配管内の海生物除去装置及び配管内の海生物除去方法
【課題】海中での作業負担も少なく、除去した海生物が設備や環境上問題が生じることのない配管内の海生物除去装置を提供すること。
【解決手段】海生物除去装置3は、配管1の内径よりも小さい径を有し、配管1の内部で回転可能な長さを有する胴体部4と、胴体部4の外周回りに設けられ、配管1の内面に当接するキャスターを有し、胴体部4をスライド方向に案内する案内部5と、胴体部4の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、配管1の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部6と、胴体部4のスライド方向端部に設けられ、牽引装置が接続される牽引部7とを備えている。外部のウィンチから繰り出されたワイヤ9で海生物除去装置3を、配管1の内部で往復動作させることにより、配管1の内面に付着した海生物を削り落とす。
【解決手段】海生物除去装置3は、配管1の内径よりも小さい径を有し、配管1の内部で回転可能な長さを有する胴体部4と、胴体部4の外周回りに設けられ、配管1の内面に当接するキャスターを有し、胴体部4をスライド方向に案内する案内部5と、胴体部4の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、配管1の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部6と、胴体部4のスライド方向端部に設けられ、牽引装置が接続される牽引部7とを備えている。外部のウィンチから繰り出されたワイヤ9で海生物除去装置3を、配管1の内部で往復動作させることにより、配管1の内面に付着した海生物を削り落とす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内の海生物除去装置及び配管内の海生物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や発電所においては、大量の海水を冷却水として用いるために、海中に配管を設置し、海水を取水している。
このような取水用の配管内には、長年の取水により、フジツボ等の貝や、海藻等が付着し、配管内の管路を狭くしてしまい、取水量が減少してしまうという問題がある。
従来、配管内に付着した海生物を除去するために、配管内の海水を抜いて、作業者が配管内部に入り、スクレーパー等で付着した海生物を除去することが行われていた。
【0003】
しかしながら、このような方法では、作業者は、作業がしづらく、悪臭等の作業環境下で行わなければならない。また、除去作業期間は取水ができないという問題がある。
さらに、抜水を行わずやる場合には、ダイバー等の海中作業者の人力作業が必要となり、専門技能を要するという問題がある。
このため、例えば、配管内に無人の海生物除去装置を設置し、配管内の流水の力を利用して海生物除去装置を駆動し、付着した海生物を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−75879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術では、海生物除去装置を配管内の流水の力を利用して駆動させているため、除去した海生物も流水とともに流れていくこととなり、除去した海生物が下流側の設備に悪影響を与えたり、配管外に排出されてしまい環境上問題が生じることがある。
【0006】
本発明の目的は、海中での作業負担も少なく、除去した海生物が設備や環境上問題が生じることのない配管内の海生物除去装置及び配管内の海生物除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を要旨とするものである。
[1]海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する配管内の海生物除去装置であって、
前記配管の内径よりも小さい径を有し、前記配管の内部で回転可能な長さを有する胴体部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するキャスターを有し、前記胴体部をスライド方向に案内する案内部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、
前記胴体部のスライド方向端部に設けられ、牽引装置が接続される牽引部とを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0008】
[2][1]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記海生物除去部は、前記胴体部の外周回りに設けられ、先端に前記ブレードが設けられた複数のブレード部材を備え、
前記複数のブレード部材のそれぞれは、前記胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[3][2]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記ブレード部材は、前記胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部及び前記ブレードの間に介在して設けられ、当接する前記配管の内面形状に応じて前記ブレードを突没可能とする緩衝部とを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[4][3]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記ブレード部材は、前記ブレードの突出方向位置を調整する調整部を備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0009】
[5][2]乃至[4]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部は、前記胴体部の外周回りに設けられ、先端にキャスターが設けられた複数の脚部材を備え、
前記複数の脚部材のそれぞれは、前記胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[6][5]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記脚部材は、前記胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部の先端に設けられる前記キャスターとを備え、
前記キャスターは、前記配管の内面に当接する車輪と、この車輪を回転可能に保持し、当接する前記配管の内面形状に応じて、前記車輪を突没可能に保持するホルダとを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0010】
[7][2]乃至[6]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記海生物除去部は、前記胴体部の長さ方向に複数設けられ、
複数の前記海生物除去部のうち、いずれか1つの海生物除去部を形成する複数の前記ブレード部材の配置が、他の海生物除去部を形成する複数の前記ブレード部材の配置とずれており、前記複数の海生物除去部全体で前記配管の内面全周にブレードが当接することを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[8][7]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部は、前記複数の海生物除去部のうち、2つの海生物除去部の間に設けられていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0011】
[9][1]乃至[8]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部のキャスターは、前記胴体部の下方で少なくとも2つのキャスターが前記配管内の内面に当接することを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[10][1]乃至[9]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記胴体部は、両端が開口された円筒状体から形成されていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[11][10]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記胴体部は、円筒状体の内面から突出し、円筒状体の内周方向に延びるリング状のリブを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0012】
[12][1]乃至[11]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記牽引部は、前記胴体部のスライド方向両端に設けられ、前記胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けられる複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかであることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0013】
[13][1]乃至[12]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記配管には、前記配管の内外を貫通するマンホールが設けられ、
前記胴体部は、このマンホールの径よりも小さな径であることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[14][1]乃至[13]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記牽引装置は、前記配管の外部に設けられ、前記牽引部を構成する複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかと接続されるワイヤを備えたウィンチであり、
前記マンホールに固定され、前記ワイヤを前記マンホールを介して前記配管の外部に案内するワイヤ案内部を備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0014】
[15]海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する海生物除去装置を用いた配管内の海生物除去方法であって、
前記海生物除去装置は、
前記配管の内径よりも小さい径を有する胴体部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するキャスターを有し、前記胴体部をスライド方向に案内する案内部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、
前記胴体部のスライド方向端部に設けられ、前記配管の外部に設けられた牽引装置が接続される牽引部とを備え、
前記海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、
前記牽引装置を駆動させ、前記海生物除去装置を前記配管の内部でスライド方向に往復動作させることにより、前記ブレードで前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす工程と、
削り落とされた海生物を回収して、前記マンホールを介して前記配管の外部に搬出する工程とを実施することを特徴とする配管内の海生物除去方法。
【0015】
[16][15]に記載の配管内の海生物除去方法において、
前記胴体部は、前記マンホールの径よりも小さい径を有し、前記配管の内部で回転可能な長さを有し、
前記案内部及び前記海生物除去部は、前記胴体部に対して着脱可能、又は折りたたみ可能に構成され、
前記海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、前記海生物を削り落とす工程との間で、
前記胴体部を搬入した後、前記胴体部の長さ方向を前記配管のスライド方向に揃える工程と、
前記案内部のキャスター、前記海生物除去部のブレードを前記配管の内面に当接させる工程とを実施することを特徴とする配管内の海生物除去方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部、すなわち例えば船上に設けた牽引装置により、海生物除去装置を配管内で往復動作させることができるので、海中の配管内に付着した海生物を削り落とすことができ、その間ダイバー等の海中作業者がスクレーパーで海生物を削り落とす作業を省くことができ、ダイバー等の海中での作業負担を少なくすることができる。
また、削り落とした海生物は、ポンプ等の流体搬送装置を海上に設置し、ポンプにホース等の集水管を接続し、ダイバー等の海中作業者が配管の内部に入り込んで回収して海上に運び出すことができるので、削り落とした海生物が配管下流側の設備に悪影響を与えることもなく、配管の外部の環境を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る配管内の海生物除去装置の構造を表す側面図。
【図2】前記実施形態における配管内の海生物除去装置の案内部の構造を表す正面図。
【図3】前記実施形態における配管内の海生物除去装置の脚部材の構造を表す側面図及び正面図。
【図4】前記実施形態における配管内の海生物除去装置の海生物除去部の構造を表す正面図。
【図5】前記実施形態における配管内の海生物除去装置の海生物除去部の構造を表す正面図。
【図6】前記実施形態における配管内の海生物除去装置のブレード部材の構造を表す側面図及び正面図。
【図7】前記実施形態における配管内の海生物除去装置のワイヤ案内部の構造を表す平面図。
【図8】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図9】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図10】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図11】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図12】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図13】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図14】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、海生物除去部は、胴体部の外周回りに設けられ、先端に前記ブレードが設けられた複数のブレード部材を備え、複数のブレード部材のそれぞれは、胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっており、案内部は、胴体部の外周回りに設けられ、先端にキャスターが設けられた複数の脚部材を備え、複数の脚部材のそれぞれは、胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっているのが好ましい。
この発明によれば、複数のブレード部材や複数の脚部材を胴体部に対して、取り外したり、折りたたんだ状態で配管の内部に搬入することができる。従って、配管に設けられたマンホール等を介して海生物除去装置を搬入することができ、搬入後、海中作業者が配管の内部で海生物の除去装置を組み立て、配管内の海生物の除去作業を行うことができる(2、5の効果)。
【0019】
本発明では、胴体部の外周面に突出して固定されるアーム部と、このアーム部及びブレードの間に介在して設けられ、当接する配管の内面形状に応じてブレードを突没可能とする緩衝部とを備えているのが好ましい。
ここで、緩衝部は、ブレードを配管の内面にある程度の力で付勢するものであり、例えば、アーム部とブレードの間にコイルバネやゴム等の弾性部材等の付勢部材で構成することができる。
この発明によれば、緩衝部によりブレードが配管の内面形状に応じて突没するようになっているので、配管の内面に多少の凹凸や変形があってもブレードを配管の内面に当接させることができ、付着した海生物を確実に除去することができる(3の効果)。
【0020】
本発明の配管内の海生物除去装置では、ブレード部材は、ブレードの突出方向位置を調整する調整部を備えているのが好ましい。
ここで、調整部は、例えば、アーム部側基端部分に雄ネジが形成され、先端にブレードが設けられ棒状部材で構成することができ、棒状部材の基端部分でナット等の螺合部材によってアーム部に固定するものが好ましい。
この発明によれば、ブレード部材が調整部を備えていることにより、ブレードの突出方向位置を調整することができるため、胴体部が配管の内部で配管中心からずれた位置に配置されても、ブレードの突出方向位置を調整して、配管内面にブレードを当接させて海生物を削り落とすことができる(4の効果)。
【0021】
本発明では、脚部材は、胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部の先端に設けられるキャスターとを備え、キャスターは、前記配管の内面に当接する車輪と、この車輪を回転可能に保持し、当接する前記配管の内面形状に応じて、前記車輪を突没可能に保持するホルダとを備えているのが好ましい。
この発明によれば、ホルダが配管の内面形状に応じて車輪を突没可能に保持しているので、配管の内面形状に多少の凹凸や変形があってもスムースに海生物除去装置をスライドさせることができる(6の効果)。
【0022】
本発明では、海生物除去部は、胴体部の長さ方向に複数設けられ、複数の海生物除去部のうち、いずれか1つの海生物除去部を形成する複数のブレード部材の配置が、他の海生物除去部を形成する複数のブレード部材の配置とずれており、複数の海生物除去部全体で配管の内面全周にブレードが当接しているのが好ましい。
この発明によれば、複数の海生物除去部全体で配管の内面全周にブレードを当接させることにより、配管の内面に付着した海生物すべてを削り落とすことができるので、配管の内面に付着した海生物を確実に除去することができる(7の効果)。
【0023】
本発明では、案内部は、複数の海生物除去部のうち、2つの海生物除去部の間に設けられているのが好ましい。
この発明によれば、海生物除去装置を配管内部でスライドさせる際、両側のいずれかの海生物除去部で海生物が削り落とされた配管の内面にキャスターを当接させてスライドさせることができるので、海生物除去装置を配管の内部でスムースにスライドさせることができる(8の効果)。
【0024】
本発明では、案内部のキャスターは、胴体部の下方で少なくとも2つのキャスターが配管内の内面に当接するのが好ましい。
この発明によれば、少なくとも2つのキャスターが胴体部の下方で配管の内面に当接することにより、少なくとも2つのキャスターで胴体部を支持することが可能となり、配管の内部における海生物除去装置の組み立て作業を軽減することができる(9の効果)。
【0025】
本発明では、胴体部は、両端が開口された円筒状体から形成されているのが好ましい。
この発明によれば、胴体部が円筒状体から形成されることにより、円筒状体内部に配管内の海水を流通させることができるので、ウィンチ等の牽引手段で海生物除去装置を配管の内部でスライドさせる際、海水の抵抗を少なくすることができ、少ない牽引力で海生物除去装置をスライドさせることができる。
また、配管の内部で海生物除去装置による海生物の除去作業時、ダイバー等の海中作業者がいる場合に、円筒状体内部の空間を緊急時の避難空間とすることができる(10の効果)。
【0026】
本発明の配管内の海生物除去装置では、円筒状体の内面から突出し、円筒状体の内周方向に延びるリング状のリブを備えているのが好ましい。
この発明によれば、胴体部がリング状のリブを備えていることにより、胴体部を補強することができるので、胴体部を形成する円筒状体の板厚を薄くすることができ、胴体部を軽量化してダイバー等の海中作業者の作業負担を軽減することができる(11の効果)。
【0027】
本発明では、牽引部は、前記胴体部のスライド方向両端に設けられ、胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けられる複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかであるのが好ましい。
ここで、紐状部材、帯状部材、鎖状部材は、牽引作業で用いられる種々の部材を採用することが可能であり、例えば、鋼製ワイヤ、スリングロープ、チェーン等を採用することができる。
この発明によれば、牽引部が胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けられる複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかから形成されていることにより、配管の外部からウィンチ等によって海生物除去装置を牽引してスライドさせることができる上、紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材が胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けることにより、胴体部を安定して牽引することができる(12の効果)。
【0028】
本発明では、配管内には、配管の内外を貫通するマンホールが設けられ、胴体部は、このマンホールの径よりも小さな径であるのが好ましい。
この発明によれば、海生物除去装置の胴体部の径が配管に設けたマンホールの径よりも小さくなっているので、このマンホールを介して胴体部を搬入することができる。
また、胴体部をこのような大きさとすれば、配管の内部でダイバー等の海中作業者が取り扱いやすいので、海生物除去装置の組立性が向上する(13の効果)。
【0029】
本発明では、牽引装置は、配管の外部に設けられ、牽引部を構成する複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかと接続されるワイヤを備えたウィンチであり、マンホールに固定され、ワイヤをマンホールを介して配管の外部に案内するワイヤ案内部を備えているのが好ましい。
この発明によれば、ワイヤ案内部を備えていることにより、ワイヤが捩れたり、配管の内部で引っかかったりすることを防止できるため、配管の外部からウィンチ等の牽引装置で効率的に牽引することができ、海生物除去作業を効率的に行うことができる(14の効果)。
【0030】
本発明の配管内の海生物除去方法は、海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する海生物除去装置を用いた配管内の海生物除去方法であって、海生物除去装置は、配管の内径よりも小さい径を有する胴体部と、胴体部の外周回りに設けられ、配管の内面に当接するキャスターを有し、胴体部をスライド方向に案内する案内部と、胴体部の外周回りに設けられ、配管の内面に当接するブレードを有し、配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、胴体部のスライド方向端部に設けられ、配管の外部に設けられた牽引装置が接続される牽引部とを備え、海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、牽引装置を駆動させ、海生物除去装置を配管の内部でスライド方向に往復動作させることにより、ブレードで前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす工程と、削り落とされた海生物を回収して、前記マンホールを介して前記配管の外部に搬出する工程とを実施することを特徴とする。
【0031】
ここで、削り落とされた海生物の回収及び搬出は、ポンプ等の流体搬送装置を海上に設置し、これにホース等の集水管を接続して、ダイバー等の海中作業者が海水とともに解説物を回収して配管の外部に搬出すればよい。
この発明によれば、配管の内面に付着した海生物は、外部の牽引装置で牽引することにより、海生物除去装置を配管の内部でスライドさせるだけで除去することができるため、ダイバー等の海中作業者は、削り取られた海生物を回収、搬出するだけでよく、海中作業者の作業負担を軽減できる上、削り落とした海生物が下流側の設備に悪影響を与えることもなく、配管の外部の環境を損なうこともない(15の効果)。
【0032】
本発明では、胴体部は、マンホールの径よりも小さい径を有し、配管の内部で回転可能な長さを有し、案内部及び海生物除去部は、胴体部に対して着脱可能、又は折りたたみ可能に構成され、海生物除去装置を配管の内部に搬入する工程と、海生物を削り落とす工程との間で、胴体部を搬入した後、胴体部の長さ方向を前記配管のスライド方向に揃える工程と、案内部のキャスター、海生物除去部のブレードを前記配管の内面に当接させる工程とを実施するのが好ましい。
この発明によれば、海生物除去装置の搬入後、海中作業者が配管の内部で海生物の除去装置を組み立てることができるので、各パーツを小型化して、海中作業者の搬入作業の軽減を図ることができる(16の効果)。
【0033】
[発明の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[1]海生物除去装置の構造
図1には、製鉄所、発電所等の設備における冷却用の海水を取水する取水配管1が示されており、この取水配管1には、ダイバー等の海中作業者が取水配管1の内部を点検するためのマンホール2が設けられている。
この取水配管1の内部には、取水配管1の内面に付着した海生物を除去する配管の海生物除去装置3が配置されている。
海生物除去装置3は、胴体部4と、案内部5と、海生物除去部6と、牽引部7と、ワイヤ案内部8とを備えて構成され、マンホール2に取り付けられたワイヤ案内部8を介して、ワイヤ9によって海生物除去装置3を外部から牽引することにより、取水配管1内をスライドして、取水配管1の内面に付着した海生物を除去することができる。
【0034】
[1-1]胴体部4の詳細構造
胴体部4は、両端が開口された円筒状の鋼管から構成され、案内部5、海生物除去部6を取り付けるための胴体である。胴体部4の直径は、案内部5、海生物除去部6を取り付けられるように、取水配管1の内径よりも小さな径とされ、さらに好ましくは、マンホール2から搬入可能なようにマンホール2の内径よりも小さな径とされている。
また、この胴体部4の内径は、海中作業者の緊急避難経路としても利用できるように、例えば、800mm〜850mm程度の内径とするのが好ましい。
この胴体部4の外周面には、吊り下げ用ブラケット41、牽引部取付ブラケット42、脚部材取付用ブラケット44、及びブレード部材取付用ブラケット45(図1では図示略)が突設され、円筒状体の内周面には、リング状の補強リブ43が設けられている。
吊り下げ用ブラケット41は、胴体部4の外周面に溶接等で接合した孔開きプレートからなり、取水配管1の内部で海中作業者が胴体部4の姿勢を変更する際、マンホール2外部のウィンチ等の牽引装置からのワイヤをこの吊り下げ用ブラケット41に取り付け、胴体部4を吊り下げることにより、海生物除去装置3の組立時の海中作業者の作業負荷を軽減する。
【0035】
牽引部取付ブラケット42は、胴体部4の端部開口両端に溶接等で接合した孔開きプレートからなり、互いに90度の角度をなすように、胴体部4の外周回りに四箇所設けられ、牽引部7で牽引した際、胴体部4に均等な牽引力が作用する配置となっている。
補強リブ43は、胴体部4の円筒状体の内面から突出して設けられ、円筒状体の径方向平面に沿って延びるリング状のリブから構成されている。この補強リブ43は、胴体部4の開口端に二箇所、胴体部4の略中央に一箇所の計三箇所設けられており、胴体部4に外力が作用した際、胴体部4の変形を防止する補強部材として機能する。
脚部材取付用ブラケット44は、詳しくは後述するが、胴体部4の外周面に溶接等で接合した孔開きプレートからなり、案内部5を構成する脚部材51を取り付ける部分である。
【0036】
[1-2]案内部5の詳細構造
案内部5は、図1に示されるように、海生物除去装置3のスライド方向に二箇所設けられている。この案内部5は、取水配管1の内部でスライドさせる際、胴体部4の円筒中心が取水配管1の中心に沿ってスライドするように案内する。二箇所の案内部5は、海生物除去装置3のスライド方向から見た図2に示されるように、胴体部4の外周面に放射状に突出する複数の脚部材51から構成されている。
脚部材51は、固定アーム部52と、キャスター53とを備え、それぞれのキャスター53が取水配管1の内面に当接するようになっている。胴体部4の外周面における複数の脚部材51の配置は、取水配管1の上方向内面(図2の上方向)、及び左右方向内面(図2の左右方向)で一箇所ずつ、取水配管1の下方向内面でキャスター53が二箇所当接する配置となっている。
尚、複数の脚部材51の本数、配置は、これに限られるわけではなく、より多くの脚部材51を取り付けられるようにしてもよいが、少なくとも胴体部4の下方には、2本以上の脚部材51を配置し、胴体部4を下方から支持するような構成とするのが好ましい。
【0037】
図3(A)、(B)に示されるように、脚部材51の固定アーム部52は角形鋼管から構成され、突出方向基端には、図示を略したが、角形鋼管の互いに対向する一対の側面に、それぞれ二箇所の孔が形成されている。固定アーム部52は、その孔の部分で脚部材取付用ブラケット44に形成された孔に挿通されるボルトナット441によって海生物除去装置3のスライド方向に二箇所で締結される。
尚、取り付けに際しては、脚部材取付用ブラケット44に形成された孔の一方にボルトナット441を取り付け、脚部材51を回転可能に取り付けた後、脚部材51を、取り付け部分を中心に回転させ、位置合わせをした後、孔の他方にボルトナット441を取り付け、すべてのボルトナット441を締結する。このため、脚部材取付用ブラケット44には、図示を略したが、脚部材51の回転を所定の位置で規制するストッパが設けられている。
固定アーム部52の突出方向先端にはフランジ板521が設けられ、このフランジ板521には、図示を略したが、ボルトナット等によりキャスター53が締結される。
キャスター53は、取水配管1の内面に当接する車輪54と、この車輪54を回転可能に保持するホルダ55とを備える。
【0038】
車輪54は、鋼製の円板体の外周に、樹脂製のタイヤが巻装された構成であり、円板体の中心でホルダ55に回転可能に保持される。
ホルダ55は、フランジ板521に固定される固定部551と、車輪54を保持する車輪保持部552とを備え、車輪保持部552は、ヒンジ553を介して固定部551に対して回動可能に取り付けられている。
固定部551は、鋼製プレートを略U字状に折り曲げ、又は組み合わせた形状であり、U字状体の内部には、コイルバネ554が収納されている。
このコイルバネ554は、車輪保持部552を固定アーム部52の突出方向に付勢しており、取水配管1の内面に凹凸や変形があった場合には、コイルバネ554が弾性変形し、車輪保持部552を回動させ、車輪54を突没させることにより、緩衝機能を確保している。
【0039】
[1-3]海生物除去部6の詳細構造
海生物除去部6は、図1に示すように、胴体部4のスライド方向両端に二箇所設けられ、取水配管1の内面に付着した海生物を削り落とす部分である。尚、前述した案内部5はこれら2つの海生物除去部6の間に設けられ、案内部5のキャスター53は、海生物除去部6によって海生物が削り落とされた取水配管1の内面に当接するようになっている。
二箇所の海生物除去部6のそれぞれは、胴体部4の外周面の回りに突出する複数のブレード部材61から構成されている。
ブレード部材61は、固定アーム部62と、緩衝部63と、ブレード64とを備え、それぞれのブレード64が取水配管1の内面に当接するようになっている。胴体部4の外周面における複数のブレード部材61の配置は、次のようになっている。
すなわち、図1における左側端部の海生物除去部6は、図4に示されるように、胴体部4の鉛直上方を起点として、胴体部4の外周面回りに均等なピッチでブレード部材61が9本配置される。
【0040】
一方、図1における右側端部の海生物除去部6は、図5に示されるように、胴体部4の鉛直下方を起点として、胴体部4の外周面回りに均等なピッチでブレード部材61が9本配置される。
図4の海生物除去部6のブレード部材61の配置と、図5のブレード部材61の配置とは、スライド方向から見たときに、一方の海生物除去部6の2つのブレード部材61の間に、他方の海生物除去部6のブレード部材61が配置される、千鳥状の配置となっている。
つまり、それぞれの海生物除去部6におけるブレード部材61の配置は位相がずれた状態で組み合わされ、両方の海生物除去部6全体をスライド方向で組み合わせると、すべてのブレード64が取水配管1の内面全周に当接するように配置される。
尚、それぞれの海生物除去部6における複数のブレード部材61の本数、配置はこれに限られるわけではなく、ピッチも同じである必要もないが、互いの海生物除去部6の位相をずらすだけで、すべてのブレード64が取水配管1の内面全周に当接させることができる点を考慮すれば、均等なピッチにブレード部材61を配置するのが好ましい。
【0041】
図6(A)、(B)に示されるように、ブレード部材61の固定アーム部62は、フランジの延出方向を、海生物除去装置3のスライド方向に揃えて取り付けられるH形鋼から構成されている。固定アーム部62のウェブ621の延出方向両端には、切欠孔622が形成されている。この切欠孔622は、海生物除去装置3のスライド方向移動時に、水流の抵抗を極力少なくするために形成されている。
また、この固定アーム部62のフランジ面の基端部分には、図示を略したが、二箇所孔が形成されている。
胴体部4には、固定アーム部62のフランジ面を挟み込むように設けられた一対のブレード部材取付用ブラケット45が形成されており、固定アーム部62は、ブレード部材取付用ブラケット45に形成された2つの孔に取り付けられるボルトナット451によって締結される。
固定アーム部62の突出方向先端には、エンドプレート623が設けられ、このエンドプレート623には、緩衝部63が取り付けられる。
【0042】
緩衝部63は、エンドプレート623上に立設される外側鋼管631と、この外側鋼管631内に内装される内側鋼管632とを備えた二重管から構成され、海生物除去装置3のスライド方向に一対配置される。
内装される内側鋼管632は、基端部分がプレートで塞がれた有底管として構成され、底部に形成された孔には、長ボルト633が挿通されている。
長ボルト633には、外側鋼管631の内部に配置されるコイルバネ634が挿通されており、長ボルト633の端部は、エンドプレート623を貫通し、その下でダブルナット635が螺合している。
また、一対の外側鋼管631は、鋼製の連結プレート636で連結されて一体化され、さらに、連結プレート636の中央部には、直角三角形状の補強プレート637が溶接により接合され、直角三角形の底辺はエンドプレート623に溶接により接合されている。
さらに、内側鋼管632の突出方向先端には、ブレード64が溶接により固定されている。
【0043】
ブレード64は、取水配管1の円筒状内面に沿った円弧状の鋼板から構成されている。このブレード64のスライド方向両端には、テーパ641が形成されている。テーパ641は、海生物除去装置3のスライド方向先端に向かうに従って薄くなっていくように形成され、取水配管1の内面に付着した海生物を削り落としやすくする機能を確保する。
【0044】
このような緩衝部63及びブレード64において、コイルバネ634は、内側鋼管632を介して、ブレード64を取水配管1の内面側に付勢している。
そして、取水配管1の内面に凹凸や変形があった場合、コイルバネ634が弾性変形し、ブレード64の当接位置を変更して取水配管1の内面形状に追従する緩衝機能を確保している。
また、長ボルト633の端部に設けられたダブルナット635は、長ボルト633との螺合位置を変更することにより、ブレード64の突出量を調整する調整部としての機能を確保する。
【0045】
[1-4]牽引部7の詳細構造
牽引部7は、図1に示されるように、胴体部4のスライド方向両端に取り付けられ、牽引部取付ブラケット42に取り付けられる複数のチェーン71と、チェーン71の略中央に挿通されるシャックル72と、シャックル72の端部に取り付けられる動滑車73とを備え、ワイヤ9からの牽引力を胴体部4に伝達し、海生物除去装置3を取水配管1の内部でスライドさせる部分である。
本実施形態では、チェーン71は2本とされ、それぞれが、胴体部4の円筒中心回りに互いに対向配置される一対の牽引部取付ブラケット42に端部が連結されている。
シャックル72は、連結方向を軸として互いに回転可能な一対のリングで構成され、一方のリングにはチェーン71が挿通され、他方のリングには動滑車73が取り付けられる。このシャックル72は、海生物除去装置3の牽引中にワイヤ9に捻れ等の力が作用した場合であっても、一方のリングに対して、他方のリングが回転することにより、捻れ力を吸収し、胴体部4に捻れ力を作用させないために設けられている。
動滑車73には、ワイヤ9が挿通され、ワイヤ9の先端は、後述するワイヤ固定ブラケット86に固定されている。この動滑車73は、海生物除去装置3の牽引させる力を1/2にすることにより、ワイヤ9への荷重負担を軽減するために設けられている。
【0046】
[1-5]ワイヤ案内部8の詳細構造
ワイヤ案内部8は、図1に示されるように、マンホール2に設けられ、横架材81と、垂直材82と、斜材83と、上部滑車84と、下部滑車85とを備え、後述する海上船舶に設けられたウィンチで巻き取り、繰り出されるワイヤ9を、マンホール2を介して取水配管1の内部に案内する部分である。
図7に示されるように、横架材81は、マンホール2の上端のフランジ21に2本架設される。この横架材81はC形鋼から構成されている。それぞれの横架材81は、C形鋼の垂直部を互いに向き合わせて配置され、2本の横架材81の間には、上部滑車84が回転自在に保持される。
また、上部滑車84の取り付け位置の近傍には、垂直材82が接合固定されている。
【0047】
垂直材82は、2本の横架材81のそれぞれから垂下しており、その下端近傍には、上部滑車84と同様に下部滑車85が2本の垂直材82によって回転自在に保持されている。また、2本の垂直材82のうち、一方の垂直材82には、ワイヤ9が固定されるワイヤ固定ブラケット86が設けられている。
斜材83は、Lアングルから構成され、横架材81と垂直材82の間に架設され、ワイヤを介して伝達される牽引力によって、横架材81、垂直材82が変形することのないよう補強するために設けられている。
【0048】
[2]海生物除去装置3による海生物除去方法
次に、前述した海生物除去装置3を用いた取水配管1の内面に付着した海生物の除去方法について説明する。
まず、図8に示されるように、作業監視船11の監視下で、作業船12を工区近傍に操船し、海中作業者13がマンホール2の取り付け位置に潜り、水中溶断等によって取水配管1の頂部に孔を開け、続けてマンホール2を搬送し、取水配管1に形成された孔にセットする。尚、取水配管1が土砂等で埋まっている場合、エアーリフト、ジェットポンプ等で土砂を取り除くが、取り除いた土砂が周囲の環境を汚染しないように、汚濁防止シート14等を予め設置しておくのが好ましい。
【0049】
次に、図9に示すように、海中作業者13は、水中溶接機等を用いてマンホール2を取水配管1に溶接接合する。マンホール2の水中での溶接は、作業船12に設けられたウィンチ15を利用して、マンホール2をワイヤ9で吊り下げ、2名の海中作業者13の内、一方の海中作業者13がマンホール2を保持しつつ、他方の海中作業者13が溶接作業を行う。尚、このようなマンホール2は、取水配管1の屈曲部等を起点として、取水配管1の直線性が確保できるようなピッチで設けるのが好ましい。
【0050】
マンホール2の設置作業が終了したら、海生物除去装置3を取水配管1内に搬入する。
図10に示されるように、作業船12のウィンチ15により、胴体部4を長さ方向が鉛直方向に向くようにしてマンホール2の開口から取水配管1内に胴体部4を搬入する。この際、ワイヤ9を牽引部7のシャックル72(図11では図示略)に取り付ければ、胴体部4の長さ方向は鉛直方向を向く。
胴体部4が取水配管1内に搬入されたら、図11に示されるように、胴体部4を長さ方向に回転させる。この際、ウィンチ15からもう1本ワイヤ9を繰り出し、胴体部4の吊り下げ用ブラケット41に取り付け、吊り下げ用ブラケット41に取り付けられたワイヤ9を巻き取ることにより、胴体部4は容易に回転する。
【0051】
胴体部4が横向きになったら、脚部材51、ブレード部材61の取り付けを開始する。
まず、吊り下げ用ブラケット41(図12では図示略)に取り付けられたワイヤ9を巻き取ることにより、胴体部4を回転させ、図12(A)に示されるように、胴体部4の下方に配置される脚部材51の取り付け位置が上向きになるように回転させ、脚部材51の取り付けを行う。
次に、図12(B)に示されるように、ワイヤ9の巻き取りを行い、胴体部4を回転させ、2本の脚部材51を下方に配置して、胴体部4が取水配管1の配管中心となる位置に持ち上げる。その後、図12(C)に示されるように、順次水平方向、鉛直上方向の脚部材51を取り付け、案内部5を形成する。
案内部5が形成されたら、ブレード部材61を胴体部4に取り付け、海生物除去部6を胴体部4に形成する(図示略)。
【0052】
海生物除去装置3の組み立てが終了したら、マンホール2にワイヤ案内部8を設置するとともに、ワイヤ9をワイヤ案内部8の滑車84、85、牽引部7の動滑車73に引き通し、ワイヤ9の端部をワイヤ固定ブラケット86に取り付ける。
このワイヤ9の取り付けは、図13に示されるように、海生物除去装置3を挟む2つのマンホール2で実施する。
【0053】
以上が終了したら、海生物除去装置3による海生物の除去を開始する。図13に示されるように、海生物除去装置3は、2台の作業船12上に設けられたウィンチ15のワイヤ9に取り付けられ、一方の作業船12からのワイヤ9を巻き取る場合、他方の作業船12からのワイヤ9を繰り出すようにウィンチ15を駆動する。
このようにすれば、ウィンチ15の牽引力によって海生物除去装置3は取水配管1内を移動し、取水配管1の内面に付着された海生物がブレード64によって除去される。
【0054】
海生物除去装置3による付着した海生物の削り落としが終了したら、海生物除去装置3を分解して、取水配管1の内部から搬出する。
搬出後は、図14に示されるように、海中作業者13が再び取水配管1の内部に入り、スクレーパー等で残った付着物を除去するとともに、エアーリフト、ジェットポンプ等によって削り取られた海生物を回収して、海上に搬送する。尚、海水を戻す際、回収した海生物で海水が汚れるのを防止するために、汚濁防止シート14等を予め設置しておくのが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1…取水配管、2…マンホール、3…海生物除去装置、4…胴体部、5…案内部、6…海生物除去部、7…牽引部、8…ワイヤ案内部、9…ワイヤ、11…作業監視船、12…作業船、13…海中作業者、14…汚濁防止シート、15…ウィンチ、21…フランジ、41…吊り下げ用ブラケット、42…牽引部取付ブラケット、43…補強リブ、44…脚部材取付用ブラケット、45…ブレード部材取付用ブラケット、51…脚部材、52…固定アーム部、53…キャスター、54…車輪、55…ホルダ、61…ブレード部材、62…固定アーム部、63…緩衝部、64…ブレード、71…チェーン、72…シャックル、73…動滑車、81…横架材、82…垂直材、83…斜材、84…上部滑車、85…下部滑車、86…ワイヤ固定ブラケット、441…ボルトナット、451…ボルトナット、521…フランジ板、551…固定部、552…車輪保持部、553…ヒンジ、554…コイルバネ、621…ウェブ、622…切欠孔、623…エンドプレート、631…外側鋼管、632…内側鋼管、633…長ボルト、634…コイルバネ、635…ダブルナット、636…連結プレート、637…補強プレート、641…テーパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内の海生物除去装置及び配管内の海生物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や発電所においては、大量の海水を冷却水として用いるために、海中に配管を設置し、海水を取水している。
このような取水用の配管内には、長年の取水により、フジツボ等の貝や、海藻等が付着し、配管内の管路を狭くしてしまい、取水量が減少してしまうという問題がある。
従来、配管内に付着した海生物を除去するために、配管内の海水を抜いて、作業者が配管内部に入り、スクレーパー等で付着した海生物を除去することが行われていた。
【0003】
しかしながら、このような方法では、作業者は、作業がしづらく、悪臭等の作業環境下で行わなければならない。また、除去作業期間は取水ができないという問題がある。
さらに、抜水を行わずやる場合には、ダイバー等の海中作業者の人力作業が必要となり、専門技能を要するという問題がある。
このため、例えば、配管内に無人の海生物除去装置を設置し、配管内の流水の力を利用して海生物除去装置を駆動し、付着した海生物を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−75879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術では、海生物除去装置を配管内の流水の力を利用して駆動させているため、除去した海生物も流水とともに流れていくこととなり、除去した海生物が下流側の設備に悪影響を与えたり、配管外に排出されてしまい環境上問題が生じることがある。
【0006】
本発明の目的は、海中での作業負担も少なく、除去した海生物が設備や環境上問題が生じることのない配管内の海生物除去装置及び配管内の海生物除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を要旨とするものである。
[1]海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する配管内の海生物除去装置であって、
前記配管の内径よりも小さい径を有し、前記配管の内部で回転可能な長さを有する胴体部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するキャスターを有し、前記胴体部をスライド方向に案内する案内部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、
前記胴体部のスライド方向端部に設けられ、牽引装置が接続される牽引部とを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0008】
[2][1]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記海生物除去部は、前記胴体部の外周回りに設けられ、先端に前記ブレードが設けられた複数のブレード部材を備え、
前記複数のブレード部材のそれぞれは、前記胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[3][2]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記ブレード部材は、前記胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部及び前記ブレードの間に介在して設けられ、当接する前記配管の内面形状に応じて前記ブレードを突没可能とする緩衝部とを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[4][3]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記ブレード部材は、前記ブレードの突出方向位置を調整する調整部を備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0009】
[5][2]乃至[4]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部は、前記胴体部の外周回りに設けられ、先端にキャスターが設けられた複数の脚部材を備え、
前記複数の脚部材のそれぞれは、前記胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[6][5]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記脚部材は、前記胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部の先端に設けられる前記キャスターとを備え、
前記キャスターは、前記配管の内面に当接する車輪と、この車輪を回転可能に保持し、当接する前記配管の内面形状に応じて、前記車輪を突没可能に保持するホルダとを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0010】
[7][2]乃至[6]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記海生物除去部は、前記胴体部の長さ方向に複数設けられ、
複数の前記海生物除去部のうち、いずれか1つの海生物除去部を形成する複数の前記ブレード部材の配置が、他の海生物除去部を形成する複数の前記ブレード部材の配置とずれており、前記複数の海生物除去部全体で前記配管の内面全周にブレードが当接することを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[8][7]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部は、前記複数の海生物除去部のうち、2つの海生物除去部の間に設けられていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0011】
[9][1]乃至[8]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部のキャスターは、前記胴体部の下方で少なくとも2つのキャスターが前記配管内の内面に当接することを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[10][1]乃至[9]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記胴体部は、両端が開口された円筒状体から形成されていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[11][10]に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記胴体部は、円筒状体の内面から突出し、円筒状体の内周方向に延びるリング状のリブを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0012】
[12][1]乃至[11]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記牽引部は、前記胴体部のスライド方向両端に設けられ、前記胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けられる複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかであることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0013】
[13][1]乃至[12]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記配管には、前記配管の内外を貫通するマンホールが設けられ、
前記胴体部は、このマンホールの径よりも小さな径であることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
[14][1]乃至[13]のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記牽引装置は、前記配管の外部に設けられ、前記牽引部を構成する複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかと接続されるワイヤを備えたウィンチであり、
前記マンホールに固定され、前記ワイヤを前記マンホールを介して前記配管の外部に案内するワイヤ案内部を備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【0014】
[15]海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する海生物除去装置を用いた配管内の海生物除去方法であって、
前記海生物除去装置は、
前記配管の内径よりも小さい径を有する胴体部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するキャスターを有し、前記胴体部をスライド方向に案内する案内部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、
前記胴体部のスライド方向端部に設けられ、前記配管の外部に設けられた牽引装置が接続される牽引部とを備え、
前記海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、
前記牽引装置を駆動させ、前記海生物除去装置を前記配管の内部でスライド方向に往復動作させることにより、前記ブレードで前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす工程と、
削り落とされた海生物を回収して、前記マンホールを介して前記配管の外部に搬出する工程とを実施することを特徴とする配管内の海生物除去方法。
【0015】
[16][15]に記載の配管内の海生物除去方法において、
前記胴体部は、前記マンホールの径よりも小さい径を有し、前記配管の内部で回転可能な長さを有し、
前記案内部及び前記海生物除去部は、前記胴体部に対して着脱可能、又は折りたたみ可能に構成され、
前記海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、前記海生物を削り落とす工程との間で、
前記胴体部を搬入した後、前記胴体部の長さ方向を前記配管のスライド方向に揃える工程と、
前記案内部のキャスター、前記海生物除去部のブレードを前記配管の内面に当接させる工程とを実施することを特徴とする配管内の海生物除去方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部、すなわち例えば船上に設けた牽引装置により、海生物除去装置を配管内で往復動作させることができるので、海中の配管内に付着した海生物を削り落とすことができ、その間ダイバー等の海中作業者がスクレーパーで海生物を削り落とす作業を省くことができ、ダイバー等の海中での作業負担を少なくすることができる。
また、削り落とした海生物は、ポンプ等の流体搬送装置を海上に設置し、ポンプにホース等の集水管を接続し、ダイバー等の海中作業者が配管の内部に入り込んで回収して海上に運び出すことができるので、削り落とした海生物が配管下流側の設備に悪影響を与えることもなく、配管の外部の環境を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る配管内の海生物除去装置の構造を表す側面図。
【図2】前記実施形態における配管内の海生物除去装置の案内部の構造を表す正面図。
【図3】前記実施形態における配管内の海生物除去装置の脚部材の構造を表す側面図及び正面図。
【図4】前記実施形態における配管内の海生物除去装置の海生物除去部の構造を表す正面図。
【図5】前記実施形態における配管内の海生物除去装置の海生物除去部の構造を表す正面図。
【図6】前記実施形態における配管内の海生物除去装置のブレード部材の構造を表す側面図及び正面図。
【図7】前記実施形態における配管内の海生物除去装置のワイヤ案内部の構造を表す平面図。
【図8】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図9】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図10】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図11】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図12】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図13】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【図14】前記実施形態における配管内の海生物除去方法の一部を表す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、海生物除去部は、胴体部の外周回りに設けられ、先端に前記ブレードが設けられた複数のブレード部材を備え、複数のブレード部材のそれぞれは、胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっており、案内部は、胴体部の外周回りに設けられ、先端にキャスターが設けられた複数の脚部材を備え、複数の脚部材のそれぞれは、胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっているのが好ましい。
この発明によれば、複数のブレード部材や複数の脚部材を胴体部に対して、取り外したり、折りたたんだ状態で配管の内部に搬入することができる。従って、配管に設けられたマンホール等を介して海生物除去装置を搬入することができ、搬入後、海中作業者が配管の内部で海生物の除去装置を組み立て、配管内の海生物の除去作業を行うことができる(2、5の効果)。
【0019】
本発明では、胴体部の外周面に突出して固定されるアーム部と、このアーム部及びブレードの間に介在して設けられ、当接する配管の内面形状に応じてブレードを突没可能とする緩衝部とを備えているのが好ましい。
ここで、緩衝部は、ブレードを配管の内面にある程度の力で付勢するものであり、例えば、アーム部とブレードの間にコイルバネやゴム等の弾性部材等の付勢部材で構成することができる。
この発明によれば、緩衝部によりブレードが配管の内面形状に応じて突没するようになっているので、配管の内面に多少の凹凸や変形があってもブレードを配管の内面に当接させることができ、付着した海生物を確実に除去することができる(3の効果)。
【0020】
本発明の配管内の海生物除去装置では、ブレード部材は、ブレードの突出方向位置を調整する調整部を備えているのが好ましい。
ここで、調整部は、例えば、アーム部側基端部分に雄ネジが形成され、先端にブレードが設けられ棒状部材で構成することができ、棒状部材の基端部分でナット等の螺合部材によってアーム部に固定するものが好ましい。
この発明によれば、ブレード部材が調整部を備えていることにより、ブレードの突出方向位置を調整することができるため、胴体部が配管の内部で配管中心からずれた位置に配置されても、ブレードの突出方向位置を調整して、配管内面にブレードを当接させて海生物を削り落とすことができる(4の効果)。
【0021】
本発明では、脚部材は、胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部の先端に設けられるキャスターとを備え、キャスターは、前記配管の内面に当接する車輪と、この車輪を回転可能に保持し、当接する前記配管の内面形状に応じて、前記車輪を突没可能に保持するホルダとを備えているのが好ましい。
この発明によれば、ホルダが配管の内面形状に応じて車輪を突没可能に保持しているので、配管の内面形状に多少の凹凸や変形があってもスムースに海生物除去装置をスライドさせることができる(6の効果)。
【0022】
本発明では、海生物除去部は、胴体部の長さ方向に複数設けられ、複数の海生物除去部のうち、いずれか1つの海生物除去部を形成する複数のブレード部材の配置が、他の海生物除去部を形成する複数のブレード部材の配置とずれており、複数の海生物除去部全体で配管の内面全周にブレードが当接しているのが好ましい。
この発明によれば、複数の海生物除去部全体で配管の内面全周にブレードを当接させることにより、配管の内面に付着した海生物すべてを削り落とすことができるので、配管の内面に付着した海生物を確実に除去することができる(7の効果)。
【0023】
本発明では、案内部は、複数の海生物除去部のうち、2つの海生物除去部の間に設けられているのが好ましい。
この発明によれば、海生物除去装置を配管内部でスライドさせる際、両側のいずれかの海生物除去部で海生物が削り落とされた配管の内面にキャスターを当接させてスライドさせることができるので、海生物除去装置を配管の内部でスムースにスライドさせることができる(8の効果)。
【0024】
本発明では、案内部のキャスターは、胴体部の下方で少なくとも2つのキャスターが配管内の内面に当接するのが好ましい。
この発明によれば、少なくとも2つのキャスターが胴体部の下方で配管の内面に当接することにより、少なくとも2つのキャスターで胴体部を支持することが可能となり、配管の内部における海生物除去装置の組み立て作業を軽減することができる(9の効果)。
【0025】
本発明では、胴体部は、両端が開口された円筒状体から形成されているのが好ましい。
この発明によれば、胴体部が円筒状体から形成されることにより、円筒状体内部に配管内の海水を流通させることができるので、ウィンチ等の牽引手段で海生物除去装置を配管の内部でスライドさせる際、海水の抵抗を少なくすることができ、少ない牽引力で海生物除去装置をスライドさせることができる。
また、配管の内部で海生物除去装置による海生物の除去作業時、ダイバー等の海中作業者がいる場合に、円筒状体内部の空間を緊急時の避難空間とすることができる(10の効果)。
【0026】
本発明の配管内の海生物除去装置では、円筒状体の内面から突出し、円筒状体の内周方向に延びるリング状のリブを備えているのが好ましい。
この発明によれば、胴体部がリング状のリブを備えていることにより、胴体部を補強することができるので、胴体部を形成する円筒状体の板厚を薄くすることができ、胴体部を軽量化してダイバー等の海中作業者の作業負担を軽減することができる(11の効果)。
【0027】
本発明では、牽引部は、前記胴体部のスライド方向両端に設けられ、胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けられる複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかであるのが好ましい。
ここで、紐状部材、帯状部材、鎖状部材は、牽引作業で用いられる種々の部材を採用することが可能であり、例えば、鋼製ワイヤ、スリングロープ、チェーン等を採用することができる。
この発明によれば、牽引部が胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けられる複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかから形成されていることにより、配管の外部からウィンチ等によって海生物除去装置を牽引してスライドさせることができる上、紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材が胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けることにより、胴体部を安定して牽引することができる(12の効果)。
【0028】
本発明では、配管内には、配管の内外を貫通するマンホールが設けられ、胴体部は、このマンホールの径よりも小さな径であるのが好ましい。
この発明によれば、海生物除去装置の胴体部の径が配管に設けたマンホールの径よりも小さくなっているので、このマンホールを介して胴体部を搬入することができる。
また、胴体部をこのような大きさとすれば、配管の内部でダイバー等の海中作業者が取り扱いやすいので、海生物除去装置の組立性が向上する(13の効果)。
【0029】
本発明では、牽引装置は、配管の外部に設けられ、牽引部を構成する複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかと接続されるワイヤを備えたウィンチであり、マンホールに固定され、ワイヤをマンホールを介して配管の外部に案内するワイヤ案内部を備えているのが好ましい。
この発明によれば、ワイヤ案内部を備えていることにより、ワイヤが捩れたり、配管の内部で引っかかったりすることを防止できるため、配管の外部からウィンチ等の牽引装置で効率的に牽引することができ、海生物除去作業を効率的に行うことができる(14の効果)。
【0030】
本発明の配管内の海生物除去方法は、海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する海生物除去装置を用いた配管内の海生物除去方法であって、海生物除去装置は、配管の内径よりも小さい径を有する胴体部と、胴体部の外周回りに設けられ、配管の内面に当接するキャスターを有し、胴体部をスライド方向に案内する案内部と、胴体部の外周回りに設けられ、配管の内面に当接するブレードを有し、配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、胴体部のスライド方向端部に設けられ、配管の外部に設けられた牽引装置が接続される牽引部とを備え、海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、牽引装置を駆動させ、海生物除去装置を配管の内部でスライド方向に往復動作させることにより、ブレードで前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす工程と、削り落とされた海生物を回収して、前記マンホールを介して前記配管の外部に搬出する工程とを実施することを特徴とする。
【0031】
ここで、削り落とされた海生物の回収及び搬出は、ポンプ等の流体搬送装置を海上に設置し、これにホース等の集水管を接続して、ダイバー等の海中作業者が海水とともに解説物を回収して配管の外部に搬出すればよい。
この発明によれば、配管の内面に付着した海生物は、外部の牽引装置で牽引することにより、海生物除去装置を配管の内部でスライドさせるだけで除去することができるため、ダイバー等の海中作業者は、削り取られた海生物を回収、搬出するだけでよく、海中作業者の作業負担を軽減できる上、削り落とした海生物が下流側の設備に悪影響を与えることもなく、配管の外部の環境を損なうこともない(15の効果)。
【0032】
本発明では、胴体部は、マンホールの径よりも小さい径を有し、配管の内部で回転可能な長さを有し、案内部及び海生物除去部は、胴体部に対して着脱可能、又は折りたたみ可能に構成され、海生物除去装置を配管の内部に搬入する工程と、海生物を削り落とす工程との間で、胴体部を搬入した後、胴体部の長さ方向を前記配管のスライド方向に揃える工程と、案内部のキャスター、海生物除去部のブレードを前記配管の内面に当接させる工程とを実施するのが好ましい。
この発明によれば、海生物除去装置の搬入後、海中作業者が配管の内部で海生物の除去装置を組み立てることができるので、各パーツを小型化して、海中作業者の搬入作業の軽減を図ることができる(16の効果)。
【0033】
[発明の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[1]海生物除去装置の構造
図1には、製鉄所、発電所等の設備における冷却用の海水を取水する取水配管1が示されており、この取水配管1には、ダイバー等の海中作業者が取水配管1の内部を点検するためのマンホール2が設けられている。
この取水配管1の内部には、取水配管1の内面に付着した海生物を除去する配管の海生物除去装置3が配置されている。
海生物除去装置3は、胴体部4と、案内部5と、海生物除去部6と、牽引部7と、ワイヤ案内部8とを備えて構成され、マンホール2に取り付けられたワイヤ案内部8を介して、ワイヤ9によって海生物除去装置3を外部から牽引することにより、取水配管1内をスライドして、取水配管1の内面に付着した海生物を除去することができる。
【0034】
[1-1]胴体部4の詳細構造
胴体部4は、両端が開口された円筒状の鋼管から構成され、案内部5、海生物除去部6を取り付けるための胴体である。胴体部4の直径は、案内部5、海生物除去部6を取り付けられるように、取水配管1の内径よりも小さな径とされ、さらに好ましくは、マンホール2から搬入可能なようにマンホール2の内径よりも小さな径とされている。
また、この胴体部4の内径は、海中作業者の緊急避難経路としても利用できるように、例えば、800mm〜850mm程度の内径とするのが好ましい。
この胴体部4の外周面には、吊り下げ用ブラケット41、牽引部取付ブラケット42、脚部材取付用ブラケット44、及びブレード部材取付用ブラケット45(図1では図示略)が突設され、円筒状体の内周面には、リング状の補強リブ43が設けられている。
吊り下げ用ブラケット41は、胴体部4の外周面に溶接等で接合した孔開きプレートからなり、取水配管1の内部で海中作業者が胴体部4の姿勢を変更する際、マンホール2外部のウィンチ等の牽引装置からのワイヤをこの吊り下げ用ブラケット41に取り付け、胴体部4を吊り下げることにより、海生物除去装置3の組立時の海中作業者の作業負荷を軽減する。
【0035】
牽引部取付ブラケット42は、胴体部4の端部開口両端に溶接等で接合した孔開きプレートからなり、互いに90度の角度をなすように、胴体部4の外周回りに四箇所設けられ、牽引部7で牽引した際、胴体部4に均等な牽引力が作用する配置となっている。
補強リブ43は、胴体部4の円筒状体の内面から突出して設けられ、円筒状体の径方向平面に沿って延びるリング状のリブから構成されている。この補強リブ43は、胴体部4の開口端に二箇所、胴体部4の略中央に一箇所の計三箇所設けられており、胴体部4に外力が作用した際、胴体部4の変形を防止する補強部材として機能する。
脚部材取付用ブラケット44は、詳しくは後述するが、胴体部4の外周面に溶接等で接合した孔開きプレートからなり、案内部5を構成する脚部材51を取り付ける部分である。
【0036】
[1-2]案内部5の詳細構造
案内部5は、図1に示されるように、海生物除去装置3のスライド方向に二箇所設けられている。この案内部5は、取水配管1の内部でスライドさせる際、胴体部4の円筒中心が取水配管1の中心に沿ってスライドするように案内する。二箇所の案内部5は、海生物除去装置3のスライド方向から見た図2に示されるように、胴体部4の外周面に放射状に突出する複数の脚部材51から構成されている。
脚部材51は、固定アーム部52と、キャスター53とを備え、それぞれのキャスター53が取水配管1の内面に当接するようになっている。胴体部4の外周面における複数の脚部材51の配置は、取水配管1の上方向内面(図2の上方向)、及び左右方向内面(図2の左右方向)で一箇所ずつ、取水配管1の下方向内面でキャスター53が二箇所当接する配置となっている。
尚、複数の脚部材51の本数、配置は、これに限られるわけではなく、より多くの脚部材51を取り付けられるようにしてもよいが、少なくとも胴体部4の下方には、2本以上の脚部材51を配置し、胴体部4を下方から支持するような構成とするのが好ましい。
【0037】
図3(A)、(B)に示されるように、脚部材51の固定アーム部52は角形鋼管から構成され、突出方向基端には、図示を略したが、角形鋼管の互いに対向する一対の側面に、それぞれ二箇所の孔が形成されている。固定アーム部52は、その孔の部分で脚部材取付用ブラケット44に形成された孔に挿通されるボルトナット441によって海生物除去装置3のスライド方向に二箇所で締結される。
尚、取り付けに際しては、脚部材取付用ブラケット44に形成された孔の一方にボルトナット441を取り付け、脚部材51を回転可能に取り付けた後、脚部材51を、取り付け部分を中心に回転させ、位置合わせをした後、孔の他方にボルトナット441を取り付け、すべてのボルトナット441を締結する。このため、脚部材取付用ブラケット44には、図示を略したが、脚部材51の回転を所定の位置で規制するストッパが設けられている。
固定アーム部52の突出方向先端にはフランジ板521が設けられ、このフランジ板521には、図示を略したが、ボルトナット等によりキャスター53が締結される。
キャスター53は、取水配管1の内面に当接する車輪54と、この車輪54を回転可能に保持するホルダ55とを備える。
【0038】
車輪54は、鋼製の円板体の外周に、樹脂製のタイヤが巻装された構成であり、円板体の中心でホルダ55に回転可能に保持される。
ホルダ55は、フランジ板521に固定される固定部551と、車輪54を保持する車輪保持部552とを備え、車輪保持部552は、ヒンジ553を介して固定部551に対して回動可能に取り付けられている。
固定部551は、鋼製プレートを略U字状に折り曲げ、又は組み合わせた形状であり、U字状体の内部には、コイルバネ554が収納されている。
このコイルバネ554は、車輪保持部552を固定アーム部52の突出方向に付勢しており、取水配管1の内面に凹凸や変形があった場合には、コイルバネ554が弾性変形し、車輪保持部552を回動させ、車輪54を突没させることにより、緩衝機能を確保している。
【0039】
[1-3]海生物除去部6の詳細構造
海生物除去部6は、図1に示すように、胴体部4のスライド方向両端に二箇所設けられ、取水配管1の内面に付着した海生物を削り落とす部分である。尚、前述した案内部5はこれら2つの海生物除去部6の間に設けられ、案内部5のキャスター53は、海生物除去部6によって海生物が削り落とされた取水配管1の内面に当接するようになっている。
二箇所の海生物除去部6のそれぞれは、胴体部4の外周面の回りに突出する複数のブレード部材61から構成されている。
ブレード部材61は、固定アーム部62と、緩衝部63と、ブレード64とを備え、それぞれのブレード64が取水配管1の内面に当接するようになっている。胴体部4の外周面における複数のブレード部材61の配置は、次のようになっている。
すなわち、図1における左側端部の海生物除去部6は、図4に示されるように、胴体部4の鉛直上方を起点として、胴体部4の外周面回りに均等なピッチでブレード部材61が9本配置される。
【0040】
一方、図1における右側端部の海生物除去部6は、図5に示されるように、胴体部4の鉛直下方を起点として、胴体部4の外周面回りに均等なピッチでブレード部材61が9本配置される。
図4の海生物除去部6のブレード部材61の配置と、図5のブレード部材61の配置とは、スライド方向から見たときに、一方の海生物除去部6の2つのブレード部材61の間に、他方の海生物除去部6のブレード部材61が配置される、千鳥状の配置となっている。
つまり、それぞれの海生物除去部6におけるブレード部材61の配置は位相がずれた状態で組み合わされ、両方の海生物除去部6全体をスライド方向で組み合わせると、すべてのブレード64が取水配管1の内面全周に当接するように配置される。
尚、それぞれの海生物除去部6における複数のブレード部材61の本数、配置はこれに限られるわけではなく、ピッチも同じである必要もないが、互いの海生物除去部6の位相をずらすだけで、すべてのブレード64が取水配管1の内面全周に当接させることができる点を考慮すれば、均等なピッチにブレード部材61を配置するのが好ましい。
【0041】
図6(A)、(B)に示されるように、ブレード部材61の固定アーム部62は、フランジの延出方向を、海生物除去装置3のスライド方向に揃えて取り付けられるH形鋼から構成されている。固定アーム部62のウェブ621の延出方向両端には、切欠孔622が形成されている。この切欠孔622は、海生物除去装置3のスライド方向移動時に、水流の抵抗を極力少なくするために形成されている。
また、この固定アーム部62のフランジ面の基端部分には、図示を略したが、二箇所孔が形成されている。
胴体部4には、固定アーム部62のフランジ面を挟み込むように設けられた一対のブレード部材取付用ブラケット45が形成されており、固定アーム部62は、ブレード部材取付用ブラケット45に形成された2つの孔に取り付けられるボルトナット451によって締結される。
固定アーム部62の突出方向先端には、エンドプレート623が設けられ、このエンドプレート623には、緩衝部63が取り付けられる。
【0042】
緩衝部63は、エンドプレート623上に立設される外側鋼管631と、この外側鋼管631内に内装される内側鋼管632とを備えた二重管から構成され、海生物除去装置3のスライド方向に一対配置される。
内装される内側鋼管632は、基端部分がプレートで塞がれた有底管として構成され、底部に形成された孔には、長ボルト633が挿通されている。
長ボルト633には、外側鋼管631の内部に配置されるコイルバネ634が挿通されており、長ボルト633の端部は、エンドプレート623を貫通し、その下でダブルナット635が螺合している。
また、一対の外側鋼管631は、鋼製の連結プレート636で連結されて一体化され、さらに、連結プレート636の中央部には、直角三角形状の補強プレート637が溶接により接合され、直角三角形の底辺はエンドプレート623に溶接により接合されている。
さらに、内側鋼管632の突出方向先端には、ブレード64が溶接により固定されている。
【0043】
ブレード64は、取水配管1の円筒状内面に沿った円弧状の鋼板から構成されている。このブレード64のスライド方向両端には、テーパ641が形成されている。テーパ641は、海生物除去装置3のスライド方向先端に向かうに従って薄くなっていくように形成され、取水配管1の内面に付着した海生物を削り落としやすくする機能を確保する。
【0044】
このような緩衝部63及びブレード64において、コイルバネ634は、内側鋼管632を介して、ブレード64を取水配管1の内面側に付勢している。
そして、取水配管1の内面に凹凸や変形があった場合、コイルバネ634が弾性変形し、ブレード64の当接位置を変更して取水配管1の内面形状に追従する緩衝機能を確保している。
また、長ボルト633の端部に設けられたダブルナット635は、長ボルト633との螺合位置を変更することにより、ブレード64の突出量を調整する調整部としての機能を確保する。
【0045】
[1-4]牽引部7の詳細構造
牽引部7は、図1に示されるように、胴体部4のスライド方向両端に取り付けられ、牽引部取付ブラケット42に取り付けられる複数のチェーン71と、チェーン71の略中央に挿通されるシャックル72と、シャックル72の端部に取り付けられる動滑車73とを備え、ワイヤ9からの牽引力を胴体部4に伝達し、海生物除去装置3を取水配管1の内部でスライドさせる部分である。
本実施形態では、チェーン71は2本とされ、それぞれが、胴体部4の円筒中心回りに互いに対向配置される一対の牽引部取付ブラケット42に端部が連結されている。
シャックル72は、連結方向を軸として互いに回転可能な一対のリングで構成され、一方のリングにはチェーン71が挿通され、他方のリングには動滑車73が取り付けられる。このシャックル72は、海生物除去装置3の牽引中にワイヤ9に捻れ等の力が作用した場合であっても、一方のリングに対して、他方のリングが回転することにより、捻れ力を吸収し、胴体部4に捻れ力を作用させないために設けられている。
動滑車73には、ワイヤ9が挿通され、ワイヤ9の先端は、後述するワイヤ固定ブラケット86に固定されている。この動滑車73は、海生物除去装置3の牽引させる力を1/2にすることにより、ワイヤ9への荷重負担を軽減するために設けられている。
【0046】
[1-5]ワイヤ案内部8の詳細構造
ワイヤ案内部8は、図1に示されるように、マンホール2に設けられ、横架材81と、垂直材82と、斜材83と、上部滑車84と、下部滑車85とを備え、後述する海上船舶に設けられたウィンチで巻き取り、繰り出されるワイヤ9を、マンホール2を介して取水配管1の内部に案内する部分である。
図7に示されるように、横架材81は、マンホール2の上端のフランジ21に2本架設される。この横架材81はC形鋼から構成されている。それぞれの横架材81は、C形鋼の垂直部を互いに向き合わせて配置され、2本の横架材81の間には、上部滑車84が回転自在に保持される。
また、上部滑車84の取り付け位置の近傍には、垂直材82が接合固定されている。
【0047】
垂直材82は、2本の横架材81のそれぞれから垂下しており、その下端近傍には、上部滑車84と同様に下部滑車85が2本の垂直材82によって回転自在に保持されている。また、2本の垂直材82のうち、一方の垂直材82には、ワイヤ9が固定されるワイヤ固定ブラケット86が設けられている。
斜材83は、Lアングルから構成され、横架材81と垂直材82の間に架設され、ワイヤを介して伝達される牽引力によって、横架材81、垂直材82が変形することのないよう補強するために設けられている。
【0048】
[2]海生物除去装置3による海生物除去方法
次に、前述した海生物除去装置3を用いた取水配管1の内面に付着した海生物の除去方法について説明する。
まず、図8に示されるように、作業監視船11の監視下で、作業船12を工区近傍に操船し、海中作業者13がマンホール2の取り付け位置に潜り、水中溶断等によって取水配管1の頂部に孔を開け、続けてマンホール2を搬送し、取水配管1に形成された孔にセットする。尚、取水配管1が土砂等で埋まっている場合、エアーリフト、ジェットポンプ等で土砂を取り除くが、取り除いた土砂が周囲の環境を汚染しないように、汚濁防止シート14等を予め設置しておくのが好ましい。
【0049】
次に、図9に示すように、海中作業者13は、水中溶接機等を用いてマンホール2を取水配管1に溶接接合する。マンホール2の水中での溶接は、作業船12に設けられたウィンチ15を利用して、マンホール2をワイヤ9で吊り下げ、2名の海中作業者13の内、一方の海中作業者13がマンホール2を保持しつつ、他方の海中作業者13が溶接作業を行う。尚、このようなマンホール2は、取水配管1の屈曲部等を起点として、取水配管1の直線性が確保できるようなピッチで設けるのが好ましい。
【0050】
マンホール2の設置作業が終了したら、海生物除去装置3を取水配管1内に搬入する。
図10に示されるように、作業船12のウィンチ15により、胴体部4を長さ方向が鉛直方向に向くようにしてマンホール2の開口から取水配管1内に胴体部4を搬入する。この際、ワイヤ9を牽引部7のシャックル72(図11では図示略)に取り付ければ、胴体部4の長さ方向は鉛直方向を向く。
胴体部4が取水配管1内に搬入されたら、図11に示されるように、胴体部4を長さ方向に回転させる。この際、ウィンチ15からもう1本ワイヤ9を繰り出し、胴体部4の吊り下げ用ブラケット41に取り付け、吊り下げ用ブラケット41に取り付けられたワイヤ9を巻き取ることにより、胴体部4は容易に回転する。
【0051】
胴体部4が横向きになったら、脚部材51、ブレード部材61の取り付けを開始する。
まず、吊り下げ用ブラケット41(図12では図示略)に取り付けられたワイヤ9を巻き取ることにより、胴体部4を回転させ、図12(A)に示されるように、胴体部4の下方に配置される脚部材51の取り付け位置が上向きになるように回転させ、脚部材51の取り付けを行う。
次に、図12(B)に示されるように、ワイヤ9の巻き取りを行い、胴体部4を回転させ、2本の脚部材51を下方に配置して、胴体部4が取水配管1の配管中心となる位置に持ち上げる。その後、図12(C)に示されるように、順次水平方向、鉛直上方向の脚部材51を取り付け、案内部5を形成する。
案内部5が形成されたら、ブレード部材61を胴体部4に取り付け、海生物除去部6を胴体部4に形成する(図示略)。
【0052】
海生物除去装置3の組み立てが終了したら、マンホール2にワイヤ案内部8を設置するとともに、ワイヤ9をワイヤ案内部8の滑車84、85、牽引部7の動滑車73に引き通し、ワイヤ9の端部をワイヤ固定ブラケット86に取り付ける。
このワイヤ9の取り付けは、図13に示されるように、海生物除去装置3を挟む2つのマンホール2で実施する。
【0053】
以上が終了したら、海生物除去装置3による海生物の除去を開始する。図13に示されるように、海生物除去装置3は、2台の作業船12上に設けられたウィンチ15のワイヤ9に取り付けられ、一方の作業船12からのワイヤ9を巻き取る場合、他方の作業船12からのワイヤ9を繰り出すようにウィンチ15を駆動する。
このようにすれば、ウィンチ15の牽引力によって海生物除去装置3は取水配管1内を移動し、取水配管1の内面に付着された海生物がブレード64によって除去される。
【0054】
海生物除去装置3による付着した海生物の削り落としが終了したら、海生物除去装置3を分解して、取水配管1の内部から搬出する。
搬出後は、図14に示されるように、海中作業者13が再び取水配管1の内部に入り、スクレーパー等で残った付着物を除去するとともに、エアーリフト、ジェットポンプ等によって削り取られた海生物を回収して、海上に搬送する。尚、海水を戻す際、回収した海生物で海水が汚れるのを防止するために、汚濁防止シート14等を予め設置しておくのが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1…取水配管、2…マンホール、3…海生物除去装置、4…胴体部、5…案内部、6…海生物除去部、7…牽引部、8…ワイヤ案内部、9…ワイヤ、11…作業監視船、12…作業船、13…海中作業者、14…汚濁防止シート、15…ウィンチ、21…フランジ、41…吊り下げ用ブラケット、42…牽引部取付ブラケット、43…補強リブ、44…脚部材取付用ブラケット、45…ブレード部材取付用ブラケット、51…脚部材、52…固定アーム部、53…キャスター、54…車輪、55…ホルダ、61…ブレード部材、62…固定アーム部、63…緩衝部、64…ブレード、71…チェーン、72…シャックル、73…動滑車、81…横架材、82…垂直材、83…斜材、84…上部滑車、85…下部滑車、86…ワイヤ固定ブラケット、441…ボルトナット、451…ボルトナット、521…フランジ板、551…固定部、552…車輪保持部、553…ヒンジ、554…コイルバネ、621…ウェブ、622…切欠孔、623…エンドプレート、631…外側鋼管、632…内側鋼管、633…長ボルト、634…コイルバネ、635…ダブルナット、636…連結プレート、637…補強プレート、641…テーパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する配管内の海生物除去装置であって、
前記配管の内径よりも小さい径を有し、前記配管の内部で回転可能な長さを有する胴体部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するキャスターを有し、前記胴体部をスライド方向に案内する案内部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、
前記胴体部のスライド方向端部に設けられ、牽引装置が接続される牽引部とを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記海生物除去部は、前記胴体部の外周回りに設けられ、先端に前記ブレードが設けられた複数のブレード部材を備え、
前記複数のブレード部材のそれぞれは、前記胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記ブレード部材は、前記胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部及び前記ブレードの間に介在して設けられ、当接する前記配管の内面形状に応じて前記ブレードを突没可能とする緩衝部とを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項4】
請求項3に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記ブレード部材は、前記ブレードの突出方向位置を調整する調整部を備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部は、前記胴体部の外周回りに設けられ、先端にキャスターが設けられた複数の脚部材を備え、
前記複数の脚部材のそれぞれは、前記胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項6】
請求項5に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記脚部材は、前記胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部の先端に設けられる前記キャスターとを備え、
前記キャスターは、前記配管の内面に当接する車輪と、この車輪を回転可能に保持し、当接する前記配管の内面形状に応じて、前記車輪を突没可能に保持するホルダとを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記海生物除去部は、前記胴体部の長さ方向に複数設けられ、
複数の前記海生物除去部のうち、いずれか1つの海生物除去部を形成する複数の前記ブレード部材の配置が、他の海生物除去部を形成する複数の前記ブレード部材の配置とずれており、前記複数の海生物除去部全体で前記配管の内面全周にブレードが当接することを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項8】
請求項7に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部は、前記複数の海生物除去部のうち、2つの海生物除去部の間に設けられていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部のキャスターは、前記胴体部の下方で少なくとも2つのキャスターが前記配管内の内面に当接することを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記胴体部は、両端が開口された円筒状体から形成されていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項11】
請求項10に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記胴体部は、円筒状体の内面から突出し、円筒状体の内周方向に延びるリング状のリブを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記牽引部は、前記胴体部のスライド方向両端に設けられ、前記胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けられる複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかであることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記配管には、前記配管の内外を貫通するマンホールが設けられ、
前記胴体部は、このマンホールの径よりも小さな径であることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記牽引装置は、前記配管の外部に設けられ、前記牽引部を構成する複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかと接続されるワイヤを備えたウィンチであり、
前記マンホールに固定され、前記ワイヤを前記マンホールを介して前記配管の外部に案内するワイヤ案内部を備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項15】
海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する海生物除去装置を用いた配管内の海生物除去方法であって、
前記海生物除去装置は、
前記配管の内径よりも小さい径を有する胴体部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するキャスターを有し、前記胴体部をスライド方向に案内する案内部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、
前記胴体部のスライド方向端部に設けられ、前記配管の外部に設けられた牽引装置が接続される牽引部とを備え、
前記海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、
前記牽引装置を駆動させ、前記海生物除去装置を前記配管の内部でスライド方向に往復動作させることにより、前記ブレードで前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす工程と、
削り落とされた海生物を回収して、前記マンホールを介して前記配管の外部に搬出する工程とを実施することを特徴とする配管内の海生物除去方法。
【請求項16】
請求項15に記載の配管内の海生物除去方法において、
前記胴体部は、前記マンホールの径よりも小さい径を有し、前記配管の内部で回転可能な長さを有し、
前記案内部及び前記海生物除去部は、前記胴体部に対して着脱可能、又は折りたたみ可能に構成され、
前記海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、前記海生物を削り落とす工程との間で、
前記胴体部を搬入した後、前記胴体部の長さ方向を前記配管のスライド方向に揃える工程と、
前記案内部のキャスター、前記海生物除去部のブレードを前記配管の内面に当接させる工程とを実施することを特徴とする配管内の海生物除去方法。
【請求項1】
海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する配管内の海生物除去装置であって、
前記配管の内径よりも小さい径を有し、前記配管の内部で回転可能な長さを有する胴体部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するキャスターを有し、前記胴体部をスライド方向に案内する案内部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、
前記胴体部のスライド方向端部に設けられ、牽引装置が接続される牽引部とを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記海生物除去部は、前記胴体部の外周回りに設けられ、先端に前記ブレードが設けられた複数のブレード部材を備え、
前記複数のブレード部材のそれぞれは、前記胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記ブレード部材は、前記胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部及び前記ブレードの間に介在して設けられ、当接する前記配管の内面形状に応じて前記ブレードを突没可能とする緩衝部とを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項4】
請求項3に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記ブレード部材は、前記ブレードの突出方向位置を調整する調整部を備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部は、前記胴体部の外周回りに設けられ、先端にキャスターが設けられた複数の脚部材を備え、
前記複数の脚部材のそれぞれは、前記胴体部に対して着脱可能又は折りたたみ可能となっていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項6】
請求項5に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記脚部材は、前記胴体部の外周面から突出するアーム部と、このアーム部の先端に設けられる前記キャスターとを備え、
前記キャスターは、前記配管の内面に当接する車輪と、この車輪を回転可能に保持し、当接する前記配管の内面形状に応じて、前記車輪を突没可能に保持するホルダとを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記海生物除去部は、前記胴体部の長さ方向に複数設けられ、
複数の前記海生物除去部のうち、いずれか1つの海生物除去部を形成する複数の前記ブレード部材の配置が、他の海生物除去部を形成する複数の前記ブレード部材の配置とずれており、前記複数の海生物除去部全体で前記配管の内面全周にブレードが当接することを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項8】
請求項7に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部は、前記複数の海生物除去部のうち、2つの海生物除去部の間に設けられていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記案内部のキャスターは、前記胴体部の下方で少なくとも2つのキャスターが前記配管内の内面に当接することを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記胴体部は、両端が開口された円筒状体から形成されていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項11】
請求項10に記載の配管内の海生物除去装置において、
前記胴体部は、円筒状体の内面から突出し、円筒状体の内周方向に延びるリング状のリブを備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記牽引部は、前記胴体部のスライド方向両端に設けられ、前記胴体部の外周回りに均等なピッチで取り付けられる複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかであることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記配管には、前記配管の内外を貫通するマンホールが設けられ、
前記胴体部は、このマンホールの径よりも小さな径であることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の配管内の海生物除去装置において、
前記牽引装置は、前記配管の外部に設けられ、前記牽引部を構成する複数の紐状部材、帯状部材、及び鎖状部材のいずれかと接続されるワイヤを備えたウィンチであり、
前記マンホールに固定され、前記ワイヤを前記マンホールを介して前記配管の外部に案内するワイヤ案内部を備えていることを特徴とする配管内の海生物除去装置。
【請求項15】
海中の配管の内部をスライドすることにより、前記配管の内面に付着した海生物を除去する海生物除去装置を用いた配管内の海生物除去方法であって、
前記海生物除去装置は、
前記配管の内径よりも小さい径を有する胴体部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するキャスターを有し、前記胴体部をスライド方向に案内する案内部と、
前記胴体部の外周回りに設けられ、前記配管の内面に当接するブレードを有し、前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす海生物除去部と、
前記胴体部のスライド方向端部に設けられ、前記配管の外部に設けられた牽引装置が接続される牽引部とを備え、
前記海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、
前記牽引装置を駆動させ、前記海生物除去装置を前記配管の内部でスライド方向に往復動作させることにより、前記ブレードで前記配管の内面に付着した海生物を削り落とす工程と、
削り落とされた海生物を回収して、前記マンホールを介して前記配管の外部に搬出する工程とを実施することを特徴とする配管内の海生物除去方法。
【請求項16】
請求項15に記載の配管内の海生物除去方法において、
前記胴体部は、前記マンホールの径よりも小さい径を有し、前記配管の内部で回転可能な長さを有し、
前記案内部及び前記海生物除去部は、前記胴体部に対して着脱可能、又は折りたたみ可能に構成され、
前記海生物除去装置を前記配管の内部に搬入する工程と、前記海生物を削り落とす工程との間で、
前記胴体部を搬入した後、前記胴体部の長さ方向を前記配管のスライド方向に揃える工程と、
前記案内部のキャスター、前記海生物除去部のブレードを前記配管の内面に当接させる工程とを実施することを特徴とする配管内の海生物除去方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−217945(P2012−217945A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87111(P2011−87111)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
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