説明

酸性液体調味料の製造方法

【課題】乾燥野菜の雑味が少なく、すっきりとした風味を有する液体調味料の提供。
【解決手段】乾燥野菜を酸度5〜15.5質量%の有機酸水溶液中で、酸度(質量%)/有機酸水溶液中の乾燥野菜の含有量(質量%)の比が0.68〜3、温度45〜125℃の条件で加熱処理する工程(a)、及び加熱処理後の乾燥野菜と乾燥野菜以外の成分とを混合する工程(b)を有する酸性液体調味料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性液体調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タマネギやにんにくを素材とする風味成分は嗜好性が高く、例えば、生タマネギや生にんにくを新鮮なうちに擂った時の香気は大変好まれている。これら生原料を用いた液体調味料は多数販売されているが、生原料を使用することについては、製造工程や原料管理に多くの負荷がかかるなどの課題があった。
【0003】
そこで、品質管理上の利便性から乾燥野菜を用いる技術が種々提案されている。例えば、おろし野菜と乾燥野菜とを併用して、おろし生野菜のもつ香味・食感的な特徴を損なうことなく、保存時の経時変化を抑制する方法(特許文献1)、生タマネギの経時的軟化による食感低下を補うために乾燥フレーク状タマネギを使用し、長期間食感を維持させる方法(特許文献2)、乾燥野菜を使用する上で、その作業工程を効率化するために、乾燥野菜と水の混合物を減圧する方法(特許文献3)等がある。また、特許文献3とは逆に、粒状乾燥野菜を予め水で膨潤させることなくそのまま混和し、野菜粒子の工程途中での軟化を防止し、タマネギ、にんにく、大根、ねぎなどの食感及び風味を良好にする方法(特許文献4)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−130号公報
【特許文献2】特開平1−181764号公報
【特許文献3】特開昭59−140858号公報
【特許文献4】特開2007−209295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の乾燥野菜を配合した液体調味料は、野菜の食感を維持する点では効果があるものの、乾燥野菜の雑味が生じる場合があることが判明した。また、レトルト加熱を施すと、この雑味と相俟った結果、ムレ臭(所謂レトルト臭)が強くなることが判明した。
従って、本発明は、乾燥野菜の雑味が少なく、すっきりとした風味を有する液体調味料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、乾燥野菜を配合した液体調味料について、乾燥野菜の処理条件を検討したところ、全く意外にも、雑味の生じる原因が乾燥野菜を含む原料全てを混合した後に加熱するという通常行われている方法にあることを見出した。そこで、種々の原料の組合せについて検討したところ、乾燥野菜を特定濃度の有機酸水溶液中で特定の条件で加熱処理し、その後、乾燥野菜以外の原料と混合することにより、雑味が少なくすっきりとした風味を有し、且つレトルト加熱を施した場合でもムレ臭の低減された酸性液体調味料が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、乾燥野菜を酸度5〜15.5質量%の有機酸水溶液中で、酸度(質量%)/有機酸水溶液中の乾燥野菜の乾燥物換算の含有量(質量%)の比が0.68〜3、温度45〜125℃の条件で加熱処理する工程(a)、及び加熱処理後の乾燥野菜と乾燥野菜以外の成分とを混合する工程(b)を有する酸性液体調味料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、乾燥野菜を用いても雑味が少なくすっきりとした風味を有し、且つムレ臭が低減された酸性液体調味料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
工程(a)は、乾燥野菜を酸度5〜15.5質量%(以下、単に「%」と記載する)の有機酸水溶液中で、酸度(%)/有機酸水溶液中の乾燥野菜の乾燥物換算の含有量(%)の比が0.68〜3、温度45〜125℃の条件で加熱処理する工程である。
【0010】
本発明において、工程(a)の有機酸水溶液の酸度は、更に5.5〜15%、特に7〜14.5%、殊更9〜14.5%とすることが、雑味の少なさ、すっきりとした風味、ムレ臭低減の点から好ましい。なお、本発明における酸度とは、測定の対象となる液体を0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで滴定を行い、その終点の滴定量から次の式(1)により算出したものをいう(食酢の日本農林規格(平成9年9月3日農林水産省告示第1381号)に基づき酢酸相当酸度の質量%を導出)。
【0011】
酸度=(a×v×f)/w×100 (1)
(a:0.1mol/Lの水酸化ナトリウム1mLに相当する酢酸量0.006g、v:0.1mol/Lの水酸化ナトリウムの使用量(mL)、f:0.1mol/Lのファクター、w:試料採取量(g))
【0012】
本発明において、工程(a)の有機酸水溶液中の乾燥野菜の乾燥物換算の含有量は2〜15%、更に3.5〜14.5%、特に5〜14%であることが、雑味の少なさ、すっきりとした風味、ムレ臭低減の点から好ましい。
【0013】
本発明において、工程(a)の酸度/乾燥野菜の乾燥物換算の含有量の比は、更に0.74〜2.5、特に0.84〜2.3、殊更0.9〜2であることが、雑味の少なさ、すっきりとした風味、ムレ臭低減の点から好ましい。
【0014】
本発明において、乾燥野菜を有機酸水溶液中で加熱処理する温度は45〜125℃であるが、更に50〜120℃、特に60〜100℃であることが、雑味の少なさ、すっきりとした風味、ムレ臭低減の点から好ましい。
【0015】
本発明において、乾燥野菜を有機酸水溶液中で加熱処理する方法は、公知の方法を使用することができる。例えば、ヒーター加熱方式、高周波電磁誘導加熱方式、チューブ式高温加熱方式、湯煎、蒸気加熱、ジュール加熱、レトルト加熱等などの方法が利用可能であるほか、少量の加熱では、湯槽やオートクレーブにて加熱してもよい。
【0016】
本発明において、加熱処理する際の圧力は特に限定されないが、常圧もしくは加圧下で行うことが、香気の保持の観点から好ましい。
【0017】
本発明において、加熱処理する時間は特に限定されないが、5〜20分が好ましく、更に7〜18分、特に9〜15分とすることが、雑味の少なさ、すっきりとした風味、ムレ臭低減の点から好ましい。
【0018】
本発明で用いられる有機酸水溶液に使用する有機酸は、食品に使用されるものであれば特に限定されない。例えば、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、アジピン酸、乳酸、フマル酸、αケトグルタル酸、ピログルタミン酸等が挙げられる。特に風味の点から食酢を用いることが好ましい。食酢は、穀物酢、果実酢、アルコールから製造する高酸度ビネガー類(酸度10〜20%)など様々な種類のものを用いることができる。
【0019】
本発明で用いられる乾燥野菜は、野菜を乾燥させたものである。野菜の種類は特に限定されないが、例えば、玉ネギ、ネギ(白ネギ、青ネギ、ワケギ)、ニンニク、ラッキョウ、ニラ、アサツキ、チャイブ、リーキ、ノビル等のユリ科(Liliaceae)ネギ属(Allium)の野菜が、嗜好性や種々の風味の食品に応用可能である点から好ましい。野菜は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
野菜の乾燥方法としては、一般的に用いられる熱風乾燥、凍結乾燥、減圧加熱乾燥、マイクロウェーブ乾燥等により水分を低減する方法が挙げられる。乾燥後の野菜の水分量は0〜15%が好ましく、更に0.01〜12%、特に0.1〜10%であることが、製造工程におけるハンドリングの容易性の点から好ましい。
【0021】
本発明において、乾燥野菜の大きさは特に限定されない。また、乾燥野菜の形状は、フレーク状、チョップド、ミンスド又はパウダー等が挙げられる。
【0022】
本発明においては、工程(a)により得られた加熱処理後の乾燥野菜と、乾燥野菜以外の成分とを混合する工程(b)を行う。加熱処理後の乾燥野菜は、有機酸水溶液の中に含まれたままの状態で用いてもよく、有機酸水溶液から沈降分離、遠心分離等することにより固−液分離したものを用いてもよいが、作業効率、乾燥野菜からの風味抽出の観点から有機酸水溶液の中に含まれたままの状態で用いるのが好ましい。
【0023】
工程(b)において、乾燥野菜以外の成分は各成分を順次混合してもよいが、予め混合した後、乾燥野菜と混合するのが好ましい。また、乾燥野菜以外の成分は、安全性の点から、混合前に予め加熱処理するのが好ましい。加熱処理は、一般に用いられている条件が使用可能である。また、加熱処理する方法は、上記と同様の方法を挙げることができる。
【0024】
乾燥野菜以外の成分の混合、さらに工程(a)により得られた加熱処理後の乾燥野菜との混合には、特に限定されないが、例えば攪拌羽根付混合タンク(ブレンダー)を利用することができる。
【0025】
本発明において、乾燥野菜以外の成分としては特に限定されず、液体調味料に使用可能な各種食品素材、添加剤等が挙げられる。例えば、呈味又は香気を有する成分、デンプン、増粘剤、安定剤、着色料、食用油脂等を用いることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの性状は、粉末、液体又は固形のいずれでもよく、必要に応じて成形加工したものを用いてもよい。保管形態も常温保管、冷蔵保管、冷凍保管のいずれでもよい。
【0026】
本発明において、呈味又は香気を有する成分とは、前記乾燥野菜を除く呈味又は香気を有する成分であり、具体的には、糖質(砂糖、ブドウ糖、異性化糖、果糖、乳糖、水飴、還元水飴、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、還元パラチノース、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖等)、塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム等)、酸味料(前記有機酸、リン酸等の無機酸、レモン果汁等の柑橘果汁)、蛋白質、ペプチド又はアミノ酸等の含窒素成分を含有する食品素材等が挙げられる。
【0027】
ここで、含窒素成分を含有する食品素材としては、例えば、醤油、味噌、アミノ酸系又は核酸系の旨み調味料(グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ソーダ、グアニル酸ナトリウム等)、畜肉エキス(チキン、ポーク、ビーフエキス等)、魚介エキス(カツオ、鯖、ホタテ、いわし、昆布エキス等)、野菜エキス(トマト、ネギ、セロリ、マッシュルーム、玉ネギエキス等)、前記乾燥野菜以外の野菜又は果実(オリーブ、赤ピーマン、黄ピーマン、しいたけ、たけのこ、蓮根、じゃがいも、にんじん、大根、かぼちゃ、しょうが、カリフラワー、きゅうり、クレソン、ケール、ごぼう、小松菜、なす、高菜、ほうれん草、蓮、じゃがいも、さつまいも、さといも、ナッツ類パイナップル、りんご、ぶどう、アプリコット等)、香辛料(バジル、オレガノ、タイム、パセリ、セロリ、しそ等)、蛋白質素材、酒類、発酵調味料等が挙げられる。
【0028】
本発明において、乾燥野菜の含有量は、酸性液体調味料中に0.1〜25%、更に0.5〜10%、特に0.5〜5%であることが、風味、加工食品として容器へ充填する際の適性の点から好ましい。
【0029】
また、有機酸の含有量は、酸性液体調味料における酸度(酸性液体調味料が油相と水相を含む場合には水相の酸度)が1.1〜1.6%となるように含有させることが風味の点から好ましく、更に1.15〜1.4%、特に1.2〜1.3%となるように含有させるのが好ましい。食酢を用いる場合には、酸性液体調味料中に3〜34%、更に4〜30%、特に4.5〜28%であることが風味の点から好ましい。
【0030】
また、含窒素成分を含有する食品素材の含有量は、酸性液体調味料中に0.1〜50%、更に10〜40%、特に15〜35%であることが、食品の2次機能(感覚刺激機能)である、「おいしさ」の点から好ましい。
【0031】
本発明においては、工程(a)における有機酸水溶液中には、前記乾燥野菜以外の成分は含まれないことが雑味の少なさ、すっきりとした風味、ムレ臭低減の点から好ましいが、許容できる範囲で含まれていてもよい。この場合、有機酸水溶液中における乾燥野菜以外の成分は、糖質、塩類、含窒素成分を含有する食品素材等が挙げられる。
【0032】
例えば、糖質の場合、有機酸水溶液中に0〜18%、更に0〜16%、特に0〜14%とすることが好ましく、糖質としては砂糖、糖アルコールが好ましい。
糖質は、酵素法による測定を行うことで定量することができる。
【0033】
また、塩類の場合、有機酸水溶液中に0〜4%、更に0〜3%、特に0〜2%とすることが好ましく、塩類としては食塩が好ましい。
塩類は、モール法(しょうゆの日本農林規格 農林水産省告示第1218号)により定量することができる。
【0034】
含窒素成分を含有する食品素材の場合は、有機酸水溶液中に該食品素材由来の窒素分として0〜0.5%、更に0〜0.4%、特に0〜0.3%とすることが好ましい。含窒素成分を含有する食品素材としては、醤油が好ましい。窒素分は、ケルダール法(しょうゆの日本農林規格 農林水産省告示第1218号)により定量することができる。
【0035】
本発明における酸性液体調味料は、水相部のみのもの、油相を水相の上に積層した分離液状型、油を水相に分散させたO/W乳化型のものがある。分離液状型の場合、油相と水相の重量比率は、栄養及び官能の点から、5/95〜60/40、更に20/80〜40/60、特に25/75〜35/65が好ましい。O/W乳化型の場合、油相と水相の重量比率は、栄養、官能に加え乳化安定性の点から、5/95〜35/65、更に20/80〜32/68、特に25/75〜30/70が好ましい。なお、酸性液体調味料が水相部と油相部を含有する場合、上記乾燥野菜、食用油脂を除く乾燥野菜以外の成分の含有量は、水相中の含有量を意味する。
【0036】
本発明の酸性液体調味料に用いることのできる油相は、食用油脂が主成分であり、動物性、植物性のいずれでも良く、例えば、動物油としては牛脂、豚脂、魚油等、植物油としては大豆油、パーム油、パーム核油、綿実油、落花生油、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、サンフラワー油、米油、胡麻油等が挙げられるが、風味、実用性の点から、大豆油、綿実油、落花生油、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、サンフラワー油、胡麻油等の植物油を用いることが好ましい。
【0037】
本発明における酸性液体調味料のpH(液体調味料が油相部を有する場合には水相部のpH)は5.5以下であることが保存性の点から好ましく、更に2〜5.5、特に3〜5、殊更3.5〜4.5の範囲が好ましい。この範囲にpHを低下させるためには、上記有機酸を使用することができるが、風味の観点から食酢を用いることが好ましい。
【0038】
本発明における酸性液体調味料とは、酸性を呈する液状の調味料をいい、例えばドレッシング、あんかけ、チリソース等の酸味を有するものをいう。
【実施例】
【0039】
<酸度の測定>
上記「食酢の日本農林規格(平成9年9月3日農林水産省告示第1381号)」に基づき酢酸相当酸度の質量%を導出した。
【0040】
<糖質の測定法>
酵素法(F−キット、J.Kインターナショナル社製)によりD-グルコース/ショ糖/果糖を測定した。 蒸留水をF-キットの試薬ビンに分注し、試薬を溶解した。ブランク用キュベットに、F−キット試薬水溶液及び蒸留水を加え、検体用キュベットには、前記に加え試料を加えた。3分後に分光光度計で吸光度E1(波長340nm)を測定した後、各糖専用の酵素の懸濁液をキュベットへ分注した。 約10分のインキュベーション後(酵素反応後)、分光光度計で吸光度E2(波長340nm)を測定し、吸光度変化量(ΔE)より糖質を算出した。
【0041】
<塩類の測定法>
モール法により測定した。試料をメスフラスコに秤量し、蒸留水を加えて定容としたものを試料溶液とする。試料溶液をメスピペットを用いて三角フラスコにとり、指示薬としてクロム酸カリウム溶液を加え、硝酸銀溶液で褐色ビュレットを用いて滴定し、液の色が微橙色になる点を終点とした。
【0042】
<窒素含有量の測定法>
ケルダール法により測定した。試料をケルダール分解フラスコへ秤量し、硫酸カリウム、二酸化チタン、硫酸銅、濃硫酸を加えて加水分解した。次に過剰の水酸化ナトリウムを加えて水蒸気蒸留することで窒素はアンモニアとして蒸留してくるので、これを受器のホウ酸溶液捕集し、これを酸標準液で滴定して定量した。
【0043】
<水分量の測定法>
乾燥野菜の含水量は、常圧下にて熱風乾燥法で測定した。試料約1gを精秤し、105℃で3時間以上乾燥させた後、乾燥条件下にて試料を精秤し、減量分を水分として乾燥野菜中の含水量(質量%)を測定した。
【0044】
実施例1〜9及び比較例1〜4
〔酸性液体調味料の製造1〕
表1に示した原料Aは、表1に示した処理条件において、加熱温度が100℃以下のものについては100mlのねじ口瓶(GL45、デュラン社製)に、100℃を超えるものについてはレトルト用袋(RXC-22、東セロ(株)社製)に入れた。加熱温度が100℃以下のものについては、温度調節機能を有する湯槽を使用し、100℃を超えるものについては、レトルト殺菌機(RCS−40ST(株)日阪製作所社製)を使用した。加熱処理は、内部品温が所定温度となった後、所定時間経過後に容器を取り出し、容器ごと放置して内部品温が室温となるまで冷却した。また、原料Bは、いずれも前記ねじ口瓶に入れ、加熱温度85℃、加熱時間10分の処理を行った。
次いで、原料Aと原料Bを混合し、ノンオイルタイプの酸性液体調味料を得た。
【0045】
比較例5
〔酸性液体調味料の製造2〕
表2に示した原料A及び原料Bを混合した後、加熱温度85℃、加熱時間10分の処理を実施例1に示した方法にて行うことにより、ノンオイルタイプの酸性液体調味料を得た。
【0046】
〔官能評価1〕
専門パネル20名により、野菜サラダ(レタス20g、プチトマト1ケ、きゅうり1枚(斜め切り))に8mlの酸性液体調味料をかけたものを食することにより、「雑味の強さ」及び「すっきり感」の観点について官能評価を行った。具体的には、前記2つの観点について、0(感じない)〜10(非常に強く感じる)までの整数による11段階尺度による相対評価を行い、20名の平均値を各サンプルの評価値とした。ここで、「雑味」とは、常法では発生してしまう乾燥野菜由来の呈味であり、口に含んだ瞬間の不快な風味をいい、塩味、酸味及び旨味を阻害するものをいう。また、「すっきり感」とは、塩味、酸味及び旨味がはっきり、シャープに感じられる風味をいう。結果を表1及び2に示す。
【0047】
〔官能評価2〕
専門パネル20名により、野菜サラダ(レタス20g、プチトマト1ケ、きゅうり1枚(斜め切り))に8mlの酸性液体調味料をかけたものを食することにより、「ムレ臭」について、次の評価基準に従って官能評価を行った。具体的には、以下の3段階尺度による評価を行い、20名の平均値を算出し、小数点以下を四捨五入した数値を評価値とした。ここで、「ムレ臭」とは、いわゆるレトルト臭と呼ばれる加圧加熱時に発生する香味をいう。結果を表1及び2に示す。
〔評価基準〕
0点:ムレ臭無し
1点:ムレ臭が若干感じられる
2点:ムレ臭が強い
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
表1に示すように、乾燥野菜を配合した酸性液体調味料において、乾燥野菜を酸度5〜15.5%の有機酸水溶液中で、酸度/乾燥野菜の含有量の比が0.68〜3、温度45〜125℃の条件で加熱処理した後に、乾燥野菜以外の成分と混合することにより得た酸性液体調味料(実施例1〜9)は、雑味の少ないすっきりとした風味を有し、レトルト加熱処理においてもムレ臭の低減されたものであった。
これに対し、酸度、質量比及び加熱条件が上記範囲を外れる酸性液体調味料は、雑味が感じられすっきり感に劣り、また、レトルト加熱処理によるムレ臭を強く感じるものであった(比較例1〜4)。また、表2に示すように、乾燥野菜を含む原料全てを混合した後に加熱処理した酸性液体調味料(比較例5)は、雑味が強く感じられ、すっきり感に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥野菜を酸度5〜15.5質量%の有機酸水溶液中で、酸度(質量%)/有機酸水溶液中の乾燥野菜の乾燥物換算の含有量(質量%)の比が0.68〜3、温度45〜125℃の条件で加熱処理する工程(a)、及び加熱処理後の乾燥野菜と乾燥野菜以外の成分とを混合する工程(b)を有する酸性液体調味料の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)における有機酸水溶液中の乾燥野菜の乾燥物換算の含有量が2〜15質量%である請求項1記載の酸性液体調味料の製造方法。
【請求項3】
前記工程(b)が乾燥野菜以外の成分を予め混合して加熱処理した後、乾燥野菜と混合するものである、請求項1又は2記載の酸性液体調味料の製造方法。