説明

酸化物超電導バルク体及びその製造方法

【課題】 極低温への繰り返し冷却の耐久性が高い保護膜を有する酸化物超電導バルク体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 表面保護膜2を有する酸化物超電導バルク体1であって、前記表面保護膜2が、前記酸化物超電導バルク体1の上に形成される第1樹脂層3と、当該第1樹脂層3の上に形成される第2樹脂層4とからなる酸化物超電導バルク体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイールや超電導軸受、超強力バルク磁石等に用いられる酸化物超電導バルク体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物超電導体は、空気中の水分や二酸化炭素と反応し、徐々に劣化することが知られている。線材のような応用では、金属被覆シース材が酸化物超電導体と水分や二酸化炭素との間の分離機能の役割を担うが、バルク(塊状)体としての応用でも、同様の機能のものが求められる。特許文献1には、表面に硬化型樹脂を含む経年劣化防止用の保護膜を形成した酸化物超電導体バルクが開示されており、保護膜によって保護膜内にある超電導体が大気中に含まれる水や二酸化炭素の影響を受ける虞を完全に除去できるとある。硬化型樹脂の種類として、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、メタクリル酸エステル、フッ素樹脂、アクリルゴムが、例として挙げられている。
【0003】
【特許文献1】特開平3−69576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、酸化物超電導バルク体の表面に樹脂による保護膜を設けることで、酸化物超電導バルク体が水分や二酸化炭素と触れるのを避けることができる。しかしながら、酸化物超電導バルク体は液体窒素温度(77K)等の極低温に冷却して用いられるが、酸化物超電導体を常温から極低温に冷却することを繰り返すと、酸化物超電導バルク体の表面に設けた樹脂製の保護膜に亀裂が入ったり、保護膜が剥離したりするという問題があった。亀裂が入った保護膜や剥離した保護膜では、酸化物超電導バルク体が水分や二酸化炭素と触れることを避けることができず、保護膜の経年劣化防止機能は著しく低下する。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題を解決し、極低温への繰り返し冷却の耐久性が高い保護膜を有する酸化物超電導バルク体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の酸化物超電導バルク体は、以下のとおりである。
(1) 表面保護膜を有する酸化物超電導バルク体であって、前記表面保護膜が、前記酸化物超電導バルク体の上に形成される第1樹脂層と、当該第1樹脂層の上に形成される第2樹脂層とからなることを特徴とする酸化物超電導バルク体。
(2) 前記第2樹脂層が、フッ素系樹脂であることを特徴とする(1)に記載の酸化物超電導バルク体。
(3) 前記第1樹脂層が、エポキシ系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂のいずれか1種であることを特徴とする(1)に記載の酸化物超電導バルク体。
(4) 表面保護膜を有する酸化物超電導バルク体であって、前記表面保護膜が、2種以上の樹脂を混合させた混合系樹脂層であることを特徴とする酸化物超電導バルク体。
(5) 前記混合系樹脂層が、少なくともフッ素系樹脂を含むものであることを特徴とする(4)に記載の酸化物超電導バルク体。
(6) 前記混合系樹脂層において、前記フッ素系樹脂と混合される樹脂が、エポキシ系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂のいずれか1種であることを特徴とする(5)に記載の酸化物超電導バルク体。
(7) 前記酸化物超電導バルク体が、単結晶状のREBa2Cu3x相(REはY又は希土類元素から選ばれた少なくとも1つの元素)中にRE2BaCuO5相が微細分散した酸化物超電導体であることを特徴とする(1)に記載の酸化物超電導バルク体。
【0007】
また、本発明の酸化物超電導バルク体の製造方法は、以下のとおりである。
(8) (1)〜(7)のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルク体を製造する製造方法であって、前記表面保護膜を形成する樹脂層を硬化する温度が、100℃(373K)以上300℃(573K)以下であることを特徴とする酸化物超電導バルク体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、極低温への繰り返し冷却の耐久性が高い保護膜を有する酸化物超電導バルク体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について図に沿って説明する。
図1は、本発明の実施形態における酸化物超電導バルク体の構造を示す断面図である。図1では、酸化物超電導バルク体1の表面に表面保護膜2が設けられており、表面保護膜2は第1樹脂層3と第2樹脂層4から形成されている。第1樹脂層3は、酸化物超電導バルク体1との接着機能を有する樹脂層で、第2樹脂層4は、極低温への繰り返し冷却における第1樹脂層3の亀裂進展防止機能を有する樹脂層である。
【0010】
第2樹脂層4の樹脂としては、樹脂の中で極低温でも比較的伸びや弾性を示すフッ素系樹脂が好ましく、第1樹脂層3としては、非フッ素系樹脂が好ましい。第1樹脂層の非フッ素系樹脂としては、酸化物超電導バルク体とフッ素系樹脂の両方との接着性が良好である、エポキシ系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂のいずれか1種がより好ましい。
【0011】
図1のような構造にすることにより、第1樹脂層3が酸化物超電導バルク体1の表面に強固に接着する。さらに、極低温に冷却した際に、第1樹脂層3が弾性を失い、酸化物超電導バルク体1との間の熱膨張率差に起因する熱歪みの影響で第1樹脂層3にミクロな亀裂が発生しても、極低温でも伸びや弾性を有する第2樹脂層4が、第1樹脂層3のミクロな亀裂の進展を防ぐため、表面保護膜2を貫通する亀裂は発生しない。したがって、極低温への冷却を繰り返しても、表面保護膜2は、酸化物超電導バルク体1が水分や二酸化炭素と触れるのを避ける機能を失わないので、本発明により、極低温への繰り返し冷却の耐久性が高い保護膜を有する酸化物超電導バルク体を提供することができる。
【0012】
比較のため、図3に、従来技術における樹脂で形成された表面保護膜2を有する酸化物超電導バルク体1を示す。従来は、表面保護膜2が1種類の樹脂で形成されていたが、樹脂は極低温で伸びや弾性を失うため、酸化物超電導バルク体1との間の熱膨張率差に起因する熱歪みの影響で表面保護膜2にミクロな亀裂が発生し、極低温への冷却を繰返し行うと、表面保護膜2に発生したミクロな亀裂がマクロな亀裂に進展していた。また、樹脂の中で極低温でも比較的伸びや弾性を示すフッ素系樹脂を表面保護膜2に用いた場合には、亀裂は発生し難くなるが、酸化物超電導バルク体1との接着性が低いために、極低温への冷却を繰り返すと、表面保護膜2が剥離していた。
【0013】
したがって、この従来技術における樹脂で形成された表面保護膜2を有する酸化物超電導バルク体1では、極低温への冷却を繰り返すと表面保護膜2に亀裂が入ったり、表面保護膜2が剥離したりするという問題があったため、従来技術における表面保護膜2では、酸化物超電導バルク体1が水分や二酸化炭素と触れるのを避ける機能が失われていた。
【0014】
図2は、本発明の他の実施形態における酸化物超電導バルク体の構造を示す断面図である。図2では、酸化物超電導バルク体1の表面に表面保護膜2が設けられており、表面保護膜2は2種以上の樹脂を混合させた混合系樹脂層で形成されている。
【0015】
混合系樹脂層を形成する樹脂としては、フッ素系樹脂と非フッ素系樹脂との混合系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂は、表面保護膜2の極低温での弾性機能を保持する役割を担うのであり、混合系樹脂におけるフッ素系樹脂の割合は20%以上が好ましい。また、フッ素系樹脂が多すぎても酸化物超電導バルク体1との接着性が低下するので、混合系樹脂におけるフッ素系樹脂の割合は80%以下が好ましい。したがって、混合系樹脂におけるフッ素系樹脂の好ましい割合は20%以上80%以下である。さらに、フッ素系樹脂と混合する非フッ素系樹脂としては、酸化物超電導バルク体とフッ素系樹脂の両方との接着性が良好である、エポキシ系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂がより好ましい。
【0016】
図2のような構成にすることにより、図1の構造のような表面保護膜2に第1樹脂層3と第2樹脂層4との間に明瞭な境界は存在しないが、接着性が高い非フッ素系樹脂の層が酸化物超電導バルク体1側に形成され易く、その外側にフッ素系樹脂層が形成され易く、結果として図1の構造の例と同じように、極低温への繰り返し冷却の耐久性が高い酸化物超電導バルク体1が提供可能となる。
【0017】
さらに、図2の構造の例では、酸化物超電導バルク体1の表面に樹脂層を形成する工程が1回で済み、製造工程の簡素化を図れるというメリットだけでなく、第1樹脂層3と第2樹脂層4との間の境界が不明瞭であることは、第1樹脂層3と第2樹脂層4との間の接着性がより強固になり、第1樹脂層3と第2樹脂層4との間で剥離することもなくなるというメリットを有することにもなる。
【0018】
本発明に用いる酸化物超電導バルク体は、酸化物超電導体であれば特に材料系を制限するものではなく、RE−Ba−Cu−O(REはY又は希土類元素から選ばれた少なくとも1つの元素)系酸化物超電導体、Bi系酸化物超電導バルク体等でもよい。
【0019】
焼結法で製造された酸化物超電導バルク体は多結晶体であり、その熱膨張率が等方的であるため、1種類の樹脂を用いた表面保護膜の場合においても、樹脂層の亀裂の発生をある程度抑制するために、樹脂中にフィラー材等を混入させ、混入量を調整し、酸化物超電導バルク体と樹脂層の熱膨張率を揃えるという手段が有効かもしれないが、単結晶状の酸化物超電導バルク体に対しては、その熱膨張率に異方性があり、そのような手段は難しい。酸化物超電導バルク体の中でも、溶融法で製造された単結晶状のREBa2Cu3x相中にRE2BaCuO5相が微細分散した酸化物超電導バルク体は、臨界電流密度が高く、応用上注目されている材料であるが、本発明における表面保護膜は、そのような単結晶状の酸化物超電導バルク体の極低温での耐久性を高めるのに特に有効である。
【0020】
本発明の酸化物超電導バルク体を製造する方法としては、酸化物超電導バルク体の表面にスプレーや浸漬等の手段で液状又は粉末状の樹脂層を塗布し、その後、樹脂層を硬化させる工程がある。硬化する温度としては、常温でも効果があるが、表面保護膜と酸化物超電導バルク体との接着性を増すためには、100℃(373K)以上に加熱することが好ましい。しかし、300℃(573K)よりも高い温度で加熱すると、表面酸素の欠乏や熱衝撃のために酸化物超電導バルク体が劣化する可能性があり、工程中の雰囲気を制御したり、加熱速度を精密に制御したりと、工程が煩雑になる。したがって、樹脂層を形成するための焼成温度としては、100℃(373K)以上300℃(573K)以下が好ましい。また、酸化物超電導バルク体の表面に凹凸構造を設けたり、樹脂層形成前に研磨紙やサンドブラスト等で酸化物超電導バルク体の表面粗度を研磨紙で粗くしたりすることで、表面保護膜と酸化物超電導バルク体との接着性を増すことができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
DyBa2Cu3x相とDy2BaCuO5相がモル比で75:25の割合になるように原料粉を調整し、成形体を1423Kまで加熱し半溶融状態にした後、種結晶を用い、1273K付近を徐冷することで結晶成長させるという溶融法により、直径46mm、厚さ15mmで、単結晶状のDyBa2Cu3x相中に平均粒径1.2μmのDy2BaCuO5相が微細分散したDy−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体を作製した。このDy−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体の表面に、第1樹脂層として厚さ50μm程度のエポキシ系樹脂を塗布し、150℃で30分間硬化した後、第2樹脂層として厚さ100μm程度のフッ素系樹脂を塗布し、350℃で30分間硬化した試料Aを製造した。比較のため、厚さ150μm程度のエポキシ系樹脂だけを塗布した試料Bと、厚さ150μm程度のフッ素系樹脂だけを塗布した試料Cを製造し、極低温耐久性試験を実施した。この極低温耐久性試験では、常温の試料を液体窒素に浸漬して5分間保持した後、液体窒素から取り出し、3時間以上常温で放置した後、再度液体窒素に浸漬するということを繰り返した。
【0022】
試料Bは、冷却1回目から目視で観測される大きさの亀裂が発生し、冷却9回目で表面保護膜の一部が欠けた。試料Cは、冷却3回目で表面保護膜の一部が酸化物超電導バルク体から剥離し、浮いたような状態になり、冷却15回目で剥離部分が破損した。しかし、試料Aは、液体窒素への冷却を50回繰り返しても表面保護膜に劣化は見られなかった。
【0023】
(実施例2)
GdBa2Cu3x相とGd2BaCuO5相がモル比で80:20の割合で、銀を20質量%添加した原料粉を調整し、成形体を1373Kまで加熱し半溶融状態にした後、種結晶を用い、1273K付近を徐冷することで結晶成長させるという溶融法により、直径30mm、厚さ10mmで、単結晶状のGdBa2Cu3x相中に平均粒径0.9μmのGd2BaCuO5相が微細分散したGd−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体を作製した。このGd−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体の表面に、第1樹脂層として厚さ100μm程度のポリイミドアミド系樹脂を塗布し、200℃で20分間硬化した後、第2樹脂層として厚さ100μm程度のフッ素系樹脂を塗布し、350℃で30分間硬化した試料Dを製造した。硬化にあたっては,350℃まで3時間かけてゆっくりと昇温することで、酸化物超電導バルク体への熱衝撃を緩和した。
【0024】
試料Dについて、実施例1と同様に、液体窒素への浸漬を繰り返す極低温耐久性試験を実施したが、冷却を50回繰り返しても表面保護膜に劣化は見られなかった。
【0025】
(実施例3)
GdとDyがモル比で50:50の割合で、(Gd0.5Dy0.5)Ba2Cu3x相と(Gd0.5Dy0.52BaCuO5相がモル比で80:20の割合で、銀を10質量%添加した原料粉を調整し、成形体を1423Kまで加熱し半溶融状態にした後、種結晶を用い、1273K付近を徐冷することで結晶成長させるという溶融法により、直径60mm、厚さ15mmで、単結晶状の(Gd0.5Dy0.5)Ba2Cu3x相中に平均粒径1.1μmの(Gd0.5Dy0.52BaCuO5相が微細分散した(Gd0.5Dy0.5)−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体を作製した。この(Gd0.5Dy0.5)−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体の表面に、第1樹脂層として厚さ100μm程度のポリエーテルスルホン系樹脂を塗布し、150℃で60分間硬化した後、第2樹脂層として厚さ50μm程度のフッ素系樹脂を塗布し、250℃で30分間硬化した試料Eを製造した。
【0026】
試料Eについて、実施例1と同様に、液体窒素への浸漬を繰り返す極低温耐久性試験を実施したが、冷却を50回繰り返しても表面保護膜に劣化は見られなかった。
【0027】
(実施例4)
HoBa2Cu3x相とHo2BaCuO5相がモル比で75:25の割合になるように原料粉を調整し、成形体を1423Kまで加熱し半溶融状態にした後、種結晶を用い、1273K付近を徐冷することで結晶成長させるという溶融法により、縦40mm、横40mm、厚さ15mmで、単結晶状のHoBa2Cu3x相中に平均粒径1.5μmのHo2BaCuO5相が微細分散したHo−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体を作製した。このHo−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体の表面に、厚さ100μm程度のフッ素系樹脂とエポキシ系樹脂を質量比で50:50の割合で混合した樹脂を塗布し、200℃で30分間硬化した試料Fを製造した。
【0028】
試料Fについて、実施例1と同様に、液体窒素への浸漬を繰り返す極低温耐久性試験を実施したが、冷却を50回繰り返しても表面保護膜に劣化は見られなかった。
【0029】
(実施例5)
GdBa2Cu3x相とGd2BaCuO5相がモル比で70:30の割合で、銀を15質量%添加した原料粉を調整し、成形体を1373Kまで加熱し半溶融状態にした後、種結晶を用い、1273K付近を徐冷することで結晶成長させるという溶融法により、直径46mm、厚さ15mmで、単結晶状のGdBa2Cu3x相中に平均粒径1.2μmのGd2BaCuO5相が微細分散したGd−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体を作製した。このGd−Ba−Cu−O系酸化物超電導バルク体を内径46mm(肉厚5mm)、高さ15mmのステンレス製リングに嵌合したものの表面に厚さ50μm程度のフッ素系樹脂とポリイミドアミド系樹脂を質量比で70:30の割合で混合した樹脂を塗布し、220℃で30分間硬化した試料Gを製造した。
【0030】
試料Gについて、実施例1と同様に、液体窒素への浸漬を繰り返す極低温耐久性試験を実施したが、冷却を50回繰り返しても表面保護膜に劣化は見られなかった。
【0031】
(実施例6)
BiとSrとCaとCuがモル比で2:2:2:3の割合で原料粉を調整し、成形体を1173Kまで加熱し焼結法により、直径46mm、厚さ15mmの多結晶状のBi系酸化物超電導バルク体を作製した。このBi系酸化物超電導バルク体の表面に厚さ100μm程度のフッ素系樹脂とポリエーテルスルホン系樹脂を質量比で80:20の割合で混合した樹脂を塗布し、200℃で40分間硬化した試料Hを製造した。
【0032】
試料Hについて、実施例1と同様に、液体窒素への浸漬を繰り返す極低温耐久性試験を実施したが、冷却を50回繰り返しても表面保護膜に劣化は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、極低温への繰り返し冷却の耐久性が高い保護膜を有する酸化物超電導バルク体を提供することができるので、フライホイールや超電導軸受、超強力バルク磁石等への酸化物超電導バルク体の工業上の利用範囲が拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態における酸化物超電導バルク体の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態における酸化物超電導バルク体の構造を示す断面図である。
【図3】従来の酸化物超電導バルク体の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 酸化物超電導バルク体
2 表面保護膜
3 第1樹脂層
4 第2樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護膜を有する酸化物超電導バルク体であって、
前記表面保護膜が、前記酸化物超電導バルク体の上に形成される第1樹脂層と、当該第1樹脂層の上に形成される第2樹脂層とからなることを特徴とする酸化物超電導バルク体。
【請求項2】
前記第2樹脂層が、フッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導バルク体。
【請求項3】
前記第1樹脂層が、エポキシ系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂のいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導バルク体。
【請求項4】
表面保護膜を有する酸化物超電導バルク体であって、
前記表面保護膜が、2種以上の樹脂を混合させた混合系樹脂層であることを特徴とする酸化物超電導バルク体。
【請求項5】
前記混合系樹脂層が、少なくともフッ素系樹脂を含むものであることを特徴とする請求項4に記載の酸化物超電導バルク体。
【請求項6】
前記混合系樹脂層において、前記フッ素系樹脂と混合される樹脂が、エポキシ系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂のいずれか1種であることを特徴とする請求項5に記載の酸化物超電導バルク体。
【請求項7】
前記酸化物超電導バルク体が、単結晶状のREBa2Cu3x相(REはY又は希土類元素から選ばれた少なくとも1つの元素)中にRE2BaCuO5相が微細分散した酸化物超電導体であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導バルク体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルク体を製造する製造方法であって、
前記表面保護膜を形成する樹脂層を硬化する温度が、100℃(373K)以上300℃(573K)以下であることを特徴とする酸化物超電導バルク体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−321668(P2006−321668A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144263(P2005−144263)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】