説明

酸化度の定量法

酸化測定対象物の測定において新規な観点からのその意義を見出すことにある。つまり、従前の量的判定から質的判定に、測定対象を変更し、その新規な臨床的意義を確立するための手段を提供することにある。詳しくは、本発明は、酸化測定対象物の測定にあたり、測定における組合せを改良し、特にインスリン、レプチン、リポ蛋白質の酸化度を測定するための手段を提供し、その測定により、臨床的意義が確立されたことにより本発明を完成した。

【発明の詳細な説明】
本出願は、参照によりここに援用されるところの、日本特許出願番号2003−016074、2003−064853、2003−293585からの優先権を請求する。
【技術分野】
本発明は、生体中の測定対象物(本発明における測定対象物とは、検体中に存在しうる可能性がある物質であり、疾患との何らかの関係が推定される物質を意味し、例えば蛋白質、脂質、糖蛋白質、リポ蛋白質又はこれらの複合体等が挙げられる)の酸化度を特異的に測定することを特徴とする測定方法、該測定法を利用した判定方法、並びに該測定に利用する測定用キットに関する。さらに詳しくは、酸化度の測定対象物を特異的に捕捉する物質が固相に結合されているサンドウィッチ法による測定手段を利用することを特徴とする測定対象物の酸化度の測定法に関する。さらに本発明の測定方法を用いることを特徴とする、生活習慣病の要因である肥満や糖尿病に伴う循環器系疾患の主因疾患(心筋梗塞、狭心症などの冠動脈虚血性疾患、脳梗塞、脳血管痴呆など脳動脈系疾患、糖尿病性腎疾患などの動脈硬化性疾患)のリスク因子の判定及び診断する方法に関するものである。さらには、本発明方法の酸化度の測定キット又は酸化度の測定結果の情報を自然法則を利用した媒体に担持した商業用媒体に関する。
【背景技術】
動脈硬化性疾患は狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの主因の疾患である。その原因としては、血清コレステロール特にLDLの増加により動脈硬化内膜下にコレステロール沈着を起こすことによるものと思われている。さらにSteinbergら(Steinberg D,Parthasarathy S,Carew TE,et al:Beyond cholesterol.Modifications of low−density lipoprotein that increase its atherogenicity.:非特許文献1)は酸化LDLが動脈硬化の成因として重要な役割を果たしているという仮説を提唱し、酸化LDLが動脈硬化研究において注目されるようになった。
酸化LDLの種類としては、ホスファチジルコリンが酸化されたもの(特許文献1)、マロンジアルデヒド(MDA)(Kotani K,Maekawa M,Kanno T,et al:Distribution of immnoreactive malonaldehyde−modified low density lipoprotein in human serum.:非特許文献2)や4−ヒドロキシ−2−ノネナールなどによって酸化修飾されたものがある。
また、生体内には存在するが、酸化変性を受けて機能が変化したと考えられる蛋白質として、インスリンとレプチンが考えられる。インスリンはインスリンレセプターに結合し様々な段階を経て血糖値を下げる働きがある。これらの段階に障害がありインスリン感受性の低下(抵抗性)を示し、2型糖尿病と分類される(非特許文献3)。レプチンは分泌されると摂食を抑制し体脂肪量の増加を抑える働きがある。しかし、肥満者などにおいてその機構が破綻して、血中レプチン濃度が高いにも関わらず作用不全(レプチン抵抗性)が存在する(非特許文献4)。
これらは、分泌する細胞と受容体部分の作用機序に障害がありそれぞれ抵抗性を示すと考えられる。
本法は、その受容体の結合に影響する酸化度合いを測定することによりこれらの抵抗性の指標となりうる。
酸化修飾されたリポ蛋白質等を測定する方法としては、以下の先行技術がある。
特許文献1:酸化のマーカーとしてはホスファチジルコリンを使い、酸化リポ蛋白質に対する抗体を固相に固定化し、これに検体を接触させ酸化リポ蛋白質を測定する方法を開示する。しかし、酸化されたリポ蛋白質量を測定するもので酸化度についての意識はない。
特許文献2:酸化のマーカーとしてMDAを使い、表現上はヒトアポB認識抗体を固相化しているが、具体例ではその開示はなく、酸化度を意識した開示は一切ない。
特許文献3:変性リポ蛋白質と、急性相反応物質、血液凝固・線溶系関連蛋白質、又はマクロファージ等の炎症細胞が産生する細菌物質との複合体を、抗4HNE抗体を用いて検出する方法を開示するが、酸化度を測定する意義は開示していない。
特許文献4:血液成分と、酸化LDLを認識する抗体を接触させ、該抗体の試料に対する反応性の測定を開示するが、LDLの酸化度を意識した開示はない。
特許文献5:抗カルジオリピン抗体、抗リポ蛋白質抗体、又は抗β2−グリコプロテインI抗体と、これらの固相化抗体を使用して、血液サンプル中のβ2−グリコプロテインIと酸化リポ蛋白質との複合体を測定する方法を開示する。そこには酸化リポ蛋白質の酸化度を意識した開示はない。
特許文献6:変性リポ蛋白質の変性部位を露出させる方法を開示する。そこには酸化リポ蛋白質の酸化度を意識した開示はない。
特許文献7:変性又は修飾リポタンパク(a)の測定法を示しているが、変性又は修飾を受けたリポタンパク質(a)に対する抗体を固相抗体と一次抗体に用いており測定に酸化度を意識した開示はない。
特許文献8:4HNEモノクローナル抗体の開示をする。
(非特許文献1)N.Engl.J.Med.320:915−924,1989
(非特許文献2)Biochem Biophys Acta 1215:111−118,1994
(非特許文献3)糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告
(非特許文献4)医学のあゆみ184:551−555,1998
(特許文献1)特開平8−304395
(特許文献2)特開平4−173096
(特許文献3)特開2001−324506
(特許文献4)特開2002−214234
(特許文献5)WO95/09363
(特許文献6)特開平8−101195
(特許文献7)特開平9−297137
(特許文献8)特開平8−168394
【発明の開示】
解決しようとする課題は、生体内中の測定対象物の測定において、生体内には存在するが酸化変性がおきてあるいは酸化変性の影響により機能又は性質が変化した測定対象物の新規な手段及びその意義を提供することにある。つまり、酸化変性の影響を受けた測定対象物の測定に際し、従前の量的判定から質的判定に、測定対象を変更し、その新規な臨床的意義を提供することにある。
本発明は、酸化によって影響を受けた測定対象物の測定にあたり、測定における組合せを改良し、特に酸化によって影響を受けた測定対象物の酸化度を測定するための手段を提供し、その測定により、新規な臨床的意義が確立されたことにより本発明を完成した。
本発明は、以下からなる。
1、下記(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする検体中の測定対象物の酸化度を測定する方法:
(1)酸化度の測定対象となる測定対象物を固相に捕捉する工程、
(2)「前記(1)の捕捉された測定対象物」と「脂質の酸化により生成する抗原性物質を認識する抗体」を接触反応させる工程、
(3)前記(2)で反応した抗体量によって、測定対象物当りの該抗原性物質量を定量・判定する工程。
2、測定対象物が、以下のいずれか1から選ばれる前項1の測定方法
(1)蛋白質
(2)脂質
(3)糖蛋白質
(4)リポ蛋白質
(5)前記(1)〜(4)の少なくとも1つを含む複合体
3、検体中の酸化度の測定対象となる測定対象物が、酸化により該測定対象物のレセプターとの結合力に変化をもたらすことを特徴とする前項1の測定方法。
4、検体中の酸化度の測定対象物が、以下のいずれか1から選ばれる前項1の測定方法。
(1)低密度リポ蛋白質(LDL)
(2)高密度リポ蛋白質(HDL)
(3)超低密度リポ蛋白質(VLDL)
(4)リポ蛋白質(a)(Lp(a))
(5)インスリン
(6)レプチン
5、脂質の酸化により生成する抗原性物質が、以下のいずれか1から選ばれる前項1〜4のいずれか1に記載の測定方法。
(1)4−ヒドロキシ−2−ノネナール(4HNE)
(2)マロンジアルデヒド(MDA)
(3)8−イソプロスタン
(4)酸化リン脂質
(5)酸化トリグリセリド
(6)酸化コレステロール
6、検体中の酸化度の測定対象物であるリポ蛋白質中の蛋白質部分が、以下のいずれか1から選ばれる前項1〜5のいずれか1に記載の測定方法。
(1)アポB−100
(2)アポA1
(3)アポ(a)
7、以下のいずれか1から選ばれる検体中の酸化度の測定対象物であるリポ蛋白質中の蛋白質部分を認識する抗体を使って測定対象物を捕捉する前項1〜6のいずれか1から選ばれる測定方法。
(1)アポB−100に対する抗体
(2)アポA1に対する抗体
(3)アポ(a)に対する抗体
8、以下のいずれか1から選ばれる検体中の酸化度の測定対象物である蛋白質を認識する抗体を使って測定対象物を捕捉する前項1〜5のいずれか1から選ばれる測定方法。
(1)インスリンに対する抗体
(2)レプチンに対する抗体
9、下記(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする検体中の測定対象物の酸化度を測定する方法:
(1)アポB−100に対する抗体、アポA1に対する抗体、又はアポ(a)に対する抗体を固相に結合する工程、
(2)前記(1)の固相化抗体と検体を接触させ、検体中の低密度リポ蛋白質(LDL)、高密度リポ蛋白質(HDL)、超低密度リポ蛋白質(VLDL)、又はリポ蛋白質(a)(Lp(a))を捕捉する工程、
(3)前記(2)で捕捉された各リポ蛋白質に対して、4HNE、MDA、8−イソプロスタン、酸化リン脂質、酸化トリグリセリド又は酸化コレステロールを認識する抗体を接触反応させる工程、
(4)前記(3)で反応した抗体量により、4HNE、MDA、8−イソプロスタン、酸化リン脂質、酸化トリグリセリド又は酸化コレステロールを定量する工程、
(5)捕捉された各リポ蛋白質当りの4HNE、MDA、8−イソプロスタン、酸化リン脂質、酸化トリグリセリド又は酸化コレステロール量を求め、これを測定対象物である各リポ蛋白質の酸化度のマーカーとして判定する工程。
10、下記(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする検体中の測定対象物の酸化度を測定する方法:
(1)インスリン又はレプチンに対する抗体を固相に結合する工程、
(2)前記(1)の固相化抗体と検体を接触させ、検体中のインスリン又はレプチンを捕捉する工程、
(3)前記(2)で捕捉された各蛋白質に対して、4HNE又はMDAを認識する抗体を接触反応させる工程、
(4)前記(3)で反応した抗体量により、4HNE又はMDAを定量する工程、
(5)捕捉された各蛋白質当りの4HNE又はMDA量を求め、これを測定対象物である各蛋白質の酸化度のマーカーとして判定する工程。
11、検体が、ヒトまたは動物の以下のいずれか1から選ばれる前項1〜10のいずれか1に記載の方法。
(1)血液
(2)尿
(3)血漿
(4)血清
(5)髄液
(6)唾液
(7)汗
(8)涙液
(9)腹水若しくは羊水
(10)精液
(11)大便
(12)組織・細胞の抽出液
(13)酸化された蛋白質、脂質、糖蛋白質、リポ蛋白質又は/及びそれらの複合体を含む可能性のある生体試料
12、前項1〜11の何れか一に記載の測定法による、循環器系疾患危険因子又は生活習慣病危険因子の判定方法。
13、前項12に記載の循環器系疾患又は生活習慣病が、以下のいずれか1から選ばれる判定方法。
(1)動脈硬化性疾患
(2)虚血性心疾患
(3)脳血管疾患
(4)高血圧症
(5)高脂血症
(6)糖尿病
(7)肥満
14、下記(1)及び/又は(2)の要素を含むことを特徴とする、検体中の測定対象物の酸化度の測定キット:
(1)酸化度の測定対象となる測定対象物を捕捉する固相、
(2)脂質の酸化により生成する抗原性物質を認識する抗体。
15、前項1〜11のいずれか1の測定方法で得られた、酸化度の測定結果の情報を自然法則を利用した媒体に担持した商業用媒体。
【図面の簡単な説明】
(図1)酸化状態(酸化度)の概念を示す図である。
(図2)4HNE−LDL系での検量線を示す図である。
(図3)LDLの酸化度を示す図である。
(図4)マクロファージへの酸化LDLの取り込みを示す図である。
(図5)酸化HDLの系を示す図である。
(図6)銅イオン酸化LDLを抗4HNE抗体にて検出した図である。
(図7)銅イオン酸化LDLを抗MDA抗体にて検出した図である。
(図8)臨床検体について、酸化LDLの透析前後での測定結果である。
(図9)酸化Lp(a)の系を示す図である。
(図10)銅イオン酸化LDLを抗8−イソプロスタン抗体にて検出した図である。
(図11)4HNE−インスリン系での検量線を示す図である。
(図12)インスリンの酸化度を示す図である。
(図13)酸化インスリンとインスリンレセプターの反応性を示す図である。
(図14)銅イオン酸化インスリンを抗4HNE抗体にて検出した図である。
(図15)銅イオン酸化インスリンを抗MDA抗体にて検出した図である。
(図16)4HNE−レプチン系での検量線を示す図である。
(図17)レプチンの酸化度を示す図である。
(図18)銅イオン酸化レプチンを抗4HNE抗体にて検出した図である。
(図19)銅イオン酸化レプチンを抗MDA抗体にて検出した図である。
(図20)酸化レプチンとレプチンレセプターの反応性を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、生体中の測定対象物の酸化度を測定するものであるが、特にリポ蛋白質、蛋白質、脂質、糖蛋白質又はこれらの複合体の酸化度を測定することを特徴とする。リポ蛋白質の実施例においては、特にLDLをもって示したが、特に限定されず、(1)低密度リポ蛋白質(LDL)、(2)高密度リポ蛋白質(HDL)、(3)超低密度リポ蛋白質(VLDL)、(4)リポ蛋白(a)(Lp(a))等のいわゆるリポ蛋白質と呼ばれるものである。このリポ蛋白質を含有する測定検体は、ヒト又は動物由来の検体であれば特に限定されない。例えば、血液、尿、血漿、血清、髄液、唾液、腹水若しくは羊水、汗、涙液、精液、大便、組織・細胞の抽出液など測定対象物が含まれる可能性のある生体試料であればよい。より具体的には、例えば、血液成分とは、患者からの採血、またはヘパリン等の抗凝固剤を添加して採血して得た血液試料を、遠心分離などの常法に基づき成分分離して得られた血清成分ないし血漿である。また、測定法に起因する非特異的吸着を抑制し、より高精度の測定とするために、この血清成分及び血漿をさらに超遠心分離により分離してリポタンパク質画分としてもよい。
また、蛋白質の実施例においては、特にインスリン、レプチンをもって示したが、特に限定されず、本発明の蛋白質の酸化度の測定対象物として、イムノグロブリン、アルブミン、トランスフェリン、α1アンチトリプシンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、インスリン、レプチンを含有する検体は、上述のように測定対象物を含む可能性のある生体試料であればよい。より具体的には、例えば、血液成分とは、患者からの採血、またはヘパリン等の抗凝固剤を添加して採血して得た血液試料を、遠心分離などの常法に基づき成分分離して得られた血清成分ないし血漿である。
また、本発明の測定対象物として、エリスロポエチンやβ2−グリコプロテインI等の糖蛋白質が挙げられ、またリン脂質等の脂質も挙げられる。さらに、上記記載したリポ蛋白質のような蛋白質と脂質の複合体や、蛋白質、脂質、糖蛋白質で構成される複合体等も測定対象物となりえる。これらの検体は上述のように測定対象物を含む可能性のある生体試料であればよい。より具体的には、例えば、血液成分とは、患者からの採血、またはヘパリン等の抗凝固剤を添加して採血して得た血液試料を、遠心分離などの常法に基づき成分分離して得られた血清成分ないし血漿である。また自体公知の方法により精製した物でもよい。
本発明で、測定対象物が酸化によりレセプターとの結合力に変化をもたらすということは、測定対象物が酸化により影響をうけ、レセプターとの結合力又は親和性が上昇若しくは減少することを意味する。
本発明で、酸化とは、測定対象物質が酸化変性の影響を直接的又は間接的に受けて、測定対象物質が酸化されている状態をいう。本発明で酸化は脂質の酸化により生成される物質をマーカーとする。そして脂質の酸化により生成する抗原性物質を認識する抗体を使い測定対象物の酸化度を検定する。脂質の酸化により生成する抗原性物質とは、以下のような物質が代表例として例示されるが限定されない。
(1)4−ヒドロキシ−2−ノネナール(4HNE)
(2)マロンジアルデヒド(MDA)
(3)8−イソプロスタン
(4)酸化リン脂質
(5)酸化トリグリセリド
(6)酸化コレステロール
リポ蛋白質における酸化においては、分子外の細胞膜やリポ蛋白質または、同分子中の脂質部分の酸化に始まり、生成した脂質過酸化物であるMDA(マロンジアルデヒド)や4HNE(4−ヒドロキシ−2−ノネナール)によって蛋白質は修飾される。本発明ではこのMDAや4HNEを酸化のマーカーとする。LDL、VLDL、HDL、Lp(a)の各リポ蛋白質を構成する蛋白質分子中のヒスチジンやリジン残基等が酸化修飾されると、例えば酸化リポ蛋白質である4HNE修飾LDL(4HNE酸化LDLということもある)又はMDA修飾LDL(MDA酸化LDLということもある)が生成する。また、本発明は、リポ蛋白質分子中の脂質部分が直接酸化を受けることも意味する。
また、インスリン、レプチンのような蛋白質における酸化とは、分子外の酸化に始まり、生成した脂質過酸化物であるMDAや4HNEによって蛋白質を修飾することを意味する。そして、インスリンやレプチンと反応することで、4HNE修飾インスリン(4HNE酸化インスリンということもある)又はMDA修飾インスリン(MDA酸化インスリンということもある)が生成する。
また、リン脂質のような脂質における酸化とは、分子内の脂肪酸が酸化されペルオキシ酸を生成し、イソプロスタン化リン脂質などが生成することを意味する。
また、エリスロポエチンのような糖蛋白質における酸化とは、上記記載の蛋白質の酸化のように、分子外の酸化に始まり、生成した脂質過酸化物であるMDAや4HNEによって蛋白質を修飾することを意味する。そして、エリスロポエチンと反応することで、4HNE修飾エリスロポエチン(4HNE酸化エリスロポエチンということもある)又はMDA修飾エリスロポエチン(MDA酸化エリスロポエチンということもある)が生成する。
脂質の酸化により生成する抗原性物質を認識する抗体は、以上のような脂質の酸化により生成する抗原性物質に対する抗体を意味し、これらは脂質の酸化により生成する抗原性物質を免疫原として通常のポリクローナル抗体或はモノクローナル抗体の手段をもちいることにより調製する。ポリクローナル抗体が所望であれば、脂質の酸化により生成する抗原性物質を用いて、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジなど)を免疫することにより得ることができる。免疫された動物から得られた血清を回収し、公知の方法によって処理する。ポリクローナル抗体を含有する血清が所望以外の抗原に対する抗体を含んでいる場合には、このポリクローナル抗体は免疫アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。ポリクローナルな抗血清を生産し、加工処理する方法は、当該分野では公知である。例えばMayerおよびWalker(1987):IMMUNOCHEMICAL METHODS INCELLAND MOLECULAR BIOLOGY(Academic Press,London)を参照することができる。
モノクローナル抗体もまた、当業者により容易に生産することができる。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を調製する一般的な方法は公知である。例えばケーラーとミルシュタインの方法(Kohler and Milstein,Nature 256,495−497,1975)にしたがって作製することができる。骨髄腫細胞として、マウス、ラット、ヒトなど由来のものが使用され、例えばマウスミエローマP3X63−Ag8、P3X63−Ag8−U1、P3NS1−Ag4、SP2/o−Ag14、P3X63−Ag8・653などの株化骨髄腫細胞が例示される。抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを作製する方法は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法などが例示される。融合操作後の細胞は選択培地で培養して、ハイブリドーマの選択を行う。選択培地は、親細胞株を死滅させ、融合細胞のみが増殖しえる培地であり、通常ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地が使用される。
他の方法として、腫瘍原性DNAを用いたBリンパ球の直接形質転換、あるいはEpstein−Barrウイルスを用いたトランスフェクションのような他の方法によってもまた調製することができる。例えば、J.Virol.60:1153.Schreier,M.ら(1980);Virology 162:167.Hammerlingら(1981);British Medical J.295:946.Kennettら(1980)を参照することができる。また、ヒトの疾患の診断・治療に使用可能なように、これのモノクローナル抗体をヒト化することをも含む。
脂質の酸化により生成する抗原性物質を認識する抗体として、実施例においては、特に4HNE抗体、MDA抗体をもって示したが、特に限定されず、広く脂質の酸化により生成する抗原性物質を認識する抗体として、例えばヘキサナールなどのアルカナール類やアルケナール類などに対する抗体も挙げられる。
本発明における検体とは、ヒト又は馬、犬、猫等の動物から得られた血液、尿、血漿、血清、髄液、唾液、汗、涙液、腹水若しくは羊水、精液、大便、組織・細胞の抽出液、酸化された蛋白質、脂質、糖蛋白質、リポ蛋白質又は/及びそれらの複合体を含む可能性のある生体試料等が挙げられるが特に限定はされない。
本発明は、上記酸化の程度を測定することを発明の特徴とする。程度とは、測定対象物一分子中の酸化物、特に蛋白質一分子中の酸化物又はリポ蛋白質一分子中の酸化物による変性修飾の多さを意味する。従来の概念では、血中に含まれる酸化蛋白質又は酸化リポ蛋白質の量が多いとき、その一分子あたりの酸化変性修飾の割合が低くとも酸化蛋白質又は酸化リポ蛋白質量は高値と示された。本発明の新規な概念は、リポ蛋白質での例である図1に示すように血中の酸化リポ蛋白質の量は少なくとも、酸化修飾割合の高いリポ蛋白質を酸化状態が高値と示される。つまり、本発明で、例えば酸化LDLの酸化度を測定するとは、アポBあたりの酸化修飾割合を測定することに臨床的意義を提供するものである。
本発明において測定対象物、特に蛋白質、リポ蛋白質、糖蛋白質、脂質又はこれらの複合体の酸化度を測定するために、好適な手段は、RIA法、ELISA法、イムノブロット法等が例示されるが、特にサンドイッチELISA法が好適である。そして、本発明は、測定対象物を固相に捕捉する方法として、固相に測定対象物例えばリポ蛋白質の蛋白質成分、例えばLDLであればアポB、HDLであればアポA1、Lp(a)であればアポ(a)等に対する抗体を固定化することである。また、インスリンの場合では抗インスリン抗体、レプチンの場合では抗レプチン抗体を固定化することである。各抗体は自体公知であり、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体が公知の手法で調製、利用される。抗体の抗原認識部位は特に制限されないが、抗体が検体の蛋白質と接触する際に、相互認識が可能な部位であれば良い。好適な抗体として、本発明ではLDLの場合、市販のanti−Human Apolipoprotein B antibody(American Research Products社)を使用した。また、インスリン又はレプチンの場合も、市販の抗体を使用し、インスリンはanti−Insulin(医学生物学研究所社)を、レプチンはanti−Human Leptin antibody(R&D SYSTEMS社)を使用した。
また、上記示した測定対象物の固相に捕捉するその他の方法としては、例えば、各種受容体タンパク質/そのリガンド等、ビオチン結合タンパク質/アビジンおよびストレプトアビジン、群特異的吸着体/そのリガンド等、マルトース結合タンパク質/マルトース、Gタンパク質/グアニンヌクレオチド、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、DNA結合タンパク質/DNA、あるいはATP結合タンパク質/ATP等が挙げられる。しかし、測定対象物が固相に捕捉できれば特に限定されない。また、これらの捕捉方法は、自体公知の方法によってなし得ることができる。
(抗体等の固定化条件)
測定対象物質の捕捉のために抗体を使用する場合、抗体は上記抗体調製法と同様に処理可能である。抗体作製動物としてマウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギについての検討をおこなったが、アポB−100に対する抗体はヤギ、インスリンに対する抗体はモルモット、レプチンに対する抗体はマウスが最適であった。さらに、固相への抗体等の固定化法は、公知手法で検討したが、炭酸緩衝液を用いた方法が最適であった。その固定化条件は、例えばpH9.6に調整された緩衝液に0.25〜10μg/mlの終濃度に抗体を添加し、これをマイクロプレートに適量加え、1〜10℃、特に好ましくは2〜6℃で、10〜30時間、特に好ましくは15〜25時間静置し固定化させる。固相は、当該公知のプレートやビーズを用いうる。また、その材料は、プラスチック等が検討されたが、Nunc−ImmunoTMModules(Nunc社)が好適であった。固相への抗体の固定化量は、2.6〜106ng/mm、より好ましくは21〜106ng/mmである。または、測定対象となる蛋白質又はリポ蛋白質、糖蛋白質、脂質又はこれらの複合体を特異的に認識する抗体等が固相されている既存のプレートでも良い。
(ブロッキング緩衝液)
非特異反応をおさえるためのブロッキング緩衝液は、たとえばpH7.4のリン酸緩衝液(PBS)に種々の蛋白質を加えることでおこなう。蛋白質としては、牛血清アルブミン、オヴァアルブミン、スキムミルクなどがあるが、特に好ましくは牛血清アルブミンであり、その添加量は緩衝液濃度として0.5〜5%W/V、より好ましくは0.5〜2%W/Vである。
本発明の実施例では、牛血清アルブミンと同等の結果が得られたので、ブロックエース(大日本製薬株式会社)溶液を25%で利用した。ブロッキング剤による固相の処理は、抗体の固定化後に行う。固相が十分に浸漬される状態であれば特に制限はない。処理温度は、25〜45℃、特に好ましくは30〜40℃で、処理時間は1〜6時間、特に好ましくは2〜5時間である。ブロッキング処理後は、界面活性剤含有PBS溶液等の洗浄用緩衝液で十分に洗浄する。
(“固相−測定対象物を特異的に認識する抗体等−検体”の反応)
測定にあたって、検体である血漿、血清およびリポタンパク質画分は、至適な濃度に調整する。本発明にあっては、あらかじめ非特異反応を抑える為にγグロブリンを0.01〜2.5%W/V、特に好ましくは0.5〜2.5%W/Vを含んだリン酸緩衝液(PBS)、トリス塩酸緩衝液等を添加する。所望により、牛血清アルブミンを添加(緩衝液中に約0.5〜5%W/V、特に好ましくは約0.5〜2%W/V)することも可能である。さらに所望により、界面活性剤としてトリトンX−100、NP−40、Tween20などの添加が可能であり、特に好ましくはTween20が使用される。その添加量は緩衝液濃度として0.02〜2.5%W/V、特に好ましくは0.05〜1%W/Vである。また、レプチンにあっては、あらかじめ非特異反応を抑える為にイムノグロブリンを0.01〜2.5%W/V、特に好ましくは0.01〜0.05%W/Vを含んだリン酸緩衝液(PBS)、トリス塩酸緩衝液等を添加する。所望により、牛血清アルブミンを添加(緩衝液中に約0.5〜5%W/V、特に好ましくは約0.5〜2%W/V)することも可能である。
次に検体を添加するが、検体はそのまま或いは数倍希釈で十分である。これは、従来法の希釈倍率(一般的には約1000倍)に比較して大きな差異である。その理由は、従来法は酸化修飾物の抗体が固相に固定化された系で、酸化蛋白質又は酸化リポ蛋白質が固相抗体に捕捉されることが目的であり、非特異反応が生じない程度に希釈する必要がある。本発明は酸化度合いの程度を知ることが目的であり、一定量の抗体等の固相化担体に一定量の蛋白質又はリポ蛋白質等の測定対象物が捕捉されることが重要である。ゆえに微量の酸化蛋白質又は酸化リポ蛋白質等の測定対象物を検出するために、希釈倍率をできるだけ小さくすることで微量の酸化蛋白質又は酸化リポ蛋白質等の測定対象物の捕捉を可能とする。希釈媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば、リン酸緩衝液(PBS)、トリス塩酸緩衝液等を用いることができる。所望により、牛血清アルブミンを添加(緩衝液中に約0.5〜5%W/V、特に好ましくは約0.5〜2%W/V)することも可能である。さらに所望により、界面活性剤としてトリトンX−100、NP−40、Tween20などの添加が可能であり、特に好ましくはTween20が使用される。その添加量は緩衝液濃度として0.02〜2.5%W/V、特に好ましくは0.05〜1%W/Vである。また、インスリン、レプチン等の測定対象物の検体もそのまま或いは数倍希釈で十分である。希釈媒体としては、特に限定されるものではないが、例えば、リン酸緩衝液(PBS)、トリス塩酸緩衝液等を用いることができる。所望により、牛血清アルブミンを添加(緩衝液中に約0.5〜5%W/V、特に好ましくは約0.5〜2%W/V)することも可能である。
抗体等の固定化固相と検体の接触は、自体公知の方法に準ずれば十分である。例えば、4〜30℃、より好ましくは約25℃の下、1〜24時間、より好ましくは1〜3時間程度振とう反応させることが望ましい。反応完了後は所望により界面活性剤含有PBS溶液等の洗浄用緩衝液で十分に洗浄する。かくして、固相−測定対象物(蛋白質又はリポ蛋白質等)に対する抗体等−検体の反応が完了する。この反応により、検体中の測定対象物量(蛋白質量、リポ蛋白質量、脂質量、糖蛋白質量、又はこれらの複合体量)が特定される。
(脂質の酸化物に対する抗体)
本発明では、ついでサンドイッチ法により、検体での検出を行う。つまり、上記で捕捉された蛋白質又はリポ蛋白質等の測定対象物について、脂質の酸化物例えばMDA(マロンジアルデヒド)や4HNE(4−ヒドロキ−2−ノネナール)によって修飾された酸化修飾物量を測定するのである。脂質の酸化物に対する抗体は、既に市販されている、或いは公知の各酸化物に対する抗体、或は自体公知の方法で調製された抗体を使用する。たとえば、抗4HNE抗体と抗MDA抗体は日本油脂株式会社から販売されている。抗体は、各処方に応じて100〜50,000倍、好ましくは100〜20,000倍に希釈され、適量(100μl)が各プレートに添加される。反応時間は30分〜2時間、好ましくは1時間程度である。反応完了後、洗浄し、”固相−測定対象物(蛋白質若しくはリポ蛋白質等)抗体等−検体中の測定対象物(蛋白質若しくはリポ蛋白質等)−脂質の酸化物に対する抗体”を得る。これにより、検体中の測定対象物(蛋白質又はリポ蛋白質等)当りの酸化度を検定するための反応系が完成する。
ついで、この反応産物を数値化するために、自体公知の標識化を行う。標識には酵素、RI、蛍光等が利用でき、特に限定されない。酵素としては、アルカリホスファターゼ標識抗マウスIgG抗体(BIO SOURCE社)、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(BIO SOURCE社)などが利用できる。推奨処方により、反応を完成させた後、各酵素に応じた基質を添加し、その反応量から酸化測定対象物(酸化蛋白質又は酸化リポ蛋白質等)の酸化量が特定される。かくして、検体中の測定対象物(蛋白質又はリポ蛋白質等)についてその酸化量が特定されうることから、測定対象物(蛋白質又はリポ蛋白質等)当たりの酸化度が判定可能となる。
図2は、合成した4HNE修飾リポ蛋白質について修飾量に応じた検量線を示しており、図11は、合成した4HNE修飾インスリンについて修飾量に応じた検量線を示しており、図16は、合成した4HNE修飾レプチンについて修飾量に応じた検量線を示している。上記検量線は酸化度の同定が可能であることを示す。同様にMDA修飾リポ蛋白質でも同様の検量線が可能である。
【実施例】
以下で、本発明を実施例を用いて説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
(リポ蛋白質標準溶液の調製)
健常者より採血を行い、血清から超遠心法にて得られたLDL画分を用いて標準溶液の作製を行った。
超遠心分離用試験管(1〜4ml容)に、血清3mlを入れ、0.27mmol/lのEDTA−2Naを含む0.196mol/lのNaCl(比重1.006g/ml)を1ml重層した。試験管を、150,000Gにて15℃で6時間遠心し、白いクリーム状(VLDL)の上層1mlを捨て、下層3mlを回収した。これに、臭化ナトリウム(50%W/V)に0.27mmol/lのEDTA−2Naを含む0.196mol/lのNaCl(比重1.006g/ml)比重液を加え比重1.234g/mlに調整した溶液を1ml加えて、転倒混和し、全体を比重1.063g/mlとした。これを、150,000Gによって、15℃で14時間遠心分離を行った。上層の橙色バンド(LDL)のみ(500〜1000μl)を注意深く回収し、0.3mmol/lのEDTA−2Naを含む0.15mol/lのNaCl溶液によって4℃、12〜18時間透析した。透析終了後、リポ蛋白質量の測定を行った。
リポ蛋白質量150μgに対して、100nmolの4HNEを添加し37℃にて2時間反応させた(酸化修飾処理)。反応完了後、上記超遠心分離後と同様に、0.3mmol/lのEDTA−2Naを含む0.15mol/lのNaCl溶液によって4℃、12〜18時間透析した。透析終了後、これを標準溶液とした。
【実施例2】
(測定系の構築)
1)(固相化抗ヒトアポB抗体の調製)
50mM炭酸塩緩衝液(pH9.6)によって10μg/ml濃度に希釈した抗ヒトアポB抗体(American Research Products社)を、ELISAマイクロプレートに100μlずつ加え、4℃で一晩放置し吸着させた。
2)(洗浄)
0.05%Tween20含有PBS溶液(以下、洗浄用緩衝液)で3回洗浄を行った。
3)(ブロッキング処理)
25%ブロックエース溶液(大日本製薬株式会社)を、マイクロプレートに300μlずつ加え、37℃で4時間ブロッキングを行い、その後、洗浄用緩衝液によって3回洗浄を行った。
4)(検体と固相抗体の接触)
2.5%γグロブリン、0.1%Tween20および1%牛血清アルブミン含有PBS溶液50μlをマイクロプレートに入れ、標準溶液もしくは検体試料(血清)を50μlずつ加えた。これを室温で2時間振とう反応させ、その後、洗浄用緩衝液で3回洗浄を行った。
5)(酸化物質抗体による修飾)
抗4HNEモノクローナル抗体(日本油脂株式会社)を、10%ブロックエース溶液(以下、抗体用希釈溶液)によって20,000倍に希釈した。これを、マイクロプレートに100μlずつ加え、室温で1時間振とう反応させた。その後、洗浄用緩衝液で3回洗浄を行った。
6)(標識化)
DAKO En Vision+TMperoxidase,Mouse(DAKO社)を、抗体用希釈溶液によって50倍に希釈した。これを、マイクロプレートに100μlずつ加え、室温で1時間振とう反応させた。その後、洗浄用緩衝液で3回洗浄を行った。
7)(測定)
TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社)を、マイクロプレートに100μlずつ加えて発色させ、10〜30分後に1Mリン酸100μlを加えて反応を停止させた。そして、450nmによって吸光度を測定した。
8)(検量線)
以上の系を使い、合成した4HNE酸化リポ蛋白質を標準品とした典型的な検量線を得た(図2)。図2は横軸にリポ蛋白質(LDL)の4HNE酸化量(図中、4HNE−LDLと表示)、縦軸に450nmの吸光度を示した。
これにより、リポ蛋白質の酸化度の測定が可能であることが確認できた。
【実施例3】
(アポBあたりのLDL酸化状態の検定)
リポ蛋白質(LDL)の蛋白質量5μg、10μg、50μg、150μgに対して、2.5、5、10nmolの4HNEを添加し、37℃にて2時間反応させた。反応後、前記超遠心分離後と同様に、0.3mmol/lのEDTA−2Naを含む0.15mol/lのNaCl溶液によって、4℃、12〜18時間透析した。これを実施例2に基づいた方法によって測定を行ったところ、リポ蛋白質当たりの酸化修飾が、添加4HNE濃度に応じて変化することが示された。同一4HNE濃度で比較すると、LDLが少なくなるにつれ、より高いLDLの酸化が確認され、本法が、酸化度を測定する効率的な方法であることを確認した。図3は、横軸にリポ蛋白質量(150μg、50μg、10μg、5μg)縦軸に450nmの吸光度(酸化状態)を示した。結果は、LDLあたりの酸化度を吸光度で示している。各4HNE量(図の下から2.5nmol、5nmol、10nmol)において酸化度の変異が確認された。
【実施例4】
(酸化度の高いLDLのマクロファージへの取り込み)
ヒト健常者のマクロファージを使い4HNE修飾による酸化度の違いによる酸化LDLのマクロファージへの取り込み量を検定した(図4)。
実験は、実施例3に準じてLDL(150μg)を4HNE(無添加、10nmol、100nmol)で酸化修飾した。この酸化LDL(10μl)を用い、マクロファージ(1x10cells/dish)と接触させ、2時間培養(Macrophage−SFM Medium培地、培養条件37℃、5%CO)した。培養後、マクロファージへの酸化LDLの取り込み量をFITC標識抗アポB抗体によって検定した。標識物質のみ添加(図中、FITC−BKと表示)、4HNE無添加LDL(図中、BKと表示)、10nmolの4HNEによる酸化LDL(図中、10nmol:4HNE−LDLと表示)、100nmolの4HNEによる酸化LDL(図中、100nmol:4HNE−LDLと表示)の結果、100nmolで酸化したLDLはあきらかに10nmolで酸化したものよりマクロファージ内への取り込みが優位であった。また、10nmolで酸化したLDLは、ブランク(無添加)に対してマクロファージ内への取り込みが優位であった。この結果、LDLの酸化度合いによって、マクロファージへのLDLの取り込みが促進され、結果泡沫細胞の形成を促していくこととなり循環器系疾患への大きな関与が明確となった。かくして、本発明の酸化リポ蛋白質の酸化度を測定することの新規な意義が証明された。
【実施例5】
(抗体を変更させたリポ蛋白質の酸化度の測定)
図5は、酸化HDLについて、実施例2の系での測定結果を示す。固相には、抗アポA1抗体が固定化され、検体(血清)との接触後、抗4HNE抗体でサンドイッチさせ、標識化後吸光度を測定した結果である。横軸は、serum(血清)のみ、10nmolの4HNEによる酸化修飾血清(図中、10nmol 4HNE−serum)、100nmolの4HNEによる酸化修飾血清(図中、100nmol 4HNE−serum)、縦軸は450nmの吸光度である。酸化方法は、リポ蛋白質(LDL)の代わりに血清を用いる以外は実施例3に準じた。この結果、HDLについても、本発明の系を使い、その酸化度が判定できることを示した。
図6は、LDLを銅イオン共存下で酸化処理し、実施例2の系で測定した結果を示す。銅イオンは25μM添加し、反応条件は、弱い酸化状態として4℃と強い酸化状態として37℃で、72時間処理した。その後の透析は、実施例3に準じた。図の横軸は、LDLのみ(LDL−BK)、4℃で処理(LDL−Cu−4℃)及び37℃で処理(LDL−Cu−37℃)を表し、縦軸は450nmの吸光度を表す。この結果、銅酸化による酸化状態の変化においても酸化度合いを判定できることを示した。
図7は、上記で用いた銅酸化サンプルを用い、酸化修飾のマーカーをMDAにしておこなったものである。実験法は、抗4NHE抗体の代わりに抗MDA抗体を用いる以外は、実施例2に準じた。図の横軸は、LDLのみ(LDL−BK)、4℃で処理(LDL−Cu−4℃)及び37℃で処理(LDL−Cu−37℃)を表し、縦軸は450nm吸光度を表す。この結果、MDAが酸化修飾した場合も、その酸化度を本発明により、検定できることを確認した。
【実施例6】
(臨床例)
実施例2の測定法により測定した酸化LDL値(酸化度)の結果を図8に示した。患者の透析前後のLDL酸化度は測定の結果、透析後に酸化度が上昇していることが確認された。縦軸の酸化リポ蛋白質(U/mg)は、検量線より得られた各患者の酸化リポ蛋白質濃度(U/ml)を各アポB濃度(mg/dl)で補正して得られた値である。
【実施例7】
(抗体を変更させたリポ蛋白質の酸化度の測定)
図9は、酸化Lp(a)について、実施例2の系に準じた方法での測定結果を示す。固相には、抗アポ(a)抗体が固定化され、検体(血清)との接触後、抗4HNE抗体でサンドイッチさせ、標識化後吸光度を測定した結果である。横軸は、serum(血清)のみ、10nmolの4HNEによる酸化修飾血清(図中、10nmol 4HNE−serum)、100nmolの4HNEによる酸化修飾血清(図中、100nmol 4HNE−serum)、200nmolの4HNEによる酸化修飾血清(図中、200nmol 4HNE−serum)、縦軸は450nmの吸光度である。酸化方法は、リポ蛋白質(LDL)の代わりに血清を用いる以外は実施例3に準じた。この結果、Lp(a)についても、本発明に係る測定法を使い、その酸化度が判定できることを示した。
【実施例8】
(抗体を変更させたリポ蛋白質の酸化度の測定)
図10は、LDLを銅イオン共存下で酸化処理し、酸化修飾のマーカーを8−イソプロスタンにしておこなったものである。実験法は、抗4NHE抗体の代わりに抗8−イソプロスタン抗体を用いる以外は実施例2の系に準じておこなったものである。銅イオンは50μM添加し、反応条件は、弱い酸化状態として4℃と強い酸化状態として37℃で、48時間処理した。その後の透析は、実施例3に準じた。図の横軸は、LDLのみ(LDL−BK)、4℃で処理(LDL−Cu−4℃)及び37℃で処理(LDL−Cu−37℃)を表し、縦軸は450nmの吸光度を表す。この結果、8−イソプロスタンが酸化変性修飾した場合も、その酸化度を本発明により、検定できることを確認した。
【実施例9】
(インスリン標準溶液の調製)
インスリン(SIGMA社)質量100μgに対して、1、5、10、20、50、100nmolの4HNEを添加し37℃にて2時間反応させた(酸化修飾処理)。反応完了後、PBS溶液によって4℃、12〜18時間透析した。透析終了後、これを標準溶液とした。
【実施例10】
(酸化インスリン測定系の構築)
1)(検体と固相抗体の接触)
抗インスリン抗体が結合しているマイクロプレート(医学生物学研究所社)に標準溶液もしくは検体試料を100μlずつ加えた。これを室温で2時間振とう反応させ、その後、洗浄用緩衝液で6回洗浄を行った。
2)(酸化物質抗体による修飾)
抗4HNEモノクローナル抗体(日本油脂株式会社)をビオチン標識し、この抗体を抗体用希釈溶液によって5,000倍に希釈した。これを、マイクロプレートに100μlずつ加え、室温で90分振とう反応させた。その後、洗浄用緩衝液で6回洗浄を行った。
3)(標識化)
Streptavidin−horseradish peroxidase(Amersham Biosciences社)を、抗体用希釈溶液によって5000倍に希釈した。これを、マイクロプレートに100μlずつ加え、室温で1時間振とう反応させた。その後、洗浄用緩衝液で6回洗浄を行った。
4)(測定)
TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社)を、マイクロプレートに100μlずつ加えて発色させ、10〜30分後に1Mリン酸100μlを加えて反応を停止させた。そして、450nmによって吸光度を測定した。
5)(検量線)
以上の系を使い、合成した4HNE酸化インスリンを標準品とした典型的な検量線を得た(図11)。図11は横軸にインスリンの4HNE酸化量(図中、4HNE−Insulinと表示)、縦軸に450nmの吸光度を示した。
これにより、インスリン酸化度の測定が可能であることが確認できた。
【実施例11】
(インスリン酸化状態の検定)
インスリン(SIGMA社)100μgに対して、0.1、1、10nmolの4HNEを添加し、37℃にて2時間反応させた。反応後、PBS溶液によって、4℃、12〜18時間透析した。これを実施例10に基づいた方法によって測定を行ったところ、インスリン当りの酸化修飾が、添加4HNE濃度に応じて変化することが示された。図12は、横軸は、インスリンのみ(図中、Insulin)、0.1nmolの4HNEによる酸化修飾インスリン(図中、0.1nmol 4HNE−Insulin)、1nmolの4HNEによる酸化修飾インスリン(図中、1nmol 4HNE−Insulin)、10nmolの4HNEによる酸化修飾インスリン(図中、10nmol 4HNE−Insulin)、縦軸は450nmの吸光度である。各4HNE量において酸化度の変異が確認された。
【実施例12】
(酸化度の異なるインスリンとインスリンレセプターとの反応性)
ヒト健常者の赤血球を使い4HNE修飾による酸化度の違いによる酸化インスリンと赤血球上のインスリンレセプターとの反応性を検定した(図13)。
実験は、実施例11に準じてインスリン(50μg)を4HNE(無添加、10nmol、20nmol、50nmol)で酸化修飾した。この酸化インスリン(20μl)を用い、赤血球(1x10cells/tube)と接触させ、15℃で2.5時間反応させた。反応後、赤血球上インスリンレセプターと酸化インスリンの反応(結合)性をヨウ素標識抗ヒトインスリン抗体(125I−Insulin抗体)によって検定した。横軸は、インスリンのみ(図中、Insulin)、10nmolの4HNEによる酸化修飾インスリン(図中、10nmol 4HNE−Insulin)、20nmolの4HNEによる酸化修飾インスリン(図中、20nmol 4HNE−Insulin)、50nmolの4HNEによる酸化修飾インスリン(図中、50nmol 4HNE−Insulin)、縦軸はインスリンレセプターとの結合率(%)である。この結果、インスリンのみのインスリンレセプターへの結合率に対して、4HNEによる酸化修飾量が増加するに従って、酸化修飾インスリンとインスリンレセプターの反応性は低下する傾向が認められた。よって、インスリンの酸化度合いによって、インスリンレセプターとの反応性が抑制され、結果インスリン抵抗性の形成を促していくこととなり、糖尿病、循環器系疾患への大きな関与が明確となった。かくして、本発明の酸化インスリンの酸化度を測定することの新規な意義が証明された。
【実施例13】
(抗体を変更させたインスリンの酸化度の測定)
図14は、ヒト血清を銅イオン共存下で酸化処理し、実施例10の系で測定した結果を示す。銅イオンは50μM添加し、反応条件は、弱い酸化状態として4℃と強い酸化状態として37℃で、48時間処理した。その後の透析は、実施例11に準じた。図の横軸は、血清のみ(serum−BK)、4℃で処理(serum−Cu−4℃)及び37℃で処理(serum−Cu−37℃)を表し、縦軸は450nmの吸光度を表す。この結果、銅酸化による酸化状態の変化においてもインスリンの酸化度合いを判定できることを示した。
図15は、上記で用いた銅酸化サンプルを用い、酸化修飾のマーカーをMDAにしておこなったものである。実験法は、抗4NHE抗体ビオチン標識の代わりに抗MDA抗体ビオチン標識とDAKO EnVision+TMperoxidase,Mouse(DAKO社)を用いる以外は、実施例10に準じた。図の横軸は、血清のみ(serum−BK)、4℃で処理(serum−Cu−4℃)及び37℃で処理(serum−Cu−37℃)を表し、縦軸は450nm吸光度を表す。この結果、MDAが酸化修飾した場合も、その酸化度を本発明により、検定できることを確認した。
【実施例14】
(レプチン標準溶液の調製)
レプチン(R&D SYSTEMS社)10μgに対して、5、10、20、50、100nmolの4HNEを添加し、37℃にて2時間反応させた(酸化修飾処理)。反応完了後、PBS溶液によって4℃、12〜18時間透析した。透析終了後、これを標準溶液とした。
【実施例15】
(酸化レプチン測定系の構築)
1)(検体と固相抗体の接触)
抗レプチン抗体が結合しているマイクロプレート(R&D SYSTEMS社)にイムノグロブリン溶液50μlをマイクロプレートに入れ、標準溶液もしくは検体試料を50μlずつ加えた。これを室温で2時間振とう反応させ、その後、洗浄用緩衝液で6回洗浄を行った。
2)(酸化物質抗体による修飾)
抗4HNEモノクローナル抗体(日本油脂株式会社)をビオチン標識し、この抗体を抗体用希釈溶液によって5,000倍に希釈した。これを、マイクロプレートに100μlずつ加え、室温で90分振とう反応させた。その後、洗浄用緩衝液で6回洗浄を行った。
3)(標識化)
Streptavidin−horseradish peroxidase(Amersham Biosciences社)を、抗体用希釈溶液によって5000倍に希釈した。これを、マイクロプレートに100μlずつ加え、室温で1時間振とう反応させた。その後、洗浄用緩衝液で6回洗浄を行った。
4)(測定)
TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社)を、マイクロプレートに100μlずつ加えて発色させ、10〜30分後に1Mリン酸100μlを加えて反応を停止させた。そして、450nmによって吸光度を測定した。
5)(検量線)
以上の系を使い、合成した4HNE酸化レプチンを標準品とした典型的な検量線を得た(図16)。図16は横軸にレプチンの4HNE酸化量(図中、4HNE−Leptinと表示)、縦軸に450nmの吸光度を示した。
これにより、レプチン酸化度の測定が可能であることが確認できた。
【実施例16】
(レプチン酸化状態の検定)
レプチン(R&D SYSTEMS社)10μgに対して、10、50、100nmolの4HNEを添加し、37℃にて2時間反応させた。反応後、PBS溶液によって、4℃、12〜18時間透析した。これを実施例15に基づいた方法によって測定を行ったところ、レプチン当たりの酸化修飾が、添加4HNE濃度に応じて変化することが示された。図17は、横軸は、レプチンのみ(図中、Leptin)、10nmolの4HNEによる酸化修飾レプチン(図中、10nmol 4HNE−Leptin)、50nmolの4HNEによる酸化修飾レプチン(図中、50nmol 4HNE−Leptin)、100nmolの4HNEによる酸化修飾レプチン(図中、100nmol 4HNE−Leptin)、縦軸は450nmの吸光度である。各4HNE量において酸化度の変異が確認された。
【実施例17】
(抗体を変更させたレプチンの酸化度の測定)
図18は、ヒト血清を銅イオン共存下で酸化処理し、実施例15の系で測定した結果を示す。銅イオンは50μM添加し、反応条件は、弱い酸化状態として4℃と強い酸化状態として37℃で、48時間処理した。その後の透析は、実施例16に準じた。図の横軸は、血清のみ(serum−BK)、4℃で処理(serum−Cu−4℃)及び37℃で処理(serum−Cu−37℃)を表し、縦軸は450nmの吸光度を表す。この結果、銅酸化による酸化状態の変化においてもレプチンの酸化度合いを判定できることを示した。
図19は、上記で用いた銅酸化サンプルを用い、酸化修飾のマーカーをMDAにしておこなったものである。実験法は、抗4NHE抗体ビオチン標識の代わりに抗MDA抗体ビオチン標識を用いる以外は、実施例15に準じた。図の横軸は、血清のみ(serum−BK)、4℃で処理(serum−Cu−4℃)及び37℃で処理(serum−Cu−37℃)を表し、縦軸は450nm吸光度を表す。この結果、MDAが酸化修飾した場合も、その酸化度を本発明により、検定できることを確認した。
【実施例18】
(酸化度の異なるレプチンとレプチンレセプターとの反応性)
ヒトレプチンレセプターを用いて、4HNE修飾による酸化度の違いによる酸化レプチンとレプチンレセプターとの反応性を検定した(図20)。
実験は、Recombinant Human Leptin R/Fc Chimera(R&D SYSTEMS社)10μg/mlを公知手法に従ってマイクロプレートに結合させ、実験に用いた。酸化レプチンは、実施例17で作製したものを用い、固相化したレプチンレセプターと接触させ、室温で2時間振とう反応させた。反応後、レプチンレセプターと酸化レプチンの反応(結合)性を抗レプチン抗体によって検定した。図の横軸は、血清のみ(serum−BK)、4℃で処理(serum−Cu−4℃)及び37℃で処理(serum−Cu−37℃)を表し、縦軸はレプチンレセプターとの結合率(%)である。この結果、血清中のレプチンとレプチンレセプターへの結合率に対して、酸化状態が強くなるのに従って、酸化修飾レプチンとレプチンレセプターの反応性は低下する傾向が認められた。よって、レプチンの酸化度合いによって、レプチンレセプターとの反応性が抑制され、結果レプチン抵抗性の形成を促していくこととなり、肥満、糖尿病への大きな関与が明確となった。かくして、本発明の酸化レプチンの酸化度を測定することの新規な意義が証明された。
上記結果により、本発明による測定対象物の酸化度の測定方法は、生活習慣病又は循環器系疾患の危険因子の新規判定方法、測定法に使用する試薬を構成してなる試薬キットの提供を可能にした。さらには、本発明方法の酸化度の測定キット又は酸化度の測定結果の情報を自然法則を利用した媒体に担持した商業用媒体の提供も可能にした。
【産業上の利用可能性】
本発明は、測定対象物の酸化度という新概念を臨床検査の場に提供するものである。この測定法により、糖尿病、肥満などの生活習慣病又は動脈硬化症などの循環器系疾患のリスクファクターについての新規な臨床検査手技を提供する。
また、以上のような測定法に使用する試薬を構成してなる試薬キットの提供は、新規な臨床診断手段を提供する。さらには、本発明方法の酸化度の測定キット又は酸化度の測定結果の情報を自然法則を利用した媒体に担持した商業用媒体を提供する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする検体中の測定対象物の酸化度を測定する方法:
(1)酸化度の測定対象となる測定対象物を固相に捕捉する工程、
(2)「前記(1)の捕捉された測定対象物」と「脂質の酸化により生成する抗原性物質を認識する抗体」を接触反応させる工程、
(3)前記(2)で反応した抗体量によって、測定対象物当りの該抗原性物質量を定量・判定する工程。
【請求項2】
測定対象物が、以下のいずれか1から選ばれる請求項1の測定方法。
(1)蛋白質
(2)脂質
(3)糖蛋白質
(4)リポ蛋白質
(5)前記(1)〜(4)の少なくとも1つを含む複合体
【請求項3】
検体中の酸化度の測定対象となる測定対象物が、酸化により該測定対象物のレセプターとの結合力に変化をもたらすことを特徴とする請求項1の測定方法。
【請求項4】
検体中の酸化度の測定対象物が、以下のいずれか1から選ばれる請求項1の測定方法。
(1)低密度リポ蛋白質(LDL)
(2)高密度リポ蛋白質(HDL)
(3)超低密度リポ蛋白質(VLDL)
(4)リポ蛋白質(a)(Lp(a))
(5)インスリン
(6)レプチン
【請求項5】
脂質の酸化により生成する抗原性物質が、以下のいずれか1から選ばれる請求項1〜4のいずれか1に記載の測定方法。
(1)4−ヒドロキシ−2−ノネナール(4HNE)
(2)マロンジアルデヒド(MDA)
(3)8−イソプロスタン
(4)酸化リン脂質
(5)酸化トリグリセリド
(6)酸化コレステロール
【請求項6】
検体中の酸化度の測定対象物であるリポ蛋白質中の蛋白質部分が、以下のいずれか1から選ばれる請求項1〜5のいずれか1に記載の測定方法。
(1)アポB−100
(2)アポA1
(3)アポ(a)
【請求項7】
以下のいずれか1から選ばれる検体中の酸化度の測定対象物であるリポ蛋白質中の蛋白質部分を認識する抗体を使って測定対象物を捕捉する請求項1〜6のいずれか1から選ばれる測定方法。
(1)アポB−100に対する抗体
(2)アポA1に対する抗体
(3)アポ(a)に対する抗体
【請求項8】
以下のいずれか1から選ばれる検体中の酸化度の測定対象物である蛋白質を認識する抗体を使って測定対象物を捕捉する請求項1〜5のいずれか1から選ばれる測定方法。
(1)インスリンに対する抗体
(2)レプチンに対する抗体
【請求項9】
下記(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする検体中の測定対象物の酸化度を測定する方法:
(1)アポB−100に対する抗体、アポA1に対する抗体、又はアポ(a)に対する抗体を固相に結合する工程、
(2)前記(1)の固相化抗体と検体を接触させ、検体中の低密度リポ蛋白質(LDL)、高密度リポ蛋白質(HDL)、超低密度リポ蛋白質(VLDL)、又はリポ蛋白質(a)(Lp(a))を捕捉する工程、
(3)前記(2)で捕捉された各リポ蛋白質に対して、4HNE、MDA、8−イソプロスタン、酸化リン脂質、酸化トリグリセリド又は酸化コレステロールを認識する抗体を接触反応させる工程、
(4)前記(3)で反応した抗体量により、4HNE、MDA、8−イソプロスタン、酸化リン脂質、酸化トリグリセリド又は酸化コレステロールを定量する工程、
(5)捕捉された各リポ蛋白質当りの4HNE、MDA、8−イソプロスタン、酸化リン脂質、酸化トリグリセリド又は酸化コレステロール量を求め、これを測定対象物である各リポ蛋白質の酸化度のマーカーとして判定する工程。
【請求項10】
下記(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする検体中の測定対象物の酸化度を測定する方法:
(1)インスリン又はレプチンに対する抗体を固相に結合する工程、
(2)前記(1)の固相化抗体と検体を接触させ、検体中のインスリン又はレプチンを捕捉する工程、
(3)前記(2)で捕捉された各蛋白質に対して、4HNE又はMDAを認識する抗体を接触反応させる工程、
(4)前記(3)で反応した抗体量により、4HNE又はMDAを定量する工程、
(5)捕捉された各蛋白質当りの4HNE又はMDA量を求め、これを測定対象物である各蛋白質の酸化度のマーカーとして判定する工程。
【請求項11】
検体が、ヒトまたは動物の以下のいずれか1から選ばれる請求項1〜10のいずれか1に記載の方法。
(1)血液
(2)尿
(3)血漿
(4)血清
(5)髄液
(6)唾液
(7)汗
(8)涙液
(9)腹水若しくは羊水
(10)精液
(11)大便
(12)組織・細胞の抽出液
(13)酸化された蛋白質、脂質、糖蛋白質、リポ蛋白質又は/及びそれらの複合体を含む可能性のある生体試料
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一に記載の測定法による、循環器系疾患危険因子又は生活習慣病危険因子の判定方法。
【請求項13】
請求項12に記載の循環器系疾患又は生活習慣病が、以下のいずれか1から選ばれる判定方法。
(1)動脈硬化性疾患
(2)虚血性心疾患
(3)脳血管疾患
(4)高血圧症
(5)高脂血症
(6)糖尿病
(7)肥満
【請求項14】
下記(1)及び/又は(2)の要素を含むことを特徴とする、検体中の測定対象物の酸化度の測定キット:
(1)酸化度の測定対象となる測定対象物を捕捉する固相、
(2)脂質の酸化により生成する抗原性物質を認識する抗体。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1の測定方法で得られた、酸化度の測定結果の情報を自然法則を利用した媒体に担持した商業用媒体。

【国際公開番号】WO2004/065961
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508122(P2005−508122)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000582
【国際出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2003年2月15日 第13回生物試料分析科学会大会事務局発行の「第13回生物試料分析科学会大会抄録」に発表
【出願人】(591122956)株式会社三菱化学ビーシーエル (45)