説明

遺伝子解析装置

【課題】商用電源が利用できない状況においても、可搬可能で効率よく使用することができる遺伝子解析装置を提供する。
【解決手段】本発明は燃料電池を電源とした遺伝子解析装置を提供することにより、商用電源が配備されていない環境下や災害時において、臨床試験等における遺伝子解析を効率よく迅速に実施することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を電力源とする遺伝子解析装置に関するものであり、商用電源が確保できない場所においても、迅速に遺伝子解析による各種検査を可能にするシステムである。
【背景技術】
【0002】
地震、洪水等の自然災害や事故等によりライフラインが分断された際において、生活基盤の確保は重要な課題となるが、同時に食中毒、伝染病など衛生・安全面での確保に遺伝子検査を高度有効利用できることが考えられる。また、バイオテロなどの緊急事態においてもウイルス、細菌などの物質特定に遺伝子解析手法が役立つものと考えられる。遺伝子解析手法、装置については例えば下記特許文献1に報告されている。
【0003】
しかしながら、上記システムを商用電源が利用できない状況において使用するためには、必要な場所に移動して使用可能な独立電源としては鉛電池、リチウムイオン電池などの二次電池、太陽光により発電する太陽電池、エンジン式の発電機などが挙げられるが、それぞれに欠点を持っている。二次電池は自然放電の影響もあり、普段使用する頻度が少ない場合は、使用したいときに十分な充電状態にしておくためには普段の確認が欠かせず、上記の状況においては電池を使い切った後に再充電が難しい。太陽電池はこのような欠点は少ないものの、天候に依存するために使用したい際に十分な電力を供給できるとは限らない。エンジン式発電機は、燃料となるガソリンなどを手配しておけば十分な電力を確保できるものの、発電機が発する騒音・振動・排気ガスなどは、長時間稼働が必要な場合は使用する環境での不快感の原因となるとともに、測定の障害となることも考えられる。このようなことから、新しい可動型発電機として燃料電池の利用が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−107999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、燃料電池を電源とすることにより、可搬可能で効率よく使用することができる遺伝子解析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
[1]燃料電池を電力源とし、以下の(1)〜(5)のすべてを含むことを特徴とする遺伝子解析装置。
(1)検体試料から核酸を抽出、増幅、精製を行う容器。
(2)上記抽出、増幅、精製に必要な試薬の注入、不要液体の除去を行う分注器。
(3)上記容器の加温する加温器。
(4)蛍光標識を検出する検出器。
(5)必要な処理工程を制御し、検出結果を解析、判定工程を支援するコントローラ。
[2]燃料電池が、ダイレクトメタノール燃料電池であることを特徴とする[1]に記載の遺伝子解析装置。
[3]装置から2m離れた位置での騒音レベルが40dB以下であることを特徴とする[1]又は[2]のいずれかに記載の遺伝子解析装置。
[4]燃料電池に使用する高分子電解質膜が、厚みが60μm以下であり、5Mメタノールのメタノール透過速度が10mmol/m・s以下である炭化水素系高分子膜であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の遺伝子解析装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明は燃料電池を電源とすることにより、可搬可能で効率よく使用することができる遺伝子解析装置を提供することができ、商用電源が配備されていない環境下や災害時において、臨床試験等における遺伝子解析を効率よく迅速に実施することを可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のダイレクトメタノール燃料電池を電力源とする遺伝子解析装置の1例である。
【図2】図2は、遺伝子解析プロセスの1例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に示す燃料電池の中で水素を燃料とする燃料電池は、高分子電解質膜と高分子電解質膜を両側から挟むアノード(燃料極)およびカソード(空気極)を含む複数の燃料電池セルを直列に接続(積層)した燃料電池セルスタックとして構成される。燃料電池のアノードおよびカソードには、例えば白金Ptからなる触媒が含まれる。アノードには、水素と水が供給され電極触媒反応によりプロトン、電子が生成する。カソードには空気が導入され、空気中の酸素が高分子電解質膜を通ってきたプロトンおよび外部回路を通ってきた電子と反応して水を生成する。
【0010】
本発明に示す燃料電池の中でダイレクトメタノール燃料電池は、高分子電解質膜と高分子電解質膜を両側から挟むアノード(燃料極)およびカソード(空気極)を含む複数の直接メタノール型燃料電池セルを直列に接続(積層)した燃料電池セルスタックとして構成される。燃料電池のアノードには、例えば白金PtおよびルテニウムRuからなる触媒が含まれ、カソードには、例えば白金Ptからなる触媒が含まれる。アノードには、メタノールと水が供給され電極触媒反応によりプロトン、電子が生成し、副生成物として二酸化炭素が生成する。カソードには空気が導入され、空気中の酸素が高分子電解質膜を通ってきたプロトンおよび外部回路を通ってきた電子と反応して水を生成する。
【0011】
ダイレクトメタノール燃料電池は、高濃度のメタノール燃料(メタノールを約50wt%程度含む水溶液から100wt%メタノール)を収容する燃料タンクを含み、燃料タンクは燃料供給パイプを介して希釈メタノール水溶液が収容される水溶液タンクに接続される。燃料ポンプの駆動によって燃料タンク内のメタノール燃料が水溶液タンクに供給される。水溶液タンクには水位レベルセンサが装着され、水溶液タンク内のメタノール水溶液の水位が検出されるとともに、燃料電池セルスタックに供給される希釈濃度メタノールが調整される。水溶液タンクは、水溶液パイプを介して燃料電池のアノードに接続される。水溶液ポンプによりメタノール水溶液は、必要により冷却ファンを有する熱交換器および水溶液フィルタを通してアノードに供給される。一方、ダイレクトメタノール燃料電池のカソードにはエアポンプにより空気供給パイプを介して酸素を含む空気が供給される。必要に応じて、エアフィルタ、エアポンプの騒音を低下させるためのエアチャンバが使用される。
【0012】
アノード出口と水溶液タンクとはパイプを介して接続され、アノードから排出される未反応のメタノールを含む水溶液や生成された二酸化炭素やガス化したメタノール等が水溶液タンクに与えられる構成とできる。また、カソード出口には必要に応じてパイプを介して水タンクが接続される。さらにパイプには、必要に応じて冷却ファンを有する気液分離器が介挿され、カソードから排出される水分(水および水蒸気)を含む排気がパイプを介して水タンクに与えられる。水タンクは水還流パイプを介して水溶液タンクに接続され、水溶液タンクの状況に応じて必要なときに水溶液タンクへ水が還流される構成とできる。
【0013】
本発明のダイレクトメタノール燃料電池が発生する運転音は上記のポンプ類によるものが主となるのみで、エンジン式の発電機に比べて遙かに騒音レベルが低い特徴がある。限外濾過装置モータが駆動していない状態で、装置から2m離れた位置での騒音レベルが40dB以下とすることができることを特徴とするが、35dB以下となる装置とすることが好ましく、30dB以下であることが特に好ましい。
【0014】
ダイレクトメタノール燃料電池には二次電池が接続される。二次電池は、燃料電池からの出力を補完するものであり、燃料電池からの電気エネルギーによって充電され、その放電によってモータや補機類に電気エネルギーを与える。直流電流を利用する際は直流モータを直接駆動させることができるが、交流モータを駆動させる場合には、インバータを介して燃料電池が発電した直流電流を交流電流とすることができる。また必要に応じて電圧変更を加えることや、電圧変更後直流に戻して使用するようにすることもできる。
【0015】
ダイレクトメタノール燃料電池に使用する高分子電解質膜を形成するポリマーには、パーフルオロスルホン酸系ポリマーを使用することができるが、以下に記載する高分子電解質を用いることもできる。
例えば、芳香族炭化水素系のイオン性基含有ポリマーとしては、ポリマー主鎖に芳香族あるいは芳香環とエーテル結合、スルホン結合、イミド結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、カーボネート結合及びケトン結合から選択される少なくとも1種以上の結合基を有する構造を持つ非フッ素系のイオン伝導性ポリマーであり、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、及びそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。
なお、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボシキル基などの官能基をポリマーに含むことで、ポリマーのイオン伝導性が発現される。この中で特に有効に作用する官能基は、スルホン酸基である。また、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、これらのポリマーを使用することができる。
【0016】
上記官能基を含有するポリマーのうち、特に芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族系炭化水素系ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。本発明のイオン性基含有ポリマー、特にイオン伝導性がスルホン酸基であるポリマーを得るためには、これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
【0017】
また、上記芳香族炭化水素系イオン性基含有ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種に酸性基を含むモノマーを用いて合成することもできる。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基やホスホン酸基を含有するジアミンを用いて酸性基含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾール、芳香族テトラミンと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズイミダゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することにより酸性基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られた酸性基含有ポリマーの熱安定性が高くなるので好ましい。
【0018】
芳香族炭化水素系イオン性基含有ポリマーは、スルホン酸基含有ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物、ポリアリーレン系化合物であることがより好ましい。
【0019】
芳香族炭化水素系イオン性基含有ポリマーの中で特に好ましいのは、一般式1で表される繰り返し単位を有するものである。
【化1】

[一般式1において、Xは−S(=O)−基又は−C(=O)−基を、YはH又は1価の陽イオンを、ZはO又はS原子のいずれかを、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基、直接結合のいずれかを、n1は1以上の整数を表す。]
【0020】
一般式1において、Xは−S(=O)−基であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。Xが−C(=O)−基であると、ポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性をさらに高めたり、電解質膜に光架橋性を付与したりすることができるため好ましい。高分子電解質膜として用いる場合には、YはH原子であることが好ましい。ただし、YがH原子であると、熱などによって分解しやすくなるので、電解質膜の製造などの加工時にはYをNaやKなどのアルカリ金属塩としておき、加工後に酸処理によってYをH原子に変換して高分子電解質膜を得ることもできる。ZはO原子であるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがSであると耐酸化性が向上するため好ましい。n1は1〜30の範囲にあることが好ましく、n1が3以上の場合には、n1が異なる複数の単位が含まれていてもよい。Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基、直接結合を表し、O原子、S原子であるとより接合性がより改良されるため好ましい。Zが直接結合である場合は、得られる高分子電解質膜の寸法安定性が改良されるために好ましい。n1が3以上の場合はZがO原子であると、高分子電解質膜にした場合の電極触媒層との接合性が特に向上するため好ましい。
【0021】
一般式1で表される繰り返し単位を有するイオン性基含有ポリマーは、さらに一般式2で表される繰り返し単位をさらに含有していることが好ましい。
【0022】
【化2】

[一般式2において、Arは二価の芳香族基を、ZはO原子又はS原子のいずれかを、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基、直接結合のいずれかを、n2は1以上の整数を表す。]
【0023】
一般式2において、ZはO原子であるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがS原子であると耐酸化性が向上するため好ましい。n2は1〜30の範囲にあることが好ましく、n2が3以上の場合には、n2が異なる複数の単位が含まれていてもよい。Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基、直接結合を表し、O原子、S原子であるとより接合性がより改良されるため好ましい。Zが直接結合である場合は、得られる高分子電解質膜の寸法安定性が改良されるために好ましい。n2が3以上の場合はZがO原子であると、高分子電解質膜にした場合の電極触媒層との接合性が特に向上するため好ましい。
【0024】
本発明における高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーが、主として、一般式1で表される繰り返し単位と、一般式2で表される繰り返し単位で構成される場合には、それぞれのモル比は、7:93〜70:30の範囲であることが好ましい。モル比が7:93とは、一般式1で表される繰り返し単位のモル数を7としたとき、一般式2で表される繰り返し単位のモル数が93であることを表す。70:30のモル比よりも一般式1で表される繰り返し単位が多くなると、高分子電解質膜としたときの燃料透過性が大きくなる場合があり好ましくない。7:93のモル比よりも一般式1で表される繰り返し単位が少なくなると、高分子電解質膜としたときのプロトン伝導性が低下して抵抗が増大するため好ましくない。10:90〜50:50の範囲であることがより好ましい。10:90〜40:60の範囲であることがさらに好ましい。本発明におけるイオン性基含有ポリマーは、一般式1及び一般式2で表される繰り返し単位を有することによって適切な軟化温度を有し、高分子電解質膜としたときに良好な電極との接合性を示す。
【0025】
一般式2におけるArは、電子吸引性基を有する二価の芳香族基が好ましい。電子吸引性基とは、例えばスルホン基、スルホニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸イミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、シアノ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、ニトロ基などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の任意の電子吸引性基であればよい。
【0026】
Arの好ましい構造は、化学式3〜6で表される構造である。化学式3の構造はポリマーの溶解性を高めることができ好ましい。化学式4の構造はポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性を高めたり、光架橋性を付与したりするので好ましい。化学式5又は6の構造はポリマーの膨潤を少なくできるので好ましく、化学式6の構造がより好ましい。化学式3〜6の中でも化学式6の構造が最も好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーのさらに好ましい態様の一つは、高分子電解質膜が主として、一般式1で表される構造と、一般式2で表される構造で構成され、かつ一般式1におけるZ及びZがいずれもO原子であり、かつ、n1が3以上であるイオン性基含有ポリマーである。このようなイオン性基含有ポリマーを用いると、電極との接合性が特に向上するため好ましい。
【0029】
前記のイオン性基含有ポリマーのさらに好ましい態様の一つは、一般式2における、Z及びZがいずれもO原子であり、かつ、n2が3以上であるとより好ましい。このようなイオン性基含有ポリマーを用いると、電極との接合性がより一層向上するため好ましい。
【0030】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーのさらに好ましい態様の一つは、一般式1及び一般式2に加えて、一般式7で表される繰り返し単位を有するイオン性基含有ポリマーである。一般式1及び一般式2で表される繰り返し単位に加え、一般式7で表される繰り返し単位をさらに有していることが、高分子電解質膜としたときの膜の形態安定性を高めることができるため好ましい。
【0031】
【化4】

[一般式7において、Xは−S(=O)−基又は−C(=O)−基を、YはH又は1価の陽イオンを、ZはO又はS原子のいずれかを表す。]
【0032】
一般式7において、Xは−S(=O)−基であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。Xが−C(=O)−基であると、ポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性をさらに高めたり、電解質膜に光架橋性を付与したりすることができるため好ましい。高分子電解質膜として用いる場合には、YはH原子であることが好ましい。ただし、YがH原子であると、熱などによって分解しやすくなるので、電解質膜の製造などの加工時にはYをNaやKなどのアルカリ金属塩としておき、加工後に酸処理によってYをH原子に変換して高分子電解質膜を得ることもできる。ZはO原子であるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがSであると耐酸化性が向上するため好ましい。
【0033】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーが、一般式1、2、及び7で表される繰り返し単位を有している場合には、Z及びZが、O原子又はS原子であり、かつ、n1が1であると、高分子電解質膜とした場合の電極触媒層との接合性と、膜の形態安定性がより良好になるので好ましい。また、Z及びZが、O原子又はS原子であり、かつ、n2が1であると、高分子電解質膜とした場合の電極触媒層との接合性と、膜の形態安定性がさらに良好になるので好ましい。
【0034】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーは、一般式1、2、及び7で表される繰り返し単位に加え、一般式8で表される繰り返し単位をさらに有していると、高分子電解質膜としたときに、電極触媒層との接合性と、膜の形態安定性を大きく向上することができるためよりより好ましい。
【0035】
【化5】

[一般式8において、Arは2価の芳香族基を、ZはO原子又はS原子のいずれかを表す。]
【0036】
一般式8におけるZはO原子であるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがS原子であると耐酸化性が向上するため好ましい。化学式8におけるArは、電子吸引性基を有する二価の芳香族基が好ましい。電子吸引性基とは、例えばスルホン基、スルホニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸イミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、シアノ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、ニトロ基などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の任意の電子吸引性基であればよい。
【0037】
Arの好ましい構造は、化学式3〜6で表される構造である。化学式3の構造はイオン性基含有ポリマーの溶解性を高めることができ好ましい。化学式4の構造はイオン性基含有ポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性をさらに高めたり、光架橋性を付与したりするので好ましい。化学式5又は6の構造はイオン性基含有ポリマーの膨潤を少なくできるので好ましく、化学式6の構造がより好ましい。化学式3〜6の中でも化学式6の構造が最も好ましい。
【0038】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーが、一般式1、2、7及び8でそれぞれ表される繰り返し単位を全て有している場合は、それぞれの繰り返し単位のモル%、及びその他の繰り返し単位のモル%が下記数式1〜3を満たすことが好ましい。
【0039】
0.9≦(n3+n4+n5+n6)/(n3+n4+n5+n6+n7)≦1.0
数式1
0.05≦(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)≦0.7 数式2
0.01≦(n4+n6)/(n3+n4+n5+n6)≦0.95 数式3(上記数式中、n3は一般式7で表される繰り返し単位のモル%を、n4は一般式1で表される繰り返し単位のモル%を、n5は一般式8で表される繰り返し単位のモル%を、n6は一般式2で表される繰り返し単位のモル%を、n7はその他の繰り返し単位のモル%を、それぞれ表す。)
【0040】
(n3+n4+n5+n6)/(n3+n4+n5+n6+n7)が0.9よりも小さいと、高分子電解質膜としたときに良好な特性が得られないため好ましくない。より好ましいのは0.95〜1.0の範囲である。
【0041】
(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)が0.05よりも小さくなると、高分子電解質膜としたときに十分なプロトン伝導性が得られないため好ましくない。また、0.9よりも大きいと高分子電解質膜としたときの膨潤性が著しく大きくなるため好ましくない。より好ましい範囲は0.1〜0.7の範囲である。
【0042】
(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)は0.07〜0.5の範囲であることが好ましく、0.1〜0.4の範囲であることがより好ましい。0.5よりも大きいと、燃料透過性が大きくなる場合があり好ましくない。0.07よりも小さいと、プロトン伝導性が低下して抵抗が増大するため好ましくない。
【0043】
(n4+n6)/(n3+n4+n5+n6)が0.01よりも少ないと、高分子電解質膜としたときに電極触媒層との接合性が低下するため好ましくない。0.95よりも大きいと、高分子電解質膜としたときの膨潤性が大きくなりすぎる場合があるため好ましくない。0.05〜0.8がより好ましい範囲である。0.4〜0.8の範囲であることがさらに好ましい。
【0044】
なお、本発明におけるイオン性基含有ポリマーにおいて、上記各一般式で表される各繰り返し単位の結合様式は特に限定されるものではなく、ランダム結合、交互結合、連続したブロック構造での結合など、いずれでもよい。
【0045】
本発明における上記イオン性基含有ポリマーの合成方法としては、公知の方法を採用でき、特に限定されないが、合成に用いる原料モノマーの好ましい例として、下記一般式9〜11で表される構造のモノマーを挙げることができる。さらに、一般式12で表される構造のモノマーをさらに用いると、膜の形態安定性など物理的な特性が向上するため好ましい。
【0046】
【化6】

【0047】
一般式9〜12において、Xは−S(=O)−基又は−C(=O)−基を、YはH又は1価の陽イオンを、Z及びZ10は、それぞれ独立してCl原子、F原子、I原子、Br原子、ニトロ基のいずれかを、Z及びZ11は、それぞれ独立してOH基、SH基、−O−NH−C(=O)−R基、−S−NH−C(=O)−R基のいずれかを[Rは芳香族又は脂肪族の炭化水素基を表す。]、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを、Arは分子中に、スルホン基、カルボニル基、スルホニル基、ホスフィン基、シアノ基、トリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基、ニトロ基、ハロゲン基などの電子吸引性基を有する芳香族基を表す。
【0048】
一般式9で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、及びそれらのスルホン酸基が1価陽イオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価陽イオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限されるわけではない。
【0049】
一般式9で表される化合物のうち、スルホン酸基が塩になっている化合物の例としては、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンなどを挙げることができる。
【0050】
一般式10で表される化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、4,4’−オキシビスベンゼンチオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどを挙げることができ、4,4’−チオビスベンゼンチオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマー(下記化学式13で表される構造のもの)が好ましい。化学式13においては、nは1以上の整数からなり、nの異なる成分が混合されたものでも良い。
【0051】
【化7】

【0052】
一般式10で表される構造のモノマーは、イオン性基含有ポリマーの柔軟性を高め、変形に対する破壊を抑制することや、ガラス転移温度を低下させて電極触媒層との接合性を向上させたりするなどの効果をもたらすことができる。
【0053】
一般式11で表される化合物としては、同一芳香環にハロゲン、ニトロ基などの求核置換反応における脱離基と、それを活性化する電子吸引性基を有する化合物を挙げることができる。具体例としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
【0054】
一般式12で表される化合物の例としては、4,4’−ビフェノール、4、4’−ジメルカプトビフェノールなどを挙げることができ、4,4’−ビフェノールが好ましい。
上述の芳香族求核置換反応において、一般式9〜12で表される化合物とともに他の各種活性化ジハロゲン芳香族化合物やジニトロ芳香族化合物、ビスフェノール化合物、ビスチオフェノール化合物をモノマーとして併用することもできる。
【0055】
その他のビスフェノール化合物又はビスチオフェノール化合物の例としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、フェノールフタレイン、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド等が挙げられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオール又は各種芳香族ジチオールを使用することもでき、上記の化合物に限定されるものではない。
【0056】
本発明におけるイオン性基含有高分子電解質膜の製造方法においては、上記の活性化ジハロゲン芳香族化合物やジニトロ芳香族化合物や芳香族ジオール類又は芳香族ジチオール類を原料とし、塩基性化合物の存在下で、公知の芳香族求核置換反応により重合して得られるポリマーで、対数粘度が0.1〜2.0dL/gで、軟化温度が90℃以上のものが好ましく、さらに軟化温度が140〜250℃のものがより好ましい。
【0057】
ダイレクトメタノール燃料電池の発電効率を高くするためには、メタノール透過速度の小さい高分子電解質膜を使用することが好ましい。メタノールが高分子電解質膜を透過しやすいと、アノードでの未反応メタノールがカソード側に移動する割合が増し、燃料利用率が低下するとともに、カソード側でメタノール酸化反応が起こることで起電力低下が起こるためである。メタノール透過速度の低い膜としては炭化水素系高分子電解質膜が有利となる。このため、燃料電池に使用する高分子電解質膜として、厚みが60μm以下であり、5Mメタノールのメタノール透過速度が10mmol/m・s以下である炭化水素系高分子膜が好ましい。メタノール透過速度が7mmol/m・s以下であれば更に好ましく、5mmol/m・s以下であれば特に好ましいと言える。高分子電解質膜のメタノールの透過速度は、以下の方法で測定される。25℃に調整した5M(モル/リットル)のメタノール水溶液に24時間浸漬した高分子電解質膜交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5Mメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水(18MΩ・cm)を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフを用いて測定することで算出する。
【0058】
本発明の遺伝子解析装置は、図1に示すように、容器、分注器、加温器、検出器、コントローラ、を含む構成要素よりなる。これにより、図2に示すような遺伝子解析プロセスを実施することができる。
【0059】
遺伝子解析は、分析試料からのDNA抽出、分析試料中の任意の特定塩基配列の選択的増幅、プローブの付与と精製、標識の検出、検出データから特定塩基配列の有無の判定からなる。
【0060】
DNA抽出工程は、生体試料から核酸を抽出しやすくするため、生体試料の蛋白質を熱変性させ、更に界面活性剤を作用させて変性させる。次いで蛋白質分解酵素を混入後、該酵素作用温度に保持することによって、ゲノムDNAを核内蛋白より単離する。次いで、これらの反応液を加熱し、蛋白質分解酵素を失活させる。本発明における生体試料としては、組織細胞、菌体、培養細胞などが用いられ、新鮮な試料に限らず凍結保存やホルマリン保存されたものも用いられ、特に限定されるものでない。一般的な蛋白質の熱変性は、生体試料を適当なバッファに懸濁し、90℃以上に保持することで行われる。界面活性剤として用いられるものには、陰イオン性界面活性剤である、ドデシル硫酸アンモニウム(SDS)や、N−ドデシルサルコシン酸ナトリウム(Sarkosyl)及び、非イオン性界面活性剤である、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(商品名:TritonX−100、及びNondietP−40)が用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
特定塩基配列の選択的増幅には、DNA配列中の、検出しようとする領域と相補する塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーと標識物を標識した逆鎖の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーが使用出来る。本発明に用いられるオリゴヌクレオチドプライマーは分析しようとする遺伝子DNAに合わせて、適宜任意調製して使用するものであり、プライマーとして機能しうるものであれば特に限定されるものでなく、又その調製に際しては通常行われているDNA合成機等を用いて行えば良い。増幅工程は、得られたゲノムDNAと、準備したオリゴヌクレオチドプライマーと必要な酵素、反応緩衝液とともに、常法に従って行うことができ、特定の手法に限定されるものではない。例えば、PCR増幅方法を具体的に説明すると、対象のゲノムDNAを90度以上の高温で1本鎖に解離させ(デナチュレーション反応)、次いで相補鎖が結合する温度に保持する(アニール反応)。ついでDNAポリメラーゼの活性温度に保つと、アニール反応時において、オリゴヌクレオチドプライマーが、ゲノムDNAにアニールしていれば、DNA合成酵素がデオキシヌクレオチド三リン酸を取り込み、鋳型伸長反応を行い(エクステンション)、目的の領域を含む二本鎖DNAが合成される。ついで再びデナチュレーション反応を行い一本鎖に解離させ、それぞれの一本鎖DNAに、もう一方のオリゴヌクレオチドプライマーとアニール反応が起これば、特定の長さの目的の二本鎖DNA4が得られ、これらの工程を20から30回繰り返すと、目的の二本鎖DNA4が100万コピー以上得られる。
【0062】
ハイブリダイゼイション工程では、DNA増幅工程を行った反応液に、オリゴヌクレオチドプローブを作用させる。このオリゴヌクレオチドプローブの塩基配列は、目的とするDNA配列中の、オリゴヌクレオチドプライマーの配列以外を選択し、更にこのオリゴヌクレオチドプローブ末端或いは末端から数塩基内側の領域に蛍光色素が標識されたものとする。
【0063】
精製工程では、ハイブリダイゼイション工程を行った反応液に、例えば標識物との結合物をコートした磁気ビーズを混在させ、次いで容器外より磁気を作用させることで、DNA増幅工程で使用した、標識物が、結合物と特異的結合を起こし、磁気ビーズに結合し、次いで容器外からの磁気的作用により磁気ビーズは強磁性体となり容器内に凝集する。この後ピペッタを用いて洗浄液を添加後、洗浄液の吸引と排出を繰り返すことで、精製することができる。
【0064】
検出工程は、精製工程を行った反応液に、ハイブリダイゼイション工程で用いた蛍光色素に、蛍光色素の励起波長を照射し、発光波長を光電子倍増素子によって検出することで行うことができる。この場合、検出器の構成としては光源、照射部、発光を調整する調整部、発光を受光する受光部を備えている。
【0065】
判定工程では、検出器での該蛍光標識物の検出データは目的別に設定された基準値と比較され、特定塩基配列が増幅したかしないかが判定される。検出データは増幅したDNAの量に相関があるので、定量的な測定にも使用することが出来る。なお基準値は、目的別の特定塩基配列の濃度に応じた蛍光強度をもとに設定される。
【0066】
この発明にかかる遺伝子診断装置の容器には、例えば一体成型して作られた容器は多数の独立した孔を設けておけば、多数の試料を一度に処理することができる。分注器は、試薬を定量的に概容器に分注することや、混合及び吸引除去が出来るため、DNA抽出工程におけるSDSや蛋白質分解酵素の注入、及びDNA増幅工程におけるオリゴヌクレオチドプライマー、必要な試薬、酵素、反応緩衝液の添加、及びハイブリダイゼイション工程におけるオリゴヌクレオチドプローブ、及び精製工程における磁気ビーズ等の添加、混合、オリゴヌクレオチドプローブの吸引除去に使用される。加温器により容易に容器内の液体を加温することが出来るので、DNA抽出工程における生体試料の加熱、蛋白質分解酵素の作用温度の保持、及びDNA増幅工程における、対象のゲノムDNAを高温で1本鎖に解離させる温度、相補鎖が結合する温度、DNA合成酵素を活性させ、鋳型伸長反応が行われる温度、及びハイブリダイゼイション工程における、二本鎖DNAを変性させ、一本鎖DNAに解離する温度、次いで一本鎖DNAとオリゴヌクレオチドプローブと相補鎖に結合させる温度に容易に保持することが出来る。また検出器により、検出工程におけるハイブリダイゼイション工程で用いたオリゴヌクレオチドプローブの標識物である蛍光色素に、蛍光色素の励起波長を照射し、発光波長を光電子倍増素子によって容易に検出することが出来る。また、搬送器によって容器を上記分注器、上記保冷室、上記加温器、上記検出器間に搬送することも出来る。
【実施例】
【0067】
図1および図2に、本発明のダイレクトメタノール燃料電池を電源とする遺伝子解析装置の1例、および該遺伝子解析装置を使用した遺伝子解析プロセスの1例を示す。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明により、商用電源が利用できない状況においても、簡便かつ迅速に生理活性物質の測定ができるようになるので、商用電源が配備されていない環境下や災害時にライフラインが分断された際において、臨床試験等における遺伝子解析を効率よく迅速に実施することが可能になると期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を電力源とし、以下の(1)〜(5)のすべてを含むことを特徴とする遺伝子解析装置。
(1)検体試料から核酸を抽出、増幅、精製を行う容器。
(2)上記抽出、増幅、精製に必要な試薬の注入、不要液体の除去を行う分注器。
(3)上記容器の加温する加温器。
(4)蛍光標識を検出する検出器。
(5)必要な処理工程を制御し、検出結果を解析、判定工程を支援するコントローラ。
【請求項2】
燃料電池が、ダイレクトメタノール燃料電池であることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子解析装置。
【請求項3】
装置から2m離れた位置での騒音レベルが40dB以下であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の遺伝子解析装置。
【請求項4】
燃料電池に使用する高分子電解質膜が、厚みが60μm以下であり、5Mメタノールのメタノール透過速度が10mmol/m・s以下である炭化水素系高分子膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遺伝子解析装置。

【図1】
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【図2】
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