部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法、および部分改良地盤の変形量の簡易評価法
【課題】部分改良地盤の液状化強度と変形量を簡易に評価する。
【解決手段】(i)改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、(ii)前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、(iii)改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、(iv)改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、(v)該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、(vi)再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、(vii)決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、該過剰間隙水圧比Δu/σν’に基づいて部分改良地盤の液状化強度を評価する。さらに、(viii)改良体に作用する外力を算定し、(ix)前記等価せん断剛性Geqおよび外力に基づいて部分改良地盤の変形量を評価する。
【解決手段】(i)改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、(ii)前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、(iii)改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、(iv)改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、(v)該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、(vi)再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、(vii)決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、該過剰間隙水圧比Δu/σν’に基づいて部分改良地盤の液状化強度を評価する。さらに、(viii)改良体に作用する外力を算定し、(ix)前記等価せん断剛性Geqおよび外力に基づいて部分改良地盤の変形量を評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤を対象として、その部分改良地盤の液状化強度および変形量を簡易に評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状化対策や液状化に伴う地盤の側方流動対策として、バットレス状改良や格子状改良あるいは柱状改良を行う場合がある。そのような(全面改良ではない)部分改良地盤については、改良体により拘束された自然地盤(未改良地盤)の液状化の可能性や過剰間隙水圧の上昇度の評価が重要であり、たとえば格子状の部分改良地盤についての液状化強度の評価法は特許文献1で提案されている。
【特許文献1】特開2001−355229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示されている方法は、評価法自体の論理的根拠が乏しく、格子状改良以外の条件も含めて、対象地盤や改良土自体に対する適用範囲を明確にできないという問題がある。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は、部分改良地盤の液状化強度と地震時の変形量を簡易に評価し得る有効適切な評価法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法は、バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤の液状化強度を簡易に評価する方法であって、改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、該過剰間隙水圧比Δu/σν’に基づいて部分改良地盤の液状化強度を評価することを特徴とする。
【0006】
本発明の部分改良地盤の変形量の簡易評価法は、バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤の変形量を簡易に評価する方法であって、改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、改良体に作用する外力を算定し、前記等価せん断剛性Geqおよび前記外力に基づいて部分改良地盤の変形量を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液状化に関する既往の要素試験から得られた知見と、部分改良地盤に対する等価せん断剛性を求める手法から、任意の拘束条件下での等価地盤せん断モデルによって地盤の過剰間隙水圧比を求めることにより、様々な形態の部分改良地盤の液状化強度および変形量を簡易にかつ統一的に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の部分改良地盤の変形量の評価法の実施形態について説明するが、これは本発明者らが先に特願2008−056272において提供した「部分改良地盤の変形量の簡易算定法」を基礎とするものであるので、まずその算定法について図1〜図8を参照して説明する。
【0009】
本算定法は、部分改良地盤を単位周期構造体の集合体として築造し、その単位周期構造体の剛性を数学的均質化理論に基づいて求めてこれを部分改良地盤全体の等価剛性とし、この等価剛性と築造後の部分改良地盤に作用する外力とから部分改良地盤の変形量を事前に予測算定するものである。
そして、そのために、本算定法においては、部分改良地盤の等価剛性と改良率との関係を、単位周期構造体の縦横比と改良体の剛性と原地盤の剛性とをパラメータとして予め求めて簡易チャート化しておき、その簡易チャートを用いて部分改良地盤の等価剛性を簡易に求めることを主眼とする。
【0010】
図1は本算定方の概要を示すものであり、(a)は柱状の改良体による部分改良地盤の場合、(b)は格子状の改良体による部分改良地盤の場合である。
(a)は直径lRの柱状の改良体をx方向(幅方向)の間隔lx、y方向(長さ方向)の間隔lyをもって配列して造成した場合であって、この場合の単位周期構造体は2辺がlx,lyの矩形(lx=lyの場合には正方形)の中心に直径lRの柱状の改良体が配置されたものである。この場合の改良率R、すなわち単位周期構造体の面積に対する改良体の面積の比、つまりは部分改良地盤全体の面積に対する改良体全体の面積の比は
【数1】
となる。
【0011】
(b)は厚さlRの板状の改良体をx方向とy方向の双方にそれぞれlx、lyの間隔で格子状に組み合わせて造成した場合であって、この場合の単位周期構造体はx方向の長さlx、y方向の長さlyの矩形の内側に、厚さlRの改良体がx方向およびy方向に1枚ずつ、あるいは厚さlRの改良体がx方向に1枚、厚さlR/2の改良体がy方向に2枚、配置されたものである。この場合の改良率Rはいずれも
【数2】
となる。
【0012】
そして、単位周期構造体は剛性の異なる2つの弾性体、すなわち未改良で低剛性の原地盤(その剛性をESとする)と、改良により高剛性とされた改良体(その剛性をERとする)の複合体と見なすことができ、さらにその複合体は、この複合体全体の剛性と等価とみなせる剛性(以下、これを等価剛性EHという)を有する単一の均質体と見なすことができ、その均質体の等価剛性EHは、数学的均質化理論に基づき単位周期構造体の特性と形状とをパラメータとして次のように求めることができる。
【0013】
すなわち、数学的均質化理論によれば、2つの弾性体の複合体と等価の1つの均質体の弾性係数CHをマトリックスを表記すると、次式で表される。
【数3】
【0014】
上式においてCはミクロ周期構造としての単位周期構造体の弾性マトリックスである。また、Xはミクロ周期構造に単位マクロ歪みIを与えた場合の応答変位であり、3次元では次式のように6成分からなるものである。
【数4】
【0015】
また、均質体の弾性係数CHの逆行列(コンプライアンスマトリックス)は次式で表され、この式から各方向の等価剛性を求めることができる。
【数5】
【0016】
上式におけるExHは均質体のx方向の軸剛性、EyHはy方向の軸剛性、EzHはz方向の軸剛性、GxyHはx−y面内のせん断剛性、GyzHはy−z面内のせん断剛性、GzxHはz−x面(x−z面)内のせん断剛性であり、上式により求められる均質体の各剛性はすなわち単位周期構造体およびその集合体としての部分改良地盤全体の等価剛性を表すものである。
そして、本算定法においては、上式で求められる各方向の等価剛性と改良率Rとの関係を、単位周期構造体のパターンをパラメータとして予め簡易チャート化しておくことにより、その簡易チャートを用いて部分改良地盤の各方向の等価剛性(軸剛性およびせん断剛性)を簡易に求めるものである。
【0017】
その簡易チャートは、具体例を図2〜図3に示すように、横軸に改良率Rをとり、縦軸に等価剛性ExH、EyH、EzH、GxyH、GyzH、GzxH(改良体の軸剛性ERあるいはせん断剛性GRにより除して正規化してある)をとり、ES/ERあるいはGS/GR(改良体の剛性に対する原地盤の剛性の比)と、単位周期構造体の縦横比lx/lyをパラメータとして作成したものである。
図2(a)〜(d)に示す簡易チャートは柱状の改良体の場合において、lx/ly=1(つまり正方形配列)の場合のものであり、図3(a)〜(f)に示す簡易チャートは格子状の改良体の場合において、lx/ly=1,2,3とした場合のものあり、いずれもパラメータES/ERあるいはGS/GRを0、0.2、0.4、0.6、0.8としたものである。
【0018】
このような簡易チャートを予め作成しておくことにより、改良率Rと、改良体の剛性ERあるいはGR、原地盤の剛性ESあるいはGSのみから、部分改良地盤の各方向の等価剛性を直ちに求めることができる。たとえば、柱状の改良体を正方形配列して造成する部分改良地盤における地盤厚さ方向(z方向)の軸剛性を求める場合には、図2(b)の簡易チャートを用いてEzHを求めれば良い。また、格子状の改良体による部分改良地盤における水平面(x−y面)におけるせん断剛性を求める場合には、図3(f)のチャートを用いてGxyHを求めれば良い。
【0019】
本算定法の具体的な適用例として、液状化が想定される護岸に対して側方流動防止対策として地盤改良を行う場合において、液状化が生じた後における護岸の側方流動量を予測算定する場合の一具体例を説明する。
図4はその全体作業手順の概要を示すフローチャートである。
まず、(1)地盤調査を行った結果から液状化層の深度(液状化層厚)を決定し、それに基づき、(2)液状化後に部分改良地盤に作用する外力を決定する。
一方、(3)改良体の形状(柱状あるいは格子状)とその剛性、単位周期構造体の縦横比(lx/ly)を決定する。また、改良率を仮決定し、その改良率に対応する液状化後の等価剛性を簡易チャートにより求める。
そして、(4)等価剛性と外力とにより変形量を算定し、設計条件を満足しなければ改良率を修正して条件を満足するまで以上の手順を繰り返す。なお、その際に必要であれば改良率の修正に併せて、あるいはそれに代えて、他の条件(単位周期構造体のパターンや改良体の剛性等)の見直しを行っても良い。
以上を設計条件を満足するまで繰り返し、条件を満足すれば改良率を確定させることにより、(5)側方流動対策の決定とする。
【0020】
以上の基本的な手順(1)〜(5)を図5に示す構造の護岸に適用して、その液状化後に生じることが予想される変形量を算定する場合の具体例を以下に示す。
(1)液状化層厚の決定
図5において層厚H4で示す砂層が液状化対策が必要な層であり、その範囲を地盤改良するとする。図示例の場合には格子状の改良体の造成による部分地盤改良とし、単位周期構造体のlx=15m、ly=5mとし、したがってlx/ly=3とする。
【0021】
(2)外力の決定
改良体の前面および背面の液状化層が全て液状化するとして、液状化後に地盤改良体にかかる外力を算定する。
護岸前面側(水面を原点とする座標Z1として示す)においては、Z1=0〜H1までは河川あるいは海の水圧がかかり、Z1=H1〜HI+H2までは水圧+土圧がかかる。すなわち、地盤の単位体積重量γt、水の単位体積重量γWとすると、
P1=γwZ1 at Z1=0〜H1
P1=γwZ1+γt(Z1−H1) at Z1=H1〜H1+H2
護岸背面側(地下水位を原点とする座標Z2として示す)においては、Z2=0において土被り圧がかかり、Z2=0〜H4は土被り圧+地下水圧がかかる。すなわち
P2=γtH3 at Z2=0
P2=γtH3+γtZ2 at Z2=0〜H4
【0022】
(3)改良体の決定、等価剛性の算定
上記の外力により地盤改良体にはその横断面に沿う鉛直面(z−x面)に沿ってせん断変形が生じるので、ここでは部分改良地盤のその方向の等価せん断剛性GzxHを図3(d)に示した簡易チャートにより求める。この場合、改良体のせん断剛性GRをセメント系地盤改良を想定してGR=38.5MN/m2とし、原地盤のせん断剛性GSは液状化によりGS=0.1MN/m2になると想定して、簡易チャートにおけるパラメータGS/GR=0とする。
そして、改良率Rの仮決定をR=50%とすれば、単位周期構造体の縦横比lx/ly=3であるから、図6に示すように簡易チャートの縦軸GzxH/GR=0.43、ゆえに、等価剛性GzxH=38.5×0.43=16.5MN/m2として求められる。
【0023】
(4)変形量の算定
上記の外力を負荷した際の部分改良地盤の変形量を算定する。その算定は2次元弾性有限要素法によるか、あるいは、より簡易な手法として、部分改良地盤全体をせん断棒にモデル化することにより行うことができ、いずれの場合も以下に示すようにほぼ同様の結果が得られる。
(4−1)2次元弾性有限要素法による場合
図5に示している各諸元、H1=3m、H2=7m、H3=2m、H4=10m、lx=15m、ly=5m、γt=17kN/m3、γw=10kN/m3を用いて、2次元弾性有限要素法により変形量を算定する。その結果、図7に示すように最大変形量が3cmと算定された。
(4−2)せん断棒による場合
図8に示すように、部分改良地盤全体をその等価剛性と同等の剛性を有するせん断棒にモデル化し、そのせん断棒に上記の外力を作用させた際に生じる変形量を算定する。この場合
改良体背面側の外力 P2=(34+204)×10/2=1190kN/m
改良体前面側の外力 P1=30×3/2+(30+149)×7/2=671.5kN/m
外力の合力 P=P2-P1=1190-671.5=518.5kN/m
等価せん断剛性 GzxH=16.5MN/m2=16.5×103kN/m2
等価せん断バネ k=GzxHW/l=16.5×103×15/10=24.8×103kN/m2
水平方向変形量 x=P/k=518.5/24.8×103=0.02m=2cm
この場合の算定結果は、2次元弾性有限要素法による場合の算定結果に比べて若干の誤差があるものの、この種の解析においては両者の結果は実質的に同等であるといえるし、少なくとも評価結果に影響しない範囲内の誤差であるといえる。
【0024】
(5)対策の決定
以上で算定された変形量が設計条件を満足すれば、改良率の仮決定(上記の場合はR=50%)が妥当であったのでその改良率を最終決定として対策決定とする。変形量の算定結果が設計条件を満足しなければ改良率を変更して以上の手順を繰り返す。すなわち、変形量が過大であれば改良不足であるので改良率を大きくするように変更し、変形量が過小であれば改良過剰であるので改良率を小さくするように変更し、満足すべき結果が得られるまで以上の手順を繰り返せば良い。勿論、その際に必要であれば、すなわち改良率の修正のみでは条件を満足できない場合には、単位周期構造体のパターンや改良体の剛性も併せて見直せば良い。
【0025】
以上で説明したように、本算定法によれば部分改良地盤の変形量の算定に際してまずその等価剛性を簡易チャートにより求めることにより、従来の3次元有限要素法により変形量を直接算定する場合に比べて全体の算定手順を格段に簡略化することができ、特に厳密なモデル化を行うための手間を大きく軽減することができる。したがって、従来のように多大の手間とコスト、時間を要することなく部分改良地盤全体の変形量算定を簡易に実施することができ、その結果、部分改良地盤による改良効果を事前に確認できてその信頼性を充分に高めることができ、特に上記のような護岸の液状化による側方流動防止対策として部分改良地盤を築造するに際して適用して好適である。
【0026】
以上で本発明の基礎となった算定法について説明したが、次に本発明の部分改良地盤の変形量の評価法についての実施形態を図9〜図13を参照して説明する。
本実施形態の評価法は、図9にフローチャートとして示した一連のステップ(i)〜
(ix)により構成されるものであり、以下にその詳細を説明する。
【0027】
(i)地震時に地盤に生じるせん断応力τdを算出する。せん断応力τdは地震応答解析から算定するか、簡易液状化算定法に用いられている(1)式を用いて求める。
【数6】
(1)式において、M:マグニチュード、αmax:地表面最大加速度、z:深度、σν':鉛直有効応力、σν:鉛直全応力、g:重力加速度である。
【0028】
(ii)上記の(1)式で求めたせん断応力τdと、図11を用いて、改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出する。図11は(2)式をもとに作成したものである。
【数7】
(2式)において、hmaxは最大減衰定数で砂の場合は0.2〜0.25の値となる。初期せん断剛性Gsoや基準せん断ひずみγrfは砂の種類や拘束圧によって異なるが、典型的な例としてGso=50MPa、γrf=0.1%、hmax=0.2とした。
【0029】
(iii)上述した算定法で説明した手法により、図3を用いて部分改良地盤の改良率、改良形状、改良パターン、および地盤と改良体のせん断剛性Gso、GIに応じた等価せん断剛性Geqを算出する。
【0030】
(iv)上記(i)で求めたせん断応力τdと、上記(iii)で仮算出した等価せん断剛性Geqを用いて、(3)式により改良体間地盤に生じるせん断ひずみγiを求める。
【数8】
【0031】
(v)上記(iv)で求めたせん断ひずみγiと図10を用いて、せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定する。
【0032】
(vi)再決定した等価せん断剛性Geqと、(1)式で求めたτdを用いて、(3)式により再度せん断ひずみγiを計算し、以上の計算をせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで行う。
【0033】
(vii)決定したせん断ひずみγiを用いて、図12により過剰間隙水圧比Δu/σν’を決定する。
図12は(2)式と次の(4)〜(6)式を用いて求めたものである。
【数9】
ここで、Rlは繰返せん断応力比、R20は液状化強度で20回で液状化に至るせん断応力比として規定している。Nlは液状化に至った繰返し回数である。kは実験定数で-0.25程度の値をとる。
図13は液状化強度曲線の模式図を示したものである。
(4)式はRl1回の繰返しで 1/Nl だけ液状化に近づいたとみなせるので、20回の繰返しせん断が生じた際の累積損傷度Rnは(5)式のように表せる。この状態で生じる過剰間隙水圧比は、De Alba の提案式である(6)式で表すことができる。αrfは実験定数であるが、緩い砂では0.7程度の値をとる。
【0034】
(viii)液状化時に改良体に作用する外力を、たとえば上述した算定法に示した手法により算定する。
【0035】
(ix)上記の外力が作用したときの改良体の変形量を、たとえば上述した算定法に示した手法(等価せん断棒や2次元平面ひずみ解析)を用いて算定する。
【0036】
なお、上記のステップ(vii)において図12を用いて過剰間隙水圧比Δu/σν’を求めることにより、その過剰間隙水圧比Δu/σν’が1.0未満であれば地盤は液状化に至らず過剰間隙水圧がある程度上昇するに留まることになり、そのことから部分改良地盤の液状化強度を評価することができる。そこで、仮に過剰間隙水圧比Δu/σν’が1.0以上であって地盤が液状化すると評価された場合には、改良率や改良パターンを再設定し、過剰間隙水圧比Δu/σν’が1.0未満になるまで以上の手順を繰り返せば良い。
したがって、以上で説明した本発明の部分改良地盤の変形量の評価法は、その過程で過剰間隙水圧比Δu/σν’を求めることから、部分改良地盤の液状化強度を評価するための評価法としても適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の基礎となった部分改良地盤の変形量の簡易算定法の概要を示す説明図である。
【図2】同、簡易チャートの例(柱状の改良体の場合)を示す図である。
【図3】同、簡易チャートの例(格子状の改良体の場合)を示す図である。
【図4】同、護岸を対象とする側方流動防止対策としての部分改良地盤を築造する場合への適用例を示すもので、全体手順を示すフローチャートである。
【図5】同、護岸の構造図である。
【図6】同、簡易チャートにより等価剛性を求める手順を示す図である。
【図7】同、2次元弾性有限要素法による変形量の算定結果を示す図である。
【図8】同、等価せん断棒による変形量の算定手法を示す図である。
【図9】本発明の部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法および変形量の簡易評価法の実施形態を示すもので、その全体手順を示すフローチャートである。
【図10】同、せん断剛性低下率とせん断ひずみの関係を示す図である。
【図11】同、せん断ひずみを求めるための図である。
【図12】同、過剰間隙水圧比を求めるための図である。
【図13】同、液状化強度曲線の模式図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤を対象として、その部分改良地盤の液状化強度および変形量を簡易に評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状化対策や液状化に伴う地盤の側方流動対策として、バットレス状改良や格子状改良あるいは柱状改良を行う場合がある。そのような(全面改良ではない)部分改良地盤については、改良体により拘束された自然地盤(未改良地盤)の液状化の可能性や過剰間隙水圧の上昇度の評価が重要であり、たとえば格子状の部分改良地盤についての液状化強度の評価法は特許文献1で提案されている。
【特許文献1】特開2001−355229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示されている方法は、評価法自体の論理的根拠が乏しく、格子状改良以外の条件も含めて、対象地盤や改良土自体に対する適用範囲を明確にできないという問題がある。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は、部分改良地盤の液状化強度と地震時の変形量を簡易に評価し得る有効適切な評価法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法は、バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤の液状化強度を簡易に評価する方法であって、改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、該過剰間隙水圧比Δu/σν’に基づいて部分改良地盤の液状化強度を評価することを特徴とする。
【0006】
本発明の部分改良地盤の変形量の簡易評価法は、バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤の変形量を簡易に評価する方法であって、改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、改良体に作用する外力を算定し、前記等価せん断剛性Geqおよび前記外力に基づいて部分改良地盤の変形量を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液状化に関する既往の要素試験から得られた知見と、部分改良地盤に対する等価せん断剛性を求める手法から、任意の拘束条件下での等価地盤せん断モデルによって地盤の過剰間隙水圧比を求めることにより、様々な形態の部分改良地盤の液状化強度および変形量を簡易にかつ統一的に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の部分改良地盤の変形量の評価法の実施形態について説明するが、これは本発明者らが先に特願2008−056272において提供した「部分改良地盤の変形量の簡易算定法」を基礎とするものであるので、まずその算定法について図1〜図8を参照して説明する。
【0009】
本算定法は、部分改良地盤を単位周期構造体の集合体として築造し、その単位周期構造体の剛性を数学的均質化理論に基づいて求めてこれを部分改良地盤全体の等価剛性とし、この等価剛性と築造後の部分改良地盤に作用する外力とから部分改良地盤の変形量を事前に予測算定するものである。
そして、そのために、本算定法においては、部分改良地盤の等価剛性と改良率との関係を、単位周期構造体の縦横比と改良体の剛性と原地盤の剛性とをパラメータとして予め求めて簡易チャート化しておき、その簡易チャートを用いて部分改良地盤の等価剛性を簡易に求めることを主眼とする。
【0010】
図1は本算定方の概要を示すものであり、(a)は柱状の改良体による部分改良地盤の場合、(b)は格子状の改良体による部分改良地盤の場合である。
(a)は直径lRの柱状の改良体をx方向(幅方向)の間隔lx、y方向(長さ方向)の間隔lyをもって配列して造成した場合であって、この場合の単位周期構造体は2辺がlx,lyの矩形(lx=lyの場合には正方形)の中心に直径lRの柱状の改良体が配置されたものである。この場合の改良率R、すなわち単位周期構造体の面積に対する改良体の面積の比、つまりは部分改良地盤全体の面積に対する改良体全体の面積の比は
【数1】
となる。
【0011】
(b)は厚さlRの板状の改良体をx方向とy方向の双方にそれぞれlx、lyの間隔で格子状に組み合わせて造成した場合であって、この場合の単位周期構造体はx方向の長さlx、y方向の長さlyの矩形の内側に、厚さlRの改良体がx方向およびy方向に1枚ずつ、あるいは厚さlRの改良体がx方向に1枚、厚さlR/2の改良体がy方向に2枚、配置されたものである。この場合の改良率Rはいずれも
【数2】
となる。
【0012】
そして、単位周期構造体は剛性の異なる2つの弾性体、すなわち未改良で低剛性の原地盤(その剛性をESとする)と、改良により高剛性とされた改良体(その剛性をERとする)の複合体と見なすことができ、さらにその複合体は、この複合体全体の剛性と等価とみなせる剛性(以下、これを等価剛性EHという)を有する単一の均質体と見なすことができ、その均質体の等価剛性EHは、数学的均質化理論に基づき単位周期構造体の特性と形状とをパラメータとして次のように求めることができる。
【0013】
すなわち、数学的均質化理論によれば、2つの弾性体の複合体と等価の1つの均質体の弾性係数CHをマトリックスを表記すると、次式で表される。
【数3】
【0014】
上式においてCはミクロ周期構造としての単位周期構造体の弾性マトリックスである。また、Xはミクロ周期構造に単位マクロ歪みIを与えた場合の応答変位であり、3次元では次式のように6成分からなるものである。
【数4】
【0015】
また、均質体の弾性係数CHの逆行列(コンプライアンスマトリックス)は次式で表され、この式から各方向の等価剛性を求めることができる。
【数5】
【0016】
上式におけるExHは均質体のx方向の軸剛性、EyHはy方向の軸剛性、EzHはz方向の軸剛性、GxyHはx−y面内のせん断剛性、GyzHはy−z面内のせん断剛性、GzxHはz−x面(x−z面)内のせん断剛性であり、上式により求められる均質体の各剛性はすなわち単位周期構造体およびその集合体としての部分改良地盤全体の等価剛性を表すものである。
そして、本算定法においては、上式で求められる各方向の等価剛性と改良率Rとの関係を、単位周期構造体のパターンをパラメータとして予め簡易チャート化しておくことにより、その簡易チャートを用いて部分改良地盤の各方向の等価剛性(軸剛性およびせん断剛性)を簡易に求めるものである。
【0017】
その簡易チャートは、具体例を図2〜図3に示すように、横軸に改良率Rをとり、縦軸に等価剛性ExH、EyH、EzH、GxyH、GyzH、GzxH(改良体の軸剛性ERあるいはせん断剛性GRにより除して正規化してある)をとり、ES/ERあるいはGS/GR(改良体の剛性に対する原地盤の剛性の比)と、単位周期構造体の縦横比lx/lyをパラメータとして作成したものである。
図2(a)〜(d)に示す簡易チャートは柱状の改良体の場合において、lx/ly=1(つまり正方形配列)の場合のものであり、図3(a)〜(f)に示す簡易チャートは格子状の改良体の場合において、lx/ly=1,2,3とした場合のものあり、いずれもパラメータES/ERあるいはGS/GRを0、0.2、0.4、0.6、0.8としたものである。
【0018】
このような簡易チャートを予め作成しておくことにより、改良率Rと、改良体の剛性ERあるいはGR、原地盤の剛性ESあるいはGSのみから、部分改良地盤の各方向の等価剛性を直ちに求めることができる。たとえば、柱状の改良体を正方形配列して造成する部分改良地盤における地盤厚さ方向(z方向)の軸剛性を求める場合には、図2(b)の簡易チャートを用いてEzHを求めれば良い。また、格子状の改良体による部分改良地盤における水平面(x−y面)におけるせん断剛性を求める場合には、図3(f)のチャートを用いてGxyHを求めれば良い。
【0019】
本算定法の具体的な適用例として、液状化が想定される護岸に対して側方流動防止対策として地盤改良を行う場合において、液状化が生じた後における護岸の側方流動量を予測算定する場合の一具体例を説明する。
図4はその全体作業手順の概要を示すフローチャートである。
まず、(1)地盤調査を行った結果から液状化層の深度(液状化層厚)を決定し、それに基づき、(2)液状化後に部分改良地盤に作用する外力を決定する。
一方、(3)改良体の形状(柱状あるいは格子状)とその剛性、単位周期構造体の縦横比(lx/ly)を決定する。また、改良率を仮決定し、その改良率に対応する液状化後の等価剛性を簡易チャートにより求める。
そして、(4)等価剛性と外力とにより変形量を算定し、設計条件を満足しなければ改良率を修正して条件を満足するまで以上の手順を繰り返す。なお、その際に必要であれば改良率の修正に併せて、あるいはそれに代えて、他の条件(単位周期構造体のパターンや改良体の剛性等)の見直しを行っても良い。
以上を設計条件を満足するまで繰り返し、条件を満足すれば改良率を確定させることにより、(5)側方流動対策の決定とする。
【0020】
以上の基本的な手順(1)〜(5)を図5に示す構造の護岸に適用して、その液状化後に生じることが予想される変形量を算定する場合の具体例を以下に示す。
(1)液状化層厚の決定
図5において層厚H4で示す砂層が液状化対策が必要な層であり、その範囲を地盤改良するとする。図示例の場合には格子状の改良体の造成による部分地盤改良とし、単位周期構造体のlx=15m、ly=5mとし、したがってlx/ly=3とする。
【0021】
(2)外力の決定
改良体の前面および背面の液状化層が全て液状化するとして、液状化後に地盤改良体にかかる外力を算定する。
護岸前面側(水面を原点とする座標Z1として示す)においては、Z1=0〜H1までは河川あるいは海の水圧がかかり、Z1=H1〜HI+H2までは水圧+土圧がかかる。すなわち、地盤の単位体積重量γt、水の単位体積重量γWとすると、
P1=γwZ1 at Z1=0〜H1
P1=γwZ1+γt(Z1−H1) at Z1=H1〜H1+H2
護岸背面側(地下水位を原点とする座標Z2として示す)においては、Z2=0において土被り圧がかかり、Z2=0〜H4は土被り圧+地下水圧がかかる。すなわち
P2=γtH3 at Z2=0
P2=γtH3+γtZ2 at Z2=0〜H4
【0022】
(3)改良体の決定、等価剛性の算定
上記の外力により地盤改良体にはその横断面に沿う鉛直面(z−x面)に沿ってせん断変形が生じるので、ここでは部分改良地盤のその方向の等価せん断剛性GzxHを図3(d)に示した簡易チャートにより求める。この場合、改良体のせん断剛性GRをセメント系地盤改良を想定してGR=38.5MN/m2とし、原地盤のせん断剛性GSは液状化によりGS=0.1MN/m2になると想定して、簡易チャートにおけるパラメータGS/GR=0とする。
そして、改良率Rの仮決定をR=50%とすれば、単位周期構造体の縦横比lx/ly=3であるから、図6に示すように簡易チャートの縦軸GzxH/GR=0.43、ゆえに、等価剛性GzxH=38.5×0.43=16.5MN/m2として求められる。
【0023】
(4)変形量の算定
上記の外力を負荷した際の部分改良地盤の変形量を算定する。その算定は2次元弾性有限要素法によるか、あるいは、より簡易な手法として、部分改良地盤全体をせん断棒にモデル化することにより行うことができ、いずれの場合も以下に示すようにほぼ同様の結果が得られる。
(4−1)2次元弾性有限要素法による場合
図5に示している各諸元、H1=3m、H2=7m、H3=2m、H4=10m、lx=15m、ly=5m、γt=17kN/m3、γw=10kN/m3を用いて、2次元弾性有限要素法により変形量を算定する。その結果、図7に示すように最大変形量が3cmと算定された。
(4−2)せん断棒による場合
図8に示すように、部分改良地盤全体をその等価剛性と同等の剛性を有するせん断棒にモデル化し、そのせん断棒に上記の外力を作用させた際に生じる変形量を算定する。この場合
改良体背面側の外力 P2=(34+204)×10/2=1190kN/m
改良体前面側の外力 P1=30×3/2+(30+149)×7/2=671.5kN/m
外力の合力 P=P2-P1=1190-671.5=518.5kN/m
等価せん断剛性 GzxH=16.5MN/m2=16.5×103kN/m2
等価せん断バネ k=GzxHW/l=16.5×103×15/10=24.8×103kN/m2
水平方向変形量 x=P/k=518.5/24.8×103=0.02m=2cm
この場合の算定結果は、2次元弾性有限要素法による場合の算定結果に比べて若干の誤差があるものの、この種の解析においては両者の結果は実質的に同等であるといえるし、少なくとも評価結果に影響しない範囲内の誤差であるといえる。
【0024】
(5)対策の決定
以上で算定された変形量が設計条件を満足すれば、改良率の仮決定(上記の場合はR=50%)が妥当であったのでその改良率を最終決定として対策決定とする。変形量の算定結果が設計条件を満足しなければ改良率を変更して以上の手順を繰り返す。すなわち、変形量が過大であれば改良不足であるので改良率を大きくするように変更し、変形量が過小であれば改良過剰であるので改良率を小さくするように変更し、満足すべき結果が得られるまで以上の手順を繰り返せば良い。勿論、その際に必要であれば、すなわち改良率の修正のみでは条件を満足できない場合には、単位周期構造体のパターンや改良体の剛性も併せて見直せば良い。
【0025】
以上で説明したように、本算定法によれば部分改良地盤の変形量の算定に際してまずその等価剛性を簡易チャートにより求めることにより、従来の3次元有限要素法により変形量を直接算定する場合に比べて全体の算定手順を格段に簡略化することができ、特に厳密なモデル化を行うための手間を大きく軽減することができる。したがって、従来のように多大の手間とコスト、時間を要することなく部分改良地盤全体の変形量算定を簡易に実施することができ、その結果、部分改良地盤による改良効果を事前に確認できてその信頼性を充分に高めることができ、特に上記のような護岸の液状化による側方流動防止対策として部分改良地盤を築造するに際して適用して好適である。
【0026】
以上で本発明の基礎となった算定法について説明したが、次に本発明の部分改良地盤の変形量の評価法についての実施形態を図9〜図13を参照して説明する。
本実施形態の評価法は、図9にフローチャートとして示した一連のステップ(i)〜
(ix)により構成されるものであり、以下にその詳細を説明する。
【0027】
(i)地震時に地盤に生じるせん断応力τdを算出する。せん断応力τdは地震応答解析から算定するか、簡易液状化算定法に用いられている(1)式を用いて求める。
【数6】
(1)式において、M:マグニチュード、αmax:地表面最大加速度、z:深度、σν':鉛直有効応力、σν:鉛直全応力、g:重力加速度である。
【0028】
(ii)上記の(1)式で求めたせん断応力τdと、図11を用いて、改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出する。図11は(2)式をもとに作成したものである。
【数7】
(2式)において、hmaxは最大減衰定数で砂の場合は0.2〜0.25の値となる。初期せん断剛性Gsoや基準せん断ひずみγrfは砂の種類や拘束圧によって異なるが、典型的な例としてGso=50MPa、γrf=0.1%、hmax=0.2とした。
【0029】
(iii)上述した算定法で説明した手法により、図3を用いて部分改良地盤の改良率、改良形状、改良パターン、および地盤と改良体のせん断剛性Gso、GIに応じた等価せん断剛性Geqを算出する。
【0030】
(iv)上記(i)で求めたせん断応力τdと、上記(iii)で仮算出した等価せん断剛性Geqを用いて、(3)式により改良体間地盤に生じるせん断ひずみγiを求める。
【数8】
【0031】
(v)上記(iv)で求めたせん断ひずみγiと図10を用いて、せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定する。
【0032】
(vi)再決定した等価せん断剛性Geqと、(1)式で求めたτdを用いて、(3)式により再度せん断ひずみγiを計算し、以上の計算をせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで行う。
【0033】
(vii)決定したせん断ひずみγiを用いて、図12により過剰間隙水圧比Δu/σν’を決定する。
図12は(2)式と次の(4)〜(6)式を用いて求めたものである。
【数9】
ここで、Rlは繰返せん断応力比、R20は液状化強度で20回で液状化に至るせん断応力比として規定している。Nlは液状化に至った繰返し回数である。kは実験定数で-0.25程度の値をとる。
図13は液状化強度曲線の模式図を示したものである。
(4)式はRl1回の繰返しで 1/Nl だけ液状化に近づいたとみなせるので、20回の繰返しせん断が生じた際の累積損傷度Rnは(5)式のように表せる。この状態で生じる過剰間隙水圧比は、De Alba の提案式である(6)式で表すことができる。αrfは実験定数であるが、緩い砂では0.7程度の値をとる。
【0034】
(viii)液状化時に改良体に作用する外力を、たとえば上述した算定法に示した手法により算定する。
【0035】
(ix)上記の外力が作用したときの改良体の変形量を、たとえば上述した算定法に示した手法(等価せん断棒や2次元平面ひずみ解析)を用いて算定する。
【0036】
なお、上記のステップ(vii)において図12を用いて過剰間隙水圧比Δu/σν’を求めることにより、その過剰間隙水圧比Δu/σν’が1.0未満であれば地盤は液状化に至らず過剰間隙水圧がある程度上昇するに留まることになり、そのことから部分改良地盤の液状化強度を評価することができる。そこで、仮に過剰間隙水圧比Δu/σν’が1.0以上であって地盤が液状化すると評価された場合には、改良率や改良パターンを再設定し、過剰間隙水圧比Δu/σν’が1.0未満になるまで以上の手順を繰り返せば良い。
したがって、以上で説明した本発明の部分改良地盤の変形量の評価法は、その過程で過剰間隙水圧比Δu/σν’を求めることから、部分改良地盤の液状化強度を評価するための評価法としても適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の基礎となった部分改良地盤の変形量の簡易算定法の概要を示す説明図である。
【図2】同、簡易チャートの例(柱状の改良体の場合)を示す図である。
【図3】同、簡易チャートの例(格子状の改良体の場合)を示す図である。
【図4】同、護岸を対象とする側方流動防止対策としての部分改良地盤を築造する場合への適用例を示すもので、全体手順を示すフローチャートである。
【図5】同、護岸の構造図である。
【図6】同、簡易チャートにより等価剛性を求める手順を示す図である。
【図7】同、2次元弾性有限要素法による変形量の算定結果を示す図である。
【図8】同、等価せん断棒による変形量の算定手法を示す図である。
【図9】本発明の部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法および変形量の簡易評価法の実施形態を示すもので、その全体手順を示すフローチャートである。
【図10】同、せん断剛性低下率とせん断ひずみの関係を示す図である。
【図11】同、せん断ひずみを求めるための図である。
【図12】同、過剰間隙水圧比を求めるための図である。
【図13】同、液状化強度曲線の模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤の液状化強度を簡易に評価する方法であって、
改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、
前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、
改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、
改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、
該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、
再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、
決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、
該過剰間隙水圧比Δu/σν’に基づいて部分改良地盤の液状化強度を評価する
ことを特徴とする部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法。
【請求項2】
バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤の変形量を簡易に評価する方法であって、
改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、
前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、
改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、
改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、
該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、
再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、
決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、
改良体に作用する外力を算定し、
前記等価せん断剛性Geqおよび前記外力に基づいて部分改良地盤の変形量を評価する
ことを特徴とする部分改良地盤の変形量の簡易評価法。
【請求項1】
バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤の液状化強度を簡易に評価する方法であって、
改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、
前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、
改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、
改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、
該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、
再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、
決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、
該過剰間隙水圧比Δu/σν’に基づいて部分改良地盤の液状化強度を評価する
ことを特徴とする部分改良地盤の液状化強度の簡易評価法。
【請求項2】
バットレス状改良体や格子状改良体もしくは柱状改良体が造成された部分改良地盤の変形量を簡易に評価する方法であって、
改良前の地盤に地震時に生じるせん断応力τdを算出し、
前記せん断応力τdに基づいて改良前の地盤のせん断ひずみγiを算出し、
改良後の部分改良地盤の等価せん断剛性Geqを算出し、
改良後の地盤における改良体間の未改良地盤に生じるせん断ひずみγiを求め、
該せん断ひずみγiに応じた等価せん断剛性Geqを再決定し、
再決定した等価せん断剛性Geqを用いてせん断ひずみγiが一定の値に収束するまで計算を行ってせん断ひずみγiを決定し、
決定したせん断ひずみγiに基づいて未改良地盤に生じる過剰間隙水圧比Δu/σν’を求め、
改良体に作用する外力を算定し、
前記等価せん断剛性Geqおよび前記外力に基づいて部分改良地盤の変形量を評価する
ことを特徴とする部分改良地盤の変形量の簡易評価法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−133204(P2010−133204A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312713(P2008−312713)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 社団法人地盤工学会 刊行物名 第43回地盤工学研究発表会 平成20年度発表講演集(2分冊の2) 発行日 平成20年6月12日
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 社団法人地盤工学会 刊行物名 第43回地盤工学研究発表会 平成20年度発表講演集(2分冊の2) 発行日 平成20年6月12日
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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