説明

配置グリッド生成システム及び配置グリッド生成システムを用いた会場

【課題】実測による諸設備の配置位置の割り出しや、目印を設ける作業を不要にすることで、諸設備の配置作業を容易にし且つ作業時間を大幅に短縮できる配置グリッド生成システム及びそれを用いた会場を提供することにある。
【解決手段】ユーザーが配置グリッド作成装置1を用いて会場の床面Fに投影する配置グリッドデータを作成する。補正歪み装置2は、配置グリッド作成装置1で作成された配置グリッドデータを、床面Fの形状や、投影装置3の光軸の床面Fに対する傾きや床面Fまでの距離に基づいて歪み補正し、この補正された配置グリッドデータから映像信号を生成して投影装置3に出力する。この映像信号により投影装置3から床面Fに投影した映像で表示される配置グリッドの形状は、実スケールで示され且つ歪み補正により矩形形状にとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観客や来席者などの着席用の椅子を含む諸設備の配置グリッドを床面に表示する配置グリッド生成システム及び配置グリッド生成システムを用いた会場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
演奏会、演劇公演、集会等を開催することができる多目的な会場(ホール)では、開催目的に応じて観客や来席者などの着席用の椅子や設備を設置したり、逆に取り払い等をその都度行う必要がある。
【0003】
このような会場には、例えば開閉可能に設けた床板と、床板の下部に倒伏格納し得る椅子等からなるステージ装置とを設けるとともに、このステージ装置を旋回及び昇降させる装置を恒久的な設備として設けたものがある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開昭63−110366号公報(公報第2頁左上欄第4行乃至第19行、図面の第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されているような恒久的な設備は、大がかりな設備な上に設置費が高く、また建設時に設置しなければならないなど課題があった。
【0005】
そのため椅子などの諸設備が、固定・常設ではなく、催しの都度設備の配置をし直す会場(施設)が一般的である。このような一般的な会場では、椅子等の諸設備を催しの都度配置し直すため、その作業が繁雑であった。つまり椅子などの諸設備を配置する作業では、開催目的に応じて諸設備のレイアウトが決まると、ますメジャーなどで測量して配置すべき位置を割り出した後に、床面に紐やテープなどで目印を設けた上で、設備を配置していたため、作業が繁雑となっていた。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、諸設備の配置位置の実測による割り出しや目印を設ける作業を不要とし、諸設備の配置作業が容易で且つ作業時間を大幅に短縮できる配置グリッド生成システム及びそれを用いた会場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1の配置グリッド生成システムの発明では、諸設備の配置対象となる会場の平面図を表示する表示部と、該表示部で表示した前記平面図上に前記設備の配置位置に対応する配置グリッドを作成するための指示を入力する入力部と、該入力部で入力された指示に基づいて前記平面図に対する配置グリッドを作成するグリッド作成部とを有する配置グリッド作成装置と、前記会場の天井又は壁面に配設され、配置グリッドの映像を前記会場の床面に投影表示する投影装置と、前記投影装置から前記床面に投影する配置グリッドの映像が前記床面上で表示されたときに実スケールで且つ映像の歪みがなくなるように前記配置グリッド作成装置から取得した配置グリッドのデータを投影装置の配置位置情報及び床面の形状情報に基づいて補正し、この補正した配置グリッドのデータからなる映像信号を前記投影装置に出力する歪み補正装置とを備えているをことを特徴とする。
【0008】
請求項2の配置グリッド生成システムの発明では、請求項1の発明において、前記配置グリッド作成装置は、入力部からの指示により設定される配置グリッド作成モードとして、前記平面図をマニュアルで任意に分割して配置グリッドを作成するマニュアル作成モードと、予め記憶部に記憶している分割パターンに基づいて前記平面図を分割して配置グリッドを作成する分割作成モードとを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の配置グリッド生成システムの発明では、請求項1又は2の発明において、前記配置グリッド作成装置は、前記表示部に表示された平面図の内、前記入力部の指示で選択される所望の領域のみを配置グリッドの作成対象とすることを特徴とする。
【0010】
請求項4の配置グリッド生成システムの発明では、請求項1乃至3の何れかの発明において、前記配置グリッド作成装置は、前記平面図のデータを外部から取得する手段を有していることを特徴とする。
【0011】
請求項5の配置グリッド生成システムを用いた会場の発明では、請求項1に記載の配置グリッドシステムを用い、諸設備を配置する床面に対して配置グリッドの映像を投影表示可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配置グリッド生成システム及びそれを用いた会場の発明は、諸設備の配置の目印となる配置グリッドを予め作成、確認にすることができる上に、諸設備を配置する会場の床面に配置グリッドを歪み無く実スケールで投影表示することができ、そのため諸設備の配置位置の実測による割り出しや、目印を設ける作業を不要とし、結果設備の配置作業が容易で且つ作業時間を大幅に短縮できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を実施形態により説明する。
(実施形態1)
図1は本実施形態のシステム構成を示しており、システムは管理センター等に設置される配置グリッド作成装置1と、現場である会場に設置される歪み補正装置2及び投影(投映)装置3とに大きく分かれ、配置グリッド作成装置1から歪み補正装置2に対しては、ネットワーク或いは記憶媒体からなるデータ伝達部4により作成された配置グリッドデータが伝達されるようになっている。
【0014】
ここで配置グリッド作成装置1は、配置グリッドを作成するグリッド作成部としての機能や各部の制御を行う機能を持つ演算処理部10と、マウス等のポインティングデバイスやキーボードからなる入力部11と、演算処理部10の制御の下でデータの読み書き或いは読み出しが為されるハードディスクや、CDやDVD等の記憶媒体とそのドライブ装置とからなる外部記憶装置12と、スキャナ等の外部機器との間の入出力インターフェース13と、モニタ装置からなる表示部14と、演算処理部10の制御の下で表示部14に画像表示を行うための表示制御部15と、データ伝達部4の一つであるネットワークに接続するための通信制御部16と、更にデータの展開等に用いられるRAMのような主記憶部17等から構成される。尚配置グリッド作成装置1は実際的には汎用のコンピュータ装置上で配置グリッド作成のアプリケーションソフトを実行することで実現される。
【0015】
外部記憶装置12は使用される記憶媒体にデータを格納することで記憶部を構成しており、CDやDVDのようなディスメディア或いはハードディスクに椅子等の諸設備の配置対象となる会場の平面図を記憶する第1の記憶部121と、ハードディスクに後述するように作成された配置グリッドのデータを記憶する第2の記憶部122と、ハードディスクに後述するようにユーザーから入力部11を通じて指定される領域や点のデータを記憶する第3の記憶部123と、この第3の記憶部123で記憶された領域や点のデータを会場の平面図上の点・領域のデータとしてハードディスクに記憶する第4の記憶部124とから構成される。
【0016】
第1の記憶部121に記憶させる会場の平面図データは、例えばCADで作成したデータを通信制御部16に接続されるネットワークを通じて取り込んだり、記憶媒体に格納されたデータを取り込んで、演算処理部10の機能として備えた変換部により変換することで取得するか、入出力インターフェース13に接続したスキャナによって紙図面からなる平面図を画像データに変換して取り込み、演算処理部10の機能して備えたラスターベクター変換機能により、線分・円などの図形情報を抽出して最終的に平面図のデータを取得する。尚ラスターベクター変換機能は、対応する市販のOCRソフト等を用いて実現可能である。このように外部から平面図データを取り込むことで既存の会場の平面図を利用することが簡単になる。
【0017】
投影装置3は、映像信号(画像信号)を外部から受けって映像(画像)をスクリーンとなる面に投影する所謂プロジェクターから構成され、対象となる会場の床面Fに投影できるように会場の天井或いは壁面に取り付けられる。
【0018】
歪み補正装置2は、ネットワークからなるデータ伝達部4を通じて配置グリッド作成装置1から配置グリッドデータを受け取るための通信制御部20(或いは配置グリッドデータを格納した記憶媒体からデータを読み取るためのドライブ装置)と、投影装置3の設置位置(後述する光軸Xの傾き角度や光軸Xの床面Fまでの距離等)の情報を記憶する設置位置記憶部21と、対象となる会場の床面形状のデータを記憶する床面形状記憶部22と、投影装置3から床面Fに投影する配置グリッドの映像が床面F上で表示されたときに実スケールで且つ映像の歪みがなくなるように配置グリッド作成装置1から取得した配置グリッドのデータを投影装置3の配置位置情報及び床面の形状情報に基づいて補正する処理を行うとともに補正した配置グリッドのデータを映像信号に変換して投影装置3に出力する映像信号生成機能23aを有する歪み補正処理部23とを有するものである。この歪み補正装置2は実際的には汎用コンピュータ装置の上で歪み補正処理のアプリケーションソフトを実行することで実現され、前記各記憶部21,22はハードディスクのような外部記憶装置から構成される。
【0019】
次に本実施形態における配置グリッド作成時の処理動作を図2、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0020】
まず配置グリッド作成装置1を起動させて配置グリッド作成の処理を開始すると、演算処理部10の制御の下で表示部2にメニュー画面が表示され、メニュー画面から入力部11を用いてユーザーが対象となる会場を選択すると、予め第1の記憶部121に記憶されている当該会場の平面図のデータを演算処理部10が読み出し、演算処理部10の制御の下で表示制御部15を通じて表示部14の所定位置に平面図の画像が表示される(ステップS1)。
【0021】
次に演算処理部10は平面図上で設備を配置する領域が入力済みか否かを第4の記憶部124に平面図上に対応した領域データが記憶されているかどうかでチェックし(ステップS2)、領域が入力済みの場合はその領域データを第4の記憶部124から読み出して、表示部14で表示している平面図上に領域を重ねるように表示する(ステップS3)。
【0022】
ユーザーはこの表示されている領域中に所望している領域があるか否かを検討し(ステップS4)、所望する領域があれば、入力部11のマウスで当該領域をクリックして指定する(ステップS5)。所望する領域が無ければ、表示部14で例えば表示されている領域入力釦(図示せず)をクリックする。
【0023】
ここで演算処理部10は、上述のステップS2で入力済み領域が無い場合、或いはステップS4でユーザーが領域入力釦をクリックしたことを検知すると、ユーザーが領域を入力する動作モードに移行する(ステップS6)。この動作モードの流れを図3のフローチャートで示す。
【0024】
この動作モードにおいて、ユーザーが入力部11のマウスを用いて表示部14に表示されている平面図上で設定したい領域外周の開始点をクリックすると(ステップ61)、演算処理部10はこの開始点の位置データを読み取り、その開始点の位置データを第3の記憶部123に記憶させるとともに表示部14で表示している平面図上の領域外周の表示を更新させる(ステップS62)。
【0025】
そして次の頂点がクリックされると(ステップS63)、演算処理部10はその頂点の位置データを第3の記憶部123に記憶させる(ステップS64)。そして演算処理部10は次のステップS65で、その頂点が終点か否かを判断し、つまり開始点に戻ったか否かを判断し、終点でなければステップS62に戻り、終点と判断されるまでステップS62〜65の処理を繰り返すのである。ステップS65で終点と判断されると演算処理部10は第3の記憶部123に記憶させた位置データに基づいて開始点から始まる頂点列を平面図上の位置に変換し、この変換後次のステップS67において平面図上での領域を求め、この求めた領域をステップS68で第4の記憶部124に記憶させ、この領域入力の動作モードから図2のステップS2へ戻る。
【0026】
さて図2のステップS5でユーザーが所望の領域域を指定すると、演算処理部10は次のステップS7においてユーザーに、領域に対する配置グリッドをマニュアルで作成するマニュアル作成モードか、自動的に領域を分割する分割作成モードかを選択する選択メニューを表示画面に提示する。
【0027】
ここで分割作成モードが選択されると、演算処理部15はユーザーに対して予め第1の記憶部121に記憶させている複数の分割パターン(例えば座席数)を表示画面に平面図とともに表示させる。ユーザーは表示された分割パターンから所望する分割パターンを入力部11のマウスを用いて選択する(ステップS8)。分割パターンが選択されると演算処理部10は、指定された領域データと分割パターンとに基づいて領域を分割する配置グリッドの形状を求める処理を行い(ステップS9)、第2の記憶部122に記憶している配置グリッドデータを更新し(ステップS10)、指定された領域に対する配置グリッドデータの作成を終了する。上述のように領域のみに配置グリッドを求める処理を行うため、配置グリッドの作成処理に要する時間が短縮される。また分割作成モードでは、作成するべき配置グリッドを一から作成しなくて良いため、配置グリッド作成に要する時間を短縮できる。
【0028】
一方ステップS7でマニュアル作成モードが選択されると、ステップS11からのマニュアル作成モードの動作に移行することになる。この場合ユーザーはまず表示部14で表示されている平面図上にグリッド線の開始点をクリックする(ステップS11)。この開始点が入力されると演算処理部10は、開始点の位置データを第3の記憶部123に記憶させるとともに、マウスポインタ位置に応じて平面図上のグリッド線表示の更新を行う(ステップS12)。そしてステップS13において次の頂点がクリックされると、演算処理部10はその頂点の位置データを記憶部123に記憶させ(ステップS14)、次のステップS15でその頂点が終点であるか否かを判断する。この場合例えばユーザーがマウスで頂点を指定する際にダブルクリックした場合に、この頂点が終点であると演算処理部10は判断する。
【0029】
さて、ユーザーが表示部14の画面上でマウスポインタを動かして順次頂点を指定すると、演算処理部10はマウスポインタの減算位置と先の頂点のデータに基づいて、画面上でグリッド線の形状の表示を更新し続ける。
【0030】
そしてユーザーがダブルクリックにより終点を指定すると、演算処理部10は、このダブルクリックからグリッド線の指定操作が終了したと判断し、第3の記憶部123に記憶している位置データから開始点を含む頂点列を平面図上の点列に変換し(ステップS16)、ステップS17において平面図に即したグリッド線を求め、第2の記憶部122に記憶されている配置グリッドデータを更新する。これによりマニュアル作成による配置グリッドの作成が終了することになる。
【0031】
以上により作成された配置グリッドの映像を会場に設置した投影装置3を用いて床面Fに投影表示させれば、椅子等の諸設備の配置位置が判ることになるが、図4(a)に示すように投影装置3の光軸Xと床面Fとが垂直でない場合、例えば配置グリッドの元映像αが図4(b)のような矩形の映像であっても、投影装置3の投影範囲内において投影装置3と床面Fとの距離が異なるため床面Fに映し出される配置グリッドの映像は台形に歪んだ映像α’となる。
【0032】
このような歪みをなくして床面Fに映し出される配置グリッドの映像を元映像αと同様な矩形な映像とし且つ床面Fでの配置グリッドの寸法が設備に対応した実スケールである必要があるために、本実施形態では、歪み補正装置2によって上述のように作成された配置グリッドデータを補正して歪みを補正するとともに、配置グリッドデータの寸法補正を行った上で、補正後の配置グリッドデータを映像信号に変換するようになっている。
【0033】
この歪み補正装置2はネットワークからなるデータ伝達部4を通じて配置グリッド作成装置1から配置グリッドデータを受け取るか、或いは配置グリッドデータを書き込んだCD、DVD等の記憶媒体からなるデータ伝達部4を通じて受け取るようになっている。
【0034】
この受け取った配置グリッドデータは会場の平面図上で作成された矩形状の配置グリッドに対応したデータであるため、そのままのデータを用いて投影装置3から床面Fに投影した配置グリッドの映像は、上述したように投影装置3の光軸Xの床面Fに対する傾きや距離との関係により台形歪みが生じ、また実スケールとはならない。そこで歪み補正装置2には上述した設置位置記憶部21と、床面形状記憶部22とを備え、歪み補正処理部23が配置グリッドデータを補正するに当たり、これら記憶部21,22から読み出した床面形状情報と投影装置設置位置情報とから投影装置3の光軸Xに対する床面Fの傾き角度を求め、この傾き角度から想定した面に配置グリッドを貼り付けるマッピング処理を行い、このマッピング処理により元の配置グリッドデータを補正する。更に歪み補正処理部23は投影装置3から床面Fまでの距離を求め、この距離と投影装置3の距離に対する映像の倍率データから床面Fで配置グリッドを投影したときの寸法が実スケールとなるように配置グリッドデータを更に補正する。そしてこの補正後の配置グリッドデータを映像信号生成機能23aにより投影装置3に対応する映像信号に変換し投影装置3に出力する。
【0035】
投影装置3は映像信号生成機能23aからの映像信号により配置グリッドの映像を床面Fに投影表示する。ここで補正後の配置グリッドデータを用いた映像は、投影装置3から光軸Xに垂直な面に投影した場合には図5(b)に示すように配置グリッドの形状が台形となった映像βとなるが、床面Fの形状情報及び投影装置設置位置情報に基づいて補正されているため図5(a)に示すように床面Fに投影して表示される配置グリッドの映像β’は会場の平面図上で作成した配置グリッドと同様に矩形となる。
【0036】
而して図6に示すように床面Fに表示された配置グリッドの映像β’に基づいて椅子等の設備5を配置することで会場の所定位置に設備5をセッティングすることができることになる。そのため配置位置の実測による割り出しや、目印を設ける作業が必要なくなり、設備5の配置作業が容易で且つ短時間に行えるのである。
【0037】
尚投影装置3を会場に設置したときに、基準となる配置グリッドに対応する映像を床面Fに投影させ、この投影させたときの配置グリッドの床面Fでの寸法と、またグリッド線の傾き角度を実測してその実測値を記憶部に記憶させるキャリブレーションを行って、配置グリッドデータを補正する際に、基準となる配置グリッドの寸法と、床面Fでの配置グリッドの寸法と、投影装置3の映像の倍率データとで床面Fでの距離を求め、この距離により配置グリッドデータの寸法補正を行い、またキャリブレーションで得たグリッド線の傾き角度から光軸Xの床面Fの傾き角度を求め、この傾き角度の面に対する上述のマッピング処理を行って歪み補正を行うようにしても良い。
【0038】
ところで上述の歪み補正は、床面Fの形状が平面に対する場合であるが、例えば床面Fが階段状となっている場合には、図7(a)のような配置グリッドのデータをそのまま映像信号に変換して床面Fに投影すると、図8(a)に示すような台形歪みを持つ映像α’となる。
【0039】
そこで歪み補正処理部23は床面形状情報が階段状であることを示す場合には、配置グリッド作成装置1で作成された配置グリッドデータを受け取ると、図7(b)に示すように階段を構成する踏み面と蹴込み面に対応する領域a〜e毎に配置グリッドデータを分割する処理を行い。この分割処理後、投影装置3の光軸Xに対する各領域a〜eの面の傾き角度から夫々の領域a〜eの配置グリッドのマッピング処理を行って図7(c)のように各領域a〜eで台形歪みの補正を行い、この各領域a〜eの配置グリッドデータを連結して図7(d)に示す一つの配置グリッドデータとする。この配置グリッドデータに対して更に上述に寸法補正を施して映像信号生成機能23aにより映像信号に変換して投影装置3に出力する。投影装置3がこの映像信号により床面Fに配置グリッドの映像β’を図8(b)に示すように投影表示すると、表示される配置グリッドは矩形状に表示されることになる。
【0040】
ところで対象となる会場が広く、1台の投影装置3で床面Fに配置グリッドを投影表示できない場合には複数の投影装置3を用いて夫々の投影装置3で投影表示を分割するようにしても良い。この場合各投影装置3が投影するための配置グリッドのデータを夫々に対応するように分割し、夫々の投影装置3が投影する床面Fの形状情報と対応する投影装置3の設置位置情報に基づいて分割した配置グリッドデータの歪み補正及び寸法補正を上述のように行う。またこの場合投影装置3の投影による分割映像が重なる領域では輝度補正を行うとともに重複映像においてグリッド線が二重線とならないように一致させる処理を行うように、各投影装置3に対応した配置グリッドのデータの調整を行う。
【0041】
図9は歪み補正後の配置グリッドデータを用い、2台の投影装置3,3により床面Fに配置グリッドの映像β’を投影した例を示しており、この例では投影装置3,3の床面Fに対する光軸の傾き及び距離が異なっており、そのため2台の投影装置3,3の投影で表示される配置グリッドの形状が矩形で且つ実スケールで表示されるように、夫々の投影装置3,3に対応して分割した配置グリッドデータの補正は夫々の投影装置3,3に合わせて行うのである。
(実施形態2)
ところで実施形態1の配置グリッド作成装置1では表示部14で表示されている会場の平面図上にグリッド線を描くようにして配置グリッドを作成しているが、本実施形態では、表示部14の画面上で設備のアイコンを会場の平面図上に貼り付け、この貼り付けに応じて配置グリッドを作成する点に特徴がある。尚配置グリッド装置1では会場に配置される諸設備の形状、寸法を予めハードディスクやCD、DVD等の記憶媒体に記憶することで構成される第5の記憶部125,後述するようにユーザーにより入力された諸設備の配置位置をハードディスクに記憶することで構成される第6の記憶部126を図1の破線で示すように追加する。
【0042】
次に本実施形態の配置グリッド作成装置1の動作を図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0043】
まず配置グリッドの作成の動作が開始される(ステップS21)と、演算処理部10は第1の記憶部121から会場の平面図データを読み出して表示制御部15を介して表示部14で表示させる(ステップ22)。また同時に表示部14の画面において、第5の記憶部125に記憶している諸設備のアイコンを表示させる(ステップS23)。
【0044】
次に画面においてユーザーはマウスポインタを配置したい設備のアイコンに合わせてドラッグし(ステップS24)、マウスポインタを平面図上で動かす(ステップS25)。演算処理部10はマウスポインタの移動に位置に応じてアイコンの表示位置を更新させる制御を表示制御部15を介して行う(ステップS26)。そしてステップS27でアイコンがドロップされることが検知されると、演算処理部10はドロップされた位置を取得し(ステップS28)、その位置を平面図上の位置に変換する(ステップS29)とともに、変換した位置を第6の記憶部126に記憶させる(ステップS30)。以後アイコンのドラッグと移動とドロップの操作をユーザーが繰り返して行うことで、平面図上に設備を順次配置する操作を行う。そして設備の配置が終了し、例えば画面上で表示されている終了釦をユーザーがクリックすると、演算処理部10はこれをステップS31で検知し、この検知後、第6の記憶部126で記憶している設備の配置位置のデータに基づいて配置グリッドを求め(ステップS32)、この配置グリッドデータで第2の記憶部122の配置グリッドデータを更新し(ステップS33)、配置グリッド作成を終了する。
【0045】
このように本実施形態ではユーザーが配置したい設備のアイコンを用いて直接平面図上に貼り付けることで、設備の配置をイメージしながら配置グリッドの作成が行えることになる。
【0046】
尚予め平面図上での配置領域を指定することで、演算処理部10が配置グリッドを求めるための演算処理の負担を軽減するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態1のシステム構成図である。
【図2】実施形態1の処理動作説明用のフローチャートである。
【図3】実施形態1の領域入力の処理動作説明用のフローチャートである。
【図4】実施形態1の投影に用いる配置グリッドデータの歪み補正を行う理由説明図である。
【図5】実施形態1の投影に用いる配置グリッドデータの歪み補正説明図である。
【図6】実施形態1の配置グリッドの映像を用いた設備の配置例図である。
【図7】実施形態1における階段状床面に対応した配置グリッドデータの歪み補正処理の説明図である。
【図8】実施形態1の階段状床面に対応した配置グリッドデータによる映像例図であって、(a)は歪み補正を行わない場合の映像例図、(b)は歪み補正を行った場合の映像例図である。
【図9】実施形態1において投影装置が2台使用された場合の説明図である。
【図10】実施形態2の配線グリッド作成の処理動作説明用のフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1 配置グリッド作成装置
10 演算処理部
11 入力部
12 外部記憶装置
121〜126 記憶部
13 入出力インターフェース
14 表示部
15 表示制御部
16 通信制御部
17 主記憶部
2 歪み補正装置
20 通信制御部
21 設置位置記憶部
22 床面形状記憶部
23 歪み補正処理部
23a 映像信号生成機能
3 投影装置
4 データ伝達部
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
諸設備の配置対象となる会場の平面図を表示する表示部と、該表示部で表示した前記平面図上に前記設備の配置位置に対応する配置グリッドを作成するための指示を入力する入力部と、該入力部で入力された指示に基づいて前記平面図に対する配置グリッドを作成するグリッド作成部とを有する配置グリッド作成装置と、
前記会場の天井又は壁面に配設され、配置グリッドの映像を前記会場の床面に投影表示する投影装置と、
前記投影装置から前記床面に投影する配置グリッドの映像が前記床面上で表示されたときに実スケールで且つ映像の歪みがなくなるように前記配置グリッド作成装置から取得した配置グリッドのデータを投影装置の配置位置情報及び床面の形状情報に基づいて補正し、この補正した配置グリッドのデータからなる映像信号を前記投影装置に出力する歪み補正装置とを備えているをことを特徴とする配置グリッド生成システム。
【請求項2】
前記配置グリッド作成装置は、入力部からの指示により設定される配置グリッド作成モードとして、前記平面図をマニュアルで任意に分割して配置グリッドを作成するマニュアル作成モードと、予め記憶部に記憶している分割パターンに基づいて前記平面図を分割して配置グリッドを作成する分割作成モードとを備えていることを特徴とする請求項1記載の配置グリッド生成システム。
【請求項3】
前記配置グリッド作成装置は、前記表示部に表示された平面図の内、前記入力部の指示で選択される所望の領域のみを配置グリッドの作成対象とすることを特徴とする請求項1又は2記載の配置グリッド生成システム。
【請求項4】
前記配置グリッド作成装置は、前記平面図のデータを外部から取得する手段を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の配置グリッド生成システム。
【請求項5】
請求項1に記載の配置グリッドシステムを用い、諸設備を配置する床面に対して配置グリッドの映像を投影表示可能としたことを特徴とする会場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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