説明

部品成形装置

【課題】部品成形装置において、線状部材の端部に形状精度が良好な部品形状を効率的に形成することができるようにする。
【解決手段】溶湯受け部17aとランナー部17bとが設けられた上型17と、複数のキャビティ部18aとキャビティ部18aの内部にそれぞれワイヤ14を挿通するワイヤ挿通孔18bとが設けられた下型18と、上型17、下型18を組み立てた状態で、湯受け部17aに溶湯Mを供給して溶湯Mをキャビティ部18aに充填する溶湯供給部5と、溶湯Mがランナー部17bおよびキャビティ部18a内で固化した金属固化体を内部に有する上型17および下型18を互いに相対移動可能に保持し、金属固化体の一部を上型17および下型18の間に露出させる金型移動部10と、金属固化体の一部を切断して、複数の線状部品を形成する切断機構9と、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状部材の端部に部品形状を形成する部品成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、撚り線または単線からなるワイヤや細長い棒状部材等の線状部材の端部に金属による部品形状を形成した線状部品が種々用いられている。このような線状部材の端部の部品形状の例としては、線状部材を他の部品に係止したり管部材等から抜け止めしたりするためのストッパや、線状部材を他の部品に保持するための嵌合部や端子部などを挙げることができる。
従来、このような端部の部品形状は、線状部材と別体に形成した金属部品を線状部材に固定することによって形成されることが多い。固定方法としては、カシメ、圧着、ろう付け、溶接、接着などが知られている。
このような別体に形成した金属部品を用いないで付加形状部を形成する例としては、例えば、特許文献1に、少なくとも一方の端末が内視鏡の先端湾曲部または内視鏡用処置具の作動部に係合し、前記内視鏡および前記処置具の操作手段による操作にしたがって進退して前記先端湾曲部または前記処置具の作動部を駆動する操作ワイヤの端末形成方法であって、前記少なくとも一方の端末をアーク柱に曝して前記端末を溶融させることによって前記少なくとも一方の端末の形成を行うことを特徴とする、内視鏡用操作ワイヤの端末形成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−258830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の線状部材の端部に部品形状を形成する技術には、以下のような問題があった。
線状部品に金属部品をカシメ、圧着、ろう付け、溶接などによって固定する場合、金属部品自体または金属部品と線状部材とが固定された部位の形状が固定前に比べて変化するため、端部の部品形状に寸法誤差が生じやすいという問題がある。
また、線状部材と金属部品とを保持した状態で固定作業を行う必要があるため、線状部材が細径で可撓性に富む場合や金属部品が小型である場合に、作業効率が悪くなるという問題がある。
また、特許文献1に記載の技術では、線状部材である操作ワイヤの端末をアーク柱に曝して端末を溶融させて端末を形成し、金属部品を固定することなく端部に部品形状を形成する。このため線状部材と別体の金属部品を保持したり固定したりする作業は発生しないが、端部の部品形状が、線状部材を溶融させることによって形成できる形状、例えば球状などに限られてしまうという問題がある。
また、端部の部品形状が一定しないため、部品形状に寸法誤差も発生しやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、線状部材の端部に形状精度が良好な部品形状を効率的に形成することができる部品成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の部品成形装置は、金属材料の溶湯を受ける溶湯受け部と、該溶湯受け部で受けられた前記溶湯を複数の排出口に導くランナー部と、が設けられた第1の金型と、該第1の金型の前記複数の排出口にそれぞれ接続する複数のキャビティ部と、該複数のキャビティ部の内部にそれぞれ線状部材を挿通する線状部材挿通孔と、が設けられた第2の金型と、前記複数の排出口と前記複数のキャビティ部とを互いに連通するように前記第1の金型および前記第2の金型を組み立てた状態で、前記第1の金型の前記溶湯受け部に前記溶湯を供給して該溶湯を前記複数のキャビティ部に充填する溶湯供給部と、該溶湯供給部によって充填された前記溶湯が前記複数のランナー部および前記複数のキャビティ部内で固化した金属固化体を内部に有する前記第1の金型および前記第2の金型を互いに相対移動可能に保持し、前記第1の金型および前記第2の金型を互いに離間させて前記金属固化体の一部を前記第1の金型および前記第2の金型の間に露出させる金型移動部と、該金型移動部によって前記第1の金型および前記第2の金型の間に露出された前記金属固化体の一部を切断して、前記複数のキャビティ部で固化した前記金属固化体と前記線状部材とが一体化された複数の部品を形成する切断部と、を備える構成とする。
【0007】
また、本発明の部品成形装置では、前記金型移動部は、前記第1の金型を固定し、該第1の金型に対して前記第2の金型を離間させて前記金型分離配置を形成することが好ましい。
【0008】
また、本発明の部品成形装置では、前記第2の金型は、複数の金型部材が着脱可能に組み立てられて構成され、前記複数の金型部材は、前記金型移動部によって、前記金属固化体から離脱可能、かつ前記線状部材挿通孔をその径方向に開放可能に保持されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の部品成形装置では、前記第1の金型は、第1の金型部材群によって、着脱可能に組み立てられて構成され、前記第2の金型は、第2の金型部材群によって、着脱可能に組み立てられて構成され、前記第1の金型部材群は、前記金型移動部によって、前記金属固化体から離脱可能に保持され、前記第2の金型部材群は、前記金型移動部によって、前記金属固化体から離脱可能、かつ前記線状部材挿通孔をその径方向に開放可能に保持されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の部品成形装置では、前記第1の金型の材料の熱伝導率は、前記第2の金型の材料の熱伝導率よりも小さいことが好ましい。
【0011】
また、本発明の第1の金型の材料の熱伝導率は、第2の金型の材料の熱伝導率よりも小さい部品成形装置では、前記第2の金型の材料の熱伝導率が、15W/mK以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の部品成形装置によれば、第1の金型および第2の金型を組み立てて複数の線状部材に金属固化体を一体成形し、金型移動部によって第1の金型および第2の金型を互いに離間させて金属固化体を露出させ、切断部によって金属固化体を切断することにより、金属固化体の一部が各線状部材の端部に一体化された複数の部品を形成することができるため、線状部材の端部に形状精度が良好な部品形状を効率的に形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の部品成形装置によって製造される線状部品の例を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の一例を示す模式的な斜視図、そのA−A断面図、およびB−B断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の概略構成を示す正面視および平面視の模式的な構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の成形動作を説明する動作説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の図4に続く成形動作を説明する動作説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の金型移動動作を説明する動作説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の図6に続く金型移動動作を説明する動作説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の金型分離動作を説明する動作説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の切断動作を説明する平面視の動作説明図である。
【図10】線状部品の取り出し動作を説明する動作説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の部品成形装置によって製造される線状部品の例を示す模式的な斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の一例を示す模式的な分解斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の模式的な断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る部品成形装置の概略構成を示す模式的な正面図、および金型移動部の模式的な斜視図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る部品成形装置の模式的な動作説明図である。
【図16】本発明の第3の実施形態の部品成形装置によって製造される線状部品の例を示す模式的な斜視図である。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の一例を示す模式的な斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の模式的な分解図である。
【図19】本発明の第3の実施形態に係る部品成形装置の概略構成を示す模式的な正面図、および金型移動部の模式的な正面図である。
【図20】本発明の第3の実施形態に係る部品成形装置の模式的な動作説明図である。
【図21】本発明の第3の実施形態に係る部品成形装置の金型移動部の模式的な動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態の部品成形装置によって製造される線状部品の例を示す模式的な斜視図である。図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の一例を示す模式的な斜視図である。図2(b)、(c)は、図2(a)におけるA−A断面図およびB−B断面図である。図3(a)、(b)は、それぞれ、本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の概略構成を示す正面視および平面視の模式的な構成図である。
なお、各図は模式図のため、寸法や形状は誇張されている(以下の図面も同様)。
【0016】
本実施形態の部品成形装置100(図3(a)、(b)参照)の構成を説明する前に、図1、図2(a)、(b)、(c)を参照して、部品成形装置100によって製造される線状部品13(部品)と、線状部品13の製造に用いる金型16について説明する。
線状部品13は、図1に示すように、線状部材である1本の金属製のワイヤ14の端部に、金属製の成形品部15が一体成形されたものである。ただし、成形品部15におけるワイヤ14が延出されたのと反対側の端面15aは、切断加工によって形成されている。
ワイヤ14の種類は、撚り線ワイヤでも単線ワイヤでもよい。ワイヤ14の材質としては特に限定されない。本実施形態では、ワイヤ14の一例として、ステンレス線材を用いた撚り線ワイヤを採用している。ワイヤ14の外径は1mm、長さは100mmとしている。
成形品部15の形状は、成形によって形成可能な形状であれば特に限定されない。
以下では、成形品部15の一例として、ワイヤ14の外径より大径の円柱部材が、ワイヤ14の中心軸と同軸に設けられた場合の例で説明する。成形品部15の具体的な寸法は、一例として、外径2.9mm、長さ8mmである。
このような成形品部15は、例えば、線状部品13を他の部品に組み立てる場合に、線状部品13の位置決め部、保持部、係止部、抜け止め部、嵌合部などとして用いることが可能である。
また、ワイヤ14に対する電気的な接続端子、接点などとして用いることも可能である。
成形品部15の材質は、ワイヤ14と一体成形可能な適宜の金属材料を採用することができるが、本実施形態では、一例として、鋳造用アルミ系材料であるADC12を用いている。
【0017】
金型16は、図2(a)、(b)、(c)に示すように、外形が直方体状の上型17(第1の金型)と下型18(第2の金型)とが着脱可能に重ね合わされ、全体としても直方体状に組み立てられた部材である。
このような組立状態において、上型17、下型18の水平方向に対向する側面には、棒材の両端を同方向に屈曲することによって門型状(コ字状)に形成されたロック部材19が嵌め込まれている。これにより、上型17および下型18の相対位置が重ね合わせ方向において固定されている。
【0018】
上型17は、下型18に重ねる下面17fと、下面17fに対向する上面17eとを備え、上面17eに金属材料の溶湯を受ける湯受け部17a(溶湯受け部)が設けられている。本実施形態では、湯受け部17aは、上面17eの中心部において下面17f側に陥没された円筒穴からなる。
湯受け部17aの底部には、下面17fに貫通する3つの貫通孔からなるランナー部17bが設けられている。
本実施形態では、これらランナー部17bは、湯受け部17aの径方向のうち上型17の1つの側面である側面17gに直交する方向に延びる径方向に沿って、互いに間を空けて1列に配置されている。
また、各ランナー部17bの形状は、図2(b)に示すように、湯受け部17aの底部から下面17fに向かって縮径するすり鉢状の孔部として形成され、下面17fには成形品部15の外径と同径の円開口17jが形成されている。これら円開口17jは、湯受け部17aで受けられた溶湯を下型18側に排出する複数の排出口を構成している。
【0019】
また、上型17の側面17gには、水平方向に延ばされた矩形断面を有する角穴からなる係合穴部17cが設けられている。
また、上型17の側面17gに隣接する2つの側面には、それぞれ、ロック部材19の一端を挿入するためのロック部材挿入穴17dが設けられている。
【0020】
下型18は、上型17を重ねる上面18eと上面18eに対向する下面18fとを備え、上面18e、下面18fの間の厚さ方向に、キャビティ部18aとワイヤ挿通孔18bとからなる3つの貫通孔が設けられている。
キャビティ部18aは、成形品部15の形状を形成するためのキャビティを形成する穴部である。本実施形態では、上型17を上面18e上に重ねたときに、上型17の3つの円開口17jとそれぞれ接続する位置に設けられた円筒穴からなる。キャビティ部18aの内径は、成形品部15の外径が得られる大きさとされている。
キャビティ部18aの穴深さは、成形品部15の長さ以上の深さを有している。このため、キャビティ部18aの形状に沿って固化された金属固化体を切断することで成形品部15の形状が形成できるようになっている。
ワイヤ挿通孔18bは、ワイヤ14が挿通可能であってワイヤ14よりもわずかに大きな内径を有する円筒状の孔部であり、キャビティ部18aの穴底部からキャビティ部18aと同軸に下面18fまで貫通されている。このため、下面18f側からワイヤ挿通孔18bを通してワイヤ14を挿通させることにより、キャビティ部18a内にワイヤ14の端部を配置できるようになっている。
【0021】
上述の線状部品13の寸法の具体例に対応するキャビティ部18a、ワイヤ挿通孔18bの寸法は、キャビティ部18aの内径は3mm、キャビティ部18aの深さは10mm、ワイヤ挿通孔18bの内径は1mm、としている。
また、金型16の材質は、ADC12を鋳造可能な適宜の金型材料を採用することができる。例えば、SKD鋼を採用することができる。
【0022】
また、下型18の側面18gには、水平方向に延ばされた矩形断面を有する角穴からなる係合穴部18cが設けられている。
また、下型18の側面18gに隣接する2つの側面には、それぞれ、ロック部材19の他端を挿入するためのロック部材挿入穴18dが設けられている。
【0023】
次に、図3(a)、(b)を参照して、本実施形態の部品成形装置100の金型16を除く概略構成について説明する。
部品成形装置100は、隔壁1aによって離隔された成形チャンバー1Aと、切断チャンバー1Bとが水平方向に隣接して設けられ、これらの内部に、金型設置部2、溶湯供給部5、金型搬送機構4、パスボックス3、金型移動部10、および切断機構9(切断部)が設けられている。
【0024】
成形チャンバー1Aは、金型16に溶湯を注入して、金型16の湯受け部17a、ランナー部17b、およびキャビティ部18aによって形成される成形空間の形状に対応した金属固化体を形成する工程を行うための真空チャンバーである。
このため、内部の雰囲気を真空排気して真空雰囲気を形成した後、例えば、窒素ガスやArガスなどの不活性ガスによる不活性雰囲気を形成する雰囲気調整機構(不図示)と、内部を大気に開放した状態で金型16の搬入作業等の作業を行うための扉(不図示)とを備えている。
【0025】
切断チャンバー1Bは、金属固化体を内部に含んだ状態において、上型17、下型18を鉛直方向に離間して、上型17と下型18との間に露出した金属固化体を切断する工程を行うための真空チャンバーである。特に図示しないが、成形チャンバー1Aと同様の雰囲気調整機構と、内部を大気に開放した状態で金型16や線状部品13の搬出作業等の作業を行うための扉とを備えている。
【0026】
金型設置部2は、図2(a)に示すような組立状態の金型16を水平に載置し、金型16を切断チャンバー1Bに向かって移動可能に支持するに板状部材であり、成形チャンバー1Aの下端側において、切断チャンバー1Bに向かう方向に延ばして設けられている。
特に図示しないが、金型設置部2の上面には、金型16の下面18fとの摺動抵抗を低減するため、先端部が同一平面に整列した突起群や、球状または円筒状の回転ローラ群などの摩擦低減機構が設けられていることが好ましい。
金型設置部2の中心部には、金型16に配置されたワイヤ14を下側に垂らした状態で金型16を載置し、金型16を切断チャンバー1B側に移動するため、金型16の移動方向に沿って鉛直方向に貫通されたスリット2aが設けられている。
【0027】
溶湯供給部5は、金属材料を誘導加熱して金属材料の溶湯を形成する誘導加熱コイル7と、誘導加熱コイル7で誘導加熱される金属材料および溶湯を保持して、金型16に湯受け部17aに供給するとともに金型16の各キャビティ部18aに充填する溶湯射出部6とを備える。
また、誘導加熱コイル7は、不図示の支持部材によって金型設置部2の上方に支持され、不図示の高周波電源から高周波電流が供給されるようになっている。
本実施形態では、誘導加熱コイル7は、誘導加熱によって形成された溶湯を浮遊させる磁場が形成される形態に設けられている。すなわち、誘導加熱コイル7の上半分側は、下端側から上端側に向かって縮径する形状に巻かれ、誘導加熱コイル7の下半分側は、上半分側と反対の巻き方向に巻かれるとともに下端側に向かって縮径する形状に巻かれている。
誘導加熱コイル7の上端および下端の開口は、後述するスリーブ6Aの外径よりわずかに大きな円状に開口されている。
【0028】
溶湯射出部6の概略構成は、内部に溶湯を形成し、下端側に設けられた射出口6aから形成された溶湯を下方に射出する筒状容器からなるスリーブ6Aと、スリーブ6Aの内部で進退可能に設けられ、スリーブ6A内に形成された溶湯を、射出口6aから下方側に射出させるプランジャ6Bとを備える。
スリーブ6Aは、不図示の昇降移動機構によって昇降可能に支持され、誘導加熱コイル7の中心軸に沿って、誘導加熱コイル7に囲まれた上方位置から、金型設置部2上に組立状態に配置された金型16の湯受け部17a内の下方位置までの間で移動可能とされている。
また、スリーブ6Aの下端部の外形状は、湯受け部17aの内部に挿脱可能に嵌合する円柱形状とされている。
【0029】
金型搬送機構4は、金型設置部2上に載置された金型16を、切断チャンバー1Bに向かって、金型設置部2のスリット2aに沿う水平方向に移動させる機構である。本実施形態では、水平方向に進退する押し出しアーム4aによって、金型16の側面17g、18gに対向する側の側面を押圧することにより、金型16を移動させる構成を採用している。
【0030】
パスボックス3は、成形チャンバー1Aおよび切断チャンバー1Bのそれぞれの雰囲気に同調出来、金型16を成形チャンバー1Aから切断チャンバー1Bに移動させる受け渡し機構であり、金型16を内部に配置可能な大きさの箱状に設けられ、隔壁1aに貫通するように設置されている。
パスボックス3の内部には、金型設置部2の延在方向の先端部に隣接した位置から金型設置部2と同じ高さで切断チャンバー1B側に延ばされた金型載置部3cが設けられている。
特に図示しないが、金型載置部3cの上面には、金型設置部2と同様に、金型16の下面18fとの摺動抵抗を低減するため、先端部が同一平面に整列した突起群や、球状または円筒状の回転ローラ群などの摩擦低減機構が設けられていることが好ましい。
金型載置部3cの中心部には、スリット2aの延長線上に、同幅で延ばされ、切断チャンバー1B側の端部まで貫通する断面矩形状の線状部材収容溝3dが設けられている。
線状部材収容溝3dは、金型16の下端側に垂れ下がったワイヤ14を、塑性変形させることなく湾曲した状態で収容できる深さを有している。このため、金型16が金型載置部3c上を移動する際に、ワイヤ14が塑性変形を起こすまで折り曲げられたり、下面18fと金型載置部3cとの間に挟まれて損傷したりすることを防止できる。
【0031】
また、パスボックス3の成形チャンバー1A側の端部には、図示しない成形チャンバー1Aの雰囲気と同調する為の減圧弁と、金型16が通過可能な大きさを有する入口開口3eと、この入口開口3eを開閉して、閉止時には気密を保つ入口シャッター3aが設けられている。
また、パスボックス3の切断チャンバー1B側の端部には、図示しない切断チャンバー1Bの雰囲気と同調する為のリーク弁と、金型16が通過可能な大きさを有する出口開口3fと、この出口開口3fを開閉して、閉止時には気密を保つ出口シャッター3bが設けられている。
【0032】
また、パスボックス3の内部には、金型16が移動されたとき、線状部材収容溝3dを挟んで対向する方向から、金型16を固定しているロック部材19を取り外す2基のロック部材解除機構8が設けられている。
本実施形態のロック部材解除機構8は、金型載置部3c上に配置された金型16に向かって進退して、進出時に金型16に嵌め込まれたロック部材19を把持し、把持したロック部材19を金型16の外方に引き抜くロボットハンド8aによって構成されている。
【0033】
金型移動部10は、パスボックス3内に移動されてロック部材19が引き抜かれた金型16を、組立状態を保って切断チャンバー1B内に移動するとともに、切断チャンバー1B内に移動した上型17と下型18とを互いに鉛直方向に離間させて、金型16の内部に形成された金属固化体の一部を上型17と下型18との間に露出させるものである。
このため、金型移動部10は、出口開口3fと対向する切断チャンバー1Bの側壁部に設けられた上型保持アーム11および下型移動アーム12とを備える。
【0034】
上型保持アーム11は、切断チャンバー1Bの側壁部から出口開口3f側に向かって水平方向に進退する伸縮アームからなり、その基端部において鉛直方向に平行移動可能に支持されている。
また、上型保持アーム11の先端部には、金型載置部3c上に載置された上型17の係合穴部17cと係合する係合突起11aが設けられている。
下型移動アーム12は、上型保持アーム11の下方側の切断チャンバー1Bの側壁部から出口開口3f側に向かって水平方向に進退する伸縮アームが、その基端部において鉛直方向に平行移動可能に支持された構成を有する。
また、下型移動アーム12の先端部には、金型載置部3c上に載置された下型18の係合穴部18cと係合する係合突起12aが設けられている。
【0035】
切断機構9は、金型移動部10によって、上型17と下型18とが離間され、上型17と下型18との間に露出された金属固化体を水平面に沿って切断するものである。
本実施形態では、切断機構9は、水平面内で回転する回転刃9aと、回転刃9aを金型移動部10とパスボックス3との間の空間に進退させる移動アーム9bとを備える。
本実施形態における回転刃9aは、一例として、厚さ0.75mmの非鉄金属用の切断ブレードを3000rpmで回転させる構成を採用している。
また、移動アーム9bは、回転刃9aによる切断動作中は、一定の送り速度で回転刃9aを移動できるようになっている。回転刃9aは、少なくとも送り速度2mm/分〜3mm/分で移動できるようになっている。
切断機構9の具体的な構成は、金属用の適宜の精密切断機、例えば、Buehler社製IsoMet(登録商標)などを採用することができる。
【0036】
部品成形装置100の動作について、線状部品13を形成する部品成形方法を中心として説明する。
図4(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の成形動作を説明する動作説明図である。図5(a)、(b)は、図4(b)に続く成形動作を説明する動作説明図である。図6(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の金型移動動作を説明する動作説明図である。図7(a)、(b)は、図6(b)に続く金型移動動作を説明する動作説明図である。図8は、本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の金型分離動作を説明する動作説明図である。図9(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る部品成形装置の切断動作を説明する平面視の動作説明図である。図10は、線状部品の取り出し動作を説明する動作説明図である。
【0037】
本実施形態の部品成形方法は、ワイヤ設置工程、成形工程、金型移送工程、金型分離工程、切断工程、および部品取り出し工程をこの順に行う方法である。
ワイヤ設置工程は、上型17および下型18を組み立てて、下型18の各ワイヤ挿通孔18bにそれぞれワイヤ14を挿通させる工程であり、部品成形装置100の外部で行われる。
すなわち、ワイヤ挿通孔18bの下方が開放された不図示の作業台上に下型18を配置して、下型18の上面18eに上型17の下面17fを重ねて配置する。
このとき、上型17は、下型18の各キャビティ部18aの上端部と上型17の各円開口17jとが互いに重なり合って対向し、ランナー部17bとキャビティ部18aとが連通するように、位置合わせして組み立てる。
次に、2本のロック部材19の端部を、図2(b)に示すように、ロック部材挿入穴17d、18dに嵌め込む。これにより、上型17の下面17fと下型18の上面18eとは密着して当接される。
【0038】
次に、下型18の下方側から、ワイヤ挿通孔18b内にワイヤ14を挿通し、ワイヤ14の上端をキャビティ部18aの内部に配置する。
ワイヤ14の線径によって、ワイヤ挿通孔18bから落下し易い場合には、適宜ワイヤ14をクランプして、キャビティ部18aからワイヤ14が抜けないようにしておく。
以上で、ワイヤ設置工程が終了する。
なお、ワイヤ14の配置は、手動には限定されず、ロボットアームなどを利用して自動的に挿入するようにしてもよい。
【0039】
また、ワイヤ設置工程において、金型16の組立と、ワイヤ14の配置との順序は入れ替えてもよい。
例えば、下型18を作業台に配置した後、ワイヤ14を上方からワイヤ挿通孔18b内に挿入し、ワイヤ14の上端がキャビティ部18a内に位置したら、挿入を停止してワイヤ14の配置し、次に、ワイヤ14が配置された状態の下型18上に、上記と同様にして上型17を組み立てるようにしてもよい。
このようにワイヤ14を上方から挿入する場合、キャビティ部18a内に位置するワイヤ14の一部を屈曲させたり平たく潰したりして、ワイヤ14が抜け止めされるようにしておいてもよい。
【0040】
成形工程から切断工程までは、部品成形装置100を用いて行う工程である。
成形工程は、金型16内の湯受け部17aと、各ランナー部17bと、ワイヤ14が配置された各キャビティ部18aとに金属材料の溶湯を充填して、これらの形状に沿う金属固化体を形成する工程である。
本工程では、まず、成形チャンバー1Aを大気に開放して、不図示の扉からワイヤ14が配置された組立状態の金型16を成形チャンバー1A内の金型設置部2上に配置する(図4(a)参照)。
このとき、金型16の水平方向の位置は、溶湯供給部5のスリーブ6Aの中心軸と、湯受け部17aの中心軸とが同軸となる位置に配置する。また、下面18fから垂れ下がったワイヤ14は、スリット2aを通して下方に垂れ下がるようにしておく。
金型16の向きは、側面17g、18gと入口シャッター3aとが向かい合う向きとする。
このとき、金型搬送機構4の押し出しアーム4aは収縮させて、押し出しアーム4aが金型16の側面17g、18gと反対側の側面と対向するようにしておく(この位置を押し出しアーム4aの初期位置と称する)。
【0041】
このように金型16を配置する作業と並行して、成形品部15の材料である金属材料Mをスリーブ6A内において、射出口6aとプランジャ6Bの下端部との間に配置する。本実施形態では、金属材料MはADC12である。
金属材料Mの量は、溶融された溶湯Mの状態で、各キャビティ部18aと各ランナー部17bとの容積をわずかに上回る大きな容積に充填できる量としておく。
また、スリーブ6Aの高さは、図4(a)に示すように、誘導加熱コイル7の略中心に金属材料Mが保持される高さとしておく。
【0042】
次に、成形チャンバー1Aの不図示の扉と、入口シャッター3aを閉じた状態で、成形チャンバー1A内を真空吸引した後、不活性ガスを封入する。
例えば、成形チャンバー1A内を、2×10−2Paの真空雰囲気とした後、窒素ガスを封入して、成形チャンバー1A内を50000Paの不活性雰囲気にする。
【0043】
次に、誘導加熱コイル7に通電し、スリーブ6A内の金属材料Mを誘導加熱する。
金属材料Mが溶融して溶湯Mが形成されると、溶湯Mに誘導加熱コイル7の磁場に反発する誘導磁場が形成されるため、溶湯Mは、誘導加熱コイル7の略中心に誘導浮遊する状態となる。
溶湯Mが浮遊したら、図4(b)に示すように、スリーブ6Aを下降させ、スリーブ6Aを湯受け部17aに挿入する。スリーブ6Aと湯受け部17aとは、挿通可能に嵌合されているため、湯受け部17aはスリーブ6Aによって上方から塞がれる。
また、金型16の各ワイヤ挿通孔18bは、挿入されたワイヤ14によって塞がれている。
これにより、射出口6aの下方には、スリーブ6Aの下端面と、湯受け部17aと、各ランナー部17bと、各キャビティ部18aとで囲まれた成形空間が形成される。
【0044】
溶湯Mが680℃まで加熱されたら、誘導加熱コイル7の通電を停止するとともに、プランジャ6Bを下降させ、溶湯Mに圧力をかけて、溶湯Mを射出口6aから射出する(図5(a)参照)。
本実施形態では、プランジャ6Bに約6×10Nの荷重を加えて溶湯Mを押下している。
これにより、射出口6aから射出された溶湯Mが成形空間内に流れ込み、プランジャ6Bによって加圧された状態に保持される。溶湯Mは、上型17、下型18と接触することによって冷却されて固化し、金型16内に成形空間の形状に沿って固化した金属固化体mが形成される。
金属固化体mが形成されたら、図5(b)に示すように、スリーブ6Aとプランジャ6Bとを同時に上昇させ、湯受け部17aから引き抜いて離脱させる。
以上で、成形工程が終了する。
【0045】
次に、金型移送工程を行う。本工程は、上型17および下型18と、これらの内部に形成された金属固化体mとを、成形チャンバー1Aから切断チャンバー1Bに移送する工程である。
まず、図6(a)に示すように、出口シャッター3bを閉止した状態で、成形チャンバー1Aとパスボックス3の雰囲気を同調させる減圧弁を開放した後、パスボックス3の入口シャッター3aを開放する。入口シャッター3aを開放した後、減圧弁を閉止する。このように、出口シャッター3bを閉止しておくため、成形チャンバー1Aの雰囲気が切断チャンバー1Bの雰囲気に影響することはない。
次に、金型搬送機構4の押し出しアーム4aを伸長して、金型16をパスボックス3の内部まで押し出す。金型16は、同一高さにある金型設置部2および金型載置部3c上を水平方向に移動して、パスボックス3内に進入する。
パスボックス3内では、下型18から垂れ下がったワイヤ14は、線状部材収容溝3d内に収容される。このため、ワイヤ14は線状部材収容溝3d内で、塑性変形することなく湾曲されており、金型16の移動に際して金型載置部3cとの間に挟まれるなどして損傷されることはない。
【0046】
金型16のロック部材19がロック部材解除機構8(図5(b)参照)のロボットハンド8aに対向する位置まで、金型16が移動したら、金型搬送機構4は押し出しアーム4aの伸長を停止し、押し出しアーム4aを収縮させて初期位置に戻す。
そして、図6(b)に示すように、入口シャッター3aを閉止する。
【0047】
次に、ロック部材解除機構8の各ロボットハンド8aを金型16に向かって伸長させ、各ロボットハンド8aによって各ロック部材19を把持したのち、ロック部材19を引き抜いて、ロック部材19を金型16から取り外す。これにより金型16のロック状態が解除される。
【0048】
次に、図7(a)に示すように、入口シャッター3aを閉止した状態で、切断チャンバー1Bとパスボックス3の雰囲気を同調させるリーク弁を開放した後、出口シャッター3bを開放する。出口シャッター3bを開放した後、リーク弁を閉止する。このように、入口シャッター3aを閉止しておくため、切断チャンバー1Bの雰囲気が成形チャンバー1A内の雰囲気に影響することはない。
そして、上型保持アーム11、下型移動アーム12を伸長させて、係合突起11a、12aを、それぞれ、金型16の係合穴部17c、18cに挿入して係合させる。
次に、上型保持アーム11および下型移動アーム12をわずかに上昇させて、上型17および下型18が組立状態を保った状態で、金型16の全体を金型載置部3c上から浮かせる。そして、上型保持アーム11および下型移動アーム12を同期して収縮させる。これにより、図7(b)に示すように、金型16が切断チャンバー1B内に移動される。金型16がパスボックス3から出たら、出口シャッター3bを閉止する。
以上で、金型移送工程が終了する。
【0049】
次に、金型分離工程を行う。本工程は、図8に示すように、金型移動部10によって、上型17および下型18を鉛直方向に離間するように相対移動させ、上型17の下面17fと下型18の上面18eとの間に隙間Dを設け、金属固化体mの一部を上型17および下型18の間に露出させる工程である。
本実施形態では、上型保持アーム11の鉛直方向の位置を固定した状態で、下型移動アーム12を鉛直下方に移動する。これにより金属固化体mのうち、キャビティ部18aで形成された部分はワイヤ挿通孔18bから鉛直方向に離型する。金属固化体mに一体化された各ワイヤ14は、ワイヤ挿通孔18bに挿通されているだけなので、下型移動アーム12の移動の支障とはならない。
このようにして、金型移動部10によって、下面17fと上面18eとの間に隙間Dが形成される。隙間Dの大きさは、後述する回転刃9aが間に進入できる程度の大きさとする。本実施形態では、隙間Dは4mm程度の隙間とする。
以上で、金型分離工程が終了する。
【0050】
次に、切断工程を行う。本工程は、隙間Dの間に露出された金属固化体mを切断して、金属固化体mから3つの線状部品13を形成する工程である。
本実施形態では、図9(a)に示すように、回転刃9aを3000rpmで回転させて、移動アーム9bによって隙間D内の金属固化体mに向かって移動させ、送り速度3mm/分で、隙間Dの間に露出した金属固化体mを切断する(図9(b)参照)。
本実施形態では、成形品部15の長さを8mmにするため、回転刃9aは、下面17fから2mm離れた位置で、キャビティ部18aによって成形された円柱状部分を中心軸に直交する方向に切断する。
切断が終了したら、移動アーム9bを収縮させて回転刃9aを金型16の側方に移動する。
以上で、切断工程が終了する。
【0051】
次に、部品取り出し工程を行う。本工程は、上型17、18を部品成形装置100の外部に移動して行う。
まず、切断チャンバー1Bを大気に開放して、不図示の扉から、それぞれ内部に金属固化体mを含む上型17および下型18を取り出す。
図10に示すように、下型18には、キャビティ部18a内でワイヤ14と一体成形され、円柱状に切断された3つの成形品部15が、キャビティ部18aから一旦離型された状態で、キャビティ部18a内に収容されている。このため、下方から上方に向けてワイヤ14を押し出したり、端面15aを吸着したりするなどして、キャビティ部18aの成形品部15を上方に取り出す。
ワイヤ14は、ワイヤ挿通孔18bに挿通されているだけなので、成形品部15を引き抜くとともに、ワイヤ14がワイヤ挿通孔18bから引き抜かれ、下型18の外部に線状部品13を取り出すことができる
本実施形態では、取り出した線状部品13を測定したところ、成形品部15の外径2.9mm、成形品部15の軸方向の長さが8mmであった。
また、上型17に含まれる金属固化体mは、部品成形装置100の外部に移動した後、離型させ再使用に供する。
以上で、部品取り出し工程が終了する。
【0052】
本実施形態では、部品取り出し工程は、部品成形装置100の外部で手動で行うようにした例で説明したが、ロボットアームなどによって自動で取り出してもよい。自動化された取り出し機構を、部品成形装置100内に配置して、切断工程終了後に切断チャンバー1B内で、部品取り出し工程を行ってもよい。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態の部品成形装置100によれば、上型17および下型18を組み立てて複数のワイヤ14に金属固化体mを一体成形し、金型移動部10によって上型17および下型18を互いに離間させて金属固化体mを露出させ、切断機構9によって金属固化体mを切断することにより、金属固化体mの一部が各ワイヤ14の端部に一体化された複数の線状部品13を形成することができる。このため、ワイヤ14の端部に形状精度が良好な部品形状を効率的に形成することができる。
【0054】
本実施形態では、キャビティ部18aが形成された下型18が割型になっていないため、成形品部15の真円度が求められる場合に好適な型構成になっている。
また、キャビティ部18aとワイヤ挿通孔18bとが1つの金型部材に一体に形成されているため、成形品部15とワイヤ14との同軸度が求められる場合に好適な型構成になっている。
【0055】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態の部品成形装置について説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態の部品成形装置によって製造される線状部品の例を示す模式的な斜視図である。図12は、本発明の第2の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の一例を示す模式的な分解斜視図である。図13は、本発明の第2の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の模式的な断面図である。図14(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る部品成形装置の概略構成を示す模式的な正面図、および金型移動部の模式的な斜視図である。
【0056】
本実施形態の部品成形装置110(図14(a)、(b)参照)の構成を説明する前に、図11、12、13を参照して、部品成形装置110によって製造される線状部品23(部品)と、線状部品23の製造に用いる金型26について、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0057】
線状部品23は、図11に示すように、上記第1の実施形態の線状部品13の成形品部15を形状の異なる成形品部25に代えたものである
成形品部25の形状は、分割型で成形可能な形状であれば特に限定されない。例えば成形品部15と同様の形状としてもよいが、本実施形態では、断面がT字状の柱状体としている。また、成形品部25におけるワイヤ14が延出されたのと反対側の端面25aは、切断加工によって形成されている。
このような成形品部25は、成形品部15と同様の用途に用いることができる。
成形品部15の材質は、ワイヤ14と一体成形可能な適宜の金属材料を採用することができるが、本実施形態では、一例として、組成が、Zr55Cu30Al10Ni(atm%)の金属ガラスを用いている。
【0058】
金属ガラスとは、非晶質合金のうち昇温時にガラス転移点が明瞭に観察されるもので、ガラス転移点から結晶化温度までの間の過冷却液体領域(ガラス遷移領域)の温度幅が20K以上ある合金のことである。
金属ガラスの材質としては、ジルコニウム(Zr)基合金、鉄(Fe)基合金、チタン(Ti)基合金、マグネシウム(Mg)基合金などを挙げることができる。
金属ガラスは、一定組成を有する金属の母材料を溶融して、母材料合金の溶湯を形成し、この溶湯を母材料合金の臨界冷却速度以上の冷却速度で母材料合金のガラス転移点以下に冷却して非晶質化することにより形成される。
Zr基合金としては、上記の組成の他、例えば、Zr60Cu20Al10Ni10(atm%)などの組成を有していてもよい。これらの非晶質合金材料は、Zrを主成分とするため、成形転写性に優れ複雑形状の成形が容易である。また、これらは、非晶質合金であるため、耐薬品性にも優れる。
また、例えば、チタン(Ti)を主成分とする非晶質合金材料も好適である。例えば、Ti40Zr10Cu36Pd14を挙げることができる。この材料は、生体適合性が特に優れており、人体に直接接触して用いる内視鏡部品に好適な材料である。
【0059】
金型26は、図12、13に示すように、外形が直方体状の単体の上型27(第1の金型)と、金型部材29、30が水平方向に2分割可能に連結された下型18(第2の金型)とが鉛直方向に着脱可能に重ね合わされ、全体としても直方体状に組み立てられた3体構成の分割金型である。
このような組立状態において、上型27、下型28の水平方向に対向する側面には、上記第1の実施形態と同様、ロック部材挿入穴17d、18dが設けられ、ロック部材19が嵌め込まれ、これにより、上型27および下型28の相対位置が、重ね合わせ方向において固定されるようになっている。
【0060】
上型27は、上記第1の実施形態の上型17の各ランナー部17bに代えて、それぞれランナー部27bを備える。
各ランナー部27bの形状は、図12に示すように、湯受け部17aの底部に円状に開口し、下面17fに向かって断面が縮小され、下面17fにおいて、成形品部25の断面と同様のT字状形状の開口27jとなる孔部として形成されている。これら開口27jは、湯受け部17aで受けられた溶湯を下型28側に排出する複数の排出口を構成している。
【0061】
金型部材29、30は、互いに面対称な形状を有する直方体ブロック状の部材であり、上型27の上面28eに重なる平面を形成する上面29e、30eと、これらとそれぞれ対向する下面29f、30fを備えている。
金型部材29、30は、それぞれの一側面である型分割面29h、30hにおいて互いに水平方向に着脱可能に連結されている。
金型部材29(30)の型分割面29h(30h)に隣接する水平方向の各側面には、ロック部材19の先端部を挿入するロック部材挿入穴18dがそれぞれ設けられている。このため、図12に示すように、金型部材29、30は、連結時には、2つのロック部材19によって互いの水平方向の相対位置が固定されている。
型分割面29h、30hには、上面29e、30eと下面29f、30fとの間の厚さ方向に、キャビティ部Sとワイヤ挿通孔Hとからなる3つの貫通孔が形成されている。
【0062】
キャビティ部Sは、成形品部25の形状を形成するT字状断面を有する穴部であり、型分割面29hにおいて、L字状断面が上面29eから下面29fに向かって厚さ方向の中間部に向かって延ばされたキャビティ形成面29aと、型分割面30hにおいてこれと面対称に設けられたキャビティ形成面30aとによって形成されている。
各キャビティ部Sは、上型27を上面29e、30e上に重ねたときに、上型17の3つの開口27jとそれぞれ接続する位置に設けられている。
キャビティ部Sの穴深さは、成形品部25の長さ以上の深さを有している。このため、キャビティ部Sの形状に沿って固化された金属固化体を切断して成形品部25の形状が形成できるようになっている。
【0063】
ワイヤ挿通孔Hは、ワイヤ14が挿通可能であってワイヤ14よりもわずかに大きな内径を有する半円断面を有するワイヤ挿通溝29b、30bがそれぞれ型分割面29h、30hに設けられ、これらが会合することによって形成される円筒状の孔部である。ワイヤ挿通溝29b、30bは、キャビティ部Sの穴底部からそれぞれ下面29f、30fまで貫通されている。このため、下面29f、30f側からワイヤ挿通孔Hを通してワイヤ14を挿通させることにより、キャビティ部S内にワイヤ14の端部を配置できるようになっている。
【0064】
本実施形態では、キャビティ部Sの穴深さは、10mm、ワイヤ挿通孔Hの内径は1mmとしている。
また、キャビティ部Sを有する下型28の材質は、組成Zr55Cu30Al10Niの金属ガラスを臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却することができる程度の熱伝導率を有する材質であれば適宜の材質を採用することができる。
また、上型27の材質は、下型28の材質よりも熱伝導率が小さい適宜の金型材料を採用することができる。
本実施形態では、一例として、上型27の材質にはSUS304を、下型28の材質には無酸素銅を採用している。
このように、上型27の材質の熱伝導率を下型28の材質の熱伝導率よりも小さくすることで、湯受け部17a、ランナー部27bで溶湯が急冷されることがなくなり、溶湯が液体状態でキャビティ部Sに注入される。このため、溶湯がキャビティ部S内に良好に充填される。
【0065】
また、金型部材29(30)の側面29g(30g)には、水平方向に延ばされた矩形断面を有する角穴からなる係合穴部29c(30c)が設けられている。
【0066】
次に、図14(a)、(b)を参照して、本実施形態の部品成形装置110の金型26を除く概略構成について説明する。
部品成形装置110は、上記第1の実施形態の部品成形装置100の金型移動部10に代えて、金型移動部20を備え、ロック部材解除機構8A、部品回収部31を追加したものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
金型移動部20は、上記第1の実施形態における金型移動部10と同様に、パスボックス3内でロック部材19が引き抜かれた金型26を、その組立状態を保って切断チャンバー1B内に移動し、上型27と下型28とを鉛直方向に互いに離間させて、金型26の内部に形成された金属固化体の一部を上型27と下型28との間に露出させるものである。
ただし、金型移動部20は、上型27から離間した下型28の金型部材29、30を水平方向に離間させて、金型部材29、30を金属固化体から離脱させることができる点が金型移動部10とは異なる。
【0068】
このため、金型移動部20は、図14(b)に示すように、出口開口3fと対向する切断チャンバー1Bの側壁部に設けられた上型保持アーム21および下型移動アーム22A、22Bとを備える。
上型保持アーム21は、上記第1の実施形態における上型保持アーム11の係合突起11aに代えて、先端部には、金型載置部3c上に載置された上型27の係合穴部27cと係合する係合突起21aを備える。
下型移動アーム22A、22Bは、上型保持アーム21の下方側の切断チャンバー1Bの側壁部から出口開口3f側に向かって水平方向に進退する伸縮アームからなり、切断チャンバー1Bの側壁部に沿う水平方向に並んで配置されている。
下型移動アーム22Aは、金型載置部3c上に載置された下型28の金型部材29の係合穴部29cと対向する位置に配置され、先端部に係合穴部29cと係合する係合突起22aを備える。
下型移動アーム22Bは、金型載置部3c上に載置された下型28の金型部材30の係合穴部30cと対向する位置に配置され、先端部に係合穴部30cと係合する係合突起22bを備える。
また、下型移動アーム22A、22Bの基端部は、鉛直方向、および切断チャンバー1Bの側壁部に沿う水平方向に平行移動可能に支持されている。
【0069】
ロック部材解除機構8Aは、金型部材29、30を連結している2つのロック部材19をパスボックス3内で取り外すもので、図14(a)に示すように、ロック部材解除機構8と同様にロボットハンド8aを備える。ただし、ロック部材解除機構8とは異なり、金型載置部3c上に金型26の移動方向に対向して設けられて、各ロボットハンド8aを、金型26の移動方向に直交する方向に進退させることができるようになっている。このため、金型26が金型載置部3c上の定位置に移動された後に、ロボットハンド8aを進出させて、それぞれロック部材19を引き抜いて取り外すことができるようになっている。
【0070】
部品回収部31は、切断チャンバー1B内で切断されることによって形成された線状部品23を回収して、切断チャンバー1Bの外部に取り出すための回収容器である。部品回収部31は、出口シャッター3bと金型移動部10との間の下方における切断チャンバー1Bの底部において、切断チャンバー1Bに対して出し入れ可能に設けられている。
【0071】
次に、部品成形装置110の動作について、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
図15(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は、本発明の第2の実施形態に係る部品成形装置の模式的な動作説明図である。
【0072】
本実施形態の部品成形方法は、ワイヤ設置工程、成形工程、金型移送工程、金型分離工程、切断工程、および部品取り出し工程をこの順に行う方法である。
ワイヤ設置工程は、上型27および下型28を組み立てて、下型28の各ワイヤ挿通孔Hにそれぞれワイヤ14を挿通させる工程であり、部品成形装置110の外部で行われる。その詳細は、下型28を連結するため、2つのロック部材19によって金型部材29、30を連結する作業を行う点以外は、上記第1の実施形態と同様である。
【0073】
成形工程から切断工程までは、部品成形装置110を用いて行う工程である。
成形工程は、金型26内の湯受け部17aと、各ランナー部17bと、ワイヤ14が配置された各キャビティ部Sとに金属材料の溶湯を充填して、これらの形状に沿う金属固化体mを形成する工程である。
本工程は、金属材料Mが上記のZr基合金を構成する材料である点が異なる。
上記第1の実施形態と同様にして溶湯Mが形成されて誘導浮遊し、溶湯Mが1000℃まで加熱されたら、誘導加熱コイル7の通電を停止するとともに、プランジャ6Bを下降させ、溶湯Mに圧力をかけて射出口6aから射出する。
これにより、射出口6aから射出された溶湯Mが金型26の成形空間内に流れ込み、プランジャ6Bによって加圧された状態に保持される。溶湯Mは金型26内に成形空間の形状に沿って固化し、金属固化体mが形成される。
このとき、下型28の材質が無酸素銅であるため、溶湯Mが臨界冷却速度以上の冷却速度で急冷される。このため、金属固化体mは非晶質化され、金属ガラスとして固化する。
以上で、成形工程が終了する。
【0074】
次に、金型移送工程を行う。本工程は、上型27および下型28と、これらの内部に形成された金属固化体mとを、成形チャンバー1Aから切断チャンバー1Bに移送する工程である。
本工程は、パスボックス3に移動された金型26を2つのロック部材解除機構8と、2つのロック部材解除機構8Aとを用いて、上型27と金型部材29、上型27と金型部材30、金型部材29と金型部材30とをそれぞれ連結する合計4つのロック部材19を取り外す点が、上記第1の実施形態と異なる。
また、ロック部材19を取り外した後の金型26を切断チャンバー1Bに移動する際、金型移動部20の上型保持アーム21によって上型27を保持し、下型移動アーム22A、22Bによってそれぞれ金型部材29、30を保持する点が上記第1の実施形態と異なる。
すなわち、上型保持アーム21、下型移動アーム22A、22Bを伸長させて、係合突起21a、22a、22bを、それぞれ、金型26の係合穴部27c、29c、30cに挿入して係合させる。
次に、上型保持アーム21および下型移動アーム22A、22Bをわずかに上昇させて、上型27、および金型部材29、30が互いに組立状態を保った状態で、金型26の全体を、金型載置部3c上から浮かせる。そして、上型保持アーム21および下型移動アーム22A、22Bを同期して収縮させる。これにより、図14(a)に示すように、金型26が切断チャンバー1B内に移動される。金型26がパスボックス3から出たら、出口シャッター3bを閉止する。
図15(a)はこのときの様子を模式的に表した図14(a)におけるC視の側面図である。
以上で、金型移送工程が終了する。
【0075】
次に、金型分離工程を行う。本工程は、金型移動部20によって、上型27および下型28が鉛直方向に離間するように相対移動させ、上型27の下面27fと下型28の上面である上面29e、30eとの間に隙間Dを設け、金属固化体mの一部を上型27および下型28の間に露出させる工程である。
本工程は、下型移動アーム22A、22Bを同期して鉛直下方に移動させる点を除いて、上記第1の実施形態と同様に行う。これにより、図15(b)に示すように、金型部材29、30が、下降されて、上型27から分離し、金属固化体mが、隙間Dの間に露出する。
以上で、金型分離工程が終了する。
【0076】
次に、切断工程を行う。本工程は、隙間Dの間に露出された金属固化体mを切断して、金属固化体mから3つの線状部品23を形成する工程である。
本実施形態では、図15(c)に示すように、回転刃9aを3000rpmで回転させて、移動アーム9bによって隙間D内の金属固化体mに向かって移動させ、送り速度2mm/分で、隙間Dの間に露出した金属固化体mを切断する。
切断が終了したら、移動アーム9bを収縮させて回転刃9aを金型26の側方に移動する(図15(d)参照)。
以上で、切断工程が終了する。
【0077】
次に、部品取り出し工程を行う。
本工程では、まず、下型移動アーム22A、22Bを互いに離間する水平方向に移動する。これにより、図15(e)に示すように、金属固化体mから切断して形成された成形品部25が、金型部材29、30から離型され、図15(f)に示すように、下方側の部品回収部31内に落下する。
次に、これら線状部品23が落下した部品回収部31を切断チャンバー1Bの外部に取り出す。
このように本実施形態では、切断チャンバー1Bを大気開放することなく、切断後の線状部品23を切断チャンバー1Bの外部に取り出すことができる。
また、上型27に含まれる金属固化体mは、切断チャンバー1Bに設けられた不図示の搬出口から部品成形装置110の外部に移動した後、離型させ再使用に供する。
以上で、部品取り出し工程が終了する。
【0078】
このようにして形成された線状部品23の成形品部25について、形状測定を行ったところ、上記第1の実施形態に比べて成形収縮が格段に少なく、キャビティ部Sの形状を忠実に転写していることが確認された。このように、金属ガラスによる成形では、成形収縮が少ないため、成形収縮が大きい材料に比べて金型のキャビティ形成面からは離型しにくくなるが、本実施形態では、下型移動アーム22A、22Bによって、金型部材29、30を水平方向に移動させて、キャビティ形成面29a、30aを成形品部25から水平方向に離脱させるため、成形品部25を容易に離型することができる。
また、成形品部25の非晶質性について、X線回折(XRD)装置にて評価したところ、3つの成形品部25はいずれも非晶質であることが確認された。
【0079】
ここで、金属ガラスを用いて成形品部25を成形する場合の金型26の材質の組合せについて実験を行った結果を説明する。表1に、実験に用いた金型の材質と、それにより成形された成形品部25の充填性、非晶質性について評価した評価結果とを示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1において、実験例A1、A2、A3は、下型28の材質を無酸素銅(Cu:熱伝導率400W/(m・K))とし、上型27の材質を、それぞれ、Cu、ステンレス鋼SUS304(熱伝導率15W/(m・K))、Ni−Cr系耐熱合金HA230(商品名:三菱マテリアル社製)(熱伝導率9W/(m・K))とした場合の実験例である。
なお、実験例A2の材質の組合せは、上述した第2の実施形態の材質の条件に一致している。
実験例B1、B2、B3は、下型28の材質を熱間ダイス鋼SKD61(熱伝導率30W/(m・K))とし、上型27の材質を、それぞれ、Cu、SUS304、HA230とした場合の実験例である。
実験例C1、C2、C3は、下型28の材質をSUS304とし、上型27の材質を、それぞれ、Cu、SUS304、HA230とした場合の実験例である。
実験例D1、D2は、下型28の材質をHA230とし、上型27の材質を、それぞれ、Cu、SUS304とした場合の実験例である。
【0082】
充填性については、目視によって、キャビティの形状が良好に転写され、品質上の問題がないものを○、内部欠陥である鬆が存在したものを△で表した。
非晶質性については、XRD装置によって非晶質性が良好であることが確認されたものを○、XRD装置によって成形品部25の一部に結晶化部位が確認されたものを×で表した。
【0083】
充填性に関しては、実験例A1、B1、C1、C2、D1、D2が△の評価となった。これらは、共通して、上型27の熱伝導率が、下型28の熱伝導率以上の大きさを有している。
これに対して、上型27の熱伝導率が、下型28の熱伝導率よりも小さい実験例A2、A3、B2、B3、C3では○の評価になった。
これは、上型27の熱伝導率が下型28の熱伝導率以上であると、溶湯Mの一部が湯受け部17aやランナー部27bにおいて固化しやすくなるため、キャビティ部Sに充填される溶湯Mが低減されたり、充填の障害となったりするためであると考えられる。
【0084】
非晶質性に関しては、熱伝導率が9W/(m・K)の実験例D1、D2が×の評価となり、その他はすべて○の評価となった。
すなわち、非晶質性は、上型27の材質には無関係であって、下型28の熱伝導率が15W/(m・K)以上である場合に良好となることが分かった。
【0085】
以上のような評価結果から、金属ガラスとなる材質によって成形品部25を成形する場合には、下型28の熱伝導率を15W/(m・K)以上とし、上型27の熱伝導率は、下型28の熱伝導率よりも小さい材質を用いるとよいことが分かる。
【0086】
以上に、説明したように、部品成形装置110によれば、金属ガラスを用いた成形品部25をワイヤ14の先端部に有する線状部品23を、精度よく効率的に製造することができる。
【0087】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態の部品成形装置について説明する。
図16は、本発明の第3の実施形態の部品成形装置によって製造される線状部品の例を示す模式的な斜視図である。図17は、本発明の第3の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の一例を示す模式的な斜視図である。図18は、本発明の第3の実施形態に係る部品成形装置に用いる金型の模式的な分解図である。図19(a)、(b)は、本発明の第3の実施形態に係る部品成形装置の概略構成を示す模式的な正面図、および金型移動部の模式的な正面図である。
【0088】
本実施形態の部品成形装置120(図19(a)、(b)参照)の構成を説明する前に、図16、17、18を参照して、部品成形装置120によって製造される線状部品43(部品)と、線状部品43の製造に用いる金型46について、上記第1、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
線状部品43は、図16に示すように、上記第1の実施形態の線状部品13の成形品部15、ワイヤ14に代えて、成形品部45、ワイヤ44(線状部材)を備える。
成形品部45の形状は、分割型で成形可能な形状であれば特に限定されない。例えば成形品部15、25と同様の形状としてもよいが、本実施形態では、ワイヤ44が延出される円柱状の基端突起45cと、基端突起45cよりも大径の円柱形状を有する成形品本体45aと、成形品本体45aにおいて基端突起45cと反対側の端部に突出された先端突起45bとを備える段付きの柱状体としている。本実施形態では、基端突起45c、成形品本体45a、および先端突起45bは、同軸上に形成されている。
このような成形品部45は、成形品部15、25と同様の用途に用いることができる。
成形品部45の材質は、上記第2の実施形態と同様の金属ガラスを採用している。
ワイヤ44は、ワイヤ14と同様のステンレス線材の撚り線ワイヤであり、外径が0.5mmである点が異なる。
【0089】
金型46は、図17、18に示すように、外形が直方体状で、金型部材51、52、53、54が水平方向に正方格子状をなして4分割可能に連結された上型47(第1の金型)と、金型部材61、62、63、64が水平方向に正方格子状をなして4分割可能に連結された下型48(第2の金型)とが鉛直方向に着脱可能に重ね合わされている。このように金型46は、全体として直方体状に組み立てられた8体構成の分割金型である。
上型47は、平面視では、金型部材51、52、53、54がこの順に反時計回りに配置されている。また、下型48は、平面視では、金型部材61、62、63、64がこの順に反時計回りに配置されている。
【0090】
このような連結状態において、金型部材51、52は型分割面51i、52iにおいて密着して当接され、金型部材52、53は型分割面52h、53hにおいて密着して当接され、金型部材53、54は型分割面53i、54iにおいて密着して当接され、金型部材54、51は型分割面54h、51hにおいて密着して当接されている。金型部材51と金型部材54、および金型部材52と金型部材53とは、それぞれ型分割面51h(54h)、および型分割面52h(53h)に関して面対称な形状を有する。
金型部材51、52、53、54の各上面および各下面は、それぞれ整列されて、上面47e、下面47fを構成している。
また、金型部材61、62は型分割面61i、62iにおいて密着して当接され、金型部材62、63は型分割面62h、63hにおいて密着して当接され、金型部材63、64は型分割面63i、64iにおいて密着して当接され、金型部材64、61は型分割面64h、61hにおいて密着して当接されている。金型部材61と金型部材64、および金型部材62と金型部材63とは、それぞれ型分割面61h(64h)、および型分割面62h(63h)に関して面対称な形状を有する。
金型部材61、62、63、64の各上面および各下面は、それぞれ整列されて、上面48e、下面48fを構成している。
また、上型47の下面47fは、下型48の上面48e上に重ね合わされている。
【0091】
なお、図示の簡素化のため、特に詳細は図示しないが、金型部材51、52、53、54の隣り合う外周側の側面には、4つのロック部材19が着脱可能に設けられている。また、金型部材61、62、63、64の隣り合う外周側の側面には、4つのロック部材19が着脱可能に設けられている。さらに、このように、ロック部材19で連結された上型47、下型48は、上記第1の実施形態における上型17、下型18と同様に、2つのロック部材19によって、鉛直方向に着脱可能に連結されている。
【0092】
上型47は、上記第1の実施形態の上型17の湯受け部17aと同様な穴部である湯受け部47aが金型部材51、52、53、54に跨って形成され、上型17の各ランナー部17bに代えて、それぞれランナー部47bおよび第1キャビティ部Tが形成されている。
これら3つのランナー部47bおよび第1キャビティ部Tは、湯受け部47aの底部において、金型部材51、54に跨って設けられたものと、金型部材51、52、53、54に跨って設けられたものと、金型部材52、53に跨って設けられたものとから構成される。
各ランナー部47bの形状は、湯受け部47aの底部に円状に開口し、下面47fに向かって断面が縮小され、下面47f近傍において成形品部45の先端突起45bと同様の円径となるすり鉢状の形状を有する。
各第1キャビティ部Tは、成形品部45の先端突起45bの形状の一部を形成する円筒状の孔部である。第1キャビティ部Tの長さは、回転刃9aによる切断代と、後述する第2キャビティ部Tの寸法を考慮して決める。
このように、組立状態の上型47において各ランナー部47bと第1キャビティ部Tとは、漏斗状の孔部を構成している。
各ランナー部47bと第1キャビティ部Tとの境界に形成された円開口47jは、湯受け部47aで受けられた溶湯を第1キャビティ部Tに排出する複数の排出口を構成している。
【0093】
下型48は、上面48eと下面48fとの間の厚さ方向には、第2キャビティ部Tとワイヤ挿通孔Hとからなる3つの貫通孔が形成されている。
第2キャビティ部Tは、成形品部45の先端突起45b、成形品本体45a、および基端突起45cの形状を転写するための穴部である。ただし、上面48eに開口する先端突起45bと同径の孔部の長さは、第1キャビティ部Tの長さを加えると、先端突起45bよりも長くなるように設定されている。具体的には、第1キャビティ部Tの長さとの和が、先端突起45bよりも約2mm程度長くなっている。
ワイヤ挿通孔Hは、ワイヤ44が挿通可能であってワイヤ44よりもわずかに大きな内径を有する円筒状の孔部であり、第2キャビティ部Tの穴底部から第2キャビティ部Tと同軸に下面48fまで貫通されている。このため、下面48f側からワイヤ挿通孔Hを通してワイヤ44を挿通させることにより、第2キャビティ部T2内にワイヤ44の端部を配置できるようになっている。
本実施形態では、ワイヤ挿通孔Hの内径は0.5mmよりもわずかに大径としている。
【0094】
本実施形態では、これら3つの第2キャビティ部Tとワイヤ挿通孔Hとは、それぞれ、金型部材61、64に跨って設けられたものと、金型部材61、62、63、64に跨って設けられたものと、金型部材62、63に跨って設けられたものとから構成される。
このように、下型48における第2キャビティ部Tは、水平方向に分割可能な分割型である。このため、成形品部45のように、アンダーカットを有する形状であって軸方向に抜くことができない形状でも成形することができる。
また、上型47および下型48の材質は、上記第2の実施形態の上型27および下型28の材質とそれぞれ同様の材質を採用することができる。
【0095】
また、金型46の金型部材52には、図18に示すように、側面52gから型分割面52iに向かって水平方向に貫通する角穴である移動アーム挿通孔Pが設けられている。
また、金型部材51には、連結時に移動アーム挿通孔52cの中心軸と同軸となる位置に中心を有する移動アーム挿通孔Pよりも断面積が小さい角穴からなる移動アーム先端部挿入穴Qが設けられている。
これら移動アーム挿通孔P、移動アーム先端部挿入穴Qは、それぞれ湯受け部47aおよびランナー部47bと干渉しない領域に形成されている。
また、特に図示しないが、金型部材53の側面53gから型分割面53iに向かって上記と同様の移動アーム挿通孔Pが設けられている。また、金型部材54の型分割面54iには上記と同様の移動アーム先端部挿入穴Qが設けられている。それぞれの位置関係は、型分割面53h、54hに関して面対称となる位置関係となっている。
【0096】
また、金型46の金型部材62には、図18に示すように、側面62gから型分割面62iに向かって水平方向に貫通する角穴である移動アーム挿通孔Pが設けられている。
また、金型部材61には、連結時に移動アーム挿通孔Pの中心軸と同軸となる位置に中心を有する移動アーム挿通孔Pよりも断面積が小さい角穴からなる移動アーム先端部挿入穴Qが設けられている。
これら移動アーム挿通孔P、移動アーム先端部挿入穴Qは、それぞれ第2キャビティ部Tおよびワイヤ挿通孔Hと干渉しない領域に形成されている。
また、特に図示しないが、金型部材63の側面63gから型分割面63iに向かって上記と同様の移動アーム挿通孔Pが設けられている。また、金型部材64の型分割面64iには上記と同様の移動アーム先端部挿入穴Qが設けられている。それぞれの位置関係は、型分割面63h、64hに関して面対称となる位置関係となっている。
本実施形態では、移動アーム挿入孔P、Pの断面形状はいずれも同一の矩形断面とされている。また、移動アーム先端部挿入孔Q、Qの断面形状はいずれも同一の矩形断面とされている。
【0097】
次に、図19(a)、(b)を参照して、本実施形態の部品成形装置110の金型26を除く概略構成について説明する。
部品成形装置120は、上記第1の実施形態の部品成形装置100の金型移動部10に代えて金型移動部40、金属固化体保持部41を備え、上記第2の実施形態と同様のロック部材解除機構8A、部品回収部31を追加したものである。以下、上記第1、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0098】
金型移動部40は、上記第1の実施形態における金型移動部10と同様に、パスボックス3内でロック部材19が引き抜かれた金型46を、その組立状態を保って切断チャンバー1B内に移動し、上型47と下型48とを互いに離間させて、金型46の内部に形成された金属固化体の一部を上型47と下型48との間に露出させるものである。
このため、金型移動部40は、出口開口3fと対向する切断チャンバー1Bの側壁部に沿って、鉛直方向および水平方向に移動可能に設けられた基端アーム部40aと、基端アーム部40aの先端に基端アーム部40aの軸方向に沿う水平方向の伸縮可能に設けられた中間アーム部40bと、中間アーム部40bの先端に中間アーム部40bの伸縮方向に沿って伸縮可能に設けられた先端アーム部40cとをそれぞれ備える4基が設けられている。
各金型移動部40の中間アーム部40bの断面形状は、上型47、下型48における移動アーム挿通孔P、Pにそれぞれの挿通可能に係合する矩形形状を有している。
また、各金型移動部40の先端アーム部40cの断面形状は、上型47、下型48における移動アーム先端部挿入穴Q、Qにそれぞれの係合可能な矩形形状を有している。
【0099】
金属固化体保持部41は、出口開口3fと対向する切断チャンバー1Bの側壁部に沿って、鉛直方向および水平方向に移動可能、かつ出口開口3fに向かう水平方向に伸縮可能に設けられた一対のアーム部材であり、先端部には、金属固化体を把持する把持部41aが設けられている。
【0100】
次に、部品成形装置120の動作について、上記第1、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
図20(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は、本発明の第3の実施形態に係る部品成形装置の模式的な動作説明図である。
【0101】
本実施形態の部品成形方法は、ワイヤ設置工程、成形工程、金型移送工程、金型分離工程、切断工程、および部品取り出し工程をこの順に行う方法である。
ワイヤ設置工程は、上型47および下型48を組み立てて、下型48の各ワイヤ挿通孔Hにそれぞれワイヤ44を挿通させる工程であり、部品成形装置120の外部で行われる。その詳細は、上型47(下型48)を組み立てるため、4つのロック部材19によって金型部材51、52、53、54(61、62、63、64)を連結する作業を行う点以外は、上記第1の実施形態と同様である。
【0102】
成形工程から切断工程までは、部品成形装置120を用いて行う工程である。
成形工程は、金型46内の湯受け部47aと、各ランナー部47bと、ワイヤ44が配置された各第2キャビティ部Tとに金属材料の溶湯を充填して、これらの形状に沿う金属固化体mを形成する工程である。
本工程は、上記第2の実施形態と同様にして行う。
【0103】
次に、金型移送工程を行う。本工程は、上型47、下型48と、これらの内部に形成された金属固化体mとを、成形チャンバー1Aから切断チャンバー1Bに移送する工程である。
本工程は、パスボックス3に移動された金型46を2つのロック部材解除機構8と、2つのロック部材解除機構8Aとを用いて、金型46に挿入されたすべてのロック部材19を取り外す点が、上記第1の実施形態と異なる。
また、ロック部材19を取り外した後の金型46を切断チャンバー1Bに移動する際、金型移動部40の中間アーム40bを金型46の移動アーム挿通孔P、Pに挿入し、さらに金型移動部40の先端アーム部40cを金型46の移動アーム先端部挿入穴Q、Qに挿入することにより、金型46を組立状態に保持する点が上記第1の実施形態と異なる。
【0104】
次に、各金型移動部40をわずかに上昇させて、上型47、下型48が互いに組立状態を保った状態で、金型46の全体を金型載置部3c上から浮かせる。そして、各金型移動部40を同期して収縮させる。これにより、金型46が切断チャンバー1B内に移動される。金型46がパスボックス3から出たら、出口シャッター3bを閉止する。
図20(a)はこのときの様子を模式的に表した側面図である。なお、このとき金属固化体保持部41は、金型46の側方に配置しておく。
以上で、金型移送工程が終了する。
【0105】
次に、金型分離工程を行う。本工程は、金型移動部40によって、上型47および下型48が鉛直方向に離間するように相対移動させ、上型47の下面47fと下型48の上面48eとの間に隙間を設け、金属固化体mの一部を上型47および下型48の間に露出させる工程である。
本実施形態では、図20(b)に示すように、下型48を保持する2基の金型移動部40の位置を固定して、金型部材52、51を保持する金型移動部40と、金型部材53、54を保持する金型移動部40とを、互いに水平方向に離間させて、金属固化体mから金型部材52、51と金型部材53、54とを離脱させた後に、金属固化体mの上方に移動させている。
これにより、金属固化体mは、キャビティ部Sに位置する部分を除くすべてが、下型48の上面48e上に露出する。
以上で、金型分離工程が終了する。
【0106】
次に、切断工程を行う。本工程は、下型48上に露出された金属固化体mを切断して、金属固化体mから3つの線状部品43を形成する工程である。
本実施形態では、図20(c)に示すように、金属固化体保持部41によって、金属固化体mを側方から把持する。次に、回転刃9aを3000rpmで回転させて、移動アーム9bによって金属固化体mに向かって移動させ、送り速度2mm/分で、上面48eの上方に露出した金属固化体mを第1キャビティ部Tによって形成された円柱状の部分で切断する。
切断が終了したら、移動アーム9bを収縮させて回転刃9aを下型48の側方に移動する(図20(d)参照)。
以上で、切断工程が終了する。
本工程では、金属固化体mを切断する際、ランナー部47aや成形品本体45aよりも小径の第1キャビティ部Tで成形された箇所を切断するため、切断時間を低減することができる。
【0107】
次に、部品取り出し工程を行う。
本工程では、まず、金型部材62、61を保持する金型移動部40と、金型部材63、64を保持する金型移動部40とを互いに離間する水平方向に移動する。これにより、図20(e)に示すように、金属固化体mから切断して形成された成形品部45が、金型部材62、61、および金型部材63、64から離型され、図20(f)に示すように、下方側の部品回収部31内に落下する。
次に、これら線状部品43が落下した部品回収部31を切断チャンバー1Bの外部に取り出す。
このように本実施形態では、上記第2の実施形態と同様に、切断チャンバー1Bを大気開放することなく、切断後の線状部品43を切断チャンバー1Bの外部に取り出すことができる。
また、金属固化体保持部41によって保持された金属固化体mは、切断チャンバー1Bに設けられた不図示の搬出口から部品成形装置120の外部に移動する。
また、4基の金型移動部40でそれぞれ保持された金型部材52、51、金型部材53、54、金型部材62、61、および金型部材63、64は、回収して再使用に供する。
以上で、部品取り出し工程が終了する。
【0108】
このようにして形成された線状部品43の成形品部45について、形状測定を行ったところ、上記第2の実施形態と同様に、第1キャビティ部T、第2キャビティ部Tの形状を忠実に転写していることが確認された。また、成形品部45の非晶質性について、X線回折(XRD)装置にて評価したところ、3つの成形品部45はいずれも非晶質であることが確認された。
【0109】
以上に、説明したように、部品成形装置120によれば、金属ガラスを用いた成形品部45をワイヤ44の先端部に有する線状部品43を、精度よく効率的に製造することができる。
本実施形態では、さらに、2基の金型移動部40によって、上型47を分割して、金属固化体mを離型するため、上型47からの離型作業と、金属固化体mを露出させる作業とを同時に行うことができるため、切断工程終了後に、上型47を迅速に再使用に供することができる。
【0110】
また、本実施形態では、金型46を8体構成の分割型としているため、成形品部45が複雑な形状を有する場合でも、離型が容易となる。
例えば、図21(a)、(b)に示すように、金型部材53、54、あるいは金型部材63、64を水平方向(図示の紙面手前方向)に移動して、金属固化体mや成形品部45から離脱させる際に、金型部材53(63)に対して、金型部材54(64)をわずかに離間させる移動を並行して行うようにしてもよい。
このような離間動作を行うには、図21(b)に示すように、先端アーム部40cを先端側に伸長させ、先端アーム部40cによって、移動アーム先端部挿入穴Q(Q)の穴底部を押圧すればよい。
このような離間動作を併用することで、金属固化体mや成形品部45に対する金型部材53(63)、金型部材54(64)の離脱を促進することができる。
【0111】
また、金型移動部40におけるこのような軸方向の離間動作を用いれば、ランナー部やキャビティ部が、金型部材51、52、53、54や金型部材61、62,63、64に跨って形成されている場合に、ランナー部やキャビティ部の形状が複雑でも容易に離型することができる。
【0112】
なお、上記各実施形態の説明では、1つの金型に、キャビティ部が3個設けられた場合の例で説明したが、これは、1例であって、キャビティ部およびこれに接続するランナー部は2個以上であれば、何個設けられていてもよい。
【0113】
また、上記の各実施形態の説明では、成形工程において、第1の金型および第2の金型がロック部材19によって組立状態を維持する場合の例で説明したが、ロック部材19を使用しない構成としてもよい。例えば、金型設置部2上に第1の金型および第2の金型を組立状態にクランプするクランプ機構を設け、パスボックス3に移動する際に、クランプ機構のクランプを解除して移送してもよい。この場合、パスボックス3においてロック部材19を取り外す作業を省略することができる。また、ロック部材部材解除機構8、8A等を削除することができる。
【0114】
また、上記の各実施形態の説明では、1組の金型を用いて、成形チャンバー1Aにおける成形工程と、切断チャンバー1Bにおける切断工程とを、順次行う場合の例で説明した。成形工程と、切断工程とは、互いに独立して行うことができるため、2つ以上の金型を用いて、1つの金型によって成形工程を行う間に、並行して切断工程を行うようにしてもよい。この場合、2工程を並行して行うため、部品の製造効率をさらに向上することができる。
【0115】
また、上記第1および第3の実施形態の説明では、成形品部15(45)とワイヤ14(44)とを同軸の位置関係にとした例で説明した。これは一例であって、必要に応じて、キャビティ部の中心と、ワイヤ挿通孔の中心とを偏心させ、これにより、ワイヤ14(44)の延出位置を成形品部15(45)の中心から偏心させてもよい。
【0116】
また、上記の各実施形態の説明では、線状部材がワイヤの場合の例で説明したが、線状部材は長尺で可撓性を有する部材であれば、ワイヤには限定されない。
【0117】
また、上記の各実施形態に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
【符号の説明】
【0118】
2 金型設置部
3 パスボックス
3c 金型載置部
4 金型搬送機構
5 溶湯供給部
6 溶湯射出部
6a 射出口
7 誘導加熱コイル
8、8A ロック部材解除機構
9 切断機構(切断部)
10、20、40 金型移動部
11、21 上型保持アーム
11a、12a、21a、22a、22b 係合突起
12 下型移動アーム
13、23、43 線状部品(部品)
14、44 ワイヤ(線状部材)
15、25、45 成形品部
16、26、46 金型
17、27、47 上型(第1の金型)
17a 湯受け部
17b、27b、47b ランナー部
17c、18c、27c、29c、30c 係合穴部
17e、18e、27e、29e、30e、47e 上面
17f、18f、27f、29f、30f、47f 下面
17j 円開口(排出口)
18、28、48 下型(第2の金型)
18a、S キャビティ部
18b、H、H ワイヤ挿通孔
21 上型保持アーム
22A、22B 下型移動アーム
27j 開口(排出口)
29、30 金型部材
29a、30a キャビティ形成面
29b ワイヤ挿通溝
31 部品回収部
100、110、120 部品成形装置
D 隙間
金属材料
、m、m 金属固化体
M 溶湯
第1キャビティ部
第2キャビティ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料の溶湯を受ける溶湯受け部と、該溶湯受け部で受けられた前記溶湯を複数の排出口に導くランナー部と、が設けられた第1の金型と、
該第1の金型の前記複数の排出口にそれぞれ接続する複数のキャビティ部と、該複数のキャビティ部の内部にそれぞれ線状部材を挿通する線状部材挿通孔と、が設けられた第2の金型と、
前記複数の排出口と前記複数のキャビティ部とを互いに連通するように前記第1の金型および前記第2の金型を組み立てた状態で、前記第1の金型の前記溶湯受け部に前記溶湯を供給して該溶湯を前記複数のキャビティ部に充填する溶湯供給部と、
該溶湯供給部によって充填された前記溶湯が前記複数のランナー部および前記複数のキャビティ部内で固化した金属固化体を内部に有する前記第1の金型および前記第2の金型を互いに相対移動可能に保持し、前記第1の金型および前記第2の金型を互いに離間させて前記金属固化体の一部を前記第1の金型および前記第2の金型の間に露出させる金型移動部と、
該金型移動部によって前記第1の金型および前記第2の金型の間に露出された前記金属固化体の一部を切断して、前記複数のキャビティ部で固化した前記金属固化体と前記線状部材とが一体化された複数の部品を形成する切断部と、
を備えることを特徴とする部品成形装置。
【請求項2】
前記金型移動部は、
前記第1の金型を固定し、該第1の金型に対して前記第2の金型を離間させて前記金型分離配置を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の部品成形装置。
【請求項3】
前記第2の金型は、複数の金型部材が着脱可能に組み立てられて構成され、
前記複数の金型部材は、
前記金型移動部によって、前記金属固化体から離脱可能、かつ前記線状部材挿通孔をその径方向に開放可能に保持されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の部品成形装置。
【請求項4】
前記第1の金型は、第1の金型部材群によって、着脱可能に組み立てられて構成され、
前記第2の金型は、第2の金型部材群によって、着脱可能に組み立てられて構成され、
前記第1の金型部材群は、
前記金型移動部によって、前記金属固化体から離脱可能に保持され、
前記第2の金型部材群は、
前記金型移動部によって、前記金属固化体から離脱可能、かつ前記線状部材挿通孔をその径方向に開放可能に保持されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の部品成形装置。
【請求項5】
前記第1の金型の材料の熱伝導率は、
前記第2の金型の材料の熱伝導率よりも小さい
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の部品成形装置。
【請求項6】
前記第2の金型の材料の熱伝導率が、15W/mK以上である
ことを特徴とする請求項5に記載の部品成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−55928(P2012−55928A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201032(P2010−201032)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)