説明

酒類処方作成装置および酒類処方作成プログラム

【課題】酒類処方作成装置の提供。
【解決手段】酒類の原材料の種類毎のデータと、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表と、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表とを入力する入力手段と、前記データおよび相関表を記憶する記憶手段と、酒類の原材料の種類毎の使用量を入力手段により入力して、前記入力された原材料の種類毎の使用量により混合した酒類の、アルコール%、酸度、甘味度Brix、Brix、及び比重より選択する一種以上を前記相関表の対応データを参照する事により演算する演算手段と、演算結果を出力する出力手段と、を備える酒類処方作成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒類処方作成装置および酒類処方作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
酒類市場において、日本酒やビール、ワインなどの醸造酒の他に、カクテル飲料やチューハイのように、各種酒類原料を混合してつくる、いわゆるRTD(READY TO MADE)の酒類が増えている。
【0003】
近年の缶チューハイの売上げの伸びがこの傾向を象徴している。また、この種の酒類は、バリエーションが無限といえる程多く、組み合わせ方次第で、様々なタイプが可能であり、多数の商品が商品化されている。
【0004】
そこで、様々な特徴をもった酒類を開発し、製造する技術のレベルアップと、正確さ、迅速化が求められるようになっている。様々な酒類や酒類原料を混合したときに、どのような分析値になるかを、コンピュータを用いて予め予測できると、開発スピードのアップにつながる。
【0005】
この点について、酒類のBrixと比重の分析値からアルコール%を算出する方法は紹介されている(特許文献1参照)。しかし、様々な酒類や酒類原料を混合したときに、どのような分析値になるかを、コンピュータを用いて予め予測する文献は見当たらない。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−8533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、アルコールは、水と混合すると容積変化が起きることと、アルコールには、可溶性固形分がないにもかかわらず、Brix値が示されることから、混合してなる、アルコール飲料の分析値を原料の分析値から予測することが非常に困難であった。本発明では、これらの問題点を解決し、酒類処方作成装置および酒類処方作成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、発明者はアルコール%と比重の変化、さらに甘味料を加えた場合の比重、Brixについての考察により知見を得て以下の発明をした。
【0009】
(1)酒類の原材料の種類毎のデータと、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表と、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表と、を入力する入力手段と、前記データおよび相関表を記憶する記憶手段と、酒類の原材料の種類毎の使用量を前記入力手段により入力して、前記入力された原材料の種類毎の使用量により混合した酒類の、アルコール%、酸度、甘味度Brix、及び比重より選択する一種以上を前記相関表の対応データを参照する事により演算する演算手段と、前記演算手段による演算結果を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする酒類処方作成装置。
【0010】
(1)に記載の発明を用いることにより以下の作用が期待できる。
あらかじめ使用を予定する酒類の原材料の種類毎のデータを酒類処方作成装置の入力手段により入力する。入力した原材料の種類毎のデータは記憶手段に記憶される。また、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表とを入力する。入力したこれらの相関表も記憶手段に記憶される。この状態で、酒類の原材料の種類毎の使用量を入力する。入力すると演算手段により入力された原材料の種類毎の使用量により混合した酒類の、アルコール%、酸度、甘味度Brix、Brix及び比重より選択する一種以上とが演算手段により上記の相関表の対応データを参照する事により演算される。その後、これらの値が出力手段により出力される。
【0011】
その結果、以下の効果が期待できる。出力手段によりアルコール%と酸度と甘味度Brixと比重とが出力される。酒類はアルコール%と酸度と甘味度Brixにより飲んだときの感触を予想することができる。また、販売に当たってアルコール%ならびに容量を表示する必要があるので、比重も演算されることにより販売に当たっての規制をクリアーできるか否かの判断がしやすい。様々な特徴をもった酒類を開発するに際して、実際に混合して味を確かめ、その後分析して規制値に適合するかを判断するなどの手間ならびに期間を大幅に低減することができる。
【0012】
特に、アルコールは濃度が15%以上になると比重との関係が非線形となるので、演算が難しくなる。あらかじめアルコール%と比重の相関表と、アルコール%とBrixの相関表、アルコール%と糖濃度の混合液のBrixの相関表を参照することにより演算することができる。
【0013】
ここで、Brixとは、Brix計で測定した、屈折率に基づくBrix値を指す。甘味度Brixとは糖等の可溶性固形分の重量%を指す。従って、甘味度Brixは、アルコールのBrix寄与を除外した、理論値である。アルコールの無い系では、Brixと甘味度Brixは一致するが、アルコールの有る系では、Brixよりも甘味度Brixは、アルコールのBrix寄与分だけ低くなる。
【0014】
(2)酒類の原材料の種類毎のデータと、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表と、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表と、を入力する入力手段と、前記データおよび相関表を記憶する記憶手段と、処方を期待する規格値を前記入力手段により入力して、前記規格値を満たす原材料の使用量を前記相関表の対応データを参照する事により演算する演算手段と、前記演算手段による演算結果を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする酒類処方作成装置。
【0015】
(2)に記載の発明は、(1)に記載の発明とは逆に処方を期待する規格値を入力して、入力された規格値を満たす原材料の使用量を演算する。あらかじめ、酒類の原材料の種類毎のデータとアルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表とを入力手段により入力し記憶手段に記憶することは(1)に記載の発明と同様である。処方を期待する規格値を入力手段により入力して、その規格値を満たす原材料の使用量を演算する。演算した原材料の使用量が出力手段により出力される。出力された内容により、どの種類の原材料をどれだけ準備して混合すれば規格値を満たす酒類を処方できるかを知ることができる。
【0016】
その結果、試行錯誤することなく規格値を満たす原材料の使用量を知ることができる。なお、規格値を満たす原材料の使用量の解が出ない場合は、最も解に近い使用量を出力することが望ましい。出力された内容を見て判断しやすいからである。
【0017】
ここで、規格値とは酒類を開発する際の、例えば酒税法等の規制値を考慮してきめられた、測定することが可能で、開発目標または生産上管理決定すべき値をいう。
【0018】
(3)(1)に記載の酒類処方作成装置であって、 前記規格値は、アルコール%、酸度、及び甘味度Brixより選択される一種以上であることを特徴とする酒類処方作成装置。
【0019】
(3)の発明は、規定値を限定した内容であり、限定することにより記憶手段に記憶すべき容量を制限でき、酒類処方作成装置の演算速度も上がる。効果は(1)の発明で説明したのと同様な効果が得られる。
【0020】
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の酒類処方作成装置であって、酒類の原材料の種類は、アルコールの種類、糖の種類、果汁の種類、及び香料より選択される一種以上であることを特徴とする酒類処方作成装置。
【0021】
(4)の発明は、酒類の原材料を限定した内容であり。限定することにより記憶手段に記憶すべき容量を制限でき、酒類処方作成装置の演算速度も上がる。効果は(1)から(3)の発明で説明したのと同様な効果が得られる。
【0022】
(5)(1)から(4)のいずれかに記載の酒類処方作成装置であって、前記演算手段に、さらに演算された比重の値より、容量処方と重量処方とシロップ処方とを演算し、前記出力手段により演算された容量処方と重量処方とシロップ処方とを出力することを特徴とする酒類処方作成装置。
【0023】
(5)に記載の発明は演算された比重の値より、容量処方と重量処方とシロップ処方とを演算する。酒類の販売は缶であれば350ml、瓶であれば633mlのように容量で販売される。一方生産の現場で材料を投入する際や、生産の途中工程での測定は重量で行うほうが生産しやすい。そこで、容量処方と重量処方の双方の演算値を出力することにより生産管理がやりやすい利点がある。また、シロップ処方は各種のシロップ水があるのでどの種類を使うかを明確にする利点がある。
【0024】
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の酒類処方作成装置であって、前記演算手段に、さらに演算された処方の果汁含量と原価計算とカロリー計算とを演算し、前記出力手段により演算された処方の果汁含量と原価計算とカロリー計算とを出力することを特徴とする酒類処方作成装置。
【0025】
(6)に記載の発明は処方の果汁含量と原価計算とカロリー計算が計算されるので、事業計画、販売計画をする際に参照できて便利である。
【0026】
(7)(1)から(6)のいずれかに記載の酒類処方作成装置であって、混合された酒類の比重の演算手段は前記第1の相関表の対応データを参照することに替えて、原材料のデータよりアルコールを除くエキス分の重さaを演算し、さらにエキス分の比重dを演算し、次の方程式により演算することを特徴とする酒類処方作成装置。
X=(100−a/d+a)/100
Z=XY+(1−Y)a
〔ここで、
Z:混合された酒類の比重
X:アルコール成分を含まないエキス分溶液の比重
Y:エキス分を含まないアルコール溶液の比重〕
【0027】
(7)に記載の発明は混合された酒類の比重の演算を方程式によることを特徴とする。方程式により演算することにより、相関表の対応データを参照するのより演算速度時間を短くできる利点がある。その他の効果は上記にて説明したのと同様である。
【0028】
(8)コンピュータを酒類処方作成装置として機能させるコンピュータプログラムであって、酒類の原材料の種類毎のデータと、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表と、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表と、を入力する入力手段と、前記データおよび相関表を記憶する記憶手段と、酒類の原材料の種類毎の使用量を前記入力手段により入力して、前記入力された原材料の種類毎の使用量により混合した酒類の、アルコール%、酸度、甘味度Brix、Brix、及び比重より選択する一種以上を前記相関表の対応データを参照する事により演算する演算手段と、前記演算手段による演算結果を出力する出力手段と、してコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【0029】
(8)に記載の発明は、(1)に記載の酒類処方作成装置の発明をコンピュータプログラムとして実現したものである。すなわち、(1)に記載の発明と同一の手段を有するコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることによって、(1)の発明で説明したのと同様な効果を期待することができる。さらに、コンピュータプログラムであるので、一般に普及しているパーソナルコンピュータにコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることができるので、専用の装置を作る場合に比して経済的である。
【0030】
(9)コンピュータを酒類処方作成装置として機能させるコンピュータプログラムであって、酒類の原材料の種類毎のデータと、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表と、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表と、を入力する入力手段と、前記データおよび相関表を記憶する記憶手段と、処方を期待する規格値を前記入力手段により入力して、前記規格値を満たす原材料の使用量を前記相関表の対応データを参照する事により演算する演算手段と、前記演算手段による演算結果を出力する出力手段と、してコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【0031】
(9)に記載の発明は、コンピュータプログラムとして(2)に記載の酒類処方作成装置の発明を実現したものである。すなわち、(2)に記載の発明と同一の手段を有するコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることによって、(2)の発明で説明したのと同様な効果を期待することができる。さらに、コンピュータプログラムであるので、一般に普及しているパーソナルコンピュータにコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることができるので、専用の装置を作る場合に比して経済的である。
【0032】
(10)に記載のコンピュータプログラムであって、 前記規格値は、アルコール%、酸度、及び甘味度Brixより選択される一種以上であることを特徴とするコンピュータプログラム。
【0033】
(10)に記載の発明は、(3)に記載の酒類処方作成装置の発明をコンピュータプログラムとして実現したものである。すなわち、(3)に記載の発明と同一の手段を有するコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることによって、(3)の発明で説明したのと同様な効果を期待することができる。さらに、コンピュータプログラムであるので、一般に普及しているパーソナルコンピュータにコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることができるので、専用の装置を作る場合に比して経済的である。
【0034】
(11)(8)から(10)のいずれかに記載のコンピュータプログラムであって、酒類の原材料の種類は、アルコールの種類、糖の種類、果汁の種類、及び香料より選択される一種以上であるあることを特徴とするコンピュータプログラム。
【0035】
(11)に記載の発明は、コンピュータプログラムとして(4)に記載の酒類処方作成装置の発明を実現したものである。すなわち、(4)に記載の発明と同一の手段を有するコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることによって、(4)の発明で説明したのと同様な効果を期待することができる。さらに、コンピュータプログラムであるので、一般に普及しているパーソナルコンピュータにコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることができるので、専用の装置を作る場合に比して経済的である。
【0036】
(12)(8)から(11)のいずれかに記載のコンピュータプログラムであって、前記演算手段に、さらに演算された処方の、果汁含量、原価計算、カロリー計算とを演算させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【0037】
(12)に記載の発明は、(5)に記載の酒類処方作成装置の発明をコンピュータプログラムとして実現したものである。すなわち、(5)に記載の発明と同一の手段を有するコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることによって、(5)の発明で説明したのと同様な効果を期待することができる。さらに、コンピュータプログラムであるので、一般に普及しているパーソナルコンピュータにコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることができるので、専用の装置を作る場合に比して経済的である。
【0038】
(13)(8)から(12)のいずれかに記載のコンピュータプログラムであって、前記演算手段に、さらに演算された処方の、果汁含量、原価計算、カロリー計算とを演算させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【0039】
(13)に記載の発明は、(6)に記載の酒類処方作成装置の発明をコンピュータプログラムとして実現したものである。すなわち、(6)に記載の発明と同一の手段を有するコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることによって、(6)の発明で説明したのと同様な効果を期待することができる。さらに、コンピュータプログラムであるので、一般に普及しているパーソナルコンピュータにコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることができるので、専用の装置を作る場合に比して経済的である。
【0040】
(14)(8)から13のいずれかに記載のコンピュータプログラムであって、
混合された酒類の比重の演算手段は前記第1の相関表の対応データを参照することに替えて、
原材料のデータよりアルコールを除くエキス分の重さaを演算し、さらにエキス分の比重dを演算し、次の方程式により演算することを特徴とするコンピュータプログラム。
X=(100−a/d+a)/100
Z=XY+(1−Y)a
〔ここで、
Z:混合された酒類の比重
X:アルコール成分を含まないエキス分溶液の比重
Y:エキス分を含まないアルコール溶液の比重〕
【0041】
(14)に記載の発明は、(7)に記載の酒類処方作成装置の発明をコンピュータプログラムとして実現したものである。すなわち、(7)に記載の発明と同一の手段を有するコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることによって、(7)の発明で説明したのと同様な効果を期待することができる。さらに、コンピュータプログラムであるので、一般に普及しているパーソナルコンピュータにコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させることができるので、専用の装置を作る場合に比して経済的である。
【発明の効果】
【0042】
本発明により、アルコール%と酸度と甘味度Brixと比重とが演算される。酒類はアルコール%と酸度と甘味度Brixにより飲んだときの感触を予想することができる。また、販売に当たってアルコール%ならびに容量を表示する必要があるので、比重も演算されることにより販売に当たっての規制をクリアーできるか否かの判断がしやすい。様々な特徴をもった酒類を開発するに際して、実際に混合して味を確かめ、その後分析して規制値に適合するかを判断するなどの手間ならびに期間を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0044】
[第1の実施例]
図1は本発明に係る酒類処方作成装置1の構成を示すブロック図である。本発明の酒類処方作成装置はコンピュータを用いて実現することが望ましい。バス15を介して演算手段11、記憶手段12、入力手段13、出力手段14および通信手段16が結ばれており、演算手段11は酒類処方作成装置全体を制御ならびに演算し、例えば、記憶手段12に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、上記ハードウエアと協働して後述する各種手段を実現している。
【0045】
記憶手段12はハードディスクまたは半導体メモリで実現することが出来、原材料データ、相関表その他酒類処方作成装置として必要な情報を記憶する。入力手段13は、キーボード、スキャナー、または、通信回線を用いた入力受付手段(例えば、LAN)等で実現することが出来る。出力手段14は、演算された結果を出力する手段であり、液晶ディスプレイ、ブラウン管CRT等、プリンタ等により実現することが出来る。
【0046】
通信手段16は酒類処方作成装置1と外部を通信で接続する手段であり市販のモデムを使用してインターネットに接続することもできる。
【0047】
図2は、本発明に係る酒類処方作成装置1の動作を示す概略フローチャート図である。図3は、原材料データの1例であり、図4は、アルコール濃度10%以下の場合のアルコール%と比重の関係を示す第1の相関図であり、図5は、アルコール濃度10%以上の場合のアルコール%と比重の関係を示す第1の相関図である。
【0048】
図6は、アルコール%とBrixの関係の実測を示す第2の相関図であり、図7は、糖10%時のアルコール%とBrixの関係を示す第3の相関図であり、図8は、アルコール%と収縮量の関係を示す相関図である。図9は、糖濃度を変化した場合の、アルコール%とBrixの関係を示す第3の相関図である。
【0049】
以下、本発明の酒類処方作成装置1の動作、使用方法について図2に基づいて説明する。酒類処方作成装置1の使用に先立って、図3に示すような95.5%アルコール、ジン、55%HFCS、砂糖等の原材料データを入力手段13により入力して記憶手段12に記憶する。また、図4から図9に示す相関図を入力手段13により入力して記憶手段12に相関表として記憶する。入力は大量のデータになるので、通信手段16を介して他のパーソナルコンピュータから入力してもよい。
【0050】
このように、原材料データ、相関表のデータが記憶手段12に記憶された状態で、図10に示すような原材料の種類ごとの使用量を入力手段13より入力する(S110)。
【0051】
使用量のデータが入力されると演算手段11により、記憶手段12に記憶されている原材料データを読み出して、入力された原材料の種類毎の使用量により混合した酒類の、アルコール%、酸度、甘味度Brix、及び比重より選択する一種以上を相関表の対応データを参照する事により演算する。演算に際してアルコール%と比重の関係など上記で説明したように線形ではないので、記憶手段12に記憶されているアルコール%と比重の第1の相関表のデータ、すなわち、図4、図5に相当するデータを参照して演算される(S120)。
【0052】
演算は、まず第1の相関表を用いて、入力された原材料のアルコールの重量使用量より容積使用量が演算される。図11の例に示すように、原材料である95.5%アルコールを62.678グラム入れると、図5に示す相関表より容積使用量77mlが演算される。具体的には、図4、図5に相当するアルコール%と比重の変換表を表計算ソフトの例えばエクセルに入力しておき、VLOOKUP関数でアルコール%より比重を求め、原材料の重量を求められた比重で割り算することにより求められる。次に砂糖、ライム果汁、クエン酸、香料の重量が加算される。これ等の比重より容量が計算される。これ等の容量とアルコールの容量と加算され、混合液の全体が1000mlとするために水の容量(水は比重が1であるので重量も同一の数値)が演算される。図11の例では910.4ml(グラム)と演算手段11により演算される。このようにして混合液1000mlの重量が演算され、これに基づき混合液の比重も演算される。
【0053】
アルコール%は酒税法に基づき容量%で表示する必要があるが、上記の95.5%アルコールの原材料の体積が77mlでありこれに95.5%をかけることにより1000mlアルコールの容積が演算されこれより7.35%と演算される。なお、アルコール水は図8に示すようにアルコール%により収縮率が異なるので、図8に示すアルコール%と収縮率の相関表により補正することが望ましい。
【0054】
甘味度Brixとは、糖等の可溶性固形物の重量%であるが、図11のBrix分の欄のアルコールを除いた値を加算することにより求められる。これ等の値は図3に示す原材料データを入力する際に入力された値を使用量により乗算して求められる。
【0055】
Brixとは、Brix計で測定した、屈折率に基づくBrix値をいう。混合液の実際の生産管理においては、光学系による測定ができるBrix値で管理することが望ましい。しかし、前述のようにアルコールを含んだBrixの演算複雑である。ここで、糖等の可溶性固形物の重量%である甘味度Brixが演算されているので、この値を糖濃度として、前述のアルコール%と合わせて第3の相関表を参照する演算をすることによりBrixが演算される。
【0056】

同様に酸度も、原材料の酸度寄与データに使用量を乗算して求められる。図11の例では、ライム果汁の酸度寄与0.186とりんご果汁の0.09が加算されて混合液の酸度は0.276となる。
【0057】
演算手段11により演算されると、図11に示すように、出力手段14により演算された、アルコール%、酸度、甘味度Brix、及び比重が出力される(S130)。図11の例では、アルコール%、アルコール溶液比重、酸度、比重、水の量等が表示されている。また、入力したデータも一緒に表示されている。
【0058】
演算された値が予定した規格値等に合わない場合は、図11に表示された画面で再度数値を変更して入力(S110)すると演算手段11で上記で説明した演算がされて(S120)、出力手段14により演算された内容が出力される(S130)。このようにして繰り返して酒類処方作成装置1により演算して目的とする規格値に到達した場合に終了する。
【0059】
図12に、本発明の酒類処方作成装置1により演算した計算値とその試作品A、B、Cの酒税法に基づく国税庁所定の分析法に基づく実測値と誤差%を示す。図12に示すように誤差5%以内であり実用に十分使用可能である。
【0060】
以上説明したように、水と混合すると容積変化が起きることと、アルコールには、可溶性固形分がないにもかかわらず、Brix値が示されることから、混合してなる、アルコール飲料の分析値を原料の分析値から予測することは従来技術では非常に困難であったが、本発明の酒類処方作成装置1により演算して予測することができることが判明した。
【0061】
アルコールを含んだ酒類はアルコール%と酸度と甘味度Brixにより飲んだときの感触を予想することができる。また、販売に当たってアルコール%ならびに容量を表示する必要があるので、比重も演算されることにより販売に当たっての規制をクリアーできるか否かの判断がしやすい。様々な特徴をもった酒類を開発するに際して、実際に混合して味を確かめ、その後分析して規制値に適合するかを判断するなどの手間ならびに期間を大幅に低減することができる。
【0062】
次に、上記の演算された比重の値より容量処方と重量処方とシロップ処方とを演算する。酒類の販売は缶であれば350ml、瓶であれば633mlのように容量で販売される。一方生産の現場で材料を投入する際や、生産の途中工程での測定は重量で行うほうが生産しやすい。そこで、容量処方と重量処方の双方の演算値を出力することにより生産管理がやり易い利点がある。また、シロップ処方は各種のシロップ水があるのでどの種類を使うかを明確にする利点がある。容量処方と重量処方の換算は、上記により混合液の比重が演算され、またここの原材料の比重は原材料データとして記憶手段12に記憶されているので、乗除算により演算される。
【0063】
甘味料はシロップ処方で行うことが多いが、後述の図15に示すように2倍とか4倍シロップ水を原材料データとして記憶手段12に記憶することにより必要シロップ処方を演算することができる。
【0064】
[第2の実施例]
第2の実施例の発明は、第1の実施例に記載の発明とは逆に処方を期待する規格値を入力して、入力された規格値を満たす原材料の使用量を演算する。図13は、処方を期待する規格値を入力して、入力された規格値を満たす原材料の使用量を演算するフローチャートの概略を示す図である。また、図14は規格値の入力データを示す図であり、図15は、その演算結果の出力結果を示す図である。
【0065】
あらかじめ、酒類の原材料の種類毎のデータとアルコール%とBrixの相関表、アルコール%と糖濃度の混合液のBrixの相関表とを入力手段13により入力し記憶手段12に記憶することは第1の実施例と同様である。
【0066】
図14に一例を示すような処方を期待する規格値を入力手段13により入力する(S210)。規格値が入力されると、演算手段11により、その規格値を満たす原材料の使用量を演算する(S220)。演算はまずアルコール%の規格値にあうアルコールの原材料の量が仮に決定される。その後甘味度Brixの値が計算される。また図14の例ではレモン果汁、香料1、香料2、香料3の入力値により演算される。これらの値が決まった後、実施例1のように相関表を参照して詳細演算がなされる(S220)。
【0067】
演算した結果、規格値と比較される(S230)。比較した結果あらかじめ定められた精度で一致した場合は出力手段14により演算した結果が入力した値とともに出力される(S240)。一致しない場合は再度修正計算が行われる(S220)。
【0068】
図15に、出力された結果を示す。図15に示すように演算された結果がハッチングした部分で入力された結果とともに表示される。また、カロリー、原価計算結果、果汁%等も表示される。これ等の値も原材料データにこれ等のデータ、つまり、ここの原材料の単位あたりのカロリー、材料費等を記憶し、これに使用量を乗算して加算を演算手段11により演算される。
【0069】
以上のように、出力された内容によりどの種類の原材料をどれだけ準備して混合すれば規格値を満たす酒類を処方できるかを知ることができる。
【0070】
その結果、試行錯誤することなく規格値を満たす原材料の使用量を知ることができる。なお、規格値を満たす原材料の使用量の解が出ない場合は、最も解に近い使用量を出力することが望ましい。
【0071】
[第3の実施例]
第3の実施例は、混合された酒類の比重の演算手段11は相関表の対応データを参照することに替えて、方程式により演算する。演算は下記のようになされる。
まず、原材料のデータよりアルコールを除くエキス分の重さaを演算し、さらにエキス分の比重dを演算し、次の方程式により演算する。
X=(100−a/d+a)/100
Z=XY+(1−Y)a
〔ここで、
Z:混合された酒類の比重
X:アルコール成分を含まないエキス分溶液の比重
Y:エキス分を含まないアルコール溶液の比重〕
【0072】
方程式により演算することにより、相関表の対応データを参照するのより演算速度時間を短くできる利点がある。その他の効果は上記にて説明したのと同様である。
【0073】
[第4の実施例]
第4の実施例は酒類処方作成装置の各発明と同一の手段を有するコンピュータプログラムをコンピュータに読み込ませて、コンピュータを酒類処方作成装置として機能させる。
第4の実施例にても上記の第1から3の実施例で説明したのと同様な効果を期待することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることができる。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、酒類処方作成装置はコンピュータを利用した例で説明したが、デジタルシグナルプロセッサを利用したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る酒類処方作成装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る酒類処方作成装置1の動作を示す概略フローチャート図である。
【図3】原材料データの1例である。
【図4】アルコール濃度10%以下の場合のアルコール%と比重の関係を示す第1の相関図である。
【図5】アルコール濃度10%以上の場合のアルコール%と比重の関係を示す第1の相関図である。
【図6】アルコール%とBrixの関係の実測を示す第2の相関図である。
【図7】糖10%時のアルコール%とBrixの関係を示す第3の相関図である。
【図8】アルコール%と収縮量の関係を示す相関図である。
【図9】糖濃度を変化した場合の、アルコール%とBrixの関係を示す第3の相関図である。
【図10】原材料の入力を示す図である。
【図11】本発明の演算結果の出力を示す図である。
【図12】本発明の酒類処方作成装置1により演算した計算値とその試作品A、B、Cの酒税法に基づく国税庁所定の分析法に基づく実測値と誤差%を示す。
【図13】処方を期待する規格値を入力して、入力された規格値を満たす原材料の使用量を演算するフローチャートの概略を示す図である。
【図14】規格値の入力を示す図である。
【図15】本発明の演算結果の出力を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 酒類処方作成装置
11 演算手段
12 記憶手段
13 入力手段
14 出力手段
15 バス
16 通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒類の原材料の種類毎のデータと、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表と、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表と、を入力する入力手段と、
前記データおよび相関表を記憶する記憶手段と、
酒類の原材料の種類毎の使用量を前記入力手段により入力して、前記入力された原材料の種類毎の使用量により混合した酒類の、アルコール%、酸度、甘味度Brix、Brix及び比重より選択する一種以上を前記相関表の対応データを参照する事により演算する演算手段と、
前記演算手段による演算結果を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする酒類処方作成装置。
【請求項2】
酒類の原材料の種類毎のデータと、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表と、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表と、を入力する入力手段と、
前記データおよび相関表を記憶する記憶手段と、
処方を期待する規格値を前記入力手段により入力して、前記規格値を満たす原材料の使用量を前記相関表の対応データを参照する事により演算する演算手段と、
前記演算手段による演算結果を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする酒類処方作成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の酒類処方作成装置であって、
前記規格値は、アルコール%、酸度、及び甘味度Brixより選択される一種以上であることを特徴とする酒類処方作成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の酒類処方作成装置であって、
酒類の原材料の種類は、アルコールの種類、糖の種類、果汁の種類、及び香料より選択される一種以上であることを特徴とする酒類処方作成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の酒類処方作成装置であって、
前記演算手段は、さらに演算された比重の値より、容量処方と重量処方とシロップ処方とを演算し、前記出力手段は演算された容量処方と重量処方とシロップ処方とを出力することを特徴とする酒類処方作成装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の酒類処方作成装置であって、
前記演算手段は、さらに演算された処方の果汁含量と原価計算とカロリー計算とを演算し、前記出力手段は演算された処方の果汁含量と原価計算とカロリー計算とを出力することを特徴とする酒類処方作成装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の酒類処方作成装置であって、
混合された酒類の比重の演算手段は前記第1の相関表の対応データを参照することに替えて、
原材料のデータよりアルコールを除くエキス分の重さaを演算し、さらにエキス分の比重dを演算し、次の方程式により演算することを特徴とする酒類処方作成装置。
X=(100−a/d+a)/100
Z=XY+(1−Y)a
〔ここで、
Z:混合された酒類の比重
X:アルコール成分を含まないエキス分溶液の比重
Y:エキス分を含まないアルコール溶液の比重〕
【請求項8】
コンピュータを酒類処方作成装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
酒類の原材料の種類毎のデータと、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表と、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表と、を入力する入力手段と、
前記データおよび相関表を記憶する記憶手段と、
酒類の原材料の種類毎の使用量を前記入力手段により入力して、前記入力された原材料の種類毎の使用量により混合した酒類の、アルコール%、酸度、甘味度Brix、Brix及び比重より選択する一種以上を前記相関表の対応データを参照する事により演算する演算手段と、
前記演算手段による演算結果を出力する出力手段と、
してコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータを酒類処方作成装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
酒類の原材料の種類毎のデータと、アルコール%と比重の第1の相関表と、アルコール%とBrixの第2の相関表と、アルコールと糖の混合液におけるアルコール%と糖濃度とBrixの第3の相関表と、を入力する入力手段と、
前記データおよび相関表を記憶する記憶手段と、
処方を期待する規格値を前記入力手段により入力して、前記規格値を満たす原材料の使用量を前記相関表の対応データを参照する事により演算する演算手段と、
前記演算手段による演算結果を出力する出力手段と、
してコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムであって、
前記規格値は、アルコール%、酸度、及び甘味度Brixより選択される一種以上であることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項8から10のいずれかに記載のコンピュータプログラムであって、
酒類の原材料の種類は、アルコールの種類、糖の種類、果汁の種類、及び香料より選択される一種以上であることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかに記載のコンピュータプログラムであって、
前記演算手段に、さらに演算された比重の値より、容量処方と重量処方とシロップ処方とを演算させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載のコンピュータプログラムであって、
前記演算手段に、さらに演算された処方の、果汁含量、原価計算、カロリー計算とを演算させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項8から13のいずれかに記載のコンピュータプログラムであって、
混合された酒類の比重の演算手段は前記第1の相関表の対応データを参照することに替えて、
原材料のデータよりアルコールを除くエキス分の重さaを演算し、さらにエキス分の比重dを演算し、次の方程式により演算することを特徴とするコンピュータプログラム。
X=(100−a/d+a)/100
Z=XY+(1−Y)a
〔ここで、
Z:混合された酒類の比重
X:アルコール成分を含まないエキス分溶液の比重
Y:エキス分を含まないアルコール溶液の比重〕

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−135428(P2007−135428A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330770(P2005−330770)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】