説明

配線構造及び導電部材の製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、配線構造及びその配線構造に用いられる導電部材の製造方法に係り、詳しくは、液晶ディスプレイに用いられるTAB等による外部回路等の電気回路部品(配線基板)の接続技術に適用することができ、特に、電極端子とこの電極端子に対向する電極端子間での導電部材による接続信頼性を向上させることができる配線構造及び導電部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電気回路部品の接続には、弾性を有する樹脂粒子の全表面に金属層が被覆された導電粒子を介在させて電気的接続を得る方法が知られている。これに関する公知例としては、例えば特開昭62−165886号公報で報告されたものがあり、ここでは、尿素等の熱硬化性樹脂粒子からなる核材表面に金属層が被覆された導電粒子が用いられており、また、特開昭62−206772号公報で報告されたものでは、ポリエチレン等の高分子重合体からなる核材表面に金属層が被覆された導電粒子が用いられている。更に、特開昭63−91975号公報で報告されたものでは、高分子核材表面に金属層(又は絶縁性カプセル)が被覆された導電粒子が用いられており、上下基板が加圧された時に金属層が破壊されて高分子核材が上下基板を接着する絶縁性接着剤と接触状態になることを前提としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した特開昭62−165886号公報や特開昭62−206772号公報等のような従来の配線構造では、絶縁性接着剤中に弾性を有する樹脂を核とし、この核表面に金属鍍金された導電粒子を分散させて電気回路部品同士を加圧し、固定接続していたが、導電粒子の直径のばらつきや相対する電極端子の高さのばらつき等が生じると、一つの導電粒子に加わる圧力がばらついてしまう。この導電粒子に加わる圧力のばらつきを緩和するために核材は弾性を有するので変形するが、変形が大きくなって核材から金属層へ加わる内圧が大きくなると、この内圧に耐えられなくなって図8に示す如く、導電部材55を構成する核材55a全表面を被覆する金属層55bが破壊又は剥離したりしてしまい、この結果、回路基板51の電極端子52とこの回路基板51と対向する回路基板53の電極端子52間の接続抵抗値が高くなったりする等、電極端子52とこの電極端子52と対向する電極端子54間での導電部材55による接続信頼性は低下するという問題があった。
【0004】次に、上記した特開昭63−91975号公報等のような従来の配線構造では、上下基板を加圧した時に核材表面に被覆される金属層が破壊されることを前提としており、このうち金属層が破壊されないのもので電極端子間の接続を取ることで上記問題をある程度解消することができるという利点を有する。しかしながら、この方法では、破壊前は核材の表面は金属層(又は絶縁性カプセル)で覆われているので、できるだけ導電粒子を硬い材質のものにして上下基板を加圧した時、被覆している金属層を故意的に破壊しているが、この際、下地に圧力に対して弱い電極端子(例えば、可撓性フィルム上のITO電極はクラックが発生し易い)を用いると、下地の電極端子にクラック等のダメージを生じ易いうえ、上記と同様電極端子間に金属層が破壊された導電粒子があると、結局、上記と同様接続信頼性が低下するという問題があった。
【0005】そこで本発明は、加圧時に導電部材の金属層を破壊しないようにすることができるとともに、下地の電極端子にクラック等のダメージを生じないようにすることができ、電極端子とこの電極端子と対向する電極端子間での導電部材による接続信頼性を向上させることができる配線構造及び導電部材の製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、第1の配線基板上に形成された第1の電極端子と、第2の配線基板上に形成された第2の電極端子とが対向して配置され、該第1の配線基板と該第2の配線基板とが絶縁性接着部材により接着され、該第1の電極端子と該第2の電極端子とが絶縁性核材表面に予め該核材一部が露出するように導電膜が被覆された導電部材により電気的接続されてなることを特徴とするものである。
【0007】請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、前記導電部材は、前記導電膜が前記核材表面に帯状に被覆されてなることを特徴とするものである。請求項3記載の発明は、上記請求項1乃至2記載の発明において、前記導電部材は、形状が円筒形状であることを特徴とするものである。
【0008】請求項4記載の発明は、上記請求項1乃至3記載の発明において、前記導電部材の核材は、UV光硬化性接着部材からなることを特徴とするものである。請求項5記載の発明は、UV光硬化性接着部材を塗出、落下させながらUV光を照射し硬化して核材を形成した後、該核材表面に該核材一部が露出するように導電膜を被覆して導電部材を形成することを特徴とするものである。
【0009】請求項6記載の発明は、上記請求項4記載の発明において、前記絶縁性接着部材は、前記核材と同種のUV光硬化性接着部材からなることを特徴とするものである。
【0010】
【作用】請求項1記載の発明では、第1の電極端子と第2の電極端子とを核材表面に予め核材一部が露出するように導電膜が被覆された導電部材により電気的接続されてなるように構成している。このため、第1の配線基板と第2の配線基板を加圧する時、核材に生じる内圧を核材が露出される部分から逃がすことができるので、露出部分は変形するが核材から加わる導電膜への圧力を減少緩和することができる。このため、従来の全面に導電膜が被覆された導電部材を用いる場合よりも加圧時に導電膜を破壊しないようにすることができる。しかも、露出部分を第1、第2の電極端子側に配置しないようにすれば(核材の材質を下地の第1、第2の電極端子にダメージを与え難いものにすると更に好ましい)、端子側に核材を飛び出ないようにすることができるので、下地の電極端子にクラック等のダメージを生じないようにすることができる。従って、第1の電極端子とこの第1の電極端子と対向する第2の電極端子間での該導電部材による接続信頼性を向上させることができる。
【0011】請求項2記載の発明では、前記導電部材は、前記導電膜が前記核材表面に帯状に被覆されてなるように構成している。このため、核材の長手方向に向かって帯状に導電膜で核材を被覆し、この核材の長手方向と対向する側の両面の核材を露出させるようにし、第1、第2の電極端子側に導電膜がくるように導電部材を配置すれば、この両面の露出部分から加圧時に生じる核材の内圧を効率良く逃がすことができる。従って、上記請求項1記載の発明の効果をより効率良く得ることができるうえ、導電部材と電極端子との接触面積を帯の部分で適宜制御することができるので、所望の接続抵抗値にすることができる。なお、第1、第2の電極端子の長手方向に向かって帯状に形成される導電膜はその面を全面に渡って形成してもよいが、一部核材が露出されていてもよく、仮に、加圧時に飛び出た核材が端子に接触しても核材にダメージを与え難い材質のものを用いればよい。
【0012】請求項3記載の発明では、前記導電部材は、形状が円筒形状であるように構成しいてる。このため、円筒形状の導電部材の長手方向に導電膜を形成するとともに、この長手方向と対向する側の両面に核材が露出するようにし、この導電部材を電極端子の長手方向に向かって導電膜がくるように配置すれば、上記請求項2記載の発明と同様な効果を得ることができるうえ、円筒形状にすることにより短形形状の場合よりも端子への衝撃をより緩和することができる。
【0013】請求項4記載の発明では、前記導電部材の核材は、UV光硬化性接着部材からなるように構成している。このため、UV接着剤を用いることで短時間でかつ容易に核材を製造することができ、接着剤の成分を変えることで弾性を適宜変化させることができる。請求項5記載の発明では、UV光硬化性接着部材を塗出、落下させながらUV光を照射し硬化して核材を形成した後、該核材表面に該核材一部が露出するように導電膜を被覆して導電部材を形成するようにしている。このため、上記請求項4記載の発明と同様な効果を得ることができるうえ、容易でかつ低コストで導電部材を形成することができる。
【0014】請求項6記載の発明では、前記絶縁性接着部材は、前記核材と同種のUV光硬化性接着部材からなるように構成している。このため、核材と導電部材の周囲の接着剤を同種にすることで接着剤中のNa+ 、Cl- 、K+ 等のイオンの影響をなくすことで電極端子の電解腐食や接着剤の劣化等による接続信頼性の低下を防ぐことができる他、導電部材の核材と周囲の接着剤が一体になることで導電部材と周囲の接着剤の弾性率、収縮率等の物性値の違いによる接続信頼性の低下を防ぐことができる。例えば、ある環境下で導電粒子の核材が周囲の接着剤に比べて収縮率が大きい場合は、導電粒子と電極端子が接続(接触)できずに抵抗値が上昇したり、断線したりすることがある。
【0015】
【実施例】以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例に則した導電部材の構造を示す断面図であり、図2は本発明の一実施例に則した導電部材の構造を示す斜視図である。図1、2において、1は回路基板であり、2はこの回路基板1上に形成された電極端子であり、3は、回路基板1と対向する回路基板であり、4はこの回路基板3上に形成された電極端子であり、この回路基板1上に形成された電極端子2と回路基板3上に形成された電極端子4とは対向して配置されている。次いで、5はUV光硬化性接着剤等の絶縁性接着部材であり、6はUV光硬化性接着剤等からなる円筒形状の核材6aと、この核材6aの長手方向と対向する側の両面に核材6aが露出されるように核材6aの長手方向に向かって長手方向全面に帯状に被覆された金属層6bとからなる円筒形状の導電部材である。そして、回路基板1とこの回路基板1と対向する回路基板3とが絶縁性接着部材5により接着され、電極端子2とこれと対向する電極端子4とが予め核材6a長手方向と対向する両面に核材6aが露出するように金属層6bが長手方向全面に被覆された円筒形状の導電部材6により電気的接続され構成されている。
【0016】次に、配線構造に用いられる導電部材6の製造方法について説明する。図3は本発明の一実施例に則した導電部材6の製造方法を説明する図である。図3に示す如く、シリンジ8にいれたUV接着剤9を塗出、落下させながらUVファイバー10からUV光11を照射して硬化することで円筒形状(線状)の核材6aを形成する。なお、UV接着剤9にはスリーボンド社製3034(商品名)を用い、ニードルの内径はφ0.1を用いた。ここでのUV接着剤9は波長365nmを中心としたUV光11を1000mJ/cm2 照射することで硬化するので、UV光が照射されている間に完全硬化するようにUVファイバー面とUV接着剤の距離を適宜調整するとよい。そして、UV光11の照射が終了した線状のUV接着剤からなる核材6a表面全面に金属鍍金を施して金属層6bを被覆して円筒形状の導電部材6を形成する。なお、金属鍍金の代わりに蒸着によって核材6a表面に金属層6bを形成してもよい。
【0017】ここで、無光沢Ni鍍金で金属層6bを形成する条件を以下に示す。
浴組成:硫酸ニッケル 150g/l塩化アンモニア 15g/lほう酸 15g/l鍍金条件:pH 5.8〜6.2温度 : 20〜30℃電流密度: 0.5〜1A/dm2その後、導電部材6を所望の長さに切断することにより長手方向と対向する切断面にはUV接着剤からなる核材6aが露出される。なお、長手方向全面には帯状に金属層6bが被覆された状態となる。
【0018】次に、その配線構造の製造方法を説明する。図4は本発明の一実施例に則した配線構造の製造方法を説明する図である。図4に示す如く、回路基板1の電極端子2上に一列毎に1個ずつ導電部材6を長手方向全面に帯状に被覆された金属層6bが電極端子2上にくるように配置し、絶縁性接着部材5を回路基板1の電極端子2の所定の列に塗布し、回路基板1の電極端子2と回路基板3の電極端子4とが対向するように位置合わせをし、回路基板1、3の両側(どちらか一方の片側でもよい)から加圧して電極端子2、4に導電部材6を接触させ、この状態でUV光を照射してUV接着剤からなる絶縁性接着部材5を硬化することにより、回路基板1の電極端子2と回路基板3の電極端子4が導電部材6により電気的接続された図1に示すような配線構造を得ることができる。
【0019】このように、本実施例では、電極端子2と電極端子4とが核材6a表面に予め核材6a一部(核材6a長手方向と対向する側の両面)が露出するように金属層6bが被覆された導電部材6により電気的接続されてなるように構成したため、回路基板1と回路基板3を加圧する時、核材6aに生じる内圧を核材6aが露出される部分から逃がすことができるので、図5、6に示す如く、露出部分は変形するが核材6aから加わる金属層6bへの内圧を減少緩和することができる。このため、従来の全面に導電膜が被覆された導電部材を用いる場合よりも加圧時に金属層6bを破壊しないようにすることができる。しかも、露出部分を電極端子2、4側に配置しないようにしたため、端子2、4側には核材6aが飛び出ないようにすることができるので、下地の電極端子2、4にクラック等のダメージを生じないようにすることができる。従って、電極端子2とこの電極端子2と対向する電極端子4間での導電部材6による接続信頼性を向上させることができる。
【0020】本実施例では、導電部材6と電極端子2、4との接触面積を金属層6bの帯の部分で適宜制御することができるので、所望の接続抵抗値にすることができる。また、導電部材6を形状が円筒形状であるように構成したため、矩形形状の場合よりも端子2、4への衝撃を緩和することができる。更に、導電部材6の核材6aをUV光硬化性接着部材からなるように構成したため、UV接着剤を用いることで短時間でかつ容易に核材6aを製造することができ、接着剤の成分を変えることで弾性を適宜変化させることができる。
【0021】また、本実施例では、絶縁性接着部材5を核材6aと同種のUV硬化性接着部材からなるように構成したため、接着剤中のNa+ 、Cl- 、K+ 等のイオンの影響をなくすことで電極端子2、4の電解腐食や接着剤の劣化等による接続信頼性の低下を防ぐことができる他、導電部材6の核材6aと周囲の絶縁性接着部材5が一体になることで導電部材6と周囲の絶縁性接着部材5の弾性率、収縮率等の物性値の違いによる接続信頼性の低下を防ぐことができる。
【0022】なお、上記実施例では、回路基板1の電極端子2上に1個ずつ導電部材6を配置する場合について説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、導電部材6が2個以上配置されていてもよい。ここで、複数個(図示例では2個)の導電部材6を配置する場合を図7を用いて説明する。まず、図7(a)に示す如く、回路基板1上に形成された電極端子2を図7(b)に示す如く、平坦基板19上に均一に塗布されたUV光硬化性接着部材20の上に押し当てた後、図7(c)に示す如く、電極端子2上のみに転写されるようにUV光硬化性接着部材20を引き剥がす。この時、回路基板1の電極端子2上のみに未硬化のUV光硬化性接着部材20が選択的に形成される。次に、図7(d)に示す如く、UV光透過性平坦基板21上に均一に並べられた導電部材6上に、回路基板1の電極端子2上に形成されたUV光硬化性接着部材20を押し当てて加圧し、この状態でUV光透過性平坦基板21側からUV光を照射してUV光硬化性接着部材20を硬化させることで電極端子2と導電部材6を電気的接続する。そして、図7(e)に示す如く、導電部材6と電極端子2がUV光硬化性接着部材20により接着された回路基板1をUV光透過性平坦基板21から引き剥がすことで複数個(2個)の導電部材6を電極端子2上に配置することができる。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、加圧時に導電部材の金属層を破壊しないようにすることができるとともに、下地の電極端子にクラック等のダメージを生じないようにすることができ、電極端子とこの電極端子と対向する電極端子間での導電部材による接続信頼性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に則した配線構造の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例に則した導電部材の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に則した導電部材の製造方法を説明する図である。
【図4】本発明の一実施例に則した配線構造の製造方法を説明する図である。
【図5】本発明の一実施例に則した効果を説明する図である。
【図6】本発明の一実施例に則した効果を説明する図である。
【図7】本発明に適用できる電極端子上に複数個の導電部材を配置する場合の製造方法を説明する図である。
【図8】従来例の課題を説明する図である。
【符号の説明】
1 回路基板
2 電極端子
3 回路基板
4 電極端子
5 絶縁性接着部材
6 導電部材
6a 核材
6b 金属層
8 シリンジ
9 UV接着剤
10 UVファイバー
11 UV光
19 平坦基板
20 UV光硬化性接着部材
21 UV光透過性平坦基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】第1の配線基板上に形成された第1の電極端子と、第2の配線基板上に形成された第2の電極端子とが対向して配置され、該第1の配線基板と該第2の配線基板とが絶縁性接着部材により接着され、該第1の電極端子と該第2の電極端子とが絶縁性核材表面に予め該核材一部が露出するように導電膜が被覆された導電部材により電気的接続されてなることを特徴とする配線構造。
【請求項2】前記導電部材は、前記導電膜が前記核材表面に帯状に被覆されてなることを特徴とする請求項1記載の配線構造。
【請求項3】前記導電部材は、形状が円筒形状であることを特徴とする請求項1乃至2記載の配線構造。
【請求項4】前記導電部材の核材は、UV光硬化性接着部材からなることを特徴とする請求項1乃至3記載の配線構造。
【請求項5】UV光硬化性接着部材を塗出、落下させながらUV光を照射し硬化して核材を形成した後、該核材表面に該核材一部が露出するように導電膜を被覆して導電部材を形成することを特徴とする導電部材の製造方法。
【請求項6】前記絶縁性接着部材は、前記核材と同種のUV光硬化性接着部材からなることを特徴とする請求項4記載の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【特許番号】特許第3113749号(P3113749)
【登録日】平成12年9月22日(2000.9.22)
【発行日】平成12年12月4日(2000.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−317663
【出願日】平成4年11月27日(1992.11.27)
【公開番号】特開平6−160880
【公開日】平成6年6月7日(1994.6.7)
【審査請求日】平成11年11月10日(1999.11.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【参考文献】
【文献】実開 昭61−101724(JP,U)