説明

部分加飾用成形装置及び基材に部分加飾する部分加飾成形方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、部分加飾用成形装置及び部分加飾成形方法に係り、特にスタンピング成形において成形と同時に部分加飾を行うことの出来る部分加飾用成形装置及び部分加飾成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用内装部品には、樹脂からなる基材の一部分に装飾用表皮材を設けた、いわゆる部分加飾成形品が数多くある。
【0003】従来、部分加飾成型品を製造するには、図6R>6乃至図9で示すように、先ず基材基材と、加飾となる表皮材を別個に形成し、それぞれを接着剤によって接合して形成していた。
【0004】即ち、図6で示すように成形装置100によって基材101を成形し、次に図7で示すように、基材101の部分加飾面(接合面)102に接着剤をスプレー103によって塗布し、同時に加飾する表皮材104の上記基材101との接合面105にも接着剤をスプレー103によって塗布する。そして、接着剤を塗布したそれぞれの接合面102,105を乾燥させた後で、接合用の型106に基材101を配置し、表皮材104を圧着型107によって、木目込みの要領で加圧して、図9で示すように部分加飾された成形品を得ていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の製造方法においては、基材の成形工程と、表皮材を部分加飾する工程とが別工程となっているために、工程数が分かれてしまい、各工程を行うための人員やスペースを必要としていた。また接着剤を用いているために、接着剤を取り扱う必要があり、接着剤取り扱いに伴う不都合があった。また加飾表皮材と基材との接合の際における位置ずれ等の不都合もあった。
【0006】本発明の目的は、工程数を削減して、接着剤を用いないで表皮材を用いた部分加飾を可能とし、人員や作業スペースのスペースの有効利用を図ることの出来るスタンピング成形による部分加飾用成形装置及び部分加飾成形方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る部分加飾用成形装置は、第1金型及び該第1金型内に配設された第2金型と、第1金型及び第2金型に対向して配設されて溶融樹脂を供給するゲートを備えた第3金型と、によってキャビティを構成してなる成形装置であって、前記第1金型のキャビティ面には第2金型を配設する凹部が形成され、第2金型には加飾表皮材の配設面が形成されると共に第2金型の外周は内側へ摺動可能に且つ前記第1金型の凹部に対して反キャビティ面を嵌合可能に形成され、前記第3金型は前記第2金型の加飾表皮材の配設面を覆い前記第1金型と型締め可能に構成されてなることを特徴とする。
【0008】また請求項2に係る基材に部分加飾する部分加飾成形方法は、第1金型及び該第1金型内に配設された第2金型と、第1金型及び第2金型に対向して配設されて溶融樹脂を供給するゲートを備えた第3金型と、でキャビティを構成してなる成形装置によって基材に部分加飾する部分加飾成形方法であって、型開きした状態で第2金型に加飾表皮材を配設する工程と、第2金型の外周側を金型中心側へ移動して加飾表皮材の形を整える工程と、第2金型に対向する部分の第3金型側から溶融樹脂を供給する工程と、第1金型及び第2金型と第3金型とを型締めしてスタンピングする工程と、圧縮型締めしてなる工程と、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0010】図1乃至図5は本発明に係る部分加飾用成形装置及びその成形工程を示すものであり、図1は部分加飾用成形装置に部分加飾用表皮材を装着した状態を示す断面説明図、図2は部分加飾用表皮材を所定形状に形成する工程を示す断面説明図、図3は型締めを開始して基材となる溶融樹脂を充填した状態を示す断面説明図、図4は型締め状態を示す断面説明図、図5は成形品の部分断面図である。
【0011】本例における部分加飾用成形装置は、第1金型10,第2金型20,第3金型30を主たる構成要素とする。本例では第1金型10及び第2金型20を可動側とし、第3金型30を固定側としている。また第3金型30は射出成形装置と連結されており、第3金型30内には射出装置から射出される樹脂を第3金型30上に供給するための通路31が形成されている。
【0012】そして溶融合成樹脂Jの供給装置60から、固定側金型である第3金型30内の通路およびゲート32を介してキャビティKへ溶融合成樹脂Jを射出するように構成されている。また本例では、第1金型10及び第2金型20と、第3金型30により加圧型締めした後で、冷却等ができるように構成されている。これらの溶融合成樹脂Jの注入装置,型締め装置等は公知の技術を用いることが出来る。
【0013】本例の第1金型10は、図示しない駆動装置と連結された可動盤40に設けられており、可動盤40と共に第3金型30側へ移動する。また第1金型10の第3金型30との対向面にはキャビティKを構成するキャビティ凹部11が形成され、このキャビティ凹部11には上記可動盤40側まで到達する配設凹部12が形成されている。この配設凹部12はキャビティ凹部11から可動盤40側へ中心方向に向けた傾斜面13が形成されている。そしてこの配設凹部12に第2金型20が配設されている。
【0014】本例の第2金型20は、第1スライドブロック21と、この第1スライドブロック21の両側に摺動可能に配設された第2スライドブロック22と、第1スライドブロック21と第2スライドブロック22との間に配設される弾撥装置23と、第1スライドブロック21を摺動するシリンダ装置50と、ストッパピン25と、真空吸引装置と連結されたキャビティ面に開口された吸引孔26と、木目込み刃29と、を主たる構成要素としている。
【0015】本例の第1スライドブロック21の第3金型30と反対側は、ロッド51により可動盤40側に配設されたシリンダ装置50と連結されており、このシリンダ装置50により型締め方向に摺動可能に形成されている。また同時に第1スライドブロック21の第3金型30と反対側には、ストッパピン25が配設されている。
【0016】このストッパピン25はシリンダ装置50によって第2金型20の第1金型10からの突出量を規制するものであり、予め所定の長さのものを用いる。即ち成形品の種類や、基材と加飾表皮材Hの種類,厚さに応じて所定のものが用いられる。
【0017】そして、型締め方向と交わる方向には弾撥装置23としてのスプリングを配設する配設孔21aと、連結ロッド28の摺動連結孔21bが所定数形成されている。
【0018】また第1スライドブロックの第3金型30側の面(即ちキャビティ面)に形成された吸引孔26は、金型内通路26a及び管路26bを介して真空装置(図示せず)と連結されている。
【0019】本例の第2スライドブロック22は、上記第1スライドブロック21の外側に配設するものであり、弾撥装置23としてのスプリングの配設孔22aと、連結ロッド28の摺動連結孔22bが前記第1スライドブロック21に形成された配設孔21aと、連結ロッド28の摺動連結孔21bの形成位置と整合するように所定数形成されている。
【0020】第2スライドブロック22の反中心側の面は、傾斜面24となっており、この傾斜面24は、シリンダ装置50を駆動して第2金型20の反キャビティ側を第1金型10と最も可動盤40側で嵌合したときに、前記した第1スライドブロック21の傾斜面13と整合させて形成されている。
【0021】また第2スライドブロック22の第3金型30側の外側には木目込み刃29が形成されており、この木目込み刃29の内側領域はアール形状からなるR部29aが形成されている。
【0022】この第1スライドブロック21の第3金型30側の面と、第2スライドブロック22の第3金型30側の面によって、加飾表皮材Hの配設面が形成される。
【0023】そして第1スライドブロック21と第2スライドブロック22は、弾撥装置(コイルスプリング)23をそれぞれの配設孔21a,22aに配設すると共に、連結ロッド28を夫々の摺動連結孔21b,22bに配設して連結されている。なお公知の手段によって第2スライドブロック22は第1スライドブロック21から脱落しないように構成されている。従って常時は、第1スライドブロック21と第2スライドブロック22は弾撥装置(コイルスプリング)23によって離間する方向に付勢されている。
【0024】本例の第3金型30は、固定盤70に固定されており、キャビティKの形成側には、前記第2金型20の加飾表皮材Hの配設面を覆う凹部33が形成されており、この第2金型20の外側の位置で、前記第1金型10と型締め可能に構成されている。
【0025】また、本発明に基材として用いられる樹脂、即ち注入される溶融合成樹脂Jとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、ナイロン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマー等圧縮成形、射出成形および押出成形に通常使用されるものを、いずれも用いることができる。また、これらに無機質充填剤,ガラス繊維等の充填剤、顔料、滑剤、帯電防止剤等の添加物を含有したものも適宜用いることができる。
【0026】また本発明に用いられる加飾表皮材Hの材質としては、織布,不織布,ポリオレフィン、塩化ビニル、ナイロン等の熱可塑性樹脂及びポリオレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系、塩化ビニル系等の熱可塑性エラストマーのシート,フィルムが挙げられる。また上記材質は単独或は2種以上積層したものを加飾表皮材Hとして使用することもできる。なお、通気性のある材質の場合には裏面(即ち樹脂と接合される面)を非通気性のある材質とすることが好ましい。
【0027】更にソフトな感触を出すために、加飾表皮材Hの裏面にポリプロピレン、ポリエチレン、ウレタン等の発泡シートを貼合したもの、成形時において溶融合成樹脂の熱から保護したり、加飾表皮材Hと芯材層の接着力を強化させる目的で布、またはシート等を裏面に貼合した積層体を使用することもできる。これらの加飾表皮材Hの使用にあたっては、加飾表皮材Hの引張応力、伸びを調整するために供給に先立って予備加熱を行ってもよい。
【0028】次に、上記構成からなる部分加飾用成形装置を用いて成形品を製造する方法について説明する。
【0029】先ず図1で示すように、型開きした状態で第2金型20に加飾表皮材Hを配設する工程を行なう。このとき図示しない真空装置を駆動して加飾表皮材Hが脱落しないように第1スライドブロック21に加飾表皮材Hを引き寄せておく。
【0030】次に第2金型20の外周側(第2スライドブロック22)を第2金型20の中心側へ移動して加飾表皮材Hの形を整える工程を行なう。即ち図2で示すように、シリンダ装置50を駆動して、第1スライドブロック21を第1金型10の可動盤40側へ移動する。
【0031】これにより、第1金型10の配設凹部12内に第2金型20が入り込むことになるが、第1金型10の傾斜面13と第2金型20の第2スライドブロック22の傾斜面24が当接し、この第1金型10の傾斜面13によって、第2スライドブロック22が弾撥装置(スプリング)23に抗して第1スライドブロック21側へ移動する。
【0032】この第2スライドブロック22の移動により、第2金型20に配置された加飾表皮材Hは、端部側が木目込み刃29の内側壁により押されて曲げられる。このとき加飾表皮材Hは真空装置により第2金型20の第1スライドブロック21に保持されているので、加飾表皮材Hの端部が第2スライドブロック22側のR面29aに沿って、第2金型20に合った木目込み形状となる。このとき第2金型20は、ストッパピン25により引き込まれる距離が制限されている。
【0033】次に、図3で示すように、第2金型20に対向する部分の第3金型30側から溶融樹脂Jを供給する工程を行なうが、同時に可動側である第1金型10及び第2金型20を固定金型である第3金型30側へ移動する。
【0034】そして図4で示すように、第1金型10及び第2金型20と第3金型30とをスタンピング型締めする。
【0035】さらに圧縮型締めをする。そして第1金型10及び第2金型20と第3金型30とを型開きし、成形品を取り出す。さらにシリンダ装置50を駆動させて第2金型20を第1金型10から突出させると、第2金型20の第2スライドブロック22が弾撥装置(スプリング)23によって押されて元の状態となる。
【0036】これにより図5で示すように、基材(樹脂)Bに部分加飾することができる。従って、本例のように構成すると、加飾表皮材Hが第2金型20側に真空装置で引き寄せ保持されると共に、端部側が木目込み形状に形成されるので、加飾表皮材Hを木目込む工程で加飾表皮材Hの装着ズレを防ぐ事が可能となり、外観が良好な成形品の製造が可能となる。
【0037】なお上記実施例では、図示の都合により木目込み刃29の幅を大きく取り説明しやすいようにしたが、木目込み刃29は厚さ(幅)を調整することにより、基材との隙間を最小限に設定することができる。
【0038】また前記実施例では、弾撥装置としてスプリングを用いたが、シリンダ装置等でも良いことは勿論である。
【0039】さらに上記実施例におけるシリンダ装置には、油圧シリンダ装置,空気圧シリンダ装置等が含まれるものである。また前記実施例ではストッパピン25を用いたが、シリンダ装置50のロッドの伸縮量を調整することにより第2金型20の移動量を調整することが出来る。
【0040】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、基材成形と加飾用表皮材の貼付が同一の1工程で行うことが出来るので、大巾な工数削減となる。また従来のような接着剤を用いないので、接着剤の取り扱いに係る不都合がない。さらに同一工程で加飾表皮材と基材とを成形することができるので、省人化を図ることが出来、さらにスペースの有効利用を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る部分加飾用成形装置に部分加飾用表皮材を装着した状態を示す断面説明図である。
【図2】部分加飾用表皮材を所定形状に形成する工程を示す断面説明図である。
【図3】型締めを開始して基材となる溶融樹脂を充填した状態を示す断面説明図である。
【図4】型締め状態を示す断面説明図である。
【図5】成形品の部分断面図である。
【図6】従来の基材成形を示す説明図である。
【図7】基材と表皮材に接着剤を塗布する説明図である。
【図8】型により基材と表皮材の接合工程を説明する説明図である。
【図9】従来の完成品の断面説明図である。
【符号の説明】
10 第1金型
11 キャビティ凹部
12 配設凹部
13 傾斜面
20 第2金型
21 第1スライドブロック
22 第2スライドブロック
21a,22a 配設孔
21b,22b 摺動連結孔
23 弾撥装置
24 傾斜面
25 ストッパピン
26 吸引孔
26a 金型内通路
26b 管路
28 連結ロッド
29 木目込み刃
29a R部
30 第3金型
31 通路
32 ゲート
40 可動盤
50 シリンダ装置
51 ロッド
60 供給装置
H 加飾表皮材
J 溶融合成樹脂
K キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1金型及び該第1金型内に配設された第2金型と、第1金型及び第2金型に対向して配設されて溶融樹脂を供給するゲートを備えた第3金型と、によってキャビティを構成してなる成形装置であって、前記第1金型のキャビティ面には第2金型を配設する凹部が形成され、第2金型には加飾表皮材の配設面が形成されると共に第2金型の外周は内側へ摺動可能に且つ前記第1金型の凹部に対して反キャビティ面を嵌合可能に形成され、前記第3金型は前記第2金型の加飾表皮材の配設面を覆い前記第1金型と型締め可能に構成されてなることを特徴とする部分加飾用成形装置。
【請求項2】 第1金型及び該第1金型内に配設された第2金型と、第1金型及び第2金型に対向して配設されて溶融樹脂を供給するゲートを備えた第3金型と、でキャビティを構成してなる成形装置によって基材に部分加飾する部分加飾成形方法であって、型開きした状態で第2金型に加飾表皮材を配設する工程と、第2金型の外周側を金型中心側へ移動して加飾表皮材の形を整える工程と、第2金型に対向する部分の第3金型側から溶融樹脂を供給する工程と、第1金型及び第2金型と第3金型とを型締めしてスタンピングする工程と、圧縮型締めしてなる工程と、を備えてなることを特徴とする基材に部分加飾する部分加飾成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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【特許番号】特許第3231965号(P3231965)
【登録日】平成13年9月14日(2001.9.14)
【発行日】平成13年11月26日(2001.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−337059
【出願日】平成6年12月27日(1994.12.27)
【公開番号】特開平8−174596
【公開日】平成8年7月9日(1996.7.9)
【審査請求日】平成10年12月2日(1998.12.2)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【参考文献】
【文献】特開 平5−169485(JP,A)