説明

配管材及びこの配管材を用いた配管工法

【課題】通管具を用いることなく、床、天井、壁などに設けた小さい開口部から床下、天井裏、壁内などの暗くて狭い空間内に配管材先端位置を確認しつつ障害物を避けながら容易に配管施工することができる配管材の管端部構造及びこの管端部構造を備えた配管材を用いた配管工法を提供する。
【解決手段】配管材Aの管本体の一端に蓄光顔料を含むポリエチレン樹脂からなる管端キャップ2aを装着するとともに、管端キャップ2a部分に光を照射して蓄光状態として管端キャップ2aを発光する状態にして、管端キャップ2aを先頭にして床200に設けられた開口部210を介して管端キャップ2aの位置を視認しながら、床下の空間に配管材Aを送り込み配管材Aを目的位置まで通管するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、床下、天井裏、壁内などに配管された既設の給水給湯配管や排水配管の更新用として好適な配管材及びこの配管材を用いた配管工法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設住宅は、築20年以上を越えると、配管が劣化、もしくは堆積物により通水量が低下、さらには水質悪化などの問題が発生する。そのため、かかる問題を解消するために、既設の給水給湯配管や排水配管を新たに更新敷設する配管工事を行う必要がある。
しかし、上記給水給湯配管や排水配管は、床下、壁内、天井裏等の狭い配管空間を通って配管施工されており、作業者が配管空間に入り込んで作業することは困難である。
【0003】
そこで、更新配管を配管施工する方法としては、室内壁の壁面に沿って更新配管を配管施工する方法や、床、天井あるいは壁の更新配管施工位置の、床板、天井板あるいは壁板を剥がし、更新配管を施工する部分の配管空間を、室内側に配管空間を露出させて配管施工を行い、配管施工後、新しい床板、天井板あるいは壁板を剥がした位置に取り付けて床、天井あるいは壁を復旧する方法が採られる。
しかし、前者の方法を採った場合、狭小作業が無く施工を早期に完了できるが、更新配管が室内側に露出するため、室内空間が狭くなるとともに、例え、更新配管の周囲を配管カバーなどで覆うようにして、更新配管がむき出しにならない状態としても居住室内の美観は悪くなるという問題がある。
【0004】
一方、後者の方法を採った場合、狭小作業が無く施工完了後の美観の問題は少ないものの、工事が大掛かりとなって工期とコストがかかってしまうという問題がある。
そこで、図9に示すように、作業者が腕及び顔を床下の臨ませることができる程度の小さい開口部210を床(または、壁面や天井面でもよい)200の一部に設け(蓋付きの点検窓を備えている場合は、蓋を開放して点検窓を開口部として利用してもよい)、この開口部210から作業者300が床下を覗き込みながら手で更新用の配管材100を床下の空間内に送り込み、空間内の目的位置まで通管する方法もある。
ところが、かかる配管工法を採用した場合、以下のような問題がある。
すなわち、通管する配管材が、合成樹脂管であると、配施工時に配管材表面に傷が付くと、内部を流れる流体圧で破損して漏水が発生する虞があるが、床下、天井裏、壁内などは、既設ガス管、電設管、基礎、梁、狭小の根太や柱などの配管材の表面を傷つけやすい障害物が多い。また。配管材を既設配管を撤去することによって、基礎、梁、柱等に残った孔を利用して通管する場合も考えられるが、床下、天井裏、壁内などは、光が差し込みにくく、暗いため、配管材の先端をこのような孔に上記障害物を避けつつ通すことは非常に困難である。
懐中電灯等で通管する配管材の先端位置を照らすようにしても上記障害物が陰になって配管材の先端が確認できず、目標の孔等が小さい場合、うまく孔に通過させにくい。
【0005】
そこで、配管材の通管に先立って、配管材の通管部に一方の開口部から他方の開口部に向かって通管具を先に通したのち、この通管具の後端に通管しようとする配管材の先端を固定し、他方の開口部側から通管具を引き出しつつ、配管材を通管する配管工法が提案されている(特許文献1参照)。
すなわち、この通管具を用いた配管工法では、上記のように予め通管部に通された通管具によって配管材が先導されるため、配管材が障害物によって傷つくことを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−196149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記配管工法の場合、配管材を通管する前に、通管具を通す作業を余分に行わなければならず、作業時間が長くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、上記のような通管具を用いることなく、床、天井、壁などに設けた小さい開口部から床下、天井裏、壁内などの暗くて狭い空間内に配管材先端位置を確認しつつ障害物を避けながら容易に配管施工することができる配管材の管端部構造及びこの管端部構造を備えた配管材を用いた配管工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかる配管材の管端部構造(以下、「本発明の管端部構造」と記す)は、管本体と、この管本体の少なくとも一端に装着された管端キャップとを備える配管材の管端部構造であって、前記管端キャップが、発光によって暗所作業で視認可能に形成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明において、特に限定されないが、上記管端キャップは、管本体に着脱自在であることが好ましい。
すなわち、管端キャップを着脱自在に設けておけば、管端キャップのみを繰り返し使用することができるとともに、管端キャップ以外の部分を既存の管を用いて形成することができ、経済的である。
【0011】
本発明で使用される管端キャップは、発光によって暗所作業で視認可能であれば、特に限定されないが、例えば、管端キャップの少なくとも表面が蓄光材料で形成されている構成(以下、「第1構成の管端キャップ」と記す)のもの、キャップ本体と、このキャップ本体に内蔵された光源と、この光源に給電して光源を発光させる電源とを備え、光源から出た光を少なくともキャップ本体の先端から照射するように構成されている(以下、「第2構成の管端キャップ」と記す)のものなどが挙げられる。
【0012】
上記第1構成の管端キャップにおいて、蓄光性を保持させる方法としては、特に限定されないが、管端キャップ本体の表面に蓄光材料を塗布する方法、管端キャップ本体の表面に蓄光テープを巻回接着する方法、管端キャップ成形時にベース樹脂に蓄光顔料等の蓄光材を混合しておく方法などが挙げられ、通管時に障害物にぶつかっても剥がれる事の無いため、ベース樹脂に蓄光剤を混合しておく方法を用いることが好ましい。
管端キャップの素材は限定されるものではないが、軽くて安価なポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂などが好適である。
【0013】
上記蓄光顔料を用いる場合、その配合量は、本発明の目的を達成することができれば、特に限定されないが、ベース樹脂100重量部に対して10〜20%重量部の割合で配合することが好ましい。配合量が多いとコストが高くなり、また少なすぎると十分な輝度が確保できなくなるおそれがある。
【0014】
上記第1構成の管端キャップにおいて、管端キャップ表面の輝度は、暗所での配管材先端位置を確認容易であるという本発明の目的を達成することができれば、特に限定されないが、使用時、すなわち、通管作業時に10mcd/m2以上の輝度を確保できることが好ましく、100mcd/m2以上の輝度が確保されていることがより好ましい。すなわち、使用時において十分高い輝度が確保されていれば、通管先の障害物がより視認しやすくなる。
また、作業性を考慮すると、できるだけ長時間高い輝度を維持するものが好ましいが、長時間高い輝度を維持するには、蓄光顔料等の使用量を増やさなければならず、管端キャップの製造コストが高くなる。したがって、コスト面を考慮すると、常用光源D65を用い、200lxの照度で20分間照射し、照射完了後20分経過時の残光輝度が10〜50mcd/m2の範囲となるものが好ましい。
なお、本発明において、上記残光輝度は、JIS Z 9107の測定方法を用いて測定される。
【0015】
また、管端キャップは、キャップ先端のコーナー部にR加工を施す、あるいは、キャップ先端部を先端側に向かって凸の紡錘形状や半球状や半楕円状に形成することが好ましい。すなわち、キャップ先端部が角張っていると、コーナー部が障害物にひっかかるおそれがある。なお、上記のように、R加工する場合、Rの大きさは、特に限定されないが、キャップの外径Dに対し、R/Dが1/8〜1/4の範囲とすることが好ましい。
【0016】
一方、第2構成の管端キャップにおいて、光源としては、LEDライトや豆球が挙げられる。
光源は、キャップ本体内に埋め込まれていても、キャップ本体の先端から外側に露出していても構わないが、管端キャップ先端方向への光源からの光照射ロスを少なくするため、キャップ本体の先端から外側に少し露出させ、露出部以外はキャップ本体内に完全に埋め込まれていることが好ましい。
【0017】
電源としては、上記のような光源を発光させることができれば特に限定されないが、ボタン電池などの豆電池(充電池でもよい)や、小型の振動式発電機(磁石がコイルを通過する際に電流が発生する原理を応用したもので振動によって発電された電力が内蔵コンデンサに蓄電できるようにしてもの)が挙げられる。
【0018】
キャップ本体の材質は、特に限定されないが、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンが挙げられ、透明でも、白濁色等の半透明でも、不透明でも構わない。ただ、光源がキャップ本体内に埋め込まれ、外部に露出していない場合は、光源からの光が管端キャップの先端方向に透過するように、少なくともキャップ本体の先端部の光源を臨む位置を少なくとも透明樹脂で形成することが好ましい。
また、キャップ本体は、光源から発した光が管端キャップ先端側に向かって透過する孔を先端側から光源まで達するように形成してもよい。
この孔は、径が大きすぎると、通管時に内部にゴミなどが入り込んで、孔を塞ぐ恐れがあるので、2〜5mmとすることが好ましい。
【0019】
管本体としては、特に限定されないが、例えば、ポリブデン(PB)管、ポリエチレン(PE)管、架橋ポリエチレン(XPE)管、耐熱ポリエチレン(PE−RT)管、塩化ビニル樹脂管などが挙げられ、可撓性を備えていて生曲げによる配管が可能な合成樹脂管の利用が好適である。
また、管本体は、通管部内で管本体が蛇行することが少ないように、真っ直ぐな状態(管軸が直線状)を形状記憶した状態で成形したものを用いることが好ましい。
【0020】
すなわち、管本体が真っ直ぐな状態を形状記憶していれば、通管部内では、管本体が真っ直ぐな状態に保持されて、目標に向かってより通管しやすくなる。
因みに、真っ直ぐな状態を形状記憶した架橋ポリエチレン管を製造するためには、未架橋ポリエチレン管内に水蒸気や熱水を通し、未架橋ポリエチレンを架橋するにあたり、未架橋ポリエチレンを真っ直ぐな状態に保つとともに、未架橋ポリエチレン管の少なくとも一端を管の熱伸縮に伴い、熱伸縮方向に追従して移動可能なように支持しておくようにすればよい。
また、真っ直ぐな状態を形状記憶したポリブデン(PB)管を製造するためには、成形後に結晶転移するまでの期間である約1週間程度、真っ直ぐな状態で保持すればよい。
【0021】
また、管本体は、その周囲が、保護材または保温材で被覆されていることが好ましい。
すなわち、管本体が外部に露出した状態で通管部に差し入れたのでは、障害物に触れて傷が付くおそれがあるが、保護材または保温材で被覆されていれば、保護材または保温材が破損しない限り、管本体が傷付くことがないので、実質的に流体が流れる管本体に傷つくことが殆ど無くなる。また、保護材または保温材は、遮音効果を期待でき、ウオーターハンマー等の防止も図ることができるとともに、結露も防止できる。
【0022】
上記保護材の材質としては、特に限定されないが、ポリオレフィン系やポリ塩化ビニル系、ポリエステル系の樹脂により成形された柔らかく、破れ難い樹脂を用いることができる。その中でもエラストマーが好ましく、引張破壊強さが6MPa以上12MPa以下であれば、通管時の引っ掛かりによる破れが発生しにくくなる。
上記保温材の材質としては、特に限定されないが、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、エラストマーの発泡体、ウレタン発泡などを用いることができる。
また、上記管本体及び保温材の部分は、すなわち、管端キャップ以外の部分は、例えば、積水化学工業株式会社製 エスロンエスロペックスCVなど市販の配管材を用いてもよい。
【0023】
本発明にかかる配管工法は、床、天井または壁に設けられた開口部を介して、床下、天井裏または壁裏の空間に配管材を送り込み、配管材を目的位置まで通管する配管工法であって、上記本発明の管端部構造を備えた配管材を、管端キャップ側を先頭にして発光する管端キャップを視認しながら、前記開口部を介して送り込むことを特徴としている。
【0024】
本発明の配管工法は、特に限定されないが、例えば、既設配管の老朽化による更新配管の敷設や、給水給湯器や排水機器の増設に伴う増設配管の敷設、リフォームなどにより給水給湯器や排水機器の配置が替わった場合の配管の引替えなどに用いられる。
上記開口部は、例えば、住宅建設時の配管図面から、移設場所の床下に設置されたガス管や給排水管の位置を予め確認した上で、探知機を用いて通管時の障害物となる根太の位置やその他既設の構造物の有無を確認し、生活動線を考慮した上で、既設の配管や上記障害物避けて、効率よく最短距離で通管できる位置を選定し、この位置を臨むように、床面、壁面、天井面の一部をジグソー等の切削具により切除することによって形成される。また、床面、壁面、天井面に設けられた点検窓が上記位置に一致する場合は、この点検窓の蓋を開放して開口部として用いるようにしてもよい。
【0025】
本発明の配管工法は、特に限定されないが、例えば、既設の給水給湯管を取り除くことによって、床下、天井裏または壁内に残った孔や隙間に向かって通管するようにしてもよい。
また、通管後、開口部を蓋で塞ぐ工程や、通管された配管材を、開口部を臨む床下、天井裏または壁内の空間部分で、他の配管材と接続固定する工程を備えていてもよい。
【0026】
本発明の配管工法において、上記開口部の大きさは、床上の作業者が開口部から通管する空間内を覗き込みながら、作業者がこの空間に腕を差し入れて本発明の配管材を通管することができれば、特に限定されないが、150〜300mm角程度の大きさが好ましい。すなわち、開口面積が小さすぎると作業が困難となり、大きすぎると、床、天井、壁などの不必要な復旧コストがかかるおそれがある。
上記のようにして通管された配管材は、特に限定されないが、接続作業性を考慮すると、開口部から臨める位置で他の配管材(例えば、更新しない既設配管、同じ配管工法で別方向に配管施工した更新配管)と接続することが好ましい。
【0027】
また、通管及び他の配管材との接続などの作業が完了すると、開口部を、開閉が可能な蓋で閉じるようにすることが好ましい。
なお、蓋は、開口部として既設の点検窓を用いた場合には、点検窓の蓋をそのまま用い、新たにジクソー等を用いて開口部を切削形成した場合には、開口部の大きさに合せた蓋を別途用意すればよい。
【0028】
また、開口部を床面に形成した場合、蓋は、歩行の障害とならないように、床面とほぼ面一にすることが好ましい。
また、蓋は、把手を設けてこの把手を持って取り外し開口部を再び開放できるようにしてもよいし、把手を設けず、取り外しの際に吸盤等を用いて吸着させながら取り外しできるようにしても構わない。
さらに、開口部を床面に形成した場合、必要に応じて、体重等の荷重によって蓋や床面が撓んだり破損したりしないように、蓋を下方から直接受ける、あるいは、床の開口部周縁部を下方から受ける床支持具を床下に設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の管端部構造は、以上のように、管本体と、この管本体の少なくとも一端に装着された管端キャップとを備える配管材の管端部構造であって、前記管端キャップが、発光によって暗所作業で視認可能に形成されているので、この管端部構造を備えた配管材を用いれば、通管具が不要になり、通管具を用いた配管工法に比べ、通管作業を短縮することができる。
【0030】
また、床、天井、壁などに設けた小さい開口部から床下、天井裏、壁内などの暗くて狭い空間内に配管材を通管する場合、開口部側から配管材先端である発光する管端キャップ位置を容易に視認できる。
したがって、管端キャップ部分を、開口部を介して確認し、障害物を避けながら、配管材の表面を傷つけることなく、配管材を通管できる。しかも、小さな孔や狭い隙間にも容易に通すことができる。
【0031】
また、本発明の管端部構造を用いた配管材は、リフォームによって給水給湯機器の配置の変更や、既設配管の老朽化による配管の交換の必要が生じた場合の更新配管施工に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の管端部構造の第1の実施の形態を説明する一部切欠き断面図である。
【図2】図1の管端キャップの斜視図である。
【図3】図1の管端部構造を備える配管材を用いた配管工法の1例であって、その配管材を床下に通管する途中の状態を模式的にあらわす断面図である。
【図4】図3の通管完了後の状態を模式的にあらわす断面図である。
【図5】通管完了後の状態を開口部からみた床下の平面図である。
【図6】本発明の管端部構造の第2の実施の形態を説明する一部切欠き断面図である。
【図7】図6の管端キャップの斜視図である。
【図8】本発明の管端部構造の第3の実施の形態を説明する一部切欠き断面図である。
【図9】開口部を用いた配管材の通管工程を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明の管端部構造の第1の実施の形態をあらわし、図2は管端キャップをあらわしている。
【0034】
図1に示すように、この配管材Aは、ロール状に巻回された配管材本体部(図1では一端側しかあらわれていない)1と、配管材本体部1の両端に装着された2つの管端キャップ(図1では1つしかあらわれていない)2aと、から構成されている。
すなわち、管端キャップ2aは、図1及び図2に示すように、ポリエチレン樹脂に蓄光顔料が混合された樹脂組成物を射出成形して得られ、先端部が半円球形状となって閉塞され、後端部が管本体11の外径とほぼ同じか少し小径の円筒状になった中空筒状をしている。
なお、樹脂組成物中の蓄光顔料の配合量は、管端キャップ2aに、常用光源D65を用い、200lxの照度で20分間光を照射し、照射完了後、さらに20分間放置したときの残光照度が10mcd/m2以上を確保できる配合量となっている。
【0035】
一方、配管材本体部1は、例えば、積水化学工業株式会社のエスロンエスロペックスCVが原材料として用いられており、図1に示すように、架橋ポリエチレン管からなる管本体11と、発泡ポリエチレンチューブからなる保温材12とから形成されている。
そして、管端キャップ2aは、保温材12の管端部側が外側に折り返されて形成された管本体11の露出部に着脱可能に外嵌された状態で配管材本体部1に装着されている。
なお、管端キャップ2aは、後端部の内周面が管本体1の外周面に圧接された状態で装着され、接触面の摩擦抵抗によって装着状態が維持され、強制的に抜き方向の力を加えないと、離脱しないようになっている。
【0036】
つぎに、図3〜図5を用いて上記配管材Aを用いた配管工法の1例である更新給水給湯配管の配管工法を工程順に説明する。
(1)住宅建設時の配管図面から、移設場所の床下に設置されたガス管や給排水管の位置を予め確認した上で、探知機を用いて通管時の障害物となる根太の位置やその他既設の構造物の有無を確認し、生活動線を考慮した上で、既設の配管や上記障害物避けて、効率よく最短距離で通管できる位置を選定したのち、この位置を臨むように、ジグソー等の切削具を用いて、図3〜図5に示すように、床200の一部に開口部210を設ける。
(2)開口部210から既設配管(図示せず)を引き抜き撤去する。既設配管の撤去によって、基礎や柱材に図3及び図4に示すように、孔410が形成される。
(3)配管材Aの管端キャップ2a部分に常用光源D65を用い、200lxの照度で20分間以上光を照射する(太陽光に所定時間曝しておいても構わない)。
(4)照射完了後、配管材Aを、図9に示す配管工法と同様に開口部210から床下を覗き込みながら、図3に示すように発光する管端キャップ2aを、開口部210を介して視認しつつ、孔410に通るように配管材Aを床下に送り込む。
(5)管端キャップ2aが孔410を通りぬけ、例えば、パイプスペース等に設けられた他の開口部(図示せず)の近傍まで達したら、管端キャップ2aを取り外し、他の開口部側に設けられた他の配管材である給水本管または給湯器の二次側配管に接続する。
(6)図5に示すように、開口部210を臨む位置で配管材本体部1を開口部210に臨む他の配管材Aと接続可能長さに切断(通管前に通管部のほぼ長さか少し長い長さに切断しておいても構わない)し、他の配管材Aと管継手3を介して接続する。
(7)開口部210の周縁を補強するように、枠材220を嵌め込む。なお、枠材220は、歩行の障害とならないように、その上端面が床200の上面から殆ど突出しないか、ほぼ面一になるように設けることが好ましい。
(8)枠材220に受けさせるように、蓋230を枠材220内に嵌め込み、開口部210を閉じる。枠材220は、歩行の障害とならないように、その上端面が床200の上面から殆ど突出しないか、ほぼ面一になるように設けることが好ましい。蓋230は、枠材220にねじ止め固定してもよいし、外部に突出しない把手を備えていてもよい。
なお、歩行安全性を確保する必要に応じて、蓋230によって開口部210を閉じる前に蓋230を下方から直接受ける、あるいは、床の開口部周縁部を下方から受ける床支持具(図示せず)を床下に設けるようにしてもよい。また、
図3、図4中、400は土間、図5中、500はガス配管である。
【0037】
この配管材Aは、上記のようになっており、以下のような優れた効果を備えている。
(1)ポリエチレン樹脂に蓄光顔料が混合された樹脂組成物を射出成形して得られた管本体11の管端に管端キャップ2aが嵌合接続されているので、通管作業前に少なくとも管端キャップ部分に必要量の光を予め照射して蓄光させておけば、管端キャップ2aを先頭にして床下等の通管部に床面等に設けられた開口部から通管することで、通管部が暗い場所であっても開口部210側から作業者が配管材Aの先端位置を常に確認できる。したがって、床下に存在する根太や、ガス配管、更新配管以外の既存配管などの障害物を避けながら、例えば、目標の孔410に配管材本体部1の外周面を傷つけることなくスムーズに通管できる。しかも、通管時に管本体11内にゴミが入ることない。
(2)、管端キャップ2aの先端部が半球状になっているので、管端キャップ2aが障害物に引っかかりにくく、より通管作業を容易に行うことができる。
(3)、配管材本体部1が長尺でロール状に巻回されているので、配管材Aの一端をロールから引き出し、配管材本体部1を施工現場の通管部の長さに自由に切断して使用でき、使用ロスを少なくすることができる。
(4)管端キャップ2aが着脱自在となっているので、通管後、管端キャップ2aを取り外し、切断して残った未使用の配管材の切断端の管本体11に嵌合接続すれば、残余の配管材Aを再利用するまで管本体11内がゴミ等で汚染されることがない。
【0038】
図6は、本発明の管端部構造の第2の実施の形態をあらわし、図7は、その管端キャップをあらわしている。
図6に示すように、この配管材Bは、管端キャップ2bの先端面が偏平であり、コーナー部がR形状をしている以外は、上記配管材Aと同様になっている。
この配管材Bは、上記のように管端キャップ2bの先端面が偏平になっており、上記配管材Aに比べ、管端キャップ2bの先端が、通管方向の障害物にひっかかりやすくなるものの、一般的なキャップ形状であり、既存金型と材料に蓄光剤を導入して生産できるため、安価となる。
【0039】
図8は、本発明の管端部構造の第3の実施の形態をあらわしている。
図8に示すように、この配管材Cは、管端キャップ2cが、透明樹脂からなるキャップ本体201と、光源としての豆電球22と、電源としてのボタン電池23とを備え、ボタン電池23から供給される電力によって豆電球22が発光することによって、管端キャップ2bを発光させるようにした以外は、上記配管材Aと同様になっている。
この配管材Cは、上記のように管端キャップ2cが、豆電球の発光によって発光するようになっているので、上記配管材Aや配管材Bに比べ、製造コストはかかるものの、高い光量を得られ、より長時間明るく照らすことができるとともに、配管材Cの通管長さが長くなっても配管材Cの先端を容易に視認することができる。
【0040】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、管端キャップを管本体の先端部に外嵌させていたが、管端キャップの先端側を管本体の外径とほぼ同じか少し大きな外径とし、後端側の外径を管本体の内径とほぼ同じか少し大きくし、管本体の内側にこの後端側の部分を嵌合あるいは圧入するような構造としても構わない。
上記の実施の形態では、配管材本体部1がロール状に巻回された長尺品であったが、例えば、配管材本体部が予めほぼ通管部の長さか少し長い程度(3〜5m程度)の短尺なものとしても構わない。
また、管端キャップの管本体との接触面は、パッキンを設ける、あるいは、二色成形などによって、接触面のみをその弾性により接触面に圧接される合成ゴム材料層とするなどして離脱しにくい構造としても構わない。
上記の実施の形態では、本発明の配管材を更新配管に用いるようにしていたが、新規に配管する場合に用いるようにしても構わない。
【0041】
以下、本発明の具体的な実施例を比較例と対比させて説明する。
(実施例1)
ポリエチレン樹脂に、蓄光顔料としての根本特殊化学(株)製のGSSを10%添加した樹脂組成物を用いて後端部の円筒状部分の内径が16.9mmの図2に示す形状の管端キャップサンプルIを成形した。
呼び径13の積水化学工業製 エスロンエスロペックスCV(PH1303B、PH1303Y 架橋ポリエチレン管部分の外径17mm)の管端部の保温材部分を外側に反転させ、管本体11の管端部を露出させたのち、この管本体の管端部に管端キャップサンプルを嵌合接続して本発明の配管材サンプルIを得た。
上記配管材サンプルIの管端キャップサンプルA部分に、常用光源D65を用い、200lxの照度で20分間光を照射した。
照射完了後、照射をやめ20分間放置したのちの残光輝度(JIS Z 9107 規格準拠)を測定したところ、60mcd/m2であった。
また、床面に150〜300mm角の開口部を設け、管端キャップサンプル部分の残光輝度が60mcd/m2となった配管材サンプルIを、上記開口部から床下へ管端キャップサンプル部分が開口部から12m位置まで通管したところ、管端キャップサンプル部分、すなわち、配管材サンプルIの先端がどこにあるかを確認できるとともに、管端キャップサンプルI周囲の床下空間部分の根太などが管端キャップサンプルIから発光された光によって少し明るく照らされ、周囲の状態がよく視認できた。
【0042】
(比較例1)
管端キャップサンプルを取り付けなかった呼び径13の積水化学工業製 エスロンエスロペックスCV(PH1303B、PH1303Y)のみを実施例1と同様にして開口部から床下へ通管したところ、先端が開口部から50cm位置まで通管されたとき、先端が開口部からまったく視認できなかった。
【0043】
(比較例2)
ポリエチレン樹脂に、蓄光顔料としての根本特殊化学(株)製のGSSを5%添加した樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして管端キャップサンプルIIを得た。
そして、管端キャップサンプルIに代えて管端キャップサンプルIIを用いた以外は、実施例1と同様にして配管材サンプルIIを得た。
上記配管材サンプルIIの管端キャップサンプルII部分に、常用光源D65を用い、200lxの照度で20分間光を照射した。
照射完了後、照射をやめ20分間放置したのちの残光輝度(JIS Z 9107 規格準拠)を測定したところ、5mcd/m2であった。
また、上記のように、残光輝度が5mcd/m2となった配管材サンプルIIを上記配管材サンプルIと同様にして開口部から床下に通管したところ、先端の管端キャップサンプルII部分が開口部から200cm位置まで通管されたとき、先端位置が不明瞭となり、開口部から250cm位置まで通管されたとき視認できなくなった。
【符号の説明】
【0044】
A,B,C 配管材
1 配管材本体部
11 管本体
12 保温材
2a,2b,2c 管端キャップ
21 キャップ本体
22 豆電球(光源)
23 ボタン電池(電源)
200 床
210 開口部
220 枠材
230 蓋
410 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管本体と、この管本体の少なくとも一端に装着された管端キャップとを備える配管材の管端部構造であって、
前記管端キャップが、発光によって暗所作業で視認可能に形成されていることを特徴とする配管材の管端部構造。
【請求項2】
管端キャップが、管本体に着脱自在である請求項1に記載の配管材の管端部構造。
【請求項3】
管端キャップの少なくとも表面が蓄光材料で形成されている請求項1または請求項2に記載の配管材の管端部構造。
【請求項4】
管端キャップ本体の表面に蓄光材料が塗布されて形成されている請求項3に記載の配管材の管端部構造。
【請求項5】
管端キャップが、キャップ本体と、このキャップ本体に内蔵された光源と、この光源に給電して光源を発光させる電源とを備え、光源から出た光を少なくともキャップ本体の先端から照射するように構成されている請求項1または請求項2に記載の配管材の管端部構造。
【請求項6】
管本体の周囲が保護材または保温材で被覆されている請求項1〜請求項5のいずれかに記載の配管材の管端部構造。
【請求項7】
床、天井または壁に設けられた開口部を介して、床下、天井裏または壁裏の空間に配管材を送り込み、配管材を目的位置まで通管する配管工法であって、請求項1〜請求項6に記載のいずれかの管端部構造を備えた配管材を、管端キャップ側を先頭にして発光する管端キャップを視認しながら、前記開口部を介して送り込むことを特徴とする配管工法。
【請求項8】
既設の給水給湯管を取り除くことによって、床下、天井裏または壁裏に残った孔や隙間に向かって通管する請求項7に記載の配管工法。
【請求項9】
通管後、開口部を蓋で塞ぐ工程を備えている請求項7または請求項8に記載の配管工法。
【請求項10】
通管された配管材を、開口部を臨む床下、天井裏または壁裏の空間部分で、他の配管材と接続固定する工程を備えている請求項7〜請求項9のいずれかに記載の配管工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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