説明

選択的コンタクトを有するエネルギー変換装置

【課題】共鳴トンネリングを用いて、狭いエネルギーにおいて分布する電子を広エネルギー分布から抽出することができる光電池装置を提供する。また、平均電子エネルギーを維持するが、伝導バンド最小エネルギーを向上させる光電池装置を提供する。
【解決手段】価電子バンドと伝導バンドのエネルギー差がEg1である第1半導体材料24と、価電子バンドと伝導バンドのエネルギー差がEg2である第2半導体材料26とを備え、Eg1とEg2との値が互いに異なる共鳴トンネリング装置である。本装置は、さらに、第1半導体材料24と第2半導体材料26とを接続するエネルギー選択的通過インターフェース25を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーエネルギーを電力に変換するものである。より詳細には、本発明は、ソーラーエネルギーの吸収に関するものであり、システム内におけるエネルギーキャリアのエネルギー分布を狭める中間ステップによって電力への変換を行うものである。
【背景技術】
【0002】
標準的な単一接合の光電池セルは、AM(エア・マス)1.5Gの条件下において31%の効率(理論変換効率40%)しか実現できない。これは、当該セルが、バンドギャップ以下のエネルギーを有する光子を吸収することができず、仮に光子がバンドギャップ以上のエネルギーを有しているとすると、全てのエネルギーが格子に熱として奪われてしまうことに起因する。図1は、バンドギャップエネルギーに等しいエネルギーを有する光子が吸収される状態(参照符号1)と、バンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーを有する光子が吸収される状態(参照符号2)と、格子3への熱として付加エネルギーが失われる状態(参照符号3)とを示している。
【0003】
上記の問題を解決する為に種々のアプローチが行われている:たとえば、多重接合セル、中間バンドセル、多重励起子生成セル、およびホットキャリアセルである。なお、これらのセルは、全て、“ M.A. Green著, Third Generation Photovoltaics: Advanced Solar Energy Conversion, Springer (December, 2005)”に要約されている。最も好結果のアプローチは多重励起子生成セルであり、当該セルは、複数の半導体吸収層を具備するとともに、各半導体吸収層におけるバンドギャップが異なっている。これは、異なるエネルギーを有する光子をセルの異なる層に吸収することにより、光子エネルギーが層バンドギャップに好適に対応したものとなるようにするとともに、バンドギャップを超える光子エネルギー(熱として失われる)が最小となるように設計されている。しかしながら、そのようなデバイスは、互いの層の上部に最適バンドギャップを有する層が配置されるよう、異なる半導体層を成長させることが困難なことから、高価なものとなってしまう。
【0004】
ここに開示する構造は、ホットキャリアソーラーセルに最も近い構造を具備している。ホットソーラーセルに係るコンセプトの概要は、Wurfel氏の論文“P. Wurfel著, Progress in Photovoltaics: Research and Applications, 13[4] 277-285 (June, 2005)”に記載されている。図2は、半導体中に光が吸収され、格子熱化された光子が半導体の伝導バンドに分散されるプロセスを示すものである。初期状態においては、伝導バンドにおける光子だけが、価電子バンドから熱的に励起される(グラフ4参照)。異なるエネルギーの光子を有する光スペクトルを励起した後、光子は、半導体の伝導バンドに励起される(グラフ5参照)。そして、当該光子は、光子エネルギー(hν)と半導体バンドギャップ(E)との間の差異、および電子質量(m)と正孔質量(m)との比率により下記数式1のとおり定義される伝導バンドの最小値(ΔE)よりも大きなエネルギーを有している。
【0005】
【数1】

この非熱的な光子の分布は、100fs以下のタイムスケールで電子同士が衝突することで発生する熱化によって生じるものであり(グラフ6参照)、電子の分布は、温度T(光子温度よりも十分大きな温度)を用いて、以下のとおりフェルミ分布(数式2)により示される。
【0006】
【数2】

その後、この熱電子分布は光子に作用して、10psのタイムスケールで格子におけるエネルギー損失が生じる(グラフ7参照)。これらの格子において熱化された光子は、ナノ秒のタイムスケールにおいて半導体の価電子バンドへ遷移し(グラフ8参照)、そのプロセスにおいて光子を発生させる場合もある。このプロセスは、同様の正孔同士の熱化および格子熱化に係るステップを伴って、価電子バンドにおける正孔分布についても同様に発生する。
【0007】
標準的な単一バンドギャップのソーラーセルにおいて、電子は、位置10(すなわち電子が格子とともに熱化されてエネルギーを損失した後)において、伝導バンドの底辺から励起される。ホットキャリアソーラーセルの原理は、位置9において電子を励起することにより、格子熱化により損失されかねない余剰エネルギーを用いる点にある。これは、1982年に最初に提案された理論であり(Robert T. Rossら著, "Efficiency of Hot-carrier Solar Energy Converters", Journal of Applied Physics, 53[5] 3813-3818 (May, 1982)参照)、種々の刊行物および特許において、同様の理論がその後引き継がれている。
【0008】
たとえば、P. Wurfel著の “Solar Energy Materials & Solar Cells, 46 (April, 1997) 43-52”が存在する。この理論発表は、衝突電離現象を包含するようにホットキャリアソーラーセルの理論を拡張するものである。この参照文献は、“大きなバンドギャップと小さなバンド幅”を有するようにコンタクトが形成された、エネルギー選択可能な“膜”材料について記載している。これは、専ら共鳴トンネルコンタクトによって実現されるものであり、当該コンタクトの離散エネルギーレベルが、有効な大きさのバンドギャップ(閉じ込めに起因する)および小さなバンド幅のコンタクトを提供する。本発表の構造においては、もちろん、励起(トンネリング)は金属内へ生じている。
【0009】
また、G. Conibeerら著“Solar Energy Materials & Solar Cells 93 (June, 2009) 713-719”も存在する。この文献における実験結果は、酸化シリコンに埋め込まれたシリコンQDにおける共鳴トンネリングを示している。エミッタ及びコレクタは同一(n-Si)であり、格子熱化されたキャリアにおいて実行される。しかしながら、上述の目的は、当該構造をエネルギー選択コンタクトに用いることにある。
【0010】
さらに、特許第4324214号公報(2009年9月)“光起電力素子”も存在する。この文献は、たとえばR.T. RossおよびP. Wurfelによる非特許文献に示されているようなものと同様のホットキャリアソーラーセルを開示している。主要な相違点として、特許第4324214号公報は、吸収層に不純物(n型あるいはp型)を含ませることにより、吸収層の多数キャリアが、バンドギャップ以上の光により吸収層を照らしている場合と同様の温度を維持するように構成することを開示している点にある。本デバイスの目的は、低温度の多数キャリアをコンタクト領域へ選択的にトンネリングすることにある。
【0011】
このようなデバイスは、特定のエネルギー(最適には平均エネルギー)にあるキャリアを、広いエネルギーにおいて分布するキャリア群から抽出することにある。このような抽出は、格子熱化よりも高速のレートで発生する必要があるが、キャリアトンネルからのエネルギー状態が再配置されるよう、キャリア熱化よりも低速で発生することが好ましい。これは、厳密な意味において必須ではないが、仮にトンネリングレートがキャリア熱化よりも高速であると、キャリア熱化がトンネリングよりも高速である場合に比べて、コンタクトに到達するキャリアの分布がエネルギー的に幅の広いものとなる。したがって、仮にキャリア熱化レートがトンネリングレートよりも高速であると、コンタクトにおける熱化ロスがより低くなるので、そのようなデバイスの効率がより高くなる。
【0012】
そのような文献及び特許におけるホットキャリアの抽出方法は、エネルギー選択的トンネリングによる方法である。これは、図3に示すように、量子井戸層12および量子井戸層14を吸収層13と隣接するように配置することによって、井戸の分散エネルギー状態を通じてキャリアのトンネリングを発生させることでもたらされる。トンネリングは、電気的コンタクト11および電気的コンタクト15の中へ、明確あるいは暗黙のうちに発生する。図3に係る装置の例において、吸収層13において光発生したキャリアによりホットキャリア分布16および17が形成され、このように分布するキャリアは、それぞれエネルギーEおよびEにおいてコンタクト11および15の中へ選択的にトンネルする。
【0013】
半導体から、当該半導体よりも高いフェルミレベルを有するコンタクトの中へ、ホットキャリア選択的トンネリングが生じるような装置については未だ作製されていない。しかしながら、2つの同一の半導体領域の間におけるホットキャリア選択的トンネリングに係る試験的な根拠に関しては、S. Yagi氏による“S. Yagi and Y. Okada, Fabrication of resonant tunneling structures for selective energy contact of hot carrier solar cell based on III-V semiconductors ,Photovoltaic Specialists Conference (PVSC), 2010 35th IEEE, 1213-1216 (June, 2010)”において発表されている。S. Yagi氏により用いられた構造は、図4に係る構造に類似しており、キャリアの格子熱化がトンネリングの後に吸収層21において生じるので、ホットキャリア光電池セルにおいて用いることには適していない。しかしながら、これにより、ホットキャリアの選択的トンネリングが、格子熱化よりも早く2つの領域の間で生じうるという原理が試験的に示されている。
【発明の目的】
【0014】
本発明の目的は、共鳴トンネリングを用いて、狭いエネルギーにおいて分布する電子を広エネルギー分布から抽出することができる光電池装置を提供することにある。本発明の他の目的は、平均電子エネルギーを維持するが、伝導バンド最小エネルギーを向上させる光電池装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0015】
上述の従来技術において開示されている全ての装置は、共鳴トンネリングを利用して1つの特定のエネルギーにおける半導体からキャリアを抽出するものである。さらに、この共鳴トンネリングは、明示的または黙示的に、金属電子コンタクトの中へと直接発生する。これは、金属におけるフェルミレベルが、共鳴トンネリングエネルギーを著しく下回っている必要があることから、トンネル時に空状態(empty state)が生じる点において問題がある。しかしながら、ホット電子が金属内にトンネルする際に大きな熱化損失が発生する。これは、図3(特許第4324214号公報から引用)において、エネルギーEおよびEにおいてコンタクトへ抽出された電子が、その後、それぞれエネルギーEおよびEに低下する必要がある点により示されている。
【0016】
これに反して、金属内のフェルミレベルが共鳴トンネリングエネルギーに近い場合、金属から吸収層へと大きなトンネリングが発生し(所望の方向と反対の方向に発生し、“バックトンネリング”という)、装置への出力電圧が低下してしまう。さらに、トンネル電流から電力を抽出するためにそのような装置がバイアスされると、金属アクセプタのフェルミレベルが共鳴エネルギーに近い場合には、バックトンネリングが著しく増加する。このコンタクト時の問題により、上記文献における装置は、いずれも、半導体内で光発生されたホットキャリアを効率的に利用するような構造を提供するものではない。
【0017】
本発明に係る装置および方法は、共鳴トンネリングを用いることで、エネルギー的に広い分布から、エネルギー的に狭い電子の分布を抽出するための構造を提供するものである。当該装置および方法は、平均電子エネルギーを維持するが、伝導バンドにおいて最小エネルギーを向上させるものである。
【0018】
本発明によれば、格子温度を超えるキャリア温度にある半導体内のキャリアが、狭いエネルギー範囲に亘って、より大きなバンドギャップを有する第2半導体材料へと抽出される。これにより、第2半導体材料内のキャリア分布は、伝導バンドの最小エネルギーが向上されたものとなるが、温度は低減されたものとなる。
【0019】
この伝導バンド最小エネルギーが向上された狭められた分布は、電気的に抽出されることも可能であるし、放射的に再配置されることも可能である。仮に狭められた分布が電気的に抽出されると、ホットキャリアソーラーセルにおいて用いられることが可能となる。また、狭められた分布が放射的に再配置されると、ナローバンドの光を光電池セルを照射するために用いることが可能となる。
【0020】
本発明の利点は、以下の事項を含むものである。
・キャリアの平均エネルギーは維持されるが、キャリア温度は低下する。これにより、バンドギャップが広い半導体で熱化されたキャリアが分布する。
・コンタクトからのバックトンネリングが少ない。なぜなら、他の半導体材料は(適切にドープされれば)伝導バンド中の共鳴エネルギーにおいてキャリアが存在しなくなるので、トンネリングが、直接他の半導体材料の中へと生じるためである。これにより、バックトンネリングが不可能となる。
・コンタクト中の熱化が低い。これは、広いバンドギャップを有する半導体の伝導バンドの最小値付近の領域へと直接トンネリングが生じるためである。
【0021】
本発明の一態様によれば、共鳴トンネリング装置は、価電子バンドと伝導バンドとの間でのエネルギー差がEg1である第1半導体材料と、価電子バンドと伝導バンドとの間でのエネルギー差がEg2である第2半導体材料とを備え、Eg1とEg2とは互いに異なる値であるとともに、上記第1半導体材料と上記第2半導体材料とを接続するエネルギー選択的通過インターフェースを備えている。
【0022】
本発明の一態様にれば、上記第1半導体材料または上記第2半導体材料の一方がエミッタ材料を含むとともに、上記第1半導体材料または上記第2半導体材料の他方がアクセプタ材料を含み、上記エミッタ材料に係る価電子バンドと伝導バンドとのエネルギー差が、上記アクセプタ材料に係る価電子バンドと伝導バンドとのエネルギー差以下である。
【0023】
本発明の一態様によれば、共鳴エネルギーレベルにおいて、上記アクセプタ材料は上記伝導バンド内にキャリアを有していない。
【0024】
本発明の一態様によれば、上記アクセプタ材料の電子質量が、上記エミッタ材料の電子質量よりも大きい。
【0025】
本発明の一態様によれば、上記エミッタ材料が、光を吸収して電子および正孔を生成する。
【0026】
本発明の一態様によれば、電子が非多数キャリアである場合には、上記エミッタ材料の伝導バンドエッジが、上記アクセプタ材料の伝導バンドエッジよりも低いエネルギーを有しており、正孔が非多数キャリアである場合には、上記エミッタ材料の価電子バンドエッジが、上記アクセプタ材料の価電子バンドエッジよりも高いエネルギーを有している。
【0027】
本発明の一態様によれば、上記アクセプタ材料の最初のLnm(1<L<20nm)についてはバンドギャップが広い材料が用いられ、上記アクセプタ材料の残りの部分についてはバンドギャップが狭い材料が用いられることで、アクセプタバンドギャップが段階的なものとされている。
【0028】
本発明の一態様によれば、電子が非多数キャリアである場合には、上記エネルギー選択的通過インターフェースは、上記アクセプタ材料の伝導バンドエッジよりも大きな電子エネルギーでの共鳴トンネリングをサポートするエネルギーレベルを提供し、正孔が非多数キャリアである場合には、上記エネルギー選択的通過インターフェースは、上記アクセプタ材料の価電子バンドエッジ以下の正孔エネルギーでの共鳴トンネリングをサポートするエネルギーレベルを提供する。
【0029】
本発明の一態様によれば、上記アクセプタ材料の非多数キャリアバンドエッジが、上記エミッタ材料の非多数ホットキャリアエネルギーの平均と実質的に一致している。
【0030】
本発明の一態様によれば、上記エミッタ材料のサイズが、エネルギー選択的抽出が行われる領域からの熱化長よりも小さい。
【0031】
本発明の一態様によれば、上記アクセプタ材料が、効率的な放射性再配置を促進する。
【0032】
本発明の一態様によれば、上記アクセプタ材料が、効率的な放射性再配置を促進する少なくとも1つの量子井戸を備えている。
【0033】
本発明の一態様によれば、効率的な放射性再配置を促進する光学キャビティをさらに備えている。
【0034】
本発明の一態様によれば、上記アクセプタ材料が、放射性再配置を抑制する。
【0035】
本発明の一態様によれば、共鳴トンネリングエネルギーと、上記アクセプタ材料の非多数バンドエッジとが、実質的に一致している。
【0036】
本発明の一態様によれば、上記エネルギー選択的通過インターフェースは、上記第1半導体材料に隣接するように設けられた第1バリア層と、上記第2半導体材料に隣接するように設けられた第2バリア層と、上記第1バリア層と上記第2バリア層との間に設けられた量子井戸層とを備えている。
【0037】
本発明の一態様によれば、光を吸収する半導体材料については、少数キャリア有効質量が、多数キャリア有効質量よりも実質的に小さい。
【0038】
本発明の一態様によれば、上記第1半導体材料の価電子バンドおよび/または伝導バンドが、上記第2半導体の価電子バンドあるいは伝導バンドのそれぞれからオフセットされている。
【0039】
本発明の一態様によれば、上記第1半導体材料がp型ドープであり、上記第2半導体材料がn型ドープであるとともに、Eg1がEg2以下である。
【0040】
本発明の一態様によれば、上記第1半導体材料および上記第2半導体材料から、外部回路へ、キャリアが電気的に抽出される。
【0041】
本発明の一態様によれば、上記第1半導体材料と上記第2半導体材料との間に、エネルギー選択的通過インターフェースが配置されている。
【0042】
本発明の一態様によれば、上記エミッタおよびアクセプタ材料は実質的に無ドープであり、上記アクセプタ領域は、効率的な放射性再配置をサポートするような構造を有する直接バンドギャップ材料である。
【0043】
本発明の一態様によれば、エミッタ材料はInAsを含み、アクセプタ材料は4元素材料である。
【0044】
本発明の一態様によれば、上記第1半導体材料の価電子バンドと上記第2半導体材料の価電子バンドとの間のオフセットが、トンネリングを行うことなく直接的に正孔を移動させることができるように選択される。
【0045】
本発明の一態様によれば、上記装置は、上記エネルギー選択的通過インターフェースとして、量子ドットの層を備えている。
【0046】
本発明の一態様によれば、上記エミッタ材料および上記アクセプタ材料が、シリンダ状に形成されている。
【0047】
本発明の一態様によれば、上記装置は、p型ドープエミッタ材料と、n型ドープアクセプタ材料との間に、エネルギー選択コンタクトを備えている。
【0048】
本発明の一態様によれば、上記アクセプタ材料から、キャリアが電気的に抽出される。
【0049】
本発明の一態様によれば、上記第1半導体材料はInAsであり、上記第2半導体材料はInxAl1-xAsySb1-yである。
【0050】
本発明の一態様によれば、上記エネルギー選択的通過インターフェースは、2つのAlSb層の間に設けられたInAsの量子井戸である。
【0051】
本発明の一態様によれば、上記エネルギー選択的通過インターフェースは、エネルギー選択通過界面が積層されたものである。
【0052】
本発明の一態様は、光電池セルと、ここに記載の共鳴トンネリング装置とを備えている光電池装置を含む。そして、上記共鳴トンネリング装置が、上記光電池セルのバンドギャップと略一致するエネルギーの光で上記光電池セルを照射するように、上記共鳴トンネリング装置は上記光電池セルに接続されている。
【0053】
本発明の一態様によれば、記共鳴トンネリング装置に照射されるブロードバンドな照射スペクトルが、上記共鳴トンネリング装置によって、実質的に単一波長のスペクトルに変換される。
【0054】
前述および関連する記載に引き続き、本発明は、以降に詳述する特徴点および特許請求の範囲に記載の特徴点を有している。以下の記載および添付の図面は、本発明の実施形態の正確な理解に供するものである。ここに記載の実施形態については、本発明に係る原理の範囲内で種々の方法を用いてもよい。本発明に係るその他の目的、利点、新規な特徴点については、以下の本発明に係る詳細な説明を、図面を参照しつつ理解することで、より明確になるであろう。
【発明の効果】
【0055】
本発明に係る装置は、共鳴トンネリングを用いて、狭いエネルギーにおいて分布する電子を広エネルギー分布から抽出する。さらに、当該装置は、平均電子エネルギーを維持するが、伝導バンド最小エネルギーを向上させる。その結果、装置効率が向上される。さらに、格子温度を超えるキャリア温度にある、半導体内のキャリアが、より大きなバンドギャップを有する第2の半導体の中へ、狭いエネルギー範囲に亘って抽出される。これにより、第2の半導体内のキャリア分布は、温度は低減されているが伝導バンド最小エネルギーが向上されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
添付の図面において、同一の参照符号は同一の部材ないし特徴点を示している。
【図1】光子エネルギー1に等しく光子エネルギー2よりも小さなバンドギャップを有する半導体内に光子が吸収される状態を示す図である。
【図2】半導体内に光が吸収されるプロセスと、伝導バンドの電子分布にどのような影響を及ぼすかを示す図である。グラフは、伝導バンド最小値を超える電子エネルギー(E)の関数として、電子密度分布(Г(E))を示している。
【図3】従来技術に係るホットキャリアソーラーセルを示す図である。
【図4】従来技術に係るトンネリングダイオードを示す図である。
【図5a】本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造を、アクセプタ材料内のオフセットされた伝導バンドとともに示す図である。
【図5b】本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造を、アクセプタ材料内のオフセットされた価電子バンドとともに示す図である。
【図6】光が照射された際の、本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造の異なる領域におけるキャリア密度と、電子エネルギーの関数として通過確率とを示す図である。
【図7】共鳴エネルギーレベルにおいてエネルギーおよび運動量を保存するために、本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造のアクセプタ材料の電子質量が重くされている状態を示す図である。
【図8】本発明に係る装置のバンド構造であり、材料とバンドを並べて示している。
【図9】本発明に係る装置の図であり、吸収方向とトンネリング方向とを分離する為のナノワイヤに係る設計を示している。
【図10】ナノワイヤ構造においてエミッタ材料からアクセプタ材料へと生じるトンネリングについて、電子エネルギーの関数としてトンネリング電流密度を示す図である。
【図11】本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造(p型ドープエミッタ材料およびオフセットされたn型ドープアクセプタ材料を有する)について、伝導バンド構造および層構造を示す図である。
【図12】本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造(p型ドープエミッタ材料およびオフセットされたn型ドープアクセプタ材料を有する)の伝導バンド構造を示す図であり、p型ドープエミッタ材料内に生成されたホットキャリアの分布を示す図である。
【図13】本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造の用途を示す図であり、ブロードバンドな光48が光学素子49により共鳴トンネリング構造50上に集光され、共鳴トンネリング構造から発せられる実質的に単一波長の光52が、対応する光電池セル53を照射している。
【図14a】本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造を、オフセットされた伝導バンドと、アクセプタ材料内の複数の量子井戸領域57とともに示す図である。
【図14b】本発明に係る共鳴トンネリング構造について、アクセプタ材料内で段階的にオフセットされた伝導バンド58とともに示す図である。
【図15】図14bの装置に810nmの光を暗状態で照射した場合における、電流−電圧特性を示すグラフである。
【0057】
〔用語の定義〕
バンドギャップ:半導体における価電子バンドと伝導バンドとの間のエネルギーギャップ
フェルミエネルギー:絶対零度での電子占有状態での最高エネルギー。電子分布を熱すると、~kbT 付近のエネルギーまで電子が分布する。
【0058】
キャリア熱化:キャリアのエネルギーを再分布させるキャリア−キャリア散乱。キャリアが十分に散乱されると、キャリアのエネルギー分布はフェルミ分布となる。なお、フェルミ分布においては、所定のキャリアエネルギーレベルが占有されている確率が、フェルミエネルギーおよび温度によって与えられる。そしてこのような状態において、キャリアは“熱化”されたとみなされる。
【0059】
格子熱化:キャリア分布の温度が格子の温度と等しくなるように、キャリア分布の温度を低減するキャリア−格子拡散。これにより、キャリアから格子へエネルギーが移動される。
【0060】
熱化長:格子とともにキャリアが熱化する長さ(格子熱化率およびキャリア速度によって決定される)
ホットキャリア:格子温度を超える温度のキャリア
共鳴トンネリングダイオード(RTD):量子井戸領域の両側に設けられた2つのドープ型半導体を備えている半導体装置(バンドギャップが狭い半導体の薄い層を囲む、バンドギャップが高い2つの半導体の薄い層を備えている)。そのような装置は、量子井戸のエネルギーレベルと同じエネルギーを有するキャリアを、2つのドープ型半導体層の間でトンネリングさせる。
【0061】
エミッタ:共鳴トンネリングダイオードにおいて、キャリアのトンネルの起点となる領域または材料。
【0062】
アクセプタ:共鳴トンネリングダイオードにおいて、キャリアのトンネルの行先となる領域または材料。
【0063】
共鳴(共鳴キャリア遷移):所定のエネルギー範囲に亘って、2つの量子状態の間で発生するキャリアの無反射遷移。ある状態から他の状態への遷移は50%よりも大きな確率である。
【0064】
調整:共鳴キャリアがあるエネルギー状態から他のエネルギー状態に遷移できるように、2つ(またはそれ以上)のエネルギー状態をエネルギー的に十分に一致させること。
【発明を実施するための形態】
【0065】
上述のように、従来技術に係る全ての装置は、共鳴トンネリングを用いて1つの特定エネルギーにおいて半導体からキャリアを抽出するものである。さらに、この共鳴トンネリングは、明示的あるいは黙示的に、金属電気コンタクトの中へと直接発生する。これは、金属におけるフェルミレベルが、共鳴トンネリングエネルギーを著しく下回っている必要があることから、ホット電子が金属の中へトンネルする際に高い熱化損失を発生させる点において問題がある。仮に金属内のフェルミレベルが共鳴トンネリングエネルギーに近い場合は、金属から吸収層への大きなトンネリングが発生し(所望の方向と反対に発生し、“バックトンネリング”と呼ばれる)、装置への出力電圧が低減する。さらに、トンネル電流から電力を抽出するためにそのような装置がバイアスされると、金属アクセプタ内のフェルミレベルが共鳴エネルギーに近い場合は、バックトンネリングが著しく増大する。
【0066】
本発明に係る装置および方法は、上述の問題を解決するものである。より具体的には、低バンドギャップ半導体材料から高バンドギャップ半導体材料へトンネリングが発生するように共鳴トンネリング構造が形成され、これら2つの半導体材料が、エネルギー選択的通過インターフェースによって接続される。たとえば、価電子バンドと伝導バンドとのエネルギー差がEg1である第1半導体材料から、価電子バンドと伝導バンドとのエネルギー差がEg2である第2半導体材料へとトンネリングが発生し(Eg1とEg2とは互いに異なる値である)、エネルギー選択的通過インターフェースは、エミッタ内のキャリアエネルギー分布に比べて狭い範囲のエネルギーに亘ってのみ、トンネリングを許容する。エミッタ内において分布する熱化されたキャリアに関しては、上述の用語の定義欄に記載されているように、キャリア分布の幅はkBTe(Teはエミッタ内の電子温度を示す)であり、上記インターフェースにより通過されるエネルギーの幅はkBTeよりも狭く、より好ましくは、kBTe/10よりも狭い。
【0067】
従来の共鳴トンネリングダイオードにおいて、量子井戸は、2つの同一の半導体(n型ドープ)の間に付帯している。そして、井戸において離散エネルギー状態にあるエネルギーについて、これら2つの半導体の間における選択的トンネリングが発生する。そのような従来の装置の概要が図4に示されている。ライン18は、その下に概略が記載された物質層構造を有するRTD(共鳴トンネルダイオード)の伝導バンドの特性を示している。セクション19は、エミッタである。エミッタは、井戸20を閉じ込めるバリアからオフセットされた伝導バンドを有しており、その結果、井戸におけるエネルギーレベルが離散する。これにより、離散的な井戸状態22に等しいエネルギーを有する電子だけを、エミッタ19から、整合するアクセプタ21にトンネルさせることができる。共鳴トンネリングおよびこれを共鳴トンネリングダイオードに用いることについては、Mizutaの文献“The Physics and Applications of Resonant Tunnelling Diodes, H. Mizuta and T. Tanoue, Cambridge University Press (1995)”に詳細に記載されている。
【0068】
図5a(伝導バンド特性23を有する伝導バンドトンネリング構造)および図5b(価電子バンド特性23bを有する価電子バンドトンネリング構造)に示すように、本発明に係る装置では、エネルギー選択的通過インターフェース(量子井戸層)の各側における半導体材料が異なっている。すなわち、エミッタ材料24,24bにおける価電子バンドと伝導バンドとの間のエネルギーギャップは、エネルギー選択的通過インターフェース25,25bの反対側に存在するアクセプタ材料26,26bにおける価電子バンドと伝導バンドとの間のエネルギーギャップよりも小さい。これは、図5aにおいて概略的に示されている。すなわち図5aは、上述の物理層構造を有するように提案された装置の伝導バンド構造を示している。また、図6は、キャリアエネルギーの関数としてキャリア密度および通過確率を示している。図5aおよび図6は、エミッタ材料がGaAs24により形成されるとともに、GaAs井戸25およびアクセプタ材料(AlxGa1-xAs 26の合金等のより高いバンドギャップ材料)を囲むようにバリアがAlAsにより形成された装置の例を示している。
【0069】
この例に係る装置は、以下のように動作する。エミッタ材料24(24b)に光が照射されると、エミッタ材料24(24b)の中でホットキャリアが分布する。そして、井戸27(27b)のエネルギーレベルと共鳴する電子(正孔)について、高速のエネルギー選択的トンネリングが井戸構造25(25b)を通過するように発生する。(このトンネリングは、ポテンシャルバリアが有限であるためにエネルギー拡散を有している、当該例に係る装置の通過確率はグラフ29に示すような電子エネルギー(価電子バンドの最大値以上)の関数となる。)AlxGa1-xAs へのエネルギー選択的トンネリングによって、その伝導バンドは、グラフ30に示すように熱化されたキャリアで満たされる。電子の平均エネルギーは、エミッタ分布(グラフ28)からアクセプタ分布(グラフ30)に遷移する際に維持されるが、伝導バンド最小エネルギーは、選択的トンネリングによって増加する。このキャリアの熱的分布(グラフ30)は、外部回路への電流として抽出することも可能であるし、放射的に再配置することにより、装置への入射が広帯域な光のエネルギーの平均エネルギーにおいて、単一波長の光を生成するために用いられてもよい。
【0070】
エミッタ材料24から脱離するキャリアのトンネリング率、および選択的に抽出されるキャリアからエネルギーレベルを再配置するために生じる電子同士の干渉は、いずれも格子熱化のレートよりも速い。これは、電子同士の干渉によって電子分布が100フェムト秒以内で熱化される一方、格子熱化は1ピコ秒以上の時間がかかる(電子分布のエネルギーおよび格子の温度に依存する)ので、十分に起こり得ることである。なお、両方のレートは、A.J. Nozik著“Spectroscopy and Hot Electron Relaxation Dynamics in Semiconductor Quantum Wells and Quantum Dots, Annual Review Physical Chemistry (2001) 52:193-231”を引用している。トンネリングレートは、通過確率(グラフ29)の幅に依存しており、キャリア熱化と同様のタイムスケールにおいて示される。これに関しては、たとえば、 A. J. Northら著“Electron reflection and interference in the GaAs/AlAs-Al Schottky collector resonant-tunneling diode, Physical Review B, 57, 1847-1854 (1998)”を参照されたい。
【0071】
本発明によれば、他の半導体材料(アクセプタ材料等)の中へと直接トンネリングが発生し、(適切にドープされていれば)共鳴エネルギーにおける伝導バンドにおいてキャリアが存在しなくなり、バックトンネリングが不可能となるので、前述のコンタクトからのバックトンネリングの問題や、コンタウト内における熱化の問題が解決される。
【0072】
トンネリングキャリアは、光が吸収されるエミッタ材料24における主要キャリアではない。これによって、あたかも不純生成キャリアが高い割合で存在しているかのようにホットキャリアの分布が維持され、そして、ホットな光生成キャリアが低温度の不純生成キャリアとともに迅速に熱化されるので、キャリア分布の温度が顕著に減少する。キャリア温度が低ければ低いほど、抽出を効率的に行う為の共鳴エネルギーレベルにあるキャリアが少ないことを意味する。たとえば、エミッタ材料24の伝導バンドからアクセプタ材料26の伝導バンドへとホット電子をトンネルするように設計された装置について、エミッタ材料は、実質的にドープされていないかあるいはp型ドープされているが、明確にn型ドープされていないものとする必要がある。すなわち、伝導バンドトンネリング装置に係るエミッタ材料24内のn型不純物ドーパントは、下記の数式3により与えられる光生成電子の密度(ρ)以下である必要がある。
【0073】
【数3】

なお、α(λ)は吸収係数であり、I(λ)は、特定の波長範囲(λ→λ+dλ)における光強度であり、Δは光吸収の深さであり、τはキャリア抽出時間である。これにより、伝導バンドにおける光生成電子の割合を不純生成電子の割合よりも高くして、高い温度が維持できるようになる。
【0074】
装置を可能な限り効率的なものとするためには、ホットキャリア分布を含むバンドについてのキャリア質量が、他のバンドに係るキャリア質量よりも顕著に小さいものである必要がある。たとえば、伝導バンドにおいて電子がホットキャリアとして用いられる場合、電子の質量は、光吸収領域(エミッタ材料24)内の正孔質量よりも小さい必要がある。これは、バンドギャップを超えるエネルギーを有する光子を吸収することで得られる余剰エネルギーが、電子と正孔との間で、これらの質量と反比例の関係で分割されることを示す数式1からも明確に判断できることである。好ましくは、電子質量を正孔質量の半分以下とすることで、余剰エネルギーの3分の2以上を電子分布内において存在させることができる。本装置例においては、この質量の相違については電子質量が正孔質量よりも著しく軽いものであると想定しており、これにより伝導バンドが余剰エネルギーの大半を受容し、ホットキャリアの分布が発生していると考えられる。たとえば、InAsにおけるme:mhが1:18であれば、余剰光子エネルギーの95%が伝導バンドに移動する。しかしながら、これは適宜決定すればよい事項であり、ホットキャリア分布が価電子バンドにおいて形成され、正孔のエネルギー選択トンネリングが分布を狭めるように用いられるよう、同様の装置を構成することができる。
【0075】
可能な限り低いバンドギャップを有するエミッタ材料と、当該エミッタ材料内で光生成されたホットキャリア分布の平均電子エネルギーと伝導バンドの最小値がエネルギー的に調整されたアクセプタ材料とを用いることで、装置を最も好適な態様で用いることができる。なお、エミッタ材料のバンドギャップを低くするのは、全ての波長の光を最大限吸収するためである。たとえば、バンドギャップを1.16eV以下とすれば、ソーラースペクトルのパワーの半分以上を吸収できる。厳密には、装置内においてエネルギーとともに運動量も保存される必要があるので、バンドの最小値に係るこのような調整は行われない。したがって、最適なアクセプタ材料は、より広いバンドギャップを有しているだけではなく、エミッタ材料よりも電子質量が重い必要がある。電子質量をより重いものとすることで、エネルギーおよび運動量の保存が、伝導バンドオフセットを有する材料間での電子トンネリングを満たすものとなる。これは、図7においてその概要が示されており、図7に示すように、複数の層(図5a参照)の伝導バンドオフセットは、電子エネルギーとともに、バリアに平行な運動量の関数となる。
【0076】
トンネリング領域25における低バンドギャップ材料を閉じ込めるバリアは、エミッタ領域24において生成される大半のホットキャリアよりも高い。もしそうでなければ、エミッタ材料24からアクセプタ材料26へと直接の熱放射が発生するからである。このようなキャリアについては、熱化損失が高くなり、エミッタ材料内のキャリアの平均エネルギーが低くなる。
【0077】
また、効率的な動作のため、光生成されたキャリアとこれらのトンネリングとの間で実質的な格子熱化が発生しないよう、エミッタ材料内で光生成されたキャリアを、バリアから熱化長以内に存在させてもよい。
【0078】
キャリア抽出に係る本方法は、伝導バンドオフセットを有する半導体の間で選択的トンネリングを行うことでキャリア分布をエネルギー的に狭いものとすることを目的としており、種々の態様で用いることが可能である。本方法を用いることにより、2つの半導体領域の間で電子温度が相違しているような箇所であれば、どのような箇所においても電流を生成することが可能となる。これは、エミッタ材料とアクセプタ材料とにおける電子温度が異なる場合の共鳴トンネリングダイオード内の電流を示し、ツ・エサキの式の単純な延長である、下記の数式4にて示される。
【0079】
【数4】

印加される電圧がゼロであるとしても、T1>T2であれば領域1から領域2へ電流が流れることは明らかである。この電流は、温度の高い半導体材料から温度の低い半導体材料への電子を移動させるものであり、仮に、温度の低い半導体材料が温度の高い半導体材料よりも幅の広いバンドギャップを有している場合は、平均電子エネルギーを低下させることなく、温度を低下させることが可能となる。そして、バイアスが印加されていない状態で、試作装置に光照射を行うことで、上記電流を計測した。なお、試作装置は、エミッタ領域がGaAsであり、共鳴トンネリング井戸が6nmのGaAs量子井戸(1.7nmのAlAsバリアによって閉じ込められている)であり、アクセプタ領域が Al0.07Ga0.93Asである。当該装置に係る暗状態および照射状態における電流−電圧(IV)特性を図15に示す。図15においては、共鳴トンネリングの特性とともにIV特性が示されており、IV特性は、バイアスがゼロの際に電流がピークとなり、3Vにおいて電流の谷が存在する。
【0080】
前述の説明に従ってより一般的に説明すれば、本発明に係る技術的特徴は、下記のうち1つまたはそれ以上を包含している。
・少なくとも、エミッタ半導体材料と、第1バリア層と、第2バリア層と、第1バリア層と第2バリア層との間に設けられる量子井戸層(あるいはエネルギー選択界面が積層されたもの)等のエネルギー選択的通過インターフェースと、アクセプタ半導体材料とを備える、非多数のキャリア共鳴トンネリング構造(図5a参照)。
ここで定義される非多数のキャリア共鳴トンネリング構造は、少数あるいは固有のキャリアが接合部分を横切ってトンネリングすることを許容するものである。図5aおよび図5bは、それぞれ、非多数共鳴トンネリング構造にかかる伝導バンドと価電子バンドの概略を示す図である。
・エミッタ材料のバンドギャップ(Eg1)は、アクセプタ材料のバンドギャップ(Eg2)以下である。
・エミッタ材料は、光を吸収して、電子および正孔を生成する。
・電子(正孔)が非多数のキャリアである場合、エミッタ材料の伝導(価電子)バンドのエッジは、アクセプタ材料の伝導(価電子)バンドのエッジよりも、低い(高い)エネルギーを有している。
・量子井戸層は、電子(正孔)が非多数のキャリアである場合、アクセプタ材料の伝導(価電子)バンドエッジよりも大きな(小さな)エネルギーにて電子(正孔)で共鳴トンネリングが行われるようなエネルギーレベルを提供する。
・アクセプタ材料に係る非多数キャリアの有効質量は、エミッタ材料よりも大きい。
【0081】
さらに、本発明に係る装置は、以下の副次的特徴を具備していてもよい。
・バリア高さが、少なくとも、光生成された非多数のキャリアに係る平均エネルギーより高い。
・光吸収が行われる材料における多数キャリアの質量よりも、少数キャリアの有効質量が実質的に少ない。少数キャリアの有効質量が“実質的に少ない”とは、少数キャリアの質量が多数キャリアの質量の半分以下であり、ホットキャリアエネルギーの3分の2以上が少数のキャリア分布に取り込まれることを意味する。
【0082】
アクセプタ材料に係る非多数のキャリアのバンドエッジは、エミッタ内の非多数ホットキャリアエネルギーの平均と実質的に一致する。これらの値は、好適に略一致している必要があり、これにより、エミッタ内の平均非多数ホットキャリアエネルギーから、アクセプタのバンドエッジエネルギーへと、(運動量を保存しながら)共鳴キャリア遷移が発生する。この共鳴キャリア遷移を行う為、好適に略一致するエネルギーレベルは互いに kBT以内である(Tは格子(フォノン)温度である)。
・共鳴トンネリングエネルギーと、アクセプタ材料の非多数バンドエッジとは、好適に略一致するようにされてもよい。これにより、(運動量を保存しながら)アクセプタ材料のバンドエッジへと共鳴キャリアが遷移できるようになる。エミッタ材料のサイズは、ホットキャリアの熱化長よりも小さくすることができ、これにより、エミッタ材料からのホットキャリアのエネルギー選択的抽出が可能となる。
・アクセプタ材料は、放射性再配置のレートがアクセプタ材料へのキャリアのトンネリングレートと同じスケールとなるよう、効率的な放射性再配置を促進する。
・アクセプタ材料は、放射性再配置(間接バンドギャップ等)を抑制する。
【0083】
以下に記載する具体的な実施形態においては、本発明に従って、伝導バンドオフセットを有する半導体材料の間で選択的トンネリングを行うことで、電子の分布をエネルギー的に狭いものとすることの用途の例を記載する。
【0084】
〔実施形態1〕
図8のバンド構造は、低バンドギャップ材料と高バンドギャップ材料との間で本発明に係るトンネリングスキームを用いる実施形態を示している。本実施形態は、エミッタ材料31とアクセプタ材料32との両方が、実質的に無ドープである。すなわち、エミッタ材料31およびアクセプタ材料32における不純ドーパントの密度は、数式3で示される光生成された電子の密度(ρ)以下である。たとえばアクセプタ材料を遮光しながら装置に光を照射したり、あるはエミッタ材料に光をフォーカスすることによって、電子が、アクセプタ材料ではなくエミッタ材料内で生成される。このようにして、エミッタ材料の伝導バンドにおいてホットキャリアの分布が生成されるとともに、アクセプタ材料の中へのトンネリングが発生する。アクセプタ材料は、電子の高速な放射崩壊が有利に行われるように設計される。たとえば、アクセプタ材料を直接バンドギャップ材料とするとともに、アクセプタバンドギャップエネルギーにおいて光子放出が励起されることをサポートするようなレーザ空洞構造を具備するよう、アクセプタ材料を設計する。このようにして、エミッタ材料に入射される幅の広い光は、アクセプタ材料から実質的に単一の波長で再び放出される。なお、実質的に単一の波長とは、 kBT(kBはボルツマン係数、Tは本実施形態に係る装置の動作温度)よりもエネルギー的に狭い光スペクトルを意味している。
【0085】
エミッタ材料31としては、バンドギャップが狭く電子質量が低いとの理由でInAsが用いられている。バリアとしては、格子がInAsに整合しており非常に広い伝導バンドオフセット(2.1eV)を有しているAlSbが用いられる。アクセプタ材料32としては、InAsおよびAlSbの両方に格子が整合しておりInAsよりも大きな電子質量を有している4元素材料InxAl1-xAsySb1-yが用いられる。この4元素材料の更なる利点は、xおよびyの値を変更することにより、バンドギャップ(および伝導バンドオフセット)を調整することができる点である。本材料系に係るその他の好ましい特徴点は、異なる半導体材料(InAs, AlSb, InxAl1-xAsySb1-y)の価電子バンドにおけるオフセットが非常に小さいので、トンネリングを行うことなく直接的に正孔を移動させることができる点である。これにより、電子トンネリングと同様に正孔トンネリングが行われるように装置を設計することなく、アクセプタ材料内で電子および正孔を再配置することが可能となる。本装置において用いられる低バンドギャップのエミッタ、高バンドギャップのバリア、および中間バンドギャップのアクセプタについては、その他に多くの組合せが可能であることは明らかであろう。すなわち、GeまたはSiGe, SiO2およびSi; GaAs, AlAsおよびAlxGa1-xAs; InAs, AlAsおよびInGaAs; InGaN, AlNおよびGaNを含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
〔実施形態2〕
実施形態1で具体的に説明した、低バンドギャップ材料から高バンドギャップ材料へのトンネリングスキームを利用するために設計およびモデル化された構造が図9に示されている。図9Aにおいては、光照射の方向と平行な方向において装置が示されており、図9Bにおいては、当該方向と垂直な方向で装置が示されている。図示されたナノワイヤ装置においては、InAsエミッタ材料33において光吸収が行われ、シリンダ状のナノワイヤである InxAl1-xAsySb1-y アクセプタ材料36から再放射が行われ、ナノワイヤと同心円をなすAlSb層35の内部においてInAs量子ドット34の層を通過するように共鳴トンネリングが行われる。これは、図9Cおよび図9Dに示すAlSb/InAs/AlSbの同心円をなす複数の層についても同様に行われ、同心円をなすInAsの量子井戸層38と通過するようにトンネリングが行われる。トンネリングレートを向上するために、アクセプタ材料でキャリアが光生成されることが防止されるよう、アクセプタ材料38を反射性または吸収性材料37によってキャップしてもよい。このナノワイヤの幾何学的形状は、トンネリングの方向からの光吸収の方向を分離するために用いられる。このようにして、光生成された電子はトンネル時に通過するバリアの熱化長内に存在しているものの、(ナノワイヤ長は所定の光波長に対する吸収深さのオーダで作製することができるので)照射光が高い割合で吸収される。
【0087】
このプロセスの効率は、本システムにおけるキープロセス(エミッタ33における光吸収、格子熱化、キャリア熱化、およびトンネリング)を示すレート方程式を用いて、本システムをモデリングすることにより得られる。トランスファマトリックス法を用いて所定の電子エネルギーEに係る伝達係数Tを得て、その後、この伝達係数Tを用いて、エネルギーインターバルがE→E+dEとなる際にエミッタ材料からアクセプタ材料へ通過する電子による電流を計算することによって、トンネル電流が計算される。本発明の装置に係るトンネル電流を、エネルギーの関数として、図10に示す。図10に示すように、アクセプタ材料中の電子に係るエネルギー分布は、(エミッタ材料中のホット電子分布に比べて)かなり狭められたエネルギーの分布となっている。アクセプタ材料における電子の放射崩壊によって出力される電力は、その後、本モデルについて使用された集中太陽光から入力される電力によって分割される。その結果、本プロセスでは60%の効率となった。
【0088】
〔実施形態3〕
実施形態3においては、たとえば実施形態2に記載されたような単一波長の光発生装置が、調整された光電池セル(たとえば、単一波長スペクトルにスペクトル調整された光電池セル)に接続され、これにより光電池セルのバンドギャップに略一致するエネルギーの光によって光電池セルが照射される。光電池セルのバンドギャップに略一致するエネルギーの光とは、光電池セルに吸収されることが可能でありつつも熱化によるエネルギー損失を最小にするにために、放射される単一波長のスペクトルと、バンドギャップエネルギーとが十分に一致していることを意味する。すなわち、バンドエッジ以下でなければ、バンドエッジに近ければ近いほど良い。これは、図13において概略的に示されており、ブロードバンド源48が集光光学素子(レンズ等)49に照射され、集光光学素子49は、本発明に係る装置50(部材番号51に拡大図を示す)の共鳴トンネリング構造上に光をフォーカスする。共鳴トンネリング構造は、単一波長光のエネルギーに一致するバンドギャップを有する光電池セル53上に、実質的にブロードバンドな光52を照射する。光電池セルにおける最も大きな損失は、バンドギャップ以上のエネルギーを有する光子から生成されたキャリアの熱化と、バンドギャップ以下のエネルギーを有する光子が吸収されないことであるので、このように実質的に単一波長の光を照射することによって、調整された光電池セルにおいて非常に効率的な電気変換を行うことができる。
【0089】
〔実施形態4〕
図11に示すバンド構造および材料層の構造は、本発明の実施形態4に係るものであり、所定のエネルギー42にあるエネルギー選択コンタクト40が、p型ドープエミッタ材料39と、n型ドープアクセプタ材料41との間に存在しており、参照符号43にて示される伝導バンドエネルギー特性を有している。前述のとおり、アクセプタ材料は、エミッタ材料よりも大きなバンドギャップを有している。
【0090】
さらに、図12に示すように、ホットキャリアはp型ドープエミッタ材料45において光生成され、所定エネルギー46にてn型ドープアクセプタ材料47に選択的にトンネルする。アクセプタ材料においてホットキャリアの分布が生成されないようにするために、n型ドープアクセプタ材料を遮光してもよいし、p型ドーブ領域に集光してもよい。本装置は、従来のp−n接合ソーラーセルと同様に、バイアスしてもよいし、電流が抽出されてもよい。エミッタ材料44とアクセプタ材料47との電気的コンタクトが用いられているが、たとえば図9に示すものと同様の材料系および構造を、実施形態1と同様に用いてもよい。本装置は、装置のコンタクトの間ではなく、n型ドープ半導体領域とp型ドープ半導体領域との間の界面にエネルギー選択的領域が配置されている点において、一般的な“ホットキャリアソーラセル”(特許第4324214号公報等)と明らかに相違している。
【0091】
〔実施形態5〕
実施形態5に係る装置は、実施形態1について、高速の放射崩壊を促進するアクセプタ材料の代わりに、アクセプタ材料からキャリアが電子的に抽出されるように変更されたものである。アクセプタ材料を遮光したり、あるいはエミッタ材料上に光をフォーカスすることで、エミッタ材料からアクセプタ材料へ電流を流す為に必要な電子(あるいは正孔)の温度勾配を形成することができる(数式4参照)。そして、当該電流から電力を抽出するために本装置をバイアスしてもよく、この際、選択的トンネリングエネルギーにおけるキャリア密度は、アクセプタ材料(不純物ドーピングにより生成される)内の方がエミッタ材料(光励起により生成される)よりも低いことが必要とされる。
【0092】
〔実施形態6〕
実施形態6に係る装置は、実施形態1について、アクセプタ材料内での放射性再配置をさらに促進するとともに、アクセプタ材料からコレクタ領域への逆トンネリングが低減されるように変更されたものである。これは、図14aに示すように、アクセプタ材料内に複数の量子井戸を設けることによって実現される。材料層55および伝導バンド54に示されるように、本実施形態においては、光子生成の後、キャリアは井戸共鳴エネルギーレベル56を通過して複数の量子井戸領域57へトンネルする。井戸にトラップされると、キャリアは共鳴レベルを通過してトンネルバックすることはできないので、この構造はエミッタ材料からアクセプタ材料へのキャリア移送を確実に促進する。特に、複数の量子井戸領域の中に、量子井戸の再発光波長について設計された光学キャビティが存在していれば、複数の量子井戸領域によりキャリアの効率的な再配置が促進される。さらに、上記光学キャビティのアンチノードに複数の量子井戸領域が存在していることがより好ましい。
【0093】
〔実施形態7〕
実施形態7に係る装置は、実施形態1について、アクセプタ材料からコレクタ領域へのキャリアの逆トンネリングが低減されるように変更されたものである。これは、図14bに示すように、トンネリング領域の数ナノメータ後方でアクセプタ材料のバンドギャップを低減することによって実現される。アクセプタ領域の最初のLnm(1<L<20nm)においてバンドギャップが広い材料(AlxGa1-xAs等)が用いられる一方で、アクセプタ材料の残りの部分についてはバンドギャップが狭い材料(AlyGa1-yAs 等、ただしy<x)が用いられることで、領域58に示すように、バンドギャップは段階的なものとされている。これにより、キャリアは共鳴AlxGa1-xAs 領域へとトンネルし、その後、非共鳴AlyGa1-yAs領域に素早く移動する。そして、その非共鳴AlyGa1-yAs領域から上記の構造を通って、キャリアがトンネルバックできないようになっている。
【0094】
本発明は、特定の実施形態あるいは複数の実施形態について図示および記載されたが、当業者であれば、本明細書および添付の図面を読むことにより、同等の変更および改良を行うことができるであろう。特に、上述の構成要件(部品、アセンブリ、装置、合成物等)により実行される種々の機能や、そのような構成要件を記載するために用いられたターム(“means”への言及を含む)は、特段の記載がない限り、本発明の実施形態に係る機能を実行するものとしてここに記載された構造と構造的に均等でないとしても、記載された構成要件の特定の機能を実行する(すなわち、機能的に均等な)あらゆる構成要件に対応することを意図している。さらに、1または複数の実施形態について本発明の特定の特徴点を記載したが、そのような特徴点は、任意あるいは特定の用途に必要とされ、なおかつ好適となるように、他の実施形態に係る1または複数の特徴点と組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本装置は、非常に高効率(50%以上)の光電池システムを実現するために用いられることが可能である。また、本装置は、ブロードバンドな光源(太陽など)から、単一波長の光を生成するために用いられることも可能である。さらに、本装置は、光電池セルを照射するために用いられることもでき、これにより、高い効率を得ることができる。また、本装置は、ホットキャリアソーラーセルを実施する際にも用いることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 価電子バンドから伝導バンドへ電子を励起する光子
2 価電子バンドから伝導バンドへ電子を励起する光子
3 格子へと余剰エネルギーを失う、高いエネルギー伝導バンドの電子
4 半導体の伝導バンド内における熱電子分布
5 光スペクトルを照射した後に、半導体の伝導バンドにおける電子の分布
6 キャリアの熱化後の、半導体の伝導バンドにおける電子の分布
7 格子熱化後の、半導体の伝導バンドにおける電子の分布
8 放射性再配置後の、半導体材料の伝導バンドにおける電子の分布
9 格子熱化前に電子が抽出されてもよい
10 格子熱化後に電子の抽出が行われた
11 正孔コンタクト層
12 正孔エネルギー選択コンタクト
13 光吸収領域
14 電子エネルギー選択コンタクト
15 電子コンタクト層
16 ホットな正孔の分布
17 ホットな電子の分布
18 従来のRTDに係る伝導バンド特性
19 従来のRTDに係るエミッタ層
20 従来のRTDに係る井戸層
21 従来のRTDに係るアクセプタ層
22 従来のRTDに係る共鳴エネルギーレベル
23 本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造の伝導バンド特性
23b 本発明に係る装置の共鳴トンネリング装置の価電子特性
24 本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造のエミッタ材料
24b 本発明(p型変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造のエミッタ材料
25 本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造の量子層
25b 本発明(p型変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造の井戸層
26 本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造のアクセプタ材料
26b 本発明(p型変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造のアクセプタ材料
27 本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造の共鳴電子エネルギーレベル
27b 本発明(p型変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造の共鳴正孔エネルギーレベル
28 エミッタ材料内のホットな電子の分布
29 通過確率(電子エネルギーの関数)
30 アクセプタ材料内の電子分布
31 エミッタ材料内のバンドギャップ
32 アクセプタ材料内のバンドギャップ
33 光吸収の領域(エミッタ材料)
34 通過のための離散エネルギーレベルを提供する量子ドット
35 量子ドットを閉じ込めるバリア層
36 アクセプタ材料
37 遮光するためのナノワイヤのキャップ
38 通過のための離散エネルギーレベルを提供する同心円井戸
39 本発明(p-i-n変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造のエミッタ材料
40 本発明(p-i-n変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造の井戸層
41 本発明(p-i-n変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造のアクセプタ材料
42 本発明(p-i-n変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造の共鳴電子エネルギーレベル
43 本発明(p-i-n変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造の伝導バンド特性
44 本発明(p-i-n変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造の伝導バンド特性
45 p型エミッタ材料内のホットな電子の分布
46 本発明(p-i-n変形例)に係る装置の共鳴トンネリング構造の共鳴電子エネルギーレベル
47 n型アクセプタ材料の伝導バンド
48 ブロードバンドな光入力
49 集光光学素子(レンズ等)
50 実質的に単一波長の光を放射する、本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造
51 実質的に単一波長の光を放射する、本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造(拡大されている)
52 実質的に単一波長の光
53 本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造50からの実質的に単一波長の光52に対応するバンドギャップを有している光電池セル
54 本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造の伝導バンド特性であり、再配置が促進された複数の量子井戸領域が含まれている
55 伝導バンド特性54を与えるように成長された材料による層構造の概要
56 本発明に係る装置の共鳴トンネリング構造の共鳴電子エネルギーレベル
57 アクセプタ領域における複数の量子井戸
58 段階的にオフセットされたアクセプタ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴トンネリング装置であって、
価電子バンドと伝導バンドとの間でのエネルギー差がEg1である第1半導体材料と、
価電子バンドと伝導バンドとの間でのエネルギー差がEg2である第2半導体材料とを備え、
Eg1とEg2とは互いに異なる値であるとともに、
上記第1半導体材料と上記第2半導体材料とを接続するエネルギー選択的通過インターフェースを備えていることを特徴とする共鳴トンネリング装置。
【請求項2】
上記第1半導体材料または上記第2半導体材料の一方がエミッタ材料を含むとともに、
上記第1半導体材料または上記第2半導体材料の他方がアクセプタ材料を含み、
上記エミッタ材料に係る価電子バンドと伝導バンドとのエネルギー差が、上記アクセプタ材料に係る価電子バンドと伝導バンドとのエネルギー差以下であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
共鳴エネルギーレベルにおいて、上記アクセプタ材料が上記伝導バンド内にキャリアを有していないことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
上記アクセプタ材料の電子質量が、上記エミッタ材料の電子質量よりも大きいことを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
上記エミッタ材料が、光を吸収して電子および正孔を生成することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
上記第1半導体材料の価電子バンドおよび/または伝導バンドが、上記第2半導体の価電子バンドあるいは伝導バンドのそれぞれからオフセットされていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
電子が非多数キャリアである場合には、上記エミッタ材料の伝導バンドエッジが、上記アクセプタ材料の伝導バンドエッジよりも低いエネルギーを有しており、
正孔が非多数キャリアである場合には、上記エミッタ材料の価電子バンドエッジが、上記アクセプタ材料の価電子バンドエッジよりも高いエネルギーを有していることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
電子が非多数キャリアである場合には、上記エネルギー選択的通過インターフェースは、上記アクセプタ材料の伝導バンドエッジよりも大きな電子エネルギーでの共鳴トンネリングをサポートするエネルギーレベルを提供し、
正孔が非多数キャリアである場合には、上記エネルギー選択的通過インターフェースは、上記アクセプタ材料の価電子バンドエッジ以下の正孔エネルギーでの共鳴トンネリングをサポートするエネルギーレベルを提供することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
上記アクセプタ材料の非多数キャリアバンドエッジが、上記エミッタ材料の非多数ホットキャリアエネルギーの平均と実質的に一致していることを特徴とする請求項2ないし5、7、または8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
共鳴トンネリングエネルギーと、上記アクセプタ材料の非多数バンドエッジとが、実質的に一致していることを特徴とする請求項2ないし5、または7ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
上記エミッタ材料のサイズが、エネルギー選択的抽出が行われる領域からの熱化長よりも小さいことを特徴とする請求項2ないし5、または7ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
上記第1半導体材料と上記第2半導体材料との間に、エネルギー選択的通過インターフェースが配置されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
上記エネルギー選択的通過インターフェースは、
上記第1半導体材料に隣接するように設けられた第1バリア層と、
上記第2半導体材料に隣接するように設けられた第2バリア層と、
上記第1バリア層と上記第2バリア層との間に設けられた量子井戸層とを備えていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
上記エネルギー選択的通過インターフェースとして、量子ドットの層を備えていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
上記エネルギー選択的通過インターフェースは、エネルギー選択通過界面が積層されたものを備えていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
上記第1半導体材料の価電子バンドと上記第2半導体材料の価電子バンドとの間のオフセットが、トンネリングを行うことなく直接的に正孔を移動させることができるように選択されたものであることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
上記第1半導体材料がp型ドープであり、上記第2半導体材料がn型ドープであるとともに、
Eg1がEg2以下であることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
p型ドープエミッタ材料と、n型ドープアクセプタ材料との間に、エネルギー選択コンタクトが設けられていることを特徴とする請求項2ないし5、または7ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
上記エミッタおよびアクセプタ材料が、実質的に無ドープであることを特徴とする請求項2ないし5、7ないし11、または18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
光を吸収する半導体材料について、少数キャリア有効質量が、多数キャリア有効質量よりも実質的に小さいことを特徴とする請求項1ないし19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
上記第1半導体材料および上記第2半導体材料から、外部回路へ、キャリアが電気的に抽出されることを特徴とする請求項1ないし20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
上記アクセプタ材料から、キャリアが電気的に抽出されることを特徴とする請求項2ないし5、7ないし11、または18ないし19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
上記アクセプタ材料が、放射性再配置を抑制することを特徴とする請求項2ないし5、7ないし11、18ないし19、または22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
上記アクセプタ材料が、効率的な放射性再配置を促進することを特徴とする請求項2ないし5、7ないし11、18ないし19、または22ないし23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
上記アクセプタ材料が、効率的な放射性再配置を促進する少なくとも1つの量子井戸を備えていることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
さらに、効率的な放射性再配置を促進する光学キャビティを備えていることを特徴とする請求項24または25に記載の装置。
【請求項27】
上記アクセプタ材料の最初のLnm(1<L<20nm)についてはバンドギャップが広い材料が用いられ、上記アクセプタ材料の残りの部分についてはバンドギャップが狭い材料が用いられることで、アクセプタバンドギャップが段階的なものとされていることを特徴とする請求項2ないし5、7ないし11、18ないし19、または22ないし26のいずれか1項に記載の装置。
【請求項28】
上記エミッタ材料はInAsを含み、上記アクセプタ材料は量子井戸を含むことを特徴とする請求項2ないし5、7ないし11、18ないし19、または22ないし27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
上記エミッタ材料および上記アクセプタ材料が、シリンダ状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
上記第1半導体材料はInAsであり、上記第2半導体材料はInxAl1-xAsySb1-yであることを特徴とする請求項1ないし29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
上記エネルギー選択的通過インターフェースは、2つのAlSb層の間に設けられたInAsの量子井戸であることを特徴とする請求項30に記載の装置。
【請求項32】
光電池セルと、
請求項1ないし31のいずれか1項に係る共鳴トンネリング装置とを備えている光電池装置であって、
上記共鳴トンネリング装置が、上記光電池セルのバンドギャップと略一致するエネルギーの光で上記光電池セルを照射するように、上記光電池セルに接続されていることを特徴とする光電池装置。
【請求項33】
上記共鳴トンネリング装置に照射されるブロードバンドな照射スペクトルが、上記共鳴トンネリング装置によって、実質的に単一波長のスペクトルに変換されることを特徴とする請求項32に記載の光電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−212872(P2012−212872A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−53837(P2012−53837)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】