説明

配線用設備

【課題】小動物の侵入を防止しつつ、ケーブルの引き回しにかかる作業負担の軽減を図り、当該作業効率の向上を図ること。
【解決手段】所定方向に沿って複数に分割され、当該所定方向に沿って配列された状態において一連の壁111を形成するボード状部材110と、少なくとも一つのボード状部材110が所定方向に沿って移動可能な状態で、それぞれのボード状部材110を支持する支持部材120と、ボード状部材110に設けられ、支持部材120によって支持されたボード状部材110が壁111を形成する状態において、当該壁111を貫通するケーブル挿入口113を形成する開口形成用凹部112と、ケーブル挿入口113に対して装着可能であって当該ケーブル挿入口113に装着された状態において当該ケーブル挿入口113を閉塞する閉塞部材130と、を備えた配線用設備100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小動物の侵入によって甚大な事故の発生が懸念される発電所や変電所などの施設に設置される配線用設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば変電所などの電気用施設においては、電気用施設の構内における建物やスイッチギヤなどの制御用のケーブルを構外に引き出したり、これらのケーブルを構外から構内に引き込んだりするために、電気用施設の壁に当該壁を貫通する開口(貫通孔)が設けられていることがあった。このような開口は、たとえば、型枠や耐火性ボードを用いて形成された壁を掘削するなどして形成される。
【0003】
壁を掘削することによって形成される開口は、当該開口を経由するように引き回されるケーブルが当該開口において占める面積よりも面積が大きい場合がある。この場合、開口を経由するように引き回されるケーブルと開口の周縁との間には隙間が生じることとなり、当該隙間の大きさや形状によっては当該隙間から鼠や蛇などの小動物が侵入することがあった。開口を経由するように引き回されるケーブルと開口の周縁との間に生じた隙間から侵入した小動物は、電気設備事故を発生させる原因となりうるため、従来は、小動物の侵入を防止するための小動物侵入防止対策を開口に施していた。
【0004】
具体的には、小動物侵入防止対策は、たとえば、開口を経由するように引き回されるケーブルと開口の周縁との間に生じた隙間に硬化剤を充填し、当該隙間を埋めることによって実施していた。硬化剤は、施工箇所の形状に合せて加工可能な封鎖材であって、小動物侵入防止対策を施す際には、ボードと制御用のケーブルとの隙間を塞ぐように制御用のケーブルの周囲に充填された状態で硬化する。従来の小動物侵入防止対策において、小動物進入防止対策に用いるボードの形状や硬化剤の充填量は、ケーブルの本数や太さなどの施工状況にあわせて適宜調整していた。
【0005】
また、従来、具体的には、たとえば、建物に、建物内外を連通させるように設けられたケーブル接続用コネクタなどの付属品を通しうる大きさの引出作業用開口の縁部に、当該引出作業用開口を被覆するようにして小動物侵入防止部材を取り付け、この小動物侵入防止部材に拡縮自在に設けられたケーブル挿通孔を開閉手段によって開閉するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−47145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の開口においては既設のケーブルが重なり合った状態であることが多く、このような状態に対して、上述した特許文献1を含む従来の技術を適用すると、電気設備の増設作業や除却作業などにともなって新たなケーブルを引き回す際に、当該作業をおこなうために十分な作業スペースを確保することが難しく、作業性に劣るという問題があった。
【0008】
また、上述した従来の技術は、小動物進入防止対策に用いるボードの形状や硬化剤の充填量をケーブルの本数や太さなどの施工状況にあわせて適宜調整しているため、電気設備の増設作業や除却作業などにともなって新たなケーブルを引き回す際には、既設のボードや硬化剤の大半を撤去し、新たに引き回すケーブルの本数や太さなどの施工状況にあわせて、小動物侵入防止対策をあらためて施さなくてはならず、煩わしいという問題があった。
【0009】
具体的には、上述した従来の技術は、たとえば、小動物侵入防止対策をあらためて施す際には、既設のボードや硬化剤を撤去し、その後、新規のボードを用いたり新たに硬化剤を充填したりする必要があった。このため、上述した従来の技術は、既設のボードや硬化剤を再利用することができず、電気設備の増設作業や除却作業などにともなって開口にケーブルを引き回す作業をおこなうごとにボードや硬化剤を逐次消費することになり、環境に対する負荷が大きいという問題があった。
【0010】
また、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、建物の壁などへ施設することを前提としているため防水対策が不十分であり、屋内側へ雨水が浸水する。このため、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、雨水などが溜まる変電所のケーブルピットには適用することが難しいという問題があった。
【0011】
さらに、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、複数のケーブルを引き出すことが可能な構成ではあるものの、上述した従来の技術と同様に、電気設備の増設作業や除却作業などにともなうケーブルの引き回し作業に際して、当該ケーブルを引き回す作業をおこなうために十分な作業スペースを確保することが難しく、作業性に劣るという問題があった。
【0012】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、小動物の侵入を防止しつつ、ケーブルの引き回しにかかる作業負担の軽減を図り、当該作業効率の向上を図ることができる配線用設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる配線用設備は、所定方向に沿って複数に分割され、当該所定方向に沿って配列された状態において一連の壁を形成するボード状部材と、少なくとも一つの前記ボード状部材が前記所定方向に沿って移動可能な状態で、それぞれの前記ボード状部材を支持する支持部材と、前記ボード状部材に設けられ、前記支持部材によって支持された前記ボード状部材が前記壁を形成する状態において、当該壁を貫通する開口を形成する開口形成用凹部と、前記開口に対して装着可能であって当該開口に装着された状態において当該開口を閉塞する閉塞部材と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる配線用設備は、上記の発明において、前記開口形成用凹部が、前記支持部材によって支持された前記ボード状部材が前記壁を形成する状態において、前記開口を複数形成することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる配線用設備は、上記の発明において、移動可能に支持された前記ボード状部材に設けられ、外周面に螺旋状の凹凸が設けられた可動用工具と螺合可能な螺旋状の凹凸を内周面に備える貫通孔を備え、前記ボード状部材が、前記可動用工具の回転にともなって当該可動用工具に対する貫通孔の螺合位置が変化することにともない前記所定方向に移動することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる配線用設備は、上記の発明において、前記閉塞部材が、弾性材料によって形成され、前記開口に装着された状態において前記ボード状部材との隙間を密閉する密閉部材を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる配線用設備は、上記の発明において、前記ボード状部材が、耐火性材料を用いて形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる配線用設備は、上記の発明において、前記ボード状部材が、耐水性材料を用いて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明にかかる配線用設備によれば、小動物の侵入を防止しつつ、ケーブルの引き回しにかかる作業負担の軽減を図り、当該作業効率の向上を図ることができる配線用設備を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明にかかる実施の形態の配線用設備を示す説明図である。
【図2】この発明にかかる実施の形態の配線用設備の一部を示す説明図である。
【図3】可動用工具の構成を示す説明図である。
【図4】この発明にかかる実施の形態の配線用設備の使用例を示す説明図(その1)である。
【図5】この発明にかかる実施の形態の配線用設備の使用例を示す説明図(その2)である。
【図6】この発明にかかる実施の形態の配線用設備の使用例を示す説明図(その3)である。
【図7】従来の小動物侵入防止対策例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる配線用設備の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
(配線用設備の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の配線用設備の構成について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の配線用設備の構成を示す説明図である。図1において、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100は、ボード状部材110と、支持部材120と、を備えている。
【0023】
ボード状部材110は、複数(この実施の形態においては4つ)設けられており、所定方向に沿って配列された場合に一連の壁111を形成する。この実施の形態において、ボード状部材110(110A、110B、110C、110D)は、たとえば、上下方向に沿って配列することができる。
【0024】
各ボード状部材110は、耐火性材料を用いて形成されている。具体的には、各ボード状部材110は、たとえば、耐火性石膏材料を用いて形成されたボード(石膏ボード)や、コンクリート材料を用いて形成されたボード(コンクリートボード)などによって実現することができる。
【0025】
また、各ボード状部材110は、耐水性材料を用いて形成されていてもよい。具体的には、各ボード状部材110は、たとえば、防水加工を施した石膏材料(耐水性石膏材料)などを用いて形成されたボードによって実現することができる。あるいは、各ボード状部材110は、耐火性および耐水性を兼ね備えたバーミキュライトなどの材料を用いて形成されたボードによって実現されるものであってもよい。目的とする耐火性や耐水性を備えたボード状部材110は、公知の各種の材料を用いて容易に実現することが可能であるため、ボード状部材110を形成する材料については説明を省略する。
【0026】
支持部材120は、複数のボード状部材110をそれぞれ支持する。この実施の形態において、支持部材120は、複数のボード状部材110を上下方向に積層するように配列させた状態で、各ボード状部材110を支持する。支持部材120は、具体的には、たとえば、複数のボード状部材110によって形成される一連の壁の周囲を四方から囲む枠状の部材121、122、123、124によって実現することができる。
【0027】
また、支持部材120は、少なくとも一つのボード状部材110が所定方向(たとえば上下方向)に沿って移動可能な状態で、各ボード状部材110を支持する。この実施の形態においては、支持部材120を実現する枠状の部材121、122、123、124のうち、上部に配置される部材121は、他の三方(両側方および下部)に配置される部材122、123、124から分離することが可能とされている。
【0028】
支持部材120を実現する枠状の部材のうちの上部に配置される部材121を他の三方に配置される部材122、123、124から分離した状態においては、両側方および下部の三方に配置される部材122、123、124によって支持されるボード状部材110を、上下方向に移動させることが可能となる。ボード状部材110を移動させる方法については後述する。
【0029】
支持部材120を実現し、壁の四方を囲む枠状の部材121、122、123、124のうち、少なくとも両側方に配置される部材122、124には、各ボード状部材110を所定方向に沿ってスライド可能とするように上下方向に延出する、図示を省略する溝が設けられている。この場合、支持部材120が備える溝の幅は、ボード状部材110によって形成される壁の厚み方向の寸法と略同一とすることができる。
【0030】
ボード状部材110には、開口形成用凹部112が設けられている。開口形成用凹部112は、支持部材120によって上下方向に積層された状態で支持された複数のボード状部材110が一連の壁111を形成する状態において、各ボード状部材110における、隣接するボード状部材110に対向する辺から内側に凹んだ凹形状をなしている。
【0031】
具体的には、たとえば、支持部材120によって支持されるボード状部材110が上下方向に移動可能とされている場合、開口形成用凹部112は、支持部材120によって支持された状態の各ボード状部材110における上端面から下側に向かって凹んだ凹形状をなすように設けることができる。
【0032】
また、具体的には、たとえば、支持部材120によって支持されるボード状部材110が上下方向に移動可能とされている場合、開口形成用凹部112は、支持部材120によって支持された状態の各ボード状部材110における下端面から上側に向かって凹んだ凹形状をなすように設けることができる。
【0033】
この実施の形態における開口形成用凹部112は、各ボード状部材110における上端面あるいは下端面から当該ボード状部材110の内側に矩形状に凹んだ凹形状をなしている。これにより、ボード状部材110は、上側あるいは下側が矩形状に凹凸する櫛歯形状をなしている。具体的には、たとえば、支持部材120によって支持されたボード状部材110が一連の壁を形成する状態において、もっとも下側に配置されるボード状部材110は、上側が矩形状に凹凸する櫛歯形状をなす。
【0034】
また、具体的には、たとえば、支持部材120によって支持されたボード状部材110が一連の壁を形成する状態において、もっとも上側に配置されるボード状部材110は、下側が矩形状に凹凸する櫛歯形状をなす。さらに、具体的には、たとえば、支持部材120によって支持されたボード状部材110が一連の壁を形成する状態において、もっとも上側あるいはもっとも下側に配置されるボード状部材110以外のボード状部材110は、上側および下側がそれぞれ矩形状に凹凸するように、上下両側が櫛歯形状をなす。
【0035】
開口形成用凹部112は、支持部材120によって支持されたボード状部材110が一連の壁111を形成する状態において、当該壁111を板厚方向に沿って貫通する開口としてのケーブル挿入口113を形成する。具体的には、たとえば、支持部材120によって支持されたボード状部材110が形成する壁が、変電所などの電気用施設の屋内外の境界に設置される壁である場合、ケーブル挿入口113は、屋内と屋外とを連通する方向に壁111を貫通する。
【0036】
ケーブル挿入口113には、ダクト部材113aが挿入されている。ダクト部材113aは、ケーブル挿入口113の貫通方向に沿って貫通する角筒形状をなし、ケーブル挿入口113の内径と略同一の外径とされている。
【0037】
開口形成用凹部112は、支持部材120によって支持された複数のボード状部材110が一連の壁を形成する状態において、隣接するボード状部材110に設けられた開口形成用凹部112と対向する位置に設けることができる。すなわち、支持部材120によって支持されたボード状部材110が一連の壁を形成する状態においては、各ボード状部材110に設けられた開口形成用凹部112どうしが上下方向に対向することによってそれぞれケーブル挿入口113を形成する。
【0038】
このように、支持部材120によって支持された複数のボード状部材110が一連の壁111を形成する状態において隣接するボード状部材110に設けられた開口形成用凹部112どうしを対向させてケーブル挿入口113を形成することにより、一つのボード状部材110に設けられる開口形成用凹部112の大きさを、目的とするケーブル挿入口113の開口サイズより小さくすることができる。
【0039】
この実施の形態においては、一つのボード状部材110に設けられる開口形成用凹部112の大きさを、目的とするケーブル挿入口113の開口サイズの略半分の大きさとすることができる。これによって、一つの壁形成用部材にケーブル挿入口113一つ分の凹部を設ける場合と比較して、一つの壁形成用部材を凹ませる大きさを小さく抑えることができ、各壁形成用部材の強度低下を抑えることができる。
【0040】
開口形成用凹部112は、ボード状部材110一つに対し複数設けられている。これにより、支持部材120によって支持されたボード状部材110が一連の壁111を形成する状態において、当該一連の壁111には複数のケーブル挿入口113が形成される。各開口形成用凹部112の大きさや形状は、それぞれ異なっていてもよいし、すべて統一されていてもよい。
【0041】
ケーブル挿入口113の開口サイズや形状は、開口形成用凹部112の大きさや形状に応じて定まる。ケーブル挿入口113の開口サイズや形状は、それぞれ異なっていてもよいし、すべて統一されていてもよい。図1においては、各開口形成用凹部112の大きさおよび形状がすべて等しく、各ボード状部材110に4つずつの開口形成用凹部112が設けられている例を示している。
【0042】
ケーブル挿入口113は壁を板厚方向に貫通しているため、当該ケーブル挿入口113には、壁111の手前側から当該壁111の背面側へ、あるいは、壁111の背面側から当該壁111の手前側へ引き回されるケーブル101を通すことができる。ケーブル101の引き回し作業に際しては、たとえば、壁111の手前側から当該壁111の背面側へ、あるいは、壁111の背面側から当該壁111の手前側へ引き回されるケーブル101の本数や各ケーブル101の太さなどに応じて、任意の位置における任意の数のケーブル挿入口113を選択的に用いることができる。
【0043】
支持部材120によって支持されたボード状部材110が一連の壁111を形成する状態において形成されるケーブル挿入口113には、閉塞部材130を装着することができる。閉塞部材130は、ケーブル挿入口113に対して脱離自在に装着可能な部材であって、当該ケーブル挿入口113に装着された状態において当該ケーブル挿入口113を閉塞する。
【0044】
閉塞部材130は、たとえば、壁111の手前側から当該壁111の背面側へ、あるいは、壁111の背面側から当該壁111の手前側へ引き回されるケーブル101の本数や各ケーブル101の太さなどに応じて、任意の位置における任意の数のケーブル挿入口113に対して選択的に装着される。
【0045】
図2は、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100の一部を示す説明図である。図2において、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100の一部である閉塞部材130は、被挿入部201とフランジ部202と、を備えている。被挿入部201は、ケーブル挿入口113の貫通方向における寸法(壁111の板厚)と同程度の長さの角柱形状をなし、ケーブル挿入口113を閉塞する際には閉塞対象とするケーブル挿入口113内に挿入される。
【0046】
被挿入部201を当該被挿入部201の軸心方向に直交する平面で切断した断面の大きさ(外径寸法)は、ケーブル挿入口113の周縁をなす一辺の長さよりも小さくする。これによって、ケーブル挿入口113を閉塞する際に、被挿入部201をケーブル挿入口113に挿入することができる。
【0047】
あるいは、被挿入部201は、ケーブル挿入口113の貫通方向における寸法(壁111の板厚)と同程度の長さの円柱形状をなす部材によって実現してもよい。この場合、被挿入部201を軸心方向に直交する平面で切断した断面となる円の直径は、ケーブル挿入口113の周縁をなす一辺の長さよりも短くする。これによっても、ケーブル挿入口113を閉塞する際に、被挿入部201をケーブル挿入口113に挿入することができる。
【0048】
フランジ部202は、被挿入部201の長手方向における当該被挿入部201の両端に設けられる。フランジ部202の外径寸法は、被挿入部201の外径寸法(直径)よりも大きい。また、フランジ部202の外径寸法は、ケーブル挿入口113の開口径(ケーブル挿入口113の開口面積)よりも大きい。
【0049】
これによって、被挿入部201をケーブル挿入口113内に挿入する際には、フランジ部202を壁に当接させることによって当該ケーブル挿入口113に対する被挿入部201の位置を規制することができ、ケーブル挿入口113に対して被挿入部201を挿入しすぎてしまうことを防止できる。
【0050】
閉塞部材130は、被挿入部201の長さ方向に沿って2つに分割することが可能とされている。ケーブル挿入口113を閉塞する際には、まず、被挿入部201を分割し、分割された各被挿入部201を壁111の両面側からそれぞれケーブル挿入口113に挿入し、その後、分割された各被挿入部201をケーブル挿入口113の中で連結させる。分割された各被挿入部201どうしは、たとえば、被挿入部201の双方に設けられたネジ山を螺合させることによって連結させることができる。
【0051】
被挿入部201の両端にはフランジ部202が設けられているため、閉塞部材130は、フランジ部202の間に壁111を挟み込んだ状態で、ケーブル挿入口113を閉塞するように装着される。これによって、ケーブル挿入口113に対する閉塞部材130の位置ずれを防止することができ、閉塞部材130がケーブル挿入口113から脱落することを防止することができる。
【0052】
閉塞部材130は、当該閉塞部材130がケーブル挿入口113に装着された状態においてボード状部材110との隙間を密閉する密閉部材203を備えている。密閉部材203は、ボード状部材110との隙間を密閉するパッキンのように機能する。密閉部材203は、たとえば、ウレタンゴムやシリコンゴムなどの弾性材料によって形成することができる。
【0053】
これにより、上記のようにケーブル挿入口113に装着された状態の閉塞部材130は、ボード状部材110との間に隙間を形成することなく、当該ボード状部材110に密着する。これによっても、ケーブル挿入口113に対する閉塞部材130の位置ずれを防止することができ、閉塞部材130がケーブル挿入口113から脱落することを防止することができる。
【0054】
ボード状部材110が形成する壁111を貫通するように引き回すケーブル101の本数が多い場合は、引き回すケーブル101の本数が少ない場合よりも多くのケーブル挿入口113が必要になるため、壁111に装着される閉塞部材130の数は少なくなる。また、ボード状部材110が形成する壁111を貫通するように引き回すケーブル101の本数が同じであっても、太いケーブルを引き回す場合は細いケーブルを引き回す場合と比較して、より多くのケーブル挿入口113が必要になるため、壁111に装着される閉塞部材130の数は少なくなる。
【0055】
ケーブル挿入口113は、ボード状部材110によって形成されているため、ケーブル挿入口113に対して補強などの作業を施すことなく、閉塞部材130を取り外した直後からケーブル101の引き回しに使用することができる。これによって、ボード状部材110によって形成される壁111によって小動物の侵入を防止しつつ、ケーブル101の引き回しに要するケーブル挿入口113を迅速かつ確実に確保することができる。
【0056】
各ボード状部材110において、開口形成用凹部112どうしの間に形成されるリブ部114には、工具挿入口115および工具支持凹部116が設けられている。工具挿入口115は、両端が開口した円筒形状をなす。工具挿入口115は、支持部材120によってボード状部材110が支持された状態において上下方向にボード状部材110を貫通している。
【0057】
工具挿入口115の内周面には、工具挿入口115の貫通方向を軸心方向とする、図示を省略する所定ピッチのネジ山が設けられている。工具挿入口115の内径は、所定の可動用工具(図3を参照)が備える螺合部材の外径と同等とされている。所定の可動用工具については説明を後述する。工具挿入口115は、リブ部114の中央に設けられている。
【0058】
工具支持凹部116は、ケーブル挿入口113の幅を広げるために、下側に配列されるボード状部材110から上側に配列されるボード状部材110を離間させる際に、上側に配列されるボード状部材110を支持するために用いられる。工具支持凹部116は、支持部材120によってボード状部材110が支持された状態において上側となる端面が開口するように、当該上側となる端面から下方向に凹んだ凹形状をなす。
【0059】
工具支持凹部116の開口径は、工具挿入口115の内径および螺合部の外径よりも小さい。工具支持凹部116の内周面は平滑であり、ネジ山は形成されていない。工具支持凹部116は、リブ部114の中央に設けられている。工具挿入口115および工具支持凹部116はそれぞれリブ部114の中央に設けられているため、ボード状部材110を上下方向に積層するように配列した状態においては、工具挿入口115および工具支持凹部116はそれぞれ上下方向に重なるように位置づけられる。
【0060】
この実施の形態の配線用設備100においては、上下方向において、工具支持凹部116が工具挿入口115よりも下方に位置するようにボード状部材110を配列して使用する。このように配列することにより、複数のボード状部材110によって一連の壁111を形成する状態においては、一連の壁111の上方から、すべての工具支持凹部116を視認することができる。
【0061】
ボード状部材110において、リブ部114は、開口形成用凹部112の両側方に形成される。すなわち、一つのボード状部材110につき、複数のリブ部114が設けられている。上記の工具支持凹部116は、複数のリブ部114のうち、少なくとも一つのリブ部114に設けられている。工具支持凹部116は、上下方向において、下側に配列されるボード状部材110に設けられる個数の方が、上側に配列されるボード状部材110に設けられる個数よりも多い方が好ましい。
【0062】
具体的には、たとえば、一つにつき5つのリブ部114が設けられているボード状部材110を、上下方向に4段積層するように配列する場合、もっとも下側に配列されるボード状部材110Aには2つの工具支持凹部116を設け、当該ボード状部材110Aよりも上側に配列されるボード状部材110Cには1つの工具支持凹部116を設ける。図1に示した配線用設備100においては、下から2段目に配列されたボード状部材110Bにも、2つの工具支持凹部116が設けられている。
【0063】
上記のように、工具支持凹部116は、下側に配列されるボード状部材110から上側に配列されるボード状部材110を離間させる際に、上側に配列されるボード状部材110を支持するために用いる。これにより、もっとも上側に配列されるボード状部材110Dは他のボード状部材110を支持する必要がない。このため、もっとも上側に配列されるボード状部材110Dは、工具挿入口115のみを備え、工具支持凹部116を備えていない。
【0064】
(可動用工具の構成)
図3は、可動用工具の構成を示す説明図である。図3において、可動用工具300は、円筒形状をなす螺合部材310を備えている。螺合部材310の直径は、工具挿入口115の内径と略同一とされている。螺合部材310の外周面には、工具挿入口115の内周面に設けられたネジ山と螺合可能な、当該ネジ山と同一ピッチのネジ山が設けられている。
【0065】
螺合部材310の軸心方向における当該螺合部材310の一端には、支点部材320が設けられている。支点部材320は、螺合部材310の軸心上に設けられ、当該軸心方向に沿って螺合部材310から離反する方向に突出している。支点部材320の長さ方向の寸法は、工具支持凹部116の深さ寸法と略同一とされている。支点部材320は、工具支持凹部116に嵌り込むことが可能であって、かつ、当該工具支持凹部116内で回転可能な大きさおよび形状とされている。支点部材320は、平滑な外周面を備えている。
【0066】
螺合部材310には、軸部材330の一端が連結されている。軸部材330の長さは、支持部材120の高さ方向の寸法と同程度とすることが好ましい。軸部材330の他端には、把持部材330aが設けられている。把持部材330aは、たとえば、作業者が当該把持部材330aを把持しやすいようにゴム材料などを用いて形成された滑り止めのグリップが設けられていてもよい。
【0067】
螺合部材310は、当該螺合部材310に設けられたネジ山の旋回方向にしたがって回転しながら、工具挿入口115に挿入されることにより、工具挿入口115を介してボード状部材110に螺合される。螺合部材310には軸部材330が連結されているため、最上部に積層されたボード状部材110Dのみならず、ボード状部材110Dよりも下段に積層されたボード状部材110B、110Cに設けられた工具挿入口115にも、螺合部材310を螺合させることができる。これによって、上下方向におけるいずれの位置に配列されたボード状部材110に対しても、螺合部材310を螺合させることができる。
【0068】
ボード状部材110は、螺合部材310を該当するボード状部材110の工具挿入口115に螺合させた状態で可動用工具300を引き上げることによって、上方向に移動させることができる。また、ボード状部材110は、螺合部材310を該当するボード状部材110の工具挿入口115に螺合させた状態で、可動用工具300を下へ下ろすことによって下方向に移動させることができる。
【0069】
(配線用設備100の使用例)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100の使用例について説明する。図4、図5および図6は、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100の使用例を示す説明図である。
【0070】
ボード状部材110が形成する壁111を貫通するようにケーブル101を引き回す作業に際しては、まず、支持部材120を実現する枠状の部材121、122、123、124の上側の一辺をなす部材121を分離し、ボード状部材110の上側を開放する。この状態で、作業者は、ケーブル101の引き回し作業の対象となるケーブル挿入口113を広げるように、該当するボード状部材110を上方向に移動させる。
【0071】
図4においては、ボード状部材110Dを上側に移動させ、ボード状部材110Cとボード状部材110Dとの間に隙間400を形成する状況を示している。図4において、ボード状部材110Dを上側に移動させる際には、可動用工具300の支点部材320が、ボード状部材110Dの直下に配列されているボード状部材110Cが備える工具支持凹部116に嵌り込むように、該当する工具挿入口115に可動用工具300を挿入する。工具挿入口115に可動用工具300を挿入する際には、可動用工具300を螺合部材310に設けられたネジ山の旋回方向にしたがって回転させる。
【0072】
つぎに、可動用工具300の支点部材320がボード状部材110Cが備える工具支持凹部116に嵌り込んだ状態で、当該可動用工具300を螺合部材310に設けられたネジ山の旋回方向にしたがってさらに回転させる。螺合部材310の外周面および工具挿入口115の内周面にはともに同一ピッチのネジ山が設けられているため、可動用工具300をさらに回転させると、螺合部材310が工具挿入口115を貫通してボード状部材110C側へ移動するように、工具挿入口115に対する螺合部材310の螺合位置が変化する。これにより、ボード状部材110Dがボード状部材110Cから離間する方向に移動し、ボード状部材110Cとボード状部材110Dとの間に隙間400を形成することができる。
【0073】
図5においては、ボード状部材110Cを上側に移動させ、ボード状部材110Bとボード状部材110Cとの間に隙間500を形成する状況を示している。図5において、ボード状部材110Cを上側に移動させる際には、可動用工具300の支点部材320が、ボード状部材110Cの直下に配列されているボード状部材110Bが備える工具支持凹部116に嵌り込むように、該当する工具挿入口115に可動用工具300を挿入する。工具挿入口115に可動用工具300を挿入する際には、可動用工具300を螺合部材310に設けられたネジ山の旋回方向にしたがって回転させる。
【0074】
つぎに、可動用工具300の支点部材320がボード状部材110Bが備える工具支持凹部116に嵌り込んだ状態で、当該可動用工具300を螺合部材310に設けられたネジ山の旋回方向にしたがってさらに回転させる。螺合部材310の外周面および工具挿入口115の内周面にはともに同一ピッチのネジ山が設けられているため、可動用工具300をさらに回転させると、螺合部材310が工具挿入口115を貫通してボード状部材110B側へ移動するように、工具挿入口115に対する螺合部材310の螺合位置が変化する。これにより、ボード状部材110Cがボード状部材110Bから離間する方向に移動し、ボード状部材110Bとボード状部材110Cとの間に隙間500を形成することができる。
【0075】
ボード状部材110Cを上側に移動させる際には、ボード状部材110Cおよびボード状部材110Dを上側に移動させる。このため、ボード状部材110Bとボード状部材110Cとの間に隙間500を形成する場合、作業者に対しては、ボード状部材110Cとボード状部材110Dとの間に隙間400を形成する場合と比較して大きな労力が要求される。
【0076】
この発明にかかる実施の形態において、配線用設備100は、下側に配列されるボード状部材110に設けられる数の方が、上側に配列されるボード状部材110に設けられる数よりも多くなるように工具支持凹部116が形成されている。このため、上に移動させるボード状部材110の数が多くなり作業者に要求される労力が大きくなると、移動対象とするボード状部材110を複数箇所で支持しながら上に移動させることができる。
【0077】
具体的には、たとえば、ボード状部材110Cを上側に移動させる際にはボード状部材110Cを一点で支えながら移動させることに対し、ボード状部材110Cおよびボード状部材110Dを上側に移動させる際にはボード状部材110Cおよびボード状部材110Dを二点で支えながら移動させる。これにより、移動対象とするボード状部材110C、110Dを移動させる際に下側のボード状部材110Bにかかる重量を分散することができる。
【0078】
図6においては、ボード状部材110Bを上側に移動させ、ボード状部材110Aとボード状部材110Bとの間に隙間600を形成する状況を示している。図6において、ボード状部材110Bを上側に移動させる際には、可動用工具300の支点部材320が、ボード状部材110Bの直下に配列されているボード状部材110Aが備える工具支持凹部116に嵌り込むように、該当する工具挿入口115に可動用工具300を挿入する。工具挿入口115に可動用工具300を挿入する際には、可動用工具300を螺合部材310に設けられたネジ山の旋回方向にしたがって回転させる。
【0079】
つぎに、可動用工具300の支点部材320がボード状部材110Aが備える工具支持凹部116に嵌り込んだ状態で、当該可動用工具300を螺合部材310に設けられたネジ山の旋回方向にしたがってさらに回転させる。螺合部材310の外周面および工具挿入口115の内周面にはともに同一ピッチのネジ山が設けられているため、可動用工具300をさらに回転させると、螺合部材310が工具挿入口115を貫通してボード状部材110A側へ移動するように、工具挿入口115に対する螺合部材310の螺合位置が変化する。
【0080】
これにより、ボード状部材110Bがボード状部材110Aから離間する方向に移動し、ボード状部材110Aとボード状部材110Bとの間に隙間600を形成することができる。また、ボード状部材110Bを上側に移動させる際にも、上記のように、移動対象とするボード状部材110を複数箇所で支持しながら上に移動させることにより、移動対象とするボード状部材110B、110C、110Dを移動させる際に下側のボード状部材110Aにかかる重量を分散することができる。
【0081】
該当するボード状部材110を上方向に移動させ、上方向に移動させたボード状部材110と当該ボード状部材110の下側に配列されているボード状部材110との間に隙間を形成することにより、ケーブル101の引き回し作業の対象となるケーブル挿入口113を広げることができる。このように、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100によれば、ケーブル101の引き回し作業にかかる作業スペースを容易に確保することができる。
【0082】
ケーブル101の引き回し作業に際しては、上方向に移動させたボード状部材110と当該ボード状部材110の下側に配列されているボード状部材110との間に所定のスペーサを設置する。これにより、上方向に移動させたボード状部材110が不用意に下へ移動することを防止し、ケーブル101の引き回し作業に際しての安全性を確保することができる。
【0083】
また、ケーブル101の引き回し作業に際しては、上方向に移動させたボード状部材110と当該ボード状部材110の下側に配列されているボード状部材110との間であって、開口形成用凹部112とは異なる場所に、既設のケーブルを一時的に退避させておくことができる。すなわち、上方向に移動させたボード状部材110と当該ボード状部材110の下側に配列されているボード状部材110との間の空間(隙間400、500、600)を、ケーブル101の引き回し作業の作業スペースとして活用することができる。
【0084】
上記のように、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100を用いることにより、ケーブル101の引き回し作業に際して、既設のケーブルを退避させておく作業スペースを確保することができる。これにより、作業者は既設のケーブルを手で支えておく必要がない。
【0085】
そして、これによって、たとえば、既設のケーブルを手で支えておくために作業者にかかる負担や、作業者が重量のあるケーブルを当該作業者の足などに落下させてしまう不具合をなくすことができ、ケーブル101の引き回し作業に際しての安全性を確保することができる。また、これによって、ケーブル101の引き回し作業にかかる人員を減らすことができるので、当該作業にかかるコスト(人件費)の低減を図ることができる。
【0086】
図7は、従来の小動物侵入防止対策例を示す説明図である。図7において、従来は、型枠700や耐火性ボード701を用いて形成された壁を掘削するなどして形成された開口702に、電気用施設の構内における建物やスイッチギヤなどの制御用のケーブル101を引き回す場合、ケーブル101と開口702の周縁702aとの間に硬化剤703を充填し、ケーブル101と開口702の周縁702aとの間の隙間を埋めるようにしていた。
【0087】
このような従来の方法では、ケーブル101の本数や太さなどの施工状況にあわせて、小動物進入防止対策に用いる耐火性ボード701の形状や硬化剤703の充填量を適宜調整しなくてはならず、電気設備の増設作業や除却作業などにともなって新たなケーブル101を引き回す際には、既設の耐火性ボード701や硬化剤703の大半を撤去していた。撤去した耐火性ボード701や硬化剤703は再利用することが難しく、廃棄するしかないのが現状であり、環境に対して大きな負荷をかけていた。
【0088】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100は、所定方向に沿って複数に分割され、当該所定方向に沿って配列された状態において一連の壁111を形成するボード状部材110と、少なくとも一つのボード状部材110が所定方向に沿って移動可能な状態で、それぞれのボード状部材110を支持する支持部材120と、ボード状部材110に設けられ、支持部材120によって支持されたボード状部材110が壁111を形成する状態において、当該壁111を貫通するケーブル挿入口113を形成する開口形成用凹部112と、ケーブル挿入口113に対して装着可能であって当該ケーブル挿入口113に装着された状態において当該ケーブル挿入口113を閉塞する閉塞部材130と、を備えたことを特徴としている。
【0089】
この発明にかかる実施の形態の配線用設備100によれば、ボード状部材110によって壁111を形成すると同時に当該壁111を貫通するケーブル挿入口113を形成することができるとともに、形成されたケーブル挿入口113を閉塞部材130を用いて適宜選択的に閉塞することができる。そして、壁111を貫通するようにケーブル101を引き回す必要が生じた場合は、閉塞部材130を取り外すだけでケーブル101の引き回しに要するケーブル挿入口113を迅速に確保することができる。これによって、小動物の侵入を防止しつつ、ケーブル101の引き回しに要するケーブル挿入口113を確保する作業を容易かつ迅速におこなうことができる。
【0090】
また、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100において、ケーブル挿入口113は、ボード状部材110によって形成されているため、ケーブル挿入口113に対して補強などの作業を施すことなく、閉塞部材130を取り外した直後からケーブル101の引き回しに使用することができる。これによって、ボード状部材110によって形成される壁111によって小動物の侵入を防止しつつ、ケーブル101の引き回しに要するケーブル挿入口113を迅速かつ確実に確保することができる。
【0091】
また、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100におけるケーブル挿入口113にケーブル101を引き回す際には、所定方向に沿ってボード状部材110を移動させることにより、ケーブル101の引き回し作業にかかる作業スペースを容易に確保することができる。そして、ケーブル101の引き回し作業にかかる作業スペースを確保することにより、ケーブル101の引き回し作業中に作業者が人力でケーブル101を保持することなく作業をおこなうことができるので、作業にかかる人員を減らし、かつ、当該作業にかかるコスト低減を図ることができる。
【0092】
また、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100によれば、ケーブル101の引き回し作業中に作業者が人力でケーブル101を保持することなく作業をおこなうことができるので、作業者が重量のあるケーブル101を当該作業者の足などに落下させることをなくすことができ、作業に際しての作業者の安全性の向上を図ることができる。
【0093】
また、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100によれば、開口形成用凹部112が設けられたボード状部材110を用いることにより、壁111を削ることによる廃棄物などを生じさせることがないため、壁111を貫通するようにケーブル101を引き回す必要が生じるごとに壁111に孔をあけるなどしてケーブル101を貫通させるためのケーブル挿入口113を形成する場合と比較して、廃棄物の低減を図ることができる。これによって、環境に対する負荷を低減することができる。
【0094】
また、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100は、開口形成用凹部112が、支持部材120によって支持されたボード状部材110が壁111を形成する状態において、ケーブル挿入口113を複数形成することを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の配線用設備100によれば、ボード状部材110によって形成される壁111にあらかじめ複数のケーブル挿入口113を設けておき、壁111を貫通するように引き回されるケーブル101の太さや本数に応じて、開放するケーブル挿入口113と閉塞部材130によって閉塞するケーブル挿入口113の数と場所とを適宜選択することによって、ケーブル101を引き回す作業ごとに適した作業環境を容易かつ迅速に確保することができる。これによって、小動物の侵入を防止しつつ、ケーブル101の引き回しに要するケーブル挿入口113を確保する作業を容易かつ迅速におこなうことができる。
【0095】
また、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100は、移動可能に支持されたボード状部材110に設けられ、外周面に螺旋状の凹凸が設けられた可動用工具300と螺合可能な螺旋状の凹凸を内周面に備える貫通孔を備え、移動可能に支持されたボード状部材110は、前記可動用工具300の回転にともなって当該可動用工具300に対する貫通孔の螺合位置が変化することにともない上下方向に移動することを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の配線用設備100によれば、移動対象とするボード状部材110を可動用工具300を用いて移動させることができる。
【0096】
これによって、いたずらなどによってボード状部材110が不用意に移動されることを防止することができ、ボード状部材110が不用意に移動することによってケーブル101がボード状部材110の間に挟まって小動物が侵入する隙間が形成されたり、ボード状部材110の間に挟まったケーブル101が断線するなどケーブル101の損傷を防止することができる。
【0097】
また、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100は、閉塞部材130が、弾性材料によって形成され、ケーブル挿入口113に装着された状態においてボード状部材110との隙間を密閉する密閉部材203を備えたことを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の配線用設備100によれば、非使用時におけるケーブル挿入口113を確実に密閉することができ、非使用時のケーブル挿入口113から小動物が侵入したり雨水が浸入して設備が劣化したりすることを防止できる。これによって、小動物の侵入を長期にわたって確実に防止することができる。
【0098】
また、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100は、ボード状部材110が、耐火性材料を用いて形成されていることを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の配線用設備100によれば、耐火性材料を用いて形成された複数のボード状部材110を所定方向に配列することで耐火性能を備えた壁111を容易に設置することができる。これによって、たとえば、電気設備など発火(火花の発生)の可能性がある場所に設置される壁111であっても、当該発火(火花)による壁111の劣化を抑制し、小動物の侵入を長期にわたって防止することができる。
【0099】
また、この発明にかかる実施の形態の配線用設備100は、ボード状部材110が、耐水性材料を用いて形成されていることを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の配線用設備100によれば、耐水性材料を用いて形成された複数のボード状部材110を所定方向に配列することで耐水性能を備えた壁111を容易に設置することができる。これによって、たとえば、外壁など雨水にさらされる箇所に設置される壁111であっても、雨水の浸食による壁111の劣化を抑制し、小動物の侵入を長期にわたって防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、この発明にかかる配線用設備は、壁を貫通するようにしてケーブルを引き回す必要がある施設に設置される配線用設備に有用であり、特に、小動物の侵入によって甚大な事故の発生が懸念される発電所や変電所などの施設に設置される配線用設備に適している。
【符号の説明】
【0101】
100 配線用設備
101 ケーブル
110(110A、110B、110C、110D) ボード状部材
111 壁
112 開口形成用凹部
113 ケーブル挿入口
114 リブ部
115 工具挿入口
116 工具支持凹部
120 支持部材
121、122、123、124 枠状の部材
130 閉塞部材
201 被挿入部
202 フランジ部
300 可動用工具
310 螺合部材
320 支点部材
330 軸部材
330a 把持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って複数に分割され、当該所定方向に沿って配列された状態において一連の壁を形成するボード状部材と、
少なくとも一つの前記ボード状部材が前記所定方向に沿って移動可能な状態で、それぞれの前記ボード状部材を支持する支持部材と、
前記ボード状部材に設けられ、前記支持部材によって支持された前記ボード状部材が前記壁を形成する状態において、当該壁を貫通する開口を形成する開口形成用凹部と、
前記開口に対して装着可能であって当該開口に装着された状態において当該開口を閉塞する閉塞部材と、
を備えたことを特徴とする配線用設備。
【請求項2】
前記開口形成用凹部は、前記支持部材によって支持された前記ボード状部材が前記壁を形成する状態において、前記開口を複数形成することを特徴とする請求項1に記載の配線用設備。
【請求項3】
移動可能に支持された前記ボード状部材に設けられ、外周面に螺旋状の凹凸が設けられた可動用工具と螺合可能な螺旋状の凹凸を内周面に備える貫通孔を備え、
前記ボード状部材は、前記可動用工具の回転にともなって当該可動用工具に対する貫通孔の螺合位置が変化することにともない前記所定方向に移動することを特徴とする請求項1または2に記載の配線用設備。
【請求項4】
前記閉塞部材は、弾性材料によって形成され、前記開口に装着された状態において前記ボード状部材との隙間を密閉する密閉部材を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の配線用設備。
【請求項5】
前記ボード状部材は、耐火性材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の配線用設備。
【請求項6】
前記ボード状部材は、耐水性材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の配線用設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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