配管締結構造
【課題】スリーブを廃止して、直にナットで金属管の球状端末部を相手方部品に締結接続する場合に、共回りの発生を確実に防止する。
【解決手段】金属管10の端末部16は、異なる曲率半径の球面をもつ第1の球面部20と、第2球面部21とが別部品を使わずに一体に形成され、端末部16の首下部18の外径D1と、金属管の外径とはほぼ等しく、第1の球面部20が接触する相手方部品14のシール面27の接触点における該第1球面部20の外径D2と金属管10の外径の比をα、第2の球面部21が接触するナット14のシート面25の接触点における第2球面部21の外径D3と前記金属管の外径Dの比をβ、としたときに、α/β≧0.80を満足する範囲で前記外径D3が前記外径D2よりも大きくする。
【解決手段】金属管10の端末部16は、異なる曲率半径の球面をもつ第1の球面部20と、第2球面部21とが別部品を使わずに一体に形成され、端末部16の首下部18の外径D1と、金属管の外径とはほぼ等しく、第1の球面部20が接触する相手方部品14のシール面27の接触点における該第1球面部20の外径D2と金属管10の外径の比をα、第2の球面部21が接触するナット14のシート面25の接触点における第2球面部21の外径D3と前記金属管の外径Dの比をβ、としたときに、α/β≧0.80を満足する範囲で前記外径D3が前記外径D2よりも大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル内燃機関やガソリン内燃機関の燃料配管などで用いられる配管締結構造に係り、特に、相手方の部品に球面形状を有する金属管の端末部をナットで締結する配管締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル内燃機関やガソリン内燃機関の燃料配管では、燃料が高圧で送られる金属管をエンジンの相手方の部品に接続するために、球面形状をもつ端末部をナットで締結して接続することが行われている。この締結構造では、ナットを締結することにより、球面形状の端末部を相手方の部品のシート面に押し付けて燃料の漏れを確実に防ぐことができるので、従来から高圧の燃料配管に広く利用されている。
【0003】
この種の配管締結構造の従来技術としては、代表的なものとして、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されているものを挙げることができる。
【0004】
これら従来の配管締結構造では、ナットと球状形状の端末部の間にスリーブ(ワッシャー)を介在させているのが一般的である。
【0005】
このスリーブは、大きな面圧をかけて端末部を相手方のシート面に押さえ付ける役割を担っている。このスリーブがあることによって、球面形状の端末部の軸芯と、相手方部品の軸芯とがわずかにずれている状態(ミスアライメントと呼ばれる)のままナットを締め付けたとしても、局部的な面圧低下の発生を防止することができ、安定したシール性が得られるという利点がある。これは、球状端末部の軸心とスリーブの軸芯は一致するからである。
【0006】
その反面、スリーブを設けることで部品点数が増え、ナットが大きくなり、重量が増加するという欠点がある。
【0007】
そこで、近年では、スリーブを用いないで、ナットだけで金属管を相手部品に締結することが検討され、実際にも使用されている。
【特許文献1】特開平10−122454号公報
【特許文献2】特開2000−227183号公報
【特許文献3】特開2009−144668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スリーブをなくして、ナットで球状端末部を相手方部品に直に締結すると、次のような問題点があることがわかっている。
【0009】
最も、大きな問題点は、スリーブがないと、ナットを締め付けるトルクが直接球状端末部にかかり、ナットといっしょに金属管も回ってしまう現象、いわゆる共回りが発生してしまうことである。この共回りが発生すると、金属管の端末部は相手方部品のシール面に強く押し付けられた状態でこすり付けられることから大きな摩擦が生じ、焼き付きが発生し易い。また、ナットと球状端末部との接触面にも大きな摩擦が生じる結果、焼き付きが生じると、ナットを戻せなくなり、金属管を外し、再度締結するというように戻しと締結を繰り返すことができなくなる。この傾向は、特にステンレスを用いた締結部において顕著である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、スリーブを廃止して、直にナットで金属管の球状端末部を相手方部品に締結接続する場合に、共回りの発生を確実に防止することができるようにした配管締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、金属管の端末部と、ナットと、接続する相手方の部品とからなり、前記端末部を前記ナットで直接に前記相手方部品に締結する配管締結構造において、前記金属管の端末部は、異なる曲率半径の球面をもつ第1の球面部と、第2球面部とが別部品を使わずに一体に形成され、前記端末部の首下部の外径D1と、前記金属管の外径Dとはほぼ等しく、前記第1の球面部が接触する前記相手方部品のシール面の接触点における該第1球面部の外径D2と前記金属管の外径Dの比(D2/D)をα、前記第2の球面部が接触する前記ナットのシート面の接触点における該第2球面部の外径D3と前記金属管の外径Dの比(D3/D)をβ、としたときに、
α/β≧0.80
を満たす範囲で前記外径D3が前記外径D2よりも大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スリーブを廃止して、直にナットで金属管の球状端末部を相手方部品に締結接続した場合でも、共回りの発生を確実に防止することができ、端末部の焼き付きをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図2】同配管締結構造における各部の寸法の定義を示す模式図である。
【図3】同配管締結構造において各部に作用する力を示す模式図である。
【図4】外径が8.0mm、肉厚が1.5mmの金属管を用いる配管締結構造において、共回りがしない条件をさぐるため、軸力とトルクの関係を解析した結果を表すグラフである。
【図5】外径が8.0mm、肉厚が1.2mmの金属管を用いる配管締結構造において、共回りがしない条件をさぐるため、軸力とトルクの関係を解析した結果を表すグラフである。
【図6】外径が9.53mm、肉厚が1.2mmの金属管を用いる配管締結構造において、共回りがしない条件をさぐるため、軸力とトルクの関係を解析した結果を表すグラフである。
【図7】外径が10.0mm、肉厚が1.2mmの金属管を用いる配管締結構造において、共回りがしない条件をさぐるため、軸力とトルクの関係を解析した結果を表すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態において、肉厚部による内径減少率と圧力損失、端末部の変位の関係を表すグラフである。
【図13】本発明の第6実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による配管締結構造の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による配管締結構造の縦断面を示す。この図1において、参照番号10は、金属管を示す。参照番号12は、ナットを示し、参照番号14は、金属管10が接続される相手方部品を示す。この実施形態では、相手方部品14は継手を構成している。金属管10の先端には、球状形状の端末部16が接合されており、この端末部16をナット12で相手方部品14に直接押し付けるようになっている。このような配管接続構造にあっては、従来の配管接続構造とは異なり、ナット12と端末部16の間にはスリーブあるいはワッシャに類する部品は介在していない。
【0015】
金属管10の末端には、継手部17が形成されている。端末部16は、全体として球状形状に形成され、第1の球面部20と第2の球面部21とからなる球状部分と、それに続く首下部18からなる。この首下部18には、金属管10の継手部17が嵌合する継手部19が形成されている。この場合、継手部19は、継手部17の外側に嵌合しており、溶接若しくはろう付けにより接合されている。そして、首下部18の外径Dは金属管10の外径D1と等しくなっているか、公差の範囲内でほぼ等しくなっており、外周面は面一である。
【0016】
次に、ナット12の端面には貫通孔23が形成されている。この貫通孔23の内径は、金属管10の外径よりも若干大きく、端末部16の首下部18は、この貫通孔23に遊嵌する。ナット12の内部には、この貫通孔23の終端から末広がりに拡径する部分と、雌ねじ部24とが形成されている。この拡径する部分の内周面は、端末部16の第2の球面部21が接触するシート面25を形成している。
【0017】
相手方部品14の継手を構成する部分の外周面には、ナット12の雌ねじ部24が螺合する雄ねじ部26が形成されている。そして、相手方部品14の先端入口には、テーパ状のシール面27が形成されている。このシール面27には、端末部16の第1の球面部20が接触するようになっている。
【0018】
次に、図2は、本実施形態による配管接続構造において、各部の寸法およびナット12を締結するときに各部に作用する力を定義する模式図である。
この図2において、金属管10の外径をD、内径をd、肉厚をtとする。
端末部16に関しては、第1球面部20がシール面27に接触する点における第1球面部20の外径をD2、第2球面部21がシート面25に接触する点における第2球面部21の外径をD3とする。なお、第1球面部20と第2球面部21は、図3における中心Oを共通にして異なる曲率半径となっている。
【0019】
ここで、外径D2と金属管10の外径Dの比(D2/D)をαとし、外径D3と金属管10の外径Dの比(D3/D)をβとすると、
D2=αD
D3=βD
である。
【0020】
図2において、ナット12を締結するときに各部に作用する力については、次のように定義される。
ナット12を締め付けると、通常は、端末部16は回転せずに、相手方部品14に押し付けられていく。これは、シール面27に対して端末部16の第1球面部20が押し付けられていることで、摩擦によって回転を抑える方向にトルクT1が作用しているからである。
【0021】
ここで、ナット12の締め付けトルクをT2とする。このほかに、金属管10は、図示しないステーなどによって固定されているので、締め付けトルクT2がかかることよって、ねじりがさらに加わるので、このときのねじり剛性トルクをT3とする。
ナット12を締め付けていっても、端末部16がナット12といっしょに回転しないのは、次のような力の関係が成立しているからである。
T1≧T2−T3 …(1)
したがって、ナット12を締め付けても、共回りし難い締結構造にするという問題を考える場合、(1)式を満たすときに、ナット12と、端末部16ではシール面27との接触点における第1球面部20の外径αDと、シート面25との接触点における第2球面部21のの径βDの間に一定の関係があることがわかれば、それにより共回りの発生しない構造を特定することができることになる。
【0022】
次に、図3は、ナット12を締結するときに各部に作用する力を分解して示す模式図である。
ここで、ナット12を締め付けるときに、端末部16を相手方部品14のシール面27に押し付ける軸方向の力をFとする。この軸方向の力Fに基づき、シール面27には接触点がなす円周の単位長さあたり、軸方向の力f1が作用し、ナット12と第2球面部21とが接触するシート面25には接触点がなす円周の単位長さあたり、軸方向の力f2が作用しているとすると、
f1=F/παD
f2=F/πβD
である。
【0023】
次に、シール面27での第1球面部20の接触点における垂直抗力をN1、接触点における接線と軸線のなす角をθ1とし、シート面25での第2球面部21の接触点における垂直抗力をN2、接触点における接線と軸線のなす角をθ2とする。
【0024】
垂直抗力N1、N2はそれぞれ
N1=f1sinθ1
N2=f2sinθ2
である。
【0025】
シール面27、シート面25におけるそれぞれの単位長さあたりの摩擦力は摩擦係数をμとすれば、μN1、μN2であり、トルクは、摩擦力×円周長×半径なので、
【数1】
となる。
【0026】
次に、ねじれ剛性については、γを金属管10の内径dと外径Dの比(d/D)として、
【数2】
と表すことができる。
【0027】
以上の式を(1)式に代入すると、
【数3】
となる。
【0028】
そこで、具体的に外径Dと肉厚tを特定した金属管10について、軸力Fを横軸にとって、縦軸にトルクの大きさをとって、端末部16の回転を抑えるトルクT1と、締め付けトルクT2−ねじれ剛性T3の変化を解析した結果を示すグラフを図4乃至図10に示す。
ここで、摩擦係数τmaxは、金属管とナットの材質から決まってくる定数である。
【0029】
この図4は、金属管10の外径Dが8mm、肉厚tが1.5mmの場合に、シール面27の接触点における第1球面部20の外径D2を決める係数αを固定して、シート面25の接触点における第2球面部21の外径D3を決める係数βの値を変化させている。
【0030】
端末部16の回転を抑えるトルクT1は、図4では太線で示す直線で表される。これに対して、締め付けトルクとねじれ剛性の差T2−T3は細線の直線で表されている。αに対してβの値が相対的に大きい場合(α/β=0.2、0.3、0.4、0.5)には、軸力がごく小さいときを除いて、T2−T3は、T1よりも大きいので、(1)式を満たしていないことがわかる。このことは、図2に即して説明すると、シート面25との接触点における第2球面部21の外径D3がシール面27との接触点における第1球面部20の外径D2に対して相対的にかなり大きいと、ナット12により端末部16を回そうとするトルクの方が、相手方部品14のシール面27で生じる回転を抑えるトルクよりも勝っているので、ナット12といっしょに端末部16が共回りしてしまうことになる。
【0031】
これに対して、α/βが0.8、0.9になると、T2−T3は、T1よりも小さくなる範囲、すなわち(1)式を満たす範囲が増えていくことがわかる。このことは、シート面25との接触点における第2球面部21の外径D3が、シール面27との接触点における第1球面部20の外径D2に対してある程度の範囲内で大きいと、ナット12により端末部16を回そうとするトルクよりも、相手方部品14のシート面25で生じる回転を抑える力が勝るので、ナット12といっしょに端末部16が共回りしなくなることを意味している。
【0032】
外径が8〜10mm、肉厚が1.0〜1.5mmの金属管の場合、締結時の軸力Fは、最大でも5kN程度、通常は3〜4kN超程度なので、軸力が最大5kNのときにT1の直線と交わるT2−T3の直線のα/βの値はどうなるかをみてみると、図4では、α/βが0.80の直線と0.60の直線を比例按分して、
α/β≧0.78
であれば、実用上、端末部16は共回りしないことがわかる。
【0033】
なお、図4では、理論上、α/βの値は、1を越えて大きいほど、端末部16は共回りしなくなることになる。しかし、α/βが1より大きいということは、第1球面部20の方が第2球面部21よりも大きくなることになり、相手部品との制約等により使用できない場合がある。
【0034】
図4と同様にして、図5において、金属管10の外径Dが8mm、肉厚tが1.2mmの場合に共回りしないようなα/βの範囲を求めると、
α/β≧0.80
である。
【0035】
以下同様に、金属管10の外径Dが9.53mm、肉厚tが1.2mmの図6では、
α/β≧0.75
金属管10の外径Dが10.0mm、肉厚tが1.2mmの図7では、
α/β≧0.72
である。
【0036】
そして、これらを範囲をすべて共通する範囲は、
α/β≧0.80 …(3)
である。以上より、この範囲にあれば、実用域において、共回りを抑制することが可能になる。
【0037】
なお、ナット12のシート面25の硬さは、端末部16の第2球面部21の表面よりも硬くなっていることが好ましい。これにより、シート面25の変形に伴う、第2球面部21との接触面積増加を防止し、共回り発生をより確実に抑止することができる。
【0038】
また、好ましくは、焼き付きを防止するために、シート面25の表面または第2球面部21の表面および第1球面部20の表面には、オイルを塗布していることが好ましい。
【0039】
第2実施形態
次に、図8は、本発明の第2実施形態による配管締結構造を示す。
【0040】
この第2実施形態は、シール面27の接触点における第1球面部20の外径D2を決める係数αと、シート面25の接触点における第2球面部21の外径D3を決める係数βの比が
α/β≧0.80
の範囲にある点で、第1実施形態と共通している(以下、第3実施形態乃至第6実施形態も同じ)。
この第2実施形態では、ナット12の貫通穴23を形成する内径部には段部30が形成され、貫通穴23の径が小さくなってから、シート面25に続くようになっている。この段部30があることよって、端末部16の第2球面部21がシート面25に接触する位置が首下部18側に近づくので、接触点における第2球面部21の外径D3が相対的に小さくなり(βが小さくなってαとβが互いに近づいていく)するため、(3)式の条件を満たし易くなる。
【0041】
第3実施形態
次に、図9は、本発明の第3実施形態による配管締結構造を示す。
この第3実施形態では、端末部16において第1球面部20と第2球面部21との境に肩部32が形成されており、この肩部32は、相手方部品14のシール面27の口元に当接するようになっている。
【0042】
このように、端末部16に肩部32を形成することにより、ナット12を締め付けていくと、図9に示すように、この肩部32が相手方部品14の口元に押し付けられるため、共回りを抑制するこトルクが口元にも発生することになる。このトルクが発生することで(1)式が確実に成り立つようになるので、共回りをより確実に防止することができる。
【0043】
第4実施形態
次に、図10は、本発明の第4実施形態による配管締結構造を示す。
この第4実施形態では、相手方部品14において、シール面27のさらに内側には、段部34が切り欠くことによって形成されている。他方、端末部16の先端部35は、この段部34に突き当たるようになっている。
このように、シール面27の内側に段部34を形成し、端末部16の先端部35を段部34に突き当てることにより、ナット12を締め付けすぎた場合には、端末部16の先端部35が段部34に当接するので、シール面27に第1球面部20が軸方向に押し込まれてシール径が小さくなると、締め付けに伴って実際のα/βの値が小さくなっていき、0.80以上を満たせなくなって共回りを生じる可能性が高まることを阻止することができる。
【0044】
第5実施形態
次に、図11は、本発明の第5実施形態による配管締結構造を示す。
この第5実施形態では、金属管10の端末部16の先端には、内側に膨出する肉厚部36が形成されており、この肉厚部36があることによって、金属管10の内径を減少させている。
【0045】
ここで、図12は、内径の減少率を横軸に取り、内径の減少率と、圧力損失、過剰にナット15を締め付け過ぎたときの端末部16の軸方向への変位との関係を示すグラフである。
【0046】
端末部16の先端に肉厚部36が形成されることによって、端末部16の先端部の剛性が高まるので、ナット15を締め付けすぎたときに、端末部16の軸方向への変位を抑制することができる。他方、肉厚部16の肉厚を厚くしてしまうと、この部分で急激に金属管10の内径が狭くなりオリフィスとして作用して、ここでの圧力損失が大きくなってしまう。
【0047】
図12から明らかなように、肉厚部36があることによって内径が60%を越えて減少してしまうと、圧力損失が大きくなる傾向にあることがわかる。
【0048】
他方、軸方向への変位については、内径の減少率が大きくなればなるほど少なくなる傾向があるが、上記のように圧力損失の増大という問題も生じてくるので、剛性の強化による変位抑制効果だけを得るという観点からは、内径の減少率は10〜60%の範囲内であることが好ましい。
【0049】
第6実施形態
次に、図13は、本発明の第6実施形態による配管締結構造を示す。
【0050】
この第5実施形態では、端末部16を金属管10に接合する継手の構造が図1と異なる実施形態である。
【0051】
首下部18には、金属管10の継手部17が嵌合する継手部19が形成されているが、この第6実施形態の場合、継手部19は、継手部17の内側に嵌合しており、溶接若しくはろう付けにより接合されている。そして、首下部18の外径D1は金属管10の外径Dと等しくなっているか、公差の範囲内でほぼ等しくなっている点は図1と同様である。
【0052】
このように、端末部16の首下部18の外径D1と金属管10の外径Dがほぼ等しくなるように接合することは、構造上、(3)式を満足するようなα、βの比になり易くなる。
【符号の説明】
【0053】
10…金属管、12…ナット、14…相手方部品、16…端末部、18…首下部、20…第1球面部、21…第2球面部、23…貫通孔、25…シート面、27…シール面
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル内燃機関やガソリン内燃機関の燃料配管などで用いられる配管締結構造に係り、特に、相手方の部品に球面形状を有する金属管の端末部をナットで締結する配管締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル内燃機関やガソリン内燃機関の燃料配管では、燃料が高圧で送られる金属管をエンジンの相手方の部品に接続するために、球面形状をもつ端末部をナットで締結して接続することが行われている。この締結構造では、ナットを締結することにより、球面形状の端末部を相手方の部品のシート面に押し付けて燃料の漏れを確実に防ぐことができるので、従来から高圧の燃料配管に広く利用されている。
【0003】
この種の配管締結構造の従来技術としては、代表的なものとして、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されているものを挙げることができる。
【0004】
これら従来の配管締結構造では、ナットと球状形状の端末部の間にスリーブ(ワッシャー)を介在させているのが一般的である。
【0005】
このスリーブは、大きな面圧をかけて端末部を相手方のシート面に押さえ付ける役割を担っている。このスリーブがあることによって、球面形状の端末部の軸芯と、相手方部品の軸芯とがわずかにずれている状態(ミスアライメントと呼ばれる)のままナットを締め付けたとしても、局部的な面圧低下の発生を防止することができ、安定したシール性が得られるという利点がある。これは、球状端末部の軸心とスリーブの軸芯は一致するからである。
【0006】
その反面、スリーブを設けることで部品点数が増え、ナットが大きくなり、重量が増加するという欠点がある。
【0007】
そこで、近年では、スリーブを用いないで、ナットだけで金属管を相手部品に締結することが検討され、実際にも使用されている。
【特許文献1】特開平10−122454号公報
【特許文献2】特開2000−227183号公報
【特許文献3】特開2009−144668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スリーブをなくして、ナットで球状端末部を相手方部品に直に締結すると、次のような問題点があることがわかっている。
【0009】
最も、大きな問題点は、スリーブがないと、ナットを締め付けるトルクが直接球状端末部にかかり、ナットといっしょに金属管も回ってしまう現象、いわゆる共回りが発生してしまうことである。この共回りが発生すると、金属管の端末部は相手方部品のシール面に強く押し付けられた状態でこすり付けられることから大きな摩擦が生じ、焼き付きが発生し易い。また、ナットと球状端末部との接触面にも大きな摩擦が生じる結果、焼き付きが生じると、ナットを戻せなくなり、金属管を外し、再度締結するというように戻しと締結を繰り返すことができなくなる。この傾向は、特にステンレスを用いた締結部において顕著である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、スリーブを廃止して、直にナットで金属管の球状端末部を相手方部品に締結接続する場合に、共回りの発生を確実に防止することができるようにした配管締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、金属管の端末部と、ナットと、接続する相手方の部品とからなり、前記端末部を前記ナットで直接に前記相手方部品に締結する配管締結構造において、前記金属管の端末部は、異なる曲率半径の球面をもつ第1の球面部と、第2球面部とが別部品を使わずに一体に形成され、前記端末部の首下部の外径D1と、前記金属管の外径Dとはほぼ等しく、前記第1の球面部が接触する前記相手方部品のシール面の接触点における該第1球面部の外径D2と前記金属管の外径Dの比(D2/D)をα、前記第2の球面部が接触する前記ナットのシート面の接触点における該第2球面部の外径D3と前記金属管の外径Dの比(D3/D)をβ、としたときに、
α/β≧0.80
を満たす範囲で前記外径D3が前記外径D2よりも大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スリーブを廃止して、直にナットで金属管の球状端末部を相手方部品に締結接続した場合でも、共回りの発生を確実に防止することができ、端末部の焼き付きをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図2】同配管締結構造における各部の寸法の定義を示す模式図である。
【図3】同配管締結構造において各部に作用する力を示す模式図である。
【図4】外径が8.0mm、肉厚が1.5mmの金属管を用いる配管締結構造において、共回りがしない条件をさぐるため、軸力とトルクの関係を解析した結果を表すグラフである。
【図5】外径が8.0mm、肉厚が1.2mmの金属管を用いる配管締結構造において、共回りがしない条件をさぐるため、軸力とトルクの関係を解析した結果を表すグラフである。
【図6】外径が9.53mm、肉厚が1.2mmの金属管を用いる配管締結構造において、共回りがしない条件をさぐるため、軸力とトルクの関係を解析した結果を表すグラフである。
【図7】外径が10.0mm、肉厚が1.2mmの金属管を用いる配管締結構造において、共回りがしない条件をさぐるため、軸力とトルクの関係を解析した結果を表すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態において、肉厚部による内径減少率と圧力損失、端末部の変位の関係を表すグラフである。
【図13】本発明の第6実施形態による配管締結構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による配管締結構造の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による配管締結構造の縦断面を示す。この図1において、参照番号10は、金属管を示す。参照番号12は、ナットを示し、参照番号14は、金属管10が接続される相手方部品を示す。この実施形態では、相手方部品14は継手を構成している。金属管10の先端には、球状形状の端末部16が接合されており、この端末部16をナット12で相手方部品14に直接押し付けるようになっている。このような配管接続構造にあっては、従来の配管接続構造とは異なり、ナット12と端末部16の間にはスリーブあるいはワッシャに類する部品は介在していない。
【0015】
金属管10の末端には、継手部17が形成されている。端末部16は、全体として球状形状に形成され、第1の球面部20と第2の球面部21とからなる球状部分と、それに続く首下部18からなる。この首下部18には、金属管10の継手部17が嵌合する継手部19が形成されている。この場合、継手部19は、継手部17の外側に嵌合しており、溶接若しくはろう付けにより接合されている。そして、首下部18の外径Dは金属管10の外径D1と等しくなっているか、公差の範囲内でほぼ等しくなっており、外周面は面一である。
【0016】
次に、ナット12の端面には貫通孔23が形成されている。この貫通孔23の内径は、金属管10の外径よりも若干大きく、端末部16の首下部18は、この貫通孔23に遊嵌する。ナット12の内部には、この貫通孔23の終端から末広がりに拡径する部分と、雌ねじ部24とが形成されている。この拡径する部分の内周面は、端末部16の第2の球面部21が接触するシート面25を形成している。
【0017】
相手方部品14の継手を構成する部分の外周面には、ナット12の雌ねじ部24が螺合する雄ねじ部26が形成されている。そして、相手方部品14の先端入口には、テーパ状のシール面27が形成されている。このシール面27には、端末部16の第1の球面部20が接触するようになっている。
【0018】
次に、図2は、本実施形態による配管接続構造において、各部の寸法およびナット12を締結するときに各部に作用する力を定義する模式図である。
この図2において、金属管10の外径をD、内径をd、肉厚をtとする。
端末部16に関しては、第1球面部20がシール面27に接触する点における第1球面部20の外径をD2、第2球面部21がシート面25に接触する点における第2球面部21の外径をD3とする。なお、第1球面部20と第2球面部21は、図3における中心Oを共通にして異なる曲率半径となっている。
【0019】
ここで、外径D2と金属管10の外径Dの比(D2/D)をαとし、外径D3と金属管10の外径Dの比(D3/D)をβとすると、
D2=αD
D3=βD
である。
【0020】
図2において、ナット12を締結するときに各部に作用する力については、次のように定義される。
ナット12を締め付けると、通常は、端末部16は回転せずに、相手方部品14に押し付けられていく。これは、シール面27に対して端末部16の第1球面部20が押し付けられていることで、摩擦によって回転を抑える方向にトルクT1が作用しているからである。
【0021】
ここで、ナット12の締め付けトルクをT2とする。このほかに、金属管10は、図示しないステーなどによって固定されているので、締め付けトルクT2がかかることよって、ねじりがさらに加わるので、このときのねじり剛性トルクをT3とする。
ナット12を締め付けていっても、端末部16がナット12といっしょに回転しないのは、次のような力の関係が成立しているからである。
T1≧T2−T3 …(1)
したがって、ナット12を締め付けても、共回りし難い締結構造にするという問題を考える場合、(1)式を満たすときに、ナット12と、端末部16ではシール面27との接触点における第1球面部20の外径αDと、シート面25との接触点における第2球面部21のの径βDの間に一定の関係があることがわかれば、それにより共回りの発生しない構造を特定することができることになる。
【0022】
次に、図3は、ナット12を締結するときに各部に作用する力を分解して示す模式図である。
ここで、ナット12を締め付けるときに、端末部16を相手方部品14のシール面27に押し付ける軸方向の力をFとする。この軸方向の力Fに基づき、シール面27には接触点がなす円周の単位長さあたり、軸方向の力f1が作用し、ナット12と第2球面部21とが接触するシート面25には接触点がなす円周の単位長さあたり、軸方向の力f2が作用しているとすると、
f1=F/παD
f2=F/πβD
である。
【0023】
次に、シール面27での第1球面部20の接触点における垂直抗力をN1、接触点における接線と軸線のなす角をθ1とし、シート面25での第2球面部21の接触点における垂直抗力をN2、接触点における接線と軸線のなす角をθ2とする。
【0024】
垂直抗力N1、N2はそれぞれ
N1=f1sinθ1
N2=f2sinθ2
である。
【0025】
シール面27、シート面25におけるそれぞれの単位長さあたりの摩擦力は摩擦係数をμとすれば、μN1、μN2であり、トルクは、摩擦力×円周長×半径なので、
【数1】
となる。
【0026】
次に、ねじれ剛性については、γを金属管10の内径dと外径Dの比(d/D)として、
【数2】
と表すことができる。
【0027】
以上の式を(1)式に代入すると、
【数3】
となる。
【0028】
そこで、具体的に外径Dと肉厚tを特定した金属管10について、軸力Fを横軸にとって、縦軸にトルクの大きさをとって、端末部16の回転を抑えるトルクT1と、締め付けトルクT2−ねじれ剛性T3の変化を解析した結果を示すグラフを図4乃至図10に示す。
ここで、摩擦係数τmaxは、金属管とナットの材質から決まってくる定数である。
【0029】
この図4は、金属管10の外径Dが8mm、肉厚tが1.5mmの場合に、シール面27の接触点における第1球面部20の外径D2を決める係数αを固定して、シート面25の接触点における第2球面部21の外径D3を決める係数βの値を変化させている。
【0030】
端末部16の回転を抑えるトルクT1は、図4では太線で示す直線で表される。これに対して、締め付けトルクとねじれ剛性の差T2−T3は細線の直線で表されている。αに対してβの値が相対的に大きい場合(α/β=0.2、0.3、0.4、0.5)には、軸力がごく小さいときを除いて、T2−T3は、T1よりも大きいので、(1)式を満たしていないことがわかる。このことは、図2に即して説明すると、シート面25との接触点における第2球面部21の外径D3がシール面27との接触点における第1球面部20の外径D2に対して相対的にかなり大きいと、ナット12により端末部16を回そうとするトルクの方が、相手方部品14のシール面27で生じる回転を抑えるトルクよりも勝っているので、ナット12といっしょに端末部16が共回りしてしまうことになる。
【0031】
これに対して、α/βが0.8、0.9になると、T2−T3は、T1よりも小さくなる範囲、すなわち(1)式を満たす範囲が増えていくことがわかる。このことは、シート面25との接触点における第2球面部21の外径D3が、シール面27との接触点における第1球面部20の外径D2に対してある程度の範囲内で大きいと、ナット12により端末部16を回そうとするトルクよりも、相手方部品14のシート面25で生じる回転を抑える力が勝るので、ナット12といっしょに端末部16が共回りしなくなることを意味している。
【0032】
外径が8〜10mm、肉厚が1.0〜1.5mmの金属管の場合、締結時の軸力Fは、最大でも5kN程度、通常は3〜4kN超程度なので、軸力が最大5kNのときにT1の直線と交わるT2−T3の直線のα/βの値はどうなるかをみてみると、図4では、α/βが0.80の直線と0.60の直線を比例按分して、
α/β≧0.78
であれば、実用上、端末部16は共回りしないことがわかる。
【0033】
なお、図4では、理論上、α/βの値は、1を越えて大きいほど、端末部16は共回りしなくなることになる。しかし、α/βが1より大きいということは、第1球面部20の方が第2球面部21よりも大きくなることになり、相手部品との制約等により使用できない場合がある。
【0034】
図4と同様にして、図5において、金属管10の外径Dが8mm、肉厚tが1.2mmの場合に共回りしないようなα/βの範囲を求めると、
α/β≧0.80
である。
【0035】
以下同様に、金属管10の外径Dが9.53mm、肉厚tが1.2mmの図6では、
α/β≧0.75
金属管10の外径Dが10.0mm、肉厚tが1.2mmの図7では、
α/β≧0.72
である。
【0036】
そして、これらを範囲をすべて共通する範囲は、
α/β≧0.80 …(3)
である。以上より、この範囲にあれば、実用域において、共回りを抑制することが可能になる。
【0037】
なお、ナット12のシート面25の硬さは、端末部16の第2球面部21の表面よりも硬くなっていることが好ましい。これにより、シート面25の変形に伴う、第2球面部21との接触面積増加を防止し、共回り発生をより確実に抑止することができる。
【0038】
また、好ましくは、焼き付きを防止するために、シート面25の表面または第2球面部21の表面および第1球面部20の表面には、オイルを塗布していることが好ましい。
【0039】
第2実施形態
次に、図8は、本発明の第2実施形態による配管締結構造を示す。
【0040】
この第2実施形態は、シール面27の接触点における第1球面部20の外径D2を決める係数αと、シート面25の接触点における第2球面部21の外径D3を決める係数βの比が
α/β≧0.80
の範囲にある点で、第1実施形態と共通している(以下、第3実施形態乃至第6実施形態も同じ)。
この第2実施形態では、ナット12の貫通穴23を形成する内径部には段部30が形成され、貫通穴23の径が小さくなってから、シート面25に続くようになっている。この段部30があることよって、端末部16の第2球面部21がシート面25に接触する位置が首下部18側に近づくので、接触点における第2球面部21の外径D3が相対的に小さくなり(βが小さくなってαとβが互いに近づいていく)するため、(3)式の条件を満たし易くなる。
【0041】
第3実施形態
次に、図9は、本発明の第3実施形態による配管締結構造を示す。
この第3実施形態では、端末部16において第1球面部20と第2球面部21との境に肩部32が形成されており、この肩部32は、相手方部品14のシール面27の口元に当接するようになっている。
【0042】
このように、端末部16に肩部32を形成することにより、ナット12を締め付けていくと、図9に示すように、この肩部32が相手方部品14の口元に押し付けられるため、共回りを抑制するこトルクが口元にも発生することになる。このトルクが発生することで(1)式が確実に成り立つようになるので、共回りをより確実に防止することができる。
【0043】
第4実施形態
次に、図10は、本発明の第4実施形態による配管締結構造を示す。
この第4実施形態では、相手方部品14において、シール面27のさらに内側には、段部34が切り欠くことによって形成されている。他方、端末部16の先端部35は、この段部34に突き当たるようになっている。
このように、シール面27の内側に段部34を形成し、端末部16の先端部35を段部34に突き当てることにより、ナット12を締め付けすぎた場合には、端末部16の先端部35が段部34に当接するので、シール面27に第1球面部20が軸方向に押し込まれてシール径が小さくなると、締め付けに伴って実際のα/βの値が小さくなっていき、0.80以上を満たせなくなって共回りを生じる可能性が高まることを阻止することができる。
【0044】
第5実施形態
次に、図11は、本発明の第5実施形態による配管締結構造を示す。
この第5実施形態では、金属管10の端末部16の先端には、内側に膨出する肉厚部36が形成されており、この肉厚部36があることによって、金属管10の内径を減少させている。
【0045】
ここで、図12は、内径の減少率を横軸に取り、内径の減少率と、圧力損失、過剰にナット15を締め付け過ぎたときの端末部16の軸方向への変位との関係を示すグラフである。
【0046】
端末部16の先端に肉厚部36が形成されることによって、端末部16の先端部の剛性が高まるので、ナット15を締め付けすぎたときに、端末部16の軸方向への変位を抑制することができる。他方、肉厚部16の肉厚を厚くしてしまうと、この部分で急激に金属管10の内径が狭くなりオリフィスとして作用して、ここでの圧力損失が大きくなってしまう。
【0047】
図12から明らかなように、肉厚部36があることによって内径が60%を越えて減少してしまうと、圧力損失が大きくなる傾向にあることがわかる。
【0048】
他方、軸方向への変位については、内径の減少率が大きくなればなるほど少なくなる傾向があるが、上記のように圧力損失の増大という問題も生じてくるので、剛性の強化による変位抑制効果だけを得るという観点からは、内径の減少率は10〜60%の範囲内であることが好ましい。
【0049】
第6実施形態
次に、図13は、本発明の第6実施形態による配管締結構造を示す。
【0050】
この第5実施形態では、端末部16を金属管10に接合する継手の構造が図1と異なる実施形態である。
【0051】
首下部18には、金属管10の継手部17が嵌合する継手部19が形成されているが、この第6実施形態の場合、継手部19は、継手部17の内側に嵌合しており、溶接若しくはろう付けにより接合されている。そして、首下部18の外径D1は金属管10の外径Dと等しくなっているか、公差の範囲内でほぼ等しくなっている点は図1と同様である。
【0052】
このように、端末部16の首下部18の外径D1と金属管10の外径Dがほぼ等しくなるように接合することは、構造上、(3)式を満足するようなα、βの比になり易くなる。
【符号の説明】
【0053】
10…金属管、12…ナット、14…相手方部品、16…端末部、18…首下部、20…第1球面部、21…第2球面部、23…貫通孔、25…シート面、27…シール面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管の端末部と、ナットと、接続する相手方の部品とからなり、前記端末部を前記ナットで直接に前記相手方部品に締結する配管締結構造において、
前記金属管の端末部は、異なる曲率半径の球面をもつ第1の球面部と、第2球面部とが別部品を使わずに一体に形成され、
前記端末部の首下部の外径D1と、前記金属管の外径Dとはほぼ等しく、
前記第1の球面部が接触する前記相手方部品のシール面の接触点における該第1球面部の外径D2と前記金属管の外径Dの比(D2/D)をα、前記第2の球面部が接触する前記ナットのシート面の接触点における該第2球面部の外径D3と前記金属管の外径Dの比(D3/D)をβ、としたときに、
α/β≧0.80
を満たす範囲で前記外径D3が前記外径D2よりも大きいことを特徴とする配管締結構造。
【請求項2】
前記ナットの内径部に前記比βの値を小さくする段部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の配管締結構造。
【請求項3】
前記金属管の端末部には、前記相手方部品のシール面の口元部に当接する肩部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配管締結構造。
【請求項4】
前記シール面のさらに内側には、前記金属管の端末部の先端部が当接する段部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配管締結構造。
【請求項5】
前記金属管の端末部の先端には、内径を10〜60%減少させる肉厚部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配管締結構造。
【請求項6】
前記端末部は、金属管の末端に溶接またはろう付けにより接合され、前記金属管の外周面と前記端末部の接続部の外周面が面一になっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の配管締結構造。
【請求項7】
前記端末部は、金属管の末端をプレス成形して得られることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の配管締結構造。
【請求項8】
前記金属管および相手方部品はステンレスを材質とすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の配管締結構造。
【請求項9】
前記ナットのシート面の硬さは、前記端末部の第1の球面部表面よりも硬いことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の配管締結構造。
【請求項10】
前記端末部において、前記ナットとのシート面及び前記相手方部品とのシール面には、オイルが塗布されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の配管締結構造。
【請求項1】
金属管の端末部と、ナットと、接続する相手方の部品とからなり、前記端末部を前記ナットで直接に前記相手方部品に締結する配管締結構造において、
前記金属管の端末部は、異なる曲率半径の球面をもつ第1の球面部と、第2球面部とが別部品を使わずに一体に形成され、
前記端末部の首下部の外径D1と、前記金属管の外径Dとはほぼ等しく、
前記第1の球面部が接触する前記相手方部品のシール面の接触点における該第1球面部の外径D2と前記金属管の外径Dの比(D2/D)をα、前記第2の球面部が接触する前記ナットのシート面の接触点における該第2球面部の外径D3と前記金属管の外径Dの比(D3/D)をβ、としたときに、
α/β≧0.80
を満たす範囲で前記外径D3が前記外径D2よりも大きいことを特徴とする配管締結構造。
【請求項2】
前記ナットの内径部に前記比βの値を小さくする段部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の配管締結構造。
【請求項3】
前記金属管の端末部には、前記相手方部品のシール面の口元部に当接する肩部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配管締結構造。
【請求項4】
前記シール面のさらに内側には、前記金属管の端末部の先端部が当接する段部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配管締結構造。
【請求項5】
前記金属管の端末部の先端には、内径を10〜60%減少させる肉厚部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の配管締結構造。
【請求項6】
前記端末部は、金属管の末端に溶接またはろう付けにより接合され、前記金属管の外周面と前記端末部の接続部の外周面が面一になっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の配管締結構造。
【請求項7】
前記端末部は、金属管の末端をプレス成形して得られることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の配管締結構造。
【請求項8】
前記金属管および相手方部品はステンレスを材質とすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の配管締結構造。
【請求項9】
前記ナットのシート面の硬さは、前記端末部の第1の球面部表面よりも硬いことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の配管締結構造。
【請求項10】
前記端末部において、前記ナットとのシート面及び前記相手方部品とのシール面には、オイルが塗布されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の配管締結構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−64505(P2013−64505A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−243744(P2012−243744)
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2009−265030(P2009−265030)の分割
【原出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(390039929)三桜工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2009−265030(P2009−265030)の分割
【原出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(390039929)三桜工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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