配線基板の製造方法
【課題】簡単な製造プロセスで配線を形成し、信頼性の高い配線基板を提供する。
【解決手段】本発明にかかる配線基板100の製造方法は、(a)遮光部24を有するフォトマスク22の表面に第1の界面活性剤層16を設ける工程と、(b)第1の界面活性剤層上に触媒を含む触媒層32を設ける工程と、(c)フォトマスクの裏面から光を照射することにより遮光部が形成されていない領域の第1の界面活性剤層を分解して、該領域に設けられている第1の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、(d)遮光部が形成されている領域に設けられた触媒層を基板10の上方に転写する工程と、(e)基板に転写された触媒層上に金属を析出させることによって金属層36を設ける工程と、を含む。
【解決手段】本発明にかかる配線基板100の製造方法は、(a)遮光部24を有するフォトマスク22の表面に第1の界面活性剤層16を設ける工程と、(b)第1の界面活性剤層上に触媒を含む触媒層32を設ける工程と、(c)フォトマスクの裏面から光を照射することにより遮光部が形成されていない領域の第1の界面活性剤層を分解して、該領域に設けられている第1の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、(d)遮光部が形成されている領域に設けられた触媒層を基板10の上方に転写する工程と、(e)基板に転写された触媒層上に金属を析出させることによって金属層36を設ける工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基板に配線を形成する方法として、サブトラクティブ法やアディティブ法が知られている。サブトラクティブ法では、フレキシブル基板の全面に金属層を形成し、金属層上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストをバリヤとして金属層をエッチングする。アディティブ法では、フレキシブル基板上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストからの開口部にめっき処理によって金属層を析出させる。
【0003】
これらの方法によれば、フォトレジストを最終的に除去する点、さらにサブトラクティブ法では金属層の一部を除去する点において、資源及び材料の消費が課題となっていた。また、フォトレジストの形成及び除去工程が必要となるので、製造工程数が多いことが課題となっていた。さらに、配線の寸法精度がフォトレジストの解像度に依存するため、より高精度の配線を形成するには限界があった。
【特許文献1】特開平10−65315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡単な製造プロセスで配線を形成し、信頼性の高い配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる配線基板の製造方法は、
(a)遮光部を有するフォトマスクの表面に第1の界面活性剤層を設ける工程と、
(b)前記第1の界面活性剤層上に触媒を含む触媒層を設ける工程と、
(c)前記フォトマスクの裏面から光を照射することにより前記遮光部が形成されていない領域の前記第1の界面活性剤層を分解して、該遮光部が形成されていない領域に設けられている前記第1の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、
(d)前記遮光部が形成されている領域に設けられた触媒層を基板(第2の基板)の上方に転写する工程と、
(e)前記基板(第2の基板)に転写された前記触媒層上に金属を析出させることによって金属層を設ける工程と、
を含む。
【0006】
本実施の形態にかかる配線基板の製造方法によれば、遮光部以外の領域に形成された触媒層が除去された後に、遮光部上の触媒層を基板上に転写するため、精度よく遮光部にそった配線パターンを形成することができる。これにより、簡単なプロセスで信頼性の高い配線基板を提供することができる。
【0007】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(d)の前に、前記基板上に第2の界面活性剤層を設ける工程をさらに含むことができる。
【0008】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記第1の界面活性剤層の前記触媒に対する吸着力は、前記第2の界面活性剤層の触媒に対する吸着力未満であることができる。
【0009】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記フォトマスクの表面は、前記遮光部が埋め込まれていることにより、平坦に形成されていることができる。
【0010】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(c)では、前記フォトマスクの表面と前記基板とを接触させることができる。
【0011】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記光は、真空紫外線であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
1.配線基板の製造方法
図1〜図13は、本実施の形態にかかる配線基板100(図13参照)の製造方法を示す図である。本実施の形態では、無電解めっきを適用して配線基板を製造する。
【0014】
(1)まず、フォトマスク22を用意する。フォトマスク22は、第1の基板23と、遮光部24を有する。第1の基板23は、所定波長の光に対して透過性を有する。遮光部24は、所定波長の光を透過しない材質からなる。第1の基板23としては、たとえば高純度石英ガラスからなることができる。高純度石英ガラスとは、たとえば真空紫外放射(VUV;vacuum ultraviolet)での透過率が80%以上の石英ガラスをいう。遮光部24は、所定のパターンを有し、たとえばクロム等の金属材料やレジスト材料からなることができる。
【0015】
(2)次にフォトマスク22を洗浄する。フォトマスク22の洗浄は、図1に示すように、ドライ洗浄でもよいし、ウエット洗浄でもよい。ドライ洗浄は、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、遮光部24がクロム等の金属材料の場合には30秒〜900秒間、レジスト材料からなる場合には30秒〜120秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。フォトマスク22を洗浄することによって、フォトマスク22の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。
【0016】
(3)次に、図2に示すように、フォトマスク22を界面活性剤溶液14に浸漬する。界面活性剤溶液14は、第1の界面活性剤を含む。第1の界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤を含む。フォトマスク22の表面の液中表面電位が負電位の場合には、第1の界面活性剤として、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べてフォトマスク22に吸着しやすいからである。一方、フォトマスク22の表面の液中表面電位が正電位の場合には、界面活性剤溶液14に含まれる界面活性剤として、アニオン系界面活性剤を適用することが好ましい。
【0017】
界面活性剤溶液14としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)や、アルキルアンモニウム系界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(ソディウムドデシルサルフェート、リチウムドデシルサルフェート、N−ラウロイルサルコシン)などを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0018】
次に、界面活性剤溶液からフォトマスク22を取り出し、超純水で洗浄する。その後、フォトマスク22を、例えば、室温下で自然乾燥し、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図3に示すように、第1の界面活性剤層16をフォトマスク22に設けることができる。このとき、第1の界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、フォトマスク22の表面の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0019】
(4)次に、図4に示すように、触媒溶液30にフォトマスク22を浸漬する。触媒溶液30は、無電解めっきの触媒として機能する触媒成分を含む。触媒成分としては、たとえばパラジウムを用いることができる。
【0020】
たとえば、以下の手順により触媒溶液30を作製することができる。
(4a)純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。
(4b)上述した塩化パラジウム溶液をさらに水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。
(4c)水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。
【0021】
このように作製された触媒溶液30にフォトマスク22を浸漬すると、図5に示すように、触媒層32が形成される。触媒溶液30に浸漬した後、フォトマスク22を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われることができる。この水洗によって、触媒の残渣が後述する無電界めっき液に混入するのを防止することができる。
【0022】
(5)次に、図6に示すように、フォトマスク22の裏面(下方)から光を照射することにより、遮光部24が形成されていない領域の第1の界面活性剤層16を光分解する。照射する光20としては、例えば真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いることができる。光20の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。光20は、第1の基板23を介して第1の界面活性剤層16に照射される。すなわち光20は、遮光部24が形成されていない領域のみ、フォトマスク22を透過する。これにより、遮光部24が形成されていない領域に設けられた第1の界面活性剤層16を光分解させることができる。また、この波長帯域の光20を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0023】
光20の照射は、具体的には、例えば、光源18として真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間行うことができる。光源18は、例えばXeガスが封入されたエキシマランプであってもよい。なお、光20の波長は、第1の界面活性剤層16を光分解することができるものであれば、特に限定されない。窒素雰囲気中で光照射処理を行えば、光20が減衰しにくいので好ましい。
【0024】
こうして、第1の界面活性剤層16を光分解すると、遮光部24が形成されていない領域に設けられた第1の界面活性剤層16および触媒層32は、図7に示すように、除去されることができる。
【0025】
(6)第2の基板10を用意する。第2の基板10は、絶縁基板であってもよい。第2の基板10は、有機系基板(例えばプラスチック材、樹脂基板)であってもよいし、無機系基板(例えば石英ガラス、シリコンウエハ、酸化物層)であってもよい。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。あるいは、第2の基板10は、光透過性基板(例えば透明基板)であってもよい。第2の基板10は、単層のみならず、ベース基板上に少なくとも1層の絶縁層が形成されている多層のものも含む。本実施の形態では、第2の基板10上に金属層を形成する。
【0026】
(7)次に、第2の基板10を洗浄する。第2の基板10の洗浄は、ドライ洗浄でもよいし、図8に示すようにウエット洗浄でもよい。ウエット洗浄は、例えば、第2の基板10をオゾン水12(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜30分程度浸漬することで行うことができる。またドライ洗浄は、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。第2の基板10を洗浄することによって、第2の基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。また、第2の基板10の表面を撥水性から親水性に変化させることができる。また、第2の基板10の液中表面電位が負電位であれば、第2の基板10の洗浄により均一な負電位面を形成することができる。
【0027】
(8)次に、図9に示すように、第2の基板10を界面活性剤溶液14に浸漬する。界面活性剤溶液14は、第2の界面活性剤を含む。第2の界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤を含む。第2の基板10の表面の液中表面電位が負電位の場合には、第2の界面活性剤として、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて第2の基板10に吸着しやすいからである。一方、第2の基板10の表面の液中表面電位が正電位の場合には、界面活性剤溶液14に含まれる界面活性剤として、アニオン系界面活性剤を適用することが好ましい。
【0028】
界面活性剤溶液14としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)や、アルキルアンモニウム系界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(ソディウムドデシルサルフェート、リチウムドデシルサルフェート、N−ラウロイルサルコシン)などを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0029】
次に、界面活性剤溶液から第2の基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、第2の基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図10に示すように、第2の界面活性剤層26を第2の基板10に設けることができる。このとき、第2の界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、第2の基板10の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0030】
(9)次に、図11に示すように、フォトマスク22に対向させて、触媒層32の上方に第2の基板10を配置する。ここで、「触媒層32の上方」とは、触媒層32を基準として第1の基板23と反対側の方向をいう。第1の基板23は、図11に示すように、第2の基板10と平行に配置される。
【0031】
この工程では、フォトマスク22を第1の基板10に対して押し付けることにより、フォトマスク22の表面と第2の基板10とを接触させてもよい。具体的には、図11に示すように、遮光部24の上方に形成されている触媒層32と、第2の基板10上に形成されている第2の界面活性剤層26とが領域28において接触する。
【0032】
このとき、触媒層32は、第2の基板10に転写される。第1の界面活性剤層16の触媒層32に対する吸着力は、第2の界面活性剤層26の触媒層32に対する吸着力未満であることが好ましい。この吸着力の差は、触媒の液中表面電位と、界面活性剤の液中表面電位との差に起因する。即ち、触媒層32に含まれる触媒表面が負に帯電している場合には、液中表面電位が大きく正に帯電している界面活性剤を含む界面活性剤層の吸着力が大きい。一方、触媒層32に含まれる触媒表面が正に帯電している場合には、液中表面電位が大きく負に帯電している界面活性剤を含む界面活性剤層の吸着力が大きい。たとえば、触媒層32に含まれる触媒がパラジウムであり、このパラジウム表面に負の電荷をもつイオンに取り囲まれている場合には、このパラジウムには、アニオン系界面活性剤よりカチオン系界面活性剤が吸着しやすい。
【0033】
たとえば、第2の基板10としてガラス基板を用い、これを水酸化ナトリウム溶液によりウェット洗浄すると表面電位が−66mVになる。このガラス基板に、カチオン系界面活性剤としては、ジアルキルジメチルアンモニウム系の界面活性剤を吸着させて界面活性剤層を形成すると、表面電位は−23mVになる。また、同様にウェット洗浄したガラス基板に、上述したアミン塩系FPDコンディショナーを吸着させて界面活性剤層を形成すると、表面電位は+52mVになる。したがって、ジアルキルジメチルアンモニウム系の界面活性剤は、アミン塩系FPDコンディショナーより吸着力が小さいため、第1の界面活性剤層16の形成に用いられ、アミン塩系FPDコンディショナーは、第2の界面活性剤層26に形成に用いられることが好ましい。
【0034】
このように、第1の界面活性剤層16の触媒層32に対する吸着力が、第2の界面活性剤層26の触媒層32に対する吸着力未満であるとき、触媒層32は、第1の界面活性剤層16から離脱して、第2の界面活性剤層26に容易に吸着でき、転写されることができる。
【0035】
(10)次に、フォトマスク22を第2の基板10から剥がす。このとき、領域28には、第2の界面活性剤層26上に触媒層32が形成されている(図12参照)。その後、超純水によるリンス洗浄を行い、自然乾燥および圧縮空気を吹きかけることによって水滴を除去してもよい。この水洗によって、界面活性剤の残渣が後述する無電界めっき液に混入するのを防止することができる。
【0036】
(11)次に、図13に示すように、触媒層32上に金属層36を析出させる。具体的には、第2の基板10を無電解めっき液に浸漬させることによって、触媒層32上に金属層36を析出させることができる。金属層36としてニッケル層を析出させる場合を説明すると、無電解めっき液としては、硫酸ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることができる。例えば、第2の基板10をこのような無電解めっき液(温度70〜80℃)に1分〜10分程度浸漬することによって、0.1μm〜1.0μmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。あるいは、無電解めっき液として、塩化ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることもできる。例えば、第2の基板10をこのような無電解めっき液(温度60〜75℃)に0.5分〜10分程度浸漬することによって、0.1μm〜1.0μmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。なお、金属層36の材料は触媒によってめっき反応が起こる材料であれば特に限定されず、例えば白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)などからも形成することができる。こうして、第2の基板10上に金属層36を形成することができる。その後、超純水によるリンス洗浄を行い、自然乾燥および圧縮空気を吹きかけることによって水滴を除去してもよい。
【0037】
以上の工程により、図13に示すように、配線基板100を形成することができる。本実施の形態にかかる配線基板100の形成方法によれば、遮光部24以外の領域に形成された触媒層32が除去された後に、遮光部24上の触媒層32を第2の基板10上に転写するため、精度よく遮光部24にそった配線パターンを形成することができる。これにより、簡単なプロセスで信頼性の高い配線基板を提供することができる。
【0038】
2.配線基板および電子デバイス
図14は、本実施の形態にかかる配線基板の製造方法によって製造される配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す。電子デバイス1000は、配線基板100と、集積回路チップ90と、他の基板92とを含む。
【0039】
配線基板100に形成された配線パターンは、電子部品同士を電気的に接続するためのものであってもよい。配線基板100は、上述した製造方法によって製造される。図14に示す例では、配線基板100には、集積回路チップ90が電気的に接続され、配線基板100の一方の端部は、他の基板92(例えば表示パネル)に電気的に接続されている。電子デバイス1000は、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置であってもよい。
【0040】
3.変形例
次に、図15を用いて、変形例にかかる配線基板の製造方法について説明する。変形例にかかるフォトマスク122は、遮光部124が第1の基板123に埋め込まれている点で、遮光部24が第1の基板23の上に形成されているフォトマスク22と異なる。変形例にかかる配線基板の製造方法の手順については、上述した本実施の形態にかかる配線基板の製造方法と同様であるので説明を省略する。
【0041】
図15は、変形例にかかるフォトマスク122の断面を模式的に示す図である。図15に示すように、遮光部124が第1の基板123に埋め込まれているため、フォトマスク122の表面は、平坦な形状を有する。
【0042】
図16は、第1の界面活性剤層116および触媒層132が形成されたフォトマスク122の断面を模式的に示す図である。図16に示すように、フォトマスク122の表面が平坦な形状を有するため、第1の界面活性剤層116および触媒層132も平坦に形成される。これにより、遮光部124が形成されていない領域の第1の界面活性剤層116および触媒層132を、遮光部124が形成されている領域と同じ密度で形成することができる。
【0043】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図2】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図3】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図4】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図5】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図6】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図7】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図8】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図9】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図10】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図11】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図12】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図13】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図14】本実施の形態にかかる配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す図。
【図15】変形例にかかるフォトマスクの断面を模式的に示す図。
【図16】第1の界面活性剤層および触媒層が形成されたフォトマスクの断面を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0045】
10 第2の基板、12 オゾン水、14 界面活性剤溶液、16 第1の界面活性剤層、18 光源、20 光、22、122 フォトマスク、23、123 第1の基板、24、124 遮光部、26 第2の界面活性剤層、28 領域、30 触媒溶液、32 触媒層、36金属層、90 集積回路チップ、92 他の第2の基板、100 配線基板、1000 電子デバイス
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基板に配線を形成する方法として、サブトラクティブ法やアディティブ法が知られている。サブトラクティブ法では、フレキシブル基板の全面に金属層を形成し、金属層上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストをバリヤとして金属層をエッチングする。アディティブ法では、フレキシブル基板上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストからの開口部にめっき処理によって金属層を析出させる。
【0003】
これらの方法によれば、フォトレジストを最終的に除去する点、さらにサブトラクティブ法では金属層の一部を除去する点において、資源及び材料の消費が課題となっていた。また、フォトレジストの形成及び除去工程が必要となるので、製造工程数が多いことが課題となっていた。さらに、配線の寸法精度がフォトレジストの解像度に依存するため、より高精度の配線を形成するには限界があった。
【特許文献1】特開平10−65315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡単な製造プロセスで配線を形成し、信頼性の高い配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる配線基板の製造方法は、
(a)遮光部を有するフォトマスクの表面に第1の界面活性剤層を設ける工程と、
(b)前記第1の界面活性剤層上に触媒を含む触媒層を設ける工程と、
(c)前記フォトマスクの裏面から光を照射することにより前記遮光部が形成されていない領域の前記第1の界面活性剤層を分解して、該遮光部が形成されていない領域に設けられている前記第1の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、
(d)前記遮光部が形成されている領域に設けられた触媒層を基板(第2の基板)の上方に転写する工程と、
(e)前記基板(第2の基板)に転写された前記触媒層上に金属を析出させることによって金属層を設ける工程と、
を含む。
【0006】
本実施の形態にかかる配線基板の製造方法によれば、遮光部以外の領域に形成された触媒層が除去された後に、遮光部上の触媒層を基板上に転写するため、精度よく遮光部にそった配線パターンを形成することができる。これにより、簡単なプロセスで信頼性の高い配線基板を提供することができる。
【0007】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(d)の前に、前記基板上に第2の界面活性剤層を設ける工程をさらに含むことができる。
【0008】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記第1の界面活性剤層の前記触媒に対する吸着力は、前記第2の界面活性剤層の触媒に対する吸着力未満であることができる。
【0009】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記フォトマスクの表面は、前記遮光部が埋め込まれていることにより、平坦に形成されていることができる。
【0010】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記工程(c)では、前記フォトマスクの表面と前記基板とを接触させることができる。
【0011】
本発明にかかる配線基板の製造方法において、
前記光は、真空紫外線であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
1.配線基板の製造方法
図1〜図13は、本実施の形態にかかる配線基板100(図13参照)の製造方法を示す図である。本実施の形態では、無電解めっきを適用して配線基板を製造する。
【0014】
(1)まず、フォトマスク22を用意する。フォトマスク22は、第1の基板23と、遮光部24を有する。第1の基板23は、所定波長の光に対して透過性を有する。遮光部24は、所定波長の光を透過しない材質からなる。第1の基板23としては、たとえば高純度石英ガラスからなることができる。高純度石英ガラスとは、たとえば真空紫外放射(VUV;vacuum ultraviolet)での透過率が80%以上の石英ガラスをいう。遮光部24は、所定のパターンを有し、たとえばクロム等の金属材料やレジスト材料からなることができる。
【0015】
(2)次にフォトマスク22を洗浄する。フォトマスク22の洗浄は、図1に示すように、ドライ洗浄でもよいし、ウエット洗浄でもよい。ドライ洗浄は、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、遮光部24がクロム等の金属材料の場合には30秒〜900秒間、レジスト材料からなる場合には30秒〜120秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。フォトマスク22を洗浄することによって、フォトマスク22の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。
【0016】
(3)次に、図2に示すように、フォトマスク22を界面活性剤溶液14に浸漬する。界面活性剤溶液14は、第1の界面活性剤を含む。第1の界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤を含む。フォトマスク22の表面の液中表面電位が負電位の場合には、第1の界面活性剤として、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べてフォトマスク22に吸着しやすいからである。一方、フォトマスク22の表面の液中表面電位が正電位の場合には、界面活性剤溶液14に含まれる界面活性剤として、アニオン系界面活性剤を適用することが好ましい。
【0017】
界面活性剤溶液14としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)や、アルキルアンモニウム系界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(ソディウムドデシルサルフェート、リチウムドデシルサルフェート、N−ラウロイルサルコシン)などを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0018】
次に、界面活性剤溶液からフォトマスク22を取り出し、超純水で洗浄する。その後、フォトマスク22を、例えば、室温下で自然乾燥し、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図3に示すように、第1の界面活性剤層16をフォトマスク22に設けることができる。このとき、第1の界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、フォトマスク22の表面の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0019】
(4)次に、図4に示すように、触媒溶液30にフォトマスク22を浸漬する。触媒溶液30は、無電解めっきの触媒として機能する触媒成分を含む。触媒成分としては、たとえばパラジウムを用いることができる。
【0020】
たとえば、以下の手順により触媒溶液30を作製することができる。
(4a)純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。
(4b)上述した塩化パラジウム溶液をさらに水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。
(4c)水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。
【0021】
このように作製された触媒溶液30にフォトマスク22を浸漬すると、図5に示すように、触媒層32が形成される。触媒溶液30に浸漬した後、フォトマスク22を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われることができる。この水洗によって、触媒の残渣が後述する無電界めっき液に混入するのを防止することができる。
【0022】
(5)次に、図6に示すように、フォトマスク22の裏面(下方)から光を照射することにより、遮光部24が形成されていない領域の第1の界面活性剤層16を光分解する。照射する光20としては、例えば真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いることができる。光20の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。光20は、第1の基板23を介して第1の界面活性剤層16に照射される。すなわち光20は、遮光部24が形成されていない領域のみ、フォトマスク22を透過する。これにより、遮光部24が形成されていない領域に設けられた第1の界面活性剤層16を光分解させることができる。また、この波長帯域の光20を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0023】
光20の照射は、具体的には、例えば、光源18として真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間行うことができる。光源18は、例えばXeガスが封入されたエキシマランプであってもよい。なお、光20の波長は、第1の界面活性剤層16を光分解することができるものであれば、特に限定されない。窒素雰囲気中で光照射処理を行えば、光20が減衰しにくいので好ましい。
【0024】
こうして、第1の界面活性剤層16を光分解すると、遮光部24が形成されていない領域に設けられた第1の界面活性剤層16および触媒層32は、図7に示すように、除去されることができる。
【0025】
(6)第2の基板10を用意する。第2の基板10は、絶縁基板であってもよい。第2の基板10は、有機系基板(例えばプラスチック材、樹脂基板)であってもよいし、無機系基板(例えば石英ガラス、シリコンウエハ、酸化物層)であってもよい。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。あるいは、第2の基板10は、光透過性基板(例えば透明基板)であってもよい。第2の基板10は、単層のみならず、ベース基板上に少なくとも1層の絶縁層が形成されている多層のものも含む。本実施の形態では、第2の基板10上に金属層を形成する。
【0026】
(7)次に、第2の基板10を洗浄する。第2の基板10の洗浄は、ドライ洗浄でもよいし、図8に示すようにウエット洗浄でもよい。ウエット洗浄は、例えば、第2の基板10をオゾン水12(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜30分程度浸漬することで行うことができる。またドライ洗浄は、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。第2の基板10を洗浄することによって、第2の基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。また、第2の基板10の表面を撥水性から親水性に変化させることができる。また、第2の基板10の液中表面電位が負電位であれば、第2の基板10の洗浄により均一な負電位面を形成することができる。
【0027】
(8)次に、図9に示すように、第2の基板10を界面活性剤溶液14に浸漬する。界面活性剤溶液14は、第2の界面活性剤を含む。第2の界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤を含む。第2の基板10の表面の液中表面電位が負電位の場合には、第2の界面活性剤として、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて第2の基板10に吸着しやすいからである。一方、第2の基板10の表面の液中表面電位が正電位の場合には、界面活性剤溶液14に含まれる界面活性剤として、アニオン系界面活性剤を適用することが好ましい。
【0028】
界面活性剤溶液14としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)や、アルキルアンモニウム系界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(ソディウムドデシルサルフェート、リチウムドデシルサルフェート、N−ラウロイルサルコシン)などを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0029】
次に、界面活性剤溶液から第2の基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、第2の基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図10に示すように、第2の界面活性剤層26を第2の基板10に設けることができる。このとき、第2の界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、第2の基板10の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0030】
(9)次に、図11に示すように、フォトマスク22に対向させて、触媒層32の上方に第2の基板10を配置する。ここで、「触媒層32の上方」とは、触媒層32を基準として第1の基板23と反対側の方向をいう。第1の基板23は、図11に示すように、第2の基板10と平行に配置される。
【0031】
この工程では、フォトマスク22を第1の基板10に対して押し付けることにより、フォトマスク22の表面と第2の基板10とを接触させてもよい。具体的には、図11に示すように、遮光部24の上方に形成されている触媒層32と、第2の基板10上に形成されている第2の界面活性剤層26とが領域28において接触する。
【0032】
このとき、触媒層32は、第2の基板10に転写される。第1の界面活性剤層16の触媒層32に対する吸着力は、第2の界面活性剤層26の触媒層32に対する吸着力未満であることが好ましい。この吸着力の差は、触媒の液中表面電位と、界面活性剤の液中表面電位との差に起因する。即ち、触媒層32に含まれる触媒表面が負に帯電している場合には、液中表面電位が大きく正に帯電している界面活性剤を含む界面活性剤層の吸着力が大きい。一方、触媒層32に含まれる触媒表面が正に帯電している場合には、液中表面電位が大きく負に帯電している界面活性剤を含む界面活性剤層の吸着力が大きい。たとえば、触媒層32に含まれる触媒がパラジウムであり、このパラジウム表面に負の電荷をもつイオンに取り囲まれている場合には、このパラジウムには、アニオン系界面活性剤よりカチオン系界面活性剤が吸着しやすい。
【0033】
たとえば、第2の基板10としてガラス基板を用い、これを水酸化ナトリウム溶液によりウェット洗浄すると表面電位が−66mVになる。このガラス基板に、カチオン系界面活性剤としては、ジアルキルジメチルアンモニウム系の界面活性剤を吸着させて界面活性剤層を形成すると、表面電位は−23mVになる。また、同様にウェット洗浄したガラス基板に、上述したアミン塩系FPDコンディショナーを吸着させて界面活性剤層を形成すると、表面電位は+52mVになる。したがって、ジアルキルジメチルアンモニウム系の界面活性剤は、アミン塩系FPDコンディショナーより吸着力が小さいため、第1の界面活性剤層16の形成に用いられ、アミン塩系FPDコンディショナーは、第2の界面活性剤層26に形成に用いられることが好ましい。
【0034】
このように、第1の界面活性剤層16の触媒層32に対する吸着力が、第2の界面活性剤層26の触媒層32に対する吸着力未満であるとき、触媒層32は、第1の界面活性剤層16から離脱して、第2の界面活性剤層26に容易に吸着でき、転写されることができる。
【0035】
(10)次に、フォトマスク22を第2の基板10から剥がす。このとき、領域28には、第2の界面活性剤層26上に触媒層32が形成されている(図12参照)。その後、超純水によるリンス洗浄を行い、自然乾燥および圧縮空気を吹きかけることによって水滴を除去してもよい。この水洗によって、界面活性剤の残渣が後述する無電界めっき液に混入するのを防止することができる。
【0036】
(11)次に、図13に示すように、触媒層32上に金属層36を析出させる。具体的には、第2の基板10を無電解めっき液に浸漬させることによって、触媒層32上に金属層36を析出させることができる。金属層36としてニッケル層を析出させる場合を説明すると、無電解めっき液としては、硫酸ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることができる。例えば、第2の基板10をこのような無電解めっき液(温度70〜80℃)に1分〜10分程度浸漬することによって、0.1μm〜1.0μmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。あるいは、無電解めっき液として、塩化ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることもできる。例えば、第2の基板10をこのような無電解めっき液(温度60〜75℃)に0.5分〜10分程度浸漬することによって、0.1μm〜1.0μmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。なお、金属層36の材料は触媒によってめっき反応が起こる材料であれば特に限定されず、例えば白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)などからも形成することができる。こうして、第2の基板10上に金属層36を形成することができる。その後、超純水によるリンス洗浄を行い、自然乾燥および圧縮空気を吹きかけることによって水滴を除去してもよい。
【0037】
以上の工程により、図13に示すように、配線基板100を形成することができる。本実施の形態にかかる配線基板100の形成方法によれば、遮光部24以外の領域に形成された触媒層32が除去された後に、遮光部24上の触媒層32を第2の基板10上に転写するため、精度よく遮光部24にそった配線パターンを形成することができる。これにより、簡単なプロセスで信頼性の高い配線基板を提供することができる。
【0038】
2.配線基板および電子デバイス
図14は、本実施の形態にかかる配線基板の製造方法によって製造される配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す。電子デバイス1000は、配線基板100と、集積回路チップ90と、他の基板92とを含む。
【0039】
配線基板100に形成された配線パターンは、電子部品同士を電気的に接続するためのものであってもよい。配線基板100は、上述した製造方法によって製造される。図14に示す例では、配線基板100には、集積回路チップ90が電気的に接続され、配線基板100の一方の端部は、他の基板92(例えば表示パネル)に電気的に接続されている。電子デバイス1000は、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置であってもよい。
【0040】
3.変形例
次に、図15を用いて、変形例にかかる配線基板の製造方法について説明する。変形例にかかるフォトマスク122は、遮光部124が第1の基板123に埋め込まれている点で、遮光部24が第1の基板23の上に形成されているフォトマスク22と異なる。変形例にかかる配線基板の製造方法の手順については、上述した本実施の形態にかかる配線基板の製造方法と同様であるので説明を省略する。
【0041】
図15は、変形例にかかるフォトマスク122の断面を模式的に示す図である。図15に示すように、遮光部124が第1の基板123に埋め込まれているため、フォトマスク122の表面は、平坦な形状を有する。
【0042】
図16は、第1の界面活性剤層116および触媒層132が形成されたフォトマスク122の断面を模式的に示す図である。図16に示すように、フォトマスク122の表面が平坦な形状を有するため、第1の界面活性剤層116および触媒層132も平坦に形成される。これにより、遮光部124が形成されていない領域の第1の界面活性剤層116および触媒層132を、遮光部124が形成されている領域と同じ密度で形成することができる。
【0043】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図2】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図3】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図4】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図5】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図6】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図7】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図8】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図9】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図10】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図11】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図12】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図13】本実施の形態にかかる配線基板の製造方法を示す図。
【図14】本実施の形態にかかる配線基板を適用した電子デバイスの一例を示す図。
【図15】変形例にかかるフォトマスクの断面を模式的に示す図。
【図16】第1の界面活性剤層および触媒層が形成されたフォトマスクの断面を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0045】
10 第2の基板、12 オゾン水、14 界面活性剤溶液、16 第1の界面活性剤層、18 光源、20 光、22、122 フォトマスク、23、123 第1の基板、24、124 遮光部、26 第2の界面活性剤層、28 領域、30 触媒溶液、32 触媒層、36金属層、90 集積回路チップ、92 他の第2の基板、100 配線基板、1000 電子デバイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)遮光部を有するフォトマスクの表面に第1の界面活性剤層を設ける工程と、
(b)前記第1の界面活性剤層上に触媒を含む触媒層を設ける工程と、
(c)前記フォトマスクの裏面から光を照射することにより前記遮光部が形成されていない領域の前記第1の界面活性剤層を分解して、該遮光部が形成されていない領域に設けられている前記第1の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、
(d)前記遮光部が形成されている領域に設けられた触媒層を基板の上方に転写する工程と、
(e)前記基板に転写された前記触媒層上に金属を析出させることによって金属層を設ける工程と、
を含む、配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(d)の前に、前記基板上に第2の界面活性剤層を設ける工程をさらに含む、配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の界面活性剤層の前記触媒に対する吸着力は、前記第2の界面活性剤層の触媒に対する吸着力未満である、配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記フォトマスクの表面は、前記遮光部が埋め込まれていることにより、平坦に形成されている、配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記工程(c)では、前記フォトマスクの表面と前記基板とを接触させる、配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記光は、真空紫外線である、配線基板の製造方法。
【請求項1】
(a)遮光部を有するフォトマスクの表面に第1の界面活性剤層を設ける工程と、
(b)前記第1の界面活性剤層上に触媒を含む触媒層を設ける工程と、
(c)前記フォトマスクの裏面から光を照射することにより前記遮光部が形成されていない領域の前記第1の界面活性剤層を分解して、該遮光部が形成されていない領域に設けられている前記第1の界面活性剤層および触媒層を除去する工程と、
(d)前記遮光部が形成されている領域に設けられた触媒層を基板の上方に転写する工程と、
(e)前記基板に転写された前記触媒層上に金属を析出させることによって金属層を設ける工程と、
を含む、配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(d)の前に、前記基板上に第2の界面活性剤層を設ける工程をさらに含む、配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の界面活性剤層の前記触媒に対する吸着力は、前記第2の界面活性剤層の触媒に対する吸着力未満である、配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記フォトマスクの表面は、前記遮光部が埋め込まれていることにより、平坦に形成されている、配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記工程(c)では、前記フォトマスクの表面と前記基板とを接触させる、配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記光は、真空紫外線である、配線基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−109710(P2007−109710A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296361(P2005−296361)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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