説明

邪魔板ユニット

【課題】邪魔板の攪拌槽への取付取り外しが容易であり、しかも、邪魔板の本数や形状を自由に変更できる邪魔板ユニットを提供する。
【解決手段】攪拌する物質を収容する本体部2と、本体部2に取り付けられる蓋部3とを有する攪拌槽1に設置される邪魔板ユニット20であって、本体部2の上端と蓋部3との間に配置される座金21と、座金21に連結された、攪拌槽1内に配置される邪魔板22とを備えている。邪魔板ユニット20の座金21を本体部2と蓋部3との間に配置し、蓋部3を本体部2に固定すれば邪魔板22を攪拌槽1に固定できるし、蓋部3を本体部2から取り外せば、邪魔板22も本体部2から取り外すことができるから、邪魔板22の交換作業が簡単になり、その作業時間も短くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、邪魔板ユニットに関する。さらに詳しくは、流動性を有する液体やスラリー等を攪拌して、化学反応や晶析、抽出を行う攪拌槽に使用される邪魔板を備えた邪魔板ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、攪拌槽1は、通常、攪拌羽根12を有する攪拌機10と、邪魔板200とを備えている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図3に示すように、攪拌機10は、先端に攪拌羽根12が設けられた回転軸11を備えており、通常、回転軸11が攪拌槽1の中心軸と一致するように攪拌槽1に配置される。
このため、攪拌機10を作動して攪拌羽根12を回転させれば、攪拌槽1内に、攪拌槽の中心軸を中心とする液体やスラリー等の流体(以下、単に流体Sで示す)の回転流を生じさせることができる。
【0004】
一方、邪魔板200は、その表面が、攪拌機10によって攪拌槽1内に形成される流体Sの回転流の流動方向と交差する面となるように配置される。例えば、邪魔板200の表面が攪拌槽1の半径方向と平行となるように配置される。
かかる邪魔板200を配置すれば、攪拌機10によって生成された流体Sの回転流を邪魔板200と衝突させてその流れを変化させることによって、攪拌槽1内における化学反応等に適した流動状態を攪拌槽1内に形成することができる。
【0005】
ところで、攪拌槽1内における流動状態は、その用途や攪拌する物質、生成物質に応じて異なる。このため、その用途等に応じた適切な流動状態が形成されるように、攪拌羽根12の形状や回転数、また、邪魔板200の形状や枚数、配置する位置等を調整しなければならない。
よって、攪拌槽1の用途を変更する場合には、その用途に最適な流動状態が攪拌槽1内に形成されるように、邪魔板200を別な形状のものに交換したり、一部の邪魔板200を攪拌槽1から取り外したり、邪魔板200を新たに設置するなどの作業が行われる。
【0006】
しかるに、邪魔板200は、(1)攪拌槽1の直胴部分に溶接する(図3(A)参照)、(2)攪拌槽1に設けられている取り付け金具により固定する、(3)攪拌槽1の上鏡3(蓋)のノズル3hに固定する(図3(B)参照)、などの方法で取り付けられている。
【0007】
このため、邪魔板200を交換する際には、(1)の方法で取り付けられていれば、攪拌槽1から邪魔板200を取り外すために溶接部分を切断しなければならないし、新たに設ける邪魔板200を溶接によって攪拌槽1に取り付けなければならないので、交換作業の作業工数が多くなり、交換に要する時間も長くなる。
【0008】
一方、(2)の方法で取り付けられていれば、邪魔板200を着脱することは簡単である。しかし、邪魔板200の設置枚数を増やす場合には、溶接などにより取り付け金具を攪拌槽1に増設しなければならないので、この場合も交換作業の作業工数が多くなるなどの問題がある。
【0009】
(3)の方法で取り付けられていれば、邪魔板200を着脱することは簡単であるし、上鏡3に設けられているノズル3hの数の範囲内であれば、簡単に邪魔板200の枚数を変更することもできる。
しかし、ノズル3hの数以上の邪魔板200を設けることはできないし、邪魔板200に加わる力は上鏡3が支持しなければならなくなるので、使用条件が制約されるなどの問題がある。
【0010】
しかも、(1)、(2)の方法は、鉄などの金属性の攪拌槽には採用できるが、鉄にガラスなどをコーティングしている攪拌槽では、溶接などの物理的な改造が困難であるため、これらの方法を採用することは実質的に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−43668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、邪魔板の攪拌槽への取付取り外しが容易であり、しかも、邪魔板の本数や形状を自由に変更できる邪魔板ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明の邪魔板ユニットは、攪拌する物質を収容する本体部と、該本体部に取り付けられる蓋部とを有する攪拌槽に設置される邪魔板ユニットであって、前記本体部の上端と前記蓋部との間に配置される座金と、該座金に連結された、前記攪拌槽内に配置される邪魔板とを備えていることを特徴とする。
第2発明の邪魔板ユニットは、第1発明において、前記座金は、前記本体部における前記蓋部を固定する取付部と略相似形状に形成されていることを特徴とする。
第3発明の邪魔板ユニットは、第1または第2発明において、前記邪魔板が、前記座金に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、邪魔板ユニットの座金を本体部と蓋部との間に配置し、蓋部を本体部に固定すれば邪魔板を攪拌槽に固定できるし、蓋部を本体部から取り外せば、邪魔板も本体部から取り外すことができる。よって、邪魔板の交換作業が簡単になり、その作業時間も短くできる。また、撹拌槽本体に溶接などの物理的改造を行わなくても、邪魔板の種類や本数の変更ができるので、邪魔板の交換の際に攪拌槽への加工が不要である。よって、物理的改造ができないガラスをコーティングした撹拌槽についても適用することができるし、邪魔板の交換作業に起因する攪拌槽の耐圧性能等の低下が生じることもない。さらに、邪魔板ユニットの座金は、撹拌槽において強度が大きい本体部と蓋部の連結部分に配置されるので、邪魔板から加わる負荷に起因する攪拌槽の損傷を防ぐことができる。
第2発明によれば、邪魔板を攪拌槽に強固に固定できるし、邪魔板の設置が容易になる。
第3発明によれば、座金に取り付ける邪魔板を変更するだけで、邪魔板の形状を攪拌槽の用途に適した形状に変更することができる。すると、各用途に応じた邪魔板ユニットを準備しておく必要がないから、設備コストを抑えることができる。そして、邪魔板ユニットの座金と邪魔板とを別々に保管できるので、維持管理も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本実施形態の邪魔板ユニット20を取り付けた攪拌槽1の概略説明図であり、(B)は本体部2と蓋部3との取り付け部分の拡大説明図である。
【図2】本実施形態の邪魔板ユニット20の単体説明図である。
【図3】従来の邪魔板200を取り付けた攪拌槽1の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の邪魔板ユニットは、流動性を有する液体やスラリー等を攪拌して、化学反応や晶析、抽出を行う攪拌槽に取り付けて使用されるものであり、攪拌槽への着脱や、邪魔板の形状や設置数等の変更が容易に行えるようにしたことに特徴を有している。
【0017】
(攪拌槽1の説明)
図1において、符号1は本発明の邪魔板ユニット20(以下、単に邪魔板ユニット20という)が取り付けられる攪拌槽を示している。この攪拌槽1は、スラリー等の攪拌される物質が収容される本体部2と、この本体部2の上端に取り付けられる蓋部3とを備えている。
本体部2および蓋部3は、両者を固定するために使用されるフランジ部2f,3fを有している。このフランジ部2f,3fには、互いに対応する位置に貫通孔が設けられており、この貫通孔にボルトを通して、本体部2と蓋部3とが固定できるようになっている。
【0018】
なお、攪拌槽1として、フランジ部2f,3fをクランプ等により挟んで本体部2と蓋部3とを固定する構造を採用している場合には、フランジ部2f,3fに貫通孔を有しないのは、いうまでもない。
【0019】
また、攪拌槽1は、本体部2内のスラリー等を攪拌する攪拌機10を有している。この攪拌機10は、蓋部13を貫通し一端が本体部2内に配置された回転軸11と、この回転軸11の一端に設けられた攪拌羽根12とを備えている。そして、回転軸11の他端部(攪拌槽1外に配置された端部)は、モータ等の回転軸11を回転させる駆動手段と連結されている。
このため、駆動手段を作動して攪拌機10の攪拌羽根12を回転させれば、攪拌槽1内に、攪拌槽1の中心軸を中心とする液体やスラリー等の流体の回転流を生じさせることができるのである。
【0020】
(邪魔板ユニット20の説明)
つぎに、邪魔板ユニット20を説明する。
図1および図2に示すように、邪魔板ユニット20は、座金21と、邪魔板22とから構成されている。
【0021】
図2に示すように、座金21は、ステンレス等の金属やFRP等強化プラスチックなどを素材とする、環状に形成された板状の部材である。この座金21は、邪魔板ユニット20を攪拌槽1に取り付ける際に、本体部2のフランジ部2fと、蓋部3のフランジ部3fとの間に配置されるものである。つまり、座金21は、邪魔板ユニット20を攪拌槽1に取り付けるために設けられているものである。
【0022】
図2(B)に示すように、この座金21には、厚さ方向を貫通する貫通孔20hが複数設けられている。この貫通孔20hは、本体部2および蓋部3のフランジ部2f,3fに設けられている貫通孔と対応する位置に形成されている。
このため、邪魔板ユニット20の座金21を本体部2のフランジ部2fと蓋部3のフランジ部3fとの間に配置して、貫通孔20hとフランジ部2f,3fの貫通孔の位置を一致させてボルトを通せば、邪魔板ユニット20を攪拌槽1に固定することができる。
【0023】
なお、フランジ部2f,3fをクランプ等によって挟んで本体部2と蓋部3とを固定する場合には、座金21に貫通孔20hを設けなくてもよいのは、いうまでもない。
【0024】
図1および図2に示すように、座金21の内端には、複数本の邪魔板22が設けられている。この邪魔板22は、座金21を攪拌槽1の本体部2のフランジ部2fと蓋部3のフランジ部3fとの間に配置したときに、本体部2内に位置するように座金21に連結されている。つまり、本体部2にスラリー等を収容したときに、このスラリー等に邪魔板22が浸漬されるように、邪魔板22は座金21に連結されているのである。
【0025】
以上のごとき構成であるから、邪魔板ユニット20の座金21を本体部2のフランジ部2fと蓋部3のフランジ部3fとの間に配置して、蓋部3を本体部2に固定すれば、邪魔板ユニット20、つまり、邪魔板22を攪拌槽1に固定できる。
また、邪魔板22を交換する場合には、蓋部3を本体部2から取り外せば、邪魔板ユニット20ごと邪魔板22を攪拌槽1から取り外すことができる。
【0026】
よって、本実施形態の邪魔板ユニット20を使用すれば、本体部2と蓋部3との着脱と同時に邪魔板22の取り付け取り外しを行うことができるし、複数の邪魔板22を一度に交換できるので、邪魔板22の交換作業が簡単になり、その作業時間も短くできる。
【0027】
しかも、座金21は、撹拌槽1において強度が大きい本体部2と蓋部3との連結部分に配置されるので、攪拌に際し、スラリー等から邪魔板22を介して加わる負荷に起因する攪拌槽1の損傷を防ぐことができる。
【0028】
また、本実施形態の邪魔板ユニット20は、邪魔板22の取り付け取り外しに際し、撹拌槽1を物理的に改造することが必要ないので、物理的改造ができないガラスをコーティングした撹拌槽1にも適用することができる。
【0029】
ここで、攪拌槽1内における流動状態は、その用途や攪拌する物質、生成物質に応じて異なるため、その用途等に応じた適切な流動状態が形成されるように、攪拌羽根12の形状や回転数とともに、邪魔板22の形状や枚数、配置する位置等を調整しなければならない。
本実施形態の邪魔板ユニット20の場合には、各用途等に応じた邪魔板ユニット20を複数用意しておけば、用途変更の際に、邪魔板ユニット20を交換するだけで良くなるので、用途変更が容易になり作業時間も短縮できる。
しかも、邪魔板22の形状等を変更する際に、攪拌槽1に物理的改造をする必要が無いので、邪魔板22の交換作業に起因する攪拌槽1の耐圧性能等の低下が生じることもない。
そして、攪拌槽1に物理的改造が不要であるから、物理的改造ができないガラスをコーティングした撹拌槽1でも、用途等に応じて適切な流動状態が攪拌槽1に形成されるように、邪魔板22の形状等を容易に変更することができる。
【0030】
上述した各用途等に応じた邪魔板ユニット20とは、各用途等に応じた適切な流動状態を形成できる邪魔板ユニット20のことである。具体的には、所望の流動状態を得るのに適した形状を有する邪魔板22が、適切な枚数だけ、座金21の適切位置に連結されている邪魔板ユニット20のことである。
【0031】
(座金21の形状について)
なお、上記例では、座金21が環状に形成された板材の場合を説明したが、座金21の形状は、フランジ部2f,3fの間に配置でき、本体部2と蓋部3とを固定したときに攪拌槽1にしっかりと固定できる形状であればよく、上記形状には限定されない。例えば、座金21の形状を、フランジ部2f,3fと略相似形状とすれば、邪魔板ユニット20を攪拌槽1に強固に固定できるし、邪魔板ユニット20の設置が容易になる、という利点も得られる。
【0032】
(他の邪魔板ユニット20について)
また、上記例では、邪魔板ユニット20に複数の邪魔板22が設けられている場合を説明したが、座金21に一枚の邪魔板22だけが取り付けられている邪魔板ユニット20を、複数個、攪拌槽1に取り付けるようにしてもよい。すると、攪拌槽1に取り付ける邪魔板ユニット20の組み合わせや配置を変更すれば、攪拌槽1内の流動状況を調整することができる。
例えば、邪魔板ユニット20を、座金21の形状が略円弧状であって、この座金21に一枚の邪魔板22が固定された構造とする。すると、複数の邪魔板ユニット20を、その座金21が環状に並ぶように攪拌槽1に取り付ければ、複数の邪魔板22を攪拌槽1の中心軸周りに配置することができる。そして、邪魔板ユニット20を適切に並べれば、用途等に応じた適切な流動状態を攪拌槽1に形成させることもできる。
【0033】
さらに、座金21に邪魔板22を着脱できるような構造としてもよく、この場合には、取り付ける邪魔板22の形状や枚数を変えるだけで、邪魔板22の形状を攪拌槽1の用途に適した形状に変更することができる。すると、各用途に応じた邪魔板ユニット20を多数準備しておく必要がないから、設備コストを抑えることができる。そして、邪魔板ユニット20の座金21と邪魔板22とを別々に保管できるので、維持管理も容易になる。
座金21に邪魔板22を着脱できるような構造はとくに限定されず、例えば、座金21の内端にブラケットを設け、このブラケットにボルト等で邪魔板22を取り付けることができる構造等を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の邪魔板ユニットは、流動性を有する液体やスラリー等を攪拌して、化学反応や晶析、抽出を行う攪拌槽での使用に適している。
【符号の説明】
【0035】
1 攪拌槽
2 本体部
3 蓋部
10 攪拌機
20 邪魔板ユニット
21 座金
22 邪魔板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌する物質を収容する本体部と、該本体部に取り付けられる蓋部とを有する攪拌槽に設置される邪魔板ユニットであって、
前記本体部の上端と前記蓋部との間に配置される座金と、
該座金に連結された、前記攪拌槽内に配置される邪魔板とを備えている
ことを特徴とする邪魔板ユニット。
【請求項2】
前記座金は、
前記本体部における前記蓋部を固定する取付部と略相似形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の邪魔板ユニット。
【請求項3】
前記邪魔板が、
前記座金に対して着脱可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載の邪魔板ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−83692(P2011−83692A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237972(P2009−237972)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】