説明

都市ごみの最終処分方法

【課題】埋め立てが終了した最終処分場を早期に廃止させる方法を提供すること、及び、最終処分場を早期に廃止させられるような都市ごみの最終処分方法を提供すること。
【解決手段】都市ごみの焼却処理により発生する主灰にコンポストを配合した後に最終処分場に埋め立てることを特徴とする都市ごみの最終処分方法、及び、都市ごみの焼却処理により発生する主灰を最終処分場に埋め立てる前に、該主灰にコンポストを配合することを特徴とする主灰の固化を抑制する方法、及び、上記の都市ごみの最終処分方法を使用することを特徴とする最終処分場を早期に廃止させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみの最終処分方法に関するものであり、更に詳しくは、都市ごみの焼却処理により発生する主灰を最終処分場に埋め立てる前に特定の処理をする都市ごみの最終処分方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ焼却灰は、主にストーカ式焼却炉あるいは流動床式焼却炉において焼却され、焼却炉の焼却残渣(主灰)は焼却灰として一般廃棄物最終処分場又は産業廃棄物の管理型最終処分場に、搬入車両から直接ダンピングされ、重機等で成形しながら埋め立て処分される。その際、混合や分級等の特段の前処理がなされることもなく埋め立てられるのが通常である。管理型最終処分場内の埋め立て地には遮水工が施されており、自然降雨等による埋め立て地内の保有水を集水し、適切な水質にまで浄化した後に自然環境へ放流されるようになっている。
【0003】
最終処分場は早いもので5年、通常15年〜20年で満杯となるが、埋め立てが終了した時点でその最終処分場を廃止できるわけではなく、最終処分場を廃止するためには、埋め立て地内の廃棄物が以下の廃止要件を満たす必要がある。
(1)保有水等の水質が2年以上にわたって排水基準を満足すること。
(2)埋め立て地ガスの発生がほとんど認められず、そのガスの発生量の増加が2年以上にわたって認められないこと。
(3)埋め立て地の内部温度が周辺の地中温度に比して異常な高温となっていないこと。
【0004】
最終処分場の埋め立てが終了した時点から、上記廃止要件を満たすようになるまでの期間が短ければそれだけ最終処分場の管理期間が短くなり好適である。しかしながら、埋め立て終了時点から廃止までの期間は、一般に20年以上と長く、そのため、この期間を短くすることが求められているが未だ充分な技術はなく、更なる改善が求められていた。
【0005】
一方、コンポストの利用については、特許文献1に、産業廃土にコンポストを添加・混合して植生可能な土壌とする技術が開示されている。しかしながら、特許文献1の技術におけるコンポストの添加・混合の対象は産業廃土であり、都市ごみの焼却により生じる焼却灰に添加・混合する技術ではなく、その用途も本願発明とは全く異なるものであった。
【0006】
また、特許文献2には、焼却灰、下水汚泥コンポスト及び「重金属を吸着する有機系の孔質吸着材」を主材とする緑化基盤材が記載されており、そこには、焼却灰と下水汚泥コンポストとの混合が開示されている。しかしながら、特許文献2の技術は、焼却灰中に含まれる肥料成分を緑化基盤材として有効活用するというものであり、孔質吸着材を必須成分としており、焼却灰を処分するために最終処分場に埋め立てる本願発明とは異なる技術であった。
【0007】
また、特許文献3には、焼却施設から排出された焼却残渣や埋立処分焼却残渣のうち、設定粒度以下の焼却残渣に有機物含有物を混合して自然脱塩により塩分濃度を低減させたものをセメント原料や土木資材として使用する技術が開示されている。しかしながら、この技術は塩分濃度が比較的高い「飛灰を含む一定粒度以下の焼却残渣」だけをわざわざ分別し、そこに有機物含有物を混合するものであり、焼却残渣の大部分を占める主灰全体に対する処分方法ではなかった。また、「有機物含有物」を混合することにより、微生物の作用で腐植酸を生成させ、それら代謝産物により難溶解性塩分を水溶性塩分に変換させるものであり、本願発明のようにコンポスト中に最初から含有される腐植酸が主灰の固化を抑制するものとは全く異なるものであった。
【0008】
更に、特許文献1ないし特許文献3記載の技術の何れもが、処分による生成物を、植生可能な土壌、緑化基盤材、セメント原料、土木資材等に有効利用するものであり、最終処分場の早期廃止を目的としたものではなく、従って、かかる技術は全く参考にならないものであった。
【0009】
【特許文献1】特開平11−293248号公報
【特許文献2】特開平11−346555号公報
【特許文献3】特開2004−082100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、埋め立てが終了した最終処分場を早期に廃止させる方法を提供することにあり、最終処分場を早期に廃止させられるような都市ごみの最終処分方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
都市ごみの焼却によって発生する焼却主灰(以下、「主灰」と略記する)には、少ないもので約2質量%程度、多いもので約10質量%程度の有機物が含有されている。この有機物が、最終処分場の埋め立て地におけるガスの発生や浸出水の汚濁の主たる原因である。そこで、本発明者は、埋め立て後の最終処分場の地中に適度な水分及び十分な酸素(大気)が浸透すれば、微生物活動による有機物分解が好気的に進行するので、ガスの発生及び汚濁物質の流出は比較的短期間で終了し、最終処分場を早期に廃止できるようになると考えた。
【0012】
最終処分場に埋め立てられた都市ごみの主灰は、セメントの水和と同様に、カルシウムシリケートの水和及びカルシウムアルミネートの水和により、密実に固化してしまう。そして、埋め立てられた廃棄物層内での都市ごみの主灰の固化層や固化体は、低透水層、低通気層であるため、雨水の浸透や大気の拡散が阻害され、その結果、埋め立てられた廃棄物層内に含有される有機物の分解も遅れることとなる。
【0013】
このように、主灰が密実に固化してしまった最終処分場では、埋め立て終了後も長期間にわたり保有水中に有機物が含有し続け、また、埋め立て地ガスの発生が継続する。そしてその結果、前記した廃止要件を満たすようにならないため、浸出水の水処理を延々と継続することを余儀なくされ、最終処分場の廃止が長期間にわたりできなくなる。
【0014】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、主灰が密実に固化してしまうことを抑制すれば、埋め立てられた廃棄物層内に含有された有機物の分解が早まり、早期に最終処分場が廃止できることを見出し、本発明に至った。更に、主灰が密実に固化することを抑制させるために、主灰にコンポストを配合した後に最終処分場に埋め立てれば、コンポスト中の腐植酸と主灰中のカルシウムイオンとが反応し、主灰の水和活性が低下し、固化を抑制できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、都市ごみの焼却処理により発生する主灰にコンポストを配合した後に最終処分場に埋め立てることを特徴とする都市ごみの最終処分方法を提供するものである。
【0016】
また本発明は、都市ごみの焼却処理により発生する主灰を最終処分場に埋め立てる前に、該主灰にコンポストを配合することを特徴とする主灰の固化を抑制する方法を提供するものである。
【0017】
また本発明は、上記都市ごみの最終処分方法を使用することを特徴とする最終処分場を早期に廃止させる方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、最終処分場に埋め立てられた後に起こる主灰の固化を効果的に抑制することができ、その結果、埋め立てられた廃棄物層内に含有された有機物の分解を促進させることができ、最終処分場を早期に廃止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0020】
都市ごみの処分は地方自治体に委ねられており、焼却処理施設で800℃〜1000℃の温度で焼却処理を行った後、発生する焼却灰を最終処分場へ埋め立てることで完了する。地方自治体が管理・運営する焼却処理施設は、ストーカ式焼却炉であることが多く、都市ごみの焼却によって発生する焼却灰は、火炉内の炉底に残る前述の主灰と、燃焼排ガスと共に飛散し後段の集塵施設で捕集される飛灰とに大別される。
【0021】
火炉より排出された主灰は、消火と冷却を目的として水没処理されて、その後、天蓋付車両等により一般廃棄物最終処分場まで運搬されて、そのまま直接、埋め立てられ、最終処分がなされている。なお、集塵施設で捕集された飛灰は、セメント固化処理又はキレート処理した後に、管理型最終処分場まで運搬されて埋め立てられる。
【0022】
本発明は、都市ごみの焼却処理により発生する主灰にコンポストを配合した後に最終処分場に埋め立てることを特徴とする。最終処分の対象が主灰であると、重金属が比較的少なく、セメント固化処理やキレート処理が不要なため、コンポストの配合効果が得られ易く、また、有機物の含有量が飛灰より多いため、有機物の分解を促進させることによって保有水等の水質に関し早期に排水基準を満足させることができるという本発明の効果を奏しやすい。一方、飛灰であると、そもそも有機物を含まないため本発明を適用する必要性がない。また、飛灰中には、重金属が多く含有されているため、セメント固化処理やキレート処理等が必要な場合があり、本発明の適用ができない場合がある。
【0023】
コンポストを配合する前の主灰の処理や分別等の要否については特に限定はないが、分別等の処理を行なわず、都市ごみの焼却によって発生する主灰全部を処分の対象にすることが、本発明がコストを意識した最終処分場の早期廃止を目的にしていることとの整合性からも好ましい。
【0024】
本発明は、主灰にコンポストを配合した後に埋め立てることを特徴とする。ここで、「コンポスト」とは、生ごみ、下水汚泥、し尿汚泥、浄化槽汚泥、家畜の糞尿、農作物廃棄物、林野の植物、食品汚泥等に含まれる有機物を、微生物等の働きによって醗酵分解させたものをいう。本発明において使用される「コンポスト」は上記のものならば特に限定はないが、具体的には、例えば、下水汚泥コンポスト、し尿汚泥コンポスト、食品汚泥コンポスト、腐植土(林野の植物に含まれる有機物を微生物等の働きによって醗酵分解させたもの)、混合汚泥コンポスト等が挙げられる。
【0025】
本発明において、主灰に配合するコンポストの成分については特に限定はないが、フミン酸、フルボ酸等の腐植酸をある程度含有するものが好ましい。腐植酸の含有量は特に限定はないが、乾燥状態のコンポスト全体に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましく、25質量%以上が更に好ましい。コンポスト中の腐植酸の含有量が少なすぎる場合には、主灰の固化を防止・抑制できない場合があり、最終処分場における主灰中の有機物が長期間にわたり残存する場合がある。
【0026】
後述するように、本願発明は、主にコンポスト中に最初から含有される腐植酸が主灰の固化を抑制するものであり、主灰にコンポストを配合した後に微生物の作用によってコンポスト中に新たに生成した腐植酸等の代謝産物のみが主に効果的に働くものではない。
【0027】
主灰にコンポストを配合させる時期、段階、場所は特に限定はなく、都市ごみの焼却処理施設がある敷地内で行なってもよいし、最終処分場の敷地内で行なってもよく、また、その他の場所で行なってもよいが、焼却処理施設の敷地内で行なうことが好ましい。カルシウム塩の溶解、及び、カルシウムシリケートの水和、カルシウムアルミネートの水和等による水和化合物の生成は、主灰が水と接触することにより進行するので、コンポストの配合は焼却処理施設の敷地内で行うことが好ましい。焼却処理施設の敷地内ではなく、例えば、最終処分場の敷地内等で行なう場合には、既に水和反応が進行し、固化が開始している場合があり、結果として本発明の前記効果が奏されない場合がある。
【0028】
都市ごみの焼却処理施設では、主灰は水没処理されることが通例である。従って、カルシウム塩の溶解と水和化合物の生成は、主灰が水と接触した直後より開始するので、コンポストの配合を、都市ごみの焼却処理により発生する主灰を水没処理する前に行なうことが特に好ましい。すなわち、水没処理前の乾燥状態にある主灰に対して、コンポストを配合することが特に好ましい。
【0029】
主灰に対するコンポストの配合の割合は特に限定はないが、乾燥状態に換算した主灰全体量に対して、乾燥状態に換算したコンポストの量として、2質量%から20質量%の範囲で行なうことが好ましい。より好ましくは5質量%から17質量%の範囲であり、特に好ましくは10質量%から15質量%の範囲である。コンポストの配合割合が少なすぎると、水和化合物の生成の抑制及び水和化合物の分解の効果が小さく、その結果、主灰の固化を抑制・防止する効果も小さくなる場合がある。一方、コンポストの配合割合が多すぎると、コンポストに含まれる有機物の量が多くなりすぎ、その結果、主灰とコンポストからなる混合物の有機物の合計含有量が多くなりすぎるため、浸出水の汚濁指標であるCOD及び全窒素濃度が高くなり、排水基準を下回るまでの期間が逆に長くなってしまう場合がある。なお、配合量を、主灰もコンポストも乾燥状態での質量換算で規定したのは、水を除いた有効成分のみを対象にして正確度を上げるためであり、実際の配合は何れも乾燥状態で行なう必要性はない。
【0030】
以下、本発明の効果について更に詳しく説明する。ただし、そこには一部、本発明の作用・原理が記載されているが、本発明はその作用・原理の範囲に限定されるものではない。
【0031】
コンポストが配合された主灰は、最終処分場に埋め立てられるが、埋め立て後に、降水による水と接触すると、主灰からはカルシウム塩が溶解し、コンポストからはフミン酸やフルボ酸等の腐植酸が溶解する。続いて、腐植酸カルシウムが形成されるが、この腐植酸カルシウムは主灰を固化させる膠結作用を持たないので、水と共に物理的に下方へ移動し、浸出水として最終処分場の外部へ持ち去られる。
【0032】
一方、最終処分場内に埋め立てられた主灰の側では、水和化合物の生成や炭酸カルシウムの再析出が起こり難いので、長期にわたり埋め立て初期の良好な通気・透水状態が、長期にわたり維持されることになる。その結果、微生物活動による有機物分解が好気的に進行するので、短期間で水質の回復が図られる。
【0033】
主灰を構成する主要な鉱物は、炭酸カルシウム、石英、長石、ゲーレナイト等であるが、これらの他に、水との接触により水和する、カルシウムシリケート、カルシウムアルミネート等を含んでいる。最終処分場で埋め立てられた主灰は、埋め立てた後に地中に浸透する降水との反応により、エトリンガイトやフリーデル氏塩等の水和化合物を生成する。これらの水和化合物は主灰の粒子間隙を充填しながら成長していくので、主灰は次第に緻密な固化物へと変化していく。この固化物又は固化層の生成が進行すると、次第に降水が内部に浸透し難くなっていく。
【0034】
主灰は都市ごみの焼却によって発生するわけであるが、少ないもので約3質量%程度、多いもので約12%程度の有機物が未燃焼の状態で残っている。これらの有機物は、処分場内の保有水の水質及び処分場外に排水される浸出水の汚濁の原因物質となる。
【0035】
適切な水分及び酸素の供給がなされるのであれば、埋め立てられた廃棄物中の有機物の分解は好気的な微生物活動により進行するので、埋め立て後の時間の経過に伴って、比較的短期間で発生ガス量が減少すると共に浸出水中の汚濁物質の量も減少していく。
【0036】
ところが、埋め立て後に地中で主灰の固化が起こり、大気や降水の供給が阻害されたり、不均一となったりすると、微生物活動による有機物の分解は、分解速度が極めて遅い嫌気的条件で進行するようになるため、いつまでたっても埋め立て地からのガスの放出は継続するとともに、浸出水中の汚濁物質の量も減少しないことになる。
【0037】
本発明は、コンポストを主灰中に配合することによって、埋め立て後の主灰の固化を防止・抑制させることで、最終処分場内の廃棄物層の通気状態や透水状態を良好な状態に維持させ、有機物の分解を好気的に進行させ、より早期に浸出水の水質の回復を図ることができる。また、その他の前記廃止要件も早期に満たすようにでき、その結果、最終処分場を早期に廃止させることができる。
【0038】
セメントと同様、主灰の固化は、カルシウムシリケートやカルシウムアルミネートの水和反応生成物及び炭酸化による炭酸カルシウムの再析出物等が粒子間隙を充填することで起こるが、これらの反応は、主灰中のカルシウムが水に溶解することから始まる。水に溶解したカルシウムが硫酸イオン、炭酸イオン等と結合することで結晶化が進行する。本発明によれば、カルシウムイオンがこれら陰イオンと結合しにくくし、その結果、主灰の固化を防止できたと考えられる。
【0039】
なお、コンポスト自体も有機物を含有しているが、その有機物は最終処分場の早期廃止に関し障害にならない。コンポストは水質汚濁の指標の1つであるBODの主因である「易分解性の有機物」が、コンポスト化の過程で既に分解されているので、主灰に配合させて埋め立て処分しても、浸出水の汚濁に及ぼす影響が小さいためであると考えられる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1
人口20万人の地方自治体が管理運営する都市ごみ焼却処理施設において発生した都市ごみ焼却主灰に、混合汚泥コンポストを配合した。その後、養生し、2ヶ月、5ヶ月、9ヶ月の養生期間ごとに、主灰の固化の原因物質であるカルシウムアルミネートの水和反応生成物、具体的にはエトリンガイト及びフリーデル氏塩を粉末X線回折法によって定量した。すなわち、エトリンガイト及びフリーデル氏塩の粉末X線回折パターンの消長によりコンポストの配合効果を評価した。また、養生期間ごとに、透水係数と圧縮強度を測定した。具体的操作は以下の通りである。
【0042】
上記混合汚泥コンポストは民間のコンポスト会社から入手したものであり、その原料は市町村のし尿汚泥及び食品汚泥である。混合汚泥コンポストに含まれる無機物の化学組成は表1に示した通りであった。また、有機物濃度は54質量%であり、有機物の元素組成は、表2に示す通り、Nが3.2質量%、Cが21.6質量%、Sが1.1質量%及びHが3.7質量%であった。
【0043】
主灰と混合汚泥コンポストの配合割合は、上記主灰全体に対して、混合汚泥コンポストを、乾燥状態換算で、5質量%、10質量%及び15質量%とした。各々の配合による混合試料を均一に混合し、内径50mm、高さ100mmの円筒形モールド、及び、内径50mm、高さ50mmの塩ビ製の円筒内に、20N/cmの圧力で混合試料を充填し、飽和含水とした後、樹脂袋に収納し、炭酸化の影響を避けるため脱気後密閉して、所定の材齢まで常温で保存した。透水試験測定用の試料と圧縮強度測定用の試料は、同様の手順・方法で所定の材齢まで常温で保存した。
【0044】
所定の材齢に到達した試料は、樹脂袋から取り出し、再び飽和含水として、東大式透水係数測定器を用い変位透水係数の測定を行なった。また、テスコ(株)社製、一軸圧縮強度試験機「KS11215」により、圧縮強度を測定した。また、粉末X線回折法により、エトリンガイト及びフリーデル氏塩の消長を測定した。
【0045】
2ヶ月、5ヶ月、9ヶ月の養生期間の全てにおいて、また、混合汚泥コンポストの配合割合、5質量%、10質量%及び15質量%の全てにおいて、透水係数は、0.002〜0.01cm/sの範囲であり、十分に高く維持されており、固化の防止効果が確認された。また、一軸圧縮強度も、上記全ての実験条件で、20KN/m〜40KN/mであり、固化の防止効果が確認された。
【0046】
実施例2
主灰に配合するコンポストを、下水処理場に併設されたコンポスト化施設から入手した下水汚泥コンポストに代えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、コンポスト配合効果を評価した。下水汚泥コンポストに含まれる無機物の化学組成は表1に示した通りであった。また、下水汚泥コンポストの有機物濃度は約52質量%であり、有機物の元素組成は、表2に示したように、Nが3.1質量%、Cが質量20.9%、Sが0.9質量%及びHがほぼ3.6質量%であった。
【0047】
透水係数と一軸圧縮強度については、実施例1と同様、2ヶ月、5ヶ月、9ヶ月の養生期間の全てにおいて、また、下水汚泥コンポストの配合割合、5質量%、10質量%及び15質量%の全てにおいて、透水係数は、0.002〜0.01cm/sの範囲で、十分に高く維持されており、固化の防止効果が確認された。また、一軸圧縮強度も、上記全ての実験条件で、20KN/m〜40KN/mであり、固化の防止効果が確認された。
【0048】
図1に、下水汚泥コンポストの配合割合15質量%における、鉱物組成の変化を示す「粉末X線回折パターン」を示す。材齢9ヶ月の試料中、固化の主因物質であるエトリンガイト(図1における、2θ=9°)及びフリーデル氏塩(図1における、2θ=11°)が増加しないことはもちろん、むしろ減少したことが明瞭に確認された。
【0049】
実施例1及び実施例2の結果から、コンポストを作製する際の原料に関わらず、コンポストの主灰への配合は、主灰の固化防止に効果のあることが確認された。
【0050】
表1は、実施例1及び実施例2で配合したコンポストの無機物の化学組成である。表中の数字は、「質量%」を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表2は、実施例1及び実施例2で配合したコンポストの有機物の元素分析結果である。表中の数字は、質量%を示す。
【0053】
【表2】

【0054】
比較例1
実施例1及び実施例2で用いた都市ごみ焼却主灰のみについて、コンポストを配合せず、それ以外は実施例1と同様の手順により、試料を作製し、実施例1と同様に、透水係数と一軸圧縮強度を測定した。また、エトリンガイト及びフリーデル氏塩の生成状況を粉末X線回折法により測定した。
【0055】
透水係数と一軸圧縮強度については、9ヶ月の養生期間のもので、透水係数は、0.0001cm/sと低くなっており、固化が確認された。また、一軸圧縮強度も、2ヶ月、5ヶ月、9ヶ月の養生期間の全てにおいて、150KN/mであり、同様に固化が確認された。
【0056】
図2に鉱物組成の変化を示す粉末X線回折パターンを示すが、材齢9ヶ月の試料中にエトリンガイト(図2における、2θ=9°)及びフリーデル氏塩(図2における、2θ=11°)が増加したことが明瞭に確認された。
【0057】
最終処分場へ埋め立て処分された都市ごみ焼却主灰の固化は、主にエトリンガイト及びフリーデル氏塩等の水和鉱物の生成によるとされており、これら鉱物の発達は固化がより進行していることを示す指標になるといわれている。実施例2では、比較例1に比べ、エトリンガイト及びフリーデル氏塩の増加が見られなかったことはもちろん、実施例2では、初期より材齢9ヶ月の方が、エトリンガイト及びフリーデル氏塩が減少していた。このことは、コンポストを配合すると、主灰の固化が進行せず、通気性、透水性が良好に保たれ、その結果、微生物活動による有機物分解が好気的に進行するので、短期間で水質等の回復が図られ、最終処分場の廃止が早期に可能となることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の都市ごみの最終処分方法によると、最終処分場の廃止時期を早めることができ、コスト的にも、管理上も優れているため、都市ごみの処理分野に広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】下水汚泥コンポストを15質量%配合した主灰における、鉱物組成の経時変化を示す粉末X線回折パターンである(実施例2)。
【図2】コンポストを配合しない主灰のみの鉱物組成の経時変化を示す粉末X線回折パターンである(比較例1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
都市ごみの焼却処理により発生する主灰にコンポストを配合した後に最終処分場に埋め立てることを特徴とする都市ごみの最終処分方法。
【請求項2】
コンポストの配合を焼却処理施設の敷地内で行なう請求項1記載の都市ごみの最終処分方法。
【請求項3】
コンポストの配合を、都市ごみの焼却処理により発生する主灰を水没処理する前に行なう請求項1又は請求項2記載の都市ごみの最終処分方法。
【請求項4】
コンポストの配合を、乾燥状態に換算した主灰の全体量に対して、乾燥状態に換算したコンポスト量で2質量%から20質量%の範囲で行なう請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の都市ごみの最終処分方法。
【請求項5】
都市ごみの焼却処理により発生する主灰を最終処分場に埋め立てる前に、該主灰にコンポストを配合することを特徴とする主灰の固化を抑制する方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の都市ごみの最終処分方法を使用することを特徴とする最終処分場を早期に廃止させる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate