、つまり周期Pを有している。ある面においては、周期Pは、可視光応用領域においては、200nm未満である。他の面では、周期Pは、可視光応用領域においては、120nm未満である。素子26は、また、ピッチ又は周期の10から90%の範囲の幅wを有している。素子26は、また、光の波長よりも低い、つまり可視光応用領域では400nm(0.4μm)よりも低い厚さ又は高さtを有している。ある面では、厚さは、可視光応用領域について0.2μmよりも薄い。
【0020】
紫外線応用領域では、周期Pは200nm未満である。ある面では、周期Pは、紫外線応用領域で、125nm未満である。赤外線応用領域では、周期Pは、500nm未満である(但し、350nmより大きい)。他の面では、周期Pは、赤外線応用領域で、5,000nm未満である。素子26又は配列は、一般的に、入射光と相互作用し、実質的に均一であり、一定の線形偏光状態(p偏光のような)を有する透過ビーム30を一般的に透過する。反射ビーム34として通常反射するs偏光は、以下により詳細に記述するように、一般的に吸収される。その素子は、一般的に、素子に対して局所的に直交して、又は横に配向された第一偏光状態(p偏光)を有する光を透過する。なお、ワイヤーグリッド偏光素子は、光の偏光状態をある一定の効率で分離するということに注意すべきである。つまり、両偏光のいくらかが、透過し、及び/又は吸収する。残りの反射ビームは、その偏光における元々のエネルギー量の10%以下まで抑えられる。
【0021】
素子26又は配列は、フォトリソグラフィーにより基体の上に又はその上側に形成することができる。素子26は、導電性を有し、アルミニウム、銀、金又は銅で形成できる。加えて、その素子は、無機的であり、従って、頑健である。
【0022】
複数の膜層18は、ワイヤーグリッド偏光素子22の下側及び/又は上側の層を有している。従って、図2,3及び4に示すように、1つ以上の層が基体14とワイヤーグリッド層22の間に配設されている。加えて、図1a,1b,3及び4に示すように、1つ以上の層がワイヤーグリッド層22の上側に配設されている。各層18は、互いに異なる材料で形成されている。又は基体14とは異なる材料で形成されている。更に、各々が異なる材料で形成されている。従って、各層18は、基体14の屈折率nsとは異なる屈折率nを有している。更に、基体14の屈折率nsよりも大きい屈折率n1-3を有する少なくとも1つの層が、p偏光の反射を抑える。従って、本発明の一様相によれば、偏光素子10d又は10eは、基体14とワイヤーグリッド層22の間に配設された少なくとも1つの膜層を有しており、膜層18aは、基体14の屈折率nsよりも大きい屈折率n1を有している。本発明の他の様相によれば、偏光素子は、少なくとも2つの膜層を有しているか、少なくとも3枚の膜層を有している。
【0023】
それらの層の1つ以上は、誘電体層30a−cである。ある面では、図1a及び1bに示すように、誘電体層30a及び30bは、ワイヤーグリッド層22の上側に配設されている。他の面では、図2に示すように、誘電体層30cは、ワイヤーグリッド層22の下側、又はワイヤーグリッド層22と基体の間、に配設されている。誘電体層は、入射光に対して選択透過性を有する。
【0024】
加えて、それらの層の1つを吸収層34a及び34bとすることができる。ある面では、図1a及び1bに示すように、吸収層34aは、ワイヤーグリッド層22の上側に配設される。他の面では、図2に示すように、吸収層34bは、ワイヤーグリッド層22の下側、又はワイヤーグリッド層22と基体14の間、に配設されている。吸収層は、入射光に対して光学的吸収性を有する。ワイヤーグリッド層と吸収層とは、誘電体層により分離できる。吸収層及び誘電体層の双方は、誘電体材料で形成でき、あるいは誘電体材料を含むことができる。加えて、吸収層及び誘電体層の双方は、異なる屈折率を有している。それらの屈折率の1つは、基体の屈折率よりも大きい。上述のように、それらの層の屈折率が異なっているということは、異なる誘電体層の重要な異なる吸収特性と関連しており、それによりs偏光のエネルギーが、吸収誘電体層内で優先的に吸収され、それにs偏光の反射が減じると信じられている。
【0025】
なお、異なる複数の材料というのは、入射光の異なる各波長に対して、選択的に透過性を有するか、又は選択的に吸収性を有する。可視光応用領域に対しては、誘電体層は、可視光に対して選択的に透過性を有する誘電体材料を有している一方、吸収層は、可視光に対して選択的に吸収性を有する材料を有している。同様に、紫外線応用領域に対しては、誘電体層は、紫外光に対して選択的に透過性を有する誘電体材料を有している一方、吸収層は、紫外光に対して選択的に吸収性を有する材料を有している。同様に、赤外線応用領域に対しては、誘電体層は、赤外光に対して選択的に透過性を有する材料を有している一方、吸収層は、赤外光に対して選択的に吸収性を有する材料を有している。
【0026】
誘電体層及び吸収層は、誘電体材料で形成でき、あるいは誘電体材料を含むことができる。例えば、それらの層は、酸化アルミナ、三酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化ベリリウム、酸化ビスマス、三フッ化ビスマス、硫化カドミウム、テルル化カドミウム、フッ化カルシウム、酸化セリウム、チオライト、氷晶石、ゲルマニウム、二酸化ハフニウム、フッ化ランタン、酸化ランタン、塩化鉛、フッ化鉛、テルル化鉛、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、フッ化ネオジム、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、酸化スカンジウム、ケイ素、酸化ケイ素、三酸化ダイシリコン、二酸化ケイ素、フッ化ナトリウム、五酸化タンタル、テルル、二酸化チタン、塩化第一タリウム、酸化イットリウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、及び二酸化ジルコニウム、並びにそれらの組み合わせで、形成されている。膜層は、基体上に成膜される。金属酸化物の場合、それらは、酸化蒸発材料から始めることにより(必要に応じて付加的な酸素の裏込めと共に)成膜される。しかしながら、材料は、基本金属を蒸着し、そして背後でその成膜材料をO2で酸化することにより成膜される。
【0027】
ある面では、誘電体層及び/又は吸収層は、テルル化カドミウム、ゲルマニウム、テルル化鉛、酸化ケイ素、テルル、二酸化チタン、ケイ素、硫化カドミウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、テルル化カドミウム、ゲルマニウム、テルル化鉛、酸化ケイ素、テルル、二酸化チタン、ケイ素、フッ化マグネシウム、酸化アルミナ、テルル化カドミウム、ゲルマニウム、これらの材料の非化学量論的変種、及びそれらの組み合わせ、から選択された材料で形成でき、あるいはその材料を含むことができる。テルル化カドミウム、ゲルマニウム、テルル化鉛、酸化ケイ素、テルル、二酸化チタン、ケイ素、硫化カドミウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛が紫外線範囲に適切であり、テルル化カドミウム、ゲルマニウム、テルル化鉛、酸化ケイ素、テルル、二酸化チタン、ケイ素が可視範囲に適当であり、フッ化マグネシウム、酸化アルミナ、テルル化カドミウム、ゲルマニウム、及びそれらの組み合わせが赤外範囲には適当である。
【0028】
他の面では、誘電体層及び/又は吸収層は、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化チタン、炭化ケイ素、タンタル、酸化第二銅、亜酸化銅、塩化第二銅、亜塩化銅、亜硫化銅、チタン、タングステン、酸化ニオビウム、ケイ酸アルミナ、窒化ボロン、酸化ボロン、酸化タンタル、炭素、及びそれらの組み合わせ、から選択された材料で形成でき、あるいはその材料を含むことができる。
【0029】
ここで挙げた材料に加えて、特に遷移金属酸化物、水素化物、窒化物、塩等については、それらの材料のイオン化状態のものも含まれる。
【0030】
上述の膜誘電体材料の多くは、スパッタリング、化学気相成長法(CVD)、又は、化学量論的ではない膜を生成する蒸着等の各種成膜技法を使用して成膜できる。これを利用すると、一般バルク化学量論的材料とは異なる光学特性を有する誘電体薄膜を生成することができる。例えば、酸素欠乏性のスパッタリングにより酸化チタン誘電体膜を生成することが可能であり、それにより標準膜よりもより高い光学吸収性を有することとなる。かかる膜は、本発明による、ある偏光について強力に反射するのではなく強力に吸収するワイヤーグリッドを生成するために使用される。
【0031】
同様に、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の他の金属酸化物についても同様のことが可能である。フッ化マグネシウム等の金属フッ化物、窒化ケイ素等の金属窒化物、及び金属硫化物、ケイ酸化物、又はセレン化物について、類似の効果が、達成できる。
【0032】
後により詳しく記述するように、膜層の厚さ及び材料(又は屈折率)は、p偏光の反射を減らすように、又は(二者択一的に又は同時に)s偏光の吸収を増やすように、操作可能である。
【0033】
材料についての上記議論や特別な分子状態、又は材料の化学量論を更に詳論するためには、化学量論的反応というのは、結合条件が保たれた状態で平衡状態を維持するということである、ということを再認識することが有効である。しかしながら、特定の分子量論的化合物には、考慮する必要のある追加事項がある。例えば、全て挙げようと思っても到底難しい、化合物のイオンの状態というのがある。通常の化合物が錆びることを考えると、それは酸化第二鉄(Fe23−鉄(III))又は酸化第一鉄(FeO−鉄(II))ということになる。いくつかの条件においては、酸化第一鉄は、非化学量論的化合物と考えられる。我々の応用では、化学元素としては安定した状態で異なる光学特性を有する各種のイオン状態というのがある。故に、適切な成膜技法により、各種の光学特性を有する混合複合体膜を生成することができる。例えば、文献においては、TiO2、TiO3及びTiO4(各種配位子で錯化されたもの)についての記述文書がある。アルミニウムもまた、酸又は塩基の化合物として安定化するという両性の性質を有する。潜在リストというのは無限であるのだから、全ての形態を含ませたり、全ての関心材料を適用しようとすることは、実用的ではない。概して、その発明は、所望の吸収特性を生み出すように生成される多くの種類の非化学量論的又は混合状態材料をもってして、実用化できるものである。光学材料における低吸収特性というのは、混合状態にはない純粋で化学量論的な膜と結びつくものであるということはよく知られたことであるのだから、高透過性、低吸収性膜が望まれるときには、上記のことは、典型的には得られない重要な自由度である。故に、材料の単純なリストを編纂したり、本発明の範囲内で働く材料の有限集合体を定義することは、困難なことである。議論のように、適当な製造条件においては、本発明の範囲で働くであろう、広くほとんど無限種類の材料を定義できるであろう。
【0034】
ここで図面に戻ると、誘電体層30a−cのような1つ以上の薄膜層は、非金属素子38の配列からなる誘電体グリッドである。非金属及び金属素子38及び26の配列は、実質的に互いに平行に配向している。加えて、それらの配列は、実質的に等しい周期及び/又は幅を有している。ある面では、図1a,1b,2及び3に示すように、誘電体グリッドの非金属素子38と金属素子26は揃っているか、又は非金属素子38は、ワイヤーグリッド層の金属素子26と揃っている。他の面では、図4に示すように、誘電体グリッドの非金属素子38と金属素子26はオフセットを有しているか、又は非金属素子38は、ワイヤーグリッド層の金属素子26に対してオフセットを有している。
【0035】
上で議論のように、薄膜層18の枚数、厚さt及び材料(又は屈折率)は、p偏光の反射の抑制(p偏光の透過の増加)及び/又はs偏光の透過の抑制(s偏光の反射又は吸収の増加)のために各種変更することができる。それらの層のいくつかについては、構造及び材料を均一にすることができ、一方、他の層は、ワイヤーグリッド層22の金属素子26又は誘電体グリッドの非金属素子38のようなグリッドを有するようにすることができる。特定の構成と、吸収膜又はリブの材料及び対応の厚さを選択する方法の例を、以下に議論する。
【0036】
一般的に、光学材料及び光学的膜吸収特性は、材料の光学的指標n及びkにより決定できる。ここで、nは通常の屈折率であり、kは、注目している材料の吸収性の振る舞いを表わす複合部分である。kが根本的に零のとき、材料は高透過性を有する。本発明の特定の構成のために所望の吸収特性を決定する際、特定材料の膜厚の制御により、光学的パラメーターk値の各種値を補償できる。具体的には、k値が所望のものより低ければ、膜厚を増加させることにより、偏光素子の所望の性能を保証又は達成する。同様に、k値が所望のものより高ければ、補償のために膜厚を薄くすることによりその材料は依然使用可能である。各膜の正確な厚さは、その応用で望まれる波長範囲、特定の応用での要求を満たすような、透過偏光の透過性と反射偏光の吸収性のトレードオフ、及び、他の応用特異問題に依存するのであるから、k値を膜厚に関連付ける単純な規則を定義することは実用的なことではない。一般的に、kの着目範囲は、0.1と4.5の間である。
【0037】
k値の例を表1に示す。その表は、k値の関数としての選択性を表出している。表から、テルル化カドミウムが、3つの全ての帯域幅で動作する単一化合物の一例であることが分かる。テルル化鉛、酸化ケイ素、テルル、二酸化チタン及びケイ素が、紫外線(UV)帯域及び可視帯域の双方で働く化合物である。硫酸カドミウム、セレン化亜鉛及び硫酸亜鉛が、可視及び赤外(IR)帯域ではなく、UV帯域でのみ機能吸収性を有する化合物である。可視帯域でのみ、IR帯域でのみ、又はUV帯域でのみ、又は3つの光学的帯域の各種組み合わせで、吸収する他の化合物を特定することも可能である。提示されたリストは、ありふれた、又は“標準の”光学材料としては考えられていない多くの材料を含んでいることにも注意すべきである。このことは、本発明で導入された新たな自由度を表わしており、つまり発明を実施化に導くためには吸収材料が望ましいということを強調している。このリストは、特定の各波長帯に専用の可能な化合物を示すために表出されたものであり、全てを含んでいるものではない。従って、吸収性材料は、0.1と4.5の間のk値を有している。
【0038】
【表1】

【0039】
膜層は、基体14に渡って連続的に延び、少なくとも2つの方向、つまり配線に平行な方向及び配線に直交する方向に等質で、ばらつきのない、一定の層である。
【0040】
図1aを参照すると、選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子10aが示されている。偏光素子10aは、基体14上に配設されたワイヤーグリッド層又はワイヤーグリッド22と、そのワイヤーグリッドの上側に配設された3枚の膜層30a,34a及び30bとを備えている。ワイヤーグリッド22は、アルミナで形成された素子又は配線26を有している。基体はガラス(BK7)である。3枚の膜層は、ワイヤーグリッド層22の上側又は上に配設されている。3枚の膜層は、不連続的に誘電体グリッドを形成している。ワイヤーグリッド層22の上に配設された、膜層の1つ30aは、入射光に対して光学的に透過性を有する材料で形成されることにより誘電体層とすることができる。他の膜層34aは、その誘電体層30aの上に配設され、入射光に対して光学的に吸収性を有する材料を含んでおり、吸収層を形成している。他の膜層30bは、その吸収層34aの上に配設され、入射光に対して光学的に透過性を有する材料を含んでおり、別の誘電体層を形成している。
【0041】
偏光素子10aは、可視入射光(400−700nm)に対して使用されるように構成されている。ワイヤーグリッドの素子26の厚さ又は高さtwgは、160nmである。第一誘電体層又はグリッド30aは、100nmの厚さt1を有し、1.45の屈折率n1を有する酸化ケイ素(SiO2)で形成されている。吸収層又はグリッド34aは、100nmの厚さt2を有し、2.5の屈折率n2を有し、可視光に対して光学的吸収性を有する材料で形成されている。各グリッドの周期Pは、144nmである。各素子の幅は、周期Pの45%、つまり57nmである。光12は、45度の角度で入射する。
【0042】
かかる偏光素子10aは、アルミナ、二酸化ケイ素、吸収性材料、及び二酸化ケイ素の層を積層し、そのあと各層をエッチングしてリブ及び配線を形成することにより、形成する。
【0043】
図1aの偏光素子10aの性能は、上部に誘電体グリッドを有さない類似の偏光素子と比較されるが、偏光素子10aで反射したs偏光は、実質的により少なく、偏光素子10aで透過したp偏光は、実質的により大きい。グリッドの周期Pは、可視光の波長よりも短いので、それらの全て本質的に薄膜として振る舞う。
【0044】
図1bを参照すると、他の選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子10bが示されているが、図1aの偏光素子10aとほとんどの点で類似のものである。加えて、偏光素子10bは、基体14bにエッチングすることにより得られる溝50を有しており、そこから延びるリブ54を形成している。ワイヤーグリッド層22の配線26は、そのリブ54上で支持されており、同じ周期を有している。かかる偏光素子は、上側の各層をエッチングして更に進め、基体にまでエッチングして溝を形成することにより形成される。
【0045】
図2を参照すると、他の選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子10cが示されているが、上述のそれらとほとんどの点で類似のものである。加えて、偏光素子10cは、ワイヤーグリッド層22と基体14の間に配設された吸収層34b及び誘電体層30cを有している。
【0046】
図3及び4を参照すると、他の選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子10d及び10eが示されているが、上述のそれらとほとんどの点で類似のものである。加えて、偏光素子10d及び10eは、ワイヤーグリッド層22の上側と下側に配設された他の膜層を有している。
【0047】
図5を参照すると、他の選択吸収性多層ワイヤーグリッド偏光素子10fが示されているが、図1aの偏光素子10aとほとんどの点で類似のものである。加えて、その偏光素子は、基体14とワイヤーグリッド層22の間に配設された少なくとも3枚の層を含んでいる。
【0048】
ここで提示された例は、この発明から実現できる多くの可能性の2,3である。一般的に、均一層と誘電体グリッドの組み合わせは、光の任意の帯域について入射角度の任意の範囲に渡って透過率又は反射率を最適化するというような特定の応用のために設計可能である。また、均一層と誘電体グリッドの組み合わせは、光の任意の帯域について入射角度の任意の範囲に渡って透過率又はある偏光及びその直交偏光の吸収率を最適化するというような特定の応用のために設計可能である。最適化は、透過率又は反射率について、透過率又は吸収率について、又はいくつかの特性の組み合わせについて行うことが可能である。また、最適化は、空気側から偏光素子への入射について、又は基体側からのそれについて、又はそれらの双方について行うことが可能である。
【0049】
各種のワイヤーグリッド偏光素子、光学縦列及び/又は投影/表示システムが、米国特許第5,986,730号、第6,081,376号、第6,122,103号、第6,208,463号、第6,243,199号、第6,288,840号、第6,348,995号、第6,108,131号、第6,452,724号、第6,710,921号、第6,234,634号、第6,447,120号、及び第6,666,556号に示されている。なお、これらはここで援用される。
【0050】
ワイヤーグリッド偏光素子は、光源に向き合うように描かれているが、又はその延設素子が光源に向くように示されているが、これは描画目的のためだけであることが理解できるであろう。当業者であれば、ワイヤーグリッド偏光素子は、画像形成ビームが基体を通過することを防止し、基体のような媒体を通過する光に関したゴースト画像又は多重反射を排除するという簡単な目的のために、例えば液晶アレイからの画像形成ビームに向くように配向される、ということが理解できるであろう。かかる構成により、ワイヤーグリッド偏光素子を光源に向くことなく逸らすことができる。
【0051】
以上の例は、1つ以上の特定の応用領域における、本発明の原理の例証であるが、当業者であれば、実施化における形態、利用法及び詳細について多数の変形態様を、発明的能力の訓練なくして、また発明の原理及びコンセプトから外れることなく、作り上げることができるということは自明であろう。しかして、発明は、以下に規定された請求の範囲以外のものにより限定されることは意図されていない。
【0052】
本発明の第1の態様は、
入射光を偏光し、一偏光を選択的に吸収するための選択吸収性ワイヤーグリッド偏光機器であって、
a)基体と、
b)基体の上側に配設され、互いに異なる屈折率を有する少なくとも2つの膜層と、
c)2つの膜層のうち少なくとも1つの屈折率が、基体の屈折率よりも大きいものであり、
d)基体の上側に配設され、入射光の波長よりも長い長さと、入射光の波長の半分よりも短い周期とを有する延設金属素子の配列からなるワイヤーグリッド層と、
e)入射光に対して光学的吸収性を有する材料を含むことにより一偏光を実質的に吸収する吸収層を形成する少なくとも1つの膜層と、
を備える。
【0053】
本発明の第2の態様は、
第1の態様による機器において、
少なくとも2つの膜層は、基体とワイヤーグリッド層の間に配設された少なくとも3枚の連続膜層である。
【0054】
本発明の第3の態様は、
第1の態様による機器において、
少なくとも2つの膜層は、基体とワイヤーグリッド層の間に配設されて誘電体リブの配列を伴った誘電体グリッドであり、ワイヤーグリッド層の金属素子と、誘電体グリッドの誘電体リブは、実質的に互いに平行に配向され、実質的に等しい周期を有している。
【0055】
本発明の第4の態様は、
第1の態様による機器において、
少なくとも2つの膜層は、ワイヤーグリッド層の上側に配設されて誘電体リブの配列を伴った誘電体層と、ワイヤーグリッド層と誘電体層の間に配設され、リブに直交する方向に連続した連続膜層と、からなる。
【0056】
本発明の第5の態様は、
第1の態様による機器において、
少なくとも2つの膜層は、ワイヤーグリッド層の素子に対して平行に配向された平行リブの配列を形成するように不連続である。
【0057】
本発明の第6の態様は、
第1の態様による機器において、
少なくとも2つの膜層は、非化学量論的に成膜された金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物、金属セレン化物、及び金属硫化物と、それらの組み合わせからなるグループから選択される材料を含んでいる。
【0058】
本発明の第7の態様は、
第1の態様による機器において、
吸収層は、非金属素子の配列からなる誘電体グリッドを有し、非金属及び金属の素子の配列は、実質的に互いに平行に配向され、実質的に等しい周期を有する。
【0059】
本発明の第8の態様は、
第1の態様による機器において、
吸収層の材料は、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化チタン、炭化ケイ素、タンタル、酸化第二銅、亜酸化銅、塩化第二銅、亜塩化銅、亜硫化銅、チタン、タングステン、酸化ニオビウム、ケイ酸アルミナ、窒化ボロン、酸化ボロン、酸化タンタル、炭素、及びそれらの組み合わせからなるグループから選択される。
【0060】
本発明の第9の態様は、
第7の態様による機器において、
吸収層の材料は、0.1と4.5の間のk値を有する。
【0061】
本発明の第10の態様は、
入射光を偏光し、一偏光を選択的に吸収するための選択吸収性ワイヤーグリッド偏光機器であって、
a)ある屈折率を有する基体と、
b)基体の上側に配設され、入射光の波長の半分よりも短い周期を有する平行金属配線の配列を有する偏光ワイヤーグリッド層と、
c)基体の上側に配設され、誘電体材料が含まれる誘電体層と、
d)基体の上側に配設され、一偏光を実質的に吸収するというような入射光の光学的吸収性を有する材料を含み、誘電体層の屈折率と異なる屈折率を有する吸収層と、
を備える。
【0062】
本発明の第11の態様は、
第10の態様による機器において、
基体とワイヤーグリッド層の間に配設された少なくとも3枚の連続膜層を更に備え、連続膜層は、配線に直交する方向に連続的である。
【0063】
本発明の第12の態様は、
第10の態様による機器において、
誘電体層は、基体とワイヤーグリッド層の間に配設されて誘電体リブの配列を伴った誘電体グリッドを有し、ワイヤーグリッド層の金属素子と、誘電体グリッドの誘電体リブは、実質的に互いに平行に配向され、実質的に等しい周期を有しいている。
【0064】
本発明の第13の態様は、
第10の態様による機器において、
誘電体層は、誘電体リブの配列を伴ってワイヤーグリッド層の上側に配設され、ワイヤーグリッド層と誘電体層の間に配設され、リブに直交する方向に連続した連続膜層を更に備える。
【0065】
本発明の第14の態様は、
第10の態様による機器において、
機器は、可視スペクトル内の光を選択的に吸収し、ワイヤーグリッド層の素子の配列の周期は、350nm未満であり、吸収層の材料は、可視スペクトル内の光について光学的吸収性を有する材料である。
【0066】
本発明の第15の態様は、
第10の態様による機器において、
機器は、紫外スペクトル内の光を選択的に吸収し、ワイヤーグリッド層の素子の配列の周期は、200nm未満であり、吸収層の材料は、紫外スペクトル内の光について光学的吸収性を有する材料である。
【0067】
本発明の第16の態様は、
第10の態様による機器において、
機器は、赤外スペクトル内の光を選択的に吸収し、ワイヤーグリッド層の素子の配列の周期は、500nm未満であり、吸収層の材料は、赤外スペクトル内の光について光学的吸収性を有する材料である。
【0068】
本発明の第17の態様は、
第10の態様による機器において、
誘電体層及び吸収層の各々は、ワイヤーグリッド層の配線と平行に揃っているリブの配列を形成するように不連続である。
【0069】
本発明の第18の態様は、
第10の態様による機器において、
吸収層の材料は、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化チタン、炭化ケイ素、タンタル、酸化第二銅、亜酸化銅、塩化第二銅、亜塩化銅、亜硫化銅、チタン、タングステン、酸化ニオビウム、ケイ酸アルミナ、窒化ボロン、酸化ボロン、酸化タンタル、炭素、及びそれらの組み合わせからなるグループから選択される。
【0070】
本発明の第19の態様は、
第10の態様による機器において、
吸収層の材料は、0.1と4.5の間のk値を有する。
【0071】
本発明の第20の態様は、
入射光を偏光し、一偏光を選択的に吸収するための選択吸収性ワイヤーグリッド偏光機器であって、
a)ある屈折率を有する基体と、
b)基体の上側に配設された以下に列挙の少なくとも3枚の異なる層と、
i)導電性材料を含んだ偏光層、
ii)基体の屈折率よりも大きい屈折率を有し、入射光に対して光学的吸収性を有する材料を含む吸収層、
iii)吸収層の屈折率とは異なる屈折率を有する誘電体層、
を備え、
c)少なくとも3枚の層は、入射光の波長よりも短い周期を有する平行リブの配列を形成するように不連続である。
【0072】
本発明の第21の態様は、
第20の態様による機器において、
吸収層の材料は、窒化ケイ素、窒化チタン、炭化チタン、炭化ケイ素、タンタル、酸化第二銅、亜酸化銅、塩化第二銅、亜塩化銅、亜硫化銅、チタン、タングステン、酸化ニオビウム、ケイ酸アルミナ、窒化ボロン、酸化ボロン、酸化タンタル、炭素、及びそれらの組み合わせからなるグループから選択される。
【0073】
本発明の第22の態様は、
第20の態様による機器において、
吸収層の材料は、0.1と4.5の間のk値を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を偏光し、一偏光を選択的に吸収するための選択吸収性ワイヤーグリッド偏光機器であって、
a)基体と、
b)前記基体の上側に配設され、入射光の波長の半分よりも短い周期を有する平行金属配線の配列を有する偏光ワイヤーグリッド層と、
c)前記ワイヤーグリッド層の下に配設され、誘電体リブの配列を伴った誘電体グリッドであって、当該ワイヤーグリッド層の前記金属配線と当該誘電体グリッドの当該誘電体リブとが実質的に互いに平行に配向されて実質的に等しい周期を有する、誘電体グリッドと、
d)前記基体の上側に配設され、一偏光を実質的に吸収するというような入射光の光学的吸収性を有する誘電体リブの配列を含む吸収層と、
を備えることを特徴とする選択吸収性ワイヤーグリッド偏光機器。
【請求項2】
前記ワイヤーグリッド層の上側に配設された誘電体の薄い膜層を更に含み、
前記吸収層は、前記誘電体の薄い膜層の屈折率とは異なる屈折率を有する、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記誘電体の薄い膜層は、誘電体リブの配列を含み、
前記ワイヤーグリッド層の前記金属配線と前記誘電体層の前記誘電体リブとは、実質的に互いに平行に配向されて実質的に等しい周期を有する、請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記誘電体の薄い膜層は連続し、前記基体に渡って連続的に延びる、請求項2に記載の機器。
【請求項5】
前記ワイヤーグリッド層の下に配設された他の薄い膜層を更に備える、請求項1に記載の機器。
【請求項6】
前記他の薄い膜層は連続し、前記基体に渡って連続的に延びる、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
前記吸収層の誘電体リブは、前記ワイヤーグリッド層の前記金属配線の上側でオフセットを有している、請求項1に記載の機器。
【請求項8】
前記吸収層の誘電体リブは、前記ワイヤーグリッド層の前記金属配線の上側で揃っている、請求項1に記載の機器。
【請求項9】
前記吸収層はケイ素を含み、前記誘電体の薄い膜層はケイ素を含む、請求項2に記載の機器。
【請求項10】
前記基体の上側に配設され、リブの配列を伴い、タンタルを含む他の誘電体グリッドを更に備える、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
前記吸収層の材料は、0.1と4.5の間の光学的パラメーターk値を有する、請求項1に記載の機器。
【請求項12】
前記吸収層の誘電体リブの前記配列は、前記誘電体の薄い膜層によって前記ワイヤーグリッド層から離間している、請求項2に記載の機器。
【請求項13】
前記吸収層の誘電体リブは、前記ワイヤーグリッド層の前記金属配線と前記基体との間に配設されている、請求項1に記載の機器。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−98738(P2012−98738A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264798(P2011−264798)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2010−513393(P2010−513393)の分割
【原出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(501218636)モックステック・インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】