説明

配糖体分解用組成物

【課題】種々の配糖体に対し、消化管下部における分解性を向上させ、有効成分を配糖体として含む種々の生薬、さらにはそれらにより調製される漢方薬において、経口による有効成分の吸収性および薬効を向上させ得る組成物を提供する。
【解決手段】ナリンギナーゼと、乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物を含有させることにより、種々の配糖体に対して、消化管下部における分解性を向上させる。特に、ナリンギナーゼと、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の2種の菌体または菌体抽出物を含有させることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として漢方薬に用いられる生薬に含まれる配糖体に対し、その分解を促進し得る配糖体分解用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、漢方薬は複数の生薬を組み合わせて調製される。生薬には、有効成分が配糖体として含まれているものが多い。かかる配糖体は、消化管上部では吸収されにくく、消化管下部に輸送され、消化管下部に存在する腸内細菌により代謝されることが知られている。特に配糖体成分には、腸内細菌によりグリコシド結合が解裂されてアグリコンとなることにより、活性を発現するものが多く存在する。配糖体の分解に関与する腸内細菌としては、バクテロイデス属(Bacteroides sp.)、ユーバクテリウム属(Eubacterium sp.)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus sp.)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)等の大腸に棲息する細菌類が知られており、センノシド等のように、これらのうち複数種の細菌の作用を受けて分解されるものも存在することが明らかにされている(非特許文献1)。
【0003】
また、カンゾウに含まれるグリチルリチンが、ユーバクテリウム属(Eubacterium sp.)の細菌が産生するβ−グルクロニダーゼにより分解されること、センノシドがヒト糞便より分離されたビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)の細菌が産生するβ−グルコシダーゼにより分解されることが報告されている。前記β−グルクロニダーゼおよびβ−グルコシダーゼの特異性は非常に高く、他の腸内細菌が産生するβ−グルクロニダーゼまたはβ−グルコシダーゼによっては、いずれも分解されないことが記載されている。さらに、ペオニフロリンやバルバロインも、腸内細菌の産生するβ−グルコシダーゼにより分解を受けるが、これらを分解するβ−グルコシダーゼも、特異性の高い酵素であることが記載されている。そして、ダイオウの主な成分であるセンノシドの瀉下作用の個体差が、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)の腸内菌数とそのβ−グルコシダーゼ活性に起因することなども報告されている(非特許文献2)。
【0004】
一方、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌等を含む生菌製剤や飲食品も広く用いられているが、これらの中には、連続摂取により、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)またはユーバクテリウム属(Eubacterium sp.)の腸内細菌を増加させるものや、腸内細菌のβ−グルクロニダーゼ量を低下させるものが存在することが報告されている(非特許文献3)。
【0005】
すなわち、配糖体の分解に関与する加水分解酵素には、基質特異性の高いものが多く、生薬に含まれる配糖体の種類により、経口摂取した場合に、腸内細菌による分解性が異なってくる。従って、配糖体を含む生薬を経口摂取した場合、腸内細菌叢の個人差や、同一個体においてもその変動により、吸収性および薬効の発現性が異なってくる可能性が高い。上記の生菌製剤や飲食品により、腸内細菌の増加を図ったとしても、すべての腸内細菌を増加させることができるわけではない。ましてや、複数種の生薬により調製される漢方薬では、漢方薬に含まれる配糖体の分解性が、その種類や腸内細菌叢の状態により異なることから、病状、体調等がさまざまな患者において、常に良好な吸収性および薬効を得ることは困難である。
【0006】
なお、乳酸菌等の生菌を含む組成物として、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)に属する菌を含有する非発酵食品が開示されている(特許文献1)。しかし、特許文献1に記載された技術は、食品の酸度上昇および風味劣化の抑制、ならびにビフィズス菌の生残性の向上を図るものであり、漢方薬に用いられる生薬に含まれる配糖体の分解性については、示唆すらされていない。
【0007】
また、配糖体の加水分解酵素の利用に関しては、ナリンギナーゼが苦味改善用の食品添加物として用いられており、ルチンからクエルセチンおよびイソクエルシトリンを得るためにナリンギナーゼ等を用いることが開示されている(特許文献2)。しかし、ナリンギナーゼがナリンギンのようなラムノグルコシド以外の配糖体に対して分解性を有すること、および乳酸菌等と組み合わせて用いた場合の分解性については、これまで示唆すらされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−186422号公報
【特許文献2】特表2006−502712号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Biophilia 2 (3) 54-58 (2006)
【非特許文献2】和漢医薬学会誌 9 (1) 1-13 (1992)
【非特許文献3】薬学雑誌 122 (9) 695-701 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明においては、種々の配糖体に対し、消化管下部における分解性を向上させ、有効成分を配糖体として含む種々の生薬、さらにはそれらにより調製される漢方薬において、有効成分の経口による吸収性および薬効を向上させ得る組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、ナリンギナーゼと、乳酸菌等所定の菌体または菌体抽出物を含有させることにより、種々の配糖体に対して、消化管下部における分解性を向上させることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は次の[1]〜[13]に関する。
[1]ナリンギナーゼと、乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物を含有する、配糖体分解用組成物。
[2]乳酸菌が、ラクトバシラス属(Lactobacillus sp.)およびビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)に属する細菌である、上記[1]に記載の組成物。
[3]乳酸菌が、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)である、上記[1]に記載の組成物。
[4]ナリンギナーゼを、組成物の全量に対して0.001重量%〜10重量%含有する、上記[1]に記載の組成物。
[5]乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物を、総乾燥重量にして、組成物全量に対して0.001重量%〜90重量%含有する、上記[1]に記載の組成物。
[6]ナリンギナーゼと、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)の菌体または菌体抽出物およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の菌体または菌体抽出物を含有する、配糖体分解用組成物。
[7]ナリンギナーゼを、組成物の全量に対して0.001重量%〜10重量%含有する、上記[6]に記載の組成物。
[8]ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)の菌体または菌体抽出物およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の菌体または菌体抽出物を、乾燥重量にして7:1〜3:4の重量比で含有する、上記[6]に記載の組成物。
[9]ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)の菌体または菌体抽出物およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の菌体または菌体抽出物を、これらの総乾燥重量にして、組成物全量に対して0.001重量%〜90重量%含有する、上記[6]に記載の組成物。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物を含有する、医薬品。
[11]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物と、配糖体を含む生薬とを含有する、医薬品。
[12]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物と、漢方薬とを含有する、医薬品。
[13]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物を含有する、飲食品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配糖体分解用組成物を経口摂取することにより、種々の配糖体に対し、特に消化管下部における分解を促進し、活性体であるアグリコンの形成を促進することができる。その結果、有効成分を配糖体として含む種々の生薬に対し、有効成分の吸収性および薬効を向上させることができる。さらに、複数種の生薬により調製される漢方薬に対し、それらの消化管における吸収性および薬効を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の配糖体分解用組成物は、ナリンギナーゼと、乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物を含有してなる。なお、本発明の目的には、乳酸菌の1種または2種以上を含有させることが好ましい。
【0015】
本発明において用いるナリンギナーゼは、ナリンギンの加水分解反応を触媒する酵素であり、グレープフルーツ、ハッサクなど柑橘類の果皮付近に多く含まれるナリンギンに対し、グリコシド結合の解裂によりナリンゲニンを生成する反応を促進する。ナリンギナーゼは、Aspergillus属、Penicillium属等の糸状菌培養液より抽出、精製して得られ、食品添加物として使用される。本発明においては、ナリンギナーゼを含む前記糸状菌等の抽出物をそのまま用いることもできるが、精製したナリンギナーゼを用いることが好ましく、食品添加物として市販されているナリンギナーゼ製品を用いるのが便利である。
【0016】
本発明において、ナリンギナーゼとともに用いる乳酸菌は、糖類の代謝により乳酸を産生する細菌類であって、悪臭の原因となる腐敗物質を産生しないものをいい、ラクトバシラス属(Lactobacillus sp.)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus sp.)、ラクトコッカス属(Lactococcus sp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、リューコノストック属(Leuconostoc sp.)等の細菌が挙げられる。本発明の目的には、腸内に常在し、腸内環境を整える働きを有するものが好ましい。かかる乳酸菌としては、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)、ラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)、カゼイ菌(Lactobacillus casei)等のラクトバシラス属(Lactobacillus sp.)に属する細菌;ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)等のビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)に属する細菌;フェカリス菌(Enterococcus faecalis)、フェシウム菌(Enterococcus faecium)等のエンテロコッカス属(Enterococcus sp.)に属する細菌などが挙げられる。本発明の目的には、ラクトバシラス属(Lactobacillus sp.)およびビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)に属する細菌がより好ましく用いられ、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)が特に好ましく用いられる。
【0017】
また、本発明において用いる酪酸菌(Clostridium butyricum)は、酪酸を生成する偏性嫌気性の芽胞形成グラム陽性桿菌であり、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)は、芽胞を形成する枯草菌の1種である。
【0018】
本発明の配糖体分解用組成物には、上記した乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から1種または2種以上を選択し、その菌体、または菌体の抽出物を用いる。これらは、ブイヨン培地等の一般細菌用培地、乳酸菌用培地、クロストリディウム用培地、バシラス用培地などを用いて通常の培養方法(好気培養または嫌気培養)により培養することができる。本発明においては、前記細菌の培養液をそのまま、もしくは濃縮して用いることもできるが、前記培養液より遠心分離もしくはフィルターろ過し、または寒天平板培地上より菌体をかき取る等して分離、集菌し、かかる菌体をそのまま、もしくは滅菌精製水等に懸濁し、または凍結乾燥して用いることもできる。あるいは、かかる菌体より、水、リン酸緩衝液等の溶媒による抽出、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィーなど、公知の抽出、精製方法により、β−グルコシダーゼやβ−グルクロニダーゼ等の配糖体を加水分解する酵素を抽出し、または前記酵素を含む画分を分取して、用いてもよい。本発明において、経口摂取させた後、腸内において配糖体を効率よく分解させるためには、乳酸菌等の1種または2種以上は、生菌のまま、もしくは生菌を凍結乾燥して用いることが好ましい。
【0019】
本発明の配糖体分解用組成物において、良好な配糖体の分解性を得るためには、ナリンギナーゼは組成物の全量に対し、精製品の乾燥重量にして0.001重量%〜10重量%含有させることが好ましい。また、乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物は、総乾燥重量にして、組成物の全量に対し、0.001重量%〜90重量%含有させることが好ましい。さらに、前記乳酸菌等の1種または2種以上を、生菌として用いる場合には、生菌数(colony forming unit;cfu)にして1×10cfu〜5×1010cfuの範囲で含有させることが好ましい。なお、ナリンギナーゼは、前記乳酸菌等の総乾燥重量に対して、精製品の乾燥重量比として1:300〜1:30の範囲で含有させることが好ましい。
【0020】
なお、本発明の好ましい一態様においては、ナリンギナーゼと、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)の菌体または菌体抽出物およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の菌体または菌体抽出物を含有させて、配糖体分解用組成物とする。
【0021】
上記したように、本発明において好ましく用いられるガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)は、小腸内に長くとどまり、小腸の蠕動運動を活発化する作用を有することが知られている。また、ラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)は、すぐきの漬物から単離された乳酸菌であり、便通を整え、腸内環境を良好な状態にする効果や、免疫力を高める効果を有するといわれている。これらは、通常の乳酸菌培養用培地、たとえばMRS培地等を用いて培養することができる。本発明においては、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)は、上記したように、前記乳酸菌用培地による培養液をそのまま、もしくは濃縮して用いてもよく、また分離、集菌した菌体をそのままもしくは滅菌精製水等に懸濁し、あるいは凍結乾燥等により乾燥して用いることもできる。さらに、上記したように、前記菌体より、公知の方法により抽出、精製して得た配糖体を加水分解する酵素、または前記酵素を含む画分を用いることもできる。本発明の配糖体分解用組成物には、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の各菌体または菌体抽出物は、乾燥重量比にして、7:1〜3:4の範囲で混合して用いることが好ましい。ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の各菌体または菌体抽出物を、乾燥重量比にして7:1〜3:4の範囲で用いた場合、種々の配糖体に対し幅広く良好な分解性を発揮し得る。なお、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の各菌体を生菌として含有させる場合は、これらは生菌数にてそれぞれ1×10cfu〜5×1010cfuの範囲で含有させることが好ましい。また、生菌数比にして、3:1〜1:3の範囲で含有させることが好ましい。
【0022】
本態様の配糖体分解用組成物においては、ナリンギナーゼは、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の各菌体または菌体抽出物の総乾燥重量に対して、精製品の乾燥重量比にして1:300〜1:30の範囲で含有させることが、良好な配糖体分解性を与える点で好ましい。また、ナリンギナーゼは、組成物の総重量に対して精製品の乾燥重量比にして0.001重量%〜10重量%含有させることが好ましい。一方、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の各菌体または菌体抽出物は、組成物の全量に対し、総乾燥重量にして0.001重量%〜90重量%含有させることが好ましい。
【0023】
本発明の配糖体分解用組成物は、液状、懸濁状、乳状等の液状形態;ゼリー状、スラリー状等の半固形状形態;ゲル状、粉末状、顆粒状等の固形状形態など、種々の形態とすることができる。また、本発明の配糖体分解用組成物には、ナリンギナーゼと、上記乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物以外に、本発明の配糖体分解活性を損なわない範囲で、後述する医薬品用または飲食品用添加物を添加することができる。
【0024】
また、本発明の配糖体分解用組成物は、ナリンギナーゼと、上記乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物とを混合し、そのまま医薬品または飲食品として提供してもよく、水の他、エタノール等のアルコール類、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類、油脂類、ゲル、ミセル、エマルション、粉体、カプセル、リポソームなど、医薬品または飲食品用の担体に含有させて、提供してもよい。
【0025】
医薬品としては、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液状製剤;ゼリー剤、スラリー剤等の半固形状製剤;散剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、ゲル剤、カプセル剤、チュアブル剤等の固形状製剤などの形態で提供することができる。これらのなかでも、本発明の配糖体分解用組成物が、消化管下部における生薬の配糖体の分解促進を目的とすることから、経口投与に適する形態で提供されることが好ましい。本発明の配糖体分解用組成物を含有する医薬品においては、その製剤化に際し必要に応じて、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、界面活性剤、増粘剤、コーティング剤、pH調整剤、抗酸化剤、嬌味剤、防腐剤、着色剤、香味剤等の一般的な医薬品添加物を添加することができる。
【0026】
上記賦形剤としては、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロースおよびその誘導体;コムギデンプン、トウモロコシデンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、デキストリン等のデンプンおよびその誘導体;アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等の天然高分子化合物;ブドウ糖、マルトース、ソルビトール、マルチトール、マンニトール等の糖および糖アルコール;塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の無機塩類などが挙げられる。
【0027】
上記結合剤としては、グアーガム、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、高分子ポリビニルピロリドン、乳糖などが、上記滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000などが、上記崩壊剤としては、アジピン酸、ステアリン酸カルシウム、白糖などが挙げられる。
【0028】
上記界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、大豆レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ゼラチンなどが、コーティング剤としては、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、カラメル、カルナウバロウ、セラック、白糖、プルランなどが挙げられる。
【0029】
pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが、抗酸化剤としては、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、没食子酸プロピルなどが、嬌味剤としては、アスパルテーム、サッカリンなどが挙げられ、防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチルなどが、着色剤としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カルミン、食用青色1号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、銅クロロフィリンナトリウムなどが、香味剤としては、オイゲノール、バニリン、メントールなどが挙げられる。
【0030】
飲食品としては、液状、懸濁状、乳状等の液状飲食品;スラリー状、ゼリー状、クリーム状等の半固形状飲食品;粉末状、顆粒状、タブレット状、シート状、ゲル状、カプセル状等の固形状飲食品などの形態で提供することができる。また、一般の加工食品のほか、特定保健用食品、栄養機能食品等の保健機能食品や、栄養補助食品などとすることができる。これら飲食品には、本発明の配糖体分解用組成物のほかに、一般的な飲食品用添加物を添加することができる。
【0031】
上記添加物としては、たとえば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が挙げられる。
【0032】
本発明の配糖体分解用組成物は、種々の配糖体に対して幅広く分解性を示す。本発明の配糖体分解用組成物が有効に作用し得る配糖体としては、アルブチン、サリシン、ペオノシド、ペオノリド等のフェノール配糖体;エスクリン等のクマリン配糖体;ゲニポシド、カタルポール、ロガニン、レーマニオシド類等のイリドイド配糖体;ゲンチオピクロシド、スウェルチアマリン、スウェロシド、モロニシド等のセコイリドイド配糖体;ペオニフロリン、レーマピクロシド等のモノテルペノイド配糖体;アルクチイン等のリグナン配糖体;レーマイオノシド類等のヨノン配糖体;イソリクイリチン等のカルコン配糖体;リクイリチン等のフラバノン配糖体;バイカリン、オウゴノシド、オウゴニン7−グルコシド等のフラボン配糖体;ダイジン等のイソフラボン配糖体;クゥエルシトリン、イソクゥエルシトリン等のフラボノール配糖体;β−シトステロール配糖体等のステロール配糖体;センノシドA、センノシドB等のジアントロン類;グリチルリチン、サイコサポニン類、プラチコディン類、ギンセノシド類等のサポニン;5−O−メチルビサンミノールグルコシド等のクロモン配糖体;シアニン等のアントシアニジン配糖体;ベルベリン9−O−グルクロニド等のアルカロイド配糖体などのO−グリコシド、シニグリン、グルコシナルビン等のS−グリコシド、バルバロイン等のアントロン配糖体;カッコン中のイソフラボン配糖体であるプエラリン;ベニバナ色素であるカルサミンなどのC−グリコシドが代表的なものとして挙げられる。
【0033】
本発明の配糖体分解用組成物は、摂取させる対象者の性別、年齢、体重、腸内細菌叢の状態、分解の対象となる配糖体の種類等により異なるが、成人(体重60kg)につき1日あたり、ナリンギナーゼおよび乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物の総乾燥重量にして、通常は0.0001mg〜500mg、好ましくは0.01mg〜100mgを摂取させる。なお、前記の量を1回で摂取させてもよく、数回に分けて摂取させてもよい。
【0034】
特に、飲食品が特定保健用食品、栄養機能食品等の保健機能食品や、栄養補助食品である場合には、ナリンギナーゼおよび乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物を、上記により設定された1回あたりの摂取単位量を含有するように、1食分ずつ包装した形態や、1回あたりの摂取単位量を懸濁あるいは溶解した飲料を、1食あたりの飲み切りの形態で瓶等に充填した形態で提供することが好ましい。
【0035】
なお、本発明の配糖体分解用組成物は、食品添加物として用いられるナリンギナーゼと、生菌製剤として用いられる乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物を主な成分として含有するものであり、経口安全性が高く、腸内細菌叢に対し悪影響を与えることもないので、長期間連続して摂取させることができる。特に、慢性疾患や体質改善を目的とする生薬や漢方薬については、2週間〜1ヶ月間とかなり長期間にわたり服用することも少なくない。従って、かかる生薬や漢方薬の経口吸収性および薬効の向上を図るためには、本発明の配糖体分解用組成物を、前記生薬や漢方薬の服用期間中、連続して摂取させることが好ましい。
【0036】
また、本発明においては、上記した本発明の配糖体分解用組成物と、配糖体を含む生薬とを含有する医薬品を提供することができる。かかる医薬品を経口摂取した場合、生薬の配糖体の分解性が向上して、活性体である有効成分の消化管からの吸収性が高くなることが期待される。
【0037】
本発明の配糖体分解用組成物とともに含有させる生薬としては、主な有効成分を配糖体として含む生薬であれば制限なく用いることができるが、たとえば、アロエ(Aloe)、オウゴン(Scutellariae Radix)、オウレン(Coptidis Rhizoma)、カッコン(Puerariae Radix)、カンゾウ(Glycyrrhizae Radix)、キキョウ(Platycodi Radix)、ケイヒ(Cinnamomi Cortex)、ゲンチアナ(Gentianae Radix)、コウカ(Carthami Flos)、サイコ(Bupleuri Radix)、サンシシ(Gardeniae Fructus)、サンシュユ(Corni Fructus)、ジオウ(Rehmanniae Radix)、シャクヤク(Paeoniae Radix)、ジュウヤク(Houttuyniae Herba)、センナ(Sennae Folium)、センブリ(Swertiae Herba)、ソヨウ(Perillae Herba)、ダイオウ(Rhei Rhizoma)、ニンジン(Ginseng Radix)、ハッカ(Menthae Herba)、ハンゲ(Pinelliae Tuber)、ボウフウ(Saposhnikoviae Radix)、ボタンピ(Moutan Cortex)、レンギョウ(Forsythiae Fructus)などを挙げることができる。
【0038】
さらにまた、本発明においては、上記した本発明の配糖体分解用組成物と、主として配糖体を含む生薬により調製される漢方薬とを含有する医薬品を提供することができる。かかる医薬品を経口摂取した場合、漢方薬の調製に用いられている生薬の配糖体の分解性が向上して、消化管からの有効成分の吸収性が高くなり、その結果当該漢方薬の吸収性および薬効が向上することが期待される。
【0039】
本発明の配糖体分解用組成物とともに含有させる漢方薬としては、安中散、温清飲、黄ごん湯、黄連湯、乙字湯、葛根湯、甘草湯、桔梗湯、柴胡桂枝湯、芍薬甘草湯、十全大補湯、清心連子飲、大黄甘草湯、当帰芍薬散、人参湯、半夏瀉心湯、防風通聖散、六味丸等、一般用漢方製剤承認基準に示されている漢方薬などが挙げられる。
【0040】
本発明の配糖体分解用組成物は、医薬品製剤または飲食品の一般的な製造方法、たとえば日本薬局方製剤総則や医薬品製造指針に記載された方法により、製造することができる。すなわち、上記したナリンギナーゼおよび乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物を、必要により懸濁化剤または分散剤を加えて水等の溶剤に懸濁または分散して懸濁剤または分散剤とし、あるいは乳化剤と油性成分を加えて乳化して乳剤とする。また、前記ナリンギナーゼ等を粉末化し、必要に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤とともに混合して粉末状または微粒状として散剤とする。また、粉末化したナリンギナーゼ等に、必要に応じて賦形剤等の添加剤を加えて混合し、均質化したものを粒状とし、整粒して顆粒剤とする。さらに、前記のように、粒状もしくは成形物としたものを硬カプセルに充填して、硬カプセル剤としたり、ナリンギナーゼ等を粉末化し、必要により賦形剤等の添加剤を加えて混合し、均質化したものを、ゼラチン等のカプセル基剤にグリセリンまたはソルビトール等を加えて可塑性を増したもので被包成形して、軟カプセル剤とすることができる。さらにまた、顆粒状とした本発明の配糖体分解用組成物を圧縮成形したり、溶媒で湿潤させた後、型に流し込んで成形することにより、錠剤とすることができる。
【0041】
上記の顆粒剤やカプセル剤は、徐放性または腸溶性被膜により処理したり、徐放性または腸溶性の剤皮で処理したりして、徐放性または腸溶性製剤とすることができる。また、錠剤の場合も、糖衣錠やフィルムコーティング錠、徐放錠もしくは腸溶錠とすることができる。
【0042】
本発明の配糖体分解用組成物と、配糖体を含む生薬とを含有させて医薬品とする場合、これら生薬は、生のまま細切または粉砕して用いることもでき、また水、温水、エタノール等による抽出物をそのまま用いることもできるが、乾燥した後粉砕したもの、または前記抽出物を濃縮乾燥したものを用いることが好ましい。配糖体を含む生薬を主な構成生薬として調製される漢方薬を含有させて医薬品とする場合も、これら漢方薬は乾燥し粉末としたもの、または水等による抽出物を濃縮、乾燥したものが好ましく用いられる。本発明の医薬品における前記生薬や漢方薬の種類および含有量は、これら医薬品を摂取する患者の性別、年齢、体重、症状等により、適宜決定される。
【0043】
本発明の配糖体分解用組成物と、上記生薬や漢方薬とを含有させて医薬品とする場合、ナリンギナーゼおよび乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物と、上記生薬等は、ともに混合して均一とした一剤式の医薬品製剤とすることもできるが、ナリンギナーゼおよび乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物と、上記生薬等とを、それぞれ別々に製剤化して、服用時に同時に摂取する二剤式の医薬品製剤とすることもできる。
【実施例】
【0044】
さらに、本発明について、実施例により詳細に説明する。
【0045】
[実施例1]配糖体分解用組成物
ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri NT)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)をそれぞれMRS培地にて37℃で48時間嫌気培養し、培養液を遠心分離(10,000r.p.m.、5分)して集菌し、滅菌水で2回洗浄した後、凍結乾燥した。各菌体を乾燥重量比にて6.3:2.8となるように混合し、前記混合物9.1mgにナリンギナーゼ(ナリンギナーゼ「アマノ」、純度3.0重量%、力価169U/g;天野エンザイム株式会社製)10mgを添加、混合して、上記組成物とした。
【0046】
[比較例1〜3]配糖体分解用組成物
ナリンギナーゼ(ナリンギナーゼ「アマノ」、純度3.0重量%、力価169U/g;天野エンザイム株式会社製)10mgを比較例1、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri NT)の凍結乾燥粉末6.3mg、およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の凍結乾燥粉末2.8mgを、それぞれ比較例2および3の上記組成物とした。
【0047】
[配糖体の分解性試験]
(1)実施例1および比較例1〜3の配糖体分解用組成物を、それぞれ滅菌水に懸濁し、防風通聖散15mgを加えて溶解した後、滅菌水で全量を4.5mLとしたものを試料とした。また、前記試料と同濃度となるように、防風通聖散50mgを滅菌水に溶解して15mLとしたものを対照とした。
(2)上記の各試料および対照を37℃で5時間インキュベートし、配糖体を定量するまで凍結保存した。
(3)配糖体の定量時に各試料を室温にて自然解凍し、転倒混和した。新しいエッペンチューブに0.5mLを採取し、5,000r.p.m.にて5分間遠心分離し、上清を採取して同条件にて再度遠心分離した。
(4)上清を採取し、上清中のゲニポシド(Geniposide)、ペオニフロリン(Paeoniflorin)、アルクチイン(Arctiin)、センノシドA(Sennoside A)およびバイカリン(Baicalin)を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。なお、HPLCの測定条件は次の通りである。
<HPLC測定条件>
機器構成:
インジェクター;東ソー オートサンプラ AS−8020
ポンプ等;東ソー オンラインデガッサ SD−8022
東ソー マルチポンプ CCPM−2
東ソー CCP コントローラ PX−8020
検出器;東ソー 紫外線検出器 UV−8020
データ処理装置;島津 クロマトパック C−R8A
カラム:5C18−AR−2(ナカライテスク)
カラム温度:室温
測定波長:254nm
移動相:
A;0.1(v/v)%ギ酸メタノール溶液
B;精製水
分析条件:
0分〜50分;A 20%、B 80%
50分〜55.01分;A 100%、B 0%
55.01分〜60分;A 20%、B 80%
【0048】
上記の配糖体の分解性試験は各試料について2回行い、試験結果は、各試料に残存する上記の各配糖体について、対照における各配糖体濃度を100%としたときの割合(%)の平均値にて、表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1より明らかなように、実施例1の配糖体分解用組成物においては、ペオニフロリンを除き、良好な分解性が見られ、バイカリンについてはほとんど分解されており、ゲニポシド、アルクチインおよびセンノシドAについては、15%〜22%程度の残存率を示す程度であった。これに対して、比較例の各配糖体分解用組成物においては、全般的に実施例1の配糖体分解用組成物に比べて各種配糖体の分解性が悪く、ナリンギナーゼのみを含有する比較例1の配糖体分解用組成物においては、ペオニフロリンの分解は見られず、アルクチインおよびセンノシドAについても、残存率が50%以上であった。また、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri NT)の凍結乾燥粉末よりなる比較例2の配糖体分解用組成物においても、ゲニポシドおよびペオニフロリンの残存率が90%以上であり、ラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の凍結乾燥粉末よりなる比較例3の配糖体分解用組成物では、センノシドAを除き、配糖体の残存率は50%以上であった。
【0051】
[実施例2]配糖体分解用組成物
アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus NT)をMRS培地にて37℃で48時間嫌気培養し、培養液を遠心分離(10,000r.p.m.、5分)して集菌し、滅菌水で2回洗浄後、凍結乾燥する。生菌数にして5×10cfuの前記菌体と、ナリンギナーゼ(ナリンギナーゼ「アマノ」、純度3.0重量%、力価169U/g;天野エンザイム株式会社製)10mgを混合し、上記組成物とする。
【0052】
[実施例3]配糖体分解用組成物
ビフィズス菌(Bifidobacterium longum NT)をMRS培地にて37℃で48時間嫌気培養し、培養液を遠心分離(10,000r.p.m.、5分)して集菌し、滅菌水で2回洗浄後、凍結乾燥する。生菌数にして5×10cfuの前記菌体と、ナリンギナーゼ(ナリンギナーゼ「アマノ」、純度3.0重量%、力価169U/g;天野エンザイム株式会社製)10mgを混合し、上記組成物とする。
【0053】
[実施例4]配糖体分解用組成物
ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri NT)、ラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)およびアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus NT)をそれぞれMRS培地にて37℃で48時間嫌気培養し、培養液を遠心分離(10,000r.p.m.、5分)して集菌し、滅菌水で2回洗浄後、凍結乾燥する。生菌数にしてそれぞれ1×1010cfu、1×1010cfu、5×10cfuの前記各菌体と、ナリンギナーゼ(ナリンギナーゼ「アマノ」、純度3.0重量%、力価169U/g;天野エンザイム株式会社製)10mgを混合し、上記組成物とする。
【0054】
[実施例5]配糖体分解用組成物
ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri NT)、ラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)およびビフィズス菌(Bifidobacterium longum NT)をそれぞれMRS培地にて37℃で48時間嫌気培養し、培養液を遠心分離(10,000r.p.m.、5分)して集菌し、滅菌水で2回洗浄後、凍結乾燥する。生菌数にしてそれぞれ1×1010cfu、1×1010cfu、5×10cfuの前記各菌体と、ナリンギナーゼ(ナリンギナーゼ「アマノ」、純度3.0重量%、力価169U/g;天野エンザイム株式会社製)10mgを混合し、上記組成物とする。
【0055】
[実施例6]配糖体分解用組成物
ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri NT)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)をそれぞれMRS培地にて37℃で48時間嫌気培養し、培養液を遠心分離(10,000r.p.m.、5分)して集菌し、滅菌水で2回洗浄後、凍結乾燥する。また、酪酸菌(Clostridium butyricum NT)をクロストリディウム用培地にて37℃で48時間嫌気培養し、培養液を遠心分離(10,000r.p.m.、5分)して集菌し、滅菌水で2回洗浄後、凍結乾燥する。生菌数にしてそれぞれ1×1010cfu、1×1010cfu、1×10cfuの前記各菌体と、ナリンギナーゼ(ナリンギナーゼ「アマノ」、純度3.0重量%、力価169U/g;天野エンザイム株式会社製)10mgを混合し、上記組成物とする。
【0056】
[実施例7]配糖体分解用組成物
ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri NT)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)をそれぞれMRS培地にて37℃で48時間嫌気培養し、培養液を遠心分離(10,000r.p.m.、5分)して集菌し、滅菌水で2回洗浄後、凍結乾燥する。また、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto NT)をバシラス用培地にて37℃で48時間培養し、培養液を遠心分離(10,000r.p.m.、5分)して集菌し、滅菌水で2回洗浄後、凍結乾燥する。生菌数にしてそれぞれ1×1010cfu、1×1010cfu、1×10cfuの前記各菌体と、ナリンギナーゼ(ナリンギナーゼ「アマノ」、純度3.0重量%、力価169U/g;天野エンザイム株式会社製)10mgを混合し、上記組成物とする。
【0057】
なお、実施例1の配糖体分解用組成物は、ペオニフロリンに対してはあまりよい分解性を示さなかった。これは、ペオニフロリンにおいてグルコースの結合している水酸基は、架橋形成に関与している炭素原子に結合する3級の水酸基であることから、立体的な障害等により、酵素による加水分解が進行しにくいためであると考えられる。
しかし、消化管下部には、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)以外に他の腸内細菌が多種類存在し、配糖体の分解に関与する酵素も、ナリンギナーゼ以外に多種類存在する。従って、本発明の配糖体分解用組成物を摂取した場合、消化管下部の腸内細菌や腸内の酵素類との相互作用により、ペオニフロリンに対する配糖体分解性も向上する可能性が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上詳述したように、本発明により、経口摂取した場合に種々の配糖体に対し、特に消化管下部における分解を促進し、アグリコンの形成を促進することのできる配糖体分解用組成物を提供することができる。従って、本発明の配糖体分解用組成物は、有効成分を配糖体として含む種々の生薬とともに摂取することにより、前記生薬に含まれる有効成分の吸収性および薬効を向上させることができる。さらに、複数種の生薬により調製される漢方薬とともに摂取することにより、その消化管における吸収性および薬効を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナリンギナーゼと、乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物を含有する、配糖体分解用組成物。
【請求項2】
乳酸菌が、ラクトバシラス属(Lactobacillus sp.)およびビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp.)に属する細菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
乳酸菌が、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ナリンギナーゼを、組成物の全量に対して0.001重量%〜10重量%含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
乳酸菌、酪酸菌(Clostridium butyricum)および納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)よりなる群から選ばれる1種または2種以上の菌体または菌体抽出物を、総乾燥重量にして、組成物全量に対して0.001重量%〜90重量%含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ナリンギナーゼと、ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)の菌体または菌体抽出物およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の菌体または菌体抽出物を含有する、配糖体分解用組成物。
【請求項7】
ナリンギナーゼを、組成物の全量に対して0.001重量%〜10重量%含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)の菌体または菌体抽出物およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の菌体または菌体抽出物を、乾燥重量にして7:1〜3:4の重量比で含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
ガッセリ菌(Lactobacillus gasseri)の菌体または菌体抽出物およびラブレ菌(Lactobacillus brevis subsp. coagulans)の菌体または菌体抽出物を、これらの総乾燥重量にして、組成物全量に対して0.001重量%〜90重量%含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を含有する、医薬品。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物と、配糖体を含む生薬とを含有する、医薬品。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物と、漢方薬とを含有する、医薬品。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を含有する、飲食品。

【公開番号】特開2012−1510(P2012−1510A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139466(P2010−139466)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(392008541)日東薬品工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】