説明

酸末端封鎖ポリ乳酸及びその製造方法

【課題】熱安定性および耐加水分解性に優れた酸末端封鎖ポリ乳酸及びその製造方法、ならびに重合開始剤を提供する。
【解決手段】乳酸を最小構成単位とするポリ乳酸と、該ポリ乳酸の酸末端を封鎖する、下記の化(1)で表されるアミノ基とからなる酸末端封鎖ポリ乳酸。


(式中、R1は、水素原子又はメチル基を表わし、R2は炭素数2以上15以下の芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基を含む炭化水素基を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクチドを開環重合させることにより得られる酸末端封鎖ポリ乳酸及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、例えば、土や水の中に存在する微生物の作用により、自然環境下で分解される生分解性プラスチックの原料として注目されている。ポリ乳酸は生分解性プラスチックの原料としては優れた特性を有しているものの、通常使用されている汎用プラスチックと比較すると、熱安定性や強度の点では充分ではない。
【0003】
そこで、従来、特許文献1には、ポリ乳酸にメタリン酸系失活剤を含有させることにより、ポリ乳酸中の残留触媒及び水分を効果的に失活させて、ポリ乳酸の熱安定性と耐加水分解性を高めることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリ乳酸の重合反応の後半又は終了後にりん酸系金属塩を添加して、熱による解重合を抑制することが開示されている。
【0005】
特許文献3には、ポリ乳酸の水酸基末端を、水素原子又は炭化水素基で封鎖し、カルボキシル末端を、炭素数1以上50以下の1価以上の多価脂肪族炭化水素基で封鎖することで、ポリ乳酸の耐加水分解性を高め、かつ溶融時の熱安定性を兼ね備えることが開示されている。
【0006】
特許文献4では、ラクチドの重合を触媒する前に、分子量制御剤を加えること、分子量制御剤として、例えば、アミンを添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−146136号公報
【特許文献2】特開平9−151242号公報
【特許文献3】特許第3367577号公報
【特許文献4】特許第3258662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1,2では、重合途中にメタリン酸系失活剤やりん酸系金属塩を添加するため、添加のタイミングやハンドリングが困難であり、また、副反応が起こるおそれがあるなど、実用にはまだ課題が残る。
【0009】
また、特許文献3で開示されたポリ乳酸は、耐加水分解性が十分なものではない。特許文献4で開示された分子量制御剤については、そのすべてが、ポリ乳酸の熱安定性の点で適当であるというわけではない。
【0010】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、熱安定性に優れた酸末端封鎖ポリ乳酸およびその製造方法、ならびに重合開始剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の酸末端封鎖ポリ乳酸は、乳酸を最小構成単位とするポリ乳酸と、該ポリ乳酸の酸末端を封鎖する、下記の化(1)で表されるアミノ基とからなることを特徴とする。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数2以上15以下の炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基を含む)を示す。)。
【0014】
本発明の酸末端封鎖ポリ乳酸の製造方法は、下記化(2)で示される重合開始剤と、触媒との存在下で、ラクチドを開環重合することを特徴とする。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数2以上15以下の炭化水素(脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素を含む)を示す。)
本発明の重合開始剤は、ラクチドの開環重合を開始させ、下記化(2)で示されることを特徴とする。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数2以上15以下の炭化水素(脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素を含む)を示す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明の酸末端封鎖ポリ乳酸は、酸末端が、前記化(1)に示されるアミノ基で封鎖されているため、熱安定性に優れる。
【0020】
本発明の酸末端封鎖ポリ乳酸の製造方法は、前記アミノ基をもつ重合開始剤をラクチドに添加しているため、ラクチドの開環重合体の酸末端が、前記アミノ基とともにアミド結合を形成することで封鎖されて、熱安定性に優れた酸末端封鎖ポリ乳酸を製造することができる。
【0021】
本発明の重合開始剤は、前記アミノ基をもつため、触媒存在下でラクチドに添加することにより、ラクチドの開環重合体の酸末端が、前記アミノ基で封鎖されて、熱安定性に優れた酸末端封鎖ポリ乳酸を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1のサンプルのNMR分析結果を示す線図である。
【図2】実施例1〜4及び比較例1,2のサンプルについて湿熱老化試験を行ったときの引張り強度を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(酸末端封鎖ポリ乳酸)
本発明の酸末端封鎖ポリ乳酸は、L−乳酸又は/及びD−乳酸を主な最小構成単位とし、化(3)で表される構造をもつ。
【0024】
【化3】

【0025】
化(3)の中のnは、整数である。
【0026】
化(3)に表されるポリ乳酸の酸末端は、カルボニル基(−CO−)である。カルボキル基には、Aで示されるアミノ基が結合されている。ポリ乳酸のアルコール末端には、水素が結合している。
【0027】
化(3)の中のAは、前記(1)で表されたアミノ基であり、ポリ乳酸の酸末端を封鎖している。アミノ基の中の窒素原子は、2つの側鎖R1、R2をもつ。R1は、水素原子又はメチル基である。R2は、炭素数2以上15以下の炭化水素基である。炭化水素基は、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基を含む。
【0028】
芳香族炭化水素基は、ベンジル基がよい。また、脂肪族炭化水素基は、エチル基、ドデシル基などの飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素などがあげられ、直鎖状、又は分枝状のいずれでもよい。
【0029】
前記化(1)の中のAは、下記化(4)〜(7)のいずれかからなることが好ましい。この場合には、ポリ乳酸の熱安定性が更に向上する。
【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量が50000以上で、かつ熱重量分析装置を用いて220℃で60分間保持したときの熱減量率が0.3%以下であることが好ましい。
【0035】
ポリ乳酸の重量平均分子量は、5万〜40万、さらには10万〜35万であることが好ましく、特に、10〜30万であることが望ましい。この場合には、生分解性を維持しつつポリ乳酸の剛性が更に向上する。
【0036】
ポリ乳酸の熱減量率は、熱重量分析装置を用いてポリ乳酸を220℃で60分間保持したときにポリ乳酸の重量が減量した割合をいう。ポリ乳酸の熱減量率は、0.3%以下であることがよく、さらには、0.2%以上であることが望ましい。この場合には、ポリ乳酸の熱安定性が更に向上する。
【0037】
(ポリ乳酸の製造方法)
ポリ乳酸は、触媒と、前記化(2)で示される重合開始剤との存在下で、ラクチドを開環重合することにより製造される。
【0038】
ラクチドとは、2分子の乳酸の脱水縮合によって得られる環状化合物であり、分子内にエステル結合を2つもつ。ラクチドは、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチドのいずれを用いてもよい。
【0039】
ラクチドは、触媒と重合開始剤との存在下で開環重合する。触媒としては、例えば、オクチル酸スズなどを用いる。
【0040】
重合開始剤としては、前記化(2)に示されたアミン化合物を用いる。このアミン化合物は、ポリ乳酸の酸末端を封鎖するアミノ基を有する。アミン化合物は、ラクチドの開環重合を開始させるとともに、開環したラクチドのカルボキシル基(−COO−)と脱水縮合反応を生じて、アミド結合を形成して、ポリ乳酸の酸末端を封鎖する。
【0041】
アミン化合物中の窒素原子に結合している側鎖R1,R2は、前記化(1)に示されるアミノ基の中の窒素原子に結合している側鎖R1、R2と同様である。
【0042】
重合開始剤は、ベンジルアミン、ドデシルアミン、N−ベンジルメチルアミン、及びエチルアミンのいずれか1種以上であることが好ましい。この場合には、熱安定性に優れたポリ乳酸を製造することができる。
【0043】
触媒の添加量は、ラチクド100重量部に対して、0.0001〜0.005重量部であることが好ましい。また、重合開始剤の添加量は、ラクチド100重量部に対して、0重量部を越えて大きく、且つ0.5重量部以下であることが好ましい。この場合には、ラクチドの開環重合反応が良好に進行する。
【0044】
ラクチドの開環重合反応は、100〜200℃の温度で行うとよい。この場合には、重量平均分子量の高いラクチドが得られる。
【0045】
(用途)
本発明の酸末端封鎖ポリ乳酸は、例えば、フロアーカーペットなどの車両内装部品、スペアタイヤカバーなどの車両用アクセサリーなどの代替性のある車両部品の材料として好適に用いることができる。また、ポリ乳酸は、使用期間の比較的短いプラスチック製品、手術用縫糸などにも、好適に用いられる。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
L−ラクチド100重量部に対して、触媒としてのオクチル酸スズ0.002重量部、重合開始剤としてのベンジルアミン0.22重量部を仕込んだ。溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)を用いた。溶媒存在下で仕込んだ材料を、150℃×24時間の条件下で加熱して、ポリ乳酸重合物を得た。得られたポリ乳酸重合物は、未反応ラクチドが、添加ラクチドのうち約10%残っているため、アセトンを用いて、未反応ラクチドを除去した。その後、真空乾燥処理を行い、これをポリ乳酸のサンプルとした。
【0047】
得られたポリ乳酸のサンプルを、H核磁気共鳴分光分析法(NMR)にて分析した。NMRの分析結果を図1に示した。図1の上段は、ベンジルアミンのスペクトルを示し、図1の下段は、本例で生成されたポリ乳酸のスペクトルを示している。
【0048】
ベンジルアミンのスペクトルには、芳香環に由来するピークP1と、ベンジルアミンの中の窒素原子の隣に位置するメチレン基に由来するピークP2が確認された。ポリ乳酸のスペクトルの中のP3は、芳香環に由来するものであり、ベンジルアミンの中の芳香環に由来するピークP1と同じ位置(7.2ppm)に確認された。ピークP1は7.2ppmに、ピークP2は3.8ppmに位置している。
【0049】
ポリ乳酸のスペクトルの中のP4は、窒素原子の隣のメチレン基(−CH−)に由来するピークであり、ベンジルアミンの中のメチレン基に由来するピークP2の位置(3.8ppm)から4.4ppmにシグナル位置が変化したものである。なお、図1中で、「CHCl」は、ブランクとしてのCHClのピークを示し、「THF」は、溶媒のピークを示している。
【0050】
以上の結果より、生成されたポリ乳酸の酸末端は、ベンジルアミンで封鎖されていることが確認された。
【0051】
(実施例2)
重合開始剤として、N−ベンジルメチルアミンを用いて、実施例1と同様にポリ乳酸のサンプルを得た。
【0052】
(実施例3)
重合開始剤として、ドデシルアミンを用いて、実施例1と同様にポリ乳酸のサンプルを得た。
【0053】
(実施例4)
重合開始剤として、エチルアミンを用いて、実施例1と同様にポリ乳酸のサンプルを得た。
【0054】
(比較例1)
重合開始剤として、ヘキサデシルアミンを用いて、実施例1と同様にポリ乳酸のサンプルを得た。
【0055】
(比較例2)
重合開始剤として、1−ドデカノールを用いて、実施例1と同様にポリ乳酸のサンプルを得た。
【0056】
(比較例3)
重合開始剤として、1−オクタノールを用いて、実施例1と同様にポリ乳酸のサンプルを得た。
【0057】
<実験>
得られた実施例1〜4及び比較例1〜3のポリ乳酸のサンプル10mgを熱重量分析装置(TGA)に入れた。窒素を流しながら、10℃/分で昇温し、220℃、60分間保持したときの熱減量率(%)を測定した。熱減量率は、以下の式により算出した。
【0058】
熱減量率(%)=100×(加熱前サンプル重量―加熱後サンプル重量)/加熱前サンプル重量
加熱後サンプル重量には、加熱によって固体を維持している分に限らず、溶融した分の重量も含む。したがって、熱減量率は、上記高温条件で保持した後に熱分解し気化して減じた重量の割合をいう。熱減量率を測定したときのサンプルの温度はポリ乳酸の融点よりも高い220℃であり、この温度ではサンプルは溶融している。サンプル溶融時の熱減量率を測定することで、溶融した状態でのサンプルの熱安定性の指標となる。
【0059】
また、ポリ乳酸の重合度を確認するため、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置、商品名「shodex GPC-104」昭和電工(株)製)を用いて分子量を測定した。GPCで用いた溶媒(移動相)はクロロホルムであり、溶媒の流速は1ml/分とし、サンプル量は300μlとした。サンプルは、0.5w/w%をクロロホルムに溶解させて、カラムに流通させた。カラムの温度は40℃とした。GPCは、解析ソフト(商品名「shodex 480XP」昭和電工(株)製)により作動させた。GPCには、2本の測定用カラム(商品名「LF−604」昭和電工(株)製)と、2本のリファレンスカラム(商品名「KF−600RL」昭和電工(株)製)と、2本のガードカラム(商品名「LF−G」昭和電工(株)製)を装着した。
【0060】
GPCにより、溶媒中に溶解させたサンプルを分子サイズの差に基づいて分離して、サンプルの重量平均分子量(Mw)と、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)を測定した。数平均分子量は、各分子の分子量をすべて足し合わせた数を、分子数で割った値である。重量平均分子量は、各分子の分子量に各分子の重量(分子量に比例)を掛け合わせた上で全て足し合わせたものを、その全重量で割った値である。重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、分子量の分布度を示す。
【0061】
また、DSC(示差熱量分析装置)を用いて、ポリ乳酸の融点を測定した。融点の測定に当たっては、下記のタイムスケジュールで温度の上昇、下降を1サイクル行った後に、2サイクル目の温度上昇で融点(Tm)を測定した。
【0062】
Step1:低速昇温10℃/分(0〜230℃)
Step2:5分間維持
Step3:高速冷却200℃/分
(2nd scan)
Step4:昇温10℃/分(0〜230℃)
更に、ポリ乳酸の耐久性を確認するため、湿熱老化試験を行った。湿熱老化試験では、サンプルからペレットを成形し、得られたペレットを65℃×95%RHの恒温槽に1〜7日間静置した。かかる試験を行う前と後とで、ペレットの引張り強度を測定した。試験前の引張り強度に対する試験後の引張り強度の比率を%で示した。
【0063】
上記TGA、GPC、DSCの測定結果を表1に示した。表1には、重合開始剤の分子量と沸点も併記した。湿熱老化試験の結果を表2及び図2に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
上記の測定結果より、実施例1〜4のポリ乳酸の熱減量率は、0.30%以下、さらには0.20%以下であり、比較例1〜3の場合に比べて、熱減量率が低く、熱的に安定していた。したがって、実施例1〜4のポリ乳酸は、溶融時の熱安定性が高く、成形安定性に優れるといえる。
【0067】
実施例1〜4のポリ乳酸のMwは、10〜35×10以上であり、ある程度高分子化しており、分解性と強度とを両立する程度に高分子化していた。また、実施例1〜4のポリ乳酸のMw/Mnは、3.0以下、更には2.0以下であり、比較的分子量の分布が少なく、ほぼ均一な長さのポリマーが生成していることがわかった。
【0068】
実施例1〜4のポリ乳酸の融点(Tm)は、174〜180℃であった。
【0069】
また、湿熱老化試験では、実施例1〜4のポリ乳酸の引っ張り強度の保持率は、85%以上、さらには90%以上であり、比較例1,2の場合に比べて、高かった。
【0070】
比較例2,3の重合開始剤はアルコール類であり、実施例1〜4の重合開始剤は炭素数2〜15のアミン類である。重合開始剤としてアルコール類やグリコール類を用いることで、開環したラクチドの末端に位置するカルボン酸が、アルコール類やグリコール類の中のヒドロキシル基と脱水縮合反応を生じて、エステル結合によってアルコール類が末端に結合される。一方、重合開始剤がアミン類である場合には、開裂したラクチドの末端に位置するカルボン酸が、アミン類中のアミノ基と脱水縮合反応を生じて、アミド結合によりアミノ基が末端に結合される。
【0071】
また、実施例1のポリ乳酸のサンプルだけでなく、実施例2〜4のポリ乳酸のサンプルについても、NMRにて酸末端にアミド結合が形成されていることを確認した。
【0072】
アミド結合の結合鎖は、エステル結合に比べて切断されにくいため、アミド結合で酸末端が封鎖されたポリ乳酸は、エステル結合で封鎖された場合に比べて、耐加水分解性が高く、このため、生成したポリ乳酸が熱的に安定しており、湿熱老化試験での引っ張り強度の低下も少ないといえる。
【0073】
また、比較例1の重合開始剤は、炭素数16のアミン類であり、実施例1〜4の重合開始剤は炭素数2以上15以下のアミン類である。後者の方が、前者よりも、熱減量率が低く、またMwも大きく、融点(Tm)も高い。また、後者の方が、前者よりも、湿熱時の引っ張り強度が高い。このことから、アミン類の中でも、炭素数が2〜15以下のものを重合開始剤として用いることにより、熱的に安定で重合度が大きく、湿熱時の剛性の高いポリ乳酸を生成できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸を最小構成単位とするポリ乳酸と、該ポリ乳酸の酸末端を封鎖する、下記の化(1)で表されるアミノ基とからなることを特徴とする酸末端封鎖ポリ乳酸。
【化1】

(式中、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数2以上15以下の炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基を含む)を示す。)
【請求項2】
前記化(1)の中のAは、下記化(4)〜(7)のいずれかからなる請求項1記載の酸末端封鎖ポリ乳酸。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【請求項3】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量が50000以上で、かつ熱重量分析装置を用いて220℃で60分間保持したときの熱減量率が0.3%以下である請求項1又は請求項2に記載の酸末端封鎖ポリ乳酸。
【請求項4】
下記化(2)で示される重合開始剤と、触媒との存在下で、ラクチドを開環重合することを特徴とする酸末端封鎖ポリ乳酸の製造方法。
【化2】

(式中、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数2以上15以下の炭化水素(脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素を含む)を示す。)
【請求項5】
前記重合開始剤は、ベンジルアミン、ドデシルアミン、N−ベンジルメチルアミン、及びエチルアミンのいずれか1種以上である請求項4記載の酸末端封鎖ポリ乳酸の製造方法。
【請求項6】
ラクチドの開環重合を開始させ、下記化(2)で示されることを特徴とする重合開始剤。
【化2】

(式中、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数2以上15以下の炭化水素(脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素を含む)を示す。)
【請求項7】
前記重合開始剤は、ベンジルアミン、ドデシルアミン、N−ベンジルメチルアミン、及びエチルアミンのいずれか1種以上である請求項6記載の重合開始剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−285572(P2010−285572A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141928(P2009−141928)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】