説明

配線固定具

【課題】ケーブル本体の固定機能とテンションメンバの固定機能との両者を備えた合理的な配線固定具を提供する。
【解決手段】配線固定具1の本体10を、背板11の上下に一対の突片12、12を一体的に突設してなるコ字状に形成する。そして、背板11の中央部には、前方へと膨出するアーチ状の膨出部14を設け、該膨出部14の左右両側部に、固定ネジを挿通可能な固定孔15、15を穿設する。また、突片12、12の背板11との連結部の略中央には、膨出部14に沿った形状の切り欠き16を設け、本体10の固定面への取付状態において、膨出部14の後方にケーブル本体3を通すことができるようにする。さらに、各突片12とフランジ部13との連結部に、逆三角形状に切り欠かれた切り欠き部17を設け、該切り欠き部17内を挿通させることによって、本体10の膨出部14前方にテンションメンバ4を通すことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば光成端箱内等において、光ケーブルやテンションメンバを固定するための配線固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば光成端箱内において、光ケーブルのケーブル本体及び光ケーブルのテンションメンバは夫々専用の固定具にて固定されており、ケーブル本体を固定するケーブル固定具としては、特許文献1に開示されているもの、テンションメンバを固定するテンションメンバ固定具としては、特許文献2に開示されているようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−201640号公報
【特許文献1】特開2000−266955号公報
【0004】
ここで、従来より知られているケーブル固定具81及びテンションメンバ固定具82について、図8をもとに説明する。図8は、光ケーブルの終端の固定に係る従来例について示した説明図である。
光ケーブルは、その終端においてケーブル本体83からテンションメンバ84が引き出された状態となっており、ケーブル本体83及びテンションメンバ84は、夫々専用のケーブル固定具81及びテンションメンバ固定具82により固定されている。
【0005】
ケーブル固定具81は、コ字状の本体85の背板側を光成端箱内に固定可能としたものであって、背板から突設する一対の突片には、ケーブル本体83を挿通可能な挿通孔86が設けられている。また、一対の突片間には、本体85を挿通するケーブル本体83を背板側へと押圧して固定する押圧板87が取り付けられており、ネジ88、88の締め付け具合によってケーブル本体83の固定/解除を可能としている。一方、テンションメンバ固定具82は、コ字状の本体89の背板側を固定面から突出するように固定可能としたものであって、本体89の背板から突設する一対の突片には、テンションメンバ84を挿通可能な挿通孔90が穿設されている。そして、本体89の背板に取り付けられているネジ91、91の締め付け具合によって、挿通孔90を挿通状態にあるテンションメンバ84の固定/解除を可能としている。
【0006】
上述したようなケーブル固定具81及びテンションメンバ固定具82によれば、光成端箱内における光ケーブルの入線方向にしたがって両固定具81、82を設置し、ケーブル本体83をケーブル固定具81により、テンションメンバ84をテンションメンバ固定具84によって夫々固定していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような従来のケーブル固定具81及びテンションメンバ固定具82を用いると、両固定具81、82を一旦設置した(たとえば光成端箱内に取り付けた)後で、光ケーブルの入線方向を変更したいような場合に、両固定具81、82を一度取り外して再設置し直す必要があり、煩わしい。また、各固定具81、82は、ケーブル本体83又はテンションメンバ84を固定する専用の固定具であるため、光ケーブルの固定作業にかかる部品の種類が多くなり、両固定具81、82の管理や使い分け等が煩雑であるという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであって、ケーブル本体の固定機能とテンションメンバの固定機能との両者を備えた合理的な配線固定具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、光成端箱内等において、光ケーブルのケーブル本体やテンションメンバを固定するための配線固定具であって、ケーブル本体を固定するためのケーブル本体固定機構と、前記ケーブル本体と平行方向にテンションメンバを固定可能なテンションメンバ固定機構とを設けたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、本体を、背板の上下に一対の突片を一体的に設けてなる側面コ字状に成形し、前記背板の左右両側部に、前記突片を前方へ突出させた姿勢で前記本体を固定面へ設置するための固定部材を取り付ける固定部を設けるとともに、該固定部間で且つ前記上下の突片間に亘って、前方へ膨出し、前記固定部材による固定面への取り付けによって後方に位置させたケーブル本体を固定面側へ押さえ付けて固定する膨出部を設ける一方、前記一対の突片に、テンションメンバを挿通可能な挿通孔を穿設するとともに、該挿通孔に挿通状態にあるテンションメンバを押さえ付けて固定する押圧手段を設け、前記固定部材による固定面への取付状態において、前記本体の上方又は下方から、光ケーブルのケーブル本体は前記膨出部の後方に、テンションメンバは前記挿通孔に挿通させることによって、ケーブル本体又はテンションメンバの何れかを固定可能としたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明において、ケーブル本体固定機構及びテンションメンバ固定機構を左右方向で複数備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配線固定具に、ケーブル本体を固定するためのケーブル本体固定機構と、ケーブル本体と平行方向にテンションメンバを固定可能なテンションメンバ固定機構との両者を設けているため、光ケーブルの固定に係り固定箇所毎に専用の固定具を夫々準備する必要がない。したがって、従来と比較して、固定具に係る生産コストの低減を図ることができ、固定具の管理も容易となる上、固定箇所において固定具を使い分ける必要もなく、使い勝手が良い。
また、固定面への取付状態において、たとえば光ケーブルの終端における入線方向の上下を逆にしたいような場合に、取付状態にある配線固定具を取り外すことなく対応することができ、作業性に優れている。さらに、光ケーブルの設置態様の変更に際し、光ケーブルの終端(特にテンションメンバ)を固定していた箇所にて、光ケーブルのケーブル本体の固定を行うことも可能であり、極めて使い勝手が良い。
さらにまた、請求項2に記載の発明によれば、光ケーブルの固定に際して、前方へ膨出する膨出部にてケーブル本体を押さえ付けるような固定を可能としているとともに、押圧手段によって挿通孔に挿通されたテンションメンバを押さえ付けるような固定を可能としているため、固定可能な光ケーブルのケーブル本体やテンションメンバの径に拘らず、汎用性に富む。
加えて、請求項3に記載の発明によれば、ケーブル本体固定機構及びテンションメンバ固定機構を左右方向で複数備えているため、複数の光ケーブルを平行に固定したい場合等に、固定作業を非常に簡易化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態となる配線固定具について、図面をもとに説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る配線固定具1を示した説明図であって、(a)は正面から見た説明図、(b)は側方から見た説明図、(c)は下方から見た説明図である。図2は、配線固定具1、1により光ケーブル2の終端を固定した状態を示した説明図であり、(a)と(b)とでは光ケーブル2の入線方向が異なっている。図3は、配線固定具1によって光ケーブル2のケーブル本体3を固定した状態を示した説明図であり、図4は、配線固定具1によって光ケーブル2のテンションメンバ4を固定した状態を示した説明図である。
【0013】
配線固定具1は、背板11の上下に一対の突片12、12を一体的に突設してなるコ字状の本体10を有したものであり、背板11を光成端箱内等の固定面に当接させた状態で取り付けられる。背板11の中央部には、前方へと膨出するアーチ状の膨出部14が設けられており、該膨出部14の左右両側部には、配線固定具1を固定面に取り付けるための固定ネジ(固定部材)30(図3に示す)を挿通可能な固定孔(固定部)15、15が穿設されている。
【0014】
また、突片12、12の背板11との連結部の略中央には、膨出部14に沿った形状の切り欠き16が設けられており、固定面への取付状態において、本体10の後方、すなわち膨出部14の後方にケーブル本体3を通すことができるようになっている。
さらに、突片12、12の先端には、夫々外方へと突出するフランジ部13、13が設けられている。そして、各突片12とフランジ部13との連結部には、逆三角形状に切り欠かれた切り欠き部(挿通孔)17が設けられており、該切り欠き部17内を挿通させることによって、本体10の膨出部14前方にテンションメンバ4を通すことができるようになっている。
【0015】
加えて、各フランジ部13の基端部(突片12との連結部)には、上記切り欠き部17前方へ突出する押さえ片18が突設されている。該押さえ片18には、前後方向に進入/後退する押さえネジ(押圧手段)19が取り付けられおり、該押さえネジ19の進入具合を調節することによって、押さえネジ19の軸部先端と切り欠き部17前面との距離の調節、すなわち切り欠き部17内を挿通するテンションメンバ4の固定/解除を可能としている。
【0016】
以上のような配線固定具1は、光ケーブル2の入線方向に沿って複数個設置され、膨出部14にてケーブル本体3を、切り欠き部17、17及び押さえネジ19、19によってテンションメンバ4を固定することができる。以下、配線固定具1の取り付け、及びケーブル本体3、テンションメンバ4の固定について説明する。
【0017】
配線固定具1は、たとえば光成端箱内等において、背板11を固定面側に向けた状態で固定孔15、15に固定ネジ30、30を挿通させ、各固定ネジ30を固定面に螺入させて取り付けられる。このように配線固定具1を固定面に取り付けると、膨出部14と固定面との間に、ケーブル本体3を挿通可能なスペース20が形成される。そこで、該スペース20にケーブル本体3を挿通させ、固定ネジ30、30を締め付けることにより、ケーブル本体3を、膨出部14にて固定面に押さえ付けるようにして固定することができる(図3に示す)。
【0018】
また、光ケーブル2の終端にてケーブル本体3から引き出されたテンションメンバ4は、配線固定具1の切り欠き部17、17間を渡すように挿通させ、押さえネジ19を締め付けることにより、押さえネジ19と切り欠き部17の角部上面とで挟持固定することができる(図4に示す)。
【0019】
上述したような配線固定具1によれば、膨出部14や固定ネジ30等といったケーブル本体固定機構と、切り欠き部17や押さえネジ19等といったテンションメンバ固定機構との両者を具備しているため、光ケーブル2の固定に係り固定箇所毎に専用の固定具を夫々準備する必要がない。したがって、従来と比較して、固定具に係る生産コストの低減を図ることができ、固定具の管理も容易となる上、固定箇所において固定具を使い分ける必要もなく、使い勝手が良い。
【0020】
また、膨出部14の後方に形成されるスペース20や切り欠き部17等へケーブル本体3やテンションメンバ4を挿通させることによりそれらを固定可能としているため、固定面への取付状態において、光ケーブル2の終端における入線方向をたとえば図2(a)に示すような方向から図2(b)に示すような方向に変更したい場合に、配線固定具1を取り外すことなく対応することができ、作業性に優れている。
さらに、光ケーブル2の設置態様の変更に際し、図2に示す如く光ケーブル2の終端を固定していた箇所にて、図5に示す如く光ケーブル2のケーブル本体3の固定のみを行うことも可能であり、極めて使い勝手が良い。
【0021】
さらにまた、光ケーブル2の固定に際して、アーチ状の膨出部14にてケーブル本体3を押さえ付けるように固定するとともに、押さえネジ19によって押さえ付けられたテンションメンバ4を逆三角形状の切り欠き部17の角部前面で受けるようにしているため、光ケーブル2を確実に押し付け固定することができる。
加えて、固定ネジ30及び押さえネジ19の締め付け具合の調整により、ケーブル本体3及びテンションメンバ4の固定/解除を行うことができるため、ケーブル径等の異なる種々の光ケーブルの固定に用いることができ、汎用性に富む。
【0022】
なお、本発明の配線固定具に係る構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、本体、ケーブル本体固定機構、及びテンションメンバ固定機構等に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0023】
たとえば、図6に示す如き配線固定具1aとしてもよい。配線固定具1aは、上記実施形態に記載の配線固定具を左右に一体的に連設してなるものであって、ケーブル本体固定機構とテンションメンバ固定機構とを夫々複数備えたなるものである。該構成とすることにより、上記実施形態に記載の配線固定具が奏する効果に加え、複数の光ケーブルを平行に固定したい際に、光ケーブルの固定作業を簡易化することができるし、平行に固定する光ケーブルの入線方向にも拘らない(たとえば、図6に示す如く逆方向であっても対応することができる)ため、使い勝手が良い。
【0024】
また、図7に示す如き配線固定具1bとすることも可能である。配線固定具1bは、上記実施形態に記載の配線固定具におけるケーブル本体固定機構とテンションメンバ固定機構とを左右方向に略光ケーブル1本分の径だけずらして設けたものである。該配線固定具1bを用いて光ケーブル2の終端を固定する際には、図7に示す如く、一方の配線固定具1bを180度回転させて固定面に取り付け、一方の配線固定具1bにてケーブル本体3を、他方の配線固定具1bにてテンションメンバ4を上記実施形態に記載の配線固定具と同様に固定することができる。このような配線固定具1bを用いることにより、固定していた光ケーブル2の入線方向を逆とする場合に、上記実施形態に記載の配線固定具と同様、固定面から取り外すことなく光ケーブル2の入線方向を逆とすることができる、入線方向が逆の光ケーブル2を平行に設置する際の設置作業が容易となる等といった効果を奏することができる。
【0025】
さらに、膨出部の後面に、ケーブル本体を押し付ける際にケーブル本体を傷つけないように緩衝部材を設置するようにしてもよいし、膨出部の形状を、前方へ突出する三角形状に形成しても何ら問題はない。
加えて、テンションメンバを押さえネジの先端によって直接押圧するのではなく、押さえネジとテンションメンバとの間に板状の押圧部材を介在させるようにし、押さえネジが押圧部材を押圧することにより、押圧部材がテンションメンバを押さえ付けるような構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る配線固定具を示した説明図であって、(a)は正面から見た説明図、(b)は側方から見た説明図、(c)は下方から見た説明図である。
【図2】配線固定具により光ケーブルの終端を固定した状態を示した説明図であり、(a)と(b)とでは光ケーブルの入線方向を異ならせている。
【図3】配線固定具により、光ケーブルのケーブル本体を固定した状態を示した説明図である。
【図4】配線固定具により、光ケーブルのテンションメンバを固定した状態を示した説明図である。
【図5】配線固定具にて、ケーブル本体を固定した状態を示した説明図である。
【図6】配線固定具の変更例を示した説明図である。
【図7】配線固定具の別の変更例を示した説明図である。
【図8】光ケーブルの終端の固定に係る従来例について示した説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1・・配線固定具、2・・光ケーブル、3・・ケーブル本体、4・・テンションメンバ、10・・本体、11・・背板、12・・突片、13・・フランジ部、14・・膨出部、15・・固定孔、16・・切り欠き、17・・切り欠き部、18・・押さえ片、19・・押さえネジ、30・・固定ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光成端箱内等において、光ケーブルのケーブル本体やテンションメンバを固定するための配線固定具であって、
ケーブル本体を固定するためのケーブル本体固定機構と、前記ケーブル本体と平行方向にテンションメンバを固定可能なテンションメンバ固定機構とを設けたことを特徴とする配線固定具。
【請求項2】
本体を、背板の上下に一対の突片を一体的に設けてなる側面コ字状に成形し、前記背板の左右両側部に、前記突片を前方へ突出させた姿勢で前記本体を固定面へ設置するための固定部材を取り付ける固定部を設けるとともに、該固定部間で且つ前記上下の突片間に亘って、前方へ膨出し、前記固定部材による固定面への取り付けによって後方に位置させたケーブル本体を固定面側へ押さえ付けて固定する膨出部を設ける一方、前記一対の突片に、テンションメンバを挿通可能な挿通孔を穿設するとともに、該挿通孔に挿通状態にあるテンションメンバを押さえ付けて固定する押圧手段を設け、
前記固定部材による固定面への取付状態において、前記本体の上方又は下方から、光ケーブルのケーブル本体は前記膨出部の後方に、テンションメンバは前記挿通孔に挿通させることによって、ケーブル本体又はテンションメンバの何れかを固定可能としたことを特徴とする請求項1に記載の配線固定具。
【請求項3】
ケーブル本体固定機構及びテンションメンバ固定機構を左右方向で複数備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−15378(P2008−15378A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188482(P2006−188482)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】