遺伝子操作された切断ハーフドメイン
本明細書に開示されるのは、遺伝子操作された切断ハーフドメイン;これらの遺伝子操作された切断ハーフドメインを含む融合ポリペプチド;遺伝子操作された切断ハーフドメインおよび融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド;ならびにこのポリヌクレオチドおよび/または融合タンパク質を含む細胞である。また、例えば、ゲノム配列の標的化切断のために、これらのポリペプチドおよびポリヌクレオチドを用いる方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年2月8日出願の米国特許仮出願第61/337,769号、および2010年9月23日出願の同第61/403,916号の利益を主張し、これらの開示の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の支援する研究のもとでなされた本発明に対する権利に関する陳述
適用なし。
【背景技術】
【0003】
技術分野
本開示は、ポリペプチドおよびゲノム工学、ならびに相同組み換えの分野にある。
【0004】
背景
人工的ヌクレアーゼ、例えば、ゲノムDNAの標的化切断のためのジンクフィンガーヌクレアーゼ(ジンクフィンガードメインと切断ドメインとの融合)が記載されている。このような標的化切断事象は、例えば、標的化突然変異を誘導するため、細胞DNA配列の標的化欠失を誘導するため、ならびに所定の染色体遺伝子座での標的化組み換えを容易にするために用いられ得る。例えば、これらの開示が全ての目的のために全内容が参照により組み込まれる、米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20060063231号;および国際公開第07/014275号を参照のこと。
【0005】
特異性を増大させるため、各々がジンクフィンガー結合ドメインおよび切断ハーフドメインを含む一対の融合タンパク質を用いて、標的ゲノムDNAを切断してもよい。切断は、切断ハーフドメインが会合して機能的な二量体を形成しない限り生じないので、この配列は、特異性を増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オフターゲット切断事象をさらに減少させるため、遺伝子操作された切断ハーフドメイン、例えば、偏性ヘテロ二量体を形成するドメインも開発された。例えば、米国特許出願公開第2008/0131963号を参照のこと。しかし、活性が増大し、オフターゲット切断活性が低下した追加の遺伝子操作された切断ハーフドメインが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本開示は、野性型切断ドメインおよび/または以前に記載された遺伝子操作された切断ハーフドメインと比較して増強された活性および特異性を示す遺伝子操作された切断ハーフドメインを提供する。また記載されるのは、これらの遺伝子操作された切断ハーフドメインを含む複合体(例えば、ヘテロ二量体)および融合タンパク質である。本開示はまた、目的の領域における細胞クロマチンの標的化切断のためのこれらの組成物、および/または相同組み換えを細胞の目的の所定の領域で用いる方法を提供する。
【0008】
従って、一態様では、本明細書に記載されるのは、遺伝子操作された切断ハーフドメインであって、それが由来する親の野性型切断ドメインに比較して2つ以上の変異を含んでいる遺伝子操作された切断ハーフドメインである。特定の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、FokI由来であり、アミノ酸残基418、432、441、481、483、486、487、490、496、499、523、527、537、538および/または559(野性型FokI切断ハーフドメインに対してナンバリングした)のうちの2つ以上において変異を含む。一実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、野性型FokI切断ドメイン由来であり、アミノ酸残基486、499および496(野性型FokIに対してナンバリングした)において変異を含む。別の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、アミノ酸残基490、538および537(野性型FokIに対してナンバリングした)において変異を含む。別の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、野性型FokI切断ドメイン由来であり、かつアミノ酸残基487、499および496(野性型FokIに対してナンバリングした)において変異を含む。一実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、野性型FokI切断ドメイン由来であり、アミノ酸残基483、538および537(野性型FokIに対してナンバリングした)において変異を含む。なおさらなる実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、アミノ酸残基490および537において変異を含む。
【0009】
本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、野性型切断ハーフドメイン、および/または他の遺伝子操作された切断ハーフドメインとヘテロ二量体を形成し得る。特定の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、486、499および496位(野性型FokIに対してナンバリングした)の変異、例えば486位で野性型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で置き換える変異、499位で野性型Iso(I)残基をLeu(L)残基で、ならびに496位で野性型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える変異(それぞれ、「ELD」および「ELE」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、490、538および537位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば490位で野性型Glu(E)残基をLys(K)残基で、538位で野性型Iso(I)残基をLys(K)残基で、および537位で野性型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KKK」および「KKR」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、490および537位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、490位で野性型Glu(E)残基をLys(K)残基で、ならびに537位で野性型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KIK」および「KIR」ドメインとも呼ばれる)を含む。なおさらなる実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、487および496位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、487位で野性型Arg(R)残基をAsp(D)残基で、および496位で野性型Asn(N)残基をAsp(D)で置き換える変異(「DD」とも呼ばれる)および/または483および537位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、483位で野性型Asp(D)残基をArg(R)残基で、および537位で野性型His(H)残基をArg(R)残基で置き換える変異(「RR」とも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、487、499および496位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、487位で野性型Arg(R)残基をAsp(D)残基で、ならびに499位で野性型Ile(I)残基をAla(A)で、および496位で野性型Asn(N)残基をAsp(D)残基で置き換える変異(「DAD」とも呼ばれる)、および/または483、538および537位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、483位で野性型Asp(D)残基をArg(R)残基で、ならびに538位で野性型Ile(I)残基をVal(V)残基で、および537位で野性型His(H)残基をArg(R)残基で置き換える変異(「RVR」とも呼ばれる)を含む。
【0010】
別の態様では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、二量体化ドメイン以外のFokIのドメイン中に変異を含むようにさらに遺伝子操作されてもよい。例えば、418、432、441、481、523、527および559位の変異は、野性型FokIドメインの触媒活性を増大することが示された。詳細には、Pro(P)が野性型Ser(S)残基を418位で置き換える変異、およびGlu(E)残基が、野性型Lys(K)残基を441位で置き換える変異(「PE」として公知、または「Sharkey」としても公知)は、触媒活性を増強することが示された(Guoら(2010)J.Mol Biol,doi:10.101b/j.jmb.2010.04.060)。別の態様では、Pro(P)が野性型Ser(S)を418位で置き換え、Leu(L)が野性型Phe(F)を432位で置き換え、Glu(E)が野性型Lys(K)を441位で置き換え、His(H)が野性型Gln(Q)を481位で置き換え、Tyr(Y)が野性型His(H)を523位で置き換え、Asp(D)が野性型Asn(N)を527位で置き換え、Gln(Q)が野性型Lys(K)を559位で置き換える変異(「Sharkey」として公知、Guoら(同書)を参照のこと)。従って、一実施形態では、変異体FokIドメインは、418、441、486、および499位で変異を含んでもよい。別の実施形態では、変異体FokIドメインは、418、441、490、および538位で変異を含んでもよい。さらなる実施形態では、野性型FokIドメインは、418、441、486、496および499位、および/または418、441、490、537、および538位で変異を含むように変異されてもよい。他の実施形態では、野性型FokIドメインは、418、432、441、481、486、496、499、523、527および559位および/または418、432、441、481、523、527、559、490、538および537位で変異されてもよい。詳細には、この変異は、486位でGlu(E)による野性型Gln(Q)の変異、499位でLeu(L)による野性型Ile(I)の変異、496位でAsp(D)による野性型Asn(N)の変異、418位でPro(P)による野性型Ser(S)の変異、および441位でGlu(E)による野性型Lys(K)の変異(「ELD−S」または「ELD Sharkey」としても公知)および/または490位でLys(K)による野性型Glu(E)の変異、538位でLys(K)による野性型Ile(I)の変異、537位でLys(K)またはArg(R)による野性型His(H)の変異、418位でPro(P)による野性型Ser(S)の変異、ならびに441位でGlu(E)残基による野性型Lys(K)の変異(KKK−SもしくはKKR−S、またはKKK−SharkeyもしくはKKR−Sharkeyとしても公知)を挙げることができる。さらなる実施形態は、S418P:F432L:K441E:Q481H:Q486E:N496D:I499L:H523Y:N527D:K559Q(ELD−Sharkey’としても公知)、およびS418P:F432L:K441E:Q481H:E490K:H523Y:N527D:H537KまたはR:I538K:K559Q(KKK−Sharkey’またはKKR−Sharkey’としても公知)を包含する。
【0011】
別の態様では、条件付き活性化を示す(例えば、細胞が維持される条件に依存して)遺伝子操作された切断ハーフドメインが提供される。いくつかの実施形態では、条件付きの遺伝子操作された切断ハーフドメインは、低下した温度条件下で活性の低下を示す。いくつかの実施形態では、条件付きの遺伝子操作された切断ハーフドメインは、上昇した温度条件下で活性の低下を示す。
【0012】
さらに別の態様では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、非正準ジンク配位残基(例えば、正準のC2H2の立体配置ではなくCCHC、米国特許出願公開第2003−0108880号を参照のこと)を含むジンクフィンガーヌクレアーゼに組み込まれてもよい。
【0013】
別の態様では、本明細書に記載のようなDNA結合ドメインおよび遺伝子操作された切断ハーフドメインを含んでいる融合ポリペプチドが提供される。特定の実施形態では、DNA−結合ドメインは、ジンクフィンガー結合ドメイン(例えば、遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメイン)である。他の実施形態では、DNA−結合ドメインは、TALE DNA−結合ドメインである。
【0014】
別の態様では、本明細書に記載のような任意の遺伝子操作された切断ハーフドメインまたは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0015】
さらに別の態様では、本明細書に記載の任意のポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)および/またはポリヌクレオチドを含む細胞もまた提供される。一実施形態では、細胞は一対の融合ポリペプチドを含み、1つの融合ポリペプチドは、ELDまたはELE切断ハーフドメインを含み、1つの融合ポリペプチドは、KKKまたはKKR切断ハーフドメインを含む。別の実施形態では、1つの融合ポリペプチドは、DAD切断ハーフドメインを含むが、別の融合ポリペプチドは、RVR融合ポリペプチドを含む。他の実施形態では、対になった融合ポリペプチドはさらに、FokIヌクレアーゼドメインの他の位置に変異を含む。いくつかの実施形態では、これらの触媒性ドメイン変異体は、S418PおよびK441Eであり、従って、これらの変異体融合ポリペプチドは、下に列挙される変異体FokIドメインを含む:
(a)EL−S:S418P:K441E:Q486E:I499L
(b)KK−S:S418P:K441E:E490K:I538K
(c)ELD−S:S418P:K441E:Q486E:N496D:I499L
(d)KKK−S:S418P:K441E:E490K:H537K:I538K
(e)KKR−S:S418P:K441E:E490K:H537R:I538K
(f)DA−S:S418P:K441E:R487D:I499A
(g)RV−S:S418P:K441E:D483R:I538V
(h)DAD−S:S418P:K441E:R487D:N496D:I499A
(i)RVR−S:S418P:K441E:D483R:H537R:I538V
(j)DD−S:S418P:K441E:R487D:N496D
(k)RR−S:S418P:K441E:D483R:H537R。
【0016】
さらに別の態様では、目的の領域内の細胞クロマチンの標的化切断の方法;細胞中で相同組み換えを生じさせる方法;感染を処置する方法;および/または疾患を処置する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載のような一対の融合ポリペプチド(すなわち、一対の融合ポリペプチドであって、ここで1つの融合ポリペプチドは本明細書に記載のような遺伝子操作された切断ハーフドメインを含む)を発現することによって細胞中で目的の所定の領域で細胞クロマチンを切断することを包含する。
【0017】
本明細書に記載の遺伝子操作された切断ハーフドメインは、目的の領域での細胞クロマチンの標的化切断のための方法、および/または細胞中での目的の所定の領域での相同組み換えにおいて用いられ得る。細胞としては、培養細胞、生物体中の細胞および処置のために生物体から取り出された細胞が挙げられ、この場合、この細胞および/またはそれらの子孫は、処置後に生物体に戻される。細胞クロマチンの目的の領域は、例えば、ゲノム配列またはその一部であってもよい。組成物は、DNA結合ドメイン(例えば、遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインまたは新規な特異性を有するTALE結合ドメイン)および記載されるような切断ハーフドメインを含む融合ポリペプチドを包含する。
【0018】
融合タンパク質は、細胞において、例えば、融合タンパク質を細胞に送達することによって、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを細胞に送達することによって発現されてもよく、ここで、このポリヌクレオチドは、DNAである場合、転写され、そして細胞に送達されたRNA分子または細胞に送達されたDNA分子の転写物が翻訳されて、融合タンパク質が生成される。細胞へポリヌクレオチドおよびポリペプチドを送達するための方法は、本開示のいずれかに提示される。
【0019】
従って、別の態様では、目的の領域で細胞クロマチンを切断するための方法は、(a)目的の領域で第一の配列を選択することと;(b)第一のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;(c)細胞中で第一の融合タンパク質を発現することであって、この第一の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第一のDNA−結合ドメインおよび第一の遺伝子操作された切断ハーフドメインを含むことと;(d)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、この第二の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第二のDNA結合ドメインおよび第二の切断ハーフドメインを含むことと、を含み、ここでこの第一の融合タンパク質は、第一の配列に結合し、かつ第二の融合タンパク質は、第一の配列から2〜50ヌクレオチドに位置する第二の配列に結合し、それによってそれらがヘテロ二量体を形成するように、遺伝子操作された切断ハーフドメインを配置し、ここでヘテロ二量体が、目的の領域で細胞のクロマチンを切断する。
【0020】
他の実施形態では、本明細書に記載される任意の方法は、(a)目的の領域で第一および第二の配列を選択することであって、ここでこの第一および第二の配列は、2〜50ヌクレオチド離れていることと;(b)第一のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;(c)第二のジンクフィンガー結合ドメインが第二の配列に結合するように遺伝子操作することと;(d)細胞中で第一の融合タンパク質を発現させることであって、この第一の融合タンパク質が本明細書に記載されるような第一のDNA結合ドメインおよび第一の切断ハーフドメインを含んでいることと;(e)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、この第二の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第二のDNA結合ドメイン(例えば、遺伝子操作されたジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)および第二の切断ハーフドメインを含んでいることと;を含み、ここでこの第一の融合タンパク質は、第一の配列に結合し、第二の融合タンパク質は、第二の配列に結合し、それによって、この第一および第二の遺伝子操作された切断ハーフドメインを、それらが目的の領域で細胞クロマチンを切断するヘテロ二量体を形成するように配置する。特定の実施形態では、細胞クロマチンは、融合タンパク質が結合する第一の配列と第二の配列との間で、1つ以上の部位で切断される。
【0021】
さらなる実施形態では、目的の領域における細胞クロマチンの切断のための方法は、(a)目的の領域を選択すること;(b)第一のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が目的の領域の第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;(c)目的の領域における第二の配列に結合する第二のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALEDNA結合ドメイン)を提供することであって、ここで第二の配列は、第一の配列から2〜50ヌクレオチドに位置することと;(d)細胞中で第一の融合タンパク質を発現させることであって、この第一の融合タンパク質が本明細書に記載されるような第一のDNA結合ドメインおよび第一の切断ハーフドメインを含んでいることと;(e)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、この第二の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第二のDNA結合ドメインおよび第二の切断ハーフドメインを含んでいることと;を含み、ここでこの第一の融合タンパク質は、第一の配列に結合し、第二の融合タンパク質は、第二の配列に結合し、それによって、この第一および第二の切断ハーフドメインを、それらがヘテロ二量体を形成し、かつ細胞クロマチンが目的の領域で切断されるように配置する。
【0022】
また、例えば、標的化された変異を導入するために、細胞クロマチンのある領域を変更する方法も提供される。特定の実施形態では、細胞クロマチンを変更する方法は、細胞に1つ以上の標的化ヌクレアーゼを導入して、所定の部位での細胞クロマチンの二重鎖断裂、およびこの断裂の領域における細胞クロマチンのヌクレオチド配列に対して相同性を有するドナーポリヌクレオチドを生じることを含む。細胞DNAの修復プロセスは、二本鎖断裂の存在によって活性化され、そしてドナーポリヌクレオチドは、断裂の修復のためのテンプレートとして用いられ、この結果、細胞クロマチンへのドナーのヌクレオチド配列の全てまたは一部の導入が生じる。従って、細胞のクロマチンにおける配列は、変更されてもよく、特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列に変換され得る。
【0023】
標的化変更としては、限定するものではないが、点突然変異(ポイントミューテーション)(すなわち、単一の塩基対の異なる塩基対への変換)、置換(すなわち、複数の塩基対の同一長の異なる配列への変換)、1つ以上の塩基対の挿入、1つ以上の塩基対の欠失、および上述の配列変更の任意の組み合わせが挙げられる。
【0024】
ドナーポリヌクレオチドは、DNAであっても、またはRNAであってもよく、直鎖状であっても、または環状であってもよく、一本鎖であっても、または二本鎖であってもよい。ドナーポリヌクレオチドは、細胞へ、裸の核酸として、1つ以上の送達因子(例えば、リポソーム、ポロキサマー)との複合体として送達されてもよいし、または例えば、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)のようなウイルス送達ビヒクルに含まれてもよい。ドナー配列は、10〜1,000ヌクレオチド(またはその間のヌクレオチドの任意の整数値)またはそれ以上に及んでもよい。
【0025】
特定の実施形態では、相同組み換えの頻度は、細胞周期のG2期において細胞を停止することによって、および/または相同組み換えに関与する1つ以上の分子(タンパク質、RNA)の発現を活性化することによって、および/または非相同性末端結合に関与するタンパク質の発現もしくは活性を阻害することによって増強され得る。
【0026】
本明細書に記載される任意の方法において、第二のジンクフィンガー結合ドメインは、第二の配列に結合するように遺伝子操作され得る。
【0027】
さらに、本明細書に記載される任意の方法では、融合タンパク質は、単一のポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0028】
任意の前述の方法について、細胞のクロマチンは、染色体、エピソームまたはオルガネラゲノム中であってもよい。細胞のクロマチンは、限定するものではないが、原生動物細胞および真核生物細胞、真菌細胞、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、霊長類細胞およびヒト細胞を含む任意の細胞に存在し得る。
【0029】
いくつかの態様では、この方法は、本明細書に記載される変異を含む条件付きFokI活性を有する融合タンパク質を含む生物体を提供する。いくつかの実施形態では、これらの生物体は、植物である。これらの方法はまた、種子を含むこのような植物の組織に関する。
【0030】
他の実施形態では、目的の2つ以上の領域で細胞のクロマチンを切断するための方法が提供される。この方法は、(a)目的の第一の領域を選択すること;(b)第一のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が目的の領域の第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;(c)目的の領域における第二の配列に結合する第二のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALEDNA結合ドメイン)を提供するかまたは遺伝子操作することであって、ここで第二の配列が、第一の配列から2〜50ヌクレオチドに位置することと;(d)目的の第二の領域を選択すること;(e)第三のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が目的の第二の領域の第一の配列に結合するようにすることまたは遺伝子操作することと;(f)目的の第二の領域における第二の配列に結合する第四のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALEDNA結合ドメイン)を提供するまたは遺伝子操作することであって、ここで第二の配列が、第一の配列から2〜50ヌクレオチドに位置することと;(g)細胞中で第一の融合タンパク質を発現させることであって、この第一の融合タンパク質が本明細書に記載されるような第一のDNA結合ドメインおよび第一の切断ハーフドメインを含んでいることと;(h)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、この第二の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第二のDNA結合ドメインおよび第二の切断ハーフドメインを含んでいることと;を含み、ここでこの第一の融合タンパク質は、第一の配列に結合し、第二の融合タンパク質は、第二の配列に結合し、それによって、この第一および第二の切断ハーフドメインを、それらがヘテロ二量体を形成し、かつ細胞クロマチンが目的の第一の領域で切断されるように配置することと、(i)細胞中で第三の融合タンパク質を発現させることであって、この第三の融合タンパク質が本明細書に記載されるような第三のDNA結合ドメインおよび第三の切断ハーフドメインを含んでいることと;(j)細胞中で第四の融合タンパク質を発現することであって、この第四の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第四のDNA結合ドメインおよび第四の切断ハーフドメインを含んでいることと;を含み、ここでこの第三の融合タンパク質は、目的の第二の領域における第一の配列に結合し、かつこの第四の融合タンパク質は、目的の第二の領域における第二の配列に結合し、それによって、この第三および第四の切断ハーフドメインを、それらがヘテロ二量体を形成し、かつ細胞クロマチンが目的の第二の領域で切断されるように配置することと、を含む。
【0031】
さらに、本明細書に記載の任意の方法では、少なくとも1つのジンクフィンガー結合ドメインは、例えば、設計または選択の方法によって、遺伝子操作される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】パネルAおよびBは、単離された変異体のある範囲の温度におよぶ、本明細書に記載のような示される切断ドメイン変異体を含んでいるジンクフィンガーヌクレアーゼの切断活性を示す。図1Aは、酵母レポーター株が単離された変異体ベクターで形質転換され、3つの培養物に分けられ、22℃、30℃、および37℃でインキュベートされた場合の結果を示す。ZFN誘導後、変異体の活性を決定して、野性型ZFNの画分として報告した。図1Bは、抗FLAG抗体を用いてウエスタンブロットによってモニターした変異体ZFN発現を示す。等価なタンパク質ロードを確認するため、抗ヒストン3(抗H3)抗体ウエスタンブロットを行った。
【図2】パネルAおよびBは、53BPI特異的ZFNバックグラウンドにおけるZFN改変体ELD:KKKおよびELD:KKRの活性を示す。図2Aは、K562細胞でヌクレオフェクトした(nucleofected)53BP1−特異的なZFN改変体の活性を示す。この細胞を、トランスフェクションの3日後に回収した。各々の組み合わせの2つの培養物をアッセイした(例えば、EL/KK5および6)。Cel−1アッセイ(Surveyor(商標),Transgenomic)を用いて、各々のレーンの下部で図2Aに示す、ZFN誘導性の挿入および欠失の頻度(インデル%)を決定した。ZFN誘導性のインデルは、DNAのZFN切断の結果としての二本鎖断裂(DSB)の結果であり、この後に非相同末端結合(NHEJ)プロセスを用いる細胞による修復が続き、これがDNAのごく一部分を修復の間に断裂部位で挿入または欠失し得る。矢印は、Cel−1切断後のバンドの予想サイズを示す。細胞のアリコートをまた、さらに1週間培養して、長期培養(10日)での改変された細胞の安定性を決定した。図2Bは、抗FLAG抗体を用いるウエスタンブロットによってモニターしたZFN発現を示す。ローディングコントロールとして、抗NFκB p65を用いた。
【図3】パネルAおよびBは、KDR−特異的なZFNバックグラウンドにおける変異体の活性を示す。図3Aは、ヌクレオフェクションの3日後、および20日後にモニターした、K562細胞におけるKDR−特異的なZFN対のCel−1活性アッセイの結果を示す。各々のレーンで用いた示したFokI変異体とのZFN対を、レーンの上に示し、Cel−Iアッセイ(図2について上で記載)で検出した活性を下部に示す。GFPは、陰性のコントロールを示す。ZFN FokI改変体ELD:KKKおよびELD:KKRは、もとの偏性ヘテロ二量体のZFN(EL:KK)よりも活性が高い。図3Bは、図1について上で記載されるようなZFN発現およびタンパク質ローディングのモニタリングを示す。
【図4】GR−特異的なZFNバックグラウンドにおけるZFN改変体ELD:KKKおよびELD:KKRの活性を示し、ここで活性は、図2について上で記載されるようなCel−Iアッセイによって決定する。この図は、各々の条件について2セットのサンプルからの結果を示す。レーン1〜14は、第一のセットであり、レーン15〜26は、第二のセットである。新規な変異体は、もとの偏性ヘテロ二量体のEL:KKよりも活性であり、高度に活性なZFNについてZFNを制限する(レーン8とレーン9および10、ならびにレーン20とレーン21および22を比較)。漸減量のGR−標的化ZFN(パネルの上部にそって示す)をK562にヌクレオフェクトして、細胞をトランスフェクションの3日後に回収して、Cel−1アッセイを用いてZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。
【図5】パネルAおよびBは、3つの異なるRIPK1−特異的なZFN対(対A、BおよびC)における変異体の活性を示す。図5Aは、K562細胞においてヌクレオフェクトされた、RIPK1遺伝子(AおよびB)を標的化する2つの異なるZFN対についてのCel−1活性アッセイ(図2について上記される)を示す。細胞をトランスフェクションの3日後に回収して、アッセイを用いて、ZFN誘導性の挿入および欠失(インデル)の頻度を決定した。インデルのパーセントは、各々のレーンの下部に示す。図5Bは、K562細胞を、RIPK1遺伝子を標的化するZFN発現ベクター(C)の三番目の対でヌクレオトランスフェクトして、3日間37℃(左パネル)または30℃(右パネル)でインキュベートした。
【図6】パネルAおよびBは、CCR−5−特異的なZFN対(米国特許出願公開第2008/0159996号を参照のこと)のCel−1活性のアッセイ結果(図2について上記するとおり)を示す。図6Aは、CCR5ヘテロ二量体標的、CCR5−L ZFNホモ二量体(ABLIM2)、およびCCR5−Rホモ二量体(PGC)オフターゲット部位でのZFN誘導性のインデルの頻度を決定するためにCel−1アッセイを用いて、K562細胞において示されたFokI改変体のヌクレオフェクション後のCCR5標的化ZFNの強制されたホモ二量体化の活性を示す。図6Bは、図1について上記されるようなZFN発現およびタンパク質ローディングのモニタリングを示す。
【図7】パネルAおよびBは、図6に記載されるCCR5改変体のCel−1活性アッセイ結果(図2について上記するとおり)を示す。図7Aは、漸減量のCCR5 ELおよびELD FokI改変体を用いるCel−1活性の結果を示す。これらの構築物は、K562でヌクレオフェクトして、Cel−1アッセイを用いて、ZFN誘導性のインデルの頻度をCCR5ヘテロ二量体部位で決定した。図7Bは、図1について上記されるようなZFN発現およびタンパク質ローディングのモニタリングを示す。
【図8】パネルAおよびBは、GR−特異的なZFNバックグラウンドにおける変異体の強制されたホモ二量体化のCel−1活性のアッセイ結果を示す。図8Aは、GRヘテロ二量体部位でのZFN誘導性インデルの頻度を決定するためにK562細胞において指定のFokI改変体のヌクレオフェクション後のGR標的化ZFNの強制されたホモ二量体化後のCel−1の結果を示す。野生型以外のサンプルにおいて、このアッセイでは検出可能なインデルはなかった。図8Bは、図1について上記されるようなZFN発現およびタンパク質ローディングのモニタリングを示す。
【図9】DSBを標的化するγ−H2AXに対する抗体で染色したGR標的化ZFNバックグラウンドにおける示した構築物で処理したK562細胞のフローサイトメトリーデータを示す。陽性細胞のパーセントを示す。全てのFokI変異体対について観察されたDSBの割合は、野生型FokIについてよりもかなり少なかった。
【図10】パネルAおよびBは、初代細胞における新規なZFN変異体の活性を示す。図10Aは、PBMC中でヌクレオフェクトされた漸減量のCCR5−標的化ZFNを用いるCel−1活性アッセイの結果(図2について上で記載するとおり)を示す。細胞は、トランスフェクションの3日後に回収して、Cel−1アッセイを用いて、ZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。図10Bは、PBMC中で二重にヌクレオフェクトされたPD1遺伝子を標的化する、3つの異なる3つの異なるZFN対(ZFN A、ZFN B、およびZFN C、実施例5を参照のこと)で得られた棒グラフの結果を示す。細胞はトランスフェクションの3日後および10日後に回収して、Cel−1アッセイを用いて、ZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。このグラフは、二重のトランスフェクションからの平均値およびエラーバーを示す。
【図11A】パネルA〜Cは、新規なZFN変異体の活性を示す。図11Aは、PBMC中でヌクレオフェクトされた漸減量のGR−標的化ZFNを用いるCel−1活性のアッセイ結果を示す。細胞は、トランスフェクションの3日後および10日後に回収して、Cel−1アッセイを用いて、ZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。図11Bは、PBMC中で6つの独立したトランスフェクションからの、示されるZFNの相対活性の平均値+/−s.e.m.(標準誤差)を示す棒グラフを示す。P値は、MicroCal Originsバージョン7.5(OriginLab(登録商標))によって算出した2標本T検定を用い、これは、EL−KK改変体に対して示した活性の有意差を示す。図11Cは、ドナー核酸の標的化組み込みを促進するためのK562細胞においてヌクレオトランスフェクトされたEL/KKおよびELD/KKRのGR−特異的なZFN対の使用を示す。この実験におけるドナーは、新規なBamHI制限部位を構成し、その結果、DNAの標的化組み込みの際、標的化領域のPCR増幅産物は、TIが出現した場合、BamHI制限酵素によって切断できる。このデータによって、ELD/KKR FokI変異体対は、EL/KK FokI変異体対よりもTIを促進するのに効果的であったことが示される。
【図11B】図11Aの説明に同じ。
【図11C】図11Aの説明に同じ。
【図12】パネルAおよびBは、GRまたはCCR5のいずれかに特異的なFokI変異体の活性を示す。図12Aは、K562細胞中でヌクレオフェクトされたGR標的化ZFNのFokI変異体を用いるCel−I活性アッセイ(図2について上記するとおり)の結果を示す。変異したアミノ酸の位置の詳細な説明については表を参照のこと。図12Bは、CCR5標的化ZFNの同様の結果を示す。この結果によって、DA/RV対が試験された全てのFokI変異体対のうち最小の活性であることが示される。
【図13】FokI対の強制的なホモ二量体化が行われる場合に観察される活性を示す。活性は、Cel−1活性アッセイ(図2について上記するとおり)によって測定される。図13で示されるZFNは、GRに特異的であり、そして図からわかるとおり、KV FokI変異体は、適用可能なホモ二量体化活性を示すこの設定での唯一の変異体である。
【図14】追加のFokI変異体でさらに改変された、増強されたDA/RV対で観察されたCel−I活性アッセイ(図2について上記される)によって測定された活性を示す。この図は、CCR5−特異的なZFN対およびCXCR4−特異的なZFN対の両方についての結果を示しており、ここではFokIドメインが変更されている。この結果でわかるとおり、追加の変異は、DA/RV変異体の活性を約2倍に増大する。
【図15】KDR−特異的なZFNバックグラウンドにおける増強されたDA/RV対、DAD/RVRのCel−I活性を示す。KDR−特異的なZFN対は、開始するには活性が弱く、このデータによって、DAD/RVR変異体がまだこのアッセイで検出可能な活性を有さず、そのためDA/RV対と同様であることが示される。対照的に、ELD/KKR KDR−特異的なZFN FokI変異体対は、活性を示す(18〜21%のインデルが検出された)。
【図16】CCR5およびCXCR4に特異的な、2セットのZFN対によるK562細胞のヌクレオフェクション後の結果を示す。上部のパネルは、CCR5標的のCel−Iアッセイ結果(図2について上記するとおり)を示し、下部のパネルは、CXCR4標的と同様の結果を示す。この実験を、1セットは37℃でのみ維持したが、もう一方のセットは30℃で3日間保持したという点でのみ異なる、2つの平行なインキュベーション条件を用いて行った。この図によって、ZFNの両方の対とも同時に活性であったことが示される。
【図17】4つの可能性のあるオフターゲット部位(#3、#5、#7および#10)を切断活性について分析したこと以外は、図16について上記のようなK562細胞でのCel−Iアッセイ切断結果を示す。この実験は、2つのインキュベーション条件で上記のとおりであった。ELD/KKR−CCR5 FokI変異体対とDAD/RVR FokI変異体CXCR4対との組み合わせは、このアッセイにおけるこれらの4つのオフターゲットに対して検出不能な活性を生じた。
【図18】Cel−Iアッセイを用いて活性についてアッセイされたとおり、Sharkey変異体(表4、およびGuoら、(同書))と組み合わせた本発明に記載されるFokI変異体の結果を示す。試験したFokI変異体対は、KDR(上部パネル)またはGR(下部パネル)のいずれかに特異的であった。Sharkey変異の存在は、他のFokI変異体の活性を増大すると考えられる。
【図19】Cel−Iアッセイを用いて活性についてアッセイされたとおり、Sharkey変異体(表4、およびGuoら、(同書))と組み合わせた本発明に記載されるFokI変異体の活性の結果を示す。試験したZFN FokI変異体対は、GR(下部パネル)に特異的であった。Sharkey変異の存在は、他のFokI変異体の活性を増大すると考えられる。図19Aは、FokI変異体の相加的な結果を示し、図19Bは、実施例1に記載されるようなモニタリング発現およびゲルロードの結果を示す。
【図20】パネルA〜Dは、種々のFokI変異体+Sharkey FokI変異体の活性の結果が、Cel−Iアッセイによってアッセイされるとおりホモ二量体化するように強制されることを示す。示したとおり、FokI変異体は、活性なホモ二量体複合体を形成しない。図20Aおよび20Cは、FokIの相加的な結果を示し、そして図20Bおよび図20Dは、実施例1に記載されるような発現およびゲルローディングのモニタリングの結果を示す。
【図21A】パネルAおよびBは、Cel−Iアッセイによってアッセイされるような、示したZFNの状況でのD:RおよびDD:RR FokI変異体の活性の結果を示す。図21Bは、実施例1に記載されるような発現およびゲルローディングのモニタリングの結果を示す。
【図21B】図21Aの説明に同じ。
【図22】パネルAおよびBは、Cel−Iアッセイによってアッセイされるような、37℃(図22A)または30℃(図22B)で、示したZFNの状況での種々のFokI変異体の活性の結果を示す。インデルの割合は、レーンの下に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本明細書に開示されるのは、例えば、標的化切断に続く非相同的な末端結合による、または標的化切断に続く外因性ポリペプチド(細胞ヌクレオチド配列と相同性の1つ以上の領域を含む)とゲノム配列との間の相同組み換えによる、細胞クロマチンの標的化切断のためにおよび細胞ヌクレオチド配列の標的化変更のために有用な、遺伝子操作された切断ハーフドメインおよびこれらの遺伝子操作された切断ハーフドメインを含む融合ポリペプチドである。
【0034】
例示的な遺伝子操作された切断ハーフドメインを、表4に示す。この改変体は、お互いとヘテロ二量体を形成するが、ホモ二量体は形成しないような変異体を含む。これは、DNA切断の特異性を増大するか、および/または意図される複合体の濃度を増大する(ホモ二量体との競合を減少または排除することによる)。ジンクフィンガーヌクレアーゼ融合タンパク質に組み込まれた場合、これらの改変体は、意図される標的で遺伝子改変を誘導する(内因性の遺伝子座で、および組み込まれたGFPレポーターアッセイを用いて試験した場合)が、野性型切断ハーフドメインに比較してゲノムワイドなDNA切断を有意に減少する。
【0035】
従って、本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、著しくホモ二量体機能を付与する。なぜなら、同じ改変体の2つのコピーが相互作用して遺伝子操作(改変)を軽減または無効にするように強制するからである。低減されたホモ二量体機能によって、ZFN発現も減少せず、所望の標的部位の改変を刺激することもなく、インビボでZFN切断特異性の改善が得られる。
【0036】
さらに、本明細書に開示されるのは、条件付き活性を有する遺伝子操作された切断ハーフドメインである。これらの条件付き変異体は、そのデザイン次第で、ホモ二量体またはヘテロ二量体のいずれかとして機能し得る。特定の実施形態では、条件付き活性とは、温度に基づく切断活性の変化を指す。従って、これらの条件付き変異体は、細胞株または植物のような生物体全体の発達に用いられ得、ここでは切断活性が研究者らによって特定の温度で誘導され得るが、他の温度では停止したままで保持されている。
【0037】
概略
本明細書で開示される、方法の実践、ならびに組成物の調製および使用は、別段示さない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組み換えDNA、および関連分野における従来の技術を、当該技術分野の範囲内であるものとして使用する。これらの技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989および第3版,2001;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley&Sons,New York,1987および定期改訂版;METHODS IN ENZYMOLOGYシリーズ,Academic Press,San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,第3版,Academic Press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,「Chromatin」(P.M.WassarmanおよびA.P.Wolffe,編集),Academic Press,San Diego,1999、ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,「Chromatin Protocols」(P.B.Becker,編集)Humana Press,Totowa,1999を参照のこと。
【0038】
定義
「核酸」「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、線状または環状の高次構造で、一本鎖または二本鎖形態の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的に関しては、これらの用語をポリマーの長さに関する限定と解釈すべきではない。この用語は、天然ヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖、および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート主鎖)内で改変されるヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定ヌクレオチドのアナログは、同一の塩基対形成特異性を有し、すなわち、Aのアナログは、Tと塩基対を形成する。
【0039】
「ポリペプチド」「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指して互換可能に用いられる。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログまたは改変誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0040】
「結合」とは、高分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的で、非共有結合的な相互作用を指す。結合相互作用が全体として配列特異的であるかぎり、結合相互作用の全ての構成要素が配列特異的である必要はない(例えば、DNA骨格中のリン酸残基との接触)。そのような相互作用は、一般に、10-6M-1以下の解離定数(Kd)によって特徴付けられる。「親和性」とは、結合強度を指し:結合親和性の増大は、Kdの低下と相関する。
【0041】
「結合タンパク質」とは、別の分子に非共有結合的に結合することが可能なタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)、および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合タンパク質の場合においては、それは、それ自体に結合する(その結果、ホモ二量体、ホモ三量体などを形成する)ことが可能であり、および/または異なるタンパク質の1つ以上の分子に結合することが可能である。結合タンパク質は、2種類以上の結合活性を有することができる。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合、およびタンパク質結合活性を有する。
【0042】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)とは、1つ以上のジンクフィンガー(それは、亜鉛イオンの配位によって安定化される構造を有する結合ドメイン内のアミノ配列の領域である)を通じて配列特異的な形でDNAを結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、しばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略称される。
【0043】
ジンクフィンガー結合ドメインは、所定のヌクレオチド配列に結合されるように「遺伝子操作する(engineered)」ことができる。ジンクフィンガータンパク質を遺伝子操作するための方法の非限定的な例は、設計(デザイン)および選択である。設計されたジンクフィンガータンパク質は、天然に存在しないタンパク質であり、その設計/組成は、主として合理的な基準からもたらされる。設計のための合理的基準としては、置換規則の適用、ならびに既存のZFP設計および結合データの情報を格納したデータベース中の情報を処理するためのコンピュータアルゴリズムの適用が挙げられる。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、および同第6,534,261号を参照のこと;また国際公開第98/53058号、同第98/53059号、同第98/53060号、同第02/016536号、および同第03/016496号も参照のこと。
【0044】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質は、天然には見出されないタンパク質であり、その産生は主に、ファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択などの実験的プロセスによってもたらされる。例えば、米国特許第5,789,538号、米国特許第5,925,523号、米国特許第6,007,988号、米国特許第6,013,453号、米国特許第6,200,759号、国際公開第95/19431号、国際公開第96/06166号、国際公開第98/53057号、国際公開第98/54311号、国際公開第00/27878号、国際公開第01/60970号、国際公開第01/88197号、および国際公開第02/099084号を参照のこと。
【0045】
「配列」という用語は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、それは、DNAであっても、またはRNAであってもよく;線状、環状または分岐状であってもよく、一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい。「ドナー配列」という用語は、ゲノム内に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2〜10,000長(またはそれらの間もしくはそれ以上の任意の整数)のヌクレオチド、好ましくは、約100〜1,000長(またはそれらの間の任意の整数値)のヌクレオチド、より好ましくは、約200〜500長のヌクレオチドであってもよい。
【0046】
「相同的非同一配列」とは、第二の配列とある程度の配列同一性を共有するが、それらの配列が第二の配列の配列とは同一ではない、第一の配列を指す。例えば、変異体遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドは、変異体遺伝子の配列に対して相同であってかつ非同一である。特定の実施形態においては、2つの配列間の相同性の程度は、通常の細胞機構を利用して、それらの間での相同組み換えを可能とするのに十分である。2つの相同な非同一配列は、任意の長さであってもよく、それらの非相同性の度合は、単一ヌクレオチドという小さなもの(例えば、ゲノム点突然変異を標的化相同組み換えによって修正するため)、または10キロベース以上の塩基という大きなもの(例えば、染色体中の所定の異所部位に遺伝子を挿入するため)であってもよい。相同非同一配列を含む2つのポリヌクレオチドが同一の長さである必要はない。例えば、20〜10,000個のヌクレオチドまたはヌクレオチド対の外来ポリヌクレオチド(すなわち、ドナーポリヌクレオチド)を用いてもよい。
【0047】
核酸およびアミノ酸の配列同一性を決定するための技術は、当該技術分野において公知である。典型的に、そのような技術としては、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、ならびにそれらの配列を第二のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較すること、が挙げられる。ゲノム配列もまた、この方法で決定し、比較することができる。一般に、同一性とは、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、厳密なヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸対応を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性パーセントを決定することによって比較することができる。2つの配列の同一性パーセントは、核酸またはアミノ酸配列を問わず、2つの整列された配列間の厳密な合致数を短い方の配列の長さで割り、100をかけたものである。典型的に、配列間の同一性パーセントは、少なくとも70〜75%、好ましくは、80〜82%、より好ましくは、85〜90%、さらに好ましくは、92%、より一層好ましくは、95%、最も好ましくは、98%の配列同一性である。
【0048】
あるいは、ポリヌクレオチド間の配列類似性の程度は、相同性領域の間の安定な二重鎖の形成を可能にする条件下でポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって、続いて一本鎖特異的なヌクレアーゼでの消化および消化されたフラグメントのサイズ決定によって決定され得る。2つの核酸、または2つのポリペプチド配列は、その配列が、上記の方法を用いて決定される場合、その分子の既定の長さにわたって、少なくとも約70%〜75%、好ましくは80%〜82%、より好ましくは85%〜90%、それより好ましくは92%、なおさらに好ましくは95%、そして最も好ましくは98%の配列同一性を示す場合、お互いに対して実質的に相同である。本明細書において用いる場合、実質的に相同なとはまた、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列を指す。
【0049】
「組み換え」とは、2つのポリヌクレオチド間で遺伝情報が交換されるプロセスを指す。本開示の目的に関して、「相同組み換え(HR)」とは、例えば、細胞において二本鎖切断の修復中に起こる、そのような交換の特殊な形態を指す。このプロセスには、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖断裂を受けた分子)のテンプレート修復に対して「ドナー」分子を用い、かつそれは、ドナーから標的への遺伝情報の移動をもたらすという理由で、「非交差遺伝子変換(non−crossover gene conversion)」または「ショートトラクト遺伝子変換(short tract gene conversion)」として、様々な名称で公知である。いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、そのような移動は、切断された標的とドナーとの間に形成されるヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ修正、および/または、標的の一部になる遺伝情報の再合成にドナーが用いられる「合成依存的鎖アニーリング」、および/または関連のプロセスを含み得る。そのような特殊なHRは、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチドに組み込まれるような、標的分子配列の変更をもたらす場合が多い。
【0050】
「切断」とは、DNA分子の共有結合骨格の破壊を指す。切断は、リン酸ジエステル結合の酵素的または化学的加水分解が挙げられるが、これらに限定されない、種々の方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断の両方とも可能であり、二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として生じ得る。DNA切断は、平滑末端または互い違いの(スタガード)末端のいずれかの産生を生じ得る。特定の実施形態においては、融合ポリペプチドが、標的化二本鎖DNA切断に用いられる。
【0051】
「切断ハーフドメイン」とは、第二のポリペプチド(同一または異なるいずれか)と併せて、切断活性(好ましくは、二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。「第一および第二の切断ハーフドメイン」、「+および−切断ハーフドメイン」および「右および左の切断ハーフドメイン」という用語は相互交換可能に用いて、二量体化する切断ハーフドメインの対を指す。
【0052】
「遺伝子操作された切断ハーフドメイン」とは、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の遺伝子操作された切断ハーフドメイン)と偏性ヘテロ二量体を形成するように改変された切断ハーフドメインを指す。
【0053】
「条件付き変異」とは、特定の許容される環境条件下で野生型切断活性、および特定の制限条件下で変異体切断活性を有する、変異である。条件付き変異は、冷温感受性であってもよく、ここでは変異は、低温の方では変更された切断活性を生じるが、より高い温度に曝された際は、切断活性は、おおむね野生型程度までもどる。逆に、条件付き変異は、熱感受性(「熱感受性」と呼ばれる場合が多い)であってもよく、ここでは野生型切断活性が、より低温でみられるが、より高い温度に曝された際に変更される。変更された切断活性は、増大した活性として現れても、または減少した活性として現れてもよい。
【0054】
「クロマチン」とは、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびに、ヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含めてタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大半は、ヌクレオソームの形態で存在し、そこでは、ヌクレオソームコアが、2つのヒストンH2A、H2B、H3およびH4のうちそれぞれ2つを含む八量体と会合した約150塩基対のDNAを含み;そしてリンカーDNA(生物に依存して長さはさまざま)がヌクレオソームコアの間に延在する。1分子のヒストンH1は、一般にリンカーDNAと会合する。本開示の目的に関して、「クロマチン」という用語は、原核性および真核性の両方のあらゆる種類の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンは、染色体およびエピソームクロマチンの両方を含む。
【0055】
「染色体」とは、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、その細胞のゲノムを含む全染色体の集合である、その核型によって特徴付けられる場合が多い。細胞のゲノムは、1つ以上の染色体を含んでもよい。
【0056】
「エピソーム」とは、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製する核酸、核タンパク質複合体、または他の構造である。エピソームの例としては、プラスミドおよび一定のウイルスゲノムが挙げられる。
【0057】
「アクセス可能領域、接近可能領域」とは、核酸に存在する標的部位が、標的部位を認識する外因性分子に結合され得る、細胞のクロマチン中の部位である。いかなる特定の理論によっても束縛されることは望まないが、アクセス可能領域とは、ヌムレオソーム構造へパッケージングされない領域であると考えられる。アクセス可能領域の別個の構造は、化学的および酵素的なプローブ例えば、ヌクレアーゼに対するその感受性によって検出され得る場合が多い。
【0058】
「標的部位」または「標的配列」とは、結合にとって十分な条件が存在する条件下で結合分子が結合するであろう核酸の一部を規定する、核酸配列である。例えば、配列5’−GAATTC−3’は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼの標的部位である。
【0059】
「外因性、外来」分子とは、通常は細胞内に存在しないが、1つ以上の遺伝学的、生化学的、または他の方法によって細胞内に導入することができる分子である。「通常は細胞内に存在」とは、細胞の特定の発生段階および環境条件に関して決定される。従って、例えば、筋の胚発生中のみに存在する分子は、成体筋細胞については外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞については外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全型内因性分子の機能性バージョン、または正常には機能する内因性分子の機能不全型バージョンを含んでもよい。
【0060】
外因性分子は、とりわけ、低分子、例えば、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成される低分子、または、高分子、例えば、タンパク質、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の任意の改変誘導体、または1つ以上の上記分子を含む任意の複合体であってもよい。核酸としては、DNAおよびRNAが挙げられ、それは一本または二本鎖であってもよく、線状、分岐状または環状であってもよく、任意の長さであってもよい。核酸としては、二重鎖を形成できる核酸、ならびに三重鎖形成核酸が挙げられる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照のこと。タンパク質としては、限定するものではないが、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが挙げられる。
【0061】
外因性分子は、内因性分子と同じの種類の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってもよい。例えば、外因性核酸は、感染ウイルスゲノム、細胞中に導入されたプラスミドもしくはエピソーム、または細胞内に通常は存在しない染色体を含んでもよい。細胞中に外因性分子を導入するための方法は、当業者には公知であり、これには限定するものではないが、脂質媒介移入(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介移入およびウイルスベクター媒介性の移入が挙げられる。
【0062】
対照的に、「内因性」分子とは、特定の環境条件下で特定の発生段階にある特定の細胞内に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、クロロプラストもしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含んでもよい。さらなる内因性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含んでもよい。
【0063】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が、好ましくは共有結合的に連結されている分子である。サブユニット分子は、同一の化学種の分子であってもよいし、または異なる化学種の分子であってもよい。第一の種類の融合分子の例としては、限定するものではないが、融合タンパク質(例えば、ZFP DNA結合ドメインと切断ドメインとの間の融合物)、および融合核酸(例えば、上記の融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられる。第二の種類の融合分子の例としては限定するものではないが、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、およびマイナーグルーブバインダー(minor groove binder)と核酸との間の融合物が挙げられる。
【0064】
細胞における融合タンパク質の発現は、細胞に融合タンパク質を送達することによって、または細胞に融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達し、そこで、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて融合タンパク質を生成することによって、生じ得る。トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチド連結はまた、細胞におけるタンパク質の発現に関与することができる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達の方法を、本開示の他所に提示する。
【0065】
本開示の目的に関して、「遺伝子」とは、遺伝子産物(以下参照のこと)をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含み、そのような調節配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているか否かは問わない。従って、遺伝子としては、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えば、リボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座制御領域が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0066】
「遺伝子発現」とは、遺伝子産物への遺伝子に含まれる情報の変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたは他の任意の種類のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物としてはまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集等のプロセスによって改変(修飾)されたRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチリル化、およびグリコシル化によって改変(修飾)されたタンパク質が挙げられる。
【0067】
遺伝子発現の「調節」とは、遺伝子の活性の変化を指す。発現の調節には、遺伝子活性化および遺伝子抑制を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0068】
「真核」細胞としては、限定するものではないが、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、およびヒト細胞が挙げられる。
【0069】
「目的の領域」とは、例えば、遺伝子または遺伝子内のもしくはそれに隣接する非コード配列などの、その中で外因性分子と結合することが望ましい細胞クロマチンの任意の領域である。結合は、標的DNA切断および/または標的組み換えの目的のためであってもよい。目的の領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官のゲノム(例えば、ミトコンドリア、クロロプラスト)、または感染ウイルスゲノム中に存在してもよい。目的の領域は、遺伝子のコード領域内であっても、転写された非コード領域(例えば、リーダ配列、トレーラー配列またはイントロンなど)内であっても、またはコード領域の上流または下流のいずれかにある非転写領域内であってもよい。目的の領域は、長さが単一のヌクレオチド対程度の小さなものから最大2,000個のヌクレオチド対の長さであっても、または任意の整数値のヌクレオチド対であってもよい。
【0070】
「作動可能な連結」および「作動可能に連結される」(または「作動可能に連結される」)という用語は、2つ以上の構成要素(例えば、配列エレメント)の並列であって、ここでこの構成要素が、両方の構成要素が正常に機能し、かつその構成要素の少なくとも1つが他の構成要素の少なくとも1つに発揮される機能を媒介し得ることを可能にするように配列されている並列に関して交換可能に用いられる。実例として、転写調節性配列、例えば、プロモーターは、転写調節性配列が、1つ以上の転写調節性因子の有無に応答してコード配列の転写のレベルを制御する場合、コード配列に対して作動可能に連結されている。転写調節性配列は一般には、コード配列とcisで作動可能に連結されるが、そこに直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーとは、たとえ連続していない場合でさえ、コード配列に対して作動可能に連結されている転写調節性配列である。
【0071】
融合ポリペプチドに関して、「作動可能に連結される」という用語は、それぞれの構成要素が、そのように連結されていない場合に、それが果たすのと同じ機能を他の構成要素に連動して実行するという事実を指し得る。例えば、ZFP DNA結合ドメインが切断ドメインに融合されている融合ポリペプチドに関して言えば、ZFP DNA結合ドメインおよび切断ドメインは、融合ポリペプチドにおいて、ZEPDNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することが可能で、一方で切断ドメインがその標的部位の近傍でDNAを切断することが可能である場合に、作動的連結状態にある。
【0072】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的なフラグメント」とは、タンパク質、ポリペプチド、または核酸であって、それらの配列が、全長タンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一ではないが、全長タンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一の機能を保持するものである。機能的フラグメントは、対応する天然分子より多くても、少なくても、または同じ数の残基を有してもよく、および/または1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含んでもよい。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当該技術分野において周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法は周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフト、または免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA切断は、ゲル電気泳動によってアッセイすることができる(Ausubelら、(上記)を参照のこと)。あるタンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイ、または相補性(遺伝的相補性および生化学的相補性の両方)によって決定することができる。例えば、Fieldsら、(1989)Nature 340:245〜246、米国特許第5,585,245号、およびPCT国際公開第98/44350号を参照のこと。
【0073】
遺伝子操作された切断ハーフドメイン
ホモ二量体化を最小化または妨げる、遺伝子操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン変異体とも呼ばれる)は、参照によりそれらの全内容が本明細書に組み込まれる、例えば米国特許出願公開第20050064474;同第20060188987号および米国特許出願公開第2008/0131962号に記載されている。FokIの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538位のアミノ酸残基は全て、FokI切断ハーフドメインの二量体化に影響を与えるための標的である。FokIタンパク質におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Wahら(1998)Proc.Nat’l Acad Sci USA 95:10654〜10569による。
【0074】
本明細書に記載されるのは、前に記載された遺伝子操作されたFokI切断ドメインおよび/または野生型切断ドメインに比較して増大した活性および特異性を示すFokIの遺伝子操作された切断ハーフドメインである。例示的な変異体切断ハーフドメインは表3に示す。例示的な遺伝子操作された切断ドメインは、表4に示す。特定の実施形態では、この切断ハーフドメインは、野生型に比較して少なくとも3つのアミノ酸残基の位置で変異を含む。例えば、特定の実施形態では、この切断ハーフドメインは、486、499および496位で変異を含む。他の実施形態では、この切断ハーフドメインは、490、538および537位で変異を含む。
【0075】
一実施形態では、490における変異は、Glu(E)をLys(K)で置換し;538における変異は、Ile(I)をLys(K)で置換し;537における変異は、His(H)をLys(K)またはArg(R)で置換し;486における変異はGln(Q)をGlu(E)で置換し;499における変異は、Ile(I)をロイシン(L)で置換し;496における変異はAsn(N)をAsp(D)またはGlu(E)で置換する。詳細には、本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、1つの切断ハーフドメインで490位(E→K)、538位(I→K)、および537位(H→KまたはH→R)を変異することによって調製されて、「E490K:I538K:H537K」(KKK)または「E490K:I538K:H537R」(KKR)と呼ばれる遺伝子操作された切断ハーフドメインが生じ、そして別の切断ハーフドメインでは、486位(Q→E)、499位(I→L)および496位(N→DまたはN→E)を変異することによって、「Q486E:I499L:N496E」(ELE)または「Q486E:I499L:N496D」(ELD)と命名される遺伝子操作された切断ハーフドメインが生じる。本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、異常な切断が最小化されるかまたは無効にされるが、野生型に比較して活性は維持されている、偏性ヘテロ二量体変異体を形成する。実施例を参照のこと。
【0076】
他の実施形態では、487位の変異は、Arg(R)をAsp(D)で置き換え、496位のAsn(N)は、1つの切断ハーフドメインでは、Asp(D)(R487D:N496Dまたは「DD」を生じるため)で置き換えられ、そして他の切断ハーフドメインでは、483位の野性型Asp(D)のArg(R)への変異、および537位の野性型His(H)のArg(R)での変異(D483R:H537Rまたは「RR」を生じるため)による。さらに他の実施形態では、487の変異は、Arg(R)をAsp(D)で置き換え;499位の変異は、Ile(I)をAla(A)で置き換え、そして496位では、Asn(N)は、Asp(D)で置き換えられ(1つの切断ハーフドメインで「R487D:N496D:I499A」を生じるため)、そして他の切断ハーフドメイン(またはDADおよびRVR)では、「D483R:H537R:I538V:」を生じる、483(D−>R)、538(I−>V)および537(H−>R)位での変異による。
【0077】
他の実施形態では、変異は、他のドメインで、例えば、418、432、441、481、523、527および/または559位で行われる。特定の実施形態では、変異は、418および441位で行われ、例えば、418位の野生型Ser(S)のPro(P)残基での置換、および441位の野性型Lys(K)のGlu(E)での置換(「S418P:K441E」または「Sharkey」として公知)であるか、またはPro(P)が418でSer(S)を置き換え、Leu(L)が432でPhe(F)を置き換え、Glu(E)が441でLys(K)を置き換え、His(H)が481でGln(Q)を置き換え、Tyr(Y)が523でHis(H)を置き換え、Asp(D)が527でAsn(N)を置き換え、そしてGln(Q)が539でLys(K)を置き換える(S418P:F432L:K441E:Q481H:H523Y:N527D:K539QまたはSharkey’として公知)。これらの変異は、例えば、以下のFokI変異体を生じるために上記に列挙されたドメインと任意の方法で組み合されてもよい:
(a)EL−S:S418P:K441E:Q486E:I499L
(b)KK−S:S418P:K441E:E490K:I538K
(c)ELD−S:S418P:K441E:Q486E:N496D:I499L
(d)KKK−S:S418P:K441E:E490K:H537K:I538K
(e)KKR−S:S418P:K441E:E490K:H537R:I538K
(f)DA−S:S418P:K441E:R487D:I499A
(g)RV−S:S418P:K441E:D483R:I538V
(h)DAD−S:S418P:K441E:R487D:N496D:I499A
(i)RVR−S:S418P:K441E:D483R:H537R:I538V
(j)DD−S:S418P:K441E:R487D:N496D
(k)RR−S:S418P:K441E:D483R:H537R。
【0078】
本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、任意の好適な方法を用いて、例えば、米国特許出願公開第20050064474号の実施例5、ならびに国際公開第07/014275号の実施例5および38に記載されるような、野生型切断ハーフドメイン(FokI)の部位特異的突然変異誘発法によって調製してもよい。
【0079】
融合タンパク質
本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、任意の細胞における切断について部位を特異的に標的化するDNA結合タンパク質との融合タンパク質で有利に用いられる。
【0080】
特定の実施形態では、DNA結合タンパク質は、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)を含む。標的部位の選択;融合タンパク質(およびこれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのZFPおよび方法は、当業者に公知であって、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050064474号および同第20060188987号に詳細に記載される。
【0081】
いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインは、植物の病原体Xanthomonas由来のTALエフェクター由来の遺伝子操作されたドメインである(Millerら.(2010)Nature Biotechnology,Dec 22[印刷前の電子出版];Bochら,(2009)Science 29 Oct 2009(10.1126/science.117881)ならびにMoscouおよびBogdanove,(2009)Science 29 Oct 2009(10.1126/science.1178817)を参照のこと);また、その開示が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第61/395,836号(2010年5月17日出願);同第61/409,421号(2010年8月21日出願);同第61/45,121号(2010年10月13日出願);同第61/459,891号(2010年12月20日出願)および出願番号未割当(2011年2月2日出願)を参照のこと。いくつかの実施形態では、TALE DNA結合ドメインは、TALEヌクレアーゼ(TALEN)を生じる、記載されるとおりのFokI切断に対して融合される。
【0082】
本明細書に記載されるヌクレアーゼ(例えば、ZFN)は、任意の適切な手段によって標的細胞に送達され得る。ジンクフィンガーを含むタンパク質を送達する方法は、例えば、米国特許第6,453,242号;同第6,503,717号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,607,882号;同第6,689,558号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号に説明されており、それらの全ての開示は、参照により全内容が本明細書に組み込まれる。
【0083】
本明細書に記載されるような融合タンパク質ヌクレアーゼはまた、1つ以上のヌクレアーゼ(例えば、ZFNまたはTALEN)をコードする配列を含むベクターを用いて送達され得る。任意のベクター系を用いてもよく、これには限定するものではないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどが挙げられる。また、その全体が本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第6,534,261号;同第6,607,882号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号も参照のこと。
【0084】
従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子移入方法は、細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織において遺伝子操作された切断ドメインを含んでいる、ヌクレアーゼ(例えば、ZFNまたはTALEN)をコードする核酸を導入するために用いられ得る。このような方法は、インビトロでこのような核酸を細胞に投与するためにも用いられ得る。特定の実施形態では、1つ以上のヌクレアーゼをコードする核酸が、インビボまたはエキソビボでの遺伝子治療用途のために投与される。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、裸の核酸、および、リポソームまたはポロキサマーのような送達ビヒクルと複合された核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、細胞への送達後にエピソームまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有する、DNAおよびRNAウイルスが挙げられる。遺伝子治療手順の概説に関しては、Anderson,Science 256:808−813(1992);NabelおよびFelgner,TIBTECH 11:211−217(1993);MitaniおよびCaskey,TIBTECH 11:162−166(1993);Dillon,TIBTECH 11:167−175(1993);Miller,Nature 357:455−460(1992);Van Brunt,Biotechnology 6(10):1149−1154(1988);Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience 8:35−36(1995);KremerおよびPerricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31−44(1995);Haddadaら、in Current Topics in Microbiology and Immunology DoerflerおよびBoehm(編集)(1995);ならびにYuら、Gene Therapy 1:13−26(1994)を参照のこと。
【0085】
核酸の非ウイルス性の送達の方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロゾーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸の結合体、裸のDNA、人工ビリオン、およびDNAの因子増強性取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron2000系(Rich−Mar)を用いるソノポレーション(sonoporation)もまた、核酸の送達に用いられ得る。
【0086】
追加の例示的な核酸送達システムとしては、Amaxa Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville,Maryland)およびBTX Molecular Delivery Systems(Holliston,MA)によって提供されるシステムが挙げられる。
【0087】
リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号;米国特許第4,946,787号;および米国特許第4,897,355号)に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの有効なレセプター認識リポフェクションに好適なカチオン性および中性脂肪としては、Felgner、国際公開第91/17424号、国際公開第91/16024号のものが挙げられる。送達は、細胞(エクスビボ投与)または標的組織(インビボ投与)に対してであってもよい。
【0088】
免疫脂質複合体などの標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal,Science 270:404〜410(1995);Blaeseら、Cancer Gene Ther.2:291〜297(1995);Behrら、Bioconjugate Chem.5:382〜389(1994);Remyら、Bioconjugate Chem.5:647〜654(1994);Gaoら、Gene Therapy 2:710〜722(1995);Ahmadら、Cancer Res.52:4817〜4820(1992);米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照のこと)。
【0089】
本明細書に記載されるような遺伝子操作された切断ハーフドメインを含むヌクレアーゼ(例えば、ZFNまたはTALE)をコードする核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスベースのシステムの使用は、体内の特定の細胞に対してウイルスを標的化するためおよび核へウイルスペイロードを輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接送達されてもよいし(インビボ)、またはそれらは、インビトロで細胞を処置するために用いられてもよく、改変された細胞が患者に投与される(エキソビボ)。本明細書に記載されるようなヌクレアーゼの送達のための従来のウイルスベースのシステムとしては限定するものではないが、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアおよび単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。宿主ゲノム内の組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルス遺伝子移入方法を用いて可能であり、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす場合が多い。さらに、高い形質導入効率が多くの異なる細胞種および標的組織で観察されている。
【0090】
レトロウイルスの指向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み込むことによって変更することができ、それによって、標的細胞の潜在的な標的群を拡張させる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させることが可能であり、かつ典型的に、高ウイルス価を産生する、レトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子送達システムの選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6〜10kbの外因性配列のパッケージング能力を有する、シス作用の長末端反復から構成される。最小限のシス作用のLTRは、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、次いでそれらを用いて、治療遺伝子を標的細胞内に組み込みんで、永久的な導入遺伝子の発現をもたらす。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組み合わせに基づくベクターが挙げられる(例えば、Buchscherら、J.Virol.66:2731〜2739(1992);Johannら、J.Virol.66:1635〜1640(1992);Sommerfeltら、Virol.176:58〜59(1990);Wilsonら、J.Virol.63:2374〜2378(1989);Millerら、J.Virol.65:2220〜2224(1991);PCT/US94/05700号を参照のこと)。
【0091】
ZFP融合タンパク質の一過性の発現が好ましい適用では、アデノウイルスベースの系を用いてもよい。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞種で極めて高い形質導入効率であり得、細胞分裂は必要としない。このようなベクターでは、高力価かつ高レベルの発現が得られた。このベクターは、比較的単純なシステムで大量に産生され得る。アデノ随伴ウイルス(「AAV」ベクターがまた、例えば、核酸およびペプチドのインビトロ産生において、ならびにインビボおよびエキソビボの遺伝子治療手順のために、標的核酸で細胞を形質導入するために用いられる(例えば、Westら、Virology 160:38−47(1987);米国特許第4,797,368号;国際公開第93/24641;Kotin,Human Gene Therapy 5:793−801(1994);Muzyczka,J.Clin.Invest.94:1351(1994)を参照のこと)。組み換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol.Cell.Biol.5:3251−3260(1985);Tratschin,ら、Mol.Cell.Biol.4:2072−2081(1984);Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466−6470(1984);およびSamulskiら、J.Virol.63:03822−3828(1989)を含めて多数の刊行物に記載される。
【0092】
少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが現在、臨床試験における遺伝子移入のために利用可能であり、これは、形質導入因子を生成するためにヘルパー細胞株中に挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性に関与するアプローチを利用する。
【0093】
pLASNおよびMFG−Sとは、臨床試験で用いられたレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、Blood 85:3048−305(1995);Kohnら、Nat.Med.1:1017−102(1995);Malechら、PNAS 94:22 12133−12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療トライアルで用いされた最初の治療ベクターであった(Blaeseら、Science 270:475−480(1995))。50%以上の形質導入効率が、MFG−Sパッケージングベクターで観察された(Ellemら、Immunol Immunother.44(1):10−20(1997);Dranoffら、Hum.Gene Ther.1:111−2(1997)。
【0094】
組み換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損および非病原性のパルボウイルスアデノ随伴2型ウイルスに基づいた見込みのある別の遺伝子送達系である。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAVの145bpの逆方向末端反復のみを保持するプラスミド由来である。形質導入された細胞のゲノムへの組み込みに起因する、効率的な遺伝子移入および安定な導入遺伝子送達は、このベクターシステムの重要な特徴である。(Wagnerら、Lancet 351:9117 1702−3(1998),Kearnsら、Gene Ther.9:748−55(1996))。
【0095】
複製欠損組み換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で産生することが可能であり、かつ多数の異なる細胞種に容易に感染し得る。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAdE1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換するように、遺伝子操作され;その後、複製欠損性ベクターが、欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増幅される。Adベクターは、非分裂の分化した細胞、例えば、肝臓、腎臓、および筋肉に見られるものなどを含む、複数の種類の組織をインビボで形質導入し得る。従来のAdベクターは、大きな搬送能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注入を用いる抗腫瘍免疫のポリヌクレオチド治療に関与する(Stermanら、Hum.Gene Ther.7:1083〜9(1998))。臨床試験における遺伝子移入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例としては、Roseneckerら、Infection 24:1 5〜10(1996);Stermanら、Hum.Gene Ther.9:7 1083〜1089(1998)、Welshら、Hum.Gene Ther.2:205〜18(1995)、Alvarezら、Hum.Gene Ther.5:597〜613(1997);Topfら、Gene Ther.5:507〜513(1998)、Stermanら、Hum.Gene Ther.7:1083〜1089(1998)が挙げられる。
【0096】
特定の実施形態では、ベクターはアデノウイルスベクターである。従って、本明細書に記載されるのは細胞に異種配列(例えば、ジンクフィンガーまたはTALEヌクレアーゼ(ZFNまたはTALENs))を導入するためのアデノウイルス(Ad)ベクターである。
【0097】
本出願で用いられ得るAdベクターの非限定的な例としては、組み換え(例えば、E1−欠失)、条件付き複製コンピテント(例えば、腫瘍崩壊性)および/または複製コンピテントなAdベクター(ヒトまたは非ヒト血清型由来)(例えば、Ad5、Ad11、Ad35、またはブタアデノウイルス−3);ならびに/あるいはキメラAdベクター(例えば、Ad5/35)または指向性変更のAdベクターであって、遺伝子操作されたファイバー(例えば、ノブ(knob)またはシャフト(shaft))タンパク質(例えば、ノブタンパク質のHIループ内のペプチド挿入)を有するベクターが挙げられる。また有用なのは、DNAペイロードの免疫原性を低下し、サイズを増大するための、「ガットレス(gutless)」Adベクター、例えば、Adベクター(全てのアデノウイルス遺伝子が除去された)である。これによって、例えば、ZFNおよびドナー配列をコードする配列の同時送達が可能になる。このようなガットレス(gutless)ベクターは特に、ドナー配列が標的化組み込みを介して組み込まれるべき大きい導入遺伝子を含む場合、有用である。
【0098】
複製欠損組み換えアデノウイルスベクター(Ad)は高力価で産生することが可能で、かつ多数の異なる細胞種に容易に感染し得る。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAdE1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換し;その後、複製欠損性ベクターが、1つ以上の欠失した遺伝子機能をトランスで供給する細胞において増幅されるように、遺伝子操作される。例えば、ヒト293細胞はE1機能を供給する。Adベクターは、非分裂の分化した細胞、例えば、肝臓、腎臓、および筋肉に見出されるものを含めて、複数の種類の組織をインビボで形質導入し得る。従来のAdベクターは、大きな搬送能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注入を用いる抗腫瘍免疫のポリヌクレオチド治療に関与する(Stermanら、Hum.Gene Ther.7:1083〜1089(1998))。
【0099】
臨床試験における遺伝子移入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例としては、Roseneckerら、Infection 24:1 5〜10(1996);Welshら、Hum.Gene Ther.2:205〜18(1995);Alvarezら、Hum.Gene Ther.5:597〜613(1997);Topfら、Gene Ther.5:507〜513(1998)が挙げられる。
【0100】
特定の実施形態では、Adベクターは、2つ以上の異なるアデノウイルスゲノムからの配列を含有する、キメラアデノウイルスベクターである。例えば、Adベクターは、Ad5/35ベクターであってもよい。Ad5/35は、1つ以上のAd5のファイバー(繊維)タンパク質遺伝子(ノブ、シャフト、テール、ペントン)をB群のアデノウイルス、例えば、Ad35などからの対応するファイバータンパク質と交換することによって作成される。Ad5/35ベクターおよびこのベクターの特性は、例えば、Niら(2005)Hum.Gene Ther.16:664−677;Nilssonら(2004)Mol.Ther.9:377−388;Nilssonら(2004)J.Gene.Med.6:631−641;Schroersら(2004)Exp.Hematol.32:536−546;Seshidharら(2003)Virology 311:384−393;Shayakhmetovら(2000)J.Virol.74:2567−2583;およびSovaら(2004)Mol.Ther.9:496−509に記載されている。パッケージング細胞を用いて、宿主細胞を感染させることが可能なウイルス粒子を形成する。このような細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするΨ2細胞またはPA317が挙げられる。遺伝子治療に用いられるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングするプロデューサー細胞株によって生成される。典型的には、これらのベクターは、パッケージングおよびその後の宿主への組み込みに必要とされる最小限のウイルス配列(適用可能な場合)、発現されるべきタンパク質をコードする発現カセットによって置換されている他のウイルス配列を含む。欠損しているウイルス機能は、パッケージングする細胞株によってトランスで提供される。例えば、遺伝子治療に用いられるAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノム中へのパッケージングおよび組み込みに必要とされる、AAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子すなわち、repおよびcapをコードするが、ITR配列を欠失するヘルパープラスミドを含む細胞株内にパッケージングされる。この細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスで感染させられる。このヘルパーウイルスは、ヘルパープラスミドからAAVベクターの複製、およびAAV遺伝子の発現を促進する。このヘルパープラスミドは、ITR配列の欠失のせいで、有意な量ではパッケージングされない。アデノウイルスの汚染は、例えば、アデノウイルスの方がAAVよりも鋭敏である熱処理によって低減することができる。
【0101】
多くの遺伝子治療適用において、遺伝子治療ベクターが高度の特異性で特定の細胞型に送達されることが望ましい。従って、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上のウイルスコートタンパクとの融合タンパク質としてリガンドを発現させることによって、所与の細胞型に対する特異性を有するように改変(修飾)することができる。このリガンドは、目的の細胞型上に存在することが公知のレセプターに対する親和性を有するように選択される。例えば、Hanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA92:9747〜9751(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスが、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現させるように修飾することができ、その組み換えウイルスが、ヒト上皮成長因子レセプターを発現する特定のヒト乳癌細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞がレセプターを発現し、ウイルスが細胞表面レセプターのためのリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス標的細胞対にまで及び得る。例えば、線状ファージは、事実上、任意の選択された細胞レセプターに特異的な結合親和性を有する抗体フラグメント(例えば、FABまたはFv)を提示するように遺伝子操作することができる。上記の説明は、主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターは、特異的標的細胞による取り込みを好む、特異的な取り込み配列を含むように遺伝子操作することができる。
【0102】
遺伝子治療ベクターは、代表的には全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または頭蓋内の注入)または局所適用によって、下に記載されるように局所的に、個々の患者への投与によってインビボで送達されてもよい。あるいは、ベクターは、細胞に対して、エキソビボで、例えば、個人の患者から移植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)または万能ドナーの造血幹細胞に送達され、続いて、通常、ベクターを組み込んだ細胞の選択後、この細胞が患者へ再移植されてもよい。
【0103】
診断、研究、または遺伝治療のためのエキソビボでの細胞のトランスフェクション(例えば、宿主生物体へのトランスフェクト細胞の再注入を介する)は、当業者には周知である。好ましい実施形態においては、細胞は、被験体生物から単離され、ZFNまたはTALEN核酸(遺伝子またはcDNA)でトランスフェクトされ、被験体生物(例えば、患者)内に再注入して戻される。エキソビボトランスフェクションに好適な種々の細胞型は、当業者には周知である(例えば、Freshneyら、Culture of Animal Cells,A Manual of Basic Technique(第3版.1994)、および患者からの細胞をどのように単離し、かつ培養するかの考察のために本明細書に引用した参考文献を参照のこと)。
【0104】
一実施形態においては、幹細胞は、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためのエキソビボ手順に用いられる。幹細胞を用いる利点とは、それらがインビトロで他の細胞型に分化することができるか、または哺乳動物(細胞のドナーなど)に導入して、それらの細胞を骨髄内に移植することができるということである。GM−CSF、IFN−γ、およびTNF−αなどのサイトカインを用いて、CD34+細胞をインビトロで臨床的に重要な免疫細胞型に分化するための方法は、公知である(イナバ(Inaba)ら、J.Exp.Med.176:1693〜1702(1992)を参照のこと)。
【0105】
幹細胞は、公知の方法を用いて、形質導入および分化のために単離される。例えば、幹細胞は、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR−1(顆粒球)、およびIad(分化された抗原提示細胞)などの不要細胞を結合する抗体で骨髄細胞をパンニングすることによって、骨髄から単離される(Inabaら、J.Exp.Med.176:1693〜1702(1992)を参照のこと)。ある場合には、幹細胞とは誘導性の多能性幹細胞(iPSC)である。
【0106】
治療用ZFPまたはTALE核酸を含むベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)はまた、インビボでの細胞の形質導入のために、生物体に直接投与することもできる。あるいは、裸のDNAを投与することができる。投与は、限定するものではないが、注射、注入、局所適用、およびエレクトロポレーションを含めて、血液または組織細胞との最終接触に分子を導入するために通常用いられる任意の経路による。そのような核酸を投与する適切な方法は、利用可能でかつ当業者に周知であり、2つ以上の経路を用いて特定の組成物を投与することができるが、特定の経路は、別の経路よりも即時的かつ有効な反応を提供し得る場合が多い。
【0107】
DNAを造血幹細胞に導入する方法は、例えば、米国特許第5,928,638号に開示されている。造血幹細胞、例えば、CD34+細胞への導入遺伝子の導入に有用なベクターとしては、アデノウイルス35型が挙げられる。
【0108】
免疫細胞(例えば、T細胞)への導入遺伝子の導入に好適なベクターとしては、非組み込みレンチウイルスベクターが挙げられる。例えば、Oryら、(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:11382〜11388;Dullら、(1998)J.Virol.72:8463〜8471、Zufferyら、(1998)J.Virol.72:9873〜9880;Follenziら、(2000)Nature Genetics 25:217〜222を参照のこと。
【0109】
薬学的に許容される担体は、投与されている特定の組成物、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的には決定される。従って、下記に説明するように、使用可能な多種多様な適切な薬学的組成物の処方物が存在する(例えば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences,第17版,1989を参照のこと)。
【0110】
上記のとおり、開示される方法および組成物は、限定するものではないが、原核生物細胞、真菌細胞、古細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳類細胞、およびヒト細胞を含む、任意の種類の細胞に用いることができる。タンパク質発現に適切な細胞株は、当業者には公知であり、限定するものではないが、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、perC6、昆虫細胞、例えば、Spodoptera fugiperda(ツマジロクサヨトウ)(Sf)、および真菌細胞、例えば、Saccharomyces、PischiaおよびSchizosaccharomycesが挙げられる。これらの細胞株の子孫、変種、および誘導体もまた用いられてもよい。
【0111】
用途(適用)
開示される切断ドメインは、DNAを切断し、オフターゲット部位切断を最小化する(野性型を含むDNA結合ドメインまたはホモ二量体化切断ドメインに比較して)ために、ジンクフィンガータンパク質またはTAL結合ドメイン(それぞれ、ZFNまたはTALENを生じる)などのDNA結合ドメインと組み合わせて有利に用いられる。切断は、細胞のクロマチンにおける目的の1つ以上の領域で(例えば、変異体または野生型のいずれかの遺伝子における、例えば、ゲノムにおける所望の部位または所定の部位で)であってもよく;ゲノム配列(例えば、細胞クロマチンの目的の領域)を相同な非同一配列で置き換えるためであってもよく(すなわち、標的化組み換え);ゲノム中の1つ以上の部位でDNAを切断することによってゲノム配列を欠失して、この切断部位を次に非相同末端結合(NHEJ)によって連結するためであってもよく;相同組み換えを容易にする細胞因子を選択するためであってもよく;および/または野性型配列を変異体配列で置き換えるため、もしくはある対立遺伝子を異なる対立遺伝子に変換するためであってもよい。このような方法は、詳細には、本明細書にその全体が参照により組み込まれる、例えば、米国特許出願公開第20050064474号;国際公開第07/014275号に記載される。
【0112】
従って、開示される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、特異的に標的化される切断が所望されるか、および/または任意のゲノム配列を相同な非同一の配列で置き換えるための任意の方法について、任意のZFNまたはTALENで用いられ得る。例えば、変異体ゲノム配列は、その野生型の対応物によって置き換えられてもよく、それによって、例えば、遺伝子疾患、遺伝性の障害、癌および自己免疫疾患の処置のための方法が提供される。同様に、ある遺伝子の1つの対立遺伝子は、本明細書に開示される標的化組み換えの方法を用いて異なる対立遺伝子によって置き換えられ得る。実際、特定のゲノム配列に依存する任意の病理学は、任意の方式で、本明細書に開示される方法および組成物を用いて修正または緩和され得る。
【0113】
例示的な遺伝性の疾患としては、限定するものではないが、軟骨形成不全症、色覚異常、酸性マルターゼ欠損、アデノシン・デアミナーゼ欠損(OMIM番号102700)、副腎白質ジストロフィー、アイカルディ症候群、α−1抗トリプシン欠乏、α−セラセミア、アンドロゲン不感性症候群、アペール症候群、催不整脈性右室異形成、異形成、毛細血管拡張性運動失調、バース症候群、β−サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナヴァン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、猫鳴き症候群、嚢胞性線維症、有痛脂肪症、外胚葉異形成症、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維形成異常症、脆弱性X症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、ヘモクロマトーシス、β−グロビン(HbC)の6番目のコドンにおけるヘモグロビンC突然変異、血友病、ハンチントン病、フルラー症候群、低ホスファターゼ血症、クラインフェルター症候群、クラッペ病、ランガー・ギーディオン症候群、白血病接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、大脳白質萎縮症、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症(MPS)、爪・膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン・ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダーウィリ症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、サンフィリポ症候群、重度複合免疫不全症(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス・マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ・サックス病、血小板減少性橈骨欠損症(TAR)症候群、トレチャー・コリンズ症候群、トリソミー、結節硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ワーデンバーグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット・アルドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖性症候群(XLP、OMIM番号308240)が挙げられる。
【0114】
標的化DNA切断および/または相同組み換えによって処置され得る追加の例示的な疾患としては、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病、およびテイ・サックス病)、ムコ多糖症(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球病、HbC、α−サラセミア、β−サラセミア)、および血友病が挙げられる。
【0115】
このような方法によってまた、遺伝子疾患を処置するための宿主における感染(ウイルスまたは細菌の感染)の処置が可能になる(例えば、ウイルスまたは細菌のレセプターの発現をブロックすること、それによって宿主生物体における感染および/または伝播を予防することによって)。
【0116】
感染性または組み込みされたウイルスゲノムの標的化切断を用いて、宿主内のウイルス感染を処置してもよい。さらに、ウイルスのレセプターをコードする遺伝子の標的化切断を用いて、そのようなレセプターの発現をブロックして、それによって、宿主生物体におけるウイルス感染および/またはウイルスの伝播を防止してもよい。ウイルスレセプター(例えば、HIVのCCR5およびCXCR4レセプター)をコードする遺伝子の標的化突然変異誘発を用いて、それらのレセプターがウイルスに結合できないようにして、それによって、新たな感染を防止し、かつ既存の感染の伝播を遮断してもよい。例えば、米国特許出願公開第2008/015996号を参照。標的化され得るウイルスまたはウイルスレセプターの非制限な例としては、HSV−1およびHSV−2などの単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)、HHV6およびHHV7が挙げられる。肝炎科のウイルスとしては、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、Δ肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、およびG型肝炎ウイルス(HGV)が挙げられる。他のウイルスまたはそれらのレセプターとしては限定するものではないが、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス等);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど);オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルスのA型、B型、C型など);ブンヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科;レンチウイルス科(例えば、HTLV−I;HTLV−II;HIV−1(HTLV−III、LAV、ARV、hTLRなどとしても公知)、HIV−II);サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトパピロマーウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、およびダニ媒介性脳炎ウイルスが標的化され得る。これらおよび他のウイルスの説明については、例えば、Virology,第3版(W.K.Joklik編集.1988)、Fundamental Virology,第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe,編集、1991)を参照のこと。HIVのレセプターには、例えば、CCR−5およびCXCR−4が挙げられる。
【0117】
従って、本明細書に記載されるようなヘテロ二量体切断ドメイン改変体は、遺伝子修飾の適用においてZFN特異性を改善するための広範な有用性を提供する。これらの改変体切断ドメインは、任意のZFN二量体のインビボ特異性を改善するための、部位指向性の突然変異誘発またはサブクローニングにいずれかによって、任意の既存のZFN中に容易に組み込まれ得る。
【0118】
上記のように、本明細書に記載される組成物および方法は、遺伝子組み換え、遺伝子修正および遺伝子破壊のために用いられ得る。遺伝子組み換えの非限定的な例としては、相同指向修復(HDR)ベースの標的化組み込み;HDRベースの遺伝子修正;HDRベースの遺伝子組み換え;HDRベースの遺伝子破壊;NHEJベースの遺伝子破壊および/またはHDR、NHEJ、および/もしくは一本鎖アニーリング(SSA)の組み合わせが挙げられる。一本鎖アニーリング(Single−Strand Annealing)(SSA)とは、2つの相補性領域を曝すための5’−3’エキソヌクレアーゼによるDSBの切除によって同じ方向で生じる2つの反復配列の間の二本鎖断裂の修復を指す。2方向のリピートをコードする一本鎖は次にお互いにアニーリングして、アニーリングされた中間体が処理され、その結果一本鎖テール(任意の配列にアニーリングされない一本鎖DNAの一部)が消化されて、ギャップがDNAポリメラーゼによって埋められ、そしてDNA末端が再結合される。これによって、直接反復の間に位置する配列の欠失が生じる。
【0119】
切断ドメイン(例えば、ZFN)を含む組成物、および本明細書に記載される方法はまた、種々の遺伝子疾患および/または感染性疾患の処置に用いられてもよい。
【0120】
この組成物および方法は、幹細胞ベースの治療に適用されてもよく、これには、限定するものではないが:ショートパッチ遺伝子変換または一遺伝子の遺伝子治療のための標的化組み込みによる体細胞変異の修正;ドミナントネガティブ対立遺伝子の破壊;細胞への病原体の侵入または増殖性感染に必要な遺伝子の破壊;機能的な組織の分化または形成を促進する遺伝子活性を、例えば、調節することによる、組織遺伝子操作の増強;ならびに/あるいは機能的な組織の分化または形成を促進する遺伝子活性の破壊;例えば、幹細胞が特定の系列の経路に分化することを促進するための分化をブロックする遺伝子を、破壊すること、幹細胞分化を刺激し得る遺伝子またはsiRNA発現カセットの標的化挿入、幹細胞分化をブロックし、かつ多能性の良好な拡大および維持を可能にし得る遺伝子またはsiRNA発現カセットの標的化挿入、および/または容易なマーカーで幹細胞の分化状態をスコア付けすること、および培地、サイトカン、増殖条件、遺伝子の発現、siRNA、shRNAもしくはmiRNA分子の発現、細胞表面マーカーもしくは薬物に対する抗体の曝露がこの状態をどのように変化するかスコア付けすることを可能にする多能性もしくは分化状態のマーカーである内因性遺伝子とインフレームでのレポーター遺伝子の標的化挿入によって、分化をブロックまたは誘導すること;体細胞核移入であって、例えば、患者自身の体細胞が単離され、意図される標的遺伝子が、適切な方式で改変され得、細胞クローンが生成され(およびゲノムの安全性を保証するために品質管理され)、そしてこれらの細胞由来の核が単離され未受精卵に移入されて、患者特異的なhES細胞が生成され、これが患者への移植の前に直接注入または分化されて、それによって組織拒絶が軽減または排除され得る、体細胞移入;MHCレセプターをノックアウトすること(例えば、免疫学的同一性が減少するかまたは全体として排除された細胞を生成するため)による万能幹細胞;が挙げられる。この手順のための細胞種としては、限定するものではないが、T細胞、B細胞、造血幹細胞、および胚性幹細胞が挙げられる。さらに、患者自身の体細胞からこれも生成される、誘導された多能性幹細胞(iPSC)を用いてもよい。従って、これらの幹細胞またはそれらの誘導体(分化した細胞の種類または組織)は、それらの起源にも組織適合性にもかかわらず、任意の人に移植可能であり得る。
【0121】
この組成物および方法はまた、体細胞治療(例えば、MHCまたはウイルスレセプターをノックアウトすることによる(上記を参照)、自己細胞治療および/または万能T細胞)のために用いられ得、それによって、生物学的特性を増強するために改変されたT細胞のストックの産生を可能にする。このような細胞は、T細胞のドナー供給源およびレシピエントに対するそれらの組織適合性に依存して種々の患者に注入され得る。
【0122】
治療適用に加えて、本明細書に記載される改変体によって得られる特異性の増大は、ZFNに用いられる場合、作物の遺伝子操作、細胞株の遺伝子操作および疾患モデルの構築のために用いられ得る。偏性ヘテロ二量体切断ハーフドメインによって、特にホモ二量体活性が有効性を制限する場合、ZFN特性を改善するための直接的な手段が提供される。
【0123】
記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインはまた、介在する領域を欠失するか、または2つの特異的な遺伝子座を一挙に変更するかのために、複数の標的で同時切断を要する遺伝子修飾プロトコールで用いられてもよい。2つの標的での切断は、潜在的には10個の活性なZFNの組み合わせを生じ得る、4つのZFNの細胞発現を要する。このような適用のために、野性型ヌクレアーゼドメインのこれらの新規な改変体の置換は、所望されない組み合わせの活性を排除し、オフターゲット切断の機会を減じる。特定の所望のDNA標的での切断にZFN対A+Bの活性を要し、かつ第二の所望のDNA標的での同時の切断にZFN対X+Yの活性を要するならば、本明細書に記載される変異体の使用は、AとAとの対形成、AとXとの対形成、AとYとの対形成などを妨げ得る。従って、これらのFokI変異は、「非正統的な(illegitimate)」対形成の結果として非特異的な切断活性を低減し、ZFNのさらに効率的な直交の変異体対の生成を可能にする(共同所有の米国特許出願公開第20080131962号および同第20090305346号を参照のこと)。
【0124】
遺伝子操作された切断ハーフドメインについて記載された適用に加えて、本明細書に記載される条件付き変異について多くの適用もまた存在する。特定された低温感受性の変異は、変異をコードする核酸の組み込まれたコピーを担持するトランスジェニック生物を作成するために用いられ得る。このような変異を担持する植物は、切断活性が冷温で休止するような変異体表現型を提示する。より高温にシフトされた際、融合は、活性な切断活性を提示する。これらの変異体生物体は、育種目的のための株を作成するために用いられ得てもよく、ここでは、低温感受性変異を含む系統が特定の標的を担持する系統と交配され得、その結果この交配の子孫がより高温にシフトされた場合、標的の切断が生じる。これによって、このようなプロセスの有効性が増大する。なぜなら、所望の結果を達成するために必要なドナーまたは融合タンパク質のいずれかでの植物の形質転換の数が減少するからである。同じ種類のシナリオがまた熱感受性の条件付き変異体について想定され得る。
【0125】
本明細書に言及される全ての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
明確性および理解の目的のために、図示および実施例によってある程度詳細に開示を行ってきたが、種々の変化および改変が、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、実践され得ることが当業者に明白になる。従って、前述の説明および実施例は、限定と解釈されるべきではない。
「実施例」
【実施例1】
【0127】
ZFNの調製
CCR5、53BP1、GR、KDR、RIPK1、CXCR4およびPD−1に標的化されたZFNは、本質的に、Urnovら、(2005)Nature 435(7042):646−651,Perezら、(2008)Nature Biotechnology 26(7):808−816、および米国特許出願公開第2008/0131962号に記載のとおり、設計して、プラスミドベクター中に組み込むか、またはSigma Aldrichから入手した。これらのZFNを構築して、Millerら.(2007)Nat.Biotechnol.25:778−785および米国特許出願公開第20050064474および国際公開第2005/014791号に記載のようにELISAおよびSurveyor(商標)(Transgenomics)Cel−1アッセイ(「Cel−1」)によって試験した。さらに、GRに標的化されるZFNについては、米国特許出願公開第2008/0188000号、およびPD−1に標的化されるZFNに関しては米国特許仮出願第61/281,432号、CCR5特異的なZFNに関しては米国特許出願公開第:2008/0159996号、およびCXCR4−特異的なZFNに関しては、米国特許出願第12/661,539号を参照のこと。
【0128】
RIPK1、KDRおよび53BP1に標的化されたZFPの特異的な例は、表1に開示される。この表の第一列は、ZFPの内部参照名(数)である。「F」とは、フィンガーを指し、「F」に続く数は、どのジンクフィンガーであるかを指す(例えば、「F1」は、フィンガー1を指す)。表2は、標的遺伝子上の標的結合部位を列挙する。ZFN認識らせんに接触する認識部位中のヌクレオチドは、大文字で示し;接触しないヌクレオチドは、小文字で示す。
【表1】
【表2】
【実施例2】
【0129】
変異体FokI ZFNの遺伝的スクリーニング
モデル系としてSaccharomyces cerevisiaeを用いて、本発明者らは、低温で極めて低減されるが、高温では十分な切断活性を有する低温感受性の表現型を示すZFN変異体を単離した。低温変異体が特に興味深い。なぜなら、歴史的に、それらは、多量体タンパク質複合体のサブユニットをコードする遺伝子中に存在することが示されているからである。これらの変異体は、低温でタンパク質−タンパク質の相互作用に優先的に影響する。従って、このクラスの変異体を単離することによって、二量体化インターフェース内で重要な残基を特定する空でない(non−null)変異が明らかになった。
【0130】
一本鎖アニーリング(SSA)レポーター株および変異体ライブラリー構築は以下のように行った。FokIヌクレアーゼドメインのランダム突然変異誘発は、変異性(エラープローン(error−prone)PCRを用いて行い、および変異体のライブラリーは、Saccharomyces cerevisiaeにおけるギャップ修復によって構築した。要するに、レポーター株は、突然変異誘発のPCRフラグメント(FokIドメイン)およびこのPCRフラグメントの末端でベクターの末端がDNA配列を共有するように調製した直線化プラスミドベクターで同時形質転換した。ベクターとPCRフラグメントとの間の相同組み換えは、高頻度で生じ、変異したZFN発現ベクターを含む酵母形質転換体の収集を生じた。ヌクレアーゼのジンクフィンガードメインは、ヒトCCR−5遺伝子(8266と命名)に結合して、詳細には、米国特許出願公開第2008/0159996号に記載される。
【0131】
次いで、ライブラリーを、本質的に米国特許出願公開第2009/0111119号に記載のように、出芽酵母中で目的の表現型についてスクリーニングまたは選択した。要するに、2つの独立したSSAレポーター構築物を出芽酵母のゲノムに組み込んだ。両方のレポーターとも、8266ZFNのホモ二量体の結合部位を含む。MEL1 SSAレポーターは、陽性および陰性の両方の選択マーカーを含む。URA3遺伝子は、ura−培地中での陽性選択のために、および5−フルオロオロチン酸(5−FOA)を用いる陰性選択のために用いられる。KanMXカセットは、ジェネティシンに対するドミナント耐性を付与する(G418)。SSA後のMEL1遺伝子の再構成は、発色性基質[p−ニトロフェニルα−D−ガラクトピラノシド(PNPG)または5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−D−ガラクトピラノシド(X−a−Gal)]を用いて検出された。PHO5 SSAレポーターは、ノーセオトリシン(nourseothricin)(NAT)に対してドミナントな耐性を付与する陽性選択カセットNatMXを含み。PHO5遺伝子の再構成は、発色性基質[p−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム(PNPP)またはx−リン酸p−トルイジン塩(X−Phos)]を用いて検出された。従って、機能的な8266ZFN誘導性のSSAによって誘導されたDNA二本鎖断裂(DSB)は結果として、レポーター遺伝子の再構成、ならびに陽性および陰性の選択マーカーの排除を生じた。
【0132】
FokI変異体の遺伝子スクリーニングは、以下の通り行った。第一に、ZFNのガラクトース誘導性発現を、22℃という非許容性の温度で行った。回収後、細胞を、Kan(G418)、NATおよびura−培地中でインキュベートして、全ての活性なZFNを排除した。この工程は、潜在的な低温感受性変異体について、同様に不活性なZFNについて選択した。
【0133】
第二に、細胞を、37℃(許容温度)にシフトして、5−FOAおよびX−Phosを含有する培地上にプレートした。低温感受性ZFNを含有する細胞のみが、青いコロニーを形成した。次いで、これらの細胞由来のプラスミドを単離して、レポーター株に形質転換して、低温感受性の表現型を確認した。得られた変異は、FokIドメインの直接配列決定によって特定された。
【0134】
表3は、スクリーニングによって特定された種々の変異体を示す。低温感受性を付与すると予想される変異は、1列目に示す(ZFN中の二量体境界に対する近接性に基づく)。
【表3】
【0135】
単離された変異体の低温感受性切断活性の活性(野性型に対して)を図1Aに示す。レポーター株を単離された変異体ベクターで形質転換して、3つの培養物に分けて、22℃、30℃および37℃でインキュベートした。発現後、変異体の活性を決定して、野性型ZFNの活性の画分として報告した。インキュベーションの温度の増大と関連するZFN切断活性の増大によって、単離された変異体は低温感受性であることが示される。
【実施例3】
【0136】
新規な遺伝子操作されたFokI切断ハーフドメインの設計(デザイン)
Millerら.(2007)Nat.Biotech.25(7):778−85に記載のZFN構造モデルを用いて、本発明者らは、実施例2で試験した変異体の位置をマッピングして、変異した残基のうち2つ(N496およびH537)が二量体の境界上でお互いに面しており、近接して見出されることを見出した。これらの変異体のモデル化によってまた、H537RおよびN496D変異が塩架橋を形成して、二量体化境界を強くする可能性が高いことが示された。表4は、試験した種々の変異体の命名法を示す。
【表4】
【0137】
3重変異体の種々の一対の組み合わせ(例えば、ELD:KKK、ELD:KKR、ELE:KKKおよびELE:KKR)を、EL:KK対(EL:KK変異体は、米国特許出願公開第2008/0131962に記載)に対する切断活性について、種々のZFNバックグラウンドで比較した。ZFN含有プラスミドを次にK562細胞またはPMBC細胞中にヌクレオフェクトした。適切な遺伝子座でZFN活性を決定するために、Cel−1ミスマッチアッセイを、本質的に製造業者の指示(Trangenomic SURVEYOR(商標))に従って行った。細胞を回収して、染色体DNAをQuickextract(商標)Kitを用いて製造業者の指示(Epicentre(登録商標))に従って調製した。標的化遺伝子座の適切な領域を、Accuprime(商標)High−fidelity DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を用いてPCR増幅した。PCR反応物は、94℃まで加熱し、徐々に室温まで冷却した。約200ngのアニーリングされたDNAを0.33μLのCel−1酵素と混合して、42℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、1×Tris−ホウ酸塩−EDTA緩衝液中でポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。
【0138】
図2〜5に示されるとおり、三重変異体の種々の組み合わせは、もとの偏性ヘテロ二量体のZFN(EL:KK)よりも活性である。詳細には、図2は、K562細胞へのZFNのトランスフェクションの3日後および10日後における、53BP1に対して標的化されたZFNでのZFN改変体ELD:KKK、ELD:KKR、ELE:KKK、ELE:KKR、ELD:KIK、ELD:KIR、ELE:KIKおよびELE:KIRのCel−1アッセイ結果を示す。図3は、KDRに標的化されたZFNおよびK562細胞へのZFNのトランスフェクション20日後のZFN改変体ELD:KKKおよびELD:KKRのCel−1アッセイ結果を示す。図4は、K562細胞でのGR特異的ZFNの状況におけるELD;KKRおよびELD:KKK FokI遺伝子操作切断ドメインのCel−1アッセイ結果を示す。図4はまた、トランスフェクションのための漸減量(400ng〜16ng)の発現プラスミドを用いる切断活性を示し、ここでは2つの異なるセットのサンプルがある(レーン1〜14およびレーン15〜26)。これらの結果、80ngの発現プラスミドを入れれば、ELD:KKRおよびELF:KKK変異体は両方ともEL:KK変異体よりも活性であったことが示される(レーン8とレーン9および10、ならびにレーン20とレーン21および22を比較する)。
【0139】
図5は、3つの異なるRIPK1−特異的なZFNバックグラウンドにおけるELD:KKRおよびELD:KKK変異体の切断活性を示す。新規な変異体は両方ともRIPK1対AおよびRIPK1対BにおけるEL:KK変異体よりも活性であった。図5Bでは、対Cのバックグラウンドにおける新規な変異体を、37℃および30℃の両方で試験して、全てのZFP対の活性が30℃で増大することを見出した(米国特許出願公開第2009/0111119号を参照のこと)。
【実施例4】
【0140】
ホモ二量体としての遺伝子操作された切断ドメインの活性
新規な変異体をまた、強制されたホモ二量体としてDNAを能動的に切断する能力について試験した。これらのアッセイでは、ジンクフィンガー結合ドメインを、対の両方のメンバーで同じであるFokI切断ドメインに融合する。従って、任意の活性を観察するために、FokIドメインは、それ自体とホモ二量体化しなければならない(「強制されたホモ二量体化」)。CCR5−標的化ZFNの強制されたホモ二量体化は、K562細胞におけるFokI改変体のヌクレオフェクション(図6を参照のこと)によってアッセイし、Cel−1アッセイを用いて、CCR5ヘテロ二量体標的、CCR5−L ZFNホモ二量体(ABLIM2)、およびCCR5−Rホモ二量体(PGC)オフターゲット部位でのZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。これらの実験のために、変異をCCR5−特異的な8266および8196zの対で作製し、次いで試験した。従って、「WT」と表示したレーンでは、8266/8196z対を用いた。次いで、試験した各々の変異体対について、示した変異と同様の対を作製し、そのためEL:ELレーンは、8266−ELおよび8196z−ELなどを含む対を示す。
【0141】
図6からわかるように、KK、KKKおよびKKRホモ二量体は、CCR5ヘテロ二量体標的部位で検出可能な切断活性を示さないが、EL:ELおよびELD:ELDホモ二量体によって切断は制限される。ELD:ELD改変体はEL:ELに比較して約1.5倍小さい活性を有し、このことは、特異性の増大を示す。重要なことに、公知のオフターゲット部位ABLIM2およびPGCの試験では、いかなる変異体によっても検出可能な切断活性は示されない。
【0142】
ELD切断ドメインの特異性の改善をさらに確認するために、これらの同じ強制されたホモ二量体をK562細胞中で、漸減濃度で試験した。図7からわかるとおり、試験した全てのDNA濃度で、ELD:ELDは、EL:ELと比較して低いホモ二量体活性を示す。強制されたGR−特異的なZFNホモ二量体も試験し(図8を参照のこと)、検出可能な切断活性はなかった。いくつかの実施形態では、I499A変異体を用いて、I449L変異を置き換え、任意の潜在的なELDホモ二量体化をさらに減じた。この場合、EAD CCR5特異的なZFNの強制されたホモ二量体化で、検出可能な切断活性は生じなかった。
【0143】
さらに、これらの細胞をまた、ゲノムにおいてDSB部位で蓄積するγ−H2AXに特異的な抗体を用いてDSBについて試験した。染色された細胞を、フローサイトメトリーによって分別して、その結果を図9に示す。この図からわかるとおり、WT対を除けばごくわずかな染色しかなく、このことは、変異したFokIドメインを含むZFN対の存在下ではゲノム中のDSBが低レベルであることを示す。
【実施例5】
【0144】
初代細胞における遺伝子操作されたハーフドメインの活性
この構築物をまた、初代細胞で試験した。示した変異を含む漸減量のCCR5−標的化ZFN構築物を、Perezら、(同書)に記載のようにPBMC中にヌクレオフェクトした。この細胞を、トランスフェクション3日後に回収して、Cel−1アッセイを用いてZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。図10Aからわかるとおり、ELD:KKKおよびELD:KKR変異体は、低濃度でさえこれらの細胞中で完全に活性であった。同様の研究をPD−1に対して標的化したZFNで行って、図10Bに示す。遺伝子操作されたハーフドメイン構築物は、PD−1−特異的なZFNの3つの対で作製し、ここでは対Aは対12942と12974とから構成され、対Bは対12942と25016とから構成されるが、対Cは、対12942と25029とから構成される(米国特許仮出願第61/281,432を参照のこと)。その結果は、図10Bにグラフ形式で示しており、これによって、ELD:KKRおよびELD:KKK変異体が、WT対およびEL:KK対の両方に比べて優れた活性を有したことが示される。
【0145】
GR−特異的なZFNバックグラウンドで作製された変異体をまた、図11Aに示すように活性についてPBMCで試験した。この実施例では、漸減量の変異体をトランスフェクションの3日後および10日後に試験した。新規な変異体は、EL:KK対に比較して活性の増大を有することが見出された。図11Bでは、PBMCでの6つの独立したトランスフェクションで繰り返した実験の平均値を示す。この値は、EL−KK対に比較して相対活性の平均の平均+/−標準誤差である。P値は、2標本T検定を用いて、これらの結果の再現性を示す。
【実施例6】
【0146】
DSBへの標的化組み込み、EL:KKとELD:KKRとの比較
EL:KKおよびELD:KKR FokI変異体ZFNをまた、標的化組み込み(TI)を促進するのにおけるそれらの使用について比較した。この実験については、新規なBamHI制限部位を含むドナー核酸を作製した。首尾よいTIの後、ZFN標的部位を囲む領域をPCRによって増幅し、次いでPCR産物をBamHI制限に供して、新規に導入された制限部位を切断した。ドナーDNAの配列を下に示す:
【表5】
【0147】
この配列では、ZFN結合部位を大文字で示し、導入されたBamHI制限部位には下線を付している。これらの実験について、FokI変異体を、GR−特異的なZFNバックグラウンドで試験して、図11Cに示しており、これは、ヌクレオフェクション工程の間に、2つの異なるZFNコードプラスミド濃度を用いて行った。図11Cでわかるように、ELD/KKR対は、試験した両方の濃度で、EL/KK対よりもドナーの導入を生じるのに効率的であった。
【実施例7】
【0148】
DA:RV FokI変異体対、ELD:KKRまたはELD:KKKの活性の比較
GR−特異的なおよびCCR5−特異的なZFNバックグラウンドの両方において、FokI変異を含むZFNの対を構築した。次いで、これらを、上記の様に、K562細胞でのそれらの内因性の標的に対して試験して、上記のように、Cel−Iミスマッチアッセイを用いて切断活性についてアッセイした。実験の各々の設定では、ZFNをコードする80ngのDNAを、ヌクレオフェクション工程に用いた。形質導入後3日で、Cel−Iアッセイを行って、結果を図12に示しており、これは、GR−特異的な切断およびCCR5−特異的な切断の結果を示している。このデータによって、DA:RVFokIの対は、EL:KK、ELD:KKKおよびELD:KKRの対よりもかなり少ない活性を示したことが示される。しかし、EA:KVの対は、このアッセイで活性を示した。
【0149】
次に、種々のZFNを、それらが強制されたホモ二量体化によってホモ二量体化する能力について試験した(実施例4を参照のこと)。典型的には、2つのFokI変異体ドメインがホモ二量体化する能力を有することは望ましくない。なぜなら、これは、望ましくないオフターゲット切断の可能性を増大し得るからである。この実験は、400ngのZFN含有プラスミドを各々のヌクレオフェクションの用いたこと以外は上記のとおり行った。その結果を図13に示しており、これによって、KV FokI変異体がかなりの程度までホモ二量体化する能力を有することが示される。従って、EA:KVの対は、このCel−IアッセイでELD:KKRの対に匹敵する活性を有することが見出された(図12を参照のこと)が、KV FokI変異体がホモ二量体化して、切断活性を示すことができたという事実によって、これは、オフサイト切断のリスクの増大のせいであまり望ましくなくなる。
【実施例8】
【0150】
DA:RV FokI変異体の活性の増強
次いで、DA:RV FokI変異体を検査して、それらを他のFokI変異と組み合わせることによってそれらの活性を増大することが可能か否かを確認した。従って、DA:RV対を、N496DおよびH537R変異を含むように作製して、DAD:RVRの対を得た。これらの変異体を含むCCR5−特異的なおよびCXCR4−特異的な対についてのCel−I活性のアッセイ結果を、図14に示す。実験は、一形質転換あたり80ngのプラスミドを用いて、前に記載のとおり行った。図からわかるとおり、N496DおよびH537R変異の付加によって切断活性は増大した。同様の結果がまた、GR−特異的なZFNバックグラウンドにおけるこれらの変異を用いて見出された(図14)。
【0151】
DA:RV+N496DおよびH537Rの組み合わせをまた、活性の低いZFN対バックグラウンドにおいて試験した。この実験では、KDR−特異的なZFNを選択して、Cel−Iアッセイの結果を図15に示す。この図では、DA:RVおよびDAD:RVRの両方の変異体の活性は検出できなかった。従って、N496DおよびH537R変異の付加は、いくつかのZFNでは有益であるが、弱いか検出不能な活性を有するZFNの対をレスキューすることはできない。
【実施例9】
【0152】
同時の特異的な二重切断のための直交対の試験
ゲノム内の2つの標的部位で同時切断を行うことが所望され得る。追加された特異性に関しては、所望の遺伝子座で切断するZFN対のみが生産的に二量体化することが可能で、その結果活性な対が所望の特異性を有する場合が最高であろう。この目的を達成するために、対は、ホモ二量体化するか、またはトランスヘテロ二量体化して活性な対を作成できてはならない。言い換えれば、標的1がZFN対A+Bによって切断され、そして、標的2がZFN対X+Yによって切断される場合、A+A(ホモ二量体)、A+XおよびA+Y(トランスヘテロ二量体)の対形成は、例えば、望ましくない。従って、CCR5およびCXCR4に特異的なELD/KKR+DAD/RVR対を、CCR5−特異的なELDハーフ切断ドメインが、CXCR5−特異的なDADまたはCXCR4−特異的なRVRハーフドメインのいずれかとトランスヘテロ二量体化できないという期待とあわせて試験した。さらに、ELD/KKR対の改変体を作製し、その結果、ELD変異体の496位のD変異およびKKRの537位のR変異体は交換されて、REL/DKK対(H537R+Q486E+I499L/N496D+E490K+I538K)が形成された。さらに、CCR5およびCXCR4に特異的なELD/KKR+DD/RR対もまた一緒に試験した。
【0153】
Cel−I活性のアッセイ結果を、図16および22に示す。この実験では、試験した条件は、両方とも標準の37℃インキュベーションおよび30℃インキュベーションであった(共同所有の米国特許出願第12/800,599号を参照のこと)。要するに、形質導入後、細胞を、37℃で3日間、または30℃で3日間保持した。3日間インキュベーションした後、Cel−Iアッセイを行って、両方の標的が切断されたか否かを確認し、ここではCCR5−特異的なCel−Iアッセイは、図16の上部に示し、そしてCXCR4−特異的なCel−Iアッセイを下に示す。
【0154】
これらの結果、CCR5およびCXCR4標的の両方での切断は、直交性の変異体のこれらの対を用いて単一工程で達成可能であったことが示される。
【0155】
変異体をさらに試験して、可能性のあるオフターゲット切断を検査した。インシリコの分析を行って、非正統的なCCR5−CXCR4トランスヘテロ二量体ZFN対によって認識され得る標的を模倣し得る、可能性のあるオフターゲット部位を特定した。これらの実験では、オフターゲット切断のための4つのトップ候補をCel−Iアッセイによって検査し、ここではオフターゲット部位の配列は、表5に下に列挙する。
【表6】
【0156】
形質導入は、37℃および30℃の両方のインキュベーション条件を用いて上記のように試験して、結果を図17および22で示す。図17で示されるとおり、ELD/KKR CXCR4対と組み合わせたELD/KKR CCR5対は、オフターゲット#3、#5および#10である程度の切断をもたらす。REL/DKK CXCR4対とのELD/KKR CCR5対の組み合わせもまた、部位#3、#5および#10である程度の切断をもたらした。しかし、DAD/RVR CXCR4対と組み合わせたELD/KKR CCR5対は、これらのオフターゲット部位で検出可能な切断をもたらさなかった。さらに、図22に示されるとおり、DD/RR CXCR4対と組み合わされたELD/KKR CCR5対は、これらのオフターゲット部位で検出可能な切断をもたらさなかった。
【0157】
これらの結果、これらのFokI変異体は、2つ以上の標的部位の同時切断を可能にする設定で用いられ得るが、望ましくないオフターゲット切断を減少することが示される。
【実施例10】
【0158】
Sharkey変異体とペアリングされたFokI変異体の評価
FokI変異体の設定は、記載されており、これは、Sharkey(S418P+K441E)およびSharkey’(S418P+F432L+K441E+Q481H+H523Y+N527D+K559Q)FokI変異体として公知であり、DNA切断の効率を向上すると考えられる(see Guoら,(同書))。従って、Sharkey変異体を、本明細書に記載の種々のFokI変異体と組み合わせて試験して、切断活性が、Sharkey変異の存在によってさらに増強され得るか否かを確認した。変異体組み合わせは、GR−特異的なおよびKDR−特異的なZFNバックグラウンドで行い、上記のようなCel−Iアッセイを用いて切断活性について試験した。結果は、図18に示し、これによって、変異の活性が付加であると思われることが示される。例えば、3日目のパネルでのレーン10および11とレーン12および13との比較によって、検出されたNHEJ活性(インデル)が、ELD/KKR GR−特異的な対についての11〜12からELD−S/KKR−S対についての20%インデルまでいったことが示される。同様に、3日目のKDR特異的なZFNについてレーン10および11とレーン12および13の比較は、検出可能な約26〜28%インデルから検出可能な48〜50%インデルまでいった。
【0159】
さらに、Sharkey FokI変異体は、GR−特異的なZFNバックグラウンドにおいてDA/RVおよびDAD/RVR Fok1変異体と組み合わされて、Cel−I活性アッセイを用いて活性について試験された。この結果は、図19Aに示しており、ここで、FokI変異は、活性に関して相加的であることが示される。(レーン4および5とレーン6および7とを比較する)。
【0160】
変異体組み合わせもまた試験して、Sharkey変異の存在が、実施例4において上記されるような強制されたホモ二量体化アッセイにおけるホモ二量体化切断の量を増大するか否かを確認した。図20は、付加されたSharkey変異の有無による、GR−特異的な変異体の結果を示す。この図からわかるように、変異体は、ホモ二量体化能力において検出可能な変更はなかった。同様に、DA−S/RV−SおよびDAD−S/RVR−S変異体もまた試験して、GR−特異的なZFNバックグラウンドにおけるホモ二量体化の増大があったか否かを確認した。その結果を図21Aに示し、ここでは、生産的なホモ二量体化の増大がなかったことが示される。図21Bは、全てのレーンの等しいローディングを示す。
【実施例11】
【0161】
D:R FokI変異体の活性の増強
D:R FokI変異体(R487D:D483R)(例えば、米国特許出願公開第2008/0131962号および同第2009/0305346号を参照のこと)を検査して、それらを他のFokI変異と組み合わせることによってそれらの活性の増大が可能になるか否かを確認した。要するに、N496DおよびH537R変異を含み、上記で記載されるように行われるDD:RR対およびCel−Iアッセイを生じるようにD:Rの対を作製した。
【0162】
図21で示すとおり、N496DおよびH537R変異の追加によって、切断活性は増大された。
【0163】
まとめると、これらの結果によって、本明細書に記載されるFokI変異体は、ここで示されるデータ(新規な変異体が前に記載されたFokI変異体よりも活性であって、オフサイト切断活性を示す程度が低いことを示す)であることが示される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年2月8日出願の米国特許仮出願第61/337,769号、および2010年9月23日出願の同第61/403,916号の利益を主張し、これらの開示の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の支援する研究のもとでなされた本発明に対する権利に関する陳述
適用なし。
【背景技術】
【0003】
技術分野
本開示は、ポリペプチドおよびゲノム工学、ならびに相同組み換えの分野にある。
【0004】
背景
人工的ヌクレアーゼ、例えば、ゲノムDNAの標的化切断のためのジンクフィンガーヌクレアーゼ(ジンクフィンガードメインと切断ドメインとの融合)が記載されている。このような標的化切断事象は、例えば、標的化突然変異を誘導するため、細胞DNA配列の標的化欠失を誘導するため、ならびに所定の染色体遺伝子座での標的化組み換えを容易にするために用いられ得る。例えば、これらの開示が全ての目的のために全内容が参照により組み込まれる、米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20060063231号;および国際公開第07/014275号を参照のこと。
【0005】
特異性を増大させるため、各々がジンクフィンガー結合ドメインおよび切断ハーフドメインを含む一対の融合タンパク質を用いて、標的ゲノムDNAを切断してもよい。切断は、切断ハーフドメインが会合して機能的な二量体を形成しない限り生じないので、この配列は、特異性を増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オフターゲット切断事象をさらに減少させるため、遺伝子操作された切断ハーフドメイン、例えば、偏性ヘテロ二量体を形成するドメインも開発された。例えば、米国特許出願公開第2008/0131963号を参照のこと。しかし、活性が増大し、オフターゲット切断活性が低下した追加の遺伝子操作された切断ハーフドメインが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本開示は、野性型切断ドメインおよび/または以前に記載された遺伝子操作された切断ハーフドメインと比較して増強された活性および特異性を示す遺伝子操作された切断ハーフドメインを提供する。また記載されるのは、これらの遺伝子操作された切断ハーフドメインを含む複合体(例えば、ヘテロ二量体)および融合タンパク質である。本開示はまた、目的の領域における細胞クロマチンの標的化切断のためのこれらの組成物、および/または相同組み換えを細胞の目的の所定の領域で用いる方法を提供する。
【0008】
従って、一態様では、本明細書に記載されるのは、遺伝子操作された切断ハーフドメインであって、それが由来する親の野性型切断ドメインに比較して2つ以上の変異を含んでいる遺伝子操作された切断ハーフドメインである。特定の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、FokI由来であり、アミノ酸残基418、432、441、481、483、486、487、490、496、499、523、527、537、538および/または559(野性型FokI切断ハーフドメインに対してナンバリングした)のうちの2つ以上において変異を含む。一実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、野性型FokI切断ドメイン由来であり、アミノ酸残基486、499および496(野性型FokIに対してナンバリングした)において変異を含む。別の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、アミノ酸残基490、538および537(野性型FokIに対してナンバリングした)において変異を含む。別の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、野性型FokI切断ドメイン由来であり、かつアミノ酸残基487、499および496(野性型FokIに対してナンバリングした)において変異を含む。一実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、野性型FokI切断ドメイン由来であり、アミノ酸残基483、538および537(野性型FokIに対してナンバリングした)において変異を含む。なおさらなる実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、アミノ酸残基490および537において変異を含む。
【0009】
本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、野性型切断ハーフドメイン、および/または他の遺伝子操作された切断ハーフドメインとヘテロ二量体を形成し得る。特定の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、486、499および496位(野性型FokIに対してナンバリングした)の変異、例えば486位で野性型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で置き換える変異、499位で野性型Iso(I)残基をLeu(L)残基で、ならびに496位で野性型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える変異(それぞれ、「ELD」および「ELE」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、490、538および537位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば490位で野性型Glu(E)残基をLys(K)残基で、538位で野性型Iso(I)残基をLys(K)残基で、および537位で野性型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KKK」および「KKR」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、490および537位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、490位で野性型Glu(E)残基をLys(K)残基で、ならびに537位で野性型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KIK」および「KIR」ドメインとも呼ばれる)を含む。なおさらなる実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、487および496位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、487位で野性型Arg(R)残基をAsp(D)残基で、および496位で野性型Asn(N)残基をAsp(D)で置き換える変異(「DD」とも呼ばれる)および/または483および537位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、483位で野性型Asp(D)残基をArg(R)残基で、および537位で野性型His(H)残基をArg(R)残基で置き換える変異(「RR」とも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、487、499および496位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、487位で野性型Arg(R)残基をAsp(D)残基で、ならびに499位で野性型Ile(I)残基をAla(A)で、および496位で野性型Asn(N)残基をAsp(D)残基で置き換える変異(「DAD」とも呼ばれる)、および/または483、538および537位(野性型FokIに対してナンバリングした)での変異、例えば、483位で野性型Asp(D)残基をArg(R)残基で、ならびに538位で野性型Ile(I)残基をVal(V)残基で、および537位で野性型His(H)残基をArg(R)残基で置き換える変異(「RVR」とも呼ばれる)を含む。
【0010】
別の態様では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、二量体化ドメイン以外のFokIのドメイン中に変異を含むようにさらに遺伝子操作されてもよい。例えば、418、432、441、481、523、527および559位の変異は、野性型FokIドメインの触媒活性を増大することが示された。詳細には、Pro(P)が野性型Ser(S)残基を418位で置き換える変異、およびGlu(E)残基が、野性型Lys(K)残基を441位で置き換える変異(「PE」として公知、または「Sharkey」としても公知)は、触媒活性を増強することが示された(Guoら(2010)J.Mol Biol,doi:10.101b/j.jmb.2010.04.060)。別の態様では、Pro(P)が野性型Ser(S)を418位で置き換え、Leu(L)が野性型Phe(F)を432位で置き換え、Glu(E)が野性型Lys(K)を441位で置き換え、His(H)が野性型Gln(Q)を481位で置き換え、Tyr(Y)が野性型His(H)を523位で置き換え、Asp(D)が野性型Asn(N)を527位で置き換え、Gln(Q)が野性型Lys(K)を559位で置き換える変異(「Sharkey」として公知、Guoら(同書)を参照のこと)。従って、一実施形態では、変異体FokIドメインは、418、441、486、および499位で変異を含んでもよい。別の実施形態では、変異体FokIドメインは、418、441、490、および538位で変異を含んでもよい。さらなる実施形態では、野性型FokIドメインは、418、441、486、496および499位、および/または418、441、490、537、および538位で変異を含むように変異されてもよい。他の実施形態では、野性型FokIドメインは、418、432、441、481、486、496、499、523、527および559位および/または418、432、441、481、523、527、559、490、538および537位で変異されてもよい。詳細には、この変異は、486位でGlu(E)による野性型Gln(Q)の変異、499位でLeu(L)による野性型Ile(I)の変異、496位でAsp(D)による野性型Asn(N)の変異、418位でPro(P)による野性型Ser(S)の変異、および441位でGlu(E)による野性型Lys(K)の変異(「ELD−S」または「ELD Sharkey」としても公知)および/または490位でLys(K)による野性型Glu(E)の変異、538位でLys(K)による野性型Ile(I)の変異、537位でLys(K)またはArg(R)による野性型His(H)の変異、418位でPro(P)による野性型Ser(S)の変異、ならびに441位でGlu(E)残基による野性型Lys(K)の変異(KKK−SもしくはKKR−S、またはKKK−SharkeyもしくはKKR−Sharkeyとしても公知)を挙げることができる。さらなる実施形態は、S418P:F432L:K441E:Q481H:Q486E:N496D:I499L:H523Y:N527D:K559Q(ELD−Sharkey’としても公知)、およびS418P:F432L:K441E:Q481H:E490K:H523Y:N527D:H537KまたはR:I538K:K559Q(KKK−Sharkey’またはKKR−Sharkey’としても公知)を包含する。
【0011】
別の態様では、条件付き活性化を示す(例えば、細胞が維持される条件に依存して)遺伝子操作された切断ハーフドメインが提供される。いくつかの実施形態では、条件付きの遺伝子操作された切断ハーフドメインは、低下した温度条件下で活性の低下を示す。いくつかの実施形態では、条件付きの遺伝子操作された切断ハーフドメインは、上昇した温度条件下で活性の低下を示す。
【0012】
さらに別の態様では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、非正準ジンク配位残基(例えば、正準のC2H2の立体配置ではなくCCHC、米国特許出願公開第2003−0108880号を参照のこと)を含むジンクフィンガーヌクレアーゼに組み込まれてもよい。
【0013】
別の態様では、本明細書に記載のようなDNA結合ドメインおよび遺伝子操作された切断ハーフドメインを含んでいる融合ポリペプチドが提供される。特定の実施形態では、DNA−結合ドメインは、ジンクフィンガー結合ドメイン(例えば、遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメイン)である。他の実施形態では、DNA−結合ドメインは、TALE DNA−結合ドメインである。
【0014】
別の態様では、本明細書に記載のような任意の遺伝子操作された切断ハーフドメインまたは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0015】
さらに別の態様では、本明細書に記載の任意のポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)および/またはポリヌクレオチドを含む細胞もまた提供される。一実施形態では、細胞は一対の融合ポリペプチドを含み、1つの融合ポリペプチドは、ELDまたはELE切断ハーフドメインを含み、1つの融合ポリペプチドは、KKKまたはKKR切断ハーフドメインを含む。別の実施形態では、1つの融合ポリペプチドは、DAD切断ハーフドメインを含むが、別の融合ポリペプチドは、RVR融合ポリペプチドを含む。他の実施形態では、対になった融合ポリペプチドはさらに、FokIヌクレアーゼドメインの他の位置に変異を含む。いくつかの実施形態では、これらの触媒性ドメイン変異体は、S418PおよびK441Eであり、従って、これらの変異体融合ポリペプチドは、下に列挙される変異体FokIドメインを含む:
(a)EL−S:S418P:K441E:Q486E:I499L
(b)KK−S:S418P:K441E:E490K:I538K
(c)ELD−S:S418P:K441E:Q486E:N496D:I499L
(d)KKK−S:S418P:K441E:E490K:H537K:I538K
(e)KKR−S:S418P:K441E:E490K:H537R:I538K
(f)DA−S:S418P:K441E:R487D:I499A
(g)RV−S:S418P:K441E:D483R:I538V
(h)DAD−S:S418P:K441E:R487D:N496D:I499A
(i)RVR−S:S418P:K441E:D483R:H537R:I538V
(j)DD−S:S418P:K441E:R487D:N496D
(k)RR−S:S418P:K441E:D483R:H537R。
【0016】
さらに別の態様では、目的の領域内の細胞クロマチンの標的化切断の方法;細胞中で相同組み換えを生じさせる方法;感染を処置する方法;および/または疾患を処置する方法が提供される。この方法は、本明細書に記載のような一対の融合ポリペプチド(すなわち、一対の融合ポリペプチドであって、ここで1つの融合ポリペプチドは本明細書に記載のような遺伝子操作された切断ハーフドメインを含む)を発現することによって細胞中で目的の所定の領域で細胞クロマチンを切断することを包含する。
【0017】
本明細書に記載の遺伝子操作された切断ハーフドメインは、目的の領域での細胞クロマチンの標的化切断のための方法、および/または細胞中での目的の所定の領域での相同組み換えにおいて用いられ得る。細胞としては、培養細胞、生物体中の細胞および処置のために生物体から取り出された細胞が挙げられ、この場合、この細胞および/またはそれらの子孫は、処置後に生物体に戻される。細胞クロマチンの目的の領域は、例えば、ゲノム配列またはその一部であってもよい。組成物は、DNA結合ドメイン(例えば、遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインまたは新規な特異性を有するTALE結合ドメイン)および記載されるような切断ハーフドメインを含む融合ポリペプチドを包含する。
【0018】
融合タンパク質は、細胞において、例えば、融合タンパク質を細胞に送達することによって、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを細胞に送達することによって発現されてもよく、ここで、このポリヌクレオチドは、DNAである場合、転写され、そして細胞に送達されたRNA分子または細胞に送達されたDNA分子の転写物が翻訳されて、融合タンパク質が生成される。細胞へポリヌクレオチドおよびポリペプチドを送達するための方法は、本開示のいずれかに提示される。
【0019】
従って、別の態様では、目的の領域で細胞クロマチンを切断するための方法は、(a)目的の領域で第一の配列を選択することと;(b)第一のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;(c)細胞中で第一の融合タンパク質を発現することであって、この第一の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第一のDNA−結合ドメインおよび第一の遺伝子操作された切断ハーフドメインを含むことと;(d)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、この第二の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第二のDNA結合ドメインおよび第二の切断ハーフドメインを含むことと、を含み、ここでこの第一の融合タンパク質は、第一の配列に結合し、かつ第二の融合タンパク質は、第一の配列から2〜50ヌクレオチドに位置する第二の配列に結合し、それによってそれらがヘテロ二量体を形成するように、遺伝子操作された切断ハーフドメインを配置し、ここでヘテロ二量体が、目的の領域で細胞のクロマチンを切断する。
【0020】
他の実施形態では、本明細書に記載される任意の方法は、(a)目的の領域で第一および第二の配列を選択することであって、ここでこの第一および第二の配列は、2〜50ヌクレオチド離れていることと;(b)第一のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;(c)第二のジンクフィンガー結合ドメインが第二の配列に結合するように遺伝子操作することと;(d)細胞中で第一の融合タンパク質を発現させることであって、この第一の融合タンパク質が本明細書に記載されるような第一のDNA結合ドメインおよび第一の切断ハーフドメインを含んでいることと;(e)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、この第二の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第二のDNA結合ドメイン(例えば、遺伝子操作されたジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)および第二の切断ハーフドメインを含んでいることと;を含み、ここでこの第一の融合タンパク質は、第一の配列に結合し、第二の融合タンパク質は、第二の配列に結合し、それによって、この第一および第二の遺伝子操作された切断ハーフドメインを、それらが目的の領域で細胞クロマチンを切断するヘテロ二量体を形成するように配置する。特定の実施形態では、細胞クロマチンは、融合タンパク質が結合する第一の配列と第二の配列との間で、1つ以上の部位で切断される。
【0021】
さらなる実施形態では、目的の領域における細胞クロマチンの切断のための方法は、(a)目的の領域を選択すること;(b)第一のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が目的の領域の第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;(c)目的の領域における第二の配列に結合する第二のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALEDNA結合ドメイン)を提供することであって、ここで第二の配列は、第一の配列から2〜50ヌクレオチドに位置することと;(d)細胞中で第一の融合タンパク質を発現させることであって、この第一の融合タンパク質が本明細書に記載されるような第一のDNA結合ドメインおよび第一の切断ハーフドメインを含んでいることと;(e)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、この第二の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第二のDNA結合ドメインおよび第二の切断ハーフドメインを含んでいることと;を含み、ここでこの第一の融合タンパク質は、第一の配列に結合し、第二の融合タンパク質は、第二の配列に結合し、それによって、この第一および第二の切断ハーフドメインを、それらがヘテロ二量体を形成し、かつ細胞クロマチンが目的の領域で切断されるように配置する。
【0022】
また、例えば、標的化された変異を導入するために、細胞クロマチンのある領域を変更する方法も提供される。特定の実施形態では、細胞クロマチンを変更する方法は、細胞に1つ以上の標的化ヌクレアーゼを導入して、所定の部位での細胞クロマチンの二重鎖断裂、およびこの断裂の領域における細胞クロマチンのヌクレオチド配列に対して相同性を有するドナーポリヌクレオチドを生じることを含む。細胞DNAの修復プロセスは、二本鎖断裂の存在によって活性化され、そしてドナーポリヌクレオチドは、断裂の修復のためのテンプレートとして用いられ、この結果、細胞クロマチンへのドナーのヌクレオチド配列の全てまたは一部の導入が生じる。従って、細胞のクロマチンにおける配列は、変更されてもよく、特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列に変換され得る。
【0023】
標的化変更としては、限定するものではないが、点突然変異(ポイントミューテーション)(すなわち、単一の塩基対の異なる塩基対への変換)、置換(すなわち、複数の塩基対の同一長の異なる配列への変換)、1つ以上の塩基対の挿入、1つ以上の塩基対の欠失、および上述の配列変更の任意の組み合わせが挙げられる。
【0024】
ドナーポリヌクレオチドは、DNAであっても、またはRNAであってもよく、直鎖状であっても、または環状であってもよく、一本鎖であっても、または二本鎖であってもよい。ドナーポリヌクレオチドは、細胞へ、裸の核酸として、1つ以上の送達因子(例えば、リポソーム、ポロキサマー)との複合体として送達されてもよいし、または例えば、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)のようなウイルス送達ビヒクルに含まれてもよい。ドナー配列は、10〜1,000ヌクレオチド(またはその間のヌクレオチドの任意の整数値)またはそれ以上に及んでもよい。
【0025】
特定の実施形態では、相同組み換えの頻度は、細胞周期のG2期において細胞を停止することによって、および/または相同組み換えに関与する1つ以上の分子(タンパク質、RNA)の発現を活性化することによって、および/または非相同性末端結合に関与するタンパク質の発現もしくは活性を阻害することによって増強され得る。
【0026】
本明細書に記載される任意の方法において、第二のジンクフィンガー結合ドメインは、第二の配列に結合するように遺伝子操作され得る。
【0027】
さらに、本明細書に記載される任意の方法では、融合タンパク質は、単一のポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0028】
任意の前述の方法について、細胞のクロマチンは、染色体、エピソームまたはオルガネラゲノム中であってもよい。細胞のクロマチンは、限定するものではないが、原生動物細胞および真核生物細胞、真菌細胞、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、霊長類細胞およびヒト細胞を含む任意の細胞に存在し得る。
【0029】
いくつかの態様では、この方法は、本明細書に記載される変異を含む条件付きFokI活性を有する融合タンパク質を含む生物体を提供する。いくつかの実施形態では、これらの生物体は、植物である。これらの方法はまた、種子を含むこのような植物の組織に関する。
【0030】
他の実施形態では、目的の2つ以上の領域で細胞のクロマチンを切断するための方法が提供される。この方法は、(a)目的の第一の領域を選択すること;(b)第一のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が目的の領域の第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;(c)目的の領域における第二の配列に結合する第二のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALEDNA結合ドメイン)を提供するかまたは遺伝子操作することであって、ここで第二の配列が、第一の配列から2〜50ヌクレオチドに位置することと;(d)目的の第二の領域を選択すること;(e)第三のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALE DNA結合ドメイン)が目的の第二の領域の第一の配列に結合するようにすることまたは遺伝子操作することと;(f)目的の第二の領域における第二の配列に結合する第四のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガーまたはTALEDNA結合ドメイン)を提供するまたは遺伝子操作することであって、ここで第二の配列が、第一の配列から2〜50ヌクレオチドに位置することと;(g)細胞中で第一の融合タンパク質を発現させることであって、この第一の融合タンパク質が本明細書に記載されるような第一のDNA結合ドメインおよび第一の切断ハーフドメインを含んでいることと;(h)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、この第二の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第二のDNA結合ドメインおよび第二の切断ハーフドメインを含んでいることと;を含み、ここでこの第一の融合タンパク質は、第一の配列に結合し、第二の融合タンパク質は、第二の配列に結合し、それによって、この第一および第二の切断ハーフドメインを、それらがヘテロ二量体を形成し、かつ細胞クロマチンが目的の第一の領域で切断されるように配置することと、(i)細胞中で第三の融合タンパク質を発現させることであって、この第三の融合タンパク質が本明細書に記載されるような第三のDNA結合ドメインおよび第三の切断ハーフドメインを含んでいることと;(j)細胞中で第四の融合タンパク質を発現することであって、この第四の融合タンパク質が、本明細書に記載されるような第四のDNA結合ドメインおよび第四の切断ハーフドメインを含んでいることと;を含み、ここでこの第三の融合タンパク質は、目的の第二の領域における第一の配列に結合し、かつこの第四の融合タンパク質は、目的の第二の領域における第二の配列に結合し、それによって、この第三および第四の切断ハーフドメインを、それらがヘテロ二量体を形成し、かつ細胞クロマチンが目的の第二の領域で切断されるように配置することと、を含む。
【0031】
さらに、本明細書に記載の任意の方法では、少なくとも1つのジンクフィンガー結合ドメインは、例えば、設計または選択の方法によって、遺伝子操作される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】パネルAおよびBは、単離された変異体のある範囲の温度におよぶ、本明細書に記載のような示される切断ドメイン変異体を含んでいるジンクフィンガーヌクレアーゼの切断活性を示す。図1Aは、酵母レポーター株が単離された変異体ベクターで形質転換され、3つの培養物に分けられ、22℃、30℃、および37℃でインキュベートされた場合の結果を示す。ZFN誘導後、変異体の活性を決定して、野性型ZFNの画分として報告した。図1Bは、抗FLAG抗体を用いてウエスタンブロットによってモニターした変異体ZFN発現を示す。等価なタンパク質ロードを確認するため、抗ヒストン3(抗H3)抗体ウエスタンブロットを行った。
【図2】パネルAおよびBは、53BPI特異的ZFNバックグラウンドにおけるZFN改変体ELD:KKKおよびELD:KKRの活性を示す。図2Aは、K562細胞でヌクレオフェクトした(nucleofected)53BP1−特異的なZFN改変体の活性を示す。この細胞を、トランスフェクションの3日後に回収した。各々の組み合わせの2つの培養物をアッセイした(例えば、EL/KK5および6)。Cel−1アッセイ(Surveyor(商標),Transgenomic)を用いて、各々のレーンの下部で図2Aに示す、ZFN誘導性の挿入および欠失の頻度(インデル%)を決定した。ZFN誘導性のインデルは、DNAのZFN切断の結果としての二本鎖断裂(DSB)の結果であり、この後に非相同末端結合(NHEJ)プロセスを用いる細胞による修復が続き、これがDNAのごく一部分を修復の間に断裂部位で挿入または欠失し得る。矢印は、Cel−1切断後のバンドの予想サイズを示す。細胞のアリコートをまた、さらに1週間培養して、長期培養(10日)での改変された細胞の安定性を決定した。図2Bは、抗FLAG抗体を用いるウエスタンブロットによってモニターしたZFN発現を示す。ローディングコントロールとして、抗NFκB p65を用いた。
【図3】パネルAおよびBは、KDR−特異的なZFNバックグラウンドにおける変異体の活性を示す。図3Aは、ヌクレオフェクションの3日後、および20日後にモニターした、K562細胞におけるKDR−特異的なZFN対のCel−1活性アッセイの結果を示す。各々のレーンで用いた示したFokI変異体とのZFN対を、レーンの上に示し、Cel−Iアッセイ(図2について上で記載)で検出した活性を下部に示す。GFPは、陰性のコントロールを示す。ZFN FokI改変体ELD:KKKおよびELD:KKRは、もとの偏性ヘテロ二量体のZFN(EL:KK)よりも活性が高い。図3Bは、図1について上で記載されるようなZFN発現およびタンパク質ローディングのモニタリングを示す。
【図4】GR−特異的なZFNバックグラウンドにおけるZFN改変体ELD:KKKおよびELD:KKRの活性を示し、ここで活性は、図2について上で記載されるようなCel−Iアッセイによって決定する。この図は、各々の条件について2セットのサンプルからの結果を示す。レーン1〜14は、第一のセットであり、レーン15〜26は、第二のセットである。新規な変異体は、もとの偏性ヘテロ二量体のEL:KKよりも活性であり、高度に活性なZFNについてZFNを制限する(レーン8とレーン9および10、ならびにレーン20とレーン21および22を比較)。漸減量のGR−標的化ZFN(パネルの上部にそって示す)をK562にヌクレオフェクトして、細胞をトランスフェクションの3日後に回収して、Cel−1アッセイを用いてZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。
【図5】パネルAおよびBは、3つの異なるRIPK1−特異的なZFN対(対A、BおよびC)における変異体の活性を示す。図5Aは、K562細胞においてヌクレオフェクトされた、RIPK1遺伝子(AおよびB)を標的化する2つの異なるZFN対についてのCel−1活性アッセイ(図2について上記される)を示す。細胞をトランスフェクションの3日後に回収して、アッセイを用いて、ZFN誘導性の挿入および欠失(インデル)の頻度を決定した。インデルのパーセントは、各々のレーンの下部に示す。図5Bは、K562細胞を、RIPK1遺伝子を標的化するZFN発現ベクター(C)の三番目の対でヌクレオトランスフェクトして、3日間37℃(左パネル)または30℃(右パネル)でインキュベートした。
【図6】パネルAおよびBは、CCR−5−特異的なZFN対(米国特許出願公開第2008/0159996号を参照のこと)のCel−1活性のアッセイ結果(図2について上記するとおり)を示す。図6Aは、CCR5ヘテロ二量体標的、CCR5−L ZFNホモ二量体(ABLIM2)、およびCCR5−Rホモ二量体(PGC)オフターゲット部位でのZFN誘導性のインデルの頻度を決定するためにCel−1アッセイを用いて、K562細胞において示されたFokI改変体のヌクレオフェクション後のCCR5標的化ZFNの強制されたホモ二量体化の活性を示す。図6Bは、図1について上記されるようなZFN発現およびタンパク質ローディングのモニタリングを示す。
【図7】パネルAおよびBは、図6に記載されるCCR5改変体のCel−1活性アッセイ結果(図2について上記するとおり)を示す。図7Aは、漸減量のCCR5 ELおよびELD FokI改変体を用いるCel−1活性の結果を示す。これらの構築物は、K562でヌクレオフェクトして、Cel−1アッセイを用いて、ZFN誘導性のインデルの頻度をCCR5ヘテロ二量体部位で決定した。図7Bは、図1について上記されるようなZFN発現およびタンパク質ローディングのモニタリングを示す。
【図8】パネルAおよびBは、GR−特異的なZFNバックグラウンドにおける変異体の強制されたホモ二量体化のCel−1活性のアッセイ結果を示す。図8Aは、GRヘテロ二量体部位でのZFN誘導性インデルの頻度を決定するためにK562細胞において指定のFokI改変体のヌクレオフェクション後のGR標的化ZFNの強制されたホモ二量体化後のCel−1の結果を示す。野生型以外のサンプルにおいて、このアッセイでは検出可能なインデルはなかった。図8Bは、図1について上記されるようなZFN発現およびタンパク質ローディングのモニタリングを示す。
【図9】DSBを標的化するγ−H2AXに対する抗体で染色したGR標的化ZFNバックグラウンドにおける示した構築物で処理したK562細胞のフローサイトメトリーデータを示す。陽性細胞のパーセントを示す。全てのFokI変異体対について観察されたDSBの割合は、野生型FokIについてよりもかなり少なかった。
【図10】パネルAおよびBは、初代細胞における新規なZFN変異体の活性を示す。図10Aは、PBMC中でヌクレオフェクトされた漸減量のCCR5−標的化ZFNを用いるCel−1活性アッセイの結果(図2について上で記載するとおり)を示す。細胞は、トランスフェクションの3日後に回収して、Cel−1アッセイを用いて、ZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。図10Bは、PBMC中で二重にヌクレオフェクトされたPD1遺伝子を標的化する、3つの異なる3つの異なるZFN対(ZFN A、ZFN B、およびZFN C、実施例5を参照のこと)で得られた棒グラフの結果を示す。細胞はトランスフェクションの3日後および10日後に回収して、Cel−1アッセイを用いて、ZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。このグラフは、二重のトランスフェクションからの平均値およびエラーバーを示す。
【図11A】パネルA〜Cは、新規なZFN変異体の活性を示す。図11Aは、PBMC中でヌクレオフェクトされた漸減量のGR−標的化ZFNを用いるCel−1活性のアッセイ結果を示す。細胞は、トランスフェクションの3日後および10日後に回収して、Cel−1アッセイを用いて、ZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。図11Bは、PBMC中で6つの独立したトランスフェクションからの、示されるZFNの相対活性の平均値+/−s.e.m.(標準誤差)を示す棒グラフを示す。P値は、MicroCal Originsバージョン7.5(OriginLab(登録商標))によって算出した2標本T検定を用い、これは、EL−KK改変体に対して示した活性の有意差を示す。図11Cは、ドナー核酸の標的化組み込みを促進するためのK562細胞においてヌクレオトランスフェクトされたEL/KKおよびELD/KKRのGR−特異的なZFN対の使用を示す。この実験におけるドナーは、新規なBamHI制限部位を構成し、その結果、DNAの標的化組み込みの際、標的化領域のPCR増幅産物は、TIが出現した場合、BamHI制限酵素によって切断できる。このデータによって、ELD/KKR FokI変異体対は、EL/KK FokI変異体対よりもTIを促進するのに効果的であったことが示される。
【図11B】図11Aの説明に同じ。
【図11C】図11Aの説明に同じ。
【図12】パネルAおよびBは、GRまたはCCR5のいずれかに特異的なFokI変異体の活性を示す。図12Aは、K562細胞中でヌクレオフェクトされたGR標的化ZFNのFokI変異体を用いるCel−I活性アッセイ(図2について上記するとおり)の結果を示す。変異したアミノ酸の位置の詳細な説明については表を参照のこと。図12Bは、CCR5標的化ZFNの同様の結果を示す。この結果によって、DA/RV対が試験された全てのFokI変異体対のうち最小の活性であることが示される。
【図13】FokI対の強制的なホモ二量体化が行われる場合に観察される活性を示す。活性は、Cel−1活性アッセイ(図2について上記するとおり)によって測定される。図13で示されるZFNは、GRに特異的であり、そして図からわかるとおり、KV FokI変異体は、適用可能なホモ二量体化活性を示すこの設定での唯一の変異体である。
【図14】追加のFokI変異体でさらに改変された、増強されたDA/RV対で観察されたCel−I活性アッセイ(図2について上記される)によって測定された活性を示す。この図は、CCR5−特異的なZFN対およびCXCR4−特異的なZFN対の両方についての結果を示しており、ここではFokIドメインが変更されている。この結果でわかるとおり、追加の変異は、DA/RV変異体の活性を約2倍に増大する。
【図15】KDR−特異的なZFNバックグラウンドにおける増強されたDA/RV対、DAD/RVRのCel−I活性を示す。KDR−特異的なZFN対は、開始するには活性が弱く、このデータによって、DAD/RVR変異体がまだこのアッセイで検出可能な活性を有さず、そのためDA/RV対と同様であることが示される。対照的に、ELD/KKR KDR−特異的なZFN FokI変異体対は、活性を示す(18〜21%のインデルが検出された)。
【図16】CCR5およびCXCR4に特異的な、2セットのZFN対によるK562細胞のヌクレオフェクション後の結果を示す。上部のパネルは、CCR5標的のCel−Iアッセイ結果(図2について上記するとおり)を示し、下部のパネルは、CXCR4標的と同様の結果を示す。この実験を、1セットは37℃でのみ維持したが、もう一方のセットは30℃で3日間保持したという点でのみ異なる、2つの平行なインキュベーション条件を用いて行った。この図によって、ZFNの両方の対とも同時に活性であったことが示される。
【図17】4つの可能性のあるオフターゲット部位(#3、#5、#7および#10)を切断活性について分析したこと以外は、図16について上記のようなK562細胞でのCel−Iアッセイ切断結果を示す。この実験は、2つのインキュベーション条件で上記のとおりであった。ELD/KKR−CCR5 FokI変異体対とDAD/RVR FokI変異体CXCR4対との組み合わせは、このアッセイにおけるこれらの4つのオフターゲットに対して検出不能な活性を生じた。
【図18】Cel−Iアッセイを用いて活性についてアッセイされたとおり、Sharkey変異体(表4、およびGuoら、(同書))と組み合わせた本発明に記載されるFokI変異体の結果を示す。試験したFokI変異体対は、KDR(上部パネル)またはGR(下部パネル)のいずれかに特異的であった。Sharkey変異の存在は、他のFokI変異体の活性を増大すると考えられる。
【図19】Cel−Iアッセイを用いて活性についてアッセイされたとおり、Sharkey変異体(表4、およびGuoら、(同書))と組み合わせた本発明に記載されるFokI変異体の活性の結果を示す。試験したZFN FokI変異体対は、GR(下部パネル)に特異的であった。Sharkey変異の存在は、他のFokI変異体の活性を増大すると考えられる。図19Aは、FokI変異体の相加的な結果を示し、図19Bは、実施例1に記載されるようなモニタリング発現およびゲルロードの結果を示す。
【図20】パネルA〜Dは、種々のFokI変異体+Sharkey FokI変異体の活性の結果が、Cel−Iアッセイによってアッセイされるとおりホモ二量体化するように強制されることを示す。示したとおり、FokI変異体は、活性なホモ二量体複合体を形成しない。図20Aおよび20Cは、FokIの相加的な結果を示し、そして図20Bおよび図20Dは、実施例1に記載されるような発現およびゲルローディングのモニタリングの結果を示す。
【図21A】パネルAおよびBは、Cel−Iアッセイによってアッセイされるような、示したZFNの状況でのD:RおよびDD:RR FokI変異体の活性の結果を示す。図21Bは、実施例1に記載されるような発現およびゲルローディングのモニタリングの結果を示す。
【図21B】図21Aの説明に同じ。
【図22】パネルAおよびBは、Cel−Iアッセイによってアッセイされるような、37℃(図22A)または30℃(図22B)で、示したZFNの状況での種々のFokI変異体の活性の結果を示す。インデルの割合は、レーンの下に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本明細書に開示されるのは、例えば、標的化切断に続く非相同的な末端結合による、または標的化切断に続く外因性ポリペプチド(細胞ヌクレオチド配列と相同性の1つ以上の領域を含む)とゲノム配列との間の相同組み換えによる、細胞クロマチンの標的化切断のためにおよび細胞ヌクレオチド配列の標的化変更のために有用な、遺伝子操作された切断ハーフドメインおよびこれらの遺伝子操作された切断ハーフドメインを含む融合ポリペプチドである。
【0034】
例示的な遺伝子操作された切断ハーフドメインを、表4に示す。この改変体は、お互いとヘテロ二量体を形成するが、ホモ二量体は形成しないような変異体を含む。これは、DNA切断の特異性を増大するか、および/または意図される複合体の濃度を増大する(ホモ二量体との競合を減少または排除することによる)。ジンクフィンガーヌクレアーゼ融合タンパク質に組み込まれた場合、これらの改変体は、意図される標的で遺伝子改変を誘導する(内因性の遺伝子座で、および組み込まれたGFPレポーターアッセイを用いて試験した場合)が、野性型切断ハーフドメインに比較してゲノムワイドなDNA切断を有意に減少する。
【0035】
従って、本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、著しくホモ二量体機能を付与する。なぜなら、同じ改変体の2つのコピーが相互作用して遺伝子操作(改変)を軽減または無効にするように強制するからである。低減されたホモ二量体機能によって、ZFN発現も減少せず、所望の標的部位の改変を刺激することもなく、インビボでZFN切断特異性の改善が得られる。
【0036】
さらに、本明細書に開示されるのは、条件付き活性を有する遺伝子操作された切断ハーフドメインである。これらの条件付き変異体は、そのデザイン次第で、ホモ二量体またはヘテロ二量体のいずれかとして機能し得る。特定の実施形態では、条件付き活性とは、温度に基づく切断活性の変化を指す。従って、これらの条件付き変異体は、細胞株または植物のような生物体全体の発達に用いられ得、ここでは切断活性が研究者らによって特定の温度で誘導され得るが、他の温度では停止したままで保持されている。
【0037】
概略
本明細書で開示される、方法の実践、ならびに組成物の調製および使用は、別段示さない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組み換えDNA、および関連分野における従来の技術を、当該技術分野の範囲内であるものとして使用する。これらの技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989および第3版,2001;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley&Sons,New York,1987および定期改訂版;METHODS IN ENZYMOLOGYシリーズ,Academic Press,San Diego;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,第3版,Academic Press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,「Chromatin」(P.M.WassarmanおよびA.P.Wolffe,編集),Academic Press,San Diego,1999、ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,「Chromatin Protocols」(P.B.Becker,編集)Humana Press,Totowa,1999を参照のこと。
【0038】
定義
「核酸」「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、線状または環状の高次構造で、一本鎖または二本鎖形態の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的に関しては、これらの用語をポリマーの長さに関する限定と解釈すべきではない。この用語は、天然ヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖、および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート主鎖)内で改変されるヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定ヌクレオチドのアナログは、同一の塩基対形成特異性を有し、すなわち、Aのアナログは、Tと塩基対を形成する。
【0039】
「ポリペプチド」「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指して互換可能に用いられる。この用語はまた、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログまたは改変誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0040】
「結合」とは、高分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的で、非共有結合的な相互作用を指す。結合相互作用が全体として配列特異的であるかぎり、結合相互作用の全ての構成要素が配列特異的である必要はない(例えば、DNA骨格中のリン酸残基との接触)。そのような相互作用は、一般に、10-6M-1以下の解離定数(Kd)によって特徴付けられる。「親和性」とは、結合強度を指し:結合親和性の増大は、Kdの低下と相関する。
【0041】
「結合タンパク質」とは、別の分子に非共有結合的に結合することが可能なタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)、および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合タンパク質の場合においては、それは、それ自体に結合する(その結果、ホモ二量体、ホモ三量体などを形成する)ことが可能であり、および/または異なるタンパク質の1つ以上の分子に結合することが可能である。結合タンパク質は、2種類以上の結合活性を有することができる。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合、およびタンパク質結合活性を有する。
【0042】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)とは、1つ以上のジンクフィンガー(それは、亜鉛イオンの配位によって安定化される構造を有する結合ドメイン内のアミノ配列の領域である)を通じて配列特異的な形でDNAを結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、しばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略称される。
【0043】
ジンクフィンガー結合ドメインは、所定のヌクレオチド配列に結合されるように「遺伝子操作する(engineered)」ことができる。ジンクフィンガータンパク質を遺伝子操作するための方法の非限定的な例は、設計(デザイン)および選択である。設計されたジンクフィンガータンパク質は、天然に存在しないタンパク質であり、その設計/組成は、主として合理的な基準からもたらされる。設計のための合理的基準としては、置換規則の適用、ならびに既存のZFP設計および結合データの情報を格納したデータベース中の情報を処理するためのコンピュータアルゴリズムの適用が挙げられる。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、および同第6,534,261号を参照のこと;また国際公開第98/53058号、同第98/53059号、同第98/53060号、同第02/016536号、および同第03/016496号も参照のこと。
【0044】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質は、天然には見出されないタンパク質であり、その産生は主に、ファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択などの実験的プロセスによってもたらされる。例えば、米国特許第5,789,538号、米国特許第5,925,523号、米国特許第6,007,988号、米国特許第6,013,453号、米国特許第6,200,759号、国際公開第95/19431号、国際公開第96/06166号、国際公開第98/53057号、国際公開第98/54311号、国際公開第00/27878号、国際公開第01/60970号、国際公開第01/88197号、および国際公開第02/099084号を参照のこと。
【0045】
「配列」という用語は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、それは、DNAであっても、またはRNAであってもよく;線状、環状または分岐状であってもよく、一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい。「ドナー配列」という用語は、ゲノム内に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2〜10,000長(またはそれらの間もしくはそれ以上の任意の整数)のヌクレオチド、好ましくは、約100〜1,000長(またはそれらの間の任意の整数値)のヌクレオチド、より好ましくは、約200〜500長のヌクレオチドであってもよい。
【0046】
「相同的非同一配列」とは、第二の配列とある程度の配列同一性を共有するが、それらの配列が第二の配列の配列とは同一ではない、第一の配列を指す。例えば、変異体遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドは、変異体遺伝子の配列に対して相同であってかつ非同一である。特定の実施形態においては、2つの配列間の相同性の程度は、通常の細胞機構を利用して、それらの間での相同組み換えを可能とするのに十分である。2つの相同な非同一配列は、任意の長さであってもよく、それらの非相同性の度合は、単一ヌクレオチドという小さなもの(例えば、ゲノム点突然変異を標的化相同組み換えによって修正するため)、または10キロベース以上の塩基という大きなもの(例えば、染色体中の所定の異所部位に遺伝子を挿入するため)であってもよい。相同非同一配列を含む2つのポリヌクレオチドが同一の長さである必要はない。例えば、20〜10,000個のヌクレオチドまたはヌクレオチド対の外来ポリヌクレオチド(すなわち、ドナーポリヌクレオチド)を用いてもよい。
【0047】
核酸およびアミノ酸の配列同一性を決定するための技術は、当該技術分野において公知である。典型的に、そのような技術としては、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、ならびにそれらの配列を第二のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較すること、が挙げられる。ゲノム配列もまた、この方法で決定し、比較することができる。一般に、同一性とは、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、厳密なヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸対応を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性パーセントを決定することによって比較することができる。2つの配列の同一性パーセントは、核酸またはアミノ酸配列を問わず、2つの整列された配列間の厳密な合致数を短い方の配列の長さで割り、100をかけたものである。典型的に、配列間の同一性パーセントは、少なくとも70〜75%、好ましくは、80〜82%、より好ましくは、85〜90%、さらに好ましくは、92%、より一層好ましくは、95%、最も好ましくは、98%の配列同一性である。
【0048】
あるいは、ポリヌクレオチド間の配列類似性の程度は、相同性領域の間の安定な二重鎖の形成を可能にする条件下でポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって、続いて一本鎖特異的なヌクレアーゼでの消化および消化されたフラグメントのサイズ決定によって決定され得る。2つの核酸、または2つのポリペプチド配列は、その配列が、上記の方法を用いて決定される場合、その分子の既定の長さにわたって、少なくとも約70%〜75%、好ましくは80%〜82%、より好ましくは85%〜90%、それより好ましくは92%、なおさらに好ましくは95%、そして最も好ましくは98%の配列同一性を示す場合、お互いに対して実質的に相同である。本明細書において用いる場合、実質的に相同なとはまた、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列を指す。
【0049】
「組み換え」とは、2つのポリヌクレオチド間で遺伝情報が交換されるプロセスを指す。本開示の目的に関して、「相同組み換え(HR)」とは、例えば、細胞において二本鎖切断の修復中に起こる、そのような交換の特殊な形態を指す。このプロセスには、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖断裂を受けた分子)のテンプレート修復に対して「ドナー」分子を用い、かつそれは、ドナーから標的への遺伝情報の移動をもたらすという理由で、「非交差遺伝子変換(non−crossover gene conversion)」または「ショートトラクト遺伝子変換(short tract gene conversion)」として、様々な名称で公知である。いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、そのような移動は、切断された標的とドナーとの間に形成されるヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ修正、および/または、標的の一部になる遺伝情報の再合成にドナーが用いられる「合成依存的鎖アニーリング」、および/または関連のプロセスを含み得る。そのような特殊なHRは、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチドに組み込まれるような、標的分子配列の変更をもたらす場合が多い。
【0050】
「切断」とは、DNA分子の共有結合骨格の破壊を指す。切断は、リン酸ジエステル結合の酵素的または化学的加水分解が挙げられるが、これらに限定されない、種々の方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断の両方とも可能であり、二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として生じ得る。DNA切断は、平滑末端または互い違いの(スタガード)末端のいずれかの産生を生じ得る。特定の実施形態においては、融合ポリペプチドが、標的化二本鎖DNA切断に用いられる。
【0051】
「切断ハーフドメイン」とは、第二のポリペプチド(同一または異なるいずれか)と併せて、切断活性(好ましくは、二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。「第一および第二の切断ハーフドメイン」、「+および−切断ハーフドメイン」および「右および左の切断ハーフドメイン」という用語は相互交換可能に用いて、二量体化する切断ハーフドメインの対を指す。
【0052】
「遺伝子操作された切断ハーフドメイン」とは、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の遺伝子操作された切断ハーフドメイン)と偏性ヘテロ二量体を形成するように改変された切断ハーフドメインを指す。
【0053】
「条件付き変異」とは、特定の許容される環境条件下で野生型切断活性、および特定の制限条件下で変異体切断活性を有する、変異である。条件付き変異は、冷温感受性であってもよく、ここでは変異は、低温の方では変更された切断活性を生じるが、より高い温度に曝された際は、切断活性は、おおむね野生型程度までもどる。逆に、条件付き変異は、熱感受性(「熱感受性」と呼ばれる場合が多い)であってもよく、ここでは野生型切断活性が、より低温でみられるが、より高い温度に曝された際に変更される。変更された切断活性は、増大した活性として現れても、または減少した活性として現れてもよい。
【0054】
「クロマチン」とは、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびに、ヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含めてタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大半は、ヌクレオソームの形態で存在し、そこでは、ヌクレオソームコアが、2つのヒストンH2A、H2B、H3およびH4のうちそれぞれ2つを含む八量体と会合した約150塩基対のDNAを含み;そしてリンカーDNA(生物に依存して長さはさまざま)がヌクレオソームコアの間に延在する。1分子のヒストンH1は、一般にリンカーDNAと会合する。本開示の目的に関して、「クロマチン」という用語は、原核性および真核性の両方のあらゆる種類の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンは、染色体およびエピソームクロマチンの両方を含む。
【0055】
「染色体」とは、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、その細胞のゲノムを含む全染色体の集合である、その核型によって特徴付けられる場合が多い。細胞のゲノムは、1つ以上の染色体を含んでもよい。
【0056】
「エピソーム」とは、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製する核酸、核タンパク質複合体、または他の構造である。エピソームの例としては、プラスミドおよび一定のウイルスゲノムが挙げられる。
【0057】
「アクセス可能領域、接近可能領域」とは、核酸に存在する標的部位が、標的部位を認識する外因性分子に結合され得る、細胞のクロマチン中の部位である。いかなる特定の理論によっても束縛されることは望まないが、アクセス可能領域とは、ヌムレオソーム構造へパッケージングされない領域であると考えられる。アクセス可能領域の別個の構造は、化学的および酵素的なプローブ例えば、ヌクレアーゼに対するその感受性によって検出され得る場合が多い。
【0058】
「標的部位」または「標的配列」とは、結合にとって十分な条件が存在する条件下で結合分子が結合するであろう核酸の一部を規定する、核酸配列である。例えば、配列5’−GAATTC−3’は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼの標的部位である。
【0059】
「外因性、外来」分子とは、通常は細胞内に存在しないが、1つ以上の遺伝学的、生化学的、または他の方法によって細胞内に導入することができる分子である。「通常は細胞内に存在」とは、細胞の特定の発生段階および環境条件に関して決定される。従って、例えば、筋の胚発生中のみに存在する分子は、成体筋細胞については外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞については外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全型内因性分子の機能性バージョン、または正常には機能する内因性分子の機能不全型バージョンを含んでもよい。
【0060】
外因性分子は、とりわけ、低分子、例えば、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成される低分子、または、高分子、例えば、タンパク質、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の任意の改変誘導体、または1つ以上の上記分子を含む任意の複合体であってもよい。核酸としては、DNAおよびRNAが挙げられ、それは一本または二本鎖であってもよく、線状、分岐状または環状であってもよく、任意の長さであってもよい。核酸としては、二重鎖を形成できる核酸、ならびに三重鎖形成核酸が挙げられる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照のこと。タンパク質としては、限定するものではないが、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが挙げられる。
【0061】
外因性分子は、内因性分子と同じの種類の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってもよい。例えば、外因性核酸は、感染ウイルスゲノム、細胞中に導入されたプラスミドもしくはエピソーム、または細胞内に通常は存在しない染色体を含んでもよい。細胞中に外因性分子を導入するための方法は、当業者には公知であり、これには限定するものではないが、脂質媒介移入(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介移入およびウイルスベクター媒介性の移入が挙げられる。
【0062】
対照的に、「内因性」分子とは、特定の環境条件下で特定の発生段階にある特定の細胞内に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、クロロプラストもしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含んでもよい。さらなる内因性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含んでもよい。
【0063】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が、好ましくは共有結合的に連結されている分子である。サブユニット分子は、同一の化学種の分子であってもよいし、または異なる化学種の分子であってもよい。第一の種類の融合分子の例としては、限定するものではないが、融合タンパク質(例えば、ZFP DNA結合ドメインと切断ドメインとの間の融合物)、および融合核酸(例えば、上記の融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられる。第二の種類の融合分子の例としては限定するものではないが、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、およびマイナーグルーブバインダー(minor groove binder)と核酸との間の融合物が挙げられる。
【0064】
細胞における融合タンパク質の発現は、細胞に融合タンパク質を送達することによって、または細胞に融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達し、そこで、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて融合タンパク質を生成することによって、生じ得る。トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチド連結はまた、細胞におけるタンパク質の発現に関与することができる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達の方法を、本開示の他所に提示する。
【0065】
本開示の目的に関して、「遺伝子」とは、遺伝子産物(以下参照のこと)をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含み、そのような調節配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているか否かは問わない。従って、遺伝子としては、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えば、リボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座制御領域が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0066】
「遺伝子発現」とは、遺伝子産物への遺伝子に含まれる情報の変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたは他の任意の種類のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物としてはまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集等のプロセスによって改変(修飾)されたRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチリル化、およびグリコシル化によって改変(修飾)されたタンパク質が挙げられる。
【0067】
遺伝子発現の「調節」とは、遺伝子の活性の変化を指す。発現の調節には、遺伝子活性化および遺伝子抑制を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0068】
「真核」細胞としては、限定するものではないが、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、およびヒト細胞が挙げられる。
【0069】
「目的の領域」とは、例えば、遺伝子または遺伝子内のもしくはそれに隣接する非コード配列などの、その中で外因性分子と結合することが望ましい細胞クロマチンの任意の領域である。結合は、標的DNA切断および/または標的組み換えの目的のためであってもよい。目的の領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官のゲノム(例えば、ミトコンドリア、クロロプラスト)、または感染ウイルスゲノム中に存在してもよい。目的の領域は、遺伝子のコード領域内であっても、転写された非コード領域(例えば、リーダ配列、トレーラー配列またはイントロンなど)内であっても、またはコード領域の上流または下流のいずれかにある非転写領域内であってもよい。目的の領域は、長さが単一のヌクレオチド対程度の小さなものから最大2,000個のヌクレオチド対の長さであっても、または任意の整数値のヌクレオチド対であってもよい。
【0070】
「作動可能な連結」および「作動可能に連結される」(または「作動可能に連結される」)という用語は、2つ以上の構成要素(例えば、配列エレメント)の並列であって、ここでこの構成要素が、両方の構成要素が正常に機能し、かつその構成要素の少なくとも1つが他の構成要素の少なくとも1つに発揮される機能を媒介し得ることを可能にするように配列されている並列に関して交換可能に用いられる。実例として、転写調節性配列、例えば、プロモーターは、転写調節性配列が、1つ以上の転写調節性因子の有無に応答してコード配列の転写のレベルを制御する場合、コード配列に対して作動可能に連結されている。転写調節性配列は一般には、コード配列とcisで作動可能に連結されるが、そこに直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーとは、たとえ連続していない場合でさえ、コード配列に対して作動可能に連結されている転写調節性配列である。
【0071】
融合ポリペプチドに関して、「作動可能に連結される」という用語は、それぞれの構成要素が、そのように連結されていない場合に、それが果たすのと同じ機能を他の構成要素に連動して実行するという事実を指し得る。例えば、ZFP DNA結合ドメインが切断ドメインに融合されている融合ポリペプチドに関して言えば、ZFP DNA結合ドメインおよび切断ドメインは、融合ポリペプチドにおいて、ZEPDNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することが可能で、一方で切断ドメインがその標的部位の近傍でDNAを切断することが可能である場合に、作動的連結状態にある。
【0072】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的なフラグメント」とは、タンパク質、ポリペプチド、または核酸であって、それらの配列が、全長タンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一ではないが、全長タンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一の機能を保持するものである。機能的フラグメントは、対応する天然分子より多くても、少なくても、または同じ数の残基を有してもよく、および/または1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含んでもよい。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当該技術分野において周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法は周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフト、または免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA切断は、ゲル電気泳動によってアッセイすることができる(Ausubelら、(上記)を参照のこと)。あるタンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイ、または相補性(遺伝的相補性および生化学的相補性の両方)によって決定することができる。例えば、Fieldsら、(1989)Nature 340:245〜246、米国特許第5,585,245号、およびPCT国際公開第98/44350号を参照のこと。
【0073】
遺伝子操作された切断ハーフドメイン
ホモ二量体化を最小化または妨げる、遺伝子操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン変異体とも呼ばれる)は、参照によりそれらの全内容が本明細書に組み込まれる、例えば米国特許出願公開第20050064474;同第20060188987号および米国特許出願公開第2008/0131962号に記載されている。FokIの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538位のアミノ酸残基は全て、FokI切断ハーフドメインの二量体化に影響を与えるための標的である。FokIタンパク質におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Wahら(1998)Proc.Nat’l Acad Sci USA 95:10654〜10569による。
【0074】
本明細書に記載されるのは、前に記載された遺伝子操作されたFokI切断ドメインおよび/または野生型切断ドメインに比較して増大した活性および特異性を示すFokIの遺伝子操作された切断ハーフドメインである。例示的な変異体切断ハーフドメインは表3に示す。例示的な遺伝子操作された切断ドメインは、表4に示す。特定の実施形態では、この切断ハーフドメインは、野生型に比較して少なくとも3つのアミノ酸残基の位置で変異を含む。例えば、特定の実施形態では、この切断ハーフドメインは、486、499および496位で変異を含む。他の実施形態では、この切断ハーフドメインは、490、538および537位で変異を含む。
【0075】
一実施形態では、490における変異は、Glu(E)をLys(K)で置換し;538における変異は、Ile(I)をLys(K)で置換し;537における変異は、His(H)をLys(K)またはArg(R)で置換し;486における変異はGln(Q)をGlu(E)で置換し;499における変異は、Ile(I)をロイシン(L)で置換し;496における変異はAsn(N)をAsp(D)またはGlu(E)で置換する。詳細には、本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、1つの切断ハーフドメインで490位(E→K)、538位(I→K)、および537位(H→KまたはH→R)を変異することによって調製されて、「E490K:I538K:H537K」(KKK)または「E490K:I538K:H537R」(KKR)と呼ばれる遺伝子操作された切断ハーフドメインが生じ、そして別の切断ハーフドメインでは、486位(Q→E)、499位(I→L)および496位(N→DまたはN→E)を変異することによって、「Q486E:I499L:N496E」(ELE)または「Q486E:I499L:N496D」(ELD)と命名される遺伝子操作された切断ハーフドメインが生じる。本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、異常な切断が最小化されるかまたは無効にされるが、野生型に比較して活性は維持されている、偏性ヘテロ二量体変異体を形成する。実施例を参照のこと。
【0076】
他の実施形態では、487位の変異は、Arg(R)をAsp(D)で置き換え、496位のAsn(N)は、1つの切断ハーフドメインでは、Asp(D)(R487D:N496Dまたは「DD」を生じるため)で置き換えられ、そして他の切断ハーフドメインでは、483位の野性型Asp(D)のArg(R)への変異、および537位の野性型His(H)のArg(R)での変異(D483R:H537Rまたは「RR」を生じるため)による。さらに他の実施形態では、487の変異は、Arg(R)をAsp(D)で置き換え;499位の変異は、Ile(I)をAla(A)で置き換え、そして496位では、Asn(N)は、Asp(D)で置き換えられ(1つの切断ハーフドメインで「R487D:N496D:I499A」を生じるため)、そして他の切断ハーフドメイン(またはDADおよびRVR)では、「D483R:H537R:I538V:」を生じる、483(D−>R)、538(I−>V)および537(H−>R)位での変異による。
【0077】
他の実施形態では、変異は、他のドメインで、例えば、418、432、441、481、523、527および/または559位で行われる。特定の実施形態では、変異は、418および441位で行われ、例えば、418位の野生型Ser(S)のPro(P)残基での置換、および441位の野性型Lys(K)のGlu(E)での置換(「S418P:K441E」または「Sharkey」として公知)であるか、またはPro(P)が418でSer(S)を置き換え、Leu(L)が432でPhe(F)を置き換え、Glu(E)が441でLys(K)を置き換え、His(H)が481でGln(Q)を置き換え、Tyr(Y)が523でHis(H)を置き換え、Asp(D)が527でAsn(N)を置き換え、そしてGln(Q)が539でLys(K)を置き換える(S418P:F432L:K441E:Q481H:H523Y:N527D:K539QまたはSharkey’として公知)。これらの変異は、例えば、以下のFokI変異体を生じるために上記に列挙されたドメインと任意の方法で組み合されてもよい:
(a)EL−S:S418P:K441E:Q486E:I499L
(b)KK−S:S418P:K441E:E490K:I538K
(c)ELD−S:S418P:K441E:Q486E:N496D:I499L
(d)KKK−S:S418P:K441E:E490K:H537K:I538K
(e)KKR−S:S418P:K441E:E490K:H537R:I538K
(f)DA−S:S418P:K441E:R487D:I499A
(g)RV−S:S418P:K441E:D483R:I538V
(h)DAD−S:S418P:K441E:R487D:N496D:I499A
(i)RVR−S:S418P:K441E:D483R:H537R:I538V
(j)DD−S:S418P:K441E:R487D:N496D
(k)RR−S:S418P:K441E:D483R:H537R。
【0078】
本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、任意の好適な方法を用いて、例えば、米国特許出願公開第20050064474号の実施例5、ならびに国際公開第07/014275号の実施例5および38に記載されるような、野生型切断ハーフドメイン(FokI)の部位特異的突然変異誘発法によって調製してもよい。
【0079】
融合タンパク質
本明細書に記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、任意の細胞における切断について部位を特異的に標的化するDNA結合タンパク質との融合タンパク質で有利に用いられる。
【0080】
特定の実施形態では、DNA結合タンパク質は、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)を含む。標的部位の選択;融合タンパク質(およびこれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのZFPおよび方法は、当業者に公知であって、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050064474号および同第20060188987号に詳細に記載される。
【0081】
いくつかの実施形態では、DNA結合ドメインは、植物の病原体Xanthomonas由来のTALエフェクター由来の遺伝子操作されたドメインである(Millerら.(2010)Nature Biotechnology,Dec 22[印刷前の電子出版];Bochら,(2009)Science 29 Oct 2009(10.1126/science.117881)ならびにMoscouおよびBogdanove,(2009)Science 29 Oct 2009(10.1126/science.1178817)を参照のこと);また、その開示が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第61/395,836号(2010年5月17日出願);同第61/409,421号(2010年8月21日出願);同第61/45,121号(2010年10月13日出願);同第61/459,891号(2010年12月20日出願)および出願番号未割当(2011年2月2日出願)を参照のこと。いくつかの実施形態では、TALE DNA結合ドメインは、TALEヌクレアーゼ(TALEN)を生じる、記載されるとおりのFokI切断に対して融合される。
【0082】
本明細書に記載されるヌクレアーゼ(例えば、ZFN)は、任意の適切な手段によって標的細胞に送達され得る。ジンクフィンガーを含むタンパク質を送達する方法は、例えば、米国特許第6,453,242号;同第6,503,717号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,607,882号;同第6,689,558号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号に説明されており、それらの全ての開示は、参照により全内容が本明細書に組み込まれる。
【0083】
本明細書に記載されるような融合タンパク質ヌクレアーゼはまた、1つ以上のヌクレアーゼ(例えば、ZFNまたはTALEN)をコードする配列を含むベクターを用いて送達され得る。任意のベクター系を用いてもよく、これには限定するものではないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどが挙げられる。また、その全体が本明細書に参照により組み込まれる、米国特許第6,534,261号;同第6,607,882号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号も参照のこと。
【0084】
従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子移入方法は、細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織において遺伝子操作された切断ドメインを含んでいる、ヌクレアーゼ(例えば、ZFNまたはTALEN)をコードする核酸を導入するために用いられ得る。このような方法は、インビトロでこのような核酸を細胞に投与するためにも用いられ得る。特定の実施形態では、1つ以上のヌクレアーゼをコードする核酸が、インビボまたはエキソビボでの遺伝子治療用途のために投与される。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、裸の核酸、および、リポソームまたはポロキサマーのような送達ビヒクルと複合された核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、細胞への送達後にエピソームまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有する、DNAおよびRNAウイルスが挙げられる。遺伝子治療手順の概説に関しては、Anderson,Science 256:808−813(1992);NabelおよびFelgner,TIBTECH 11:211−217(1993);MitaniおよびCaskey,TIBTECH 11:162−166(1993);Dillon,TIBTECH 11:167−175(1993);Miller,Nature 357:455−460(1992);Van Brunt,Biotechnology 6(10):1149−1154(1988);Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience 8:35−36(1995);KremerおよびPerricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31−44(1995);Haddadaら、in Current Topics in Microbiology and Immunology DoerflerおよびBoehm(編集)(1995);ならびにYuら、Gene Therapy 1:13−26(1994)を参照のこと。
【0085】
核酸の非ウイルス性の送達の方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロゾーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸の結合体、裸のDNA、人工ビリオン、およびDNAの因子増強性取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron2000系(Rich−Mar)を用いるソノポレーション(sonoporation)もまた、核酸の送達に用いられ得る。
【0086】
追加の例示的な核酸送達システムとしては、Amaxa Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville,Maryland)およびBTX Molecular Delivery Systems(Holliston,MA)によって提供されるシステムが挙げられる。
【0087】
リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号;米国特許第4,946,787号;および米国特許第4,897,355号)に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの有効なレセプター認識リポフェクションに好適なカチオン性および中性脂肪としては、Felgner、国際公開第91/17424号、国際公開第91/16024号のものが挙げられる。送達は、細胞(エクスビボ投与)または標的組織(インビボ投与)に対してであってもよい。
【0088】
免疫脂質複合体などの標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal,Science 270:404〜410(1995);Blaeseら、Cancer Gene Ther.2:291〜297(1995);Behrら、Bioconjugate Chem.5:382〜389(1994);Remyら、Bioconjugate Chem.5:647〜654(1994);Gaoら、Gene Therapy 2:710〜722(1995);Ahmadら、Cancer Res.52:4817〜4820(1992);米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照のこと)。
【0089】
本明細書に記載されるような遺伝子操作された切断ハーフドメインを含むヌクレアーゼ(例えば、ZFNまたはTALE)をコードする核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスベースのシステムの使用は、体内の特定の細胞に対してウイルスを標的化するためおよび核へウイルスペイロードを輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接送達されてもよいし(インビボ)、またはそれらは、インビトロで細胞を処置するために用いられてもよく、改変された細胞が患者に投与される(エキソビボ)。本明細書に記載されるようなヌクレアーゼの送達のための従来のウイルスベースのシステムとしては限定するものではないが、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアおよび単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。宿主ゲノム内の組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルス遺伝子移入方法を用いて可能であり、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす場合が多い。さらに、高い形質導入効率が多くの異なる細胞種および標的組織で観察されている。
【0090】
レトロウイルスの指向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み込むことによって変更することができ、それによって、標的細胞の潜在的な標的群を拡張させる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させることが可能であり、かつ典型的に、高ウイルス価を産生する、レトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子送達システムの選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6〜10kbの外因性配列のパッケージング能力を有する、シス作用の長末端反復から構成される。最小限のシス作用のLTRは、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、次いでそれらを用いて、治療遺伝子を標的細胞内に組み込みんで、永久的な導入遺伝子の発現をもたらす。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組み合わせに基づくベクターが挙げられる(例えば、Buchscherら、J.Virol.66:2731〜2739(1992);Johannら、J.Virol.66:1635〜1640(1992);Sommerfeltら、Virol.176:58〜59(1990);Wilsonら、J.Virol.63:2374〜2378(1989);Millerら、J.Virol.65:2220〜2224(1991);PCT/US94/05700号を参照のこと)。
【0091】
ZFP融合タンパク質の一過性の発現が好ましい適用では、アデノウイルスベースの系を用いてもよい。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞種で極めて高い形質導入効率であり得、細胞分裂は必要としない。このようなベクターでは、高力価かつ高レベルの発現が得られた。このベクターは、比較的単純なシステムで大量に産生され得る。アデノ随伴ウイルス(「AAV」ベクターがまた、例えば、核酸およびペプチドのインビトロ産生において、ならびにインビボおよびエキソビボの遺伝子治療手順のために、標的核酸で細胞を形質導入するために用いられる(例えば、Westら、Virology 160:38−47(1987);米国特許第4,797,368号;国際公開第93/24641;Kotin,Human Gene Therapy 5:793−801(1994);Muzyczka,J.Clin.Invest.94:1351(1994)を参照のこと)。組み換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol.Cell.Biol.5:3251−3260(1985);Tratschin,ら、Mol.Cell.Biol.4:2072−2081(1984);Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466−6470(1984);およびSamulskiら、J.Virol.63:03822−3828(1989)を含めて多数の刊行物に記載される。
【0092】
少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが現在、臨床試験における遺伝子移入のために利用可能であり、これは、形質導入因子を生成するためにヘルパー細胞株中に挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性に関与するアプローチを利用する。
【0093】
pLASNおよびMFG−Sとは、臨床試験で用いられたレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、Blood 85:3048−305(1995);Kohnら、Nat.Med.1:1017−102(1995);Malechら、PNAS 94:22 12133−12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療トライアルで用いされた最初の治療ベクターであった(Blaeseら、Science 270:475−480(1995))。50%以上の形質導入効率が、MFG−Sパッケージングベクターで観察された(Ellemら、Immunol Immunother.44(1):10−20(1997);Dranoffら、Hum.Gene Ther.1:111−2(1997)。
【0094】
組み換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損および非病原性のパルボウイルスアデノ随伴2型ウイルスに基づいた見込みのある別の遺伝子送達系である。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAVの145bpの逆方向末端反復のみを保持するプラスミド由来である。形質導入された細胞のゲノムへの組み込みに起因する、効率的な遺伝子移入および安定な導入遺伝子送達は、このベクターシステムの重要な特徴である。(Wagnerら、Lancet 351:9117 1702−3(1998),Kearnsら、Gene Ther.9:748−55(1996))。
【0095】
複製欠損組み換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で産生することが可能であり、かつ多数の異なる細胞種に容易に感染し得る。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAdE1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換するように、遺伝子操作され;その後、複製欠損性ベクターが、欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増幅される。Adベクターは、非分裂の分化した細胞、例えば、肝臓、腎臓、および筋肉に見られるものなどを含む、複数の種類の組織をインビボで形質導入し得る。従来のAdベクターは、大きな搬送能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注入を用いる抗腫瘍免疫のポリヌクレオチド治療に関与する(Stermanら、Hum.Gene Ther.7:1083〜9(1998))。臨床試験における遺伝子移入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例としては、Roseneckerら、Infection 24:1 5〜10(1996);Stermanら、Hum.Gene Ther.9:7 1083〜1089(1998)、Welshら、Hum.Gene Ther.2:205〜18(1995)、Alvarezら、Hum.Gene Ther.5:597〜613(1997);Topfら、Gene Ther.5:507〜513(1998)、Stermanら、Hum.Gene Ther.7:1083〜1089(1998)が挙げられる。
【0096】
特定の実施形態では、ベクターはアデノウイルスベクターである。従って、本明細書に記載されるのは細胞に異種配列(例えば、ジンクフィンガーまたはTALEヌクレアーゼ(ZFNまたはTALENs))を導入するためのアデノウイルス(Ad)ベクターである。
【0097】
本出願で用いられ得るAdベクターの非限定的な例としては、組み換え(例えば、E1−欠失)、条件付き複製コンピテント(例えば、腫瘍崩壊性)および/または複製コンピテントなAdベクター(ヒトまたは非ヒト血清型由来)(例えば、Ad5、Ad11、Ad35、またはブタアデノウイルス−3);ならびに/あるいはキメラAdベクター(例えば、Ad5/35)または指向性変更のAdベクターであって、遺伝子操作されたファイバー(例えば、ノブ(knob)またはシャフト(shaft))タンパク質(例えば、ノブタンパク質のHIループ内のペプチド挿入)を有するベクターが挙げられる。また有用なのは、DNAペイロードの免疫原性を低下し、サイズを増大するための、「ガットレス(gutless)」Adベクター、例えば、Adベクター(全てのアデノウイルス遺伝子が除去された)である。これによって、例えば、ZFNおよびドナー配列をコードする配列の同時送達が可能になる。このようなガットレス(gutless)ベクターは特に、ドナー配列が標的化組み込みを介して組み込まれるべき大きい導入遺伝子を含む場合、有用である。
【0098】
複製欠損組み換えアデノウイルスベクター(Ad)は高力価で産生することが可能で、かつ多数の異なる細胞種に容易に感染し得る。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAdE1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換し;その後、複製欠損性ベクターが、1つ以上の欠失した遺伝子機能をトランスで供給する細胞において増幅されるように、遺伝子操作される。例えば、ヒト293細胞はE1機能を供給する。Adベクターは、非分裂の分化した細胞、例えば、肝臓、腎臓、および筋肉に見出されるものを含めて、複数の種類の組織をインビボで形質導入し得る。従来のAdベクターは、大きな搬送能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注入を用いる抗腫瘍免疫のポリヌクレオチド治療に関与する(Stermanら、Hum.Gene Ther.7:1083〜1089(1998))。
【0099】
臨床試験における遺伝子移入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例としては、Roseneckerら、Infection 24:1 5〜10(1996);Welshら、Hum.Gene Ther.2:205〜18(1995);Alvarezら、Hum.Gene Ther.5:597〜613(1997);Topfら、Gene Ther.5:507〜513(1998)が挙げられる。
【0100】
特定の実施形態では、Adベクターは、2つ以上の異なるアデノウイルスゲノムからの配列を含有する、キメラアデノウイルスベクターである。例えば、Adベクターは、Ad5/35ベクターであってもよい。Ad5/35は、1つ以上のAd5のファイバー(繊維)タンパク質遺伝子(ノブ、シャフト、テール、ペントン)をB群のアデノウイルス、例えば、Ad35などからの対応するファイバータンパク質と交換することによって作成される。Ad5/35ベクターおよびこのベクターの特性は、例えば、Niら(2005)Hum.Gene Ther.16:664−677;Nilssonら(2004)Mol.Ther.9:377−388;Nilssonら(2004)J.Gene.Med.6:631−641;Schroersら(2004)Exp.Hematol.32:536−546;Seshidharら(2003)Virology 311:384−393;Shayakhmetovら(2000)J.Virol.74:2567−2583;およびSovaら(2004)Mol.Ther.9:496−509に記載されている。パッケージング細胞を用いて、宿主細胞を感染させることが可能なウイルス粒子を形成する。このような細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするΨ2細胞またはPA317が挙げられる。遺伝子治療に用いられるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングするプロデューサー細胞株によって生成される。典型的には、これらのベクターは、パッケージングおよびその後の宿主への組み込みに必要とされる最小限のウイルス配列(適用可能な場合)、発現されるべきタンパク質をコードする発現カセットによって置換されている他のウイルス配列を含む。欠損しているウイルス機能は、パッケージングする細胞株によってトランスで提供される。例えば、遺伝子治療に用いられるAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノム中へのパッケージングおよび組み込みに必要とされる、AAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子すなわち、repおよびcapをコードするが、ITR配列を欠失するヘルパープラスミドを含む細胞株内にパッケージングされる。この細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスで感染させられる。このヘルパーウイルスは、ヘルパープラスミドからAAVベクターの複製、およびAAV遺伝子の発現を促進する。このヘルパープラスミドは、ITR配列の欠失のせいで、有意な量ではパッケージングされない。アデノウイルスの汚染は、例えば、アデノウイルスの方がAAVよりも鋭敏である熱処理によって低減することができる。
【0101】
多くの遺伝子治療適用において、遺伝子治療ベクターが高度の特異性で特定の細胞型に送達されることが望ましい。従って、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上のウイルスコートタンパクとの融合タンパク質としてリガンドを発現させることによって、所与の細胞型に対する特異性を有するように改変(修飾)することができる。このリガンドは、目的の細胞型上に存在することが公知のレセプターに対する親和性を有するように選択される。例えば、Hanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA92:9747〜9751(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスが、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現させるように修飾することができ、その組み換えウイルスが、ヒト上皮成長因子レセプターを発現する特定のヒト乳癌細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞がレセプターを発現し、ウイルスが細胞表面レセプターのためのリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス標的細胞対にまで及び得る。例えば、線状ファージは、事実上、任意の選択された細胞レセプターに特異的な結合親和性を有する抗体フラグメント(例えば、FABまたはFv)を提示するように遺伝子操作することができる。上記の説明は、主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターは、特異的標的細胞による取り込みを好む、特異的な取り込み配列を含むように遺伝子操作することができる。
【0102】
遺伝子治療ベクターは、代表的には全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または頭蓋内の注入)または局所適用によって、下に記載されるように局所的に、個々の患者への投与によってインビボで送達されてもよい。あるいは、ベクターは、細胞に対して、エキソビボで、例えば、個人の患者から移植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)または万能ドナーの造血幹細胞に送達され、続いて、通常、ベクターを組み込んだ細胞の選択後、この細胞が患者へ再移植されてもよい。
【0103】
診断、研究、または遺伝治療のためのエキソビボでの細胞のトランスフェクション(例えば、宿主生物体へのトランスフェクト細胞の再注入を介する)は、当業者には周知である。好ましい実施形態においては、細胞は、被験体生物から単離され、ZFNまたはTALEN核酸(遺伝子またはcDNA)でトランスフェクトされ、被験体生物(例えば、患者)内に再注入して戻される。エキソビボトランスフェクションに好適な種々の細胞型は、当業者には周知である(例えば、Freshneyら、Culture of Animal Cells,A Manual of Basic Technique(第3版.1994)、および患者からの細胞をどのように単離し、かつ培養するかの考察のために本明細書に引用した参考文献を参照のこと)。
【0104】
一実施形態においては、幹細胞は、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためのエキソビボ手順に用いられる。幹細胞を用いる利点とは、それらがインビトロで他の細胞型に分化することができるか、または哺乳動物(細胞のドナーなど)に導入して、それらの細胞を骨髄内に移植することができるということである。GM−CSF、IFN−γ、およびTNF−αなどのサイトカインを用いて、CD34+細胞をインビトロで臨床的に重要な免疫細胞型に分化するための方法は、公知である(イナバ(Inaba)ら、J.Exp.Med.176:1693〜1702(1992)を参照のこと)。
【0105】
幹細胞は、公知の方法を用いて、形質導入および分化のために単離される。例えば、幹細胞は、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR−1(顆粒球)、およびIad(分化された抗原提示細胞)などの不要細胞を結合する抗体で骨髄細胞をパンニングすることによって、骨髄から単離される(Inabaら、J.Exp.Med.176:1693〜1702(1992)を参照のこと)。ある場合には、幹細胞とは誘導性の多能性幹細胞(iPSC)である。
【0106】
治療用ZFPまたはTALE核酸を含むベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)はまた、インビボでの細胞の形質導入のために、生物体に直接投与することもできる。あるいは、裸のDNAを投与することができる。投与は、限定するものではないが、注射、注入、局所適用、およびエレクトロポレーションを含めて、血液または組織細胞との最終接触に分子を導入するために通常用いられる任意の経路による。そのような核酸を投与する適切な方法は、利用可能でかつ当業者に周知であり、2つ以上の経路を用いて特定の組成物を投与することができるが、特定の経路は、別の経路よりも即時的かつ有効な反応を提供し得る場合が多い。
【0107】
DNAを造血幹細胞に導入する方法は、例えば、米国特許第5,928,638号に開示されている。造血幹細胞、例えば、CD34+細胞への導入遺伝子の導入に有用なベクターとしては、アデノウイルス35型が挙げられる。
【0108】
免疫細胞(例えば、T細胞)への導入遺伝子の導入に好適なベクターとしては、非組み込みレンチウイルスベクターが挙げられる。例えば、Oryら、(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:11382〜11388;Dullら、(1998)J.Virol.72:8463〜8471、Zufferyら、(1998)J.Virol.72:9873〜9880;Follenziら、(2000)Nature Genetics 25:217〜222を参照のこと。
【0109】
薬学的に許容される担体は、投与されている特定の組成物、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的には決定される。従って、下記に説明するように、使用可能な多種多様な適切な薬学的組成物の処方物が存在する(例えば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences,第17版,1989を参照のこと)。
【0110】
上記のとおり、開示される方法および組成物は、限定するものではないが、原核生物細胞、真菌細胞、古細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳類細胞、およびヒト細胞を含む、任意の種類の細胞に用いることができる。タンパク質発現に適切な細胞株は、当業者には公知であり、限定するものではないが、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、perC6、昆虫細胞、例えば、Spodoptera fugiperda(ツマジロクサヨトウ)(Sf)、および真菌細胞、例えば、Saccharomyces、PischiaおよびSchizosaccharomycesが挙げられる。これらの細胞株の子孫、変種、および誘導体もまた用いられてもよい。
【0111】
用途(適用)
開示される切断ドメインは、DNAを切断し、オフターゲット部位切断を最小化する(野性型を含むDNA結合ドメインまたはホモ二量体化切断ドメインに比較して)ために、ジンクフィンガータンパク質またはTAL結合ドメイン(それぞれ、ZFNまたはTALENを生じる)などのDNA結合ドメインと組み合わせて有利に用いられる。切断は、細胞のクロマチンにおける目的の1つ以上の領域で(例えば、変異体または野生型のいずれかの遺伝子における、例えば、ゲノムにおける所望の部位または所定の部位で)であってもよく;ゲノム配列(例えば、細胞クロマチンの目的の領域)を相同な非同一配列で置き換えるためであってもよく(すなわち、標的化組み換え);ゲノム中の1つ以上の部位でDNAを切断することによってゲノム配列を欠失して、この切断部位を次に非相同末端結合(NHEJ)によって連結するためであってもよく;相同組み換えを容易にする細胞因子を選択するためであってもよく;および/または野性型配列を変異体配列で置き換えるため、もしくはある対立遺伝子を異なる対立遺伝子に変換するためであってもよい。このような方法は、詳細には、本明細書にその全体が参照により組み込まれる、例えば、米国特許出願公開第20050064474号;国際公開第07/014275号に記載される。
【0112】
従って、開示される遺伝子操作された切断ハーフドメインは、特異的に標的化される切断が所望されるか、および/または任意のゲノム配列を相同な非同一の配列で置き換えるための任意の方法について、任意のZFNまたはTALENで用いられ得る。例えば、変異体ゲノム配列は、その野生型の対応物によって置き換えられてもよく、それによって、例えば、遺伝子疾患、遺伝性の障害、癌および自己免疫疾患の処置のための方法が提供される。同様に、ある遺伝子の1つの対立遺伝子は、本明細書に開示される標的化組み換えの方法を用いて異なる対立遺伝子によって置き換えられ得る。実際、特定のゲノム配列に依存する任意の病理学は、任意の方式で、本明細書に開示される方法および組成物を用いて修正または緩和され得る。
【0113】
例示的な遺伝性の疾患としては、限定するものではないが、軟骨形成不全症、色覚異常、酸性マルターゼ欠損、アデノシン・デアミナーゼ欠損(OMIM番号102700)、副腎白質ジストロフィー、アイカルディ症候群、α−1抗トリプシン欠乏、α−セラセミア、アンドロゲン不感性症候群、アペール症候群、催不整脈性右室異形成、異形成、毛細血管拡張性運動失調、バース症候群、β−サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナヴァン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、猫鳴き症候群、嚢胞性線維症、有痛脂肪症、外胚葉異形成症、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維形成異常症、脆弱性X症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、ヘモクロマトーシス、β−グロビン(HbC)の6番目のコドンにおけるヘモグロビンC突然変異、血友病、ハンチントン病、フルラー症候群、低ホスファターゼ血症、クラインフェルター症候群、クラッペ病、ランガー・ギーディオン症候群、白血病接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、大脳白質萎縮症、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症(MPS)、爪・膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン・ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダーウィリ症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、サンフィリポ症候群、重度複合免疫不全症(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス・マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ・サックス病、血小板減少性橈骨欠損症(TAR)症候群、トレチャー・コリンズ症候群、トリソミー、結節硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ワーデンバーグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット・アルドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖性症候群(XLP、OMIM番号308240)が挙げられる。
【0114】
標的化DNA切断および/または相同組み換えによって処置され得る追加の例示的な疾患としては、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病、およびテイ・サックス病)、ムコ多糖症(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球病、HbC、α−サラセミア、β−サラセミア)、および血友病が挙げられる。
【0115】
このような方法によってまた、遺伝子疾患を処置するための宿主における感染(ウイルスまたは細菌の感染)の処置が可能になる(例えば、ウイルスまたは細菌のレセプターの発現をブロックすること、それによって宿主生物体における感染および/または伝播を予防することによって)。
【0116】
感染性または組み込みされたウイルスゲノムの標的化切断を用いて、宿主内のウイルス感染を処置してもよい。さらに、ウイルスのレセプターをコードする遺伝子の標的化切断を用いて、そのようなレセプターの発現をブロックして、それによって、宿主生物体におけるウイルス感染および/またはウイルスの伝播を防止してもよい。ウイルスレセプター(例えば、HIVのCCR5およびCXCR4レセプター)をコードする遺伝子の標的化突然変異誘発を用いて、それらのレセプターがウイルスに結合できないようにして、それによって、新たな感染を防止し、かつ既存の感染の伝播を遮断してもよい。例えば、米国特許出願公開第2008/015996号を参照。標的化され得るウイルスまたはウイルスレセプターの非制限な例としては、HSV−1およびHSV−2などの単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)、HHV6およびHHV7が挙げられる。肝炎科のウイルスとしては、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、Δ肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、およびG型肝炎ウイルス(HGV)が挙げられる。他のウイルスまたはそれらのレセプターとしては限定するものではないが、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス等);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど);オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルスのA型、B型、C型など);ブンヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科;レンチウイルス科(例えば、HTLV−I;HTLV−II;HIV−1(HTLV−III、LAV、ARV、hTLRなどとしても公知)、HIV−II);サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトパピロマーウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、およびダニ媒介性脳炎ウイルスが標的化され得る。これらおよび他のウイルスの説明については、例えば、Virology,第3版(W.K.Joklik編集.1988)、Fundamental Virology,第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe,編集、1991)を参照のこと。HIVのレセプターには、例えば、CCR−5およびCXCR−4が挙げられる。
【0117】
従って、本明細書に記載されるようなヘテロ二量体切断ドメイン改変体は、遺伝子修飾の適用においてZFN特異性を改善するための広範な有用性を提供する。これらの改変体切断ドメインは、任意のZFN二量体のインビボ特異性を改善するための、部位指向性の突然変異誘発またはサブクローニングにいずれかによって、任意の既存のZFN中に容易に組み込まれ得る。
【0118】
上記のように、本明細書に記載される組成物および方法は、遺伝子組み換え、遺伝子修正および遺伝子破壊のために用いられ得る。遺伝子組み換えの非限定的な例としては、相同指向修復(HDR)ベースの標的化組み込み;HDRベースの遺伝子修正;HDRベースの遺伝子組み換え;HDRベースの遺伝子破壊;NHEJベースの遺伝子破壊および/またはHDR、NHEJ、および/もしくは一本鎖アニーリング(SSA)の組み合わせが挙げられる。一本鎖アニーリング(Single−Strand Annealing)(SSA)とは、2つの相補性領域を曝すための5’−3’エキソヌクレアーゼによるDSBの切除によって同じ方向で生じる2つの反復配列の間の二本鎖断裂の修復を指す。2方向のリピートをコードする一本鎖は次にお互いにアニーリングして、アニーリングされた中間体が処理され、その結果一本鎖テール(任意の配列にアニーリングされない一本鎖DNAの一部)が消化されて、ギャップがDNAポリメラーゼによって埋められ、そしてDNA末端が再結合される。これによって、直接反復の間に位置する配列の欠失が生じる。
【0119】
切断ドメイン(例えば、ZFN)を含む組成物、および本明細書に記載される方法はまた、種々の遺伝子疾患および/または感染性疾患の処置に用いられてもよい。
【0120】
この組成物および方法は、幹細胞ベースの治療に適用されてもよく、これには、限定するものではないが:ショートパッチ遺伝子変換または一遺伝子の遺伝子治療のための標的化組み込みによる体細胞変異の修正;ドミナントネガティブ対立遺伝子の破壊;細胞への病原体の侵入または増殖性感染に必要な遺伝子の破壊;機能的な組織の分化または形成を促進する遺伝子活性を、例えば、調節することによる、組織遺伝子操作の増強;ならびに/あるいは機能的な組織の分化または形成を促進する遺伝子活性の破壊;例えば、幹細胞が特定の系列の経路に分化することを促進するための分化をブロックする遺伝子を、破壊すること、幹細胞分化を刺激し得る遺伝子またはsiRNA発現カセットの標的化挿入、幹細胞分化をブロックし、かつ多能性の良好な拡大および維持を可能にし得る遺伝子またはsiRNA発現カセットの標的化挿入、および/または容易なマーカーで幹細胞の分化状態をスコア付けすること、および培地、サイトカン、増殖条件、遺伝子の発現、siRNA、shRNAもしくはmiRNA分子の発現、細胞表面マーカーもしくは薬物に対する抗体の曝露がこの状態をどのように変化するかスコア付けすることを可能にする多能性もしくは分化状態のマーカーである内因性遺伝子とインフレームでのレポーター遺伝子の標的化挿入によって、分化をブロックまたは誘導すること;体細胞核移入であって、例えば、患者自身の体細胞が単離され、意図される標的遺伝子が、適切な方式で改変され得、細胞クローンが生成され(およびゲノムの安全性を保証するために品質管理され)、そしてこれらの細胞由来の核が単離され未受精卵に移入されて、患者特異的なhES細胞が生成され、これが患者への移植の前に直接注入または分化されて、それによって組織拒絶が軽減または排除され得る、体細胞移入;MHCレセプターをノックアウトすること(例えば、免疫学的同一性が減少するかまたは全体として排除された細胞を生成するため)による万能幹細胞;が挙げられる。この手順のための細胞種としては、限定するものではないが、T細胞、B細胞、造血幹細胞、および胚性幹細胞が挙げられる。さらに、患者自身の体細胞からこれも生成される、誘導された多能性幹細胞(iPSC)を用いてもよい。従って、これらの幹細胞またはそれらの誘導体(分化した細胞の種類または組織)は、それらの起源にも組織適合性にもかかわらず、任意の人に移植可能であり得る。
【0121】
この組成物および方法はまた、体細胞治療(例えば、MHCまたはウイルスレセプターをノックアウトすることによる(上記を参照)、自己細胞治療および/または万能T細胞)のために用いられ得、それによって、生物学的特性を増強するために改変されたT細胞のストックの産生を可能にする。このような細胞は、T細胞のドナー供給源およびレシピエントに対するそれらの組織適合性に依存して種々の患者に注入され得る。
【0122】
治療適用に加えて、本明細書に記載される改変体によって得られる特異性の増大は、ZFNに用いられる場合、作物の遺伝子操作、細胞株の遺伝子操作および疾患モデルの構築のために用いられ得る。偏性ヘテロ二量体切断ハーフドメインによって、特にホモ二量体活性が有効性を制限する場合、ZFN特性を改善するための直接的な手段が提供される。
【0123】
記載される遺伝子操作された切断ハーフドメインはまた、介在する領域を欠失するか、または2つの特異的な遺伝子座を一挙に変更するかのために、複数の標的で同時切断を要する遺伝子修飾プロトコールで用いられてもよい。2つの標的での切断は、潜在的には10個の活性なZFNの組み合わせを生じ得る、4つのZFNの細胞発現を要する。このような適用のために、野性型ヌクレアーゼドメインのこれらの新規な改変体の置換は、所望されない組み合わせの活性を排除し、オフターゲット切断の機会を減じる。特定の所望のDNA標的での切断にZFN対A+Bの活性を要し、かつ第二の所望のDNA標的での同時の切断にZFN対X+Yの活性を要するならば、本明細書に記載される変異体の使用は、AとAとの対形成、AとXとの対形成、AとYとの対形成などを妨げ得る。従って、これらのFokI変異は、「非正統的な(illegitimate)」対形成の結果として非特異的な切断活性を低減し、ZFNのさらに効率的な直交の変異体対の生成を可能にする(共同所有の米国特許出願公開第20080131962号および同第20090305346号を参照のこと)。
【0124】
遺伝子操作された切断ハーフドメインについて記載された適用に加えて、本明細書に記載される条件付き変異について多くの適用もまた存在する。特定された低温感受性の変異は、変異をコードする核酸の組み込まれたコピーを担持するトランスジェニック生物を作成するために用いられ得る。このような変異を担持する植物は、切断活性が冷温で休止するような変異体表現型を提示する。より高温にシフトされた際、融合は、活性な切断活性を提示する。これらの変異体生物体は、育種目的のための株を作成するために用いられ得てもよく、ここでは、低温感受性変異を含む系統が特定の標的を担持する系統と交配され得、その結果この交配の子孫がより高温にシフトされた場合、標的の切断が生じる。これによって、このようなプロセスの有効性が増大する。なぜなら、所望の結果を達成するために必要なドナーまたは融合タンパク質のいずれかでの植物の形質転換の数が減少するからである。同じ種類のシナリオがまた熱感受性の条件付き変異体について想定され得る。
【0125】
本明細書に言及される全ての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
明確性および理解の目的のために、図示および実施例によってある程度詳細に開示を行ってきたが、種々の変化および改変が、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、実践され得ることが当業者に明白になる。従って、前述の説明および実施例は、限定と解釈されるべきではない。
「実施例」
【実施例1】
【0127】
ZFNの調製
CCR5、53BP1、GR、KDR、RIPK1、CXCR4およびPD−1に標的化されたZFNは、本質的に、Urnovら、(2005)Nature 435(7042):646−651,Perezら、(2008)Nature Biotechnology 26(7):808−816、および米国特許出願公開第2008/0131962号に記載のとおり、設計して、プラスミドベクター中に組み込むか、またはSigma Aldrichから入手した。これらのZFNを構築して、Millerら.(2007)Nat.Biotechnol.25:778−785および米国特許出願公開第20050064474および国際公開第2005/014791号に記載のようにELISAおよびSurveyor(商標)(Transgenomics)Cel−1アッセイ(「Cel−1」)によって試験した。さらに、GRに標的化されるZFNについては、米国特許出願公開第2008/0188000号、およびPD−1に標的化されるZFNに関しては米国特許仮出願第61/281,432号、CCR5特異的なZFNに関しては米国特許出願公開第:2008/0159996号、およびCXCR4−特異的なZFNに関しては、米国特許出願第12/661,539号を参照のこと。
【0128】
RIPK1、KDRおよび53BP1に標的化されたZFPの特異的な例は、表1に開示される。この表の第一列は、ZFPの内部参照名(数)である。「F」とは、フィンガーを指し、「F」に続く数は、どのジンクフィンガーであるかを指す(例えば、「F1」は、フィンガー1を指す)。表2は、標的遺伝子上の標的結合部位を列挙する。ZFN認識らせんに接触する認識部位中のヌクレオチドは、大文字で示し;接触しないヌクレオチドは、小文字で示す。
【表1】
【表2】
【実施例2】
【0129】
変異体FokI ZFNの遺伝的スクリーニング
モデル系としてSaccharomyces cerevisiaeを用いて、本発明者らは、低温で極めて低減されるが、高温では十分な切断活性を有する低温感受性の表現型を示すZFN変異体を単離した。低温変異体が特に興味深い。なぜなら、歴史的に、それらは、多量体タンパク質複合体のサブユニットをコードする遺伝子中に存在することが示されているからである。これらの変異体は、低温でタンパク質−タンパク質の相互作用に優先的に影響する。従って、このクラスの変異体を単離することによって、二量体化インターフェース内で重要な残基を特定する空でない(non−null)変異が明らかになった。
【0130】
一本鎖アニーリング(SSA)レポーター株および変異体ライブラリー構築は以下のように行った。FokIヌクレアーゼドメインのランダム突然変異誘発は、変異性(エラープローン(error−prone)PCRを用いて行い、および変異体のライブラリーは、Saccharomyces cerevisiaeにおけるギャップ修復によって構築した。要するに、レポーター株は、突然変異誘発のPCRフラグメント(FokIドメイン)およびこのPCRフラグメントの末端でベクターの末端がDNA配列を共有するように調製した直線化プラスミドベクターで同時形質転換した。ベクターとPCRフラグメントとの間の相同組み換えは、高頻度で生じ、変異したZFN発現ベクターを含む酵母形質転換体の収集を生じた。ヌクレアーゼのジンクフィンガードメインは、ヒトCCR−5遺伝子(8266と命名)に結合して、詳細には、米国特許出願公開第2008/0159996号に記載される。
【0131】
次いで、ライブラリーを、本質的に米国特許出願公開第2009/0111119号に記載のように、出芽酵母中で目的の表現型についてスクリーニングまたは選択した。要するに、2つの独立したSSAレポーター構築物を出芽酵母のゲノムに組み込んだ。両方のレポーターとも、8266ZFNのホモ二量体の結合部位を含む。MEL1 SSAレポーターは、陽性および陰性の両方の選択マーカーを含む。URA3遺伝子は、ura−培地中での陽性選択のために、および5−フルオロオロチン酸(5−FOA)を用いる陰性選択のために用いられる。KanMXカセットは、ジェネティシンに対するドミナント耐性を付与する(G418)。SSA後のMEL1遺伝子の再構成は、発色性基質[p−ニトロフェニルα−D−ガラクトピラノシド(PNPG)または5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−D−ガラクトピラノシド(X−a−Gal)]を用いて検出された。PHO5 SSAレポーターは、ノーセオトリシン(nourseothricin)(NAT)に対してドミナントな耐性を付与する陽性選択カセットNatMXを含み。PHO5遺伝子の再構成は、発色性基質[p−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム(PNPP)またはx−リン酸p−トルイジン塩(X−Phos)]を用いて検出された。従って、機能的な8266ZFN誘導性のSSAによって誘導されたDNA二本鎖断裂(DSB)は結果として、レポーター遺伝子の再構成、ならびに陽性および陰性の選択マーカーの排除を生じた。
【0132】
FokI変異体の遺伝子スクリーニングは、以下の通り行った。第一に、ZFNのガラクトース誘導性発現を、22℃という非許容性の温度で行った。回収後、細胞を、Kan(G418)、NATおよびura−培地中でインキュベートして、全ての活性なZFNを排除した。この工程は、潜在的な低温感受性変異体について、同様に不活性なZFNについて選択した。
【0133】
第二に、細胞を、37℃(許容温度)にシフトして、5−FOAおよびX−Phosを含有する培地上にプレートした。低温感受性ZFNを含有する細胞のみが、青いコロニーを形成した。次いで、これらの細胞由来のプラスミドを単離して、レポーター株に形質転換して、低温感受性の表現型を確認した。得られた変異は、FokIドメインの直接配列決定によって特定された。
【0134】
表3は、スクリーニングによって特定された種々の変異体を示す。低温感受性を付与すると予想される変異は、1列目に示す(ZFN中の二量体境界に対する近接性に基づく)。
【表3】
【0135】
単離された変異体の低温感受性切断活性の活性(野性型に対して)を図1Aに示す。レポーター株を単離された変異体ベクターで形質転換して、3つの培養物に分けて、22℃、30℃および37℃でインキュベートした。発現後、変異体の活性を決定して、野性型ZFNの活性の画分として報告した。インキュベーションの温度の増大と関連するZFN切断活性の増大によって、単離された変異体は低温感受性であることが示される。
【実施例3】
【0136】
新規な遺伝子操作されたFokI切断ハーフドメインの設計(デザイン)
Millerら.(2007)Nat.Biotech.25(7):778−85に記載のZFN構造モデルを用いて、本発明者らは、実施例2で試験した変異体の位置をマッピングして、変異した残基のうち2つ(N496およびH537)が二量体の境界上でお互いに面しており、近接して見出されることを見出した。これらの変異体のモデル化によってまた、H537RおよびN496D変異が塩架橋を形成して、二量体化境界を強くする可能性が高いことが示された。表4は、試験した種々の変異体の命名法を示す。
【表4】
【0137】
3重変異体の種々の一対の組み合わせ(例えば、ELD:KKK、ELD:KKR、ELE:KKKおよびELE:KKR)を、EL:KK対(EL:KK変異体は、米国特許出願公開第2008/0131962に記載)に対する切断活性について、種々のZFNバックグラウンドで比較した。ZFN含有プラスミドを次にK562細胞またはPMBC細胞中にヌクレオフェクトした。適切な遺伝子座でZFN活性を決定するために、Cel−1ミスマッチアッセイを、本質的に製造業者の指示(Trangenomic SURVEYOR(商標))に従って行った。細胞を回収して、染色体DNAをQuickextract(商標)Kitを用いて製造業者の指示(Epicentre(登録商標))に従って調製した。標的化遺伝子座の適切な領域を、Accuprime(商標)High−fidelity DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を用いてPCR増幅した。PCR反応物は、94℃まで加熱し、徐々に室温まで冷却した。約200ngのアニーリングされたDNAを0.33μLのCel−1酵素と混合して、42℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、1×Tris−ホウ酸塩−EDTA緩衝液中でポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。
【0138】
図2〜5に示されるとおり、三重変異体の種々の組み合わせは、もとの偏性ヘテロ二量体のZFN(EL:KK)よりも活性である。詳細には、図2は、K562細胞へのZFNのトランスフェクションの3日後および10日後における、53BP1に対して標的化されたZFNでのZFN改変体ELD:KKK、ELD:KKR、ELE:KKK、ELE:KKR、ELD:KIK、ELD:KIR、ELE:KIKおよびELE:KIRのCel−1アッセイ結果を示す。図3は、KDRに標的化されたZFNおよびK562細胞へのZFNのトランスフェクション20日後のZFN改変体ELD:KKKおよびELD:KKRのCel−1アッセイ結果を示す。図4は、K562細胞でのGR特異的ZFNの状況におけるELD;KKRおよびELD:KKK FokI遺伝子操作切断ドメインのCel−1アッセイ結果を示す。図4はまた、トランスフェクションのための漸減量(400ng〜16ng)の発現プラスミドを用いる切断活性を示し、ここでは2つの異なるセットのサンプルがある(レーン1〜14およびレーン15〜26)。これらの結果、80ngの発現プラスミドを入れれば、ELD:KKRおよびELF:KKK変異体は両方ともEL:KK変異体よりも活性であったことが示される(レーン8とレーン9および10、ならびにレーン20とレーン21および22を比較する)。
【0139】
図5は、3つの異なるRIPK1−特異的なZFNバックグラウンドにおけるELD:KKRおよびELD:KKK変異体の切断活性を示す。新規な変異体は両方ともRIPK1対AおよびRIPK1対BにおけるEL:KK変異体よりも活性であった。図5Bでは、対Cのバックグラウンドにおける新規な変異体を、37℃および30℃の両方で試験して、全てのZFP対の活性が30℃で増大することを見出した(米国特許出願公開第2009/0111119号を参照のこと)。
【実施例4】
【0140】
ホモ二量体としての遺伝子操作された切断ドメインの活性
新規な変異体をまた、強制されたホモ二量体としてDNAを能動的に切断する能力について試験した。これらのアッセイでは、ジンクフィンガー結合ドメインを、対の両方のメンバーで同じであるFokI切断ドメインに融合する。従って、任意の活性を観察するために、FokIドメインは、それ自体とホモ二量体化しなければならない(「強制されたホモ二量体化」)。CCR5−標的化ZFNの強制されたホモ二量体化は、K562細胞におけるFokI改変体のヌクレオフェクション(図6を参照のこと)によってアッセイし、Cel−1アッセイを用いて、CCR5ヘテロ二量体標的、CCR5−L ZFNホモ二量体(ABLIM2)、およびCCR5−Rホモ二量体(PGC)オフターゲット部位でのZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。これらの実験のために、変異をCCR5−特異的な8266および8196zの対で作製し、次いで試験した。従って、「WT」と表示したレーンでは、8266/8196z対を用いた。次いで、試験した各々の変異体対について、示した変異と同様の対を作製し、そのためEL:ELレーンは、8266−ELおよび8196z−ELなどを含む対を示す。
【0141】
図6からわかるように、KK、KKKおよびKKRホモ二量体は、CCR5ヘテロ二量体標的部位で検出可能な切断活性を示さないが、EL:ELおよびELD:ELDホモ二量体によって切断は制限される。ELD:ELD改変体はEL:ELに比較して約1.5倍小さい活性を有し、このことは、特異性の増大を示す。重要なことに、公知のオフターゲット部位ABLIM2およびPGCの試験では、いかなる変異体によっても検出可能な切断活性は示されない。
【0142】
ELD切断ドメインの特異性の改善をさらに確認するために、これらの同じ強制されたホモ二量体をK562細胞中で、漸減濃度で試験した。図7からわかるとおり、試験した全てのDNA濃度で、ELD:ELDは、EL:ELと比較して低いホモ二量体活性を示す。強制されたGR−特異的なZFNホモ二量体も試験し(図8を参照のこと)、検出可能な切断活性はなかった。いくつかの実施形態では、I499A変異体を用いて、I449L変異を置き換え、任意の潜在的なELDホモ二量体化をさらに減じた。この場合、EAD CCR5特異的なZFNの強制されたホモ二量体化で、検出可能な切断活性は生じなかった。
【0143】
さらに、これらの細胞をまた、ゲノムにおいてDSB部位で蓄積するγ−H2AXに特異的な抗体を用いてDSBについて試験した。染色された細胞を、フローサイトメトリーによって分別して、その結果を図9に示す。この図からわかるとおり、WT対を除けばごくわずかな染色しかなく、このことは、変異したFokIドメインを含むZFN対の存在下ではゲノム中のDSBが低レベルであることを示す。
【実施例5】
【0144】
初代細胞における遺伝子操作されたハーフドメインの活性
この構築物をまた、初代細胞で試験した。示した変異を含む漸減量のCCR5−標的化ZFN構築物を、Perezら、(同書)に記載のようにPBMC中にヌクレオフェクトした。この細胞を、トランスフェクション3日後に回収して、Cel−1アッセイを用いてZFN誘導性のインデルの頻度を決定した。図10Aからわかるとおり、ELD:KKKおよびELD:KKR変異体は、低濃度でさえこれらの細胞中で完全に活性であった。同様の研究をPD−1に対して標的化したZFNで行って、図10Bに示す。遺伝子操作されたハーフドメイン構築物は、PD−1−特異的なZFNの3つの対で作製し、ここでは対Aは対12942と12974とから構成され、対Bは対12942と25016とから構成されるが、対Cは、対12942と25029とから構成される(米国特許仮出願第61/281,432を参照のこと)。その結果は、図10Bにグラフ形式で示しており、これによって、ELD:KKRおよびELD:KKK変異体が、WT対およびEL:KK対の両方に比べて優れた活性を有したことが示される。
【0145】
GR−特異的なZFNバックグラウンドで作製された変異体をまた、図11Aに示すように活性についてPBMCで試験した。この実施例では、漸減量の変異体をトランスフェクションの3日後および10日後に試験した。新規な変異体は、EL:KK対に比較して活性の増大を有することが見出された。図11Bでは、PBMCでの6つの独立したトランスフェクションで繰り返した実験の平均値を示す。この値は、EL−KK対に比較して相対活性の平均の平均+/−標準誤差である。P値は、2標本T検定を用いて、これらの結果の再現性を示す。
【実施例6】
【0146】
DSBへの標的化組み込み、EL:KKとELD:KKRとの比較
EL:KKおよびELD:KKR FokI変異体ZFNをまた、標的化組み込み(TI)を促進するのにおけるそれらの使用について比較した。この実験については、新規なBamHI制限部位を含むドナー核酸を作製した。首尾よいTIの後、ZFN標的部位を囲む領域をPCRによって増幅し、次いでPCR産物をBamHI制限に供して、新規に導入された制限部位を切断した。ドナーDNAの配列を下に示す:
【表5】
【0147】
この配列では、ZFN結合部位を大文字で示し、導入されたBamHI制限部位には下線を付している。これらの実験について、FokI変異体を、GR−特異的なZFNバックグラウンドで試験して、図11Cに示しており、これは、ヌクレオフェクション工程の間に、2つの異なるZFNコードプラスミド濃度を用いて行った。図11Cでわかるように、ELD/KKR対は、試験した両方の濃度で、EL/KK対よりもドナーの導入を生じるのに効率的であった。
【実施例7】
【0148】
DA:RV FokI変異体対、ELD:KKRまたはELD:KKKの活性の比較
GR−特異的なおよびCCR5−特異的なZFNバックグラウンドの両方において、FokI変異を含むZFNの対を構築した。次いで、これらを、上記の様に、K562細胞でのそれらの内因性の標的に対して試験して、上記のように、Cel−Iミスマッチアッセイを用いて切断活性についてアッセイした。実験の各々の設定では、ZFNをコードする80ngのDNAを、ヌクレオフェクション工程に用いた。形質導入後3日で、Cel−Iアッセイを行って、結果を図12に示しており、これは、GR−特異的な切断およびCCR5−特異的な切断の結果を示している。このデータによって、DA:RVFokIの対は、EL:KK、ELD:KKKおよびELD:KKRの対よりもかなり少ない活性を示したことが示される。しかし、EA:KVの対は、このアッセイで活性を示した。
【0149】
次に、種々のZFNを、それらが強制されたホモ二量体化によってホモ二量体化する能力について試験した(実施例4を参照のこと)。典型的には、2つのFokI変異体ドメインがホモ二量体化する能力を有することは望ましくない。なぜなら、これは、望ましくないオフターゲット切断の可能性を増大し得るからである。この実験は、400ngのZFN含有プラスミドを各々のヌクレオフェクションの用いたこと以外は上記のとおり行った。その結果を図13に示しており、これによって、KV FokI変異体がかなりの程度までホモ二量体化する能力を有することが示される。従って、EA:KVの対は、このCel−IアッセイでELD:KKRの対に匹敵する活性を有することが見出された(図12を参照のこと)が、KV FokI変異体がホモ二量体化して、切断活性を示すことができたという事実によって、これは、オフサイト切断のリスクの増大のせいであまり望ましくなくなる。
【実施例8】
【0150】
DA:RV FokI変異体の活性の増強
次いで、DA:RV FokI変異体を検査して、それらを他のFokI変異と組み合わせることによってそれらの活性を増大することが可能か否かを確認した。従って、DA:RV対を、N496DおよびH537R変異を含むように作製して、DAD:RVRの対を得た。これらの変異体を含むCCR5−特異的なおよびCXCR4−特異的な対についてのCel−I活性のアッセイ結果を、図14に示す。実験は、一形質転換あたり80ngのプラスミドを用いて、前に記載のとおり行った。図からわかるとおり、N496DおよびH537R変異の付加によって切断活性は増大した。同様の結果がまた、GR−特異的なZFNバックグラウンドにおけるこれらの変異を用いて見出された(図14)。
【0151】
DA:RV+N496DおよびH537Rの組み合わせをまた、活性の低いZFN対バックグラウンドにおいて試験した。この実験では、KDR−特異的なZFNを選択して、Cel−Iアッセイの結果を図15に示す。この図では、DA:RVおよびDAD:RVRの両方の変異体の活性は検出できなかった。従って、N496DおよびH537R変異の付加は、いくつかのZFNでは有益であるが、弱いか検出不能な活性を有するZFNの対をレスキューすることはできない。
【実施例9】
【0152】
同時の特異的な二重切断のための直交対の試験
ゲノム内の2つの標的部位で同時切断を行うことが所望され得る。追加された特異性に関しては、所望の遺伝子座で切断するZFN対のみが生産的に二量体化することが可能で、その結果活性な対が所望の特異性を有する場合が最高であろう。この目的を達成するために、対は、ホモ二量体化するか、またはトランスヘテロ二量体化して活性な対を作成できてはならない。言い換えれば、標的1がZFN対A+Bによって切断され、そして、標的2がZFN対X+Yによって切断される場合、A+A(ホモ二量体)、A+XおよびA+Y(トランスヘテロ二量体)の対形成は、例えば、望ましくない。従って、CCR5およびCXCR4に特異的なELD/KKR+DAD/RVR対を、CCR5−特異的なELDハーフ切断ドメインが、CXCR5−特異的なDADまたはCXCR4−特異的なRVRハーフドメインのいずれかとトランスヘテロ二量体化できないという期待とあわせて試験した。さらに、ELD/KKR対の改変体を作製し、その結果、ELD変異体の496位のD変異およびKKRの537位のR変異体は交換されて、REL/DKK対(H537R+Q486E+I499L/N496D+E490K+I538K)が形成された。さらに、CCR5およびCXCR4に特異的なELD/KKR+DD/RR対もまた一緒に試験した。
【0153】
Cel−I活性のアッセイ結果を、図16および22に示す。この実験では、試験した条件は、両方とも標準の37℃インキュベーションおよび30℃インキュベーションであった(共同所有の米国特許出願第12/800,599号を参照のこと)。要するに、形質導入後、細胞を、37℃で3日間、または30℃で3日間保持した。3日間インキュベーションした後、Cel−Iアッセイを行って、両方の標的が切断されたか否かを確認し、ここではCCR5−特異的なCel−Iアッセイは、図16の上部に示し、そしてCXCR4−特異的なCel−Iアッセイを下に示す。
【0154】
これらの結果、CCR5およびCXCR4標的の両方での切断は、直交性の変異体のこれらの対を用いて単一工程で達成可能であったことが示される。
【0155】
変異体をさらに試験して、可能性のあるオフターゲット切断を検査した。インシリコの分析を行って、非正統的なCCR5−CXCR4トランスヘテロ二量体ZFN対によって認識され得る標的を模倣し得る、可能性のあるオフターゲット部位を特定した。これらの実験では、オフターゲット切断のための4つのトップ候補をCel−Iアッセイによって検査し、ここではオフターゲット部位の配列は、表5に下に列挙する。
【表6】
【0156】
形質導入は、37℃および30℃の両方のインキュベーション条件を用いて上記のように試験して、結果を図17および22で示す。図17で示されるとおり、ELD/KKR CXCR4対と組み合わせたELD/KKR CCR5対は、オフターゲット#3、#5および#10である程度の切断をもたらす。REL/DKK CXCR4対とのELD/KKR CCR5対の組み合わせもまた、部位#3、#5および#10である程度の切断をもたらした。しかし、DAD/RVR CXCR4対と組み合わせたELD/KKR CCR5対は、これらのオフターゲット部位で検出可能な切断をもたらさなかった。さらに、図22に示されるとおり、DD/RR CXCR4対と組み合わされたELD/KKR CCR5対は、これらのオフターゲット部位で検出可能な切断をもたらさなかった。
【0157】
これらの結果、これらのFokI変異体は、2つ以上の標的部位の同時切断を可能にする設定で用いられ得るが、望ましくないオフターゲット切断を減少することが示される。
【実施例10】
【0158】
Sharkey変異体とペアリングされたFokI変異体の評価
FokI変異体の設定は、記載されており、これは、Sharkey(S418P+K441E)およびSharkey’(S418P+F432L+K441E+Q481H+H523Y+N527D+K559Q)FokI変異体として公知であり、DNA切断の効率を向上すると考えられる(see Guoら,(同書))。従って、Sharkey変異体を、本明細書に記載の種々のFokI変異体と組み合わせて試験して、切断活性が、Sharkey変異の存在によってさらに増強され得るか否かを確認した。変異体組み合わせは、GR−特異的なおよびKDR−特異的なZFNバックグラウンドで行い、上記のようなCel−Iアッセイを用いて切断活性について試験した。結果は、図18に示し、これによって、変異の活性が付加であると思われることが示される。例えば、3日目のパネルでのレーン10および11とレーン12および13との比較によって、検出されたNHEJ活性(インデル)が、ELD/KKR GR−特異的な対についての11〜12からELD−S/KKR−S対についての20%インデルまでいったことが示される。同様に、3日目のKDR特異的なZFNについてレーン10および11とレーン12および13の比較は、検出可能な約26〜28%インデルから検出可能な48〜50%インデルまでいった。
【0159】
さらに、Sharkey FokI変異体は、GR−特異的なZFNバックグラウンドにおいてDA/RVおよびDAD/RVR Fok1変異体と組み合わされて、Cel−I活性アッセイを用いて活性について試験された。この結果は、図19Aに示しており、ここで、FokI変異は、活性に関して相加的であることが示される。(レーン4および5とレーン6および7とを比較する)。
【0160】
変異体組み合わせもまた試験して、Sharkey変異の存在が、実施例4において上記されるような強制されたホモ二量体化アッセイにおけるホモ二量体化切断の量を増大するか否かを確認した。図20は、付加されたSharkey変異の有無による、GR−特異的な変異体の結果を示す。この図からわかるように、変異体は、ホモ二量体化能力において検出可能な変更はなかった。同様に、DA−S/RV−SおよびDAD−S/RVR−S変異体もまた試験して、GR−特異的なZFNバックグラウンドにおけるホモ二量体化の増大があったか否かを確認した。その結果を図21Aに示し、ここでは、生産的なホモ二量体化の増大がなかったことが示される。図21Bは、全てのレーンの等しいローディングを示す。
【実施例11】
【0161】
D:R FokI変異体の活性の増強
D:R FokI変異体(R487D:D483R)(例えば、米国特許出願公開第2008/0131962号および同第2009/0305346号を参照のこと)を検査して、それらを他のFokI変異と組み合わせることによってそれらの活性の増大が可能になるか否かを確認した。要するに、N496DおよびH537R変異を含み、上記で記載されるように行われるDD:RR対およびCel−Iアッセイを生じるようにD:Rの対を作製した。
【0162】
図21で示すとおり、N496DおよびH537R変異の追加によって、切断活性は増大された。
【0163】
まとめると、これらの結果によって、本明細書に記載されるFokI変異体は、ここで示されるデータ(新規な変異体が前に記載されたFokI変異体よりも活性であって、オフサイト切断活性を示す程度が低いことを示す)であることが示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子操作されたFokI切断ハーフドメインを含むポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが:アミノ酸残基486、499および496における変異;アミノ酸残基487および496における変異;アミノ酸残基487、499、および496における変異;アミノ酸残基483および537における変異;アミノ酸残基490および537における変異;アミノ酸残基490、537および538における変異;アミノ酸残基483および538における変異;アミノ酸残基487、499および496における変異;ならびにアミノ酸残基483、538および537における変異からなる群より選択される変異を含み、前記アミノ酸残基は、全長野性型FokIに対してナンバリングされている、ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、486位で前記野性型Gln(Q)残基が、Glu(E)残基で置き換えられ、499位で野性型Iso(I)残基が、Leu(L)残基で置き換えられ、そして496位で野性型Asn(N)残基がAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換えられている、ポリペプチドを含む、ポリペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、490位で野性型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられ、538位で野性型Iso(I)残基がLys(K)残基で置き換えられ、そして537位で野性型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換えられているポリペプチドを含む、ポリペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、490位で野性型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられ、537位で野性型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換えられている、ポリペプチドを含む、ポリペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、487位で野性型Arg(R)残基がAsp(D)残基で置き換えられ、そして496位で野性型Asn(N)残基がAsp(D)残基で置き換えられる、ポリペプチドを含む、ポリペプチド。
【請求項6】
さらに、前記499位で野性型Ile(I)残基がAla(A)で置き換えられる、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、483位で野性型Asp(D)残基がArg(R)残基で置き換えられているポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが:
(i)538位の野性型Ile(I)残基がVal(V)残基で置き換えられている変異と;
(ii)537位の野性型His(H)残基がArg(R)残基で置き換えられている変異と;
(ii)(i)および(ii)の組み合わせと
からなる群より選択される少なくとも1つの追加の変異を含む、ポリペプチド。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドであって、418、432、441、481、483、486、487、490、496、499、523、527、537、538および559位のうちの1つ以上で追加のアミノ酸変異をさらに含んでいる、ポリペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の第一の遺伝子操作された切断ハーフドメインと、第二の遺伝子操作された切断ハーフドメインとを含むヘテロ二量体。
【請求項10】
ジンクフィンガーDNA結合ドメインをさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜8または10のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドまたは請求項1〜8もしくは10のいずれかに記載のポリペプチドを含む単離された細胞。
【請求項13】
目的の領域においてゲノム細胞クロマチンを切断するための方法であって、前記方法は:
(a)目的の領域において第一のヌクレオチド配列を選択することと;
(b)第一のジンクフィンガー結合ドメインが第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;
(c)細胞中で第一の融合タンパク質を発現することであって、前記第一の融合タンパク質は、遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインおよび請求項1〜8のいずれかに記載の遺伝子操作された切断ハーフドメインを含むことと;
(d)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、前記第二の融合タンパク質が第二のヌクレオチド配列に結合するように遺伝子操作された第二のジンクフィンガー結合ドメインと第二の遺伝子操作された切断ハーフドメインとを含むことと;
を含み、
前記第一の融合タンパク質は、第一のヌクレオチド配列に結合し、第二の融合タンパク質は、第一のヌクレオチド配列から2ヌクレオチドと50ヌクレオチドとの間に位置する第二のヌクレオチド配列に結合し、前記第一および第二の遺伝子操作された切断ドメインが目的の領域で細胞クロマチンを切断するヘテロ二量体を形成する、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記細胞と第三のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを接触させることをさらに包含し、ここで前記第三のヌクレオチド配列が前記第一のヌクレオチド配列と相同であるが同一ではなく;前記目的の領域内の細胞のクロマチンの切断は、第一のヌクレオチド配列と第三のヌクレオチド配列との間の相同組み換えを容易にし、それによって第一のヌクレオチド配列の変更を生じる、方法。
【請求項15】
ゲノム細胞クロマチンにおける少なくとも2つの標的部位を切断する方法であって、前記方法は:
ゲノム細胞クロマチンにおける少なくとも第一および第二の標的部位を切断する工程であって、ここで各々の標的部位が一対のジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて切断され、さらにここで各々のジンクフィンガーヌクレアーゼが、請求項1〜8のいずれかに記載の遺伝子操作されたFokI切断ドメインを含む工程を含む、方法。
【請求項1】
遺伝子操作されたFokI切断ハーフドメインを含むポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが:アミノ酸残基486、499および496における変異;アミノ酸残基487および496における変異;アミノ酸残基487、499、および496における変異;アミノ酸残基483および537における変異;アミノ酸残基490および537における変異;アミノ酸残基490、537および538における変異;アミノ酸残基483および538における変異;アミノ酸残基487、499および496における変異;ならびにアミノ酸残基483、538および537における変異からなる群より選択される変異を含み、前記アミノ酸残基は、全長野性型FokIに対してナンバリングされている、ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、486位で前記野性型Gln(Q)残基が、Glu(E)残基で置き換えられ、499位で野性型Iso(I)残基が、Leu(L)残基で置き換えられ、そして496位で野性型Asn(N)残基がAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換えられている、ポリペプチドを含む、ポリペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、490位で野性型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられ、538位で野性型Iso(I)残基がLys(K)残基で置き換えられ、そして537位で野性型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換えられているポリペプチドを含む、ポリペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、490位で野性型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられ、537位で野性型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換えられている、ポリペプチドを含む、ポリペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、487位で野性型Arg(R)残基がAsp(D)残基で置き換えられ、そして496位で野性型Asn(N)残基がAsp(D)残基で置き換えられる、ポリペプチドを含む、ポリペプチド。
【請求項6】
さらに、前記499位で野性型Ile(I)残基がAla(A)で置き換えられる、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載のポリペプチドであって、前記遺伝子操作された切断ハーフドメインが、483位で野性型Asp(D)残基がArg(R)残基で置き換えられているポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが:
(i)538位の野性型Ile(I)残基がVal(V)残基で置き換えられている変異と;
(ii)537位の野性型His(H)残基がArg(R)残基で置き換えられている変異と;
(ii)(i)および(ii)の組み合わせと
からなる群より選択される少なくとも1つの追加の変異を含む、ポリペプチド。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドであって、418、432、441、481、483、486、487、490、496、499、523、527、537、538および559位のうちの1つ以上で追加のアミノ酸変異をさらに含んでいる、ポリペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の第一の遺伝子操作された切断ハーフドメインと、第二の遺伝子操作された切断ハーフドメインとを含むヘテロ二量体。
【請求項10】
ジンクフィンガーDNA結合ドメインをさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜8または10のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドまたは請求項1〜8もしくは10のいずれかに記載のポリペプチドを含む単離された細胞。
【請求項13】
目的の領域においてゲノム細胞クロマチンを切断するための方法であって、前記方法は:
(a)目的の領域において第一のヌクレオチド配列を選択することと;
(b)第一のジンクフィンガー結合ドメインが第一の配列に結合するように遺伝子操作することと;
(c)細胞中で第一の融合タンパク質を発現することであって、前記第一の融合タンパク質は、遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインおよび請求項1〜8のいずれかに記載の遺伝子操作された切断ハーフドメインを含むことと;
(d)細胞中で第二の融合タンパク質を発現することであって、前記第二の融合タンパク質が第二のヌクレオチド配列に結合するように遺伝子操作された第二のジンクフィンガー結合ドメインと第二の遺伝子操作された切断ハーフドメインとを含むことと;
を含み、
前記第一の融合タンパク質は、第一のヌクレオチド配列に結合し、第二の融合タンパク質は、第一のヌクレオチド配列から2ヌクレオチドと50ヌクレオチドとの間に位置する第二のヌクレオチド配列に結合し、前記第一および第二の遺伝子操作された切断ドメインが目的の領域で細胞クロマチンを切断するヘテロ二量体を形成する、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記細胞と第三のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを接触させることをさらに包含し、ここで前記第三のヌクレオチド配列が前記第一のヌクレオチド配列と相同であるが同一ではなく;前記目的の領域内の細胞のクロマチンの切断は、第一のヌクレオチド配列と第三のヌクレオチド配列との間の相同組み換えを容易にし、それによって第一のヌクレオチド配列の変更を生じる、方法。
【請求項15】
ゲノム細胞クロマチンにおける少なくとも2つの標的部位を切断する方法であって、前記方法は:
ゲノム細胞クロマチンにおける少なくとも第一および第二の標的部位を切断する工程であって、ここで各々の標的部位が一対のジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて切断され、さらにここで各々のジンクフィンガーヌクレアーゼが、請求項1〜8のいずれかに記載の遺伝子操作されたFokI切断ドメインを含む工程を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【公表番号】特表2013−518586(P2013−518586A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551979(P2012−551979)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/000221
【国際公開番号】WO2011/097036
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(508241200)サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/000221
【国際公開番号】WO2011/097036
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(508241200)サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
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