説明

還元性漂白剤を用いる漂白パルプの処理方法

【課題】ハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤による漂白後のパルプ同伴水の還元性物質を低減する処理方法を提供する。
【解決手段】パルプをハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤により漂白処理した後のパルプ同伴水を、(A)パルプ同伴水の還元性物質量に対して0.1倍当量〜5倍当量の過酸化水素、ならびに(B)金属および/または金属塩を用いて処理し、パルプ同伴水の還元性物質量を0.20meq/l以下にすることを特徴とする漂白パルプの処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元性漂白剤を用いるパルプ漂白において、漂白後のパルプスラリー中に含まれる還元性漂白剤の除去に関するものである。更に詳しくは、脱墨パルプや機械パルプをハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素等の還元性漂白剤で漂白した後にパルプ同伴水の還元性物質を効率よく除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材パルプの漂白では過酸化水素などの酸化剤による漂白のほか、特に高白色度のパルプを得る目的で、ハイドロサルファイトや二酸化チオ尿素による漂白が行われることがあるが、漂白後のパルプスラリー中に還元性漂白剤が残存する場合がある。パルプスラリーを洗浄ろ過した際の廃水中に、還元性漂白剤が残存すると廃水のCOD値を上昇させて環境汚染の原因となることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、水溶液中の亜二チオン酸塩を含有する廃水を処理する方法として廃水のpHを9以上に調整し、そこに過酸化水素を添加する方法が開示されているが、この方法では亜二チオン酸塩に対して過剰の過酸化水素の添加が必要であり、残存する過酸化水素が排水のCODを増加させるなどの問題がある。
【0004】
一方、過酸化水素に金属塩を添加して水溶液中の硫化水素を除去する方法が開示されているが(特許文献2参照)、パルプスラリー中に残存するハイドロサルファイトや二酸化チオ尿素などの還元性漂白剤の除去に関する記載はなく、残存する還元性漂白剤がパルプの漂白工程に与える影響についても記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−1161号公報
【特許文献2】特開平9−94583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤による漂白後のパルプ同伴水の還元性物質を除去することにより、多量の還元性物質が次の工程に流入し、後工程で添加された薬剤の効果を低下させるなどの課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ハイドロサルファイトや二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤でパルプを処理した後のパルプ同伴水を、過酸化水素ならびに金属および/または金属塩を用いて処理することによって、パルプ同伴水に含まれる還元性物質を効率よく低減し、還元性物質及び添加した過酸化水素が次の工程へ流入することを抑制する方法を見い出した。
【0008】
すなわち本発明は、パルプをハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤により漂白処理した後のパルプ同伴水を、(A)パルプ同伴水の還元性物質量に対して0.1倍当量〜5倍当量の過酸化水素、ならびに(B)金属および/または金属塩を用いて処理し、パルプ同伴水の還元性物質量を0.20meq/l以下にすることを特徴とする漂白パルプの処理方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、ハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤による漂白処理後のパルプ同伴水の残存還元性物質を短時間で効率よく低減することができる。
さらに還元性漂白剤による漂白後の残存還元性物質とそれを低減するために添加する過酸化水素の量を最小限化し、次の漂白工程での障害を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明が適用されるパルプとしては、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプなどが挙げられる。化学パルプとしては、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)などが挙げられる。
【0011】
機械パルプとしては、グランドウッドパルプ(GP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、サーモグランドウッドパルプ(TGW)、加圧グランドウッドパルプ(PGW)、ケミグランドパルプ(CGP)等が挙げられる。
【0012】
古紙パルプとしては、白物、色上、模造、OA古紙等を原料古紙とするパルプを例示することができ、古紙パルプを公知の方法で脱墨処理した脱墨パルプが好適である。
【0013】
化学パルプ、機械パルプまたは古紙パルプの漂白方法としては、例えば、過酸化水素や次亜塩素酸などの酸化剤による漂白工程とハイドロサルファイトや二酸化チオ尿素などの還元剤による漂白工程を組み合わせた方法があげられる。本発明が適用される漂白方法としては、ハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤により処理する漂白工程が含まれていれば、各工程の組み合わせ、順序に特に制限はない。
【0014】
化学パルプ、機械パルプまたは古紙パルプをハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤により漂白処理する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、処理条件として、パルプ濃度10%のパルプスラリーに1%のハイドロサルファイトを添加し、それを弱酸性下で60℃、30分加温する方法などがあげられる。
【0015】
本発明における還元性漂白剤は、ハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を主成分として含有するものであり、ハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素のほかには、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、水素化硼素ナトリウムなどが挙げられる。本発明で用いられるハイドロサルファイトは、亜二チオン酸塩を少なくとも60重量%以上含有し、好ましくは85重量%以上含有するものである。亜二チオン酸塩としては亜二チオン酸ナトリウムが好ましい。
【0016】
本発明において、パルプをハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤で漂白処理した後のパルプ同伴水に残存する還元性物質としては、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素そのもののほか、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムなどがある。
【0017】
本発明において、パルプを還元性漂白剤で処理した後のパルプ同伴水に残存する還元性物質量には特に制限はないが、一般的には、酸化還元当量として0.5meq/l〜1.0eq/lである。ここで還元性物質の酸化還元当量は、ヨウ素-チオ硫酸ナトリウム滴定により求めることができる。具体的には、還元性漂白剤で処理後のパルプスラリーをろ過してパルプ同伴水を50mlはかりとり、そこに4eq/l硫酸20mlを加え、0.1eq/lヨウ素を5ml定量し添加する。さらにヨウ化カリウムを20gと飽和モリブデン酸アンモニウムを0.5ml加える。その後、溶液中のヨウ化カリウムが完全に溶解したのを確認し、0.1eq/lチオ硫酸ナトリウムで滴定する(滴定量X)。同じくパルプスラリーをろ過して得たパルプ同伴水50mlに4eq/l硫酸20mlを加える。そこにオルトフェナントロリン鉄指示薬を添加し、0.025eq/l硫酸セリウムで滴定する(滴定量Y)。滴定後、以下の計算式にそれぞれの滴定量X、Yを代入し、パルプ同伴水中の還元性物質量を求めることができる。

パルプ同伴水の還元性物質量(meq/l)=1/2×(0.1×5−0.1×X+0.025×Y)/50×1000

【0018】
本発明で用いられる過酸化水素は市販品(35〜60重量%程度)をそのまま用いてもよいし、希釈したものを用いてもよい。パルプ同伴水の処理に用いる過酸化水素の使用量は、パルプ同伴水中の残存還元性物質量と目標とする還元性物質量の差によって適宜決めればよいが、好ましくはパルプ同伴水に含有される還元性物質量の0.1倍当量以上、より好ましくは0.5倍当量以上、最も好ましくは1.5倍当量以上である。過酸化水素の上限としては、好ましくは5倍当量以下であり、より好ましくは3倍当量以下である。過酸化水素の使用量が多いほど、パルプ同伴水中の還元性物質は除去されやすくなるが、還元性物質と反応しなかった未反応の過酸化水素がより多くなる。未反応の過酸化水素が過剰に残存すると、それが次工程に流入して、次工程で添加した薬剤の効果が低下したり、排水負荷(COD)を増加させるおそれがある。また、還元性物質と反応しなかった未反応の過酸化水素を酸化させ濃度を低減させるために必要な金属がより多く必要となって薬剤コストが大きくなる問題もある。
【0019】
本発明において、過酸化水素ならびに金属および/または金属塩は、還元性漂白剤で処理後のパルプスラリーに添加し、パルプスラリー中でパルプ同伴水に残存した還元性物質を処理する方法が好ましい形態であるが、パルプスラリーをろ過または洗浄ろ過し、分離したパルプ同伴水に本発明の過酸化水素ならびに金属および/または金属塩を添加して残存還元性物質を処理することもできる。
【0020】
本発明で用いられる金属としては、遷移金属が挙げられるが、好ましくは、鉄、マンガン、銅、モリブデン、パラジウム、チタン、ニッケル、白金、バナジウム、コバルトおよびタングステンからなる群から選択される一種以上の金属が好ましい。また、本発明では前記金属の硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩などの金属塩、特に硫酸鉄や硫酸銅、硫酸マンガンなどが使いやすさやコストの面で好適である。パルプ同伴水の処理に用いる金属および/または金属塩の使用量は、処理に用いる過酸化水素量にもよるが、あまりに使用量が多すぎると過酸化水素が還元性物質と反応する前に金属と反応し、還元性物質と十分に反応できない恐れがあるため、パルプ同伴水量に対する金属の重量比として0.000001以上0.0005以下が好ましい。
【0021】
本発明の処理温度は特に制限されるものではないが、温度が高いほど、処理時間をより短くすることが可能となる。加熱コストなどの経済性を考慮すると20〜70℃の範囲が好ましい。
【0022】
本発明における過酸化水素ならびに、金属および/または金属塩を用いて処理する際のパルプ同伴水のpHには特に制限がない。パルプ同伴水のpHがアルカリ性であるほど、処理時間を短くすることが可能となるが、pHをアルカリ性に調製する工程が必要となり、さらにpH調整のための薬剤コストが増大する。本発明の方法によれば、pHが酸性〜弱アルカリ性域においても還元性物質を十分に除去することが可能であり、好ましいpHは高くともpH9であり、より好ましくはpH2〜pH9、最も好ましくはpH3〜pH8である。
【0023】
本発明の処理に必要な時間は、パルプ同伴水の処理前の還元性物質量と目標とする還元性物質量、処理に用いる過酸化水素と金属の量、処理温度やpHなどに依存するが、好ましくは5分〜1時間である。
【0024】
本発明の方法による処理後のパルプ同伴水中の還元性物質量は、処理条件にもよるが好ましくは0.20meq/l以下であり、より好ましくは0.10meq/l以下である。また、同処理後のパルプ同伴水の残存過酸化水素量は、好ましくは3.50meq/l以下、より好ましくは3.00meq/l以下、最も好ましくは2.50meq/l以下にすることができる。
【0025】
本発明の方法を用いて還元性物質が低減されたパルプ同伴水を含有するパルプスラリーは、例えば、公知の洗浄、脱水処理を経て次の漂白工程に送られる。本発明の処理を行うことによって、残存還元性物質や残存過酸化水素により、次の漂白工程で使用される漂白薬品が過剰に消費されることを防止することが可能である。
【0026】
また、ある場合には還元性物質が低減されたパルプ同伴水を含有するパルプスラリーは、公知の洗浄、脱水工程を経て抄紙工程に送られる。洗浄、脱水または抄紙工程で発生するろ液などの水は洗浄水などとして再利用されるため、循環水にスライムコントロール剤やスケール防止剤が添加される場合が多い。特にスライムコントロール剤には次亜塩素酸などの酸化剤系の薬剤が使用されることがあるが、本発明の処理を行うことによって、還元性物質によるスライムコントロール剤の効力低下を防止することができる。
【0027】
さらに脱水工程のろ液の一部または全部は生物処理などを経て、河川などに放流される場合がある。本発明によれば、残存過酸化水素による生物処理能力等の低下を防止することができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実験例に限定するものではない。以下に示す実施例、比較例においてはパルプ同伴水の還元性物質量および過酸化水素量は、以下の方法で求めた。
【0029】
<還元性物質量および過酸化水素量の測定>
パルプ同伴水を50mlはかりとった。そこに4eq/l硫酸20mlを加え、0.1eq/lヨウ素を5ml定量し、添加した。さらにヨウ化カリウムを20gと飽和モリブデン酸アンモニウムを0.5ml加えた。その後、溶液中のヨウ化カリウムが完全に溶解したのを確認し、0.1eq/lチオ硫酸ナトリウムで滴定した(滴定量X)。同じくパルプ同伴水50mlをはかりとり、4eq/l硫酸20mlを加えた。そこにオルトフェナントロリン鉄指示薬を添加し、0.025eq/l硫酸セリウムで滴定した(滴定量Y)。滴定後、以下の計算式にそれぞれの滴定量を代入し、パルプ同伴水中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。
【0030】
パルプ同伴水の還元性物質量(meq/l)=1/2×(0.1×5−0.1×X+0.025×Y)/50×1000 ・・・式(1)
【0031】
パルプ同伴水の過酸化水素量(meq/l)=0.025×Y/50×1000−{式(1)のパルプ同伴水の還元性物質量(meq/l)} ・・・式(2)
【0032】
実施例1
サーモメカニカルパルプ(TMP)をパルプ濃度5%になるよう調整し、ハイドロサルファイト(三菱ガス化学社製、亜二チオン酸ナトリウム85%含有品)0.7%を添加し、初期pH6.0、50℃で60分加温した。漂白した後のパルプスラリー(パルプ濃度3%)をろ過して得たろ液(パルプ同伴水)の還元性物質量を測定したところ、1.5meq/lであった。
【0033】
前記のろ液50ml(pH5.8)をビーカーに加えた。それを2個用意し40℃で10分加温した。液温が40℃になっていることを確認した後、三菱ガス化学社製の工業用35%過酸化水素水を希釈した2%過酸化水素水0.06ml(過酸化水素濃度25ppm、還元性物質と等量)、ならびに硫酸第一鉄(関東化学社製特級試薬)と純水を用いて調製した1%硫酸第一鉄水溶液0.5mlを添加し、40℃で30分加温した。加温後の溶液をチオ硫酸ナトリウム滴定と硫酸セリウム滴定し、滴定値から溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0034】
実施例2
実施例1で添加した過酸化水素濃度を50ppm(還元性物質の2倍当量)に代えた以外は、実施例1と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0035】
実施例3
実施例1で添加した過酸化水素の量を75ppm(還元性物質の3倍当量)に代え、1%硫酸第一鉄水溶液を0.1mlに代えた以外は、実施例1と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0036】
実施例4
実施例1で添加した過酸化水素の量を75ppm(還元性物質の3倍当量)に代え、1%硫酸第一鉄水溶液を0.25mlに代えた以外は、実施例1と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0037】
実施例5
実施例1で添加した過酸化水素の量を75ppm(還元性物質の3倍当量)に代え、1%硫酸第一鉄水溶液を0.5mlに代えた以外は、実施例1と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0038】
実施例6
実施例1で添加した過酸化水素の量を75ppm(還元性物質の3倍当量)に代え、1%硫酸第一鉄水溶液を2.5mlに代えた以外は、実施例1と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0039】
比較例1
実施例1で添加した2%過酸化水素水0.06mlと1%硫酸第一鉄水溶液0.5mlの代わりに純水を添加した以外は、実施例1と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0040】
比較例2
実施例1で添加した1%硫酸第一鉄水溶液0.5mlの代わりに純水を添加した以外は、実施例1と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0041】
比較例3
実施例2で添加した1%硫酸第一鉄水溶液0.5mlの代わりに純水を添加した以外は、実施例2と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0042】
比較例4
実施例3で添加した1%硫酸第一鉄水溶液を0.1mlの代わりに純水を添加した以外は、実施例3と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0043】
比較例5
実施例1で添加した過酸化水素の量を125ppm(還元性物質の5倍当量)に代え、1%硫酸第一鉄水溶液0.5mlの代わりに純水を添加した以外は、実施例1と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1の結果からわかるとおり、パルプ同伴水中の還元性物質を除去する際に、過酸化水素に硫酸鉄を添加することによって、同伴水中の還元性物質を効果的に除去することが可能となり、さらに残存過酸化水素量を小さくできることが分かった。
【0046】
実施例7
グランドウッドパルプ(GP)をパルプ濃度5%になるよう調整し、ハイドロサルファイト(三菱ガス化学社製、亜二チオン酸ナトリウム85%含有品)0.7%を添加し、初期pH6.0、50℃で60分加温した。漂白した後のパルプスラリー(パルプ濃度3%)をろ過して得たろ液(パルプ同伴水)の還元性物質量を測定したところ、1.5meq/lであった。
【0047】
前記のろ液100mlをビーカーに加えた。それを2個用意し40℃で10分加温した。液温が40℃になっていることを確認した後、三菱ガス化学社製の工業用35%過酸化水素水を希釈した2%過酸化水素水0.18ml(過水濃度75ppm、還元性物質の1.5倍当量)、ならびに硫酸第二鉄(関東化学社製特級試薬)と純水を用いて調製した1%硫酸第二鉄水溶液0.5mlを添加し、40℃で30分加温した。加温後、前述の方法でパルプ同伴水中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表2に示した。
【0048】
実施例8
実施例7で添加した1%硫酸第二鉄水溶液0.5mlの代わりに1%硫酸マンガン水溶液を0.5ml添加した以外は、実施例7と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表2に示した。
【0049】
比較例6
実施例7で添加した1%硫酸第二鉄水溶液0.5mlの代わりに純水を添加した以外は、実施例7と同様にして処理を行い、加温後の溶液中の還元性物質量と残存過酸化水素量を求めた。還元性物質量と残存過酸化水素量を表2に示した。
【0050】
【表2】

【0051】
表2の結果からわかるようにパルプ同伴水中の還元性物質を除去する際に、過酸化水素と更に硫酸マンガンを添加することによって、同伴水中の還元性物質を完全に除去することが可能となり、さらに残存過酸化水素量を小さくできることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプをハイドロサルファイトまたは二酸化チオ尿素を含有する還元性漂白剤により漂白処理した後のパルプ同伴水を、(A)パルプ同伴水の還元性物質量に対して0.1倍当量〜5倍当量の過酸化水素、ならびに(B)金属および/または金属塩を用いて処理し、パルプ同伴水の還元性物質量を0.20meq/l以下にすることを特徴とする漂白パルプの処理方法。
【請求項2】
過酸化水素ならびに金属および/または金属塩を用いて処理した後のパルプ同伴水の残存過酸化水素量が3.50meq/l以下であることを特徴とする請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
パルプが機械パルプまたは脱墨パルプであることを特徴とする請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
過酸化水素ならびに金属および/または金属塩を用いて処理する際のパルプ同伴水のpHが高くとも9であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の処理方法。
【請求項5】
金属が鉄、マンガン、銅、モリブデン、パラジウム、チタン、ニッケル、白金、バナジウム、コバルトおよびタングステンからなる群より選択される一種以上の金属であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の処理方法。
【請求項6】
金属および/または金属塩の使用量が、金属としてパルプ同伴水量に対する重量比で0.000001以上0.0005以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の処理方法。

【公開番号】特開2011−256485(P2011−256485A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131807(P2010−131807)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】