遺体用体内物漏出抑制部材及び遺体処理装置
【課題】吸水体を遺体の内部へ挿入することによって体内物の漏出を抑制する場合に、吸水体が遺体の奥へ行き過ぎてしまうのを抑制して有効に作用する部位に留まるようにし、もって、体内物の水分量が多くても、体内物が外部へ漏出してしまうのを抑制する。
【解決手段】遺体用体内物漏出抑制部材1は、水分を吸収する複数の吸水体2と、吸水体3を収容するように形成された収容体3とを備えている。収容体3には、水を収容体3の内部へ通す通水孔が形成されている。
【解決手段】遺体用体内物漏出抑制部材1は、水分を吸収する複数の吸水体2と、吸水体3を収容するように形成された収容体3とを備えている。収容体3には、水を収容体3の内部へ通す通水孔が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体を処理する際に体内物が漏出するのを抑制する遺体用体内物漏出抑制部材、及び遺体用体内物漏出抑制部材を備えた遺体処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間は死後、各部の筋肉が弛緩し、体内物が漏出することが多い。この体内物の漏出は衛生的に好ましくなく、また、遺体の搬送作業等に悪影響を与えることになる。したがって、従来から遺体用封止部材によって遺体の体腔を封止し、体内物の漏出を抑制することが行われている。そして、封止部材を遺体の体腔各部に挿入する様々な遺体処理装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸水性粉末を筒状の案内部材に収容してなる遺体処理装置が開示されている。この装置を使用する場合には、案内部材の一端部を肛門へ挿入した後、案内部材内の吸水性粉末を押し部材で直腸へ押し出す。直腸へ押し出された吸水性粉末は、体内物の水分を吸収する。これにより、肛門からの体内物の漏出が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−19148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の遺体処理装置では、吸水性粉末を直腸へ押し出すようにしているが、押し出された吸水性粉末は、体内物の水分を吸収しながら、直腸の奥の方、即ち、S字結腸の方まで広がって行き、直腸の肛門側に留まらなくなることが考えられる。その結果、肛門側にある体内物の水分を十分に吸収できなくなり、特に体内物の水分量が多い場合には体内物が漏出してしまう懸念がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、吸水体を遺体の内部へ挿入することによって体内物の漏出を抑制する場合に、吸水体が遺体の奥へ行き過ぎてしまうのを抑制して有効に作用する部位に留まるようにし、もって、体内物の水分量が多くても、体内物が外部へ漏出してしまうのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、複数の吸水体を収容体に収容し、収容体に通水孔を形成して体内物の水分を通水孔から収容体の内部へ通して吸水体に吸水させるようにした。
【0008】
第1の発明は、遺体の体内物が外部へ漏出するのを抑制するために遺体の内部へ挿入される遺体用体内物漏出抑制部材において、水を吸収する複数の吸水体と、上記吸水体を収容するように形成された収容体とを備え、上記収容体には、水を該収容体の外部から内部へ通す通水孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、吸水体が収容体に収容された状態で遺体の内部に挿入される。遺体の体内物の水分は、収容体の通水孔を通って該収容体の内部に入り、吸水体に吸収される。このとき吸水体は、収容体に収容されているので、遺体の奥の方へ広がってしまうのが抑制される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、収容体は、伸縮性を有する部材で構成され、吸水体は、水に触れて膨張する水膨潤性を有していることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、体内物の水分が吸水体に触れると吸水体が膨潤する。吸水体が膨潤すると、収容体を構成する部材が伸びて遺体用体内物漏出抑制部材が拡大することになる。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材が例えば直腸に挿入されている場合には、直腸の内壁に密着するようになり、直腸が閉塞される。
【0012】
尚、遺体用体内物漏出抑制部材は、直腸以外にも、膣、尿道、耳孔、鼻孔、口腔、咽喉部、食道等の孔部に挿入することが可能である。
【0013】
第3の発明は、第1または2の発明において、収容体は、遺体への挿入方向への変形を抑制する変形抑制部を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、収容体が遺体への挿入方向に大きく変形しなくなるので、吸水体が遺体の奥の方へ行くのを確実に防止することが可能になる。
【0015】
第4の発明は、遺体の体内物が外部へ漏出するのを抑制するために遺体の内部へ挿入される遺体用体内物漏出抑制部材を備えた遺体処理装置において、上記遺体用体内物漏出抑制部材を収容する筒状に形成され、該遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の孔部から内部へ案内するための案内部材を備え、上記遺体用体内物漏出抑制部材は、水を吸収する複数の吸水体と、上記吸水体を収容するように形成された収容体とを備え、該収容体には、水を該収容体の外部から内部へ通す通水孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、遺体用体内物漏出抑制部材を案内部材により遺体の内部の所定部位まで容易に挿入可能となる。
【0017】
第5の発明は、第4の発明において、案内部材の遺体への挿入方向先端側には、遺体用体内物漏出抑制部材が遺体の奥の方へ深く入り込むのを規制するための挿入量規制部材が収容されていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の内部に挿入するのに先立って、挿入量規制部材が遺体の内部に挿入されることになる。従って、遺体用体内物漏出抑制部材が挿入量規制部材によって遺体の奥の方へ深く入り込むのが抑制される。
【0019】
第6の発明は、第5の発明において、挿入量規制部材は遺体の内部で膨張する膨張部材で構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、挿入量規制部材を遺体に挿入する前には小さくして挿入し易くすることが可能になる。
【0021】
第7の発明は、第4から6のいずれか1つの発明において、吸水体は、水に触れて膨張する水膨潤性を有しており、案内部材には、水を収容した水収容体が収容され、該水収容体よりも挿入方向基端側には該水収容体を先端側へ押す押し部材が設けられ、上記水収容体は、所定の力を受けた際に内部の水を流出させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、押し部材によって水収容体及び遺体用体内物漏出抑制部材が押されて案内部材から遺体の内部に挿入される。このとき、押し部材による押圧力を受けた水収容体から水を流出させることで、遺体用体内物漏出抑制部材の吸水体が水を吸収する。そして、吸水体がすばやく膨潤する。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材が例えば直腸に挿入されている場合には、直腸の内壁に密着して直腸を閉塞する。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明によれば、複数の吸水体を収容した収容体に通水孔を形成したので、遺体の体内物の水分を吸水体に吸収させながら、吸水体が遺体の奥の方へ広がるようになるのを抑制できる。これにより、吸水体を有効に作用させることのできる部位に留まらせることができ、体内物に水分量が多くても、体内物の漏出を抑制できる。
【0024】
第2の発明によれば、水膨潤性を有する吸水体を、伸縮する部材で構成された収容体に収容したので、遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の孔部に挿入した場合に、高い封止効果を得ることができる。
【0025】
第3の発明によれば、収容体が、遺体への挿入方向への変形を抑制する変形抑制部を備えているので、吸水体が遺体の奥の方へ行くのを確実に防止して、吸水体を有効に作用する部位に留まらせることができる。さらに、吸水体が水膨潤性を有している場合には、遺体用体内物漏出抑制部材が挿入方向と交差する方向に膨張するようになる。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材を例えば直腸に挿入している場合には、高い封止効果を得ることができる。
【0026】
第4の発明によれば、筒状に形成された案内部材によって遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の内部の所定部位まで挿入することができるので、遺体の処理作業を容易に、かつ、確実に行うことができる。
【0027】
第5の発明によれば、遺体用体内物漏出抑制部材が遺体の奥の方へ深く入り込むのを抑制するための挿入量規制部材を案内部材に収容したので、遺体用体内物漏出抑制部材を有効に作用させることのできる部位に留まらせることができ、体内物の漏出を殆ど無くすことができる。
【0028】
第6の発明によれば、挿入量規制部材が遺体の体内で膨張するので、遺体に挿入する前には挿入量規制部材を小さくして挿入し易くしながら、遺体用体内物漏出抑制部材が遺体の奥の方へ深く入り込むのを抑制できる。
【0029】
第7の発明によれば、案内部材に水収容体を収容し、この水収容体を押し部材で押すようにし、所定の力を受けた水収容体から水を流出させるようにしたので、遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の内部に挿入した状態で水収容体の水を吸水体に吸収させてすばやく膨潤させることができる。これにより、遺体の孔部を封止する効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態にかかる遺体用体内物漏出抑制部材の側面図である。
【図2】遺体用体内物漏出抑制部材の断面図である。
【図3】遺体用体内物漏出抑制部材の製造要領を示すものであり、筒状部材に糸を通した状態を示す図である。
【図4】筒状部材の端部を溶着した状態を示す図3相当図である。
【図5】1つの遺体用体内物漏出抑制部材が得られた状態を示す図3相当図である。
【図6】吸水性樹脂粉末が水を吸収した状態を示す図1相当図である。
【図7】遺体用体内物漏出抑制部材を直腸に使用する場合を説明する図である。
【図8】実施形態1の変形例1にかかる図2相当図である。
【図9】実施形態1の変形例2にかかる図2相当図である。
【図10】実施形態1の変形例3にかかる図2相当図である。
【図11】実施形態1の変形例4にかかる図1相当図である。
【図12】実施形態1にかかる袋体を構成する筒状部材の別の形状を示す図である。
【図13】実施形態2にかかる遺体処理装置の部分断面図である。
【図14】実施形態2の変形例1にかかる図13相当図である。
【図15】実施形態2の変形例2にかかる図13相当図である。
【図16】実施形態2の変形例3にかかる遺体処理装置が有する筒状部材の斜視図である。
【図17】実施形態2の変形例4にかかる図13相当図である。
【図18】実施形態2の変形例4にかかる図13相当図である。
【図19】実施形態2の変形例5にかかる図13相当図である。
【図20】実施形態2の変形例6にかかる図13相当図である。
【図21】実施形態3にかかる遺体処理装置の使用状態を説明する図である。
【図22】実施形態3にかかる遺体処理装置を用いて咽喉部を封止した状態を説明する図である。
【図23】実施形態3の変形例にかかる図21相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1にかかる遺体用体内物漏出抑制部材1を示すものである。遺体用体内物漏出抑制部材1は、吸水性を有する多数の吸水性樹脂粉末(吸水体)2と、吸水性樹脂粉末2を収容する袋体(収容体)3と、袋体3が所定方向に伸びるのを抑制するための変形抑制用糸(変形抑制部)4とを備えている。
【0033】
遺体用体内物漏出抑制部材1は、遺体の孔部に挿入されて体内物の水分を吸収することによって体内物の漏出を抑制するように構成されている。孔部とは、直腸、膣、尿道、耳孔、鼻孔、口腔、咽喉部、食道等である。また、体内物とは、上記孔部内に残存している物、体組織から孔部内へ流れ出た物があればその物等である。
【0034】
吸水性樹脂粉末2の粒子の大きさは、40メッシュ以上150メッシュ以下とされている。この実施形態では、吸水性樹脂粉末2として、アクリル系高分子架橋体を用いている。このアクリル系高分子架橋体は、水に触れて吸収し始めると膨張する水膨潤性を有している。また、アクリル系高分子架橋体は、水を吸収するとゲル状に変化し、ゲル状に変化した後には水に溶けない性質を持っている。吸水性樹脂粉末2としては、上記アクリル系高分子架橋体以外にも、吸収した水を離水させない樹脂、例えば、デンプン/アクリル酸塩グラフト共重合体、デンプン/アクリロニトリルグラフト共重合体、ポリエチレンオキシド架橋体物等を用いることも可能である。
【0035】
袋体3は、伸縮性のある布材で構成されている。具体的には、例えば熱溶着可能な樹脂からなる合成繊維でできた布材であり、全ての方向に伸縮する伸縮性を持っている。この袋体3を構成する布材は、内部の吸水性樹脂粉末2が水を吸収して膨潤する際の膨潤力によって伸びるようになっている。
【0036】
袋体3は、円筒に近い形状とされており、長手方向の両端面は袋体3の外部へ向けて湾曲した面で構成されている。袋体3の長手方向の寸法は、30mm以上60mm以下に設定されている。また、吸水性樹脂粉末2が収容された状態の袋体3の直径は、10mm以上20mm以下に設定されている。袋体3の長手方向の寸法及び直径は、遺体用体内物漏出抑制部材1を使用する孔部の大きさや、遺体の性別、体格、年齢等によって適当な値に変更するのが好ましい。
【0037】
袋体3の長手方向両端部は、詳細は後述するが、製造時における熱溶着によって閉じられており、この溶着部を符号3aで示す。袋体3を構成する繊維の太さは、例えば、10デニール以上20デニール以下が好ましいが、この範囲に限られるものではなく、繊維の強度等によって変更することができる。
【0038】
袋体3を構成する布材の繊維間には、袋体3の外部の水を内部へ通すための微細な通水孔が形成されている。通水孔の大きさは、内部の吸水性樹脂粉末2が外部に漏れないように、大部分の吸水性樹脂粉末2の大きさよりも小さく設定されている。
【0039】
袋体3には、遺体処置用のものであることを表示するようにしてもよい。その方法としては、遺体処置用である旨の文字を表示する方法や、マークを表示する方法がある。
【0040】
変形抑制用糸4は、長手方向に引っ張り力を加えた際に殆ど伸びない部材で構成されている。変形抑制用糸4としては、例えば、一般の裁縫に用いられる縫い糸や、ナイロン糸等が挙げられるが、焼却時に有害なガスが発生しない天然素材(綿、絹等)のものが好ましい。
【0041】
変形抑制用糸4の一端部は、袋体3の長手方向一端部の溶着部3aに固定され、また、変形抑制用糸4の他端部は、袋体3の長手方向他端部の溶着部3aに固定されている。従って、袋体3は、長手方向に縮むことは可能となっているが、変形抑制用糸4の長さ以上に伸びるように変形するのは該糸4によって抑制されることになる。つまり、吸水性樹脂粉末2が膨潤した際に、袋体3は、軸方向に比べて径方向に大きく拡大するようになる。
【0042】
袋体3の内部には、安定化二酸化塩素を収容してもよい。この安定化二酸化塩素を収容することで、遺体の内部において消臭及び病原菌の減少効果が得られる。また、安定化二酸化塩素の他に、消臭剤、殺菌剤や防腐剤等を収容してもよい。その他、芳香剤等を収容してもよい。
【0043】
次に、上記のように構成された遺体用体内物漏出抑制部材1の製造要領について説明する。
【0044】
まず、図3に示すように、袋体3となる筒状部材A、及び変形抑制用糸4となる糸Bを用意する。筒状部材A及び糸Bは、袋体3及び糸4の数倍以上長く形成されている。筒状部材Aには、他の部位よりも径の小さい小径部A1が長手方向に所定間隔をあけて設けられている。小径部A1の間隔は、袋体3の長さに対応している。小径部A1の長さは10mm程度である。また、筒状部材Aにおける小径部A1,A1間の部位は、小径部A1に近づくほど径が小さくなるように湾曲形成されている。
【0045】
そして、筒状部材A内に所定量の吸水性樹脂粉末2を収容する。また、筒状部材A内には、糸Bを収容する。糸Bの長手方向は、筒状部材Aの長手方向と略一致させる。
【0046】
その後、筒状部材Aの一番端(図3における左端)の小径部A1を絞り、閉塞する。絞った状態の小径部A1には、布材の溶融温度以上の熱を加え、小径部A1を溶融させた後、冷却して固化させる。これにより、図4に示すように、筒状部材Aの端部が溶着されて溶着部3aが形成される。このとき、糸Bの端部が筒状部材Aの溶着部3aに固定される。溶着部3aを形成するための器具としては、全周に略均一に熱を加えることができるものが好ましい。
【0047】
その後、同図に示すように、先に溶着した溶着部3aの隣りの小径部A1を絞り、筒状部材A内を区画する。次いで、今回絞った小径部A1に、上記したように熱を加え、該小径部A1を溶着する。この溶着部分にも糸Bが固定される。そして、溶着部分を切断する。これにより、図5に示すように、両端に溶着部3aを有する遺体用体内物漏出抑制部材1が得られる。
【0048】
上記のようにして得られた遺体用体内物漏出抑制部材1に収容された吸水性樹脂粉末2の量は、水分量の多い遺体であっても、体内物の水分を十分に吸収できる程度に設定されている。また、吸水性樹脂粉末2が水分を吸収して膨潤した際に、図6に示すように、袋体3の直径が膨潤前の4倍以上、好ましくは5倍以上となるように、吸水性樹脂粉末2の量が設定されている。具体的には、遺体の直腸に本発明を適用する場合には、膨張後の袋体3の直径は、50mm以上が好ましいが、この数値は、遺体の体格や性別等で変更することが可能である。
【0049】
次に、図7に基づいて上記遺体用体内物漏出抑制部材1を直腸に使用する要領について説明する。直腸に使用する場合の遺体用体内物漏出抑制部材1の長手方向の寸法は40mmであり、直径は14mmである。尚、遺体用体内物漏出抑制部材1の長手方向の寸法は、例えば、30mm程度であってもよいし、50mm程度であってもよく、この範囲内で設定するのが好ましい。また、遺体用体内物漏出抑制部材1の直径は、例えば10mm程度であってもよいし、20mm程度であってもよく、この範囲内で設定するのが好ましい。遺体用体内物漏出抑制部材1の直径は、遺体への挿入作業性を考慮すると細い方がよく、14mm以下が好ましい。
【0050】
図7(a)に示すように、遺体の処置者は、遺体用体内物漏出抑制部材1を例えば手で肛門から直腸へ押し込む。このとき、ピンセット等の挟持器具を用いて遺体用体内物漏出抑制部材1を挟持して直腸へ押し込んでもよい。図7(b)に示すように、遺体用体内物漏出抑制部材1の押し込み深さは、遺体用体内物漏出抑制部材1が肛門管近傍に存在するようにする。尚、遺体用体内物漏出抑制部材1を押し込む際には、例えば、2本の細い棒材(箸のようなもの)で遺体用体内物漏出抑制部材1を挟んで持ってから押し込んでもよいし、1本の棒材で押し込んでもよい。
【0051】
遺体用体内物漏出抑制部材1の周囲には体内物が存在しており、この体内物に含まれている水が袋体3の通水孔を通って袋体3の内部に達する。袋体3の内部に達した水は、吸水性樹脂粉末2に吸収される。水を吸収した吸水性樹脂粉末2は、袋体3に収容されているので、直腸の奥の方へ広がるのが抑制される。これにより、吸水性樹脂粉末2が有効に作用する部位に留まるので、体内物の水分量が多くても、体内物が肛門から外部へ漏出してしまうのを抑制できる。
【0052】
水を吸収した吸水性樹脂粉末2は膨潤する。図7(c)に示すように、吸水性樹脂粉末2の膨潤力によって袋体3が膨張する。このとき、袋体3には、長手方向両端部を結ぶように変形抑制用糸4が設けられているので、袋体3が長手方向に伸びるように変形するのが抑制される。これにより、袋体3は、径方向に大きく拡大して直腸の内壁に密着し、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸を略全周に亘って径方向外方へ向けて押圧する。袋体3は吸水前に比べて直径が4倍以上になろうとするので、直腸の内壁に対して十分な密着力が得られる。その結果、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸に栓をしたような状態となる。よって、直腸が確実に封止される。尚、吸水性樹脂粉末2のうち、袋体3の孔よりも小さいものは、袋体3の孔から外部へ出てしまうことが考えられるが、その量は僅かな量であるため、問題とはならない。
【0053】
以上説明したように、この実施形態1によれば、吸水性樹脂粉末2を袋体3に収容し、その袋体3が通水孔を有しているので、遺体の体内物の水分を吸水性樹脂粉末2に吸収させながら、吸水性樹脂粉末2が遺体の奥の方へ広がるようになるのを抑制できる。これにより、吸水性樹脂粉末2を有効に作用させることのできる部位に留まらせることができ、体内物に水分量が多くても、体内物の漏出を抑制できる。
【0054】
尚、袋体3には、吸水性樹脂粉末2の代わりに、例えば、水膨潤性繊維(吸水体)を収容してもよい。水膨潤性繊維としては、アクリル繊維の内層と吸水性樹脂からなる外層とで構成された東洋紡績株式会社製のランシール(登録商標)F又はランシール(登録商標)Kを用いることができる。この水膨潤繊維の吸水速さは、水に接触すると約10秒で平衡吸水量の約50%以上に達する速さである。また、この水膨潤繊維は、吸水した後は、多少の圧力を加えても離水せず、また、水には殆ど溶けない性質を持っている。さらに、この水膨潤繊維は、吸水後の繊維径が吸水前の繊維径の約5倍以上に拡大する一方、繊維の長さ方向の寸法は、アクリル繊維で維持されて殆ど変化しない。また、水膨潤繊維の繊維物性はアクリル繊維で維持されているので、外層の吸水性樹脂が吸水しても殆ど低下しないようになっている。
【0055】
上記水膨潤性繊維にはカルボキシル基があり、このカルボキシル基により体内物のアンモニアが選択的に吸着されるようになっている。これにより、臭気の軽減が可能となる。
【0056】
袋体3には、吸水性樹脂粉末2と上記水膨潤性繊維とを収容してもよい。この場合、吸水性樹脂粉末2を水膨潤性繊維に混ぜるのが好ましい。
【0057】
また、袋体3は、例えば、ネット状の部材、不織布、織布等の様々な部材で構成することができる。好ましいのは、ストッキングのような伸縮性を有する布材であるが、伸縮性の無い部材で構成する場合には、予め折り畳んでおき、吸水性樹脂粉末2が吸水したら袋体3が膨張するようにすればよい。
【0058】
袋体3の素材としては、例えは、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維や、ポリウレタン、ナイロン等の合成繊維、有機繊維、カーボン繊維等の無機繊維、ゴム等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、袋体3を構成する部材は、複数種の繊維を組み合わせてなるものであってもよい。また、袋体3は、繊維からなるベース層に、該ベース層の繊維とは異なる繊維からなる別の層を積層した多層構造であってもよい。
【0059】
袋体3を、水を通さない素材で構成する場合には、通水孔を該素材に形成すればよい。通水孔は袋体3の全体に略均一に形成してもよいし、一部にのみ形成してもよい。また、通水孔の密度を袋体3の部位によって異ならせてもよい。通水孔は、袋体3の少なくとも挿入方向先端面に形成しておくのが好ましい。これにより、直腸に存在している体内物の水分が肛門側へ流れてきた場合に、その水分を袋体3内へ確実に導入して吸水性樹脂粉末2に吸収させることが可能になり、吸水性樹脂粉末2を十分に膨潤させることができる。
【0060】
袋体3の伸縮性は、繊維の織り方や編み方で得られるものであってもよいし、ゴムのように繊維自体が伸縮性を有することによって得られるものであってもよい。
【0061】
また、変形抑制用糸4は省略することもできる。
【0062】
また、実施形態1にかかる遺体用体内物漏出抑制部材1を、筒状の案内部材に挿入して遺体処理装置を構成し、案内部材によって遺体用体内物漏出抑制部材1を肛門や膣、尿道、鼻孔、耳孔、口腔、咽喉部へ挿入するようにしてもよい。
【0063】
また、袋体3の溶着部3aの代わりに、袋体3の端部を糸で縛ったり、糸で縫うことによって閉じるようにしてもよい。また、袋体3の端部を止め具で閉塞するようにしてもよい。
【0064】
(変形例1)
遺体用体内物漏出抑制部材1の形状は、袋体3の形状によって様々な形状にすることができる。例えば、図8に示す変形例1のように、長手方向の両端面を略平坦にしてもよい。
【0065】
(変形例2)
遺体用体内物漏出抑制部材1の形状は、図9に示す変形例2のように、長手方向両端部に近づくに従って細くなるような形状であってもよい。
【0066】
(変形例3)
遺体用体内物漏出抑制部材1の形状は、図10に示す変形例3のように、長手方向の一端面を湾曲させ、他端面を略平坦にしてもよい。
【0067】
(変形例4)
図11に示す変形例4のように、遺体用体内物漏出抑制部材1の袋体3の長手方向両端部(太線で示す部分)にのみ、伸縮しない部分、即ち非伸縮性部分3bを設けてもよい。
【0068】
その他、非伸縮性部分3bを設ける代わりに、当該部分が通水性を有し、他の部分が通水性を有しないように構成してもよい。通水性を有する部分には、微細な通水孔を形成しておけばよい。
【0069】
上記変形例1〜4では、変形抑制用糸4を省略しているが、変形抑制用糸4を設けてもよい。また、変形抑制用糸4は、2本以上設けてもよい。
【0070】
尚、図12に示すように、袋体3を構成する筒状部材Aは、小径部A1を設けることなく、両端に亘って同じ径としてもよいが、小径部A1を形成した方が絞ったときに周りにシワができにくくなるので好ましい。
【0071】
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2にかかる遺体処理装置10を示すものである。この実施形態2にかかる遺体処理装置10は、実施形態1で説明した遺体用体内物漏出抑制部材1と、遺体用体内物漏出抑制部材1を収容して直腸へ案内するための案内部材11と、案内部材11に収容された遺体用体内物漏出抑制部材1を押し出すための押し部材12とを備えている。
【0072】
案内部材11は、樹脂を円筒状に成形してなるものである。案内部材11の軸方向の寸法は、例えば、85mm以上100mm以下、外径は、遺体用体内物漏出抑制部材1の直径と略同じか、若干大きめまたは小さめに設定されており、例えば、20mm以上30mm以下が好ましい。案内部材11の肉厚は0.5mm以上2.0mm以下に設定されている。遺体用体内物漏出抑制部材1は袋体3に吸水性樹脂粉末2を収容したものなので、変形自在であり、案内部材11へは容易に収容可能である。案内部材11は、樹脂以外にも、例えば、強度のある厚紙等で構成してもよい。
【0073】
案内部材11の長手方向一端部(図13の左端部)の内面には、該案内部材11に挿入された押し部材12が脱落するのを防止するための脱落防止用突起13が形成されている。脱落防止用突起13は、案内部材11の周方向に連続させてもよいし、周方向の一部にのみ形成してもよい。脱落防止用突起13の高さは0.5mm程度でよい。
【0074】
また、案内部材11の長手方向他端部(図13の右端部)の周縁には、複数の羽状部14が周方向に並ぶように形成されている。周方向に隣り合う羽状部14の間には所定の隙間が形成されているが、この隙間は省略してもよい。
【0075】
羽状部14は、案内部材11の他端部を構成している。羽状部14は、案内部材11の他端部が先細となるように、径方向中心へ向けて湾曲している。これにより、案内部材11の他端部が湾曲した形状となり、遺体の直腸へ挿入し易くできる。また、使用前は、羽状部14によって案内部材11の他端部は半分程度閉じられる。
【0076】
羽状部14の先端は丸く形成されている。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1が羽状部14の先端に引っ掛からなくなるので、袋体3が破れてしまうのを抑制できる。また、羽状部14は弾性変形するようになっている。案内部材11の内部に収容された遺体用体内物漏出抑制部材1を押し部材12で押し出す際に羽状部14が案内部材11の外方へ向かって開くように変形し、これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1をスムーズに押し出すことが可能となっている。羽状部14は、省略してもよい。
【0077】
案内部材11の外面には、案内部材11を遺体の直腸へ挿入した際に挿入量が所定量以上となるのを規制するためのストッパ15が形成されている。ストッパ15は、案内部材11の径方向外方へ延びる板状をなしている。ストッパ15は、遺体の肛門の周囲に外方から当接することで、案内部材11の挿入を規制するように構成されている。ストッパ15の案内部材11長手方向の位置は、肛門の周囲に当接した時点で案内部材11の他端部が肛門管内に位置するように設定されている。つまり、案内部材11の直腸への挿入量は、数十mm程度である。ストッパ15は、案内部材11の全周に連続する板で構成してもよいし、案内部材11の周方向の一部にのみ設けられた板で構成してもよい。また、ストッパ15は案内部材11の外面から突出する棒状や突起状のものであってもよい。
【0078】
尚、ストッパ15は省略してもよい。また、ストッパ15の代わりに、挿入量の目安を示す目盛や、マーク(目印)等を設けてもよい。マークは、例えば、文字、図形、案内部材11の本体部分とは異なる色に着色された着色部、案内部材11の外面に形成した段差部、突起部、突条部等で構成してもよい。ストッパ15とマークとを両方設けてもよい。
【0079】
案内部材11の一端部には、外方へ延出するフランジ16が形成されている。このフランジ16は、処置者が押し部材12を操作する際に指を掛けるためのものである。フランジ16は案内部材11の全周に亘って設けてもよいし、周方向の一部にのみ設けてもよい。
【0080】
案内部材11の外面は、他端に近づくほど小径となるようなテーパー面で構成してもよい。また、案内部材11は円筒形状が好ましいが、角筒形状であってもよい。
【0081】
押し部材12は、棒材12aと、棒材12aの案内部材11内に挿入される側の端部に設けられたピストン12bとを備えている。棒材12aは樹脂材で構成されており、処置者が操作することが可能となっている。ピストン12bは、例えば、ゴム等の弾性部材で構成されており、案内部材11内を長手方向に摺動するようになっている。尚、棒材12aとピストン12bとを一体成形してもよい。
【0082】
次に、上記のように構成された遺体処理装置1を直腸に使用する要領について説明する。まず、案内部材11の他端部を肛門へ挿入する。このとき、案内部材11の他端部が先細形状であるため、挿入作業性は良好である。案内部材11の他端部を挿入していき、ストッパ15が肛門の周囲に当接したら案内部材11の挿入を停止する。
【0083】
その後、押し部材12を案内部材11内に押し込んでいく。このとき、処置者はフランジ16に指を掛けておく。これにより、押し部材12を押し込んでいく操作が容易に行える。
【0084】
押し部材12に押された遺体用体内物漏出抑制部材1は、羽状部14に当たり、該羽状部14を押して案内部材11の外方へ曲げる。これにより、案内部材11の他端部が開き、遺体用体内物漏出抑制部材1が案内部材11から直腸に挿入される。直腸に挿入された遺体用体内物漏出抑制部材1は、実施形態1と同様に膨張して直腸を封止する。
【0085】
以上説明したように、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、体内物に水分量が多くても、体内物の漏出を抑制できる。
【0086】
また、案内部材11を用いることで、遺体用体内物漏出抑制部材1を狙い通りの位置に容易に、かつ、確実に挿入できる。
【0087】
案内部材11内には、遺体用体内物漏出抑制部材1を複数個収容してもよい。この場合、大きさの異なる遺体用体内物漏出抑制部材1を収容してもよい。
【0088】
また、案内部材11に遺体用体内物漏出抑制部材1を収容する作業は、遺体の処置を行う直前に処置者が行うようにしてもよいし、遺体処理装置10の製造現場(工場)で行ってもよい。
【0089】
案内部材11の外面には潤滑剤を塗布してもよい。
【0090】
(変形例1)
図14に示す変形例1のように、案内部材11には、例えば、上記した水膨潤性繊維からなる吸水体18を遺体用体内物漏出抑制部材1よりも押し部材12側に収容してもよい。吸水体18は、水膨潤性繊維を束ねて円柱状にしたものである。この吸水体18は遺体用体内物漏出抑制部材1と共に案内部材11から押し出されて体内物の水分を吸収する。水分を吸収した吸水体18は、各繊維が膨潤することで径が拡大する。吸水体18の径が拡大することで、吸水体18によっても直腸が封止されることになる。吸水体18の長さは、例えば、10mm以上が好ましい。
【0091】
吸水体18の形状は、円柱状に限られるものではなく、様々な形状にすることができるが、案内部材11からスムーズに押し出すためには、案内部材11の内面に沿う形状が好ましい。
【0092】
また、吸水体18は、案内部材11の遺体用体内物漏出抑制部材1よりも羽状部14側に収容してもよい。また、吸水体18は、案内部材11における遺体用体内物漏出抑制部材1の長手方向両側にそれぞれ収容してもよい。吸水体18は、吸水性スポンジ等で構成することも可能である。
【0093】
(変形例2)
図15に示す変形例2のように、案内部材11の他端部には、他端部の開口を閉塞するための閉塞部20を設けてもよい。閉塞部20は、案内部材11とは別体にして、案内部材11の他端部の外側に離脱可能に嵌められている。閉塞部20は、焼却時に有害ガスを発生しない部材で構成するのが好ましく、例えば、紙等が挙げられる。遺体用体内物漏出抑制部材1を押し部材12で押し出す際に、その力によって閉塞部20が案内部材11から離脱するようになっている。
【0094】
閉塞部20は、案内部材11の内側に設けてもよい。
【0095】
閉塞部20は案内部材11に接着してもよいし、閉塞部20と案内部材11との少なくとも一方に爪等の係合部を設け、この係合部を他方に係合させることによって閉塞部20を案内部材11に取り付けるようにしてもよい。
【0096】
また、閉塞部20は、案内部材11と一体成形してもよい。この場合、閉塞部20は、遺体用体内物漏出抑制部材1の押出し時の力を受けて破れて開口するような脆弱なフィルム状にするのが好ましい。
【0097】
(変形例3)
図16に示す変形例3のように、遺体用体内物漏出抑制部材1に、該遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸の奥へ深く入り込み過ぎるのを防止するための糸21を設けてもよい。この糸21の長さは、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸に完全に挿入された状態で肛門から外部へ余裕を持って出るように設定されている。遺体用体内物漏出抑制部材1が何らかの原因によって直腸内の狙いとする部位よりも深く挿入されてしまった場合には、処置者が糸21を肛門の外から引っ張ることで、遺体用体内物漏出抑制部材1を手前に引き寄せ、狙いとする位置に位置付けることができる。
【0098】
尚、糸21の代わりに、例えばワイヤ等を設けてもよく、長尺状で、可撓性を有する部材であれば特に限定されない。また、糸21は、遺体用体内物漏出抑制部材1を直腸に挿入した後に切り取ることも可能である。また、処置後、糸21を肛門から直腸へ挿入してもよい。
【0099】
(変形例4)
図17及び図18に示す変形例4のように、筒状部材22を案内部材11に収容し、遺体用体内物漏出抑制部材1と共に直腸へ押し出すようにしてもよい。筒状部材22の径は、筒状部材22の外面が案内部材11の内面に接する程度に設定されている。筒状部材22の軸方向の寸法は、遺体用体内物漏出抑制部材1の長手方向の寸法と略同じに設定されている。この筒状部材22の内部に遺体用体内物漏出抑制部材1が収容可能となっている。筒状部材22は例えば厚紙や樹脂シート等を丸めて筒状にしてなるものであり、押し部材12によって軸方向の押圧力を受けたときに、潰れ変形しないような剛性を有している。筒状部材22の周壁部には複数の開口部22aが形成されている。
【0100】
遺体用体内物漏出抑制部材1を押し部材12で押し出す際には、ピストン12bが筒状部材22の端部に当接する。この筒状部材22は軸方向には潰れ変形し難いので、ピストン12bの押圧力を受けた筒状部材22は殆ど変形することなく、内部に遺体用体内物漏出抑制部材1を収容した状態で案内部材11から外部に出ていく。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1を直接押圧した場合のように遺体用体内物漏出抑制部材1が案内部材11内で変形しなくなる。その結果、遺体用体内物漏出抑制部材1が案内部材11の内面に強く摺接するようになるのを防止でき、遺体用体内物漏出抑制部材1をスムーズに押し出すことができる。
【0101】
遺体用体内物漏出抑制部材1が膨張すると筒状部材22が開いていき、遺体用体内物漏出抑制部材1から離脱する。よって、筒状部材22が遺体用体内物漏出抑制部材1の膨張を阻害することはない。
【0102】
(変形例5)
図19に示す変形例5のように、案内部材11における遺体への挿入方向先端側には、遺体用体内物漏出抑制部材1が遺体の奥の方へ深く入り込むのを規制するための挿入量規制部材25を収容してもよい。この挿入量規制部材25は、遺体の内部で膨張する部材で構成されており、例えば、スポンジ等の発泡樹脂材や、圧縮されたタオル等で構成されている。この変形例5では、遺体用体内物漏出抑制部材1の挿入前に、挿入量規制部材25が遺体に挿入されることになる。遺体に挿入された挿入量規制部材25は膨張して直腸を閉塞するような状態となる。このとき、圧縮タオル(膨張部材)であれば、体内物の水分を吸収して膨張することになる。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸の奥の方へ入り込んで行こうとするのが規制される。
【0103】
(変形例6)
図20に示す変形例6のように、案内部材11における遺体用体内物漏出抑制部材1よりも基端側には、水を収容した水収容袋(水収容体)26を設けてもよい。水収容袋26は、例えば、樹脂フィルム等の材料で構成されている。この変形例6では、押し部材12のピストン12bの端面に、水収容袋26と対向するように突起12cが形成されている。突起12cの先端は尖っており、水収容袋26に刺さるようになっている。
【0104】
押し部材12を押すと、突起12cが水収容袋26に刺さり、水収容袋26が破れるようになっている。つまり、水収容袋26は、押し部材12から突起12cが刺さる程度の力を受けた際に内部の水を流出させるように構成されている。
【0105】
変形例6では、押し部材12によって水収容袋26及び遺体用体内物漏出抑制部材1が押されて案内部材11から遺体の内部に挿入される。このとき、押し部材12の突起12cが水収容袋26に刺さり、水収容袋26から水が流出する。水収容袋26から流出した水は、遺体用体内物漏出抑制部材1の吸水性樹脂粉末2によって吸収される。そして、吸水性樹脂粉末2が膨潤する。これにより、袋体3を素早く膨張させることができるので、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸の内壁に早く密着するようになる。
【0106】
水収容袋26は、押し部材22で押されたときに、その押圧力によって破れるような部材で構成してもよい。
【0107】
この実施形態2では、遺体処理装置10を直腸に適用した場合について説明したが、これに限らず、膣、尿道、耳孔、鼻孔、口腔、咽喉部、食道等にも適用できる。案内部材11や押し部材12は、各孔部に適した形状にすればよい。
【0108】
(実施形態3)
図21は、実施形態3にかかる遺体処理装置30の使用状態を示すものである。この実施形態3にかかる遺体処理装置30は、実施形態1で説明した遺体用体内物漏出抑制部材1と、遺体用体内物漏出抑制部材1を収容して咽喉部へ案内するための案内部材31と、案内部材31に収容された遺体用体内物漏出抑制部材1を押し出すための押し部材32とを備えている。
【0109】
案内部材31は、樹脂を円筒状に成形してなるものであり、口から咽喉部へ挿入される。案内部材31の軸方向の寸法は、例えば、150mm以上250mm以下、外径は、遺体用体内物漏出抑制部材1の直径と略同じか、若干大きめまたは小さめに設定されており、例えば、20mm以上30mm以下が好ましい。案内部材31の肉厚は0.5mm以上2.0mm以下に設定されている。
【0110】
案内部材31の外面には、案内部材31を遺体の口から咽喉部へ挿入した際に挿入量が所定量以上となるのを規制するためのストッパ35が形成されている。ストッパ35は、案内部材31の径方向外方へ延びる板状をなしている。ストッパ35は、遺体の口の周囲(唇)に外方から当接することで、案内部材31の挿入を規制するように構成されている。ストッパ35の案内部材31長手方向の位置は、唇に当接した時点で案内部材31の挿入方向先端部が舌を越えた所に位置するように設定されている。
【0111】
ストッパ35は、案内部材31の全周に連続する板で構成してもよいし、案内部材31の周方向の一部にのみ設けられた板で構成してもよい。また、ストッパ35は案内部材31の外面から突出する棒状であってもよい。ストッパ35は、唇以外にも、鼻の周囲や、あご、頬等に当てるようにしてもよい。ストッパ35を案内部材31とは別部材で構成してもよい。
【0112】
尚、ストッパ35は省略してもよい。また、ストッパ35の代わりに、挿入量の目安を示す目盛や、マーク(目印)等を設けてもよい。マークは、例えば、文字や図形、案内部材31の本体部分とは異なる色に着色された着色部や、案内部材31の外面に形成した段差部等で構成してもよい。
【0113】
案内部材31の外面は、他端に近づくほど小径となるようなテーパー面で構成してもよい。また、案内部材31は円筒形状が好ましいが、角筒形状であってもよい。
【0114】
押し部材32は、案内部材31よりも十分に長いロッド32aと、ロッド32aの挿入方向先端部に設けられたピストン32bとを備えている。ロッド32aは処置者が操作可能となっている。ピストン32bは、案内部材31内を軸方向に移動可能となっている。ピストン32bによって遺体用体内物漏出抑制部材1が押し出されるようになっている。
【0115】
次に、上記のように構成された遺体処理装置30の使用要領について説明する。遺体用体内物漏出抑制部材1は案内部材31の挿入方向先端側に収容しておく。この状態で、案内部材31を遺体の口から咽喉部へ向けて挿入していく。ストッパ35が唇に当接したら案内部材31の挿入を停止する。ストッパ35が唇に接近した状態で案内部材31の挿入を停止してもよい。
【0116】
その後、押し部材32を案内部材31内に押し込んでいく。押し部材32に押された遺体用体内物漏出抑制部材1は、案内部材31の先端部から咽喉部に挿入される。咽喉部に挿入された遺体用体内物漏出抑制部材1の吸水性樹脂粉末2は、体内物の水を吸収する。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1が実施形態1と同様に機能し、吸水性樹脂粉末2が遺体の奥の方へ広がるようになるのを抑制できる。よって、図22に示すように咽喉部が封止される。
【0117】
以上説明したように、この実施形態3によれば、実施形態1と同様に、体内物に水分量が多くても、体内物の漏出を抑制できる。
【0118】
案内部材31の外面には潤滑剤を塗布してもよい。
【0119】
尚、人体の解剖において口腔から咽喉部にかけては湾曲しているので、この湾曲形状に対応するように、案内部材32を湾曲形成してもよい。これにより、案内部材32をスムーズに咽喉部まで挿入できる。
【0120】
また、図23に示す変形例のように、遺体用体内物漏出抑制部材1を鼻孔から咽喉部へ挿入するようにしてもよい。
【0121】
また、実施形態3において、実施形態2の変形例5のように、案内部材31の内部に水収容袋を収容して遺体への挿入の際に水を流出させるようにしてもよい。
【0122】
また、実施形態3において、遺体用体内物漏出抑制部材1を案内部材11に複数収容するようにしてもよい。
【0123】
また、遺体用体内物漏出抑制部材1をピンセット等の挟持器具を用いて咽喉部へ挿入するようにしてもよい。また、遺体用体内物漏出抑制部材1を処置者が手を用いて咽喉部へ挿入してもよい。
【0124】
また、例えば、直腸用の遺体用体内物漏出抑制部材1、及び咽喉部用の遺体用体内物漏出抑制部材1をセットにしてパッケージ化してもよい。このパッケージには、例えば、耳孔に挿入する栓部材、鼻孔に挿入する栓部材、遺体用の化粧品等のうち、少なくとも1つを含めてもよい。また、パッケージには、膣用の遺体用体内物漏出抑制部材1を含めてもよい。
【0125】
また、袋体3の表面には、多数の毛を設けてもよい。毛を設ける方法としては、例えば植毛や、布を毛ばただせる方法等が挙げられる。毛は各種繊維等で構成することができる。袋体3の表面に毛を設けることで、袋体3が膨張した際に、表面の毛が遺体の組織に密着して組織が毛の形状に対応して変形する。これにより、袋体3が組織に対して滑り難くなるので、遺体用体内物漏出抑制部材1を所望位置に留まらせておくことができる。また、袋体3の表面には、毛以外にも、例えば、突起や凹部、突条部、凹条部等を設けて、これらを遺体の組織に対する滑り止めとして利用してもよい。
【0126】
また、変形抑制糸4の代わりに、長手方向に圧縮力を受けたときに抗力を有し曲がり難い棒状の部材を用いてもよい。このような棒状部材を用いることで、遺体用体内物漏出抑制部材1を遺体に挿入する際に軸方向に押圧したとき、棒状部材が突っ張るように作用することになり、遺体用体内物漏出抑制部材1を遺体の孔部内に確実に挿入することが可能になる。また、棒状部材の存在により遺体用体内物漏出抑制部材1の挿入途中における変形が抑制されるので、遺体用体内物漏出抑制部材1を確実に挿入することが可能になる。また、この棒状部材が上記変形抑制糸4と同様に、軸方向に引張力を受けた際に伸びないのが好ましい。
【0127】
また、遺体用体内物漏出抑制部材1は、例えば、犬や猫等の動物(ペット)の遺体にも使用できる。この場合、大型のペット用のものと小型のペット用のものとを用意するのが好ましい。案内部材11、31も同様にペットの遺体にも使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上説明したように、本発明にかかる遺体用体内物漏出抑制部材及び遺体処理装置は、遺体を処置する際に使用できる。
【符号の説明】
【0129】
1 遺体用体内物漏出抑制部材
2 吸水性樹脂粉末(吸水体)
3 袋体(収容体)
4 変形抑制用糸(変形抑制部)
11 案内部材
12 押し部材
25 挿入量規制部材
26 水収容袋(水収容体)
31 案内部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体を処理する際に体内物が漏出するのを抑制する遺体用体内物漏出抑制部材、及び遺体用体内物漏出抑制部材を備えた遺体処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間は死後、各部の筋肉が弛緩し、体内物が漏出することが多い。この体内物の漏出は衛生的に好ましくなく、また、遺体の搬送作業等に悪影響を与えることになる。したがって、従来から遺体用封止部材によって遺体の体腔を封止し、体内物の漏出を抑制することが行われている。そして、封止部材を遺体の体腔各部に挿入する様々な遺体処理装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸水性粉末を筒状の案内部材に収容してなる遺体処理装置が開示されている。この装置を使用する場合には、案内部材の一端部を肛門へ挿入した後、案内部材内の吸水性粉末を押し部材で直腸へ押し出す。直腸へ押し出された吸水性粉末は、体内物の水分を吸収する。これにより、肛門からの体内物の漏出が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−19148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の遺体処理装置では、吸水性粉末を直腸へ押し出すようにしているが、押し出された吸水性粉末は、体内物の水分を吸収しながら、直腸の奥の方、即ち、S字結腸の方まで広がって行き、直腸の肛門側に留まらなくなることが考えられる。その結果、肛門側にある体内物の水分を十分に吸収できなくなり、特に体内物の水分量が多い場合には体内物が漏出してしまう懸念がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、吸水体を遺体の内部へ挿入することによって体内物の漏出を抑制する場合に、吸水体が遺体の奥へ行き過ぎてしまうのを抑制して有効に作用する部位に留まるようにし、もって、体内物の水分量が多くても、体内物が外部へ漏出してしまうのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、複数の吸水体を収容体に収容し、収容体に通水孔を形成して体内物の水分を通水孔から収容体の内部へ通して吸水体に吸水させるようにした。
【0008】
第1の発明は、遺体の体内物が外部へ漏出するのを抑制するために遺体の内部へ挿入される遺体用体内物漏出抑制部材において、水を吸収する複数の吸水体と、上記吸水体を収容するように形成された収容体とを備え、上記収容体には、水を該収容体の外部から内部へ通す通水孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、吸水体が収容体に収容された状態で遺体の内部に挿入される。遺体の体内物の水分は、収容体の通水孔を通って該収容体の内部に入り、吸水体に吸収される。このとき吸水体は、収容体に収容されているので、遺体の奥の方へ広がってしまうのが抑制される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、収容体は、伸縮性を有する部材で構成され、吸水体は、水に触れて膨張する水膨潤性を有していることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、体内物の水分が吸水体に触れると吸水体が膨潤する。吸水体が膨潤すると、収容体を構成する部材が伸びて遺体用体内物漏出抑制部材が拡大することになる。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材が例えば直腸に挿入されている場合には、直腸の内壁に密着するようになり、直腸が閉塞される。
【0012】
尚、遺体用体内物漏出抑制部材は、直腸以外にも、膣、尿道、耳孔、鼻孔、口腔、咽喉部、食道等の孔部に挿入することが可能である。
【0013】
第3の発明は、第1または2の発明において、収容体は、遺体への挿入方向への変形を抑制する変形抑制部を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、収容体が遺体への挿入方向に大きく変形しなくなるので、吸水体が遺体の奥の方へ行くのを確実に防止することが可能になる。
【0015】
第4の発明は、遺体の体内物が外部へ漏出するのを抑制するために遺体の内部へ挿入される遺体用体内物漏出抑制部材を備えた遺体処理装置において、上記遺体用体内物漏出抑制部材を収容する筒状に形成され、該遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の孔部から内部へ案内するための案内部材を備え、上記遺体用体内物漏出抑制部材は、水を吸収する複数の吸水体と、上記吸水体を収容するように形成された収容体とを備え、該収容体には、水を該収容体の外部から内部へ通す通水孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、遺体用体内物漏出抑制部材を案内部材により遺体の内部の所定部位まで容易に挿入可能となる。
【0017】
第5の発明は、第4の発明において、案内部材の遺体への挿入方向先端側には、遺体用体内物漏出抑制部材が遺体の奥の方へ深く入り込むのを規制するための挿入量規制部材が収容されていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の内部に挿入するのに先立って、挿入量規制部材が遺体の内部に挿入されることになる。従って、遺体用体内物漏出抑制部材が挿入量規制部材によって遺体の奥の方へ深く入り込むのが抑制される。
【0019】
第6の発明は、第5の発明において、挿入量規制部材は遺体の内部で膨張する膨張部材で構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、挿入量規制部材を遺体に挿入する前には小さくして挿入し易くすることが可能になる。
【0021】
第7の発明は、第4から6のいずれか1つの発明において、吸水体は、水に触れて膨張する水膨潤性を有しており、案内部材には、水を収容した水収容体が収容され、該水収容体よりも挿入方向基端側には該水収容体を先端側へ押す押し部材が設けられ、上記水収容体は、所定の力を受けた際に内部の水を流出させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、押し部材によって水収容体及び遺体用体内物漏出抑制部材が押されて案内部材から遺体の内部に挿入される。このとき、押し部材による押圧力を受けた水収容体から水を流出させることで、遺体用体内物漏出抑制部材の吸水体が水を吸収する。そして、吸水体がすばやく膨潤する。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材が例えば直腸に挿入されている場合には、直腸の内壁に密着して直腸を閉塞する。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明によれば、複数の吸水体を収容した収容体に通水孔を形成したので、遺体の体内物の水分を吸水体に吸収させながら、吸水体が遺体の奥の方へ広がるようになるのを抑制できる。これにより、吸水体を有効に作用させることのできる部位に留まらせることができ、体内物に水分量が多くても、体内物の漏出を抑制できる。
【0024】
第2の発明によれば、水膨潤性を有する吸水体を、伸縮する部材で構成された収容体に収容したので、遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の孔部に挿入した場合に、高い封止効果を得ることができる。
【0025】
第3の発明によれば、収容体が、遺体への挿入方向への変形を抑制する変形抑制部を備えているので、吸水体が遺体の奥の方へ行くのを確実に防止して、吸水体を有効に作用する部位に留まらせることができる。さらに、吸水体が水膨潤性を有している場合には、遺体用体内物漏出抑制部材が挿入方向と交差する方向に膨張するようになる。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材を例えば直腸に挿入している場合には、高い封止効果を得ることができる。
【0026】
第4の発明によれば、筒状に形成された案内部材によって遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の内部の所定部位まで挿入することができるので、遺体の処理作業を容易に、かつ、確実に行うことができる。
【0027】
第5の発明によれば、遺体用体内物漏出抑制部材が遺体の奥の方へ深く入り込むのを抑制するための挿入量規制部材を案内部材に収容したので、遺体用体内物漏出抑制部材を有効に作用させることのできる部位に留まらせることができ、体内物の漏出を殆ど無くすことができる。
【0028】
第6の発明によれば、挿入量規制部材が遺体の体内で膨張するので、遺体に挿入する前には挿入量規制部材を小さくして挿入し易くしながら、遺体用体内物漏出抑制部材が遺体の奥の方へ深く入り込むのを抑制できる。
【0029】
第7の発明によれば、案内部材に水収容体を収容し、この水収容体を押し部材で押すようにし、所定の力を受けた水収容体から水を流出させるようにしたので、遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の内部に挿入した状態で水収容体の水を吸水体に吸収させてすばやく膨潤させることができる。これにより、遺体の孔部を封止する効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態にかかる遺体用体内物漏出抑制部材の側面図である。
【図2】遺体用体内物漏出抑制部材の断面図である。
【図3】遺体用体内物漏出抑制部材の製造要領を示すものであり、筒状部材に糸を通した状態を示す図である。
【図4】筒状部材の端部を溶着した状態を示す図3相当図である。
【図5】1つの遺体用体内物漏出抑制部材が得られた状態を示す図3相当図である。
【図6】吸水性樹脂粉末が水を吸収した状態を示す図1相当図である。
【図7】遺体用体内物漏出抑制部材を直腸に使用する場合を説明する図である。
【図8】実施形態1の変形例1にかかる図2相当図である。
【図9】実施形態1の変形例2にかかる図2相当図である。
【図10】実施形態1の変形例3にかかる図2相当図である。
【図11】実施形態1の変形例4にかかる図1相当図である。
【図12】実施形態1にかかる袋体を構成する筒状部材の別の形状を示す図である。
【図13】実施形態2にかかる遺体処理装置の部分断面図である。
【図14】実施形態2の変形例1にかかる図13相当図である。
【図15】実施形態2の変形例2にかかる図13相当図である。
【図16】実施形態2の変形例3にかかる遺体処理装置が有する筒状部材の斜視図である。
【図17】実施形態2の変形例4にかかる図13相当図である。
【図18】実施形態2の変形例4にかかる図13相当図である。
【図19】実施形態2の変形例5にかかる図13相当図である。
【図20】実施形態2の変形例6にかかる図13相当図である。
【図21】実施形態3にかかる遺体処理装置の使用状態を説明する図である。
【図22】実施形態3にかかる遺体処理装置を用いて咽喉部を封止した状態を説明する図である。
【図23】実施形態3の変形例にかかる図21相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1にかかる遺体用体内物漏出抑制部材1を示すものである。遺体用体内物漏出抑制部材1は、吸水性を有する多数の吸水性樹脂粉末(吸水体)2と、吸水性樹脂粉末2を収容する袋体(収容体)3と、袋体3が所定方向に伸びるのを抑制するための変形抑制用糸(変形抑制部)4とを備えている。
【0033】
遺体用体内物漏出抑制部材1は、遺体の孔部に挿入されて体内物の水分を吸収することによって体内物の漏出を抑制するように構成されている。孔部とは、直腸、膣、尿道、耳孔、鼻孔、口腔、咽喉部、食道等である。また、体内物とは、上記孔部内に残存している物、体組織から孔部内へ流れ出た物があればその物等である。
【0034】
吸水性樹脂粉末2の粒子の大きさは、40メッシュ以上150メッシュ以下とされている。この実施形態では、吸水性樹脂粉末2として、アクリル系高分子架橋体を用いている。このアクリル系高分子架橋体は、水に触れて吸収し始めると膨張する水膨潤性を有している。また、アクリル系高分子架橋体は、水を吸収するとゲル状に変化し、ゲル状に変化した後には水に溶けない性質を持っている。吸水性樹脂粉末2としては、上記アクリル系高分子架橋体以外にも、吸収した水を離水させない樹脂、例えば、デンプン/アクリル酸塩グラフト共重合体、デンプン/アクリロニトリルグラフト共重合体、ポリエチレンオキシド架橋体物等を用いることも可能である。
【0035】
袋体3は、伸縮性のある布材で構成されている。具体的には、例えば熱溶着可能な樹脂からなる合成繊維でできた布材であり、全ての方向に伸縮する伸縮性を持っている。この袋体3を構成する布材は、内部の吸水性樹脂粉末2が水を吸収して膨潤する際の膨潤力によって伸びるようになっている。
【0036】
袋体3は、円筒に近い形状とされており、長手方向の両端面は袋体3の外部へ向けて湾曲した面で構成されている。袋体3の長手方向の寸法は、30mm以上60mm以下に設定されている。また、吸水性樹脂粉末2が収容された状態の袋体3の直径は、10mm以上20mm以下に設定されている。袋体3の長手方向の寸法及び直径は、遺体用体内物漏出抑制部材1を使用する孔部の大きさや、遺体の性別、体格、年齢等によって適当な値に変更するのが好ましい。
【0037】
袋体3の長手方向両端部は、詳細は後述するが、製造時における熱溶着によって閉じられており、この溶着部を符号3aで示す。袋体3を構成する繊維の太さは、例えば、10デニール以上20デニール以下が好ましいが、この範囲に限られるものではなく、繊維の強度等によって変更することができる。
【0038】
袋体3を構成する布材の繊維間には、袋体3の外部の水を内部へ通すための微細な通水孔が形成されている。通水孔の大きさは、内部の吸水性樹脂粉末2が外部に漏れないように、大部分の吸水性樹脂粉末2の大きさよりも小さく設定されている。
【0039】
袋体3には、遺体処置用のものであることを表示するようにしてもよい。その方法としては、遺体処置用である旨の文字を表示する方法や、マークを表示する方法がある。
【0040】
変形抑制用糸4は、長手方向に引っ張り力を加えた際に殆ど伸びない部材で構成されている。変形抑制用糸4としては、例えば、一般の裁縫に用いられる縫い糸や、ナイロン糸等が挙げられるが、焼却時に有害なガスが発生しない天然素材(綿、絹等)のものが好ましい。
【0041】
変形抑制用糸4の一端部は、袋体3の長手方向一端部の溶着部3aに固定され、また、変形抑制用糸4の他端部は、袋体3の長手方向他端部の溶着部3aに固定されている。従って、袋体3は、長手方向に縮むことは可能となっているが、変形抑制用糸4の長さ以上に伸びるように変形するのは該糸4によって抑制されることになる。つまり、吸水性樹脂粉末2が膨潤した際に、袋体3は、軸方向に比べて径方向に大きく拡大するようになる。
【0042】
袋体3の内部には、安定化二酸化塩素を収容してもよい。この安定化二酸化塩素を収容することで、遺体の内部において消臭及び病原菌の減少効果が得られる。また、安定化二酸化塩素の他に、消臭剤、殺菌剤や防腐剤等を収容してもよい。その他、芳香剤等を収容してもよい。
【0043】
次に、上記のように構成された遺体用体内物漏出抑制部材1の製造要領について説明する。
【0044】
まず、図3に示すように、袋体3となる筒状部材A、及び変形抑制用糸4となる糸Bを用意する。筒状部材A及び糸Bは、袋体3及び糸4の数倍以上長く形成されている。筒状部材Aには、他の部位よりも径の小さい小径部A1が長手方向に所定間隔をあけて設けられている。小径部A1の間隔は、袋体3の長さに対応している。小径部A1の長さは10mm程度である。また、筒状部材Aにおける小径部A1,A1間の部位は、小径部A1に近づくほど径が小さくなるように湾曲形成されている。
【0045】
そして、筒状部材A内に所定量の吸水性樹脂粉末2を収容する。また、筒状部材A内には、糸Bを収容する。糸Bの長手方向は、筒状部材Aの長手方向と略一致させる。
【0046】
その後、筒状部材Aの一番端(図3における左端)の小径部A1を絞り、閉塞する。絞った状態の小径部A1には、布材の溶融温度以上の熱を加え、小径部A1を溶融させた後、冷却して固化させる。これにより、図4に示すように、筒状部材Aの端部が溶着されて溶着部3aが形成される。このとき、糸Bの端部が筒状部材Aの溶着部3aに固定される。溶着部3aを形成するための器具としては、全周に略均一に熱を加えることができるものが好ましい。
【0047】
その後、同図に示すように、先に溶着した溶着部3aの隣りの小径部A1を絞り、筒状部材A内を区画する。次いで、今回絞った小径部A1に、上記したように熱を加え、該小径部A1を溶着する。この溶着部分にも糸Bが固定される。そして、溶着部分を切断する。これにより、図5に示すように、両端に溶着部3aを有する遺体用体内物漏出抑制部材1が得られる。
【0048】
上記のようにして得られた遺体用体内物漏出抑制部材1に収容された吸水性樹脂粉末2の量は、水分量の多い遺体であっても、体内物の水分を十分に吸収できる程度に設定されている。また、吸水性樹脂粉末2が水分を吸収して膨潤した際に、図6に示すように、袋体3の直径が膨潤前の4倍以上、好ましくは5倍以上となるように、吸水性樹脂粉末2の量が設定されている。具体的には、遺体の直腸に本発明を適用する場合には、膨張後の袋体3の直径は、50mm以上が好ましいが、この数値は、遺体の体格や性別等で変更することが可能である。
【0049】
次に、図7に基づいて上記遺体用体内物漏出抑制部材1を直腸に使用する要領について説明する。直腸に使用する場合の遺体用体内物漏出抑制部材1の長手方向の寸法は40mmであり、直径は14mmである。尚、遺体用体内物漏出抑制部材1の長手方向の寸法は、例えば、30mm程度であってもよいし、50mm程度であってもよく、この範囲内で設定するのが好ましい。また、遺体用体内物漏出抑制部材1の直径は、例えば10mm程度であってもよいし、20mm程度であってもよく、この範囲内で設定するのが好ましい。遺体用体内物漏出抑制部材1の直径は、遺体への挿入作業性を考慮すると細い方がよく、14mm以下が好ましい。
【0050】
図7(a)に示すように、遺体の処置者は、遺体用体内物漏出抑制部材1を例えば手で肛門から直腸へ押し込む。このとき、ピンセット等の挟持器具を用いて遺体用体内物漏出抑制部材1を挟持して直腸へ押し込んでもよい。図7(b)に示すように、遺体用体内物漏出抑制部材1の押し込み深さは、遺体用体内物漏出抑制部材1が肛門管近傍に存在するようにする。尚、遺体用体内物漏出抑制部材1を押し込む際には、例えば、2本の細い棒材(箸のようなもの)で遺体用体内物漏出抑制部材1を挟んで持ってから押し込んでもよいし、1本の棒材で押し込んでもよい。
【0051】
遺体用体内物漏出抑制部材1の周囲には体内物が存在しており、この体内物に含まれている水が袋体3の通水孔を通って袋体3の内部に達する。袋体3の内部に達した水は、吸水性樹脂粉末2に吸収される。水を吸収した吸水性樹脂粉末2は、袋体3に収容されているので、直腸の奥の方へ広がるのが抑制される。これにより、吸水性樹脂粉末2が有効に作用する部位に留まるので、体内物の水分量が多くても、体内物が肛門から外部へ漏出してしまうのを抑制できる。
【0052】
水を吸収した吸水性樹脂粉末2は膨潤する。図7(c)に示すように、吸水性樹脂粉末2の膨潤力によって袋体3が膨張する。このとき、袋体3には、長手方向両端部を結ぶように変形抑制用糸4が設けられているので、袋体3が長手方向に伸びるように変形するのが抑制される。これにより、袋体3は、径方向に大きく拡大して直腸の内壁に密着し、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸を略全周に亘って径方向外方へ向けて押圧する。袋体3は吸水前に比べて直径が4倍以上になろうとするので、直腸の内壁に対して十分な密着力が得られる。その結果、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸に栓をしたような状態となる。よって、直腸が確実に封止される。尚、吸水性樹脂粉末2のうち、袋体3の孔よりも小さいものは、袋体3の孔から外部へ出てしまうことが考えられるが、その量は僅かな量であるため、問題とはならない。
【0053】
以上説明したように、この実施形態1によれば、吸水性樹脂粉末2を袋体3に収容し、その袋体3が通水孔を有しているので、遺体の体内物の水分を吸水性樹脂粉末2に吸収させながら、吸水性樹脂粉末2が遺体の奥の方へ広がるようになるのを抑制できる。これにより、吸水性樹脂粉末2を有効に作用させることのできる部位に留まらせることができ、体内物に水分量が多くても、体内物の漏出を抑制できる。
【0054】
尚、袋体3には、吸水性樹脂粉末2の代わりに、例えば、水膨潤性繊維(吸水体)を収容してもよい。水膨潤性繊維としては、アクリル繊維の内層と吸水性樹脂からなる外層とで構成された東洋紡績株式会社製のランシール(登録商標)F又はランシール(登録商標)Kを用いることができる。この水膨潤繊維の吸水速さは、水に接触すると約10秒で平衡吸水量の約50%以上に達する速さである。また、この水膨潤繊維は、吸水した後は、多少の圧力を加えても離水せず、また、水には殆ど溶けない性質を持っている。さらに、この水膨潤繊維は、吸水後の繊維径が吸水前の繊維径の約5倍以上に拡大する一方、繊維の長さ方向の寸法は、アクリル繊維で維持されて殆ど変化しない。また、水膨潤繊維の繊維物性はアクリル繊維で維持されているので、外層の吸水性樹脂が吸水しても殆ど低下しないようになっている。
【0055】
上記水膨潤性繊維にはカルボキシル基があり、このカルボキシル基により体内物のアンモニアが選択的に吸着されるようになっている。これにより、臭気の軽減が可能となる。
【0056】
袋体3には、吸水性樹脂粉末2と上記水膨潤性繊維とを収容してもよい。この場合、吸水性樹脂粉末2を水膨潤性繊維に混ぜるのが好ましい。
【0057】
また、袋体3は、例えば、ネット状の部材、不織布、織布等の様々な部材で構成することができる。好ましいのは、ストッキングのような伸縮性を有する布材であるが、伸縮性の無い部材で構成する場合には、予め折り畳んでおき、吸水性樹脂粉末2が吸水したら袋体3が膨張するようにすればよい。
【0058】
袋体3の素材としては、例えは、綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維や、ポリウレタン、ナイロン等の合成繊維、有機繊維、カーボン繊維等の無機繊維、ゴム等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、袋体3を構成する部材は、複数種の繊維を組み合わせてなるものであってもよい。また、袋体3は、繊維からなるベース層に、該ベース層の繊維とは異なる繊維からなる別の層を積層した多層構造であってもよい。
【0059】
袋体3を、水を通さない素材で構成する場合には、通水孔を該素材に形成すればよい。通水孔は袋体3の全体に略均一に形成してもよいし、一部にのみ形成してもよい。また、通水孔の密度を袋体3の部位によって異ならせてもよい。通水孔は、袋体3の少なくとも挿入方向先端面に形成しておくのが好ましい。これにより、直腸に存在している体内物の水分が肛門側へ流れてきた場合に、その水分を袋体3内へ確実に導入して吸水性樹脂粉末2に吸収させることが可能になり、吸水性樹脂粉末2を十分に膨潤させることができる。
【0060】
袋体3の伸縮性は、繊維の織り方や編み方で得られるものであってもよいし、ゴムのように繊維自体が伸縮性を有することによって得られるものであってもよい。
【0061】
また、変形抑制用糸4は省略することもできる。
【0062】
また、実施形態1にかかる遺体用体内物漏出抑制部材1を、筒状の案内部材に挿入して遺体処理装置を構成し、案内部材によって遺体用体内物漏出抑制部材1を肛門や膣、尿道、鼻孔、耳孔、口腔、咽喉部へ挿入するようにしてもよい。
【0063】
また、袋体3の溶着部3aの代わりに、袋体3の端部を糸で縛ったり、糸で縫うことによって閉じるようにしてもよい。また、袋体3の端部を止め具で閉塞するようにしてもよい。
【0064】
(変形例1)
遺体用体内物漏出抑制部材1の形状は、袋体3の形状によって様々な形状にすることができる。例えば、図8に示す変形例1のように、長手方向の両端面を略平坦にしてもよい。
【0065】
(変形例2)
遺体用体内物漏出抑制部材1の形状は、図9に示す変形例2のように、長手方向両端部に近づくに従って細くなるような形状であってもよい。
【0066】
(変形例3)
遺体用体内物漏出抑制部材1の形状は、図10に示す変形例3のように、長手方向の一端面を湾曲させ、他端面を略平坦にしてもよい。
【0067】
(変形例4)
図11に示す変形例4のように、遺体用体内物漏出抑制部材1の袋体3の長手方向両端部(太線で示す部分)にのみ、伸縮しない部分、即ち非伸縮性部分3bを設けてもよい。
【0068】
その他、非伸縮性部分3bを設ける代わりに、当該部分が通水性を有し、他の部分が通水性を有しないように構成してもよい。通水性を有する部分には、微細な通水孔を形成しておけばよい。
【0069】
上記変形例1〜4では、変形抑制用糸4を省略しているが、変形抑制用糸4を設けてもよい。また、変形抑制用糸4は、2本以上設けてもよい。
【0070】
尚、図12に示すように、袋体3を構成する筒状部材Aは、小径部A1を設けることなく、両端に亘って同じ径としてもよいが、小径部A1を形成した方が絞ったときに周りにシワができにくくなるので好ましい。
【0071】
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2にかかる遺体処理装置10を示すものである。この実施形態2にかかる遺体処理装置10は、実施形態1で説明した遺体用体内物漏出抑制部材1と、遺体用体内物漏出抑制部材1を収容して直腸へ案内するための案内部材11と、案内部材11に収容された遺体用体内物漏出抑制部材1を押し出すための押し部材12とを備えている。
【0072】
案内部材11は、樹脂を円筒状に成形してなるものである。案内部材11の軸方向の寸法は、例えば、85mm以上100mm以下、外径は、遺体用体内物漏出抑制部材1の直径と略同じか、若干大きめまたは小さめに設定されており、例えば、20mm以上30mm以下が好ましい。案内部材11の肉厚は0.5mm以上2.0mm以下に設定されている。遺体用体内物漏出抑制部材1は袋体3に吸水性樹脂粉末2を収容したものなので、変形自在であり、案内部材11へは容易に収容可能である。案内部材11は、樹脂以外にも、例えば、強度のある厚紙等で構成してもよい。
【0073】
案内部材11の長手方向一端部(図13の左端部)の内面には、該案内部材11に挿入された押し部材12が脱落するのを防止するための脱落防止用突起13が形成されている。脱落防止用突起13は、案内部材11の周方向に連続させてもよいし、周方向の一部にのみ形成してもよい。脱落防止用突起13の高さは0.5mm程度でよい。
【0074】
また、案内部材11の長手方向他端部(図13の右端部)の周縁には、複数の羽状部14が周方向に並ぶように形成されている。周方向に隣り合う羽状部14の間には所定の隙間が形成されているが、この隙間は省略してもよい。
【0075】
羽状部14は、案内部材11の他端部を構成している。羽状部14は、案内部材11の他端部が先細となるように、径方向中心へ向けて湾曲している。これにより、案内部材11の他端部が湾曲した形状となり、遺体の直腸へ挿入し易くできる。また、使用前は、羽状部14によって案内部材11の他端部は半分程度閉じられる。
【0076】
羽状部14の先端は丸く形成されている。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1が羽状部14の先端に引っ掛からなくなるので、袋体3が破れてしまうのを抑制できる。また、羽状部14は弾性変形するようになっている。案内部材11の内部に収容された遺体用体内物漏出抑制部材1を押し部材12で押し出す際に羽状部14が案内部材11の外方へ向かって開くように変形し、これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1をスムーズに押し出すことが可能となっている。羽状部14は、省略してもよい。
【0077】
案内部材11の外面には、案内部材11を遺体の直腸へ挿入した際に挿入量が所定量以上となるのを規制するためのストッパ15が形成されている。ストッパ15は、案内部材11の径方向外方へ延びる板状をなしている。ストッパ15は、遺体の肛門の周囲に外方から当接することで、案内部材11の挿入を規制するように構成されている。ストッパ15の案内部材11長手方向の位置は、肛門の周囲に当接した時点で案内部材11の他端部が肛門管内に位置するように設定されている。つまり、案内部材11の直腸への挿入量は、数十mm程度である。ストッパ15は、案内部材11の全周に連続する板で構成してもよいし、案内部材11の周方向の一部にのみ設けられた板で構成してもよい。また、ストッパ15は案内部材11の外面から突出する棒状や突起状のものであってもよい。
【0078】
尚、ストッパ15は省略してもよい。また、ストッパ15の代わりに、挿入量の目安を示す目盛や、マーク(目印)等を設けてもよい。マークは、例えば、文字、図形、案内部材11の本体部分とは異なる色に着色された着色部、案内部材11の外面に形成した段差部、突起部、突条部等で構成してもよい。ストッパ15とマークとを両方設けてもよい。
【0079】
案内部材11の一端部には、外方へ延出するフランジ16が形成されている。このフランジ16は、処置者が押し部材12を操作する際に指を掛けるためのものである。フランジ16は案内部材11の全周に亘って設けてもよいし、周方向の一部にのみ設けてもよい。
【0080】
案内部材11の外面は、他端に近づくほど小径となるようなテーパー面で構成してもよい。また、案内部材11は円筒形状が好ましいが、角筒形状であってもよい。
【0081】
押し部材12は、棒材12aと、棒材12aの案内部材11内に挿入される側の端部に設けられたピストン12bとを備えている。棒材12aは樹脂材で構成されており、処置者が操作することが可能となっている。ピストン12bは、例えば、ゴム等の弾性部材で構成されており、案内部材11内を長手方向に摺動するようになっている。尚、棒材12aとピストン12bとを一体成形してもよい。
【0082】
次に、上記のように構成された遺体処理装置1を直腸に使用する要領について説明する。まず、案内部材11の他端部を肛門へ挿入する。このとき、案内部材11の他端部が先細形状であるため、挿入作業性は良好である。案内部材11の他端部を挿入していき、ストッパ15が肛門の周囲に当接したら案内部材11の挿入を停止する。
【0083】
その後、押し部材12を案内部材11内に押し込んでいく。このとき、処置者はフランジ16に指を掛けておく。これにより、押し部材12を押し込んでいく操作が容易に行える。
【0084】
押し部材12に押された遺体用体内物漏出抑制部材1は、羽状部14に当たり、該羽状部14を押して案内部材11の外方へ曲げる。これにより、案内部材11の他端部が開き、遺体用体内物漏出抑制部材1が案内部材11から直腸に挿入される。直腸に挿入された遺体用体内物漏出抑制部材1は、実施形態1と同様に膨張して直腸を封止する。
【0085】
以上説明したように、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、体内物に水分量が多くても、体内物の漏出を抑制できる。
【0086】
また、案内部材11を用いることで、遺体用体内物漏出抑制部材1を狙い通りの位置に容易に、かつ、確実に挿入できる。
【0087】
案内部材11内には、遺体用体内物漏出抑制部材1を複数個収容してもよい。この場合、大きさの異なる遺体用体内物漏出抑制部材1を収容してもよい。
【0088】
また、案内部材11に遺体用体内物漏出抑制部材1を収容する作業は、遺体の処置を行う直前に処置者が行うようにしてもよいし、遺体処理装置10の製造現場(工場)で行ってもよい。
【0089】
案内部材11の外面には潤滑剤を塗布してもよい。
【0090】
(変形例1)
図14に示す変形例1のように、案内部材11には、例えば、上記した水膨潤性繊維からなる吸水体18を遺体用体内物漏出抑制部材1よりも押し部材12側に収容してもよい。吸水体18は、水膨潤性繊維を束ねて円柱状にしたものである。この吸水体18は遺体用体内物漏出抑制部材1と共に案内部材11から押し出されて体内物の水分を吸収する。水分を吸収した吸水体18は、各繊維が膨潤することで径が拡大する。吸水体18の径が拡大することで、吸水体18によっても直腸が封止されることになる。吸水体18の長さは、例えば、10mm以上が好ましい。
【0091】
吸水体18の形状は、円柱状に限られるものではなく、様々な形状にすることができるが、案内部材11からスムーズに押し出すためには、案内部材11の内面に沿う形状が好ましい。
【0092】
また、吸水体18は、案内部材11の遺体用体内物漏出抑制部材1よりも羽状部14側に収容してもよい。また、吸水体18は、案内部材11における遺体用体内物漏出抑制部材1の長手方向両側にそれぞれ収容してもよい。吸水体18は、吸水性スポンジ等で構成することも可能である。
【0093】
(変形例2)
図15に示す変形例2のように、案内部材11の他端部には、他端部の開口を閉塞するための閉塞部20を設けてもよい。閉塞部20は、案内部材11とは別体にして、案内部材11の他端部の外側に離脱可能に嵌められている。閉塞部20は、焼却時に有害ガスを発生しない部材で構成するのが好ましく、例えば、紙等が挙げられる。遺体用体内物漏出抑制部材1を押し部材12で押し出す際に、その力によって閉塞部20が案内部材11から離脱するようになっている。
【0094】
閉塞部20は、案内部材11の内側に設けてもよい。
【0095】
閉塞部20は案内部材11に接着してもよいし、閉塞部20と案内部材11との少なくとも一方に爪等の係合部を設け、この係合部を他方に係合させることによって閉塞部20を案内部材11に取り付けるようにしてもよい。
【0096】
また、閉塞部20は、案内部材11と一体成形してもよい。この場合、閉塞部20は、遺体用体内物漏出抑制部材1の押出し時の力を受けて破れて開口するような脆弱なフィルム状にするのが好ましい。
【0097】
(変形例3)
図16に示す変形例3のように、遺体用体内物漏出抑制部材1に、該遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸の奥へ深く入り込み過ぎるのを防止するための糸21を設けてもよい。この糸21の長さは、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸に完全に挿入された状態で肛門から外部へ余裕を持って出るように設定されている。遺体用体内物漏出抑制部材1が何らかの原因によって直腸内の狙いとする部位よりも深く挿入されてしまった場合には、処置者が糸21を肛門の外から引っ張ることで、遺体用体内物漏出抑制部材1を手前に引き寄せ、狙いとする位置に位置付けることができる。
【0098】
尚、糸21の代わりに、例えばワイヤ等を設けてもよく、長尺状で、可撓性を有する部材であれば特に限定されない。また、糸21は、遺体用体内物漏出抑制部材1を直腸に挿入した後に切り取ることも可能である。また、処置後、糸21を肛門から直腸へ挿入してもよい。
【0099】
(変形例4)
図17及び図18に示す変形例4のように、筒状部材22を案内部材11に収容し、遺体用体内物漏出抑制部材1と共に直腸へ押し出すようにしてもよい。筒状部材22の径は、筒状部材22の外面が案内部材11の内面に接する程度に設定されている。筒状部材22の軸方向の寸法は、遺体用体内物漏出抑制部材1の長手方向の寸法と略同じに設定されている。この筒状部材22の内部に遺体用体内物漏出抑制部材1が収容可能となっている。筒状部材22は例えば厚紙や樹脂シート等を丸めて筒状にしてなるものであり、押し部材12によって軸方向の押圧力を受けたときに、潰れ変形しないような剛性を有している。筒状部材22の周壁部には複数の開口部22aが形成されている。
【0100】
遺体用体内物漏出抑制部材1を押し部材12で押し出す際には、ピストン12bが筒状部材22の端部に当接する。この筒状部材22は軸方向には潰れ変形し難いので、ピストン12bの押圧力を受けた筒状部材22は殆ど変形することなく、内部に遺体用体内物漏出抑制部材1を収容した状態で案内部材11から外部に出ていく。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1を直接押圧した場合のように遺体用体内物漏出抑制部材1が案内部材11内で変形しなくなる。その結果、遺体用体内物漏出抑制部材1が案内部材11の内面に強く摺接するようになるのを防止でき、遺体用体内物漏出抑制部材1をスムーズに押し出すことができる。
【0101】
遺体用体内物漏出抑制部材1が膨張すると筒状部材22が開いていき、遺体用体内物漏出抑制部材1から離脱する。よって、筒状部材22が遺体用体内物漏出抑制部材1の膨張を阻害することはない。
【0102】
(変形例5)
図19に示す変形例5のように、案内部材11における遺体への挿入方向先端側には、遺体用体内物漏出抑制部材1が遺体の奥の方へ深く入り込むのを規制するための挿入量規制部材25を収容してもよい。この挿入量規制部材25は、遺体の内部で膨張する部材で構成されており、例えば、スポンジ等の発泡樹脂材や、圧縮されたタオル等で構成されている。この変形例5では、遺体用体内物漏出抑制部材1の挿入前に、挿入量規制部材25が遺体に挿入されることになる。遺体に挿入された挿入量規制部材25は膨張して直腸を閉塞するような状態となる。このとき、圧縮タオル(膨張部材)であれば、体内物の水分を吸収して膨張することになる。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸の奥の方へ入り込んで行こうとするのが規制される。
【0103】
(変形例6)
図20に示す変形例6のように、案内部材11における遺体用体内物漏出抑制部材1よりも基端側には、水を収容した水収容袋(水収容体)26を設けてもよい。水収容袋26は、例えば、樹脂フィルム等の材料で構成されている。この変形例6では、押し部材12のピストン12bの端面に、水収容袋26と対向するように突起12cが形成されている。突起12cの先端は尖っており、水収容袋26に刺さるようになっている。
【0104】
押し部材12を押すと、突起12cが水収容袋26に刺さり、水収容袋26が破れるようになっている。つまり、水収容袋26は、押し部材12から突起12cが刺さる程度の力を受けた際に内部の水を流出させるように構成されている。
【0105】
変形例6では、押し部材12によって水収容袋26及び遺体用体内物漏出抑制部材1が押されて案内部材11から遺体の内部に挿入される。このとき、押し部材12の突起12cが水収容袋26に刺さり、水収容袋26から水が流出する。水収容袋26から流出した水は、遺体用体内物漏出抑制部材1の吸水性樹脂粉末2によって吸収される。そして、吸水性樹脂粉末2が膨潤する。これにより、袋体3を素早く膨張させることができるので、遺体用体内物漏出抑制部材1が直腸の内壁に早く密着するようになる。
【0106】
水収容袋26は、押し部材22で押されたときに、その押圧力によって破れるような部材で構成してもよい。
【0107】
この実施形態2では、遺体処理装置10を直腸に適用した場合について説明したが、これに限らず、膣、尿道、耳孔、鼻孔、口腔、咽喉部、食道等にも適用できる。案内部材11や押し部材12は、各孔部に適した形状にすればよい。
【0108】
(実施形態3)
図21は、実施形態3にかかる遺体処理装置30の使用状態を示すものである。この実施形態3にかかる遺体処理装置30は、実施形態1で説明した遺体用体内物漏出抑制部材1と、遺体用体内物漏出抑制部材1を収容して咽喉部へ案内するための案内部材31と、案内部材31に収容された遺体用体内物漏出抑制部材1を押し出すための押し部材32とを備えている。
【0109】
案内部材31は、樹脂を円筒状に成形してなるものであり、口から咽喉部へ挿入される。案内部材31の軸方向の寸法は、例えば、150mm以上250mm以下、外径は、遺体用体内物漏出抑制部材1の直径と略同じか、若干大きめまたは小さめに設定されており、例えば、20mm以上30mm以下が好ましい。案内部材31の肉厚は0.5mm以上2.0mm以下に設定されている。
【0110】
案内部材31の外面には、案内部材31を遺体の口から咽喉部へ挿入した際に挿入量が所定量以上となるのを規制するためのストッパ35が形成されている。ストッパ35は、案内部材31の径方向外方へ延びる板状をなしている。ストッパ35は、遺体の口の周囲(唇)に外方から当接することで、案内部材31の挿入を規制するように構成されている。ストッパ35の案内部材31長手方向の位置は、唇に当接した時点で案内部材31の挿入方向先端部が舌を越えた所に位置するように設定されている。
【0111】
ストッパ35は、案内部材31の全周に連続する板で構成してもよいし、案内部材31の周方向の一部にのみ設けられた板で構成してもよい。また、ストッパ35は案内部材31の外面から突出する棒状であってもよい。ストッパ35は、唇以外にも、鼻の周囲や、あご、頬等に当てるようにしてもよい。ストッパ35を案内部材31とは別部材で構成してもよい。
【0112】
尚、ストッパ35は省略してもよい。また、ストッパ35の代わりに、挿入量の目安を示す目盛や、マーク(目印)等を設けてもよい。マークは、例えば、文字や図形、案内部材31の本体部分とは異なる色に着色された着色部や、案内部材31の外面に形成した段差部等で構成してもよい。
【0113】
案内部材31の外面は、他端に近づくほど小径となるようなテーパー面で構成してもよい。また、案内部材31は円筒形状が好ましいが、角筒形状であってもよい。
【0114】
押し部材32は、案内部材31よりも十分に長いロッド32aと、ロッド32aの挿入方向先端部に設けられたピストン32bとを備えている。ロッド32aは処置者が操作可能となっている。ピストン32bは、案内部材31内を軸方向に移動可能となっている。ピストン32bによって遺体用体内物漏出抑制部材1が押し出されるようになっている。
【0115】
次に、上記のように構成された遺体処理装置30の使用要領について説明する。遺体用体内物漏出抑制部材1は案内部材31の挿入方向先端側に収容しておく。この状態で、案内部材31を遺体の口から咽喉部へ向けて挿入していく。ストッパ35が唇に当接したら案内部材31の挿入を停止する。ストッパ35が唇に接近した状態で案内部材31の挿入を停止してもよい。
【0116】
その後、押し部材32を案内部材31内に押し込んでいく。押し部材32に押された遺体用体内物漏出抑制部材1は、案内部材31の先端部から咽喉部に挿入される。咽喉部に挿入された遺体用体内物漏出抑制部材1の吸水性樹脂粉末2は、体内物の水を吸収する。これにより、遺体用体内物漏出抑制部材1が実施形態1と同様に機能し、吸水性樹脂粉末2が遺体の奥の方へ広がるようになるのを抑制できる。よって、図22に示すように咽喉部が封止される。
【0117】
以上説明したように、この実施形態3によれば、実施形態1と同様に、体内物に水分量が多くても、体内物の漏出を抑制できる。
【0118】
案内部材31の外面には潤滑剤を塗布してもよい。
【0119】
尚、人体の解剖において口腔から咽喉部にかけては湾曲しているので、この湾曲形状に対応するように、案内部材32を湾曲形成してもよい。これにより、案内部材32をスムーズに咽喉部まで挿入できる。
【0120】
また、図23に示す変形例のように、遺体用体内物漏出抑制部材1を鼻孔から咽喉部へ挿入するようにしてもよい。
【0121】
また、実施形態3において、実施形態2の変形例5のように、案内部材31の内部に水収容袋を収容して遺体への挿入の際に水を流出させるようにしてもよい。
【0122】
また、実施形態3において、遺体用体内物漏出抑制部材1を案内部材11に複数収容するようにしてもよい。
【0123】
また、遺体用体内物漏出抑制部材1をピンセット等の挟持器具を用いて咽喉部へ挿入するようにしてもよい。また、遺体用体内物漏出抑制部材1を処置者が手を用いて咽喉部へ挿入してもよい。
【0124】
また、例えば、直腸用の遺体用体内物漏出抑制部材1、及び咽喉部用の遺体用体内物漏出抑制部材1をセットにしてパッケージ化してもよい。このパッケージには、例えば、耳孔に挿入する栓部材、鼻孔に挿入する栓部材、遺体用の化粧品等のうち、少なくとも1つを含めてもよい。また、パッケージには、膣用の遺体用体内物漏出抑制部材1を含めてもよい。
【0125】
また、袋体3の表面には、多数の毛を設けてもよい。毛を設ける方法としては、例えば植毛や、布を毛ばただせる方法等が挙げられる。毛は各種繊維等で構成することができる。袋体3の表面に毛を設けることで、袋体3が膨張した際に、表面の毛が遺体の組織に密着して組織が毛の形状に対応して変形する。これにより、袋体3が組織に対して滑り難くなるので、遺体用体内物漏出抑制部材1を所望位置に留まらせておくことができる。また、袋体3の表面には、毛以外にも、例えば、突起や凹部、突条部、凹条部等を設けて、これらを遺体の組織に対する滑り止めとして利用してもよい。
【0126】
また、変形抑制糸4の代わりに、長手方向に圧縮力を受けたときに抗力を有し曲がり難い棒状の部材を用いてもよい。このような棒状部材を用いることで、遺体用体内物漏出抑制部材1を遺体に挿入する際に軸方向に押圧したとき、棒状部材が突っ張るように作用することになり、遺体用体内物漏出抑制部材1を遺体の孔部内に確実に挿入することが可能になる。また、棒状部材の存在により遺体用体内物漏出抑制部材1の挿入途中における変形が抑制されるので、遺体用体内物漏出抑制部材1を確実に挿入することが可能になる。また、この棒状部材が上記変形抑制糸4と同様に、軸方向に引張力を受けた際に伸びないのが好ましい。
【0127】
また、遺体用体内物漏出抑制部材1は、例えば、犬や猫等の動物(ペット)の遺体にも使用できる。この場合、大型のペット用のものと小型のペット用のものとを用意するのが好ましい。案内部材11、31も同様にペットの遺体にも使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上説明したように、本発明にかかる遺体用体内物漏出抑制部材及び遺体処理装置は、遺体を処置する際に使用できる。
【符号の説明】
【0129】
1 遺体用体内物漏出抑制部材
2 吸水性樹脂粉末(吸水体)
3 袋体(収容体)
4 変形抑制用糸(変形抑制部)
11 案内部材
12 押し部材
25 挿入量規制部材
26 水収容袋(水収容体)
31 案内部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体の体内物が外部へ漏出するのを抑制するために遺体の内部へ挿入される遺体用体内物漏出抑制部材において、
水を吸収する複数の吸水体と、
上記吸水体を収容するように形成された収容体とを備え、
上記収容体には、水を該収容体の外部から内部へ通す通水孔が形成されていることを特徴とする遺体用体内物漏出抑制部材。
【請求項2】
請求項1に記載の遺体用体内物漏出抑制部材において、
収容体は、伸縮性を有する部材で構成され、
吸水体は、水に触れて膨張する水膨潤性を有していることを特徴とする遺体用体内物漏出抑制部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遺体用体内物漏出抑制部材において、
収容体は、遺体への挿入方向への変形を抑制する変形抑制部を備えていることを特徴とする遺体用体内物漏出抑制部材。
【請求項4】
遺体の体内物が外部へ漏出するのを抑制するために遺体の内部へ挿入される遺体用体内物漏出抑制部材を備えた遺体処理装置において、
上記遺体用体内物漏出抑制部材を収容する筒状に形成され、該遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の孔部から内部へ案内するための案内部材を備え、
上記遺体用体内物漏出抑制部材は、水を吸収する複数の吸水体と、上記吸水体を収容するように形成された収容体とを備え、該収容体には、水を該収容体の外部から内部へ通す通水孔が形成されていることを特徴とする遺体処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の遺体処理装置において、
案内部材の遺体への挿入方向先端側には、遺体用体内物漏出抑制部材が遺体の奥の方へ深く入り込むのを規制するための挿入量規制部材が収容されていることを特徴とする遺体処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の遺体処理装置において、
挿入量規制部材は遺体の内部で膨張する膨張部材で構成されていることを特徴とする遺体処理装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1つに記載の遺体処理装置において、
吸水体は、水に触れて膨張する水膨潤性を有しており、
案内部材には、水を収容した水収容体が収容され、該水収容体よりも挿入方向基端側には該水収容体を先端側へ押す押し部材が設けられ、
上記水収容体は、所定の力を受けた際に内部の水を流出させるように構成されていることを特徴とする遺体処理装置。
【請求項1】
遺体の体内物が外部へ漏出するのを抑制するために遺体の内部へ挿入される遺体用体内物漏出抑制部材において、
水を吸収する複数の吸水体と、
上記吸水体を収容するように形成された収容体とを備え、
上記収容体には、水を該収容体の外部から内部へ通す通水孔が形成されていることを特徴とする遺体用体内物漏出抑制部材。
【請求項2】
請求項1に記載の遺体用体内物漏出抑制部材において、
収容体は、伸縮性を有する部材で構成され、
吸水体は、水に触れて膨張する水膨潤性を有していることを特徴とする遺体用体内物漏出抑制部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遺体用体内物漏出抑制部材において、
収容体は、遺体への挿入方向への変形を抑制する変形抑制部を備えていることを特徴とする遺体用体内物漏出抑制部材。
【請求項4】
遺体の体内物が外部へ漏出するのを抑制するために遺体の内部へ挿入される遺体用体内物漏出抑制部材を備えた遺体処理装置において、
上記遺体用体内物漏出抑制部材を収容する筒状に形成され、該遺体用体内物漏出抑制部材を遺体の孔部から内部へ案内するための案内部材を備え、
上記遺体用体内物漏出抑制部材は、水を吸収する複数の吸水体と、上記吸水体を収容するように形成された収容体とを備え、該収容体には、水を該収容体の外部から内部へ通す通水孔が形成されていることを特徴とする遺体処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の遺体処理装置において、
案内部材の遺体への挿入方向先端側には、遺体用体内物漏出抑制部材が遺体の奥の方へ深く入り込むのを規制するための挿入量規制部材が収容されていることを特徴とする遺体処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の遺体処理装置において、
挿入量規制部材は遺体の内部で膨張する膨張部材で構成されていることを特徴とする遺体処理装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1つに記載の遺体処理装置において、
吸水体は、水に触れて膨張する水膨潤性を有しており、
案内部材には、水を収容した水収容体が収容され、該水収容体よりも挿入方向基端側には該水収容体を先端側へ押す押し部材が設けられ、
上記水収容体は、所定の力を受けた際に内部の水を流出させるように構成されていることを特徴とする遺体処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−148712(P2011−148712A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9091(P2010−9091)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(500329906)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(500329906)
【Fターム(参考)】
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