説明

部分放電計測装置

【課題】パルス電圧印加による部分放電の発生を絶縁体の温度変化から検出する手法において、電気的絶縁性および化学的腐食耐性に優れ、しかも高い検出感度・精度で部分放電を検出できる。
【解決手段】パルス電源1は、部分放電開始電圧を測定するため、一定周期で一定幅のパルス電圧を徐々に高めながら発生し、このパルス電圧をツイストペア試料の2本のエナメル線A,Bの線間に印加する。光ファイバ式温度センサは、2つのセンサ2A、2Bで構成し、温度センサ2Aはツイストペア試料にセンサ部分を接触固定させてその温度を測定し、温度センサ2Bはツイストペア試料の基準温度測定用としてセンサ部分をツイストペア試料から離してその近傍に配置し、その周辺温度を測定する。温度表示器3は温度センサ2Aおよび2Bで測定する温度T1およびT2の温度差ΔT(=T1−T2)を求めて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体(測定試料)に部分放電を発生させ、この部分放電の検出を基に絶縁体の絶縁劣化を判定する部分放電計測装置に係り、特にパルス電圧印加による部分放電の発生を絶縁体の温度変化から検出する計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機・コンデンサ・ケーブルなど、電気機器の導体間を絶縁する絶縁体中に微小な空隙状欠陥などがあると、電気機器の導体に印加される交流電圧やパルス電圧によって空隙部分に電界が集中し、絶縁体中で微弱な放電が発生する。この放電現象は、部分放電と呼ばれ、絶縁体の内部に限らず、絶縁体の表面の放電、あるいは空気に晒された高圧充電部でも同様な現象が発生する。このような部分放電の発生は、絶縁体の劣化を進展させ、長期間の部分放電によって絶縁体に絶縁破壊が発生、例えば電動機の巻線(エナメル線)に絶縁破壊が発生すると、その導体間や電極間に短絡事故や焼損を起こす。
【0003】
部分放電計測装置は、絶縁劣化の度合い判定に、部分放電開始電圧(PDIV:Partial Discharge Inception Voltage)を測定する。このPDIVは、絶縁体に印加する電圧を低い値から徐々に上昇させ、この電圧上昇で絶縁体に部分放電が発生したときの電圧値であり、この部分放電が最初に発生したときの電圧値の高低から絶縁劣化の度合い、すなわち電圧値が低いほど絶縁劣化が進んでいると判定される。
【0004】
上記のPDIVの測定値は、絶縁体に印加する電圧波形、印加電圧の上昇速度、部分放電の検出方法で異なる。例えば、印加する電圧波形には交流電圧とパルス電圧があり、パルス電圧にも同じ極性で複数のパルスを出力する片極性(単極性)パターンと、極性を反転して出力する両極性(双極性)パターンがあり、これら測定条件によって異なる値を呈する。
【0005】
これら測定条件のうち、パルス電圧印加によって発生させる部分放電の検出方法は、インバータ駆動モータの巻線における部分放電開始電圧の測定で非常に重要になってきている。インバータ駆動ではモータ巻線にパルス波形状の電圧が印加されることにより、交流電圧とは違った故障モードが発生することが予想されるためである。
【0006】
パルス電圧印加による部分放電検出は、交流電源で用いる検知器類の仕様では使用できず、新しい検出方法が考えられている。このパルス電圧印加による部分放電発生の検出方法と問題点を以下に示す。
【0007】
(1)電磁波をアンテナで受信する方法
部分放電が発生した時の電磁波をアンテナで受信抽出する方法である。部分放電の周波数帯域は0.7〜5GHzであり、この帯域すべてもしくは一部帯域電磁波を抽出する。なお、部分放電位置の特定を行うために、2本以上のアンテナを用いる場合もある。
【0008】
例えば、特許文献1では、部分放電信号を含む信号を変流器(CT)で検出やアンテナで受信し、この信号から複数の周波数帯に分配してそれぞれパルス信号に変換し、変換したパルス信号からパルス数ごとに分類してデータとして抽出し、抽出されたデータの信号発生時間を印加電圧の1/2周期またはn周期ごとに区切ってデータを信号処理し、その信号処理により得たデータ分布パターンと、予め部分放電発生時のデータ分布パターンやノイズ信号分布パターンが格納された診断データベースの分布パターンと照合し、その照合結果から部分放電信号の有無を判定する。
【0009】
このアンテナ受信による検出方法は、非常に一般的な方法であるが、周囲からの電磁ノイズ(携帯電話などの通信機器、電気設備、部分放電検出装置の電源)の影響が大きく、ノイズ除去のための複雑な処理が必要である。
【0010】
(2)音響センサで受信する方法
部分放電が発生したときの放電音を音響センサで捉える方法である。アンテナ受信と同様に、部分放電の周波数帯域すべてもしくは一部帯域を検出する。この方法も一般的に用いられるが、電磁波の受信と同様、周囲から発生する音(ノイズ)の影響を受ける。
【0011】
(3)放電光を検出する方法
部分放電が生じると光が発生する。この光を光電子増倍管で捉える方法である。この方法は、光を検出するため暗室で行う必要がある。また、部分放電で生じる光はごく僅かであり、非常に高感度の光電子増倍管が必要となる。
【0012】
(4)印加電圧のひずみやインピーダンスの変化を測定する方法
絶縁体で絶縁される導体にパルス状の電圧を印加すると、絶縁体に放電が生じたときに電磁波などの影響を受け、歪んだ波形が観測される。この歪波形や回路インピーダンスの変化を測定する方法である。
【0013】
この方法は、周囲からの電磁ノイズの影響が大きく、特許文献1のように、ノイズ除去のための複雑な処理が必要である。
【0014】
(5)部分放電による温度変化を測定する方法
熱電対または測温抵抗体を温度センサとし、放電エネルギーによる絶縁体の温度変化から部分放電を検出する方法である。
【0015】
例えば、エナメル線間にパルス状の電圧を印加すると、ある電圧以上で放電が生じ始める。放電箇所は電界に弱い部分でのみ生じる部分放電となる。この部分放電が生じると、放電エネルギーにより発熱して測定試料の温度を上昇させる。この温度上昇分を温度センサで測定することで部分放電が発生しているか否かを判定する。さらに、部分放電開始電圧(PDIV)も測定することができる。
【0016】
この方法は、上記のノイズ除去のための複雑な処理が不要になるし、光電子増倍管などの高感度センサも不要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2010−133747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記のように、放電エネルギーによる絶縁体の温度変化から部分放電を検出する方法は、他の方法に比して、ノイズ除去のための複雑な処理が不要になるし、光電子増倍管などの高感度のセンサも不要となるが、以下の問題がある。
【0019】
絶縁体の温度を測定する温度センサには、熱電対(または測温抵抗体)を用いる。しかし、通常の熱電対は接点部を保護するため、ステンレス保護管またはセラミック保護管で覆われている。ステンレス保護管は伝熱性に優れているが、電気的絶縁性がないため、放電によって短絡事故が起きる場合がある。逆に、セラミック保護管は電気的絶縁性に優れるが、伝熱性が悪く、また肉厚を薄く出来ないため熱的応答性が非常に悪い。保護管のない熱電対は放電電流が温度測定系に流れて破損する。このため、熱電対を用いた温度測定方法は、高電圧を印加した状態で行うPDIV測定には使用できない。
【0020】
特殊な例として、プラスチック樹脂(フィルム)で被覆した熱電対がある。ステンレス保護管のものと比較してやや熱応答性に欠けるが、電気的絶縁性に優れる。しかし、放電電界中で使用すると樹脂に化学的腐食を起し、やがて破損する。
【0021】
本発明の目的は、パルス電圧印加による部分放電の発生を絶縁体の温度変化から検出する手法において、電気的絶縁性および化学的腐食耐性に優れ、しかも高い検出感度・精度で部分放電を検出できる部分放電計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、前記の課題を解決するため、絶縁体(測定試料)にパルス電圧を印加して絶縁体に部分放電を発生させ、絶縁体の温度を光ファイバの熱膨張を利用した光ファイバ式温度センサで測定し、この温度変化から絶縁体の部分放電の発生を検出するようにしたもので、以下の装置を特徴とする。
【0023】
(1)絶縁体にパルス電圧を印加して該絶縁体に部分放電を発生させ、この部分放電の発生を該絶縁体の温度変化から検出し、該検出を基に絶縁体の絶縁劣化を判定する部分放電計測装置であって、
センサ部分を光ファイバで構成し、部分放電による絶縁体の局所発熱で該光ファイバが熱膨張し、この熱膨張による導通光のひずみ量から前記絶縁体の温度を測定する光ファイバ式温度センサを備え、
前記光ファイバ式温度センサで測定する絶縁体の温度変化から該絶縁体の部分放電の発生を検出することを特徴とする。
【0024】
(2)前記光ファイバ式温度センサは、
センサ部分を前記絶縁体に接触固定させ、絶縁体にパルス電圧を印加したときの該絶縁体の温度を測定する第1の光ファイバ式温度センサと、
センサ部分を前記絶縁体の近傍に配置し、該絶縁体の周辺温度を測定する第2の光ファイバ式温度センサを備え、
前記第1の光ファイバ式温度センサで測定する温度と、前記第2の光ファイバ式温度センサで測定する温度との温度差から該絶縁体の部分放電の発生を検出することを特徴とする。
【0025】
(3)前記光ファイバ式温度センサは、センサ部分を前記絶縁体に接触固定させて該絶縁体の温度を測定する1つの光ファイバ式温度センサで構成し、
絶縁体にパルス電圧を印加したときの前記光ファイバ式温度センサで測定する該絶縁体の温度と、パルス電圧を印加していないときの該絶縁体の温度との温度差から、該絶縁体の部分放電の発生を検出することを特徴とする。
【0026】
(4)一定周期で一定幅のパルス電圧を徐々に高めながら前記絶縁体に印加するパルス電源を備え、
前記パルス電圧の印加で、前記絶縁体に部分放電が発生したときの部分放電開始電圧PDIVから該絶縁体の絶縁劣化の度合いを判定することを特徴とする。
【0027】
(5)前記パルス電源は、絶縁体に部分放電が起きやすい波形のパルス電圧を、正極または負極の一方に繰り返して出力する片極性パルス電圧発生手段、または正極・負極交互に出力する両極性パルス電圧発生手段を備えたことを特徴とする。
【0028】
(6)前記光ファイバ式温度センサは、PWM波形のパルス電圧が印加される電動機巻線の巻き始めの付け根位置に設置し、該巻線の温度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上のとおり、本発明によれば、絶縁体(測定試料)にパルス電圧を印加して絶縁体に部分放電を発生させ、絶縁体の温度を光ファイバの熱膨張を利用した光ファイバ式温度センサで測定し、この温度変化から絶縁体の部分放電の発生を検出するようにしたため、電気的絶縁性および化学的腐食耐性に優れ、しかも高い検出感度・精度で部分放電を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態を示す部分放電計測装置の構成図。
【図2】光ファイバ式温度センサによる温度測定原理の説明図。
【図3】パルス電圧波形と部分放電開始電圧の測定結果。
【図4】片極性パルス電圧波形における電圧(V)−時間(t)特性の試験結果。
【図5】両極性パルス電圧波形における電圧(V)−時間(t)特性の試験結果。
【図6】印加電圧と放電電荷との関係図。
【図7】光ファイバ式温度センサの取り付け構造例。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(1)装置の構成
図1は部分放電計測装置の構成を示す。同図は測定試料としてツイストペア試料を用いた場合であり、計測装置はパルス電源と、光ファイバ式温度センサと、温度表示器(演算器)で構成する。
【0032】
パルス電源1は、部分放電開始電圧PDIVを測定するため、一定周期で一定幅のパルス(矩形波)の電圧を徐々に高めながら発生し、このパルス電圧をツイストペア試料の2本のエナメル線A,Bの線間に印加する。光ファイバ式温度センサは、2つのセンサ2A、2Bで構成し、一方の温度センサ2Aはツイストペア試料にセンサ部分を接触固定させてツイストペア試料自体の温度を測定し、他方の温度センサ2Bはツイストペア試料の基準温度測定用としてセンサ部分をツイストペア試料から離してその近傍に配置し、ツイストペア試料の周辺温度を測定する。温度表示器3は温度センサ2Aおよび2Bで測定する温度T1およびT2の温度差ΔT(=T1−T2)を求めて表示する。
【0033】
(2)温度センサの構成
光ファイバ式温度センサ2A、2Bは、コア素材が石英ガラスで構成される光ファイバでセンサ部分を構成し、この光ファイバの熱膨張による光の波長・屈折率・透過率などの変化を捉えて温度を測定する。この構成により、電気的絶縁性が非常に優れ、さらに光ファイバが無機材料であることから樹脂材料と比較して部分放電による劣化を受けにくい構成になる。
【0034】
図2は光ファイバ式温度センサによる温度測定原理の説明図である。ツイストペア試料A,Bに相当するエナメル電線束から部分放電が発生すると、放電による局所発熱が生じる。光ファイバ式温度センサ2Aはこの部分放電による発熱によってセンサ部分である光ファイバが熱膨張する。この光ファイバの熱膨張量をレーザなどの導通光のひずみ量として高い感度で測定し、あらかじめ求めておいたひずみ量―温度校正線に従って高い精度の温度測定値を得る。
【0035】
(3)部分放電の検出動作
図1の構成において、パルス電源1によってツイストペア試料A,Bに一定周期で一定幅のパルス電圧を徐々に高めながら印加した場合、このパルス電圧でツイストペア試料に部分放電が発生したか否かによって、ツイストペア試料の温度上昇に変化が生じ、このときの温度を温度センサ2Aで測定する。一方、ツイストペア試料の周辺温度(ツイストペア試料の温度が上昇する直前の温度)を温度センサ2Bで連続的に測定する。
【0036】
温度表示器3は、温度センサ2Aと温度センサ2Bでそれぞれ測定する温度の差ΔT(=T1−T2)を表示する。この温度差ΔTが一定の閾値を超えたときに、ツイストペア試料A,Bに部分放電が発生したと判定する。また、この判定が得られたときにパルス電源が発生したパルス電圧を部分放電開始電圧(PDIV)として求める。
【0037】
なお、光ファイバ式温度センサを1つだけ用いる装置構成とする場合は、この温度センサをツイストペア試料に接触固定し、ツイストペア試料にはパルス電圧を徐々に上昇させて印加していき、パルス電圧を印加していないときの測定温度をツイストペア試料の基準温度T2とし、パルス電圧を印加したときの測定温度をツイストペア試料の測定温度T1とすることで、ツイストペア試料に部分放電が発生したか否かの判定、および部分放電が発生したときの部分放電開始電圧(PDIV)を求めることができる。
【0038】
(4)パルス電圧波形と部分放電開始電圧の測定
図1で構成した部分放電計測装置で発生するパルス電圧波形と部分放電開始電圧の測定結果を図3に示す。
【0039】
ここで、印加するパルス電圧は、片極性の場合は正極または負極の一方にパルス波形を繰り返して出力したもの、両極性の場合は正極・負極交互にパルス電圧波形を出力したものである。図3の(a)は実際のパルス電圧波形である。パルス波形の詳細は表1に記載している。立ち上がり時間・立ち下がり時間を100ns未満とし、サージによる部分放電が起きやすい波形とする。
【0040】
【表1】

【0041】
使用した光ファイバ式温度センサは、フィゾー・テクノロジー社の光ファイバ温度センサ(型式:FOT-L)とシグナルコンディショナを用いたが、特に限定されるものではない。
【0042】
使用したエナメル電線は日立電線製のKMK−20E、線径φ=0.8mmのものを使用した。この電線は部分放電が生じると数時間で皮膜が破壊する。
【0043】
図3の(b)は温度測定結果である。片極性のパルス電圧波形の場合では1.54kVp−pを超えると温度上昇値(温度差)ΔTが上昇したことから、片極性でのPDIVは約1.6kVp−pである。両極性の場合では1.87kVp−pを超えると温度上昇値(温度差)ΔTが上昇したことから、両極性でのPDIVは約1.9kVp−pである。
【0044】
図4、図5は片極性・両極性パルス電圧波形における電圧(V)−時間(t)特性の試験結果である。図4の片極性の場合は1.54kVp−pでは120時間以上の寿命であり、部分放電が生じていないか、検出限界以下である。図5の両極性の場合は1.87kVp−pで120時間以上の寿命であり、部分放電が生じていないか、検出限界以下である。
【0045】
これら2つのV−t特性で寿命が非常に長くなる電圧と図3(b)の温度測定結果で電線温度が上昇しない最大の電圧とが完全に一致している。すなわち、本実施形態による部分放電計測装置で温度上昇値(温度差)ΔT>0であれば、部分放電が生じていると判断できる。
【0046】
以上の試験結果から、光ファイバ式温度センサによる温度測定によって、絶縁体の部分放電開始電圧を測定できることが検証されたが、どの程度の放電電荷に対して応答しているかどうかを校正しておく必要がある。そこで、同じ電線を用い、50Hz交流電源を使用して印加電圧と放電電荷の関係を調べた。その結果を図6に示す。
【0047】
温度上昇のない最大電圧(l.87kVp−p)では放電電荷110pC(ピコ・クーロン)であり、これ以上の電圧では部分放電が発生していると判断できる。したがって、実施した装置構成では110pC以上の放電電荷に対して有効に測定できることが判る。
【0048】
なお、温度センサの取り付け方・放電電荷の測定方法を最適化することで測定精度が向上するため、図3及び図6の結果はこの限りではない。
【0049】
(5)電動機巻線の部分放電測定
以上までの説明は測定試料をツイストペア試料とする場合であるが、実際の電動機(モータ)に実装される巻線の部分放電も同じ原理で測定できる。ただし、光ファイバ式温度センサの実装は図7に示す取り付け構造とする。
【0050】
図7はスター結線の場合における巻線の1例である。実際の鉄心は円筒状であるが、説明上平板状にしてある。実際のモータの巻線に印加される電圧は、PWM制御インバータから巻線に駆動電流を流す場合、PWM波形のパルス電圧が印加され、モータの端子に入力される。このとき巻線の巻始め位置で電界集中して放電が起きやすい。
【0051】
そこで、巻線の巻き始めの付け根位置に光ファイバ式温度センサ2(U),2(V)を設置する。センサ数は各相1つとし、パルス状の電圧波形をU−V相間(U−W相間)に印加して通電前後の温度差ΔTを測定する。
【符号の説明】
【0052】
A,B エナメル線(測定試料)
1 パルス電源
2A,2B,2(U),2(V) 光ファイバ式温度センサ
3 温度表示器(演算器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体にパルス電圧を印加して該絶縁体に部分放電を発生させ、この部分放電の発生を該絶縁体の温度変化から検出し、該検出を基に絶縁体の絶縁劣化を判定する部分放電計測装置であって、
センサ部分を光ファイバで構成し、部分放電による絶縁体の局所発熱で該光ファイバが熱膨張し、この熱膨張による導通光のひずみ量から前記絶縁体の温度を測定する光ファイバ式温度センサを備え、
前記光ファイバ式温度センサで測定する絶縁体の温度変化から該絶縁体の部分放電の発生を検出することを特徴とする部分放電計測装置。
【請求項2】
前記光ファイバ式温度センサは、
センサ部分を前記絶縁体に接触固定させ、絶縁体にパルス電圧を印加したときの該絶縁体の温度を測定する第1の光ファイバ式温度センサと、
センサ部分を前記絶縁体の近傍に配置し、該絶縁体の周辺温度を測定する第2の光ファイバ式温度センサを備え、
前記第1の光ファイバ式温度センサで測定する温度と、前記第2の光ファイバ式温度センサで測定する温度との温度差から該絶縁体の部分放電の発生を検出することを特徴とする請求項1に記載の部分放電計測装置。
【請求項3】
前記光ファイバ式温度センサは、センサ部分を前記絶縁体に接触固定させて該絶縁体の温度を測定する1つの光ファイバ式温度センサで構成し、
絶縁体にパルス電圧を印加したときの前記光ファイバ式温度センサで測定する該絶縁体の温度と、パルス電圧を印加していないときの該絶縁体の温度との温度差から、該絶縁体の部分放電の発生を検出することを特徴とする請求項1に記載の部分放電計測装置。
【請求項4】
一定周期で一定幅のパルス電圧を徐々に高めながら前記絶縁体に印加するパルス電源を備え、
前記パルス電圧の印加で、前記絶縁体に部分放電が発生したときの部分放電開始電圧PDIVから該絶縁体の絶縁劣化の度合いを判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の部分放電計測装置。
【請求項5】
前記パルス電源は、絶縁体に部分放電が起きやすい波形のパルス電圧を、正極または負極の一方に繰り返して出力する片極性パルス電圧発生手段、または正極・負極交互に出力する両極性パルス電圧発生手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の部分放電計測装置。
【請求項6】
前記光ファイバ式温度センサは、PWM波形のパルス電圧が印加される電動機巻線の巻き始めの付け根位置に設置し、該巻線の温度を測定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の部分放電計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−154879(P2012−154879A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16182(P2011−16182)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】