説明

酸化アルミニウム粒子

【課題】極端に小さい粒径と非常に狭い粒径分布を有する酸化アルミニウム粒子の提供。
【解決手段】非常に狭い粒径分布を有する酸化アルミニウムのナノ粒子の集合体が、レーザ熱分解により製造される。この粒径分布は、実質的に、すそ(tail)を含んでおらず、そして、その平均粒径の約4倍より大きい直径を有する粒子を殆ど含んでいない。この熱分解は、アルミニウム前駆体、酸化剤および赤外線吸収剤を含む分子流を熱分解することにより行われる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、レーザ熱分解により調製される、小さい粒径を有する酸化アルミニウム粒子に関する。本発明はさらに、レーザ熱分解をベースにする酸化アルミニウム粒子を製造する方法および、その酸化アルミニウム粒子を含む研磨用組成物に関する。
【0002】
発明の背景
科学技術の進歩により、加工パラメータにおける厳格な許容誤差で加工する改善された材料に対する需要が増加している。特に、エレクトロニクス工業、工作機械製造工業および多くの他の工業における多様な用途において、平滑な表面が要求されている。研磨を必要とする基材には、セラミックス、ガラスおよび金属のような剛い材料が含まれている。小形化は、さらに続いており、より精密な研磨さえ要求されるようになるであろう。最近のサブミクロン技術は、ナノメータ尺度での研磨精度を必要とする。精密な研磨技術では、基材と研磨剤との化学的相互作用により機能する研磨用組成物と、さらにその表面の機械的平滑化に有効な研磨材を含むメカノケミカルポリシング(mechanochemical polishing)が用いられる。
【0003】
発明の要約
第1の態様では、本発明は、酸化アルミニウムを含んでなる粒子の集合体に関する。この粒子の集合体は、約5nmから約500nmの平均粒径を有する。またその粒子の集合体の平均粒径の約4倍より大きい直径を有する粒子を実質的に含んでいない。これら酸化アルミニウムの分散物から、研磨用組成物を調製することができる。
【0004】
もう一つの態様では、本発明は、約5nmから約500nmの平均粒径を有するナノスケールの酸化アルミニウム粒子の分散物を含む研磨用組成物に関する。この研磨用組成物中のナノ粒子は、その粒子の平均粒径の約4倍より大きい直径を有する粒子を実質的に含んでいない。
【0005】
もう一つの態様では、本発明は、約5nmから約500nmの平均粒径を有する酸化アルミニウム粒子の集合体を製造する方法に関する。この方法は、反応チャンバー中で分子流を熱分解することを含んでいる。この分子流は、アルミニウム前駆体、酸化剤および赤外線吸収剤を含んでいる。この分解はレーザビームから吸収された熱により駆動される。
【0006】
もう一つの態様では、本発明は、酸化アルミニウムを含んでなる粒子の集合体に関し、その粒子の集合体は、約5nmから約500nmの平均粒径を有する。この酸化アルミニウム粒子の集合体は、その粒子の少なくとも約95パーセントがその平均粒径の約40パーセントより大きく且つその平均粒径の約160パーセントより小さい直径を有するような粒径分布を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この装置の中心を通る面で切った、固体前駆体送達システムの概略断面図である。
【図2】レーザ線光路の中心を通る面で切った、レーザ熱分解装置の一つの態様の概略断面図である。上の挿入図は射出ノズルの底面図であり、そして下の挿入図は捕集ノズルの上面図である。
【図3】レーザ熱分解装置の一つの代替態様の反応チャンバーの透視概略図であり、チャンバーの材料はその装置の内部を明らかにするために透明であるように描かれている。
【図4】3−3のラインに沿って切った図2の反応チャンバーの断面図である。
【図5】ナノ粒子を加熱するオーブンの概略断面図であり、その断面は石英管の中心を通っている。
【図6】レーザ熱分解で製造された酸化アルミニウムナノ粒子のX−線回折図である。
【図7】そのX−線回折図が図6に示されているナノ粒子のTEMマイクログラフである。
【図8】図7のTEMマイクログラフに示されているナノ粒子での一次粒子の粒径分布をプロットした図である。
【図9】オーブン中で加熱後の酸化アルミニウムのナノ粒子のX線回折図である。
【図10】オーブン中で熱処理後の酸化アルミニウムのナノ粒子のTEMマイクログラフである。
【図11】図10のTEMマイクログラフに示されているナノ粒子での一次粒子の粒径分布をプロットした図である。
【0008】
推奨される実施態様の詳細な説明
極端に小さい平均粒径と非常に狭い粒径分布を有する一次粒子を有する酸化アルミニウム(Al23)粒子が製造された。さらにまた、その粒径分布は、実質的に、テール(tail、すそ)を示さず、それ故、その平均値より有意に大きい粒径を有する一次粒子は存在しない。この粒子は、大体球状の形態構造を有しているが、この粒子は普通、結晶性で、そして、その下に存在する結晶格子を反映しているより特定の形状を有することもある。
【0009】
その大きさと形状の均一度が極めて高いことに因り、これらのナノスケール酸化アルミニウム粒子は、改善された研磨性組成物を調製するために用いられる。また、この酸化アルミニウム粒子は高純度で、特に金属不純物を含んでいない。これらの粒子を混和した研磨性組成物は、平滑性に関して、限定された許容誤差を必要とする表面の研磨に有用である。その粒子の極端に高い均質さと共にその小さい粒径により、この粒子は、研磨剤あるいはケミカル−メカニカル−ポリシング(chemical-mechanical polishing)のような平坦化(planarization)のための研磨用組成物の調合用に特に望ましい物になる。
【0010】
希望のナノ粒子を生成させるために、レーザ熱分解は、単独で、または追加的な加工と組合せて用いられる。特に、レーザ熱分解は、平均粒径分布の狭い適した酸化アルミニウム粒子を効率よく製造するための素晴らしい方法である。さらに、レーザ熱分解で製造されたナノスケール酸化アルミニウム粒子は、酸素雰囲気中もしくは不活性雰囲気中で加熱処理にかけて、その粒子の性質を改変および/または、改善することができる。
【0011】
酸化アルミニウムナノ粒子の製造にレーザ熱分解を上手く応用するために基本的に重要なことは、アルミニウム前駆体化合物、放射線吸収剤および酸素源として役立つ反応物を含む分子流を発生させることである。この分子流が強いレーザビームで熱分解される。この分子流がレーザビームを離れると、この粒子は急速に冷却される。
【0012】
A.粒子の製造
レーザ熱分解はナノスケール酸化アルミニウム粒子を製造するための有用な手段であることが見いだされた。さらに、レーザ熱分解で製造されたこの粒子は、希望される酸化アルミニウム粒子を製造するための経路を広げるために、さらに加工するのに好都合な材料である。かくして、レーザ熱分解単独もしくは、追加の加工と組合せることにより、広範囲に多様な酸化アルミニウム粒子を製造することができる。
【0013】
レーザ熱分解で製造される粒子の品質は、反応条件で決まる。希望の性質を有する粒子を製造するための、レーザ熱分解の反応条件は、比較的正確に制御することができる。或る一定のタイプの粒子を製造するのに適した反応条件は、一般に、その特定装置の設計に依存する。一つの特定装置中で、酸化アルミニウム粒子を製造するために用いられる特定条件が、下の実施例中で説明される。さらに、反応条件と得られる粒子との間に幾つかの一般的な相関性が観察される。
【0014】
レーザ出力が増すと、反応領域の反応温度が上昇し、そしてまた急冷速度がより速くなる。急速な急冷速度は、熱的平衡近くでの反応では得られないであろう高エネルギー相の生成に有利に作用する傾向がある。同様に、反応チャンバーの圧力が増すと、より高いエネルギー構造が生成し易くなる傾向がある。また反応物流中で酸素源として役立つ反応物の濃度が増しても、酸素の量が多い粒子の生成に好都合になる。
【0015】
反応物ガスの流量および反応物ガス流の速度は粒径に逆比例するので、ガスの流量または速度が増すと、粒径はより小さくなる傾向がある。また、粒子の成長の動力学も得られる粒子の大きさに有意に影響する。換言すれば、異なる形状の生成物は、比較的似ている条件下で、他の相とは異なる大きさの粒子を生成する傾向がある。レーザ出力も粒径に影響し、レーザ出力が増すと、融点のより低い材料では、より大きい粒子が生成し易く、そして融点のより高い材料では、より小さい粒子が生成し易い。
【0016】
適したアルミニウム前駆体化合物に含まれるのは、一般的に、合理的な蒸気圧、即ち反応物流中で希望の量の前駆体蒸気を得るのに十分な蒸気圧を有するアルミニウム化合物である。この前駆体化合物を溜めて置く容器は、希望に応じて、そのアルミニウム前駆体の蒸気圧を上げるために、加熱することができる容器である。適した液状アルミニウム前駆体に含まれるのは、例えば、アルミニウムs−ブトキシド(Al(OC493)である。
【0017】
多数の固体のアルミニウム前駆体化合物が入手可能であり、それらに含まれるのは、例えば、塩化アルミニウム(AlCl3)、アルミニウム・エトキシド(Al(OC253)、およびアルミニウム・イソプロポキシド(Al[OCH(CH323)である。固体の前駆体は、一般に、十分な蒸気圧を生じさせるために加熱される。固体の前駆体を加熱して、そしてレーザ熱分解装置に送達するのに適した容器が図1に示されている。
【0018】
図1を参照して説明すると、この固体前駆体送達装置50は、容器52と、ふた54を含んでいる。容器52とふた54の間にガスケット56が挟まれている。望ましい一つの態様では、容器52とふた54はステンレス鋼から作られており、そしてガスケット56は銅から作られている。この態様では、ふた54とガスケット56は、容器52にボルトで止められている。この固体前駆体系に加えられる温度と圧力に適合する、パイレックスRのような他の不活性な材料を用いることもできる。容器52は、バンドヒータ58で取巻かれており、このヒータは、この送達装置50の温度を希望の値に設定するために用いられる。適したバンドヒータは、Omega Engineering Inc. Stamford, Conn. から入手できる。このバンドヒータの温度は、前駆体化合物の希望の圧力を得るために調整することができる。この前駆体送達装置の追加部分も、前駆体が容器52を離れた後、その前駆体を蒸気状態に維持するために加熱される場合がある。
【0019】
熱電対60が、ふた54を通して容器52に挿入されているのが望ましい。熱電対60は、SwagelokR取付け具62または他の適当な接続器具を用いて挿入される。配管64は、容器52への担体ガス用の流入口を備えている。配管64は、シャットオフバルブ(遮断弁)66を含んでいるのが望ましく、そしてSwagelokR取付け具68または他の適当な接続器具を用いて、ふた54を通して挿入される。排出管70もシャットオフバルブ72を含んでいるのが望ましい。排出管70は、密閉式接続器具74のところで、ふた54を通して容器52に入るのが望ましい。配管64および70は、ステンレス鋼のような任意の適した不活性の材料で造られる。固体の前駆体は、容器52の中に直接入れられるか、または、より小さい開放容器に入れて、容器52の中に置かれることもある。
【0020】
酸素源として役立つ望ましい反応物は、例えば、O2、CO、CO2、O3および、それらの混合物である。この酸素源からの反応物化合物は、反応ゾーンに入る前に、アルミニウム前駆体と有意な程反応してはならない。何故なら、反応すると、普通大きい粒子が生成するからである。
【0021】
レーザ熱分解は、多様な光学的レーザ周波数で行われる。推奨されるレーザは、電磁スペクトルの赤外部分で操作される。CO2レーザは特に推奨されるレーザ光源である。分子流中に含ませる赤外線吸収剤は、例えば、C24、NH3、SF6、SiH4およびO3である。O3は、赤外線吸収剤と酸素源の両方として作用することができる。この赤外線吸収剤のような放射線吸収剤は、放射線ビームからエネルギーを吸収し、そのエネルギーを、熱分解を駆動するために他の反応物に分配する。
【0022】
望ましくは、その放射線ビームから吸収されたエネルギーは、制御された条件下で強く発熱する反応によってエネルギーが生じる場合の速度の何倍も大きい驚異的な速度で温度を上昇させる。この過程は、一般に、非平衡条件を含んでいるが、その温度は、その吸収領域でのエネルギーを基にして大体記述できる。このレーザ熱分解過程は、エネルギー源が反応を開始するが、その反応は発熱反応で放出されるエネルギーによって駆動されるところの燃焼反応器中での過程とは定性的に異なる。
【0023】
反応物チャンバー部材と接触する反応物および生成物分子の量を減らすために、不活性遮蔽ガスが用いられる。適した遮蔽ガスは、例えばAr、HeおよびN2である。
【0024】
適したレーザ熱分解装置は、一般に、周囲の環境から分離された反応チャンバーを含んでいる。反応物供給装置に連結されている反応物導入管が、その反応チャンバーを通る分子流を生成する。レーザ・ビームの経路は、反応ゾーンで分子流と交差する。この分子流は、反応ゾーンを通過した後、出口まで続いており、そこで、この分子流は反応チャンバーを出て、捕集装置に行く。一般に、このレーザは反応チャンバーの外部に置かれ、そしてそのレーザは適切な窓を通して反応チャンバーに入ってくる。
【0025】
図2を参照して説明すると、熱分解装置の特定の態様100は、反応物供給装置102、反応チャンバー104、捕集装置106およびレーザ108を含んでいる。反応物供給装置102は、前駆体化合物の貯蔵源120を含んでいる。液体または固体前駆体の場合、担体ガス源122からの担体ガスが、その前駆体の送達を容易にするために、液体前駆体が入れられている前駆体源120に導入される。前駆体源120は、図1に示されているような固体前駆体送達システム50であってもよい。この源122からの担体ガスは、赤外線吸収剤か不活性ガスのいずれかであるのが望ましく、そして、その液状の前駆体化合物を通して吹き込まれるか、または固体前駆体送達システムに送り込まれるのが望ましい。この反応ゾーン中での前駆体蒸気の量は、担体ガスの流量に大体比例する。
【0026】
あるいはまた、担体ガスは、適宜、赤外線吸収剤源124または不活性ガス源126から直接供給される。酸素を提供する反応物は、ガス・シリンダーあるいは他の適した容器である反応物源128から供給される。前駆体源120からのガスは、反応物源128、赤外線吸収剤源124および不活性ガス源126からのガスと、これらのガスを、配管130の単一部分で一緒にすることにより混合される。これらのガスは、反応チャンバー104に入る前に、それらのガスがよく混合されるように、反応チャンバー104から十分な距離一緒に流される。管130の中で一緒になったガスは、ダクト132を通り抜けて、反応物を反応チャンバーの方向に向けるための射出ノズルの一部を形成している長方形の流路134に入る。反応物供給装置102の一部は、その送達装置の壁の上に前駆体化合物が沈着するのを防ぐために加熱される。特に、塩化アルミニウム前駆体が用いられる場合には、約140℃に加熱されるのが望ましい。同様に、アルゴン遮蔽ガスは、塩化アルミニウム前駆体が用いられる場合には、約150℃に加熱されるのが望ましい。
【0027】
各源122、124、126および128からの流は、独立に、質量流量制御装置136で調節されるのが望ましい。質量流量制御装置136は、各個別の源から調節された流量を提供するのが望ましい。適した質量流量制御装置は、例えば、Edwards High Vacuum International, Wilmington, MA からのエドワード質量流量制御装置、モデル825シリーズである。
【0028】
不活性ガス源138は、不活性ガスダクト140に連結されており、環状流路142に流れる。質量流量制御装置144は、不活性ガス・ダクト140への不活性ガスの流を制御する。不活性ガス源126も、希望により、ダクト140用の不活性ガス源として機能し得る。
【0029】
反応チャンバー104は、主チャンバー200を含んでいる。反応物供給装置102は、射出ノズル202の所で、主チャンバー200に連結されている。射出ノズル202の端には、遮蔽用不活性ガスの通路用の環状開口204とその反応チャンバー中に分子流を形成するための長方形スリット206が付いている。環状開口204は、例えば、直径が約1.5インチで、ラジアル方向に沿った幅が約1/8から約1/16インチである。環状開口204を通る遮蔽ガスの流れは、反応チャンバー104全体に反応物ガスおよび生成物粒子が広がるのを防ぐことを助ける。射出ノズル202は、その前駆体化合物を蒸気状態に保つために加熱される場合もある。
【0030】
管状セクション(tubular section、区画管)208、210は、射出ノズル202の両側に所在している。管状セクション208、210は、それぞれ、ZnSe窓212、214を含んでいる。窓212、214の直径は約1インチである。窓212、214は、望ましくは平面収束レンズで、その焦点距離は、そのビームを、ノズル口の中心の丁度下の点に集めるように、そのチャンバーの中心とそのレンズの表面との間の距離に等しいのが望ましい。窓212、214は、反射防止コーティングされているのが望ましい。適したZnSeレンズは、Janos Technology, Townshend, Vermont から入手できる。管状セクション208、210は、窓212、214が、反応物もしくは生成物により汚染されることがより少なくなるように、窓212、214を主チャンバーから離れるようにずらすことができるようになっている。例えば、窓212、214は、主チャンバー200の端から約3cmずらされている。
【0031】
窓212、214は、反応チャンバー104の中に周囲の空気が流れるのを防ぐために、管状セクション208、210に、ゴムのO−リングでシールされている。窓212、214の汚染を減らすために、管状セクション208、210への遮蔽用ガスの流入用に、管状吸気口216、218が備えられている。管状吸気口216、218は、不活性ガス源138または、別の不活性ガス源に連結されている。いずれの場合にも、管状吸気口216、218への気流は、質量流量制御装置220で制御されているのが望ましい。
【0032】
レーザ108は、発生するレーザビーム222が、窓212を入って窓214を出るように配列されている。窓212、214は、主チャンバー200を通るレーザ光路を、反応ゾーン224で反応物の流れと交差するように規定する。窓214を出た後、レーザビーム222は、ビームダンプ(beam dump)としても作用する電力計226を直撃する。適した電力計は、Coherent Inc., Santa Clara, CA から入手できる。レーザ源108は、アークランプのような、強い常用の光源で置き換えることもできる。レーザ108は、赤外線レーザ、特に、PRC Corp., Landing, NJ から入手できる最大出力1800ワットのレーザのようなCW CO2レーザが望ましい。
【0033】
射出ノズル202中のスリット206を通り抜けた反応物は、分子流となる。この分子流は、反応ゾーン224を通り抜け、そこで、アルミニウム前駆体化合物を巻き込んで反応を起こす。反応ゾーン224中でのガスの加熱は極端に速く、特定条件に依存して、大体105℃/秒の桁である。反応ゾーン224を出ると、この反応は急速に冷却され、その分子流の中に、粒子228が生成する。この反応は非平衡反応なので、粒径分布が非常に均一で構造的均質性の高いナノ粒子の製造が可能になる。
【0034】
分子流の経路は、捕集ノズル230まで続いている。捕集ノズル230は、射出ノズル202から約2cm離れている。射出ノズル202と捕集ノズル230の空間距離が小さいことは、反応物および生成物による反応チャンバー104の汚染を減らす助けになる。捕集ノズル230は、環状の開口232を備えている。環状開口232が、捕集装置106に送り込む。
【0035】
チャンバーの圧力は、主チャンバーに取付けられた圧力計で監視される。この望ましい酸化物の製造のために推奨されるこのチャンバーの圧力は、普通、約80Torrから約500Torrの範囲である。
【0036】
反応チャンバー104は、図には示されていない二つの追加の管状セクションを備えている。追加の管状セクションの一つは、図2の断面図の面に向かって延びており、そして第2の追加の管状セクションは、図2の断面図の面から突き出ている。上から見た場合、四つの管状セクションは、そのチャンバーの中心の回りに大体対称的に分布している。これらの追加の管状セクションは、チャンバーの内部を観察するための窓を備えている。この相対配置の装置では、これら二つの追加の管状セクションは、粒子の製造を促進するためには用いられない。
【0037】
捕集装置106は、捕集ノズル230に繋がっているカーブした導管を含んでいてもよい。この粒子は大きさが小さいので、生成物粒子は、カーブの回りをガス流について流れる。捕集装置106は、この生成物粒子を捕集するために、ガス流中にフィルター252を含んでいる。テフロン、ガラス繊維および類似の材料などの多様な材料が、不活性で、その粒子を捕捉するのに十分微細である限りにおいて、このフィルター用に用いられる。
このフィルター用に推奨される材料は、例えば、ACE Glass Inc., Vineland, NJ からのガラス繊維およびCole-Parmer Instrument Co., Vermon Hills, IL. からの円筒状ポリプロピレン・フィルターである。
【0038】
捕集装置106を所定の圧力に維持するために、ポンプ254が用いられる。多様な異なるポンプを使用することができる。ポンプ254として使用するのに適したポンプは、例えば、Busch, Inc., Virginia Beach, VA からの、約25立方フィート/分(cfm)の排気性能を有する Busch Model B0024 ポンプおよび、Leybold Vacuum Products, Export, PA からの約195cfmの排気性能を有するLeybold Model SV300 ポンプである。このポンプの排気は、大気中に出る前に、残存している何等かの反応性の化学物質を除去するために、スクラバー256を通して流すことが望ましい。全装置100は、換気目的と安全を考慮して、ヒューム・フード(fume hood)の中に置かれている。一般に、レーザ装置は、サイズが大きいので、そのヒューム・フードの外側に置かれている。
【0039】
この装置は、コンピュータで制御されている。一般に、このコンピュータは、レーザを制御し、そして反応チャンバー中の圧力を監視している。このコンピュータは、反応物および/または遮蔽用ガスの流れを制御するために用いられる。排気速度は、ポンプ254とフィルター252の間に挿入されている手動のニードル・バルブもしくは自動のスロットル・バルブのいずれかによって制御される。フィルター252上に粒子が蓄積することに因り、チャンバーの圧力が増大すると、その手動バルブもしくはスロットル・バルブを調節して、排気速度とそれに対応するチャンバー圧を維持することができる。
【0040】
反応は、ポンプが、反応チャンバー104内に希望の圧力を最早維持できない程十分多くの粒子が、フィルター252を通り抜ける場合の抵抗に抗して、フィルター252上に捕集されるまで続けられる。反応チャンバー104内の圧力を、最早希望の値に、維持できない場合、反応を停止し、そしてフィルター252が取外される。この態様では、チャンバー圧が、最早維持できなくなる前の一回の運転で、約1−90グラムの粒子が捕集できる。一回の運転は、製造される粒子のタイプと使用されるフィルターのタイプに依存して、普通、約6時間まで継続し得る。従って、巨視的な量、即ち裸眼で視える量の粒子が、明らかに生成する。
【0041】
この反応条件は比較的正確に制御することができる。質量流量制御装置は、極めて正確である。このレーザは、一般に約0.5パーセントの出力安定性を有する。チャンバーの圧力は、手動制御バルブもしくはスロットル・バルブにより、約1パーセント以内に制御できる。
【0042】
反応物供給装置102と捕集装置106の相対的配置は、逆にすることができる。この代替配置構造では、反応物は、反応チャンバーの底から供給され、そして生成物粒子が、チャンバーの最上部から捕集される。この代替配置構造では、酸化アルミニウム粒子は、周囲のガスの中に浮遊する傾向があるので、生成物の捕集量が僅かに多くなる傾向がある。この相対的配置では、捕集フィルターが、反応チャンバーの上に直接取付けられないように、その捕集装置にカーブした部分が含まれているのが望ましい。
【0043】
もう一つの他の設計のレーザ熱分解装置が報告されている。本明細書に引用参照されている“化学反応による粒子の効率的な製造”という名称の、共通権利人により同時出願されている、米国特許出願08/808,850号明細書を参照されたい。この代替設計は、商業生産される量の粒子の製造を容易にすることを意図するものである。反応チャンバーに反応物材料を射出するための多様な配置構造が記載されている。
【0044】
この代替装置は、生産能力を上げて、そして供給原料を有効に利用するために、チャンバーの器壁の、粒子による汚染を最少にするように設計されている反応チャンバーを備えている。これらの目的を達成するために、この反応チャンバーは、一般に、細長い反応物導入管の形状をしており、分子流の外側の遊びの空間体積(dead volume:死空間)を減らしている。ガスは、死空間に蓄積する可能性があり、反応していない分子による散乱もしくは吸収により無駄になる放射線の量が増える。この死空間内のガスが減ることに因り、粒子が死空間の中に蓄積し、チャンバーが汚染する原因になることもある。
【0045】
改善された反応チャンバー300の設計が、図3および4に図式的に示されている。反応物ガスの流路302は、ブロック304の内部に位置している。ブロック304のファセット(facets)306は、導入路308の一部を形成している。導入路308のもう一つの部分は、端310の処で、主チャンバー312の内面につながっている。導入路308は、遮蔽用ガス流入口314の処で終わっている。ブロック304は、その反応条件および希望の条件に応じて、細長い反応物流入口316と遮蔽用ガス流入口314の間の相対的関係を変えるために、位置を変えたり、取り替えたりすることができる。遮蔽用ガス流入口314からの遮蔽用ガスは、反応物流入口316から始まる分子流の回りにブランケット(煙幕)を形成する。
【0046】
細長い反応物流入口316の寸法は、粒子の製造効率を大きくするように設計されているのが望ましい。酸化アルミニウム粒子の製造用の反応物流入口の合理的な寸法は、1800ワットのCO2レーザを使用する場合、約5mmから約1mである。
【0047】
主チャンバー312は、一般に、細長い反応物流入口316の形状と同じである。主チャンバー312は、微粒子状生成物、任意の未反応ガスおよび不活性ガスを取り出すための、分子流に沿った出口318を含んでいる。環状セクション320、322が、主チャンバー312から延びている。環状セクション320、322は、反応チャンバー300を通るレーザ・ビーム経路328を規定するための窓324、326を把持している。環状セクション320、322は、遮蔽用ガスを、環状セクション320、322に導入するための遮蔽用ガスの入口330、332を含んでいる場合もある。
【0048】
この改良された装置は、その分子流から、その粒子を取り出すための捕集装置を備えている。この捕集装置は、その捕集装置内の別の粒子捕集器と切換えることにより、生産を停止することなしに、または望ましくは連続生産を続けながら、大量の粒子を捕集できるように設計されている。この捕集装置は、その流路内に、図2に示した捕集装置のカーブした部分に似たカーブをしている構成部材を含んでいる。この反応物射出構成部材と捕集装置の相対的配置は、その粒子が装置の最上部で捕集されるように、逆になっていてもよい。
【0049】
上で言及したように、生成物粒子の性質は、さらなる加工により変えることができる。特に、酸化アルミニウム・ナノスケール粒子は、この粒子の性質を改良する目的で、その酸素含有量を変えるために、または可能なら、その粒子上に吸収された化合物を除去するために、酸化性雰囲気もしくは不活性雰囲気下で、オーブン中で加熱される場合もある。
【0050】
十分にマイルドな条件、即ち、その粒子の融点より十分低い温度を使用して、その粒子をより大きい粒子に有意に焼結させることなしに、酸化アルミニウム粒子を改変できる。オーブン中での金属酸化物のナノスケール粒子のこの加工は、本明細書に引用参照されている“加熱による酸化バナジウム粒子の加工”という名称の、共通権利人により同時出願されている、1997年7月21日出願の米国特許出願08/897,903号明細書中で考察されている。
【0051】
この加熱加工を行なうために、多様な装置が用いられる。この加工を行うための装置400の一例が、図5に示されている。装置400は、管402を含み、その中に粒子が置かれる。管402は、反応物ガス源404および不活性ガス源406に連結されている。希望の雰囲気を作るために、反応物ガス、不活性ガスあるいは、それらの組合せが、管402内に入れられる。
【0052】
この希望のガスが、管402を通して流されるのが望ましい。酸化性雰囲気を生じさせるのに適したガスに含まれるのは、例えば、O2、O3、CO、CO2およびそれらの組合せである。反応物ガスは、Ar、HeおよびN2のような不活性ガスで稀釈することができる。この管402中のガスは、不活性雰囲気が希望される場合には、もっぱら不活性ガスだけでもよい。この反応物ガスは、加熱される粒子の化学量論組成を変化させない場合もある。
【0053】
管402はオーブンあるいは炉408の中に置かれる。オーブン408は、その管の適切な部分を比較的一定の温度に維持するが、この温度は、希望に応じて、その加工工程中に、計画的に変えることができる。オーブン408の中の温度は普通、熱電対410で測定される。酸化アルミニウム粒子は、管402の中でバイアル412の内部に置かれる。バイアル412は、ガス流による粒子の減損を防ぐ。バイアル412は、普通、その開放端をガス流源の方向に向けて置かれる。
【0054】
希望するタイプの生成物を製造するために、酸化性ガス(もし存在すれば)のタイプ、酸化性ガスの濃度、ガスの圧力もしくは流量、温度および加工時間を含む厳密な条件が選定される。温度は一般に、マイルド、即ち、その材料の融点より有意に低い温度である。マイルドな条件を用いれば、より大きい粒径になる粒子間焼結が避けられる。僅かにより大きい平均粒径の物を製造するために、オーブン408の中で、或る程度高い温度で、或る程度制御して、この粒子の焼結を行うこともできる。
【0055】
酸化アルミニウムの加工のために、例えば、その温度は、望ましくは約50℃から約1200℃の範囲で、そしてより望ましくは、約50℃から約800℃である。この粒子は、望ましくは、約1時間から約100時間の間、加熱される。希望の材料を得るために適した条件を創りだすには幾らかの経験的な調整が必要な場合もある。
【0056】
B.粒子の性質
問題にしている粒子の集合体は、一般に、約500nm未満、望ましくは約5nmから約100nm、さらにより望ましくは約5nmから約25nmの一次粒子の平均粒径を有する。この一次粒子は、普通、大体球形で光沢のある外観を有する。より綿密に調べると、この酸化アルミニウム粒子は、普通、その下に存在する結晶格子に対応する小面(facets)を有している。それにもかかわらず、これら一次粒子は、物理的三次元方向に大体等しく成長する傾向があり、光沢のある球状の外観を示す。一般に、その一次粒子の95パーセント、そして望ましくは99パーセントは、主軸に沿った寸法/非主軸(minor axis)に沿った寸法の比が約2以下である。非対称軸を有する粒子での直径の測定は、その粒子の主軸に沿っての測定長の平均に基づく。
【0057】
それらの粒径が小さいことにより、この一次粒子は、隣接する粒子の間で、ファンデルワールス力および他の電磁力により、ゆるい集合体を形成する傾向がある。にもかかわらず、このナノメータ・スケールの一次粒子は、その粒子の透過電子顕微写真で明瞭に観察できる。この粒子は、普通、その電子顕微写真で観察されるようなナノメータ・スケールの粒子に対応する表面積を有する。さらに、この粒子は、その小さいサイズと材料の重量当たりの大きい表面積に因り、ユニークな性質を示す。例えば、TiO2ナノ粒子は、一般に、本明細書に引用参照されている“紫外線遮断および光触媒用材料”(Ultraviolet Light Block and Photocatalytic Materials)という名称の、共通権利人により同時出願されている、米国特許出願08/962,515号明細書に説明されているように、それらの小さいサイズに基づいて変化する吸光性を示す。
【0058】
この一次粒子はサイズの均一性が高いのが望ましい。透過電子顕微写真の検討から求められるように、この一次粒子は一般に、その一次粒子の少くとも約95パーセント、そして望ましくは99パーセントがその平均粒径の約40パーセントより大きく、且つ平均粒径の約160パーセントより小さい直径を有するような粒径分布を有している。この一次粒子は、その一次粒子の少くとも約95パーセントがその平均粒径の約60パーセントより大きく、且つ平均粒径の約140パーセントより小さい直径を有するような粒径分布をしているのが望ましい。
【0059】
さらに実質的には、全ての一次粒子が、平均粒径の約4倍、そして望ましくは平均粒径の3倍、そして望ましくは平均粒径の2倍より大きい平均径を有しない。換言すれば、その粒径分布は、有意により大きい径を有する少数の粒子を示すテール(すそ)を事実上持たない。これは、反応領域が小さく、それに対応して粒子が急速に冷却される結果である。そのテールでの実質的なカットオフ(途切れ)は、その平均粒径の上の特定切り捨て値より大きい直径を有する粒子は、106個の粒子中約1粒子より少ないことを示唆する。この狭い粒径分布とその分布にテールがないこと、およびその球状の形態構造のために、多様な用途、特に研磨用途に利用することができる。
【0060】
さらに、このナノ粒子は、一般に、非常に高水準の純度を有している。上に説明した方法で製造された結晶性の酸化アルミニウムナノ粒子は、その結晶形成過程が不純物を結晶格子から排除する傾向があるので、反応物ガスより、より高い純度を有することが期待できる。さらに、レーザ熱分解で製造された結晶性の酸化アルミニウム粒子は、高い結晶度を有する。
【0061】
酸化アルミニウムは、α−Al23、δ−Al23、γ−Al23、ε−Al23、θ−Al23およびη−Al23を含む数種の結晶相で存在することが知られている。δ−相は正四面体結晶構造を有し、そしてγ−相は、立方結晶構造を有する。ある一定の条件下では混合相が生成するが、レーザ熱分解は、一般に、単一相結晶性粒子を製造するために効果的に利用できる。このレーザ熱分解の条件は、選ばれた単一相を有する結晶性Al23の生成に好都合なように変えることができる。
【0062】
非晶性の酸化アルミニウムも調製することができる。非晶性の粒子の生成に好都合な条件は、例えば、高圧、高流量、高レーザ出力および、それらの組合せを含んでいる。
【0063】
C.研磨用組成物
化学−機械的研磨を行うための組成物を含めて、多様な研磨用組成物にナノスケール酸化アルミニウムを混和すると、利点がある。この酸化アルミニウム粒子は、研磨性粒子として機能し得る。最も簡単な形としては、この研磨用組成物は、上に説明したようにして製造した研磨性酸化アルミニウム粒子その物を含んでいる場合である。より望ましくは、この研磨性粒子は、水系あるいは非水系溶液の中に分散されている。この溶液は、一般に、水、アルコール、アセトンまたは類似物のような溶媒を含んでいる。希望に応じて、分散液に界面活性剤を添加してもよい。この研磨性粒子は、その溶媒にあまり溶けてはいけない。この研磨用組成物は、普通、約0.05パーセントから約30パーセント、そして望ましくは、約1.0パーセントから約10重量パーセントの酸化アルミニウム粒子を含んでいる。このスラリーについて選ばれる組成は、一般に、加工される基材と、その基材の考えられる用途に依存する。特に、酸化アルミニウム粒子は、例えば銅およびタングステン・ワイヤおよびフィルムを含む金属材料を研磨するためのスラリーに有用である。
【0064】
望ましい研磨用組成物は、基材に化学的および機械的効果の両方を有する。かくして、それらは、ケミカル−メカニカル・ポリシング(CMP)に有用である。特に、半導体用材料、半導体材料の酸化物、または集積回路の製造用のセラミック基材の研磨用には、コロイド状シリカが、関連の基材に化学的および/または機械的効果の両方を及ぼし得る。かくして、幾つかの推奨される態様では、溶液中に、酸化アルミニウムナノ粒子とコロイド状シリカのような研磨剤の両者が含まれている。
【0065】
このコロイド状シリカの調製は、水和酸化ケイ素の水溶液の調製を含んでいる。このコロイド状シリカ溶液は、約0.05パーセントから約50パーセント、そして望ましくは、約1.0パーセントから約20重量パーセントのシリカを含んでいるのが望ましい。剛い基材を研磨するためにコロイド状シリカを利用することは、本明細書に引用参照されている“メカノケミカルポリシング用研磨剤”という名称の、米国特許第5,228,886号明細書、および本明細書に引用参照されている“α−アルミナでの損傷のない表面の調製”という名称の、米国特許第4,011,099号明細書に記載されている。コロイド状シリカは、或る一定の表面と化学的に反応することが示唆されてきた。
【0066】
常用されているシリカがコロイド状シリカの調製に使用されるが、レーザ熱分解で製造されたシリカ粒子は、追加的熱処理をした場合もしない場合も、コロイド状シリカの製造に理想的に適合している。レーザ熱分解によるナノスケールシリカの製造は、本明細書に引用参照されている、“酸化ケイ素粒子”という名称の、共同出願人により同時出願された米国特許出願09/085,514号明細書に説明されている。
【0067】
研磨用組成物の調製に用いられる溶媒は、不純物含有レベルが低いことが望ましい。特に、溶媒として用いられる水は、脱イオンおよび/または蒸留されていなければならない。この研磨用組成物は、いかなる不純物も含んでいないのが望ましい。即ち、研磨過程を遂行するために、いかなる不純物も含んでいない。特に、この研磨用組成物は、カリウムおよびナトリウム塩のような可溶性金属不純物を含んでいないのが望ましい。望ましくは、この組成物の金属含有率は、約0.001重量パーセント未満、より望ましくは、約0.0001重量パーセント未満である。さらにまた、この研磨用組成物は、その溶媒に溶解しない微粒子状不純物を含んでいないことが望ましい。
【0068】
この研磨用組成物は、その研磨過程を助ける他の成分を含んでいてもよい。例えば、この研磨用組成物は、酸化アルミニウムと組合わされた追加の研磨性粒子を含んでいてもよい。適した研磨性粒子は、例えば、本明細書に引用参照されている“表面研磨用研磨性粒子”という名称の、共同出願人により同時出願された米国特許出願第08/961,735号明細書、および米国特許第5,228,886号明細書(前出)に説明されている。追加の(非酸化アルミニウム)研磨性粒子が用いられる場合、この研磨用組成物は、約0.05から約10パーセントの追加の研磨性粒子を含んでいるのが望ましい。
【0069】
酸化アルミニウム粒子以外の適した追加用研磨性粒子に含まれるのは、平均粒径約100nm未満、より望ましくは約5nmから約50nmの炭化ケイ素、金属酸化物、金属硫化物および金属炭化物である。特に、推奨される追加用研磨性粒子に含まれるのは、SiC、TiO2、Fe23、Fe34、Fe3C、Fe73、MoS2、MoO2、WC、WO3およびMS2のような化合物である。また、推奨される研磨性粒子は、相対的に狭い粒径分布と、その平均粒径より数倍大きい粒径の有効カットオフを示す。
【0070】
この特別な組成の研磨性粒子は、その粒子が、研磨されるべき表面用に適した剛さ、さらにまた希望の平滑性を効率的に得るのに適した粒径分布を有するように選ばれるべきである。酸化アルミニウムは非常に剛い。かくして、酸化アルミニウムは、剛い基材の研磨に特に適している。剛い研磨性粒子は、軟らかい基材の表面に好ましくない掻き傷を生じさせる可能性がある。
【0071】
この研磨用組成物は、その研磨特性を向上させるために、酸性または塩基性であってもよい。金属を研磨するには、一般に、酸性のpH、例えば約3.0から約4.0、の範囲であるのが望ましい。氷酢酸などの多様な酸が用いられる。酸化物の表面を研磨するには、一般に、塩基性の、例えば、pH約9.0から約11の研磨用組成物が用いられる。塩基性の研磨用組成物を調製するためには、KOHあるいは他の塩基が添加される。さらにまた、特に金属を研磨するためにH22のような酸化剤が添加されることもある。
【0072】
この研磨性粒子の組成物は、研磨終了後に、その研磨用組成物を除去する準備もして置くべきである。研磨された表面を清浄にするための一つの方法は、その研磨された表面を損傷しない洗浄溶液で、研磨性粒子を溶解することを含む。リン酸を含む洗浄用組成物を用いる、アルミナをベースにする研磨用組成物の除去が、本明細書に引用参照されている“研磨後の半導体基材の洗浄法”という名称の米国特許第5,389,194号明細書に説明されている。この特許は、常用の酸化アルミニウムを含んでいるスラリーでの研磨を一般的に説明している。
【0073】
この研磨用組成物は、手で行われるか、あるいは動力研磨機を用いて行われる機械的または化学的−機械的研磨に用いられる。いずれの場合にも、この研磨用組成物は、一般に、研磨を行うための研磨用パッドもしくは研磨用布に塗布される。様々な機械的研磨機の任意の物、例えば、振動式研磨機および回転式研磨機が用いられる。
【0074】
この研磨用組成物は、集積回路製造用の基板表面の研磨に特に有用である。集積回路の単一面上での密度が大きくなるにつれて、対応する基板の平滑性に対する許容誤差がより厳しくなる。それ故、その基板上に回路パターンを付ける前に表面の小さい不連続部位(discontinuities)を除去できることが重要である。本明細書中に開示される研磨性粒子の小さいサイズと均質性が、これら用途のための研磨用組成物に特に適している。Al23粒子は、コロイド状シリカを含んでいる場合も、含んでいない場合も、シリコンベースの半導体基板の研磨に適している。同様に、本明細書に参照引用されている米国特許第4,956,313号明細書に記載されているように、複数の絶縁層と複数の伝導層のパターン化部分を含む多層構造物が同時に平坦化(planarize)される。
【0075】
実施例
実施例1−Al23ナノ粒子調製のためのレーザ熱分解
この実施例で説明された酸化アルミニウム粒子の合成は、レーザ熱分解で行われた。この粒子は、基本的に、上に説明された、図2のレーザ熱分解装置を用い、図1に図式的に示した固体前駆体送達装置を用いて製造された。
【0076】
塩化アルミニウム(Strem Chemical, Inc., Newburyport, MA)前駆体の蒸気は、AlCl3を含む固体前駆体送達装置を通してArガスを流すことにより反応チャンバー中に導入された。この前駆体は表1に指示したような温度に加熱された。レーザ吸収用ガスとしてC24ガスが用いられ、そして不活性ガスとしてアルゴンが用いられた。AlCl3、Ar、O2およびC24を含む、この反応ガス混合物を、反応チャンバーに射出するための反応物ガス用ノズルに導入した。この反応物ガス用ノズルは、5/8in×1/8inの寸法の開口を備えている。実施例1の粒子に関するレーザ熱分解合成の追加のパラメータが表1に特定されている。
【0077】
【表1】

【0078】
sccm=標準状態での立方センチ/分
slm=標準状態でのリットル/分
アルゴン−Win=導入管216、218を通るアルゴン流
アルゴン−Sld=環状流路142を通るアルゴン流。
【0079】
酸化アルミニウム粒子の生産速度は、標準的には約4g/hrであった。その原子配列を評価するために、試料をシーメンス(Siemens)D500X−線回折計でのCu(Kα)放射線を用いるX−線回折により調べた。表1に特定した条件で製造された試料のX−線回折図が、図6に示される。表1に特定された一連の条件下で、これら粒子は、γ−Al23(立方晶系)に対応する回折図を示したが、その回折図は、かなりの量のノイズを含んでいた。
【0080】
粒径と形態構造を求めるために透過電子顕微鏡(TEM)が用いられた。表1の条件で製造された粒子のTEMマイクログラフが図7に示されている。このTEMマイクログラフの一部を調べて、約7nmの平均粒径を得た。対応する粒径分布は図8に示されている。図7のマイクログラフに明瞭に見られる粒子の粒径を手動で測定し、大体の粒径分布を求めた。そのマイクログラフ中での歪んだ領域もしくは焦点が外れている領域を避けるために、明瞭な粒子境界を有する粒子だけを測定した。このようにして得られた測定結果は、単一の観察だけでは全ての粒子の明瞭な像を把握できないので、より正確で偏よっていないに違いない。これら粒子が、むしろ狭い粒径範囲に分布していることに意味がある。
【0081】
レーザ熱分解で製造されたこれら粒子は黒い色をしていたが、この黒さは明らかに、これら粒子と会合している炭素の存在に因る。この炭素は、レーザ吸収用ガスとして用いられたエチレンに由来する場合がある。この黒い色は、実施例2に記載されているように、加熱により除去された。さらに、炭素で被覆されたナノ粒子が、本明細書に引用参照されている“金属(ケイ素)酸化物/炭素複合物粒子”という名称の、共同出願人により同時出願(出願日:1998年7月22日)された米国特許出願第09/123,255号明細書に説明されている。
【0082】
実施例2−オーブンでの加工
表1に特定した条件に従って、レーザ熱分解により製造された酸化アルミニウムナノ粒子の一つの試料を、オーブン中、酸化条件下で加熱した。このオーブンは、基本的に図5を参照して上に説明されたような物であった。この試料は、オーブン中、約500℃で約2時間加熱された。直径1.0インチの石英管を通して約250sccmの流量で酸素ガスを流した。約100と約300mgの間のナノ粒子を、そのオーブン中に挿入された石英管内の開放型の1ccバイアルの中に入れた。加熱後、これら粒子は白色であった。得られる粒子は、X線回折で測定したところ、γ−Al23であった。このX線回折図が図9に示されている。図9の回折図は、シグナル/ノイズ比が、図6の回折図での値より大きい。シグナル/ノイズにおけるこの改善は、結晶度の水準が高くなったことに起因すると考えられる。
【0083】
加熱処理したAl23ナノ粒子のTEMマイクログラフが図10に示されている。それに対応する粒径分布を図11に示してある。この粒径分布は、図8での粒径分布の作製に用いられた方法に従って作製された。
【0084】
実施例3−酸化アルミニウムナノ粒子のスラリー
本実施例は、約1重量パーセントの酸化アルミニウムナノ粒子を含むスラリーの調製を説明している。ウオーリング・ブレンダ(WaringR blender)に、5mLの量の脱イオン水を入れた。このブレンダを、スロー・セッティングに設定し、そしてレーザ熱分解により製造したAl23ナノ粒子の0.1000gを添加した。この乾燥粉末の添加に次いで、2mLの脱イオン水をリンス(rinse:置換パージ)として添加した。この濃厚なスラリーのpHを調整するために、約2重量パーセントのHClを0.2mL添加した。HClの添加後、このブレンダの速度設定を30秒の間に、中〜高まで上げ、次いで再び、スロー設定に下げた。この濃厚なスラリーを総液体含有量を10mLにするのに十分な水で稀釈した。この追加の水を加えた後、ブレンダの速度を再び、30秒の間に、中〜高まで上げた。次いで、この混合機を停止した。得られたスラリーのpHは約3であった。この得られるスラリーの色は、加熱処理した試料を用いると乳白色であるが、一方、加熱処理されなかった粒子を用いるとコーヒー色であった。これらのスラリーをそれぞれ密閉瓶に入れた。
【0085】
上に説明した実施態様は、例示的であることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の追加的実施態様は、本特許請求の範囲内である。本発明は、推奨される実施態様を引用することにより説明されたが、この技術分野の習熟者なら、本発明の精神と範囲から逸脱することなしに、形および細部において、変更がなされ得ることを認めるであろう。
【0086】
本発明の態様を集約すると、以下の通りである。
[1] 酸化アルミニウムを含んでなる粒子の集合体であって、約5nmから約500nmの平均粒径を有し、且つその粒子の集合体の平均粒径の約4倍より大きい粒径を有する粒子を実質的に含んでいない、粒子の集合体。
[2] その粒子の集合体が約5nmから約25nmの平均粒径を有する、1に記載の粒子の集合体。
[3] その酸化アルミニウムがγ−Al23の結晶構造を有する、1に記載の粒子の集合体。
[4] その粒子の集合体がその平均粒径の約3倍より大きい粒径を有する粒子を実質的に含んでいない、1に記載の粒子の集合体。
[5] その粒子の集合体がその平均粒径の約2倍より大きい粒径を有する粒子を実質的に含んでいない、1に記載の粒子の集合体。
[6] その粒子の集合体が、その粒子の少なくとも約95パーセントがその平均粒径の約40パーセントより大きく且つその平均粒径の約160パーセントより小さい直径を有するような粒径分布を有する、1に記載の粒子の集合体。
[7] その粒子の集合体が、その粒子の少なくとも約95パーセントがその平均粒径の約60パーセントより大きく且つその平均粒径の約140パーセントより小さい直径を有するような粒径分布を有する、1に記載の粒子の集合体。
[8] その粒子の集合体が、その粒子の少なくとも約99パーセントがその平均粒径の約40パーセントより大きく且つその平均粒径の約160パーセントより小さい直径を有するような粒径分布を有する、1に記載の粒子の集合体。
[9] 1に記載の酸化アルミニウム粒子の分散物を含んでなる研磨用組成物。
[10] その酸化アルミニウム粒子がγ−Al23の結晶構造を有する、9に記載の研磨用組成物。
[11] その研磨用組成物が約0.05重量パーセントから約15重量パーセントの酸化アルミニウム粒子を含んでなる、9に記載の研磨用組成物。
[12] その研磨用組成物が約1.0重量パーセントから約10重量パーセントの酸化アルミニウム粒子を含んでなる、9に記載の研磨用組成物。
[13] その分散液が水系分散液である、9に記載の研磨用組成物。
[14] その分散液が非水系分散液である、9に記載の研磨用組成物。
[15] 炭化ケイ素、酸化アルミニウム以外の金属酸化物、金属硫化物および金属炭化物からなる群から選ばれる組成物を含んでなる研磨性粒子をさらに含んでなる、9に記載の研磨用組成物。
[16] コロイド状粒子をさらに含んでなる、9に記載の研磨用組成物。
[17] 約5nmから約500nmの平均粒径を有する酸化アルミニウム粒子の集合体を製造する方法であって、この方法は反応チャンバー中で分子流を熱分解することを含んでなり、その分子流はアルミニウム前駆体、酸化剤および赤外線吸収剤を含んでなり、その熱分解はレーザビームから吸収された熱により駆動されるところの方法。
[18] その酸化アルミニウム粒子が約5nmから約100nmの平均粒径を有する、16に記載の方法。
[19] 酸化アルミニウムを含んでなる粒子の集合体であって、その粒子の集合体は、約5nmから約500nmの平均粒径および、その粒子の少なくとも約95パーセントがその平均粒径の約40パーセントより大きく且つその平均粒径の約160パーセントより小さい直径を有するような粒径分布を有する、粒子の集合体。
[20] その酸化アルミニウムがγ−Al23の結晶構造を有する、19に記載の粒子の集合体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウムを含んでなる粒子の集合体であって、約25nmから約100nmの平均粒径を有し、且つその粒子の集合体の平均粒径の約3倍より大きい粒径を有する粒子を実質的に含んでおらず、その酸化アルミニウムがγ−Al23の結晶構造を有する、粒子の集合体。
【請求項2】
粒子の集合体が、その粒子の少なくとも約95パーセントがその平均粒径の約40パーセントより大きく且つその平均粒径の約160パーセントより小さい直径を有するような粒径分布を有する、請求項1に記載の粒子の集合体。
【請求項3】
酸化アルミニウムを含んでなる粒子の集合体であって、その粒子の集合体は、約25nmから約100nmの平均粒径および、その粒子の少なくとも約95パーセントがその平均粒径の約40パーセントより大きく且つその平均粒径の約160パーセントより小さい直径を有するような粒径分布を有していて、その酸化アルミニウムがγ−Al23の結晶構造を有する、粒子の集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図7】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−265171(P2010−265171A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−154669(P2010−154669)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【分割の表示】特願2000−566199(P2000−566199)の分割
【原出願日】平成11年8月11日(1999.8.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507205807)ナノグラム・コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】