説明

酸性用スクラバーのブロー水の利用方法

【課題】本発明は、従来は利用されることなく廃棄されていた湿式スクラバーの排液について、湿式スクラバーが排気ガス中の酸性有害物質を除去する酸性用スクラバーである場合に、当該酸性用スクラバーのブロー水を、従来検討されていた方法よりも簡便な手段により有効利用する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】排気ガスに洗浄水を循環噴霧することにより排気ガス中の酸性有害物質を除去する酸性用スクラバーと他の湿式スクラバーからなる湿式スクラバー装置において、酸性用スクラバーのブロー水を他の湿式スクラバーに送り、他の湿式スクラバーの補給水として使用することを特徴とする酸性用スクラバーのブロー水の利用方法の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスに洗浄水を循環噴霧して排気ガス中の有害物質を除去する、湿式スクラバー装置における洗浄排液の利用方法に関する。特に、酸性物質を含む排気ガスから酸性物質を除去する、酸性用スクラバーから排出されるブロー水の利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や種々のプラントから排出される排気ガス中には、酸性物質やアルカリ性物質もしくは有機溶剤等の有害物質を含む場合が多い。このような有害物質を含む排気ガスは、通常、排気ガス処理装置によって有害物質を環境基準に適合するレベルまで除去し、清浄化ガスとして大気中に放出される。
【0003】
一般に使用されている排気ガス処理装置としては、湿式スクラバーとドライガススクラバーがある。湿式スクラバーは、水その他の液体を洗浄水として排気ガスに噴霧し、排気ガス中の有害物質を液滴や液膜中に捕集させて清浄化するものである。ドライガススクラバーは、イオン交換フィルターにより排気ガス中の有害物をイオン交換して分離・除去するものである。
【0004】
ドライガススクラバーは、比較的低濃度の有害物質を効率よく除去するのに適しているが、高濃度の有害物質の除去には適していない。また、有害物質の種類によって適合するイオン交換フィルターを選定する必要があり、その上有害物質の濃度如何では吸着サイトが短時間で飽和するので、イオン交換フィルターを頻繁に取り替えなければならない。
【0005】
湿式スクラバーは、高濃度の有害物質の除去に適しており、また、有害物質を捕集させる洗浄水として中性の水を用いることにより、幅広い種類の有害物質除去に有効であり有害物質除去装置として導入されるケースが多い。
【0006】
図3は、標準的な湿式スクラバーを側方から見た断面模式図である。湿式スクラバー1は、本体2と、循環ライン3と、補給ライン4からなる。
【0007】
本体2は、排気ガス5から有害物質を除いた清浄化ガス8を排出するガス流出口2iを有し、本体2の外枠を構成するフレーム2jと、洗浄水6を噴霧した後ミスト状態で滴下してくる洗浄水6を貯溜するフレーム2jの内部下部にある貯溜槽2aと、フレーム2jに接続した排気ガス5のフレーム2j内への導入路である送風管2b、排気ガス5をフレーム2j内に送り込む送風機2cと、フレーム2j内に設置された気液接触層2e及びエリミネータ2fからなる。
【0008】
排気ガス5は、工場や種々のプラントから排出される有害物質を含むガスである。送風機2cは、ここでは送風管2b中に設置されているが、ガス流出ラインに吸引機を取り付け、排気ガス5を送風管2bから吸引することもできる。
【0009】
気液接触層2eは、排気ガス5と噴霧された洗浄水6との接触効率を高めるためのミキシングエレメントである。エリミネータ2fは、洗浄水6のミストがガス流出口2iを通じて外部に飛散することを防止する防水板である。
【0010】
また、貯溜槽2aには、貯溜槽2aのオーバーフロー水の排出するオーバーフロー配管2dが接続され、洗浄水6の貯溜量(水面7)を適切に維持している。さらに、貯溜槽2a内を清掃、入れ換えるなどで洗浄水6を排出水として排出する排液配管2g及びその弁であるバルブ2hが接続されている。本発明におけるブロー水とは、これらオーバーフロー水と排出水を含めたものである。
【0011】
循環ライン3は、貯溜槽2aの下部とフレーム2j上部を接続した循環配管3aと、配管に連設され洗浄水6を散水させるフレーム2j内に挿入された散水ノズル3cと、貯溜槽2aに溜まった洗浄水6を散水ノズル3cに送り込む循環ポンプ3bとからなり、貯溜槽2aに貯溜された洗浄水6を繰り返し循環させる。
【0012】
洗浄水6は、排気ガス5中の有害物質を捕集する液体であり、一般には中性の水が使用される。散水ノズル3cは、排気ガス5と洗浄水6との接触面積を大きくするため、洗浄水6を霧状に飛散させるノズルである。洗浄水6は、噴霧された後ミスト状態で滴下し、フレーム2j下部の貯溜槽2aに溜まり、その後再び循環ライン3に送られ、排気ガス5中の有害物質の捕集に使用される。
【0013】
補給ライン4は、フレーム2jを貫通し、洗浄水6を補給・置換する場合に補給水4cを補給する補給配管4aと、適正な流量で補給水4cを強制補給できるように、水の通過面積を調整する絞り弁4bからなる。
【0014】
図3における湿式スクラバー1の動作は次の通りである。送風機2cによって有害物質を含む排気ガス5が、送風管2bからフレーム2j内に送り込まれる。フレーム2j下部の送風管2bから導入された有害物質を含む排気ガス5は、下方から上方に向かって流れ、気液接触層2eを通って上部のガス流出口2iから清浄化ガス8として排出される。
【0015】
気液接触層2eの上には散水ノズル3cから霧状に洗浄水6が散水され、送風管2bから上昇する排気ガス5と、散水されて流下する洗浄水6とが交流接触して、排気ガス5中の有害物質は洗浄水6に捕集され、洗浄水6とともに貯溜槽2aに滴下・貯溜される。
【0016】
貯溜槽2aに貯溜された洗浄水6は、循環ポンプ3bによって循環配管3aを経由し散水ノズル3cから再び散水される。貯溜槽2a中の洗浄水6を循環して使用していると、有害物質がその液中に蓄積してくるので、洗浄水6中の有害物質の濃度が次第に高くなってくる。それ故、洗浄水6中の有害物質の濃度を一定以下に保つように、絞り弁4bによって調整された適量の補給水4cが強制的に補給される。
【0017】
一般的に、強制補給する補給水4cの量は、洗浄水6中の有害物質濃度を一定以下に保つように設定されており、洗浄水6は常に貯溜槽2aから溢れることとなり、溢れた洗浄水6はオーバーフロー配管2dを通って外部に排出される。
【0018】
排気ガス5中の有害物質を湿式スクラバー1にて捕集した洗浄液中には種々の有害物質が含まれているので、従来は、当該湿式スクラバー1のブロー水を他に流用・利用することなく、無害化装置で処理し全て廃棄するのが一般的な方法であった。
【0019】
こうした状況に鑑み、湿式スクラバーの排液を一旦電解水生成器に回収し、当該電解水生成器により電気分解して酸性水とアルカリイオン水とに分離した液を洗浄水として再利用する方法が特許文献1に、また、湿式スクラバーの排液を一旦透析装置に回収し、当該透析装置により有害な陽イオンもしくは陰イオンを分離し、無害化した排液を洗浄水として再利用する方法が特許文献2等に開示されている。
【特許文献1】特開2000−271429号公報
【特許文献2】特開2001−145819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、特許文献1、2の方法では、いずれも湿式スクラバーの排液を一旦特殊な装置・機器に回収し、そこで無害化処理した液を再度洗浄水として利用することとしている。このような方法では、排液を再利用するための設備が大がかりとなり、かつ、電解水生成器や透析装置といった高額な装置の導入が必要となる。
【0021】
そこで、本発明は、従来は利用されることなく廃棄されていた湿式スクラバーの排液について、湿式スクラバーが排気ガス中の酸性有害物質を除去する酸性用スクラバーである場合に、当該酸性用スクラバーのブロー水を、従来検討されていた方法よりも簡便な手段により有効利用する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記課題を解決するために、排気ガスに洗浄水を循環噴霧することにより排気ガス中の酸性有害物質を除去する酸性用スクラバーと他の湿式スクラバーからなる湿式スクラバー装置において、酸性用スクラバーのブロー水を他の湿式スクラバーに送り、他の湿式スクラバーの補給水として使用することを特徴とする酸性用スクラバーのブロー水の利用方法の構成、
前記酸性用スクラバーのブロー水を一時貯溜槽15aに貯溜し、一時貯溜槽15aから移送ポンプ15cにより他の湿式スクラバーに送り、他の湿式スクラバーの補給水として使用することを特徴とする前記酸性用スクラバーのブロー水の利用方法の構成、
排気ガス5aから酸性物質を除去する酸性用スクラバー10と、排気ガスから酸性物質以外の有害物質を除去する他の湿式スクラバーからなる湿式スクラバー装置であって、酸性用スクラバー10のブロー配管を、他の湿式スクラバーに連結し、酸性用スクラバー10のブロー水を他の湿式スクラバーの補給水とすることを特徴とする湿式スクラバー装置の構成、
前記他の湿式スクラバーの貯溜槽の水面が、前記酸性用スクラバー10の貯溜槽2aの水面10bより低位置にあり、酸性用スクラバー10のブロー水を他の湿式スクラバーに自然送水することを特徴とする前記湿式スクラバー装置の構成、
排気ガス5aから酸性物質を除去する酸性用スクラバー13と、排気ガスから酸性物質以外の有害物質を除去する他の湿式スクラバーと、酸性用スクラバー13と他の湿式スクラバーの間に配置される一時貯溜手段15からなる湿式スクラバー装置であって、
前記一時貯溜手段15が、前記酸性用スクラバー13のブロー水を一時貯溜し、他の湿式スクラバーと送り配管15bで接続する一時貯溜槽15aと、前記送り配管15bに設置され、一時貯溜した酸性用スクラバー13のブロー水を他の湿式スクラバーの補給水として移送する移送ポンプ15cからなることを特徴とする湿式スクラバー装置の構成とした。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以上の構成であるから、酸性用スクラバーのブロー水を廃棄するために必要な水処理コストが削減される。また、従来捨てていた酸性用スクラバーのブロー水を再利用することができるので、廃棄量が半減しコスト削減とともに省資源化が実現されることとなる。特に、他の湿式スクラバーが、アルカリ性の有害物質の除去に用いられる場合は、アルカリ性物質の除去効率が中性の水に比べ高く、効率的である。
【0024】
さらに、電解水生成器や透析装置といった大がかりで高額な装置を導入することなく、簡便な機器と方法で酸性用スクラバーのブロー水を再利用することが可能となる。
【0025】
加えて、アルカリ性用スクラバー装置や有機溶剤系の有害物質を除去するスクラバー装置では、装置や配管内に細菌類等の微生物が繁殖することがよくある。そこで微生物の発生を防止するため殺菌剤を添加することが行われている。しかし、本発明ではpHが低く微生物が生存しにくい酸性用スクラバーのブロー水をアルカリ性用スクラバーなど他の湿式スクラバーの補給水に使用することで、湿式スクラバー内での微生物の繁殖を抑制することが可能となり、殺菌剤を添加する必要性が低下するので経費の節減となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
従来は利用されることなく廃棄されていた湿式スクラバーの排液について、湿式スクラバーが排気ガス中の酸性有害物質を除去する酸性用スクラバーである場合に、当該酸性用スクラバーのブロー水を、簡便な手段により有効利用する目的を、排気ガス5aから酸性物質を除去する酸性用スクラバー10と、排気ガスから酸性物質以外の有害物質を除去する他の湿式スクラバーからなる湿式スクラバー装置であって、酸性用スクラバー10のブロー配管を、他の湿式スクラバーに連結し、かつ他の湿式スクラバーの貯溜槽の水面が、前記酸性用スクラバー10の貯溜槽2aの水面10bより低位置にあり、酸性用スクラバー10のブロー水を他の湿式スクラバーに自然送水し、酸性用スクラバー10のブロー水を他の湿式スクラバーの補給水として使用することを特徴とする湿式スクラバー装置の構成とすることで実現した。
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明である酸性用スクラバーのブロー水の利用方法について詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明が適用される湿式スクラバー装置の第1の断面模式図である。湿式スクラバー装置9は、本発明である酸性用スクラバーのブロー水の利用方法が適用される一例であり、排気ガス5aから酸性有害物質を除去するための湿式スクラバー(以下、「酸性用スクラバー」という。)と、排気ガス5bからアルカリ性有害物質を除去するための他の湿式スクラバー(以下、「アルカリ性用スクラバー」という。)とからなる。
【0029】
アルカリ性用スクラバーには、アルカリ性物質の他、有機溶媒を除去するための湿式スクラバーも含む。ここでは、他の湿式スクラバーが、アルカリ性の有害物質を除去する場合について述べる。
【0030】
酸性用スクラバー10、アルカリ性用スクラバー11ともに、既存若しくは従来からある標準的な湿式スクラバーを用いることができる。なお、酸性用スクラバー10、アルカリ性用スクラバー11とも図3の湿式スクラバー1と同様の構成、機能である部分については、図3と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0031】
湿式スクラバー装置9は、酸性用スクラバー10のオーバーフロー配管2dと、アルカリ性用スクラバー11とを連結管9aによって連結してなる。このとき図1に示すように、アルカリ性用スクラバー11の貯溜槽2aの水面11bが、酸性用スクラバー10の貯溜槽2aの水面10bより低位置にあることが望ましい。
【0032】
アルカリ性用スクラバー11の貯溜槽2aの水面11bが、酸性用スクラバー10の貯溜槽2aの水面10bより低位置にあることで、酸性用スクラバー10のブロー水は、ポンプなどの移送手段を用いることなく、自然にアルカリ性用スクラバー11の補給水として、アルカリ性用スクラバー11の貯溜槽2aに流れ込み、経済的である。
【0033】
即ち、連結管9aのアルカリ性用スクラバー11のフレーム2jへの貫通位置を、酸性用スクラバー10のオーバーフロー位置より低位置になるよう接続し、酸性用スクラバー10のオーバーフロー水が、アルカリ性用スクラバー11に落差で流入する様に連結することにより、本発明である酸性用スクラバーのブロー水の利用方法を実施することができる。
【0034】
また、水面10b、11bが同じ高さである場合は、酸性用スクラバー10のオーバーフロー位置を上げること、或いはアルカリ性用スクラバー11のオーバーフロー位置を下げることで、酸性用スクラバーのブロー水を他の湿式スクラバーに自然送水することができる。
【0035】
さらには、アルカリ性用スクラバー11の貯溜槽2aの水面11bが、酸性用スクラバー10の貯溜槽2aの水面10bより低位置であれば、酸性用スクラバー10の洗浄水10aのアルカリ性用スクラバー11への接続は、酸性用スクラバー10のオーバーフロー配管2dとアルカリ性用スクラバー11との接続でなくてもよい。
【0036】
例えば、酸性用スクラバー10の底面とアルカリ性用スクラバー11を連結することでも、水面10b、11bの水頭圧により、酸性用スクラバー10のブロー水はアルカリ性用スクラバー11に自然送水される。ただし、この場合、酸性用スクラバー10の水位を保つため、ボールタツプによる補給水4cの補給が必要となる。
【0037】
図1における湿式スクラバー装置で適用される酸性用スクラバーのブロー水の利用方法は次の通りである。酸性用スクラバー10の送風機2cによって酸性有害物質を含む排気ガス5aが、送風管2bからフレーム2j内に送り込まれる。フレーム2j下部の送風管2bから導入された酸性有害物質を含む排気ガス5aは、下方から上方に向かって流れ、気液接触層2eを通って上部のガス流出口2iから酸性物質が環境基準値以下に除去された清浄化ガス8aとして排出される。
【0038】
気液接触層2eの上には散水ノズル3cから霧状に洗浄水10aが散水され、送風管2bから上昇する排気ガス5aと散水されて流下する洗浄水10aとが交流接触して、排気ガス5a中の酸性有害物質は洗浄水10aに捕集され、洗浄水10aとともに貯溜槽2aに滴下・貯溜される。
【0039】
貯溜槽2aに貯溜された洗浄水10aは、循環ポンプ3bによって循環配管3aを経由し散水ノズル3cから再び散水される。貯溜槽2a中の洗浄水10aを循環して使用していると、有害物質がその液中に蓄積してくるので、洗浄水10a中の有害物質の濃度が次第に高くなり、酸性度が増してくる。それ故、洗浄水10a中の有害物質の濃度を一定以下に保つように、絞り弁4bによって調整された適量の補給水4cが常時強制的に補給される。
【0040】
強制補給する補給水4cの量は、洗浄水10a中の有害物質濃度を一定以下に保つように設定されており、洗浄水10aの一部は常に貯溜槽2aから溢れることとなり、溢れた洗浄水10aは連結された酸性用スクラバー10のオーバーフロー配管2d、連結管9aを通ってアルカリ性用スクラバー11の補給水として、アルカリ性用スクラバー11の貯溜槽2aに自然に流れ込み、貯溜、循環する。
【0041】
従って、アルカリ性用スクラバー11の補給水量は、酸性用スクラバー10の補給水4c量に概ね一致し、酸性用スクラバー10の絞り弁4bにより、流量を制御することができる。
【0042】
アルカリ性用スクラバー11に流入した、酸性物質が溶解した補給水は、貯溜槽2aに洗浄水11aとして貯溜され、循環ライン3の循環ポンプ3bによって循環配管3aを経由し、散水ノズル3cから、酸性の洗浄水11aとして散水され、アルカリ性物質を含む排気ガス5bと接触し、排気ガス5b中のアルカリ性物質を中性の洗浄水より効率的に捕集する。
【0043】
即ち、アルカリ性用スクラバー11の送風機2cによってアルカリ性有害物質を含む排気ガス5bが、送風管2bからフレーム2j内に送り込まれる。フレーム2j下部の送風管2bから導入されたアルカリ性有害物質を含む排気ガス5bは、下方から上方に向かって流れ、気液接触層2eを通って上部のガス流出口2iからアルカリ性物質が環境基準値以下に除去された清浄化ガス8bとして排出される。
【0044】
気液接触層2eの上には散水ノズル3cから霧状に洗浄水11aが散水され、送風管2bから上昇する排気ガス5aと散水されて流下する洗浄水11aとが交流接触して、排気ガス5b中のアルカリ性有害物質は洗浄水11aに捕集され、洗浄水11aとともに貯溜槽2aに滴下・貯溜される。
【0045】
貯溜槽2aに貯溜された洗浄水11aは、循環ポンプ3bによって循環配管3aを経由し散水ノズル3cから再び散水される。アルカリ性用スクラバー11において循環・散水が繰り返されることで、当初酸性だった洗浄水11aは、アルカリ性物質を捕集するにつれて次第に中性へと近づく。
【0046】
一方、酸性用スクラバー10からのオーバーフロー水が、常時、補給水として、アルカリ性用スクラバー11の貯溜槽2aに流入してくることにより、洗浄水11aは、その一部がオーバーフロー水として、オーバーフロー配管2dから系外に排出される。
【0047】
このようにして、本発明の方法を適用することで、酸性用スクラバー10の洗浄水10aは、中性に近づきながら効率的に、排気ガス5bからアルカリ性物質を除去することができる。
【0048】
また、従来、アルカリ性物質を除去するアルカリ性用スクラバーでは、微生物の生育を抑制するために、制菌剤・殺菌剤を洗浄水11aに添加しているが、本湿式スクラバー装置9では、アルカリ性用スクラバー11への補給水が酸性であるため、微生物の生育が抑制され、洗浄水11a中への制菌剤・殺菌剤の添加は、不要若しくは極めて少なくて済む。
【実施例2】
【0049】
図2は、本発明が適用される湿式スクラバー装置の第2の断面模式図である。湿式スクラバー装置12も本発明である酸性用スクラバーのブロー水の利用方法が適用される一例である。
【0050】
湿式スクラバー装置12は、排気ガス5aから酸性物質を除去する酸性用スクラバー13と、排気ガス5bからアルカリ性物質を除去するアルカリ性用スクラバー14と、酸性用スクラバー13とアルカリ性用スクラバー14の間に配置される酸性用スクラバーのブロー水の一時貯溜手段15からなる。アルカリ性用スクラバー14が、有機溶媒等の除去に用いられる場合も同様である。
【0051】
なお、酸性用スクラバー13、アルカリ性用スクラバー14とも図3の湿式スクラバー1と同様の構成、機能である部分については、図3と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0052】
酸性用スクラバー13のブロー水の一時貯溜手段15は、酸性用スクラバー13のオーバーフロー水を一時貯溜し、アルカリ性用スクラバー14との間を送り配管15bで接続する一時貯溜槽15aと、送り配管15bに設置された、一時貯溜槽15aの水位を感知する水位計17のオン・オフ信号により駆動制御される移送ポンプ15cからなる。なお、一時貯溜する酸性用スクラバー13のブロー水は、オーバーフロー配管13bからのオーバーフロー水でなく酸性用スクラバー13底部からの排出水、他のブロー水であってもよい。
【0053】
一時貯溜水16は、酸性用スクラバー13で、散水・循環し酸性となった洗浄水13aが、補給水4cの強制補給により、オーバーフロー配管13bから自然に排出されたオーバーフロー水を一時貯溜槽15aに貯溜したもので、アルカリ性用スクラバー14の補給水として使用される。
【0054】
移送ポンプ15cは、一時貯溜水16をアルカリ性用スクラバー14に移送するポンプである。水位計17は、一時貯溜槽15aに設置され、一時貯溜槽15aの水位を感知し、その水位が所定の高さ以上になると移送ポンプ15cを稼働させ、またその水位が所定の高さ以下になると停止させる電気信号(オン・オフ信号)を発生する一時貯溜水16の水位監視装置である。
【0055】
次に、図2における湿式スクラバー装置12で適用される酸性スクラバーのブロー水の利用方法について説明する。洗浄水13aがオーバーフロー水として排出されるまでは、実施例1と同様である。
【0056】
洗浄水13aは、補給水4cの強制補給により、オーバーフロー配管13bを介して、一時貯溜槽15aに排出される。即ち、一時貯溜槽15aが酸性用スクラバー13より低位置にあり、オーバーフロー配管13bが、一時貯溜槽15aに向け、下方に向いている。
【0057】
補給水4cの強制補給により溢れでたオーバーフロー水により、一時貯溜槽15aの一時貯溜水16の水位が徐々に上がってくる。一時貯溜槽15aには、水位計17が設置されており、一時貯溜水16の水位が予め設定した所定の高さに達したとき、水位計17から移送ポンプ15cに「ポンプ稼働ON」の電気信号が送られ、移送ポンプ15cが稼働する。
【0058】
移送ポンプ15cが稼働することにより、一時貯溜水16がアルカリ性用スクラバー14に送り配管15bを介して、アルカリ性用スクラバー14の補給水として送水される。
【0059】
一時貯溜水16がアルカリ性用スクラバー14に送水されることにより、一時貯溜槽15aの水位が徐々に低下し、その水位が予め設定された所定の高さに達したとき、水位計17から移送ポンプ15cに「ポンプ稼働OFF」の電気信号が送られ、移送ポンプ15cの稼働が停止する。
【0060】
移送ポンプ15cの稼働が停止しても、酸性用スクラバー13のオーバーフロー水は一時貯溜槽15aに常に流入してくるため、再び一時貯溜槽15aの一時貯溜水16の水位が徐々に上昇してくる。従って、一時貯溜水16の水位に連動し、移送ポンプ15cが稼働・停止を繰り返して、一時貯溜水16をアルカリ性用スクラバー14へ送水する。
【0061】
酸性用スクラバー13のオーバーフロー水が、補給水としてアルカリ性用スクラバー14に補給された後からアルカリ性用スクラバー14のオーバーフロー水として排出されるまでの工程は実施例1と同様である。
【0062】
湿式スクラバー装置12は、実施例1で示したように水面13c、14bに高低をつけられない場合などに、酸性用スクラバー13のブロー水を、アルカリ性用スクラバー14の補給水として利用する本発明である酸性用スクラバーのブロー水の利用方法を適用する場合に、特に有効な構成である。
【0063】
アルカリ性用スクラバー14において、補給水として、酸性用スクラバーのブロー水を利用することにより、中性の補給水を使用する場合よりアルカリ性物質を効率的に吸収、除去すること、及び微生物の発生、生育を抑制できるため、制菌剤・殺菌剤が極めて少なくて済むことは、実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明が適用される湿式スクラバー装置の第1の断面模式図である。
【図2】本発明が適用される湿式スクラバー装置の第2の断面模式図である。
【図3】標準的な湿式スクラバーを側方から見た断面模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 湿式スクラバー
2 本体
2a 貯溜槽
2b 送風管
2c 送風機
2d オーバーフロー配管
2e 気液接触層
2f エリミネータ
2g 排液配管
2h バルブ
2i ガス流出口
2j フレーム
3 循環ライン
3a 循環配管
3b 循環ポンプ
3c 散水ノズル
4 補給ライン
4a 補給配管
4b 絞り弁
4c 補給水
5 排気ガス
5a 排気ガス
5b 排気ガス
6 洗浄水
7 水面
8 清浄化ガス
8a 清浄化ガス
8b 清浄化ガス
9 湿式スクラバー装置
9a 連結管
10 酸性用スクラバー
10a 洗浄水
10b 水面
11 アルカリ性用スクラバー
11a 洗浄水
11b 水面
12 湿式スクラバー装置
13 酸性用スクラバー
13a 洗浄水
13b オーバーフロー配管
13c 水面
14 アルカリ性用スクラバー
14a 洗浄水
14b 水面
15 一時貯溜手段
15a 一時貯溜槽
15b 送り配管
15c 移送ポンプ
16 一時貯溜水
17 水位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスに洗浄水を循環噴霧することにより排気ガス中の酸性有害物質を除去する酸性用スクラバーと他の湿式スクラバーからなる湿式スクラバー装置において、
酸性用スクラバーのブロー水を他の湿式スクラバーに送り、他の湿式スクラバーの補給水として使用することを特徴とする酸性用スクラバーのブロー水の利用方法。
【請求項2】
前記酸性用スクラバーのブロー水を一時貯溜槽に貯溜し、一時貯溜槽から移送ポンプにより他の湿式スクラバーに送り、他の湿式スクラバーの補給水として使用することを特徴とする請求項1に記載の酸性用スクラバーのブロー水の利用方法。
【請求項3】
排気ガスから酸性物質を除去する酸性用スクラバーと、排気ガスから酸性物質以外の有害物質を除去する他の湿式スクラバーからなる湿式スクラバー装置であって、酸性用スクラバーのブロー配管を、他の湿式スクラバーに連結し、酸性用スクラバーのブロー水を他の湿式スクラバーの補給水とすることを特徴とする湿式スクラバー装置。
【請求項4】
前記他の湿式スクラバーの貯溜槽の水面が、前記酸性用スクラバーの貯溜槽の水面より低位置にあり、酸性用スクラバーのブロー水を他の湿式スクラバーに自然送水することを特徴とする請求項3に記載の湿式スクラバー装置。
【請求項5】
排気ガスから酸性物質を除去する酸性用スクラバーと、排気ガスから酸性物質以外の有害物質を除去する他の湿式スクラバーと、酸性用スクラバーと他の湿式スクラバーの間に配置される一時貯溜手段からなる湿式スクラバー装置であって、
前記一時貯溜手段が、前記酸性用スクラバーのブロー水を一時貯溜し、他の湿式スクラバーと送り配管で接続する一時貯溜槽と、前記送り配管に設置され、一時貯溜した酸性用スクラバーのブロー水を他の湿式スクラバーの補給水として移送する移送ポンプからなることを特徴とする湿式スクラバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−82799(P2009−82799A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253988(P2007−253988)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000101042)アクアス株式会社 (66)
【Fターム(参考)】