説明

部材の枢着構造

【課題】構造体の取付面への回動部材の取付けを、簡易に行えるようにするとともに、回動部材の離脱を確実に防止し、かつ回動部材の回動を安定して保持できるようにする。
【解決手段】枢軸20を、取付孔23の連通部23cの幅より小径の基軸部20aと、この基軸部20aの先端部に段付き形成され、挿通孔23aより小径で、固定孔23bよりも大径の大径軸部20bと、この大径軸部20bと基軸部20aとの間に段付き形成され、かつ固定孔23bより小径で、連通部23cの幅より大径とした中間軸部20cとにより形成し、取付孔23の挿通孔23aから挿入された枢軸20の基軸部20aを、連通部23cを通して固定孔23bに案内し、かつ枢軸20の中間軸20cを固定孔23bに嵌合させた状態で、構造体4の取付面と回動部材8の枢軸形成面との間に固定部材24を位置させて、回動部材8の枢軸方向の移動を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体に回動部材を回動自在に取り付けうるようにした部材の枢着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材の枢着構造として、たとえばオフィス等の執務空間で使用されるキャビネットにおいて、前面開口部を、左扉、中間扉および右扉を、前後に重畳して配置し、左右1対の逆V字状のリンクバーにおける各リンクバーの一端を、左右の扉に、また、それらの他端を、中間扉に上下方向に沿って設けたガイドレールに昇降自在なローラやスライダ等の連動部材に、それぞれ同軸状に枢着することにより、同期動作させて、扉開閉操作時の操作性を高めるとともに、異音の発生を防止しうるようにしたものが知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載のものでは、リンクバーの一端を扉に回動自在に枢着する際、扉の軸受部に大径孔と小径孔とからなる達磨孔状の取付孔を形成するとともに、リンクバーの枢着部に、大径軸部と小径軸部とからなる枢軸を形成し、かつ取付孔の大径孔に、枢軸の大径軸部を挿入し、小径軸部を小径孔に案内することにより、簡易に着脱可能に取り付けられるようにしてある。このため、リンクバーに負荷が掛かった場合、枢軸が上下方向に揺動し、リンクバーの回動を安定して保持することができないばかりでなく、枢軸が取付孔から離脱するおそれがある。
また、特許文献2に記載のものでは、取付孔内に抜止片を設けて、枢軸の離脱を防止しうるようになっているが、リンクバーに負荷が掛かった場合、枢軸が上下方向に揺動し、リンクバーの回動を安定して保持することができない。
【特許文献1】特許第3429216号公報
【特許文献2】特開2001−182424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、構造体の取付面への回動部材の取付けを、簡易に行うことができるようにするとともに、回動部材の離脱を確実に防止することができ、かつ回動部材の回動を安定よく保持することができるようにした部材の枢着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 構造体の取付面に形成した取付孔に、回動部材の枢着部に形成した枢軸を挿入することにより、回動部材を回動自在に枢着しうるように取り付けた部材の枢着構造において、前記取付孔を、挿通孔と、この挿通孔から下方に離間し、かつ前記挿通孔より小径の円形の固定孔と、この固定孔の径より幅狭で、前記固定孔と前記挿通孔とを連通する連通部により形成し、前記枢軸を、取付孔の連通部の幅より小径の基軸部と、この基軸部の先端部に段付き形成され、前記挿通孔より小径で、前記固定孔よりも大径の大径軸部と、この大径軸部と基軸部との間に段付き形成され、かつ固定孔より小径で、連通部の幅より大径とした中間軸部とにより形成し、前記取付孔の挿通孔から挿入した枢軸の基軸部を、連通部を通して固定孔に案内し、かつ枢軸の中間軸部を固定孔に嵌合した状態で、構造体の取付面と回動部材の枢軸形成面との間に固定部材を位置させて、回動部材の枢軸方向の移動を阻止しうるようにする。
【0006】
(2) 上記(1)項において、固定部材を、基部と、この基部に設けられ、かつ回動部材における枢軸の基軸部に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部とにより構成する。
【0007】
(3) 上記(1)項または(2)項において、回動部材における枢軸の基軸部と中間軸部との間に、基軸部から中間軸部に向けて拡径する傾斜軸部を形成する。
【0008】
(4) 上記(3)項において、固定部材における嵌入保持部の内周面を、傾斜軸部の外周面に整合する傾斜面とする。
【0009】
(5) 上記(1)項において、固定部材を、基板と、この基板の上端縁から前方に向けて水平方向に回動部材のほぼ厚さ分だけ屈曲させた水平片部と、この水平片部の前端縁から垂下させた垂下片部と、この垂下片部に切欠き形成され、かつ枢軸の基軸部に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部と、基板の下端縁から前方に向けて水平方向に折曲された係止片とで形成し、前記垂下片部を、構造体の取付面と回動部材の枢軸形成面との間に、上方から下方に向けて嵌入するとともに、前記嵌入保持部を枢軸の基軸部に嵌入した際、前記係止片が、回動部材の下面部に係止しうるようにする。
【0010】
(6) 上記(1)項において、固定部材を、基板と、この基板の下端縁から前方に向けて水平方向に構造体のほぼ厚さ分だけ屈曲させた水平片部と、この水平片部の前端縁から垂直方向に立ち上げた立上片部と、この立上片部の後面に突出させた逆止爪状の係止突起と、基板に切欠き形成され、かつ枢軸の基軸部に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部とで形成し、前記基板を、構造体の取付面と回動部材の枢軸形成面との間に、下方から上方に向けて嵌入するとともに、嵌入保持部を枢軸の基軸部に嵌入した際、立上片部を、構造体の取付面を挟持しうるように位置させ、構造体に形成した係止孔に係止突起を係止しうるようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
請求項1記載の発明によると、取付孔の挿通孔から挿入された枢軸の基軸部を、連通部を通して固定孔に案内し、かつ枢軸の中間軸部を固定孔に嵌合させた状態で、構造体の取付面と回動部材の枢軸形成面との間に固定部材を位置させて、回動部材の枢軸方向の移動を阻止しうるようにしてあるため、構造体の取付面への回動部材の取付けを、簡易に行うことができるとともに、回動部材の離脱を確実に防止することができ、かつ回動部材の回動を安定して保持することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によると、固定部材を、基部と、この基部に設けられ、かつ回動部材における枢軸の基軸部に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部とにより構成してあるため、枢軸を確実に保持することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によると、回動部材における枢軸の基軸部と中間軸部との間に、基軸部から中間軸部に向けて拡径する傾斜軸部を形成してあるため、固定孔に中間軸部を嵌合させる際に、容易に位置出しを行うことができ、取付作業性を高めることができる。
【0014】
請求項4記載の発明によると、固定部材における嵌入保持部の内周面を、傾斜軸部の外周面に整合する傾斜面としてあるため、固定部材を取り付ける際に、容易に位置出しを行うことができ、取付作業性を高めることができる。
【0015】
請求項5記載の発明によると、固定部材を、基板と、この基板の上端縁から前方に向けて水平方向に回動部材のほぼ厚さ分だけ屈曲させた水平片部と、この水平片部の前端縁から垂下させた垂下片部と、この垂下片部に切欠き形成され、かつ枢軸の基軸部に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部と、基板の下端縁から前方に向けて水平方向に折曲された係止片とで形成し、前記垂下片部を、構造体の取付面と回動部材の枢軸形成面との間に、上方から下方に向けて嵌入するとともに、嵌入保持部を、枢軸の基軸部に嵌入した際、係止片が、回動部材の下面部に係止しうるようにしてあるため、枢軸を確実に保持することができるとともに、固定孔に中間軸部を嵌合させる際に、容易に位置出しを行うことができ、かつ取付作業性を高めることができる。
【0016】
請求項6記載の発明によると、固定部材を、基板と、この基板の下端縁から前方に向けて水平方向に構造体のほぼ厚さ分だけ屈曲させた水平片部と、この水平片部の前端縁から垂直方向に立ち上げた立上片部と、この立上片部の後面に突出させた逆止爪状の係止突起と、基板に切欠き形成され、かつ枢軸の基軸部に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部とで形成し、基板を、構造体の取付面と回動部材の枢軸形成面との間に、下方から上方に向けて嵌入されるとともに、嵌入保持部を枢軸の基軸部に嵌入した際、立上片部を、構造体の取付面を挟持しうるように位置させ、構造体に形成した係止孔に係止突起を係止しうるようにしてあるため、枢軸を確実に保持することができるとともに、固定孔に中間軸部を嵌合させる際に、容易に位置出しを行うことができ、かつ取付作業性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の枢着構造を備えるキャビネットの扉の全閉状態における背面図、図2は、図1のII−II線横断平面図、図3は、扉の全開状態における背面図、図4は、図3のIV−IV線横断平面図、図5は、連動部材と第1および第2のリンクバーとの連結状態を示す部分拡大分解斜視図、図6は、第1リンクバーとリンク受金具との枢着状態を示す部分拡大分解斜視図、図7は、第2リンクバーとリンク受金具との枢着状態を示す部分拡大分解斜視図、図8は、図6のVIII−VIII線におけるリンクバーの枢着構造の第1実施形態を示す縦断側面図、図9は、取付孔の挿通孔への枢軸の大径軸部の挿入状態を分解して示す縦断側面図、図10は、取付孔の連通部への枢軸の基軸部の挿入状態を示す縦断側面図、図11は、取付孔の固定孔への枢軸の中間軸部の嵌合状態と固定部材の嵌入状態を分解して示す縦断側面図である。
【0018】
なお、以下の説明において、左右とは、筐体を後方より見た場合について言う。したがって、筐体を前方から見た場合の左右とは逆になる。また、図2における上方を「前方」、下方を「後方」とする。本実施形態においては、筐体として、オフィス等で使用されるキャビネットを例とする。
【0019】
図1〜図4に示すように、キャビネット(1)における前面の開口部(2)は、引違い扉(3)により、開閉可能に閉塞されるようになっている。この引違い扉(3)は、図1、図2に示すように、左扉(4)、中間扉(6)および右扉(5)の3枚の扉を、図示を省略した前後3列の左右方向の溝またはレール内に、前方から後方に、順次前後に重畳しつつ、左右方向に移動自在に配置することにより構成されている。
【0020】
引違い扉(3)は、その裏面に設けたリンク装置(7)により、図1および図2に示す扉全閉状態から、図3および図4に示す扉全開状態にわたって、少なくとも左扉(4)または右扉(5)のいずれか一方を、把手(4a)または(5a)をもって開閉操作することにより、中間扉(6)を介して、各扉(4)(5)(6)同士を同期動作させうるようになっている。
【0021】
リンク装置(7)は、左右1対の第1および第2リンクバー(8)(9)と、連動部材(10)とにより構成されている。第1リンクバー(8)の一端(8a)は、中間扉(6)より前方に位置する左扉(4)の裏面に、第2リンクバー(9)の一端(9a)は、中間扉(6)より後方に位置する右扉(5)の裏面に、それぞれ回動自在に枢着されている。第1および第2リンクバー(8)(9)の他端(8b)(9b)は、連動部材(10)に回動自在に連結されている。
【0022】
連動部材(10)は、図5に示すように、前面に、上下に離間して位置する1対のローラ(11)(11)を回動自在に設けた垂直な基板(12)と、この基板(12)の上部後方に離間して、一体的に平行に配置された背面板(13)と、基板(12)における左扉(4)側の側端部より前方に向かって連設した案内片(14)と、この案内片(14)の前端部(14a)の下部より左扉(4)側の左側方に向かって連設したストッパ片(15)とにより形成されている。案内片(14)の上下方向における中間の内側面には、スライダ(16)が設けられている。
【0023】
連動部材(10)は、上下のローラ(11)(11)を、中間扉(6)における左扉(4)側の端部裏面に上下方向に沿って形成したガイドレール(17)に係合させるとともに、案内片(14)の内側面を、スライダ(16)を介して、中間扉(6)における上下方向に延びる縁外端面に、摺接もしくは近接しうるように配置することにより、昇降可能に案内されるようになっている。
【0024】
基板(12)の後面下部には、取付基部(12a)が、後方に向けて切り起し形成され、この取付基部(12a)の後面には、第1リンクバー(8)の他端(8b)が、また、背面板(13)の後面には、第2リンクバー(9)の他端(9b)が、それぞれ同形の第1および第2挿通孔(18)(18’)を介して連結されている。
【0025】
第1および第2挿通孔(18)(18’)には、各リンクバー(8)(9)における他端(8b)(9b)の前面にそれぞれ設けた同形の第1および第2回動軸部(19)(19’)が挿嵌されて、互いに回動自在に連結され、各リンクバー(8)(9)の他端(8b)(9b)は、上下のローラ(11)(11)間において、それぞれ上下および前後に離間しうるようになっている。
【0026】
第1および第2挿通孔(18)(18’)は、円形孔(18a)(18a’)と、この円形孔(18a)(18a’)の内周縁を直径方向の外方に向けて切込んだ案内孔(18b)(18b)(18b’)(18b’)とで形成されている。第1および第2回動軸部(19)(19’)は、基板(12)または背面板(13)の板厚分を残して、前記円形孔(18a)(18a’)から突出しうるように整合する円形突起(19a)(19a’)と、この円形突起(19a)(19a’)の外周縁を直径方向の外方に向けて突出させ、かつ前記案内孔(18b)(18b)(18b’)(18b’)に整合しうる係止片(19b)(19b)(19b’)(19b’)とで形成されている。
【0027】
各リンクバー(8)(9)の他端(8b)(9b)と連動部材(10)とは、各リンクバー(8)(9)の他端(8b)(9b)における第1および第2回動軸部(19)(19’)を、連動部材(10)の第1および第2挿通孔(18)(18’)内に、それぞれ互いに整合させて挿通させた後、係止片(19b)(19b)(19b’)(19b’)と案内孔(18b)(18b)(18b’)(18b’)との整合位置が、図5に想像線で示すように、扉開閉操作時における各リンクバー(8)(9)の回動範囲外に設定されるように、言い換えれば、係止片(19b)(19b)(19b’)(19b’)と案内孔(18b)(18b)(18b’)(18b’)とが、各リンクバー(8)(9)の回動範囲内において、常に不整合位置となるように組み付けることにより連結されている。
【0028】
これにより、扉開閉操作時における各リンクバー(8)(9)の回動範囲内においては、回動軸部(19)(19')が挿通孔(18)(18')から離脱することがなく、各リンクバー(8)(9)を、連動部材(10)に確実に連結することができるとともに、部材交換時における連動部材(10)から各リンクバー(8)(9)の取外し作業を、それぞれ独立して容易に行うことができるようになっている。
【0029】
図6〜図9に示すように、第1および第2リンクバー(8)(9)のそれぞれの一端(8a)(9a)における前面の枢軸形成面には、それぞれ同形の枢軸(20)(20’)が形成されている。この枢軸(20)(20’)は、基軸部(20a)(20a’)と、この基軸部(20a)(20a’)の先端部に段付き形成された大径軸部(20b)(20b’)と、この大径軸部(20b)(20b’)と基軸部(20a)(20a’)との間に段付き形成された中間軸部(20c)(20c’)との3段の軸径を有する。基軸部(20a)(20a’)と中間軸部(20c)(20c’)との間には、基軸部(20a)(20a’)から中間軸部(20c)(20c’)に向けて拡径する傾斜軸部(20d)(20d')が形成されている。
【0030】
第1および第2リンクバー(8)(9)のそれぞれの枢軸(20)(20’)は、左扉(4)および右扉(5)の裏面に取り付けた第1および第2リンク受金具(21)(22)における後面の取付面に、それぞれ設けた同形の取付孔(23)(23’)に挿嵌されて、互いに回動自在に枢着されている。
【0031】
取付孔(23)(23’)は、挿通孔(23a)(23a')と、この挿通孔(23a)(23a')から下方に離間し、かつ挿通孔(23a)(23a')より小さな径とされた円形状の固定孔(23b)(23b')と、この固定孔(23b)(23b')と挿通孔(23a)(23a')との間を連通し、かつ固定孔(23b)(23b')の径より幅狭の連通部(23c)(23c')とにより、達磨孔形状に形成されている。枢軸(20)(20')の基軸部(20a)(20a’)は、取付孔(23)(23')の連通部(23c)(23c')の幅よりやや小さな軸径とし、大径軸部(20b)(20b')は、挿通孔(23a)(23a')よりやや小さく、固定孔(23b)(23b')より大きな軸径とし、中間軸部(20c)(20c')は、固定孔(23b)(23b')よりやや小さく、連通部(23c)(23c')の幅より大きな軸径としてある。
【0032】
第1リンクバー(8)の一端(8a)を第1リンク受金具(21)に枢着するには、図8〜図11に第1実施形態として示すように、第1リンク受金具(21)の取付孔(23)に、第1リンクバー(8)の枢軸(20)を装着するに際し、取付孔(23)の挿通孔(23a)に大径軸部(20b)を挿入するとともに、図10に示すように、基軸部(20a)が連通部(23c)に至る位置まで挿入する。
【0033】
次いで、基軸部(20a)を連通部(23c)を通して下降させて、固定孔(23b)に落し込むとともに、図11に示すように、固定孔(23b)に中間軸部(20c)を整合させて嵌合する。この嵌合状態で、第1リンクバー(8)の一端(8a)における前面の枢軸形成面と、第1リンク受金具(21)における後面の取付面との間に形成される間隙(a)には、固定部材(24)が下方から上方に向けて嵌入されるように位置し、図8に示すように、基軸部(20a)に挟圧状態で噛み込ませるように保持させることにより、第1リンクバー(8)の枢軸方向の移動を阻止しうるようになっている。
【0034】
固定部材(24)(24')は、図6、図7に示すように、基部(25)(25')と、この基部(25)(25')に設けられ、かつ第1,2のリンクバー(8)(9)における枢軸(20)(20')の基軸部(20a)(20a')に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部(26)(26')とにより形成されている。この嵌入保持部(26)(26')の内周面(26a)(26a')は、枢軸(20)(20')の基軸部(20a)(20a')と中間軸部(20c)(20c')との間に形成した傾斜軸部(20d)(20d')の外周面に整合する傾斜面としてある(図9参照)。
【0035】
なお、第2リンクバー(9)の一端(9a)と第2リンク受金具(22)との枢着構造は、第1リンクバー(8)と同様であるので、その説明は省略する。
【0036】
キャビネット(1)には、図1〜図5に示すように、鍵装置(27)が引違い扉(3)における左扉(4)の前面に設置されている。この鍵装置(27)は、鍵(図示せず)の施錠/解錠操作による施錠動作に連動するデッドボルト(28)を、左扉(4)の裏面に有する。このデッドボルト(28)には、左扉(4)の裏面にブラケット(29)をもって水平方向の軸廻りに回動自在に軸支された作動杆(30)の一端の係合鈎(30a)が係合されている。
【0037】
作動杆(30)は、鍵装置(27)の施錠動作によるデッドボルト(28)の上下動作により、水平軸廻りの回動動作に変換しうるようになっている。作動杆(30)の遊端部には、後方に向けて鉤状に延出する鉤状部(31)が設けられている。この鉤状部(31)は、図5に示すように、中間扉(6)に昇降自在に設けた連動部材(10)におけるストッパ片(15)の上方近傍に位置しうるように配置され、鍵装置(27)の施錠動作に連動する作動杆(30)の回動により、ストッパ片(15)の可動範囲内に出没しうるようにし、引違い扉(3)の扉全閉状態におけるストッパ片(15)の上方移動を阻止する、施錠装置としてのリンクロック機構を構成している。
【0038】
リンクロック機構は、作動杆(30)の遊端部に設けた鉤状部(31)の先端部を、扉全閉時における鍵装置(27)の施錠動作により、連動部材(10)におけるストッパ片(15)の上端に向けて、上方から前後に傾倒回動させることにより、ストッパ片(15)の背面にフック掛け可能に係合させるようにして、連動部材(10)の上昇動作を阻止しうるようにしてある。
そのため、扉全閉時における鍵装置(27)の施錠動作により、左扉(4)と中間扉(6)との間隔が広がることはない。
【0039】
図12および図13は、リンク装置におけるリンクバーの枢着構造の第2実施形態を示す。
本実施形態では、リンク受金具(32)の取付面に形成される取付孔(33)と、リンクバー(34)の枢着部に形成される枢軸(35)が、第1実施形態とほぼ同一形態であり、固定部材(36)の構造のみが異なる。
【0040】
図12および図13に示すように、固定部材(36)は、基板(37)と、この基板(37)の上端縁から前方に向けて水平方向にリンクバー(34)のほぼ厚さ分だけ屈曲させた水平片部(38)と、この水平片部(38)の前端縁から垂下させた垂下片部(39)と、この垂下片部(39)に切欠き形成され、かつ枢軸(35)の基軸部(35a)に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部(40)と、基板(37)の下端縁から前方に向けて水平方向に折曲された係止片(41)とで形成されている。
【0041】
固定部材(36)の垂下片部(39)は、リンク受金具(32)の後面とリンクバー(34)の前面との間に、上方から下方に向けて嵌入されるとともに、嵌入保持部(40)を、枢軸(35)の基軸部(35a)に嵌入した際、係止片(41)は、リンクバー(34)の下面部に係止しうるようにしてある。
【0042】
図14および図15は、リンク装置におけるリンクバーの枢着構造の第3実施形態を示す。
本実施形態では、リンク受金具(42)の取付面に形成される取付孔(43)と、リンクバー(44)の枢着部に形成される枢軸(45)が、第1、2実施形態とほぼ同一形態であり、固定部材(46)の構造のみが異なる。
【0043】
図14および図15に示すように、固定部材(46)は、基板(47)と、この基板(47)の下端縁から前方に向けて水平方向にリンク受金具(42)のほぼ厚さ分だけ屈曲させた水平片部(48)と、この水平片部(48)の前端縁から垂直方向に立ち上げた立上片部(49)と、この立上片部(49)の後面に突出させた逆止爪状の係止突起(50)と、基板(47)に切欠き形成され、かつ枢軸(45)の基軸部(45a)に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部(51)とで形成されている。
【0044】
固定部材(46)の基板(47)は、リンク受金具(42)の後面とリンクバー(44)の前面との間に、下方から上方に向けて嵌入されるとともに、嵌入保持部(51)を、枢軸(45)の基軸部(45a)に嵌入した際、立上片部(49)は、リンク受金具(42)の後面を挟持しうるように位置し、リンク受金具(42)に形成した係止孔(52)に、立上片部(49)の後面に突出させた係止突起(50)が、逆止爪状に係止しうるようにしてある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態の枢着構造を備えるキャビネットの扉全閉状態を、裏面から見た図である。
【図2】図1のII−II線横断平面図である。
【図3】扉全開状態を裏面から見た図である。
【図4】図3のIV−IV線横断平面図である。
【図5】連動部材と第1および第2のリンクバーとの連結状態を示す部分拡大分解斜視図である。
【図6】第1リンクバーとリンク受金具との枢着状態を示す部分拡大分解斜視図である。
【図7】第2リンクバーとリンク受金具との枢着状態を示す部分拡大分解斜視図である。
【図8】図6のVIII−VIII線におけるリンクバーの枢着構造の第1実施形態を示す縦断側面図である。
【図9】取付孔の挿通孔への枢軸の大径軸部の挿入状態を分解して示す縦断側面図である。
【図10】取付孔の連通部への枢軸の基軸部の挿入状態を示す縦断側面図である。
【図11】取付孔の固定孔への枢軸の中間軸部の嵌合状態と固定部材の嵌入状態を分解して示す縦断側面図である。
【図12】リンクバーの枢着構造の第2実施形態を示す部分拡大分解斜視図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII線縦断側面図である。
【図14】リンクバーの枢着構造の第3実施形態を示す部分拡大分解斜視図である。
【図15】図14のXV−XV線縦断側面図である。
【符号の説明】
【0046】
(1)キャビネット(筐体)
(2)開口部
(3)引違い扉
(4)左扉
(4a)把手
(5)右扉
(5a)把手
(6)中間扉
(7)リンク装置
(8)第1リンクバー
(8a)一端
(8b)他端
(9)第2リンクバー
(9a)一端
(9b)他端
(10)連動部材
(11)ローラ
(12)基板
(12a)取付基部
(13)背面板
(14)案内片
(14a)前端部
(15)ストッパ片
(16)スライダ
(17)ガイドレール
(18)第1挿通孔
(18a)円形孔
(18b)案内孔
(18’)第2挿通孔
(18a’)円形孔
(18b’)案内孔
(19)第1回動軸部
(19a)円形突起
(19b)係止片
(19’)第2回動軸部
(19a’)円形突起
(19b’)係止片
(20)枢軸
(20a)基軸部
(20b)大径軸部
(20c)中間軸部
(20d)傾斜軸部
(20')枢軸
(20a')基軸部
(20b')大径軸部
(20c')中間軸部
(20d')傾斜軸部
(21)第1リンク受金具
(22)第2リンク受金具
(23)取付孔
(23a)挿通孔
(23b)固定孔
(23c)連通部
(23’)取付孔
(23a’)挿通孔
(23b’)固定孔
(23c’)連通部
(24)(24')固定部材
(25)(25')基部
(26)(26')嵌入保持部
(26a)(26a')内周面
(27)鍵装置
(28)デッドボルト
(29)ブラケット
(30)作動杆
(30a)係合鈎
(31)鉤状部
(32)リンク受金具
(33)取付孔
(34)リンクバー
(35)枢軸
(35a)基軸部
(36)固定部材
(37)基板
(38)水平片部
(39)垂下片部
(40)嵌入保持部
(41)係止片
(42)リンク受金具
(43)取付孔
(44)リンクバー
(45)枢軸
(45a)基軸部
(46)固定部材
(47)基板
(48)水平片部
(49)立上片部
(50)係止突起
(51)嵌入保持部
(52)係止孔
(a)隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の取付面に形成した取付孔に、回動部材の枢着部に形成した枢軸を挿入することにより、回動部材を回動自在に枢着しうるように取り付けた部材の枢着構造において、
前記取付孔を、挿通孔と、この挿通孔から下方に離間し、かつ前記挿通孔より小径の円形の固定孔と、この固定孔の径より幅狭で、前記固定孔と前記挿通孔とを連通する連通部により形成し、
前記枢軸を、取付孔の連通部の幅より小径の基軸部と、この基軸部の先端部に段付き形成され、前記挿通孔より小径で、前記固定孔よりも大径の大径軸部と、この大径軸部と基軸部との間に段付き形成され、かつ固定孔より小径で、連通部の幅より大径とした中間軸部とにより形成し、
前記取付孔の挿通孔から挿入した枢軸の基軸部を、連通部を通して固定孔に案内し、かつ枢軸の中間軸部を固定孔に嵌合した状態で、構造体の取付面と回動部材の枢軸形成面との間に固定部材を位置させて、回動部材の枢軸方向の移動を阻止しうるようにしたことを特徴とする部材の枢着構造。
【請求項2】
固定部材を、基部と、この基部に設けられ、かつ回動部材における枢軸の基軸部に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部とにより構成したことを特徴とする請求項1記載の部材の枢着構造。
【請求項3】
回動部材における枢軸の基軸部と中間軸部との間に、基軸部から中間軸部に向けて拡径する傾斜軸部を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の部材の枢着構造。
【請求項4】
固定部材における嵌入保持部の内周面を、傾斜軸部の外周面に整合する傾斜面としたことを特徴とする請求項3記載の部材の枢着構造。
【請求項5】
固定部材を、基板と、この基板の上端縁から前方に向けて水平方向に回動部材のほぼ厚さ分だけ屈曲させた水平片部と、この水平片部の前端縁から垂下させた垂下片部と、この垂下片部に切欠き形成され、かつ枢軸の基軸部に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部と、基板の下端縁から前方に向けて水平方向に折曲された係止片とで形成し、
前記垂下片部を、構造体の取付面と回動部材の枢軸形成面との間に、上方から下方に向けて嵌入するとともに、
前記嵌入保持部を枢軸の基軸部に嵌入した際、前記係止片が、回動部材の下面部に係止しうるようにしたことを特徴とする請求項1記載の部材の枢着構造。
【請求項6】
固定部材を、基板と、この基板の下端縁から前方に向けて水平方向に構造体のほぼ厚さ分だけ屈曲させた水平片部と、この水平片部の前端縁から垂直方向に立ち上げた立上片部と、この立上片部の後面に突出させた逆止爪状の係止突起と、基板に切欠き形成され、かつ枢軸の基軸部に嵌入されて挟圧状態で保持される嵌入保持部とで形成し、
前記基板を、構造体の取付面と回動部材の枢軸形成面との間に、下方から上方に向けて嵌入するとともに、
嵌入保持部を枢軸の基軸部に嵌入した際、立上片部を、構造体の取付面を挟持しうるように位置させ、構造体に形成した係止孔に係止突起を係止しうるようにしたことを特徴とする請求項1記載の部材の枢着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−69520(P2008−69520A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247287(P2006−247287)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)