説明

酸素吸収体および酸素吸収体の製造方法

【課題】酸素吸収能が高く、低分子量化合物を使用しながら臭気やブリードアウトが少なく、透明性や成形性に優れた酸素吸収体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上記目的は反応性有機化合物と粒径が100nm以下の無機酸化物とからなる複合体と、酸素吸収促進剤と、必要に応じ重合体その他の成分を含む酸素吸収体によって達成される。このような酸素吸収体は、無機酸化物微粒子ゾルと反応性有機化合物を混合し、溶媒を除去し、酸素吸収促進剤および必要に応じ重合体と混合することによって製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素吸収体に関する。本発明によって提供される酸素吸収体は、密閉容器内に残存する酸素を吸収する吸収体などとして有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素を吸収する方法としては、鉄系の化合物を酸素吸収剤として樹脂中に分散させてその機能を発現させる方法が知られている。例えば、特開2002−249174号公報(特許文献1)には、還元鉄粉と塩化カルシウムなどからなる塩被覆系鉄粉酸素吸収剤が開示されている。
【0003】
一方、食品などのように、酸素による劣化が大きい物品を安定に保存するためには、酸素が少ない環境下で保存することが重要である。そのような保存を可能にするため、従来からさまざまな酸素吸収剤が提案されている。そのような酸素吸収剤として、酸素によって酸化されうるポリマーと酸化触媒からなるものが広く知られている。
【0004】
一方、有機化合物を無機物に担持させた酸素吸収剤も開示されている(たとえば特許文献2および3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−249174号公報
【特許文献2】特開2000−462号公報
【特許文献3】特開2000−5596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記鉄系化合物を用いる酸素吸収剤においては鉄一分子で酸素一分子しか吸収しないため、十分な量の酸素を吸収するためには、多量の鉄の存在が必要となる。また、たとえばこのような酸素吸収剤を水分を含む食品の包装材などに使用した場合、電子レンジが使用できないなどの問題がある。
【0007】
また、酸化されうるポリマーと酸化促進剤とからなる酸素吸収剤を包装材などとして使用する場合、包装材の基材ポリマーとの相容性や、溶融粘度の関係等の制約を受ける場合がある。一方、低分子量化合物からなる酸素吸収剤は、ブリードアウトや、臭気などの問題を生じやすい。
【0008】
さらに、特許文献2、3に記載の酸素吸収剤は、包装材などに用いるために樹脂と混合することは想定されておらず、実際には樹脂と混合すると酸素吸収性能が発揮されず、また、有機化合物として、自身が臭気を有する有機化合物を使用した場合の臭気防止効果も十分ではなかった。さらに、樹脂組成物とした場合に、樹脂組成物が透明性を損ないあるいは失う、樹脂中での分散性が十分確保されず樹脂組成物の強度や成形性を損ない、著しくは成形不能になるなどの問題点があった。
【0009】
このような状況に鑑み、本発明は、例えば食品包装材などの樹脂層の構成材料に使用でき、酸素吸収能が高く、低分子量化合物を使用しても臭気やブリードアウトの問題がなく、透明性や成形上問題のない酸素吸収体およびそれを用いた包装材並びに酸素吸収体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、反応性有機化合物と、粒径が100nm以下の無機酸化物とからなる複合体、および酸素吸収促進剤を含む酸素吸収体によって達成される。
【0011】
すなわち、本発明の酸素吸収体は、反応性有機化合物と、粒径が100nm以下の無機酸化物とからなる複合体と、酸素吸収促進剤とを含有する酸素吸収体である。
【0012】
また、本発明のもう一つの酸素吸収体は、反応性有機化合物と無機酸化物とからなる複合体および酸素吸収促進剤を含み、該複合体が重合体に分散された酸素吸収体であって、該重合体中に分散する該複合体粒子の集合体の平均直径が1μm以下である酸素吸収体である。
【0013】
また、本発明の酸素吸収体の製造方法は、平均粒径が100nm以下の無機酸化物と反応性有機化合物とから、無機酸化物−反応性有機化合物複合体を製造する工程(工程1)と、上記複合体と酸素吸収促進剤とを混合する工程(工程2)とからなる酸素吸収体の製造方法である。
【0014】
また、本発明のもう一つの酸素吸収体の製造方法は、平均粒径が100nm以下の無機酸化物と、反応性有機化合物と、酸素吸収促進剤とを溶媒の存在下に混合し、混合後に溶媒を除去する酸素吸収体の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸素吸収体を構成する複合体は、粒径100nm以下の粒子複合体であるため、樹脂に均一に分散させることが容易である。その結果、上記複合体を含む樹脂組成物は成形性、透明性が損なわれない。また、本発明の酸素吸収体は、酸化される反応性有機物が微粒子に吸着しているため、比表面積が大きくなり高い酸素吸収能を発揮する。さらに、樹脂中に複合体が分散している場合においても高い酸素吸収能を発揮し、ブリードアウトの発生や臭気を防止することができる。
【0016】
また、本発明の製造方法によれば、上記の優れた酸素吸収体を容易に得ることができる。
【0017】
さらに、本発明により、酸素吸収能が高い包装材が得られる。このような包装材を用いることによって、包装材を用いて形成された包装体内部の酸素を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する化合物として、具体的な化合物を例示しているが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0019】
以下、本発明の酸素吸収体について説明する。本発明の酸素吸収体は、反応性有機化合物と、粒径100nm以下の無機酸化物粒子との複合体、および、遷移金属化合物を含む。以下、反応性有機化合物と粒径100nm以下の無機酸化物粒子との複合体を、微粒子複合体(A)と記すことがある。
【0020】
まず、微粒子複合体(A)を構成する無機酸化物粒子について説明する。無機酸化物粒子の粒径は100nm以下である。ここで、この粒径は、無機粒子の30%ゾルを動的光散乱法で測定することによって測定できる。無機酸化物粒子の粒径が大きい場合、重合体との混合において、機械強度の低下、分散性の低下をもたらす傾向がある。本発明で用いられる粒径としては、粒径100nm以下であればよく、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下のものが用いられる。粒径が100nm以下であることにより、微粒子複合体(A)を樹脂中に混合した場合の透明性、成形性が著しく改善され、酸素吸収能力も向上する。一方、粒径が小さすぎる粒子では、無機酸化物粒子同士が凝集物を形成し、反応性有機物との組成物形成において均一な微粒子複合体(A)を形成することの困難性が増し、大きすぎる粒子同様の問題を起こす場合がある。したがって、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上のものが用いられる。
【0021】
粒系100nm以下の無機酸化物粒子を構成する無機酸化物は、ラジカル機構を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、反応性有機化合物と複合体を形成する観点からは、その表面に反応性有機化合物と化学反応、化学吸着、あるいは物理吸着しやすいための極性官能基を有するものが好ましい。種々の有機化合物と強い結合を生成できる点において、上記極性官能基としては水酸基が好ましい。
【0022】
本発明で用いられるこのような無機酸化物としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどを使用することが出来、無機酸化物は、これらの単一または複数の組成物であっても構わない。これらの中で、種々の微粒子が形成しやすく、均一な表面状態が得られやすい点でシリカ即ち酸化ケイ素が特に好ましい。
【0023】
無機酸化物は、粉末状、ゲル状、ゾル状のものなど、いかなるものでも使用できるが、粒子が凝集し、巨大粒子となりにくく、有機物との均質な組成物を形成しやすいという観点において、ゾル状物あるいはゾル状物由来のものが好ましい。
【0024】
次に、微粒子複合体(A)を構成する反応性有機化合物について説明する。ここでいう反応性有機化合物とは、上記無機酸化物との間に相互作用を有し、酸素吸収剤の存在下あるいは非存在下に酸素によって酸化されうる有機化合物をいう。本発明の反応性有機化合物としては、上記無機酸化物との間で、相互作用を有するものであれば特に制限されるものではなく、無機酸化物の表面官能基と化学反応することによって結合するもの、イオン結合、水素結合などによって化学的に相互作用するもの、静電的相互作用など物理的に相互作用するものなどが挙げられる。
【0025】
このような観点から、反応性有機化合物としては、カルボン酸およびその誘導体、アルデヒドおよびその誘導体、ケトンおよびその誘導体、アルコールおよびその誘導体、アミンおよびその誘導体などの官能基を有しているものが好ましく用いられる。反応性有機化合物は上記官能基を1種類だけ有していても良いし、複数種類、複数個の官能基を有していても構わない。
【0026】
上記反応性有機化合物は、酸素と反応し、酸素を吸収する官能性部位を有している必要がある。更に、酸素と反応した場合に、酸素と反応する部位の構造によっては、反応性有機物が有する結合が解裂し、不快な低分子量の臭気性物質が発生することがあるため、上記官能性部位の構造は、このような臭気物質の発生を出来るだけ抑制できるものであることが好ましい。したがって、本発明で使用する反応性有機物としては、エチレン性炭素−炭素不飽和結合または、環状エーテル構造を有していることが好ましい。反応性有機化合物は、これらの官能性部位を1分子中に、少なくとも1箇所有していればよく、複数または数種を有していても構わない。
【0027】
上記反応性有機物の分子量は、特に制限されるものではないが、無機酸化物により保持される必要があると言う観点から、通常50〜3000、揮発による反応性有機物の気散などを考慮して、80〜2000の範囲のものを使用することが好ましい。
【0028】
本発明で反応性有機化合物として使用されるカルボン酸およびその誘導体としては、特に制限されるものではないが、例えば、クロトン酸、4−ペンテン酸、3−ヘキセン酸、2−シクロペンテン−1−カルボン酸、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸、6−ヘプテン酸、5−ノルボルネン−1−カルボン酸、7−オキサ−5−ノルボルネン−1−カルボン酸、4−シクロオクテン−1−カルボン酸、5−シクロオクテン−1−カルボン酸、シトロネリル酸、オレイン酸、ゲラニル酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドデカヘキサコエン酸、イタコン酸、テトラヒドロ−2−フラン酸、テトラヒドロ−3−フラン酸、テトラヒドロ−2−ピラン酸、テトラヒドロ−3−ピラン酸、テトラヒドロ−4−ピラン酸、グルコン酸、テトラヒドロフタル酸およびその誘導体等が挙げられる。これらは、単独で使用して複数を混合して使用しても構わない。なお、ここでいう誘導体としては上記カルボン酸のエステルや塩、アミドなどが挙げられる。
【0029】
本発明で使用されるアルデヒドおよびその誘導体としては、特に制限されるものではないが、例えば、クロトンアルデヒド、セネシオンアルデヒド、2−シクロペンテン−1−カルボアルデヒド、3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド、5−ノルボルネン−1−カルボアルデヒド、4−シクロオクテン−1−カルボアルデヒド、5−シクロオクテン−1−カルボアルデヒド、7−オクテナール、2,7−オクテジエナール、シトロネラール、シトラール、ファルネサール、テトラヒドロフラン−2−カルボアルデヒド、テトラヒドロフラン−3−カルボアルデヒド、テトラヒドロピラン−2−カルボアルデヒド、テトラヒドロピラン−3−カルボアルデヒド、テトラヒドロピラン−4−カルボアルデヒドおよびその誘導体等が挙げられる。これらは、単独で使用して複数を混合して使用しても構わない。なお、ここでいう誘導体としては、アセタールやヘミアセタールなどが挙げられる。
【0030】
本発明で使用されるアルコールおよびその誘導体としては、特に制限されるものではないが、例えば、クロチルアルコール、ホモアリルアルコール、プレノール、イソプレノール、4−メチル−3−ペンテン−1−オール、2−シクロヘキセノール、3−シクロヘキセノール、3−シクロヘキセン−1−メタノール、5−シクロオクテノール、5−シクロオクテン−1、2−ジオール、5−ノルボルネン−2−オール、5−ノルボルネン−2−メタノール、3−シクロヘキセン−1、1−ジメタノール、テルピネオール、イソプレゴール、7−オクテノール、2,7−オクタジエノール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ファルネソール、リボース、アラビノース、キシロース、2−ヒドロキシテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン−2−メタノール、テトラヒドロフラン−3−メタノール、4−ヒドロキシテトラヒドロピラン、テトラヒドロピラン−2−メタノール、テトラヒドロピラン−3−メタノール、テトラヒドロピラン−4−メタノールおよびその誘導体等が挙げられる。これらは、単独で使用して複数を混合して使用しても構わない。
【0031】
本発明で使用されるアミンおよびその誘導体としては、特に制限されるものではないが、例えば、アリルアミン、プレニルアミン、オレイルアミン、ゲラニルアミン、2−(1−シクロヘキシル)エチルアミン、2−アミノ−5−ノルボルネン、テトラヒドロフルフリルアミン、テトラヒドロフラン−3−メチルアミン、テトラヒドロピラン−2−メチルアミン、テトラヒドロピラン−3−メチルアミン、テトラヒドロピラン−4−メチルアミン、グルコサミン、3−ピロリンおよびその誘導体が挙げられる。これらは、単独で使用しても複数を混合して使用しても構わない。
【0032】
本発明では、これらの反応性有機物を単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用しても構わない。
【0033】
本発明の酸素吸収体は、反応性有機化合物と粒径100nm以下の無機酸化物粒子とからなる複合体を含む。ここで、複合体とは、反応性有機化合物と無機酸化物粒子とが化学結合しているか、あるいは反応性有機化合物が無機酸化物粒子上に化学的、物理的に相互作用して存在している状態を示す。ここで、反応性有機化合物が無機酸化物粒子と化学反応により結合している場合は、反応性有機化合物は、化合物の状態ではなく、化合物残基の状態で存在する場合がある。例えば、反応性有機化合物としてエステル基、カルボン酸基、アルデヒド基などを有するものを採用し、無機酸化物粒子として酸化ケイ素を採用してこれらを加熱下に結合させた場合、少なくとも反応性有機化合物の一部が酸化ケイ素の表面のOH基と反応し、アルコールや水が脱離して結合を生成することがある。このような場合、無機酸化物粒子上には原料として使用した反応性有機化合物由来の残基が存在することになるが、本明細書中では残基の状態で結合しているものも含めて反応性有機化合物と称する。
【0034】
ここで、微粒子複合体(A)を構成する反応性有機化合物と無機酸化物粒子との量比は、特に制限されるものではないが、反応性有機化合物と無機酸化物粒子とが充分相互作用し、揮発性を下げ、且つ安定性を保てる範囲で適宜選択される。即ち、無機酸化物100重量部に対して、反応性有機化合物が、通常0.01〜1000重量部、酸素吸収体としての吸収量、経済性、操作性を考慮して好ましくは0.1〜500重量部、より好ましくは、0.5〜200重量部の範囲で使用される。
【0035】
本発明の酸素吸収体は、酸素吸収促進剤を含む。酸素吸収促進剤としては、遷移金属化合物、ラジカル発生剤、光触媒などを挙げることができる。
【0036】
これらの酸素吸収促進剤の中で、少量で高い酸素吸収速度を得るなどの観点からは、遷移金属化合物が好適である。
【0037】
本発明で使用される遷移金属化合物としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、バナジウム、モリブデン等の遷移金属などの、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸等の有機酸との塩、各種配位子との錯体などが挙げられる。これらの中でも、酸素吸収が促進されることから、5〜11族の金属の化合物が好ましく、その具体例としては、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト、シュウ酸コバルト、プロピオン酸コバルト、ブタン酸コバルト、吉草酸コバルト、オクタン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト、安息香酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ナフチル酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ビス(2,3−ブタンジオンジオキシム)ジクロロコバルト(II)、トリス(エチレンジアミン)コバルト(III)硫酸塩、ジアミントリクロロ(ジメチルアミン)コバルト(III)、2,2’−エチレンビス(ニトリロメチリジン)−ジフェノーラトコバルト(II)、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト、1,1’−ジクロロビス(シクロペンタジエニル)コバルト、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、プロピオン酸ニッケル、ブタン酸ニッケル、吉草酸ニッケル、オクタン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、安息香酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、ジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、1,1’−ジクロロビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、水酸化パラジウム、酸化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、炭酸パラジウム、ギ酸パラジウム、酢酸パラジウム、シュウ酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、ブタン酸パラジウム、吉草酸パラジウム、オクタン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、安息香酸パラジウム、ステアリン酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネート;水酸化銅、酸化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、硝酸銅、硫酸銅、リン酸銅、炭酸銅、酢酸銅、シュウ酸銅、プロピオン酸銅、ブタン酸銅、吉草酸銅、オクタン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、安息香酸銅、ステアリン酸銅;水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、臭化バナジウム、硝酸バナジウム、硫酸バナジウム、リン酸バナジウム、炭酸バナジウム、酢酸バナジウム、シュウ酸バナジウム、プロピオン酸バナジウム、ブタン酸バナジウム、吉草酸バナジウム、オクタン酸バナジウム、2−エチルヘキサン酸バナジウム、安息香酸バナジウム、ステアリン酸バナジウム;水酸化モリブデン、酸化モリブデン、塩化モリブデン、臭化モリブデン、硝酸モリブデン、硫酸モリブデン、リン酸モリブデン、炭酸モリブデン、酢酸モリブデン、シュウ酸モリブデン、プロピオン酸モリブデン、ブタン酸モリブデン、吉草酸モリブデン、オクタン酸モリブデン、2−エチルヘキサン酸モリブデン、安息香酸モリブデン、ステアリン酸モリブデン;水酸化マンガン、酸化マンガン、二酸化マンガン、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、リン酸マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、プロピオン酸マンガン、ブタン酸マンガン、吉草酸マンガン、オクタン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸マンガン、安息香酸マンガン、ステアリン酸マンガン;水酸化鉄、酸化鉄、塩化鉄、臭化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、リン酸鉄、炭酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、プロピオン酸鉄、ブタン酸鉄、吉草酸鉄、オクタン酸鉄、2−エチルヘキサン酸鉄、安息香酸鉄、ステアリン酸鉄、ナフチル酸鉄、鉄アセチルアセトネート、フェロセン、1,1’−ジクロロフェロセン、カルボキシフェロセン、1,1−ジフェニルホスフィノフェロセン、フェロセニルテトラフルオロボレート、トリカルボニル(シクロオクタテトラエン)鉄、(η−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)トリカルボニル鉄などが挙げられるが、特に経済性、酸素吸収効率の観点から各種コバルト塩の使用が好ましい。
【0038】
遷移金属化合物の使用量は、特に制限されるものではないが、微粒子複合体(A)に対して通常、金属換算で10ppm〜等重量の範囲内、好ましくは20ppm〜50重量%の範囲内、より好ましくは、100ppm〜20重量%の範囲内である。
【0039】
酸素吸収剤として遷移金属化合物を使用することが適切でない場合、あるいは遷移金属化合物が酸化を充分促進しない反応性有機化合物に対しては、ラジカル発生剤が使用されうる。
【0040】
ラジカル発生剤としては、各種のN−ヒドロキシイミド化合物が挙げられる。具体的には、たとえば、N−ヒドロキシコハクイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N、N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミドなどが挙げられる。これらの中でも、N−ヒドロキシコハクイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N、N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミドが特に好ましい。
【0041】
さらに、酸素吸収促進剤としては光触媒も使用できる。このような光触媒としては酸化チタン粒子が挙げられる。
【0042】
本発明の酸素吸収体は、微粒子複合体(A)、酸素吸収促進剤に加えて、重合体を含んでいても良い。以下、重合体を含む態様について説明する。なお、本発明の酸素吸収体において重合体を含む態様を、以下、酸素吸収体(II)と記すことがある。重合体を含む態様において、本発明の酸素吸収体は、通常、重合体と、酸素吸収促進剤と、該重合体に分散された微粒子複合体(A)とを含む。
【0043】
微粒子複合体が重合体に分散される場合において、微粒子複合体は微粒子状態で分散していることが理想的だが、通常は微粒子がある程度の数集合した集合体の状態で重合体中に分散する。集合体の径は小さい方が酸素吸収能力の点で好ましく、集合体の平均直径として1μm以下であることが好ましい。なお、ここでいう集合体の平均直径とは、酸素吸収体をフィルムに成形し、その断面を操作型電子顕微鏡で撮影し、分散している微粒子の集合体20個以上のもっとも長い部分の直径を平均したものである。
【0044】
酸素吸収体(II)に含まれる重合体と微粒子複合体(A)との量比は特に限定はなく、目的に応じて調整される。例えば、重合体100重量部に対する微粒子複合体(A)の量が、たとえば0.1重量部〜30重量部の範囲であり、好ましくは1重量部〜10重量部の範囲である。
【0045】
重合体は、酸素吸収体(II)の用途に応じて選択される。重合体としては、加工性などの観点から、種々の熱可塑性樹脂を使用することができる。このような熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテンといったポリオレフィンを用いてもよい。また、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレートを用いてもよい。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートといったポリエステルを用いてもよい。また、エチレンまたはプロピレンと他の単量体との共重合体を用いてもよい。他の単量体としては、たとえば、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンといったα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸といった不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートといったカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂といった合成樹脂を用いてもよい。
【0046】
上記の熱可塑性樹脂の中でも、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂は、酸素バリア性が高いため、本発明の酸素吸収体に用いた場合、酸素バリア性と酸素吸収能力を有し、酸素による劣化が問題となる物品の包装材料に適するため特に好適である。以下、これらの樹脂について詳述する。
【0047】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステルの単独重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体、特にビニルエステルとエチレンとの共重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化することによって得られる。ビニルエステルとしては、たとえば酢酸ビニルが挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)を用いてもよい。
【0048】
ポリビニルアルコール系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、好ましくは90モル%以上であり、たとえば95モル%以上である。ケン化度を90モル%以上とすることによって、高湿度下におけるガスバリア性の低下を抑制できる。なお、ケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール系樹脂を用いてもよい。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法によって求めることができる。
【0049】
ポリビニルアルコール系樹脂の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、さらに好適には1〜30g/10分である。メルトフローレートが0.1g〜100g/10分の範囲から外れる場合、溶融成形を行うときの加工性が悪くなる場合が多い。
【0050】
ポリビニルアルコール系樹脂の中でも、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、溶融成形が可能で、高湿度下でのガスバリア性が良好であるという特徴を有する。EVOHの構造単位に占めるエチレン単位の割合は、たとえば5〜60モル%(好ましくは10〜55モル%)の範囲である。エチレン単位の割合を5モル%以上とすることによって、高湿度下におけるガスバリア性の低下を抑制できる。また、エチレン単位の割合を60モル%以下とすることによって、高いガスバリア性が得られる。エチレン単位の割合は、核磁気共鳴(NMR)法によって求めることができる。なお、エチレン単位の割合が異なる2種類以上のEVOHの混合物を用いてもよい。
【0051】
また、本発明の効果が得られる限り、EVOHは、共重合成分として少量の他の単量体を含んでもよい。このような単量体の例としては、たとえば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸といった不飽和カルボン酸やその誘導体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類が挙げられる。EVOHが共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有する場合は、共押出成形または共射出成形によって成形を行う場合に、均質な成形物の製造が容易になる。ビニルシラン系化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0052】
なお、EVOHにホウ素化合物を添加してもよい。これによって、共押出成形または共射出成形によって成形を行う場合に、均質な成形物の製造が容易になる。ホウ素化合物としては、たとえば、ホウ酸類(たとえばオルトホウ酸)、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類が挙げられる。また、EVOHにアルカリ金属塩(たとえば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム)を添加してもよい。これによって、層間接着性や相溶性を向上できる場合がある。また、EVOHにリン酸化合物(たとえば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム)を添加してもよい。これによって、EVOHの熱安定性を向上できる場合がある。ホウ素化合物、アルカリ金属塩およびリン化合物といった添加剤が添加されたEVOHは、公知の方法で製造することができる。
【0053】
ポリアミド系樹脂の種類は特に限定されず、たとえば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,12)等の脂肪族ポリアミド単独重合体;カプロラクタム/ラウロラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6/6,6/6,12)等の脂肪族ポリアミド共重合体;ポリメタキシリレンアジパミド(MX−ナイロン)、ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド共重合体(ナイロン−6T/6I)等の芳香族ポリアミドが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、ポリカプロアミド(ナイロン−6)およびポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)が好ましい。
【0054】
ポリアクリロニトリル系樹脂としては、アクリロニトリルの単独重合体や、アクリル酸エステルなどの単量体とアクリロニトリルとの共重合体が挙げられる。
【0055】
本発明の酸素吸収体(II)には、本発明の効果が得られる限り、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、防曇剤、および乾燥剤といった添加剤の少なくとも1つを含んでもよい。
【0056】
熱安定剤(溶融安定剤)としては、たとえば、ハイドロタルサイト化合物や、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(たとえばステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム)の1種または2種以上を用いることができる。これらの化合物を用いることによって、組成物の製造時において、ゲルやフィッシュアイの発生を防止することができる。
【0057】
脱臭剤としては、たとえば、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、鉄(II)化合物、有機酸類が挙げられる。
【0058】
以下、本発明の、酸素吸収体の製造方法について説明する。
【0059】
本発明の酸素吸収体は、反応性有機化合物、粒径100nm以下の無機酸化物粒子、酸素吸収促進剤、必要に応じて熱可塑性樹脂などの重合体やその他の添加物を混合することによって製造できる。本発明の製造方法は、反応性有機化合物を無機酸化物と混合し、微粒子複合体(A)を製造する工程を含む。その他の成分の混合順序に特に制約はなく、目的に応じて適宜選択される。無機酸化物および反応性有機化合物には、上記で説明した無機酸化物および反応性有機化合物を適用できる。以下に、より具体的な方法について説明する。
【0060】
本発明の製造方法は、反応性有機化合物と、粒径100nm以下の無機酸化物粒子とから微粒子複合体(A)を製造する工程を含む。
【0061】
微粒子複合体(A)を製造する工程では、まず、反応性有機化合物と無機酸化物粒子と溶媒との混合物を調製する。溶媒は、有機化合物と無機酸化物とを均一に分散または溶解できるものであればよい。そのような溶媒としては、有機溶媒;たとえば、メタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル、酢酸エチルなど;あるいは水などが挙げられる。これらの中でも、メタノール、イソプロパノールは、一般的な反応性有機化合物、表面にOH基を有する無機酸化物粒子表面の双方に親和性があり好ましい。
【0062】
上記方法のより具体的な方法としては、無機酸化物粒子のゾル(コロイド溶液)に反応性有機化合物を添加する方法が好適である。ここでは溶媒は、ゾルを保持していた水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類などの溶媒そのままでもよいし、新たに上記溶媒を添加しても構わない。
【0063】
次に、上記混合物から溶媒を除去する。溶媒の除去の方法は特に限定がなく、たとえば、濾過、減圧乾燥、および加熱といった方法の少なくとも1つを適用できる。ここで、上記具体的な方法において、混合物を加熱し、無機酸化物のゾルを保持していた、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類を除去することによって反応性有機物を無機酸化物と複合体化させることができる。
【0064】
溶媒およびゾルを形成させていた水、アルコール類を除去するために、加熱を行う場合には、窒素気流下などの窒素雰囲気下や減圧下などのように、除去しやすい雰囲気で行うことが好ましい。同様に、溶媒および水を除去する圧力下でのおのおのの沸点以上の温度で混合物を加熱する工程を含むことが好ましい。また、加熱は反応性有機物の分解温度未満の温度で行うことが好ましい。水を除去する場合、有機溶媒と水とは別々に除去してもよいし、同時に、共沸などの方法を用いて除去してもよい。たとえば、有機溶媒を除去してから、有機溶媒が除去された混合物を水の沸点以上の温度で加熱してもよい。
【0065】
また、反応性有機化合物が、無機酸化物粒子と化学反応によって結合する場合は、溶媒を除去する段階で加熱することによって、結合の生成を促進することができる。また、反応性有機化合物が無機酸化物粒子と縮合反応によって結合する場合は、縮合反応によって生成した水やアルコールを除去する条件を取ることにより、結合の生成を促進することができる。
【0066】
以上の方法により、微粒子複合体(A)を容易に調整することが出来る。ここで、本発明の酸素吸収体を製造するためには、微粒子複合体(A)に酸素吸収促進剤を添加する必要がある。この酸素吸収促進剤を添加する方法として、まず、第一の工程で、上記の方法などにより微粒子複合体(A)を製造し、引き続き第二の工程で微粒子複合体(A)と酸素吸収促進剤をブレンドしてもよい。また、上記微粒子複合体(A)を製造する工程の途中で、例えば反応性有機化合物とともに酸素吸収促進剤を溶媒中に溶解あるいは分散させるといった方法により、反応性有機化合物とともに無機酸化物に添着させて、一工程で酸素吸収体を製造してもよい。このようにして製造された、主として反応性有機化合物、無機酸化物、酸素吸収促進剤からなる酸素吸収体を、以下の説明で酸素吸収体(I)と記すことがある。
【0067】
次に、微粒子複合体(A)、遷移金属に加え、重合体およびその他の添加物を含む酸素吸収体(II)を製造する方法について説明する。
【0068】
酸素吸収体(II)は、反応性有機化合物、無機酸化物、酸素吸収促進剤、重合体、および添加剤といった成分を混合することによって形成できる。この製造方法においても、反応性有機化合物を無機酸化物と混合し、微粒子複合体(A)を製造する工程を含んでいれば、各成分を混合する方法および混合の順序は特に限定されない。たとえば、第一の工程で上記の方法により微粒子複合体(A)を調製し、第二の工程で微粒子複合体(A)、重合体、酸素吸収促進剤および必要に応じ他の添加剤を混合してもよい。この場合、酸素吸収促進剤は、樹脂その他の添加物と同時に添加してもよいし、あらかじめ調製された樹脂その他の添加物と混合物の形で添加しても構わない。あるいは、微粒子複合体(A)、酸素吸収促進剤、重合体およびその他の添加物すべての成分を同時に混合してもよい。また、あらかじめ調製した上記酸素吸収体(I)と添加剤とを混合した後に樹脂と混合してもよいし、酸素吸収体(I)と樹脂とを混合した後に、添加剤と混合してもよいし、添加剤と樹脂とを混合した後に酸素吸収体(I)と混合してもよい。
【0069】
微粒子複合体(A)あるいは酸素吸収体(I)、重合体、その他の添加物を混合する具体的な方法としては、たとえば、各成分を溶媒に溶解あるいは分散させて複数の溶液を作製し、これらの溶液を混合した後に溶媒を蒸発させる方法や、溶融した樹脂に他の成分を添加して混練する方法が挙げられる。重合体が熱可塑性樹脂である場合、具体的には、上記の方法で製造された微粒子複合体(A)と、遷移金属と、熱可塑性樹脂と、その他の添加物を溶融混練する方法が挙げられる。あるいは、上記方法で製造した酸素吸収体(I)と、熱可塑性樹脂と、その他の添加物とを溶融混練してもよい。
【0070】
溶融混練法は、工程の簡便さおよびコストの観点で、好ましい。このとき、高い混練度を達成することのできる装置を使用し、各成分を細かく均一に分散させることによって、組成物の酸素吸収性能および透明性を高めることができ、また、組成物にゲル・ブツが混入することを防止できる。
【0071】
高い混練度を達成できる装置としては、特許文献4(特開2002−146217号公報)に挙げられているような装置を用いることができる。混練機は1機でもよいし、2機以上を連結して用いてもよい。
【0072】
混練機としては、たとえば、ミキシングロール、コニーダー等の連続型混練機、高速ミキサー、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダー等のバッチ型混練機、株式会社KCK製のKCK混練押出機等の石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用した装置、一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTM等)を設けたもの、リボンブレンダー、ブラベンダーミキサー等の簡易型の混練機等を挙げることができる。これらの中でも、連続型混練機が好ましい。市販されている連続式インテンシブミキサーとしては、Farrel社製FCM、株式会社日本製鋼所製CIM、株式会社神戸製鋼所製KCM、LCM、ACM等が挙げられる。これらの混練機の下に一軸押出機を設置し、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用することが好ましい。また、ニーディングディスクまたは混練用ロータを有する二軸混練押出機としては、例えば、株式会社日本製鋼所製TEX、Werner&Pfleiderer社製ZSK、東芝機械株式会社製TEM、池貝鉄工株式会社製PCM等が挙げられる。
【0073】
混練温度は、通常50〜300℃の範囲である。化合物(A)の酸化防止のためには、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが好ましい。混練時間は、長い方が良い結果が得られるが、化合物(A)の酸化防止および生産効率の観点から、通常10〜600秒であり、好ましくは15〜200秒であり、より好ましくは15〜150秒である。
【0074】
以下、本発明の酸素吸収体を含む成形物について説明する。本発明の、熱可塑性樹脂を含む酸素吸収体(II)は、様々な形態、たとえば、フィルム、シート、パイプおよび容器などに成形することができる。なお、本発明の酸素吸収体(II)を一旦ペレットとしてから成形してもよいし、上記酸素吸収体(II)の製造方法において記した各成分をドライブレンドして、直接成形してもよい。これらの成形物は、包装材や脱酸素剤として用いることができる。
【0075】
酸素吸収体は、たとえば、溶融押出成形法によってフィルム、シートおよびパイプといった形状に成形されてもよい。また、射出成形法によって容器形状に成形してもよい。また、中空成形法によってボトルなどの中空容器に成形されてもよい。中空成形としては、たとえば、押出中空成形や射出中空成形を適用できる。
【0076】
本発明の包装材について説明する。本発明の包装材は、上述した酸素吸収体からなる部分を含む。この部分は、どのような形状であってもよく、たとえば層状、ボトル状、またはキャップ状といった形状である。この包装材は、上記酸素吸収体(II)を様々な形状に加工することによって形成できる。
【0077】
包装材は、酸素吸収体からなる層(以下、層(A)という場合がある)のみで構成されてもよいが、他の材料からなる層(以下、層(B)という場合がある)との積層体から構成されていてもよい。積層体とすることによって、機械的特性、水蒸気バリア性、酸素バリア性といった特性をさらに向上させることができる。層(B)の材料および数は、包装材に必要とされる特性に応じて選択される。
【0078】
本発明の積層体の構造は特に限定はない。層(A)と層(B)との間には、両者を接着するための接着性樹脂層(以下、層(C)という場合がある)を配置してもよい。積層体の構成は、たとえば、層(A)/層(B)、層(B)/層(A)/層(B)、層(A)/層(C)/層(B)、層(B)/層(C)/層(A)/層(C)/層(B)、層(B)/層(A)/層(B)/層(A)/層(B)、および層(B)/層(C)/層(A)/層(C)/層(B)/層(C)/層(A)/層(C)/層(B)が挙げられる。積層体が複数の層(B)を含む場合、それらは同じであっても異なってもよい。積層体の各層の厚さは、特に限定されない。積層体全体の厚さに対する層(A)の厚さの割合を2〜20%の範囲とすることによって、成形性およびコストの点で有利となる場合がある。
【0079】
層(B)は、たとえば、熱可塑性樹脂や金属で形成できる。層(B)に使用される金属としては、たとえば、スチールやアルミ等が挙げられる。層(B)に使用される熱可塑性樹脂は特に限定されないが、たとえば、層(A)について例示した樹脂を用いることができる。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテンといったポリオレフィンを用いてもよい。また、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いてもよい。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートといったポリエステルを用いてもよい。また、ポリカプロアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリメタキシリレンアジパミドといったポリアミドを用いてもよい。また、エチレンまたはプロピレンと他の単量体との共重合体を用いてもよい。他の単量体としては、たとえば、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンといったα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸といった不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートといったカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類を挙げることができる。
【0080】
層(A)および層(B)は、無延伸のものであってもよいし、一軸もしくは二軸に延伸または圧延されているものであってもよい。
【0081】
層(C)に使用される接着性樹脂は、各層間を接着できるものであれば特に限定されない。たとえば、ポリウレタン系、ポリエステル系一液型または二液型硬化性接着剤、不飽和カルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸等)をオレフィン系重合体に共重合またはグラフト変性したもの(カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂)を用いることができる。層(A)および層(B)がポリオレフィン樹脂を含む場合には、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることによって高い接着性を実現できる。カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体といった重合体をカルボン酸変性して得られる樹脂が挙げられる。
【0082】
積層体を構成する層の少なくとも1層に、脱臭剤を配合してもよい。脱臭剤には、たとえば、例示した脱臭剤を用いることができる。
【0083】
積層体の製造方法は特に限定されず、たとえば公知の方法で形成できる。たとえば、押出ラミネート法、ドライラミネート法、溶剤流延法、共射出成形法、共押出成形法といった方法を適用できる。共押出成形法としては、たとえば、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法が適用できる。
【0084】
本発明の包装材が多層構造を有する容器である場合、酸素吸収体からなる層を容器の内面に近い層、たとえば最内層に配置することによって、容器内の酸素を速やかに吸収することが可能となる。
【0085】
本発明は、多層容器のなかでも、全層の厚さが300μm以下である多層容器、または押出しブロー成形法によって製造される多層容器に好適に用いられる。 全層の厚みが300μm以下である多層容器は、多層フィルムのような比較的薄い多層構造体からなる容器であり、通常パウチ等の形態で使用される。フレキシブルで製造も簡便であり、かつガスバリア性に優れ、さらには持続的な酸素吸収機能を有するので、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品の包装に極めて有用である。全層厚さを300μm以下とすることによって、高いフレキシブル性が得られる。全層の厚さを250μm以下、特に200μm以下とすることによって、より高いフレキシブル性が得られる。また、機械的強度を考慮すると、全層厚さは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。
【0086】
このような多層容器を密封するために、多層フィルムの少なくとも一方の表面層は、ヒートシール可能な樹脂からなる層であることが好ましい。そのような樹脂としては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンを挙げることができる。袋状に加工された多層フィルムに内容物を充填してヒートシールすることによって、多層容器が得られる。
【0087】
一方、押出しブロー成形法によって製造される多層容器は、通常ボトル等の形態で使用される。生産性が高く、かつガスバリア性に優れ、さらには持続的な酸素吸収機能を有するので、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品の包装に極めて有用である。
【0088】
ボトル型の容器の胴部の厚さは、一般的には100〜2000μmの範囲であり、用途に応じて選択される。この場合、酸素吸収体からなる層の厚さは、たとえば2〜200μmの範囲とすることができる。
【0089】
本発明の包装材は、容器用のパッキン(ガスケット)、特に容器のキャップ用のガスケットであってもよい。この場合、酸素吸収性組成物によってガスケットが形成される。
【0090】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0091】
まず、以下の方法で微粒子複合体(A)のサンプルを作製した。なお、以下のサンプルの作製では、シリカゾルとして、日産化学工業(株)製、IPA−ST(イソプロパノール70%含有)を用いた。このシリカゾルのシリカ粒子の粒径を動的光散乱法で測定したところ、10〜20nmの範囲であった。また、後述の比較合成例で使用する汎用シリカ粉末(メルク社製、SI−60)の粒径を光学顕微鏡を用いて観察したところ、約200μmであった。
【0092】
[合成例1] 微粒子複合体(A)サンプル1の調製
エイコサペンタエン酸エチル4.0gを、上記シリカゾル(イソプロパノール70%含有)53.0gに加え、窒素雰囲気下、室温で1時間攪拌し、バス温100℃でイソプロパノールおよび生成するエタノールを留去した。次に、100mmHgに減圧し、バス温110℃で残留する有機溶媒を除去し、粉末化させた。得られた粉末を1mmHg、80℃で減圧乾燥し、エイコサペンタエン酸エチル25重量%が複合されたシリカの粉末(サンプル1)を得た。
【0093】
[合成例2] 微粒子複合体(A)サンプル2の調製
上記サンプル1のエイコサペンタエン酸エチルに代わり、シクロヘキセン−3−カルボアルデヒド4.0gを使用した以外は、サンプル1と同様にして、シクロヘキセン−3−カルボアルデヒド25重量%と複合されたシリカの粉末(サンプル2)を得た。
【0094】
[合成例3] 微粒子複合体(A)サンプル3の調製
上記サンプル1のエイコサペンタエン酸エチルの代わりに、シクロヘキサン−3−カルボアルデヒド16.0gを使用した以外は、サンプル1と同様にして、シクロヘキセン−3−カルボアルデヒド100重量%と複合されたシリカのペースト(サンプル3)を得た。
【0095】
[合成例4] 微粒子複合体(A)サンプル4の調製
上記サンプル1のエイコサペンタエン酸エチルの代わりに、テトラヒドロフラン−3−カルボアルデヒド4.0gを使用した以外は、サンプル1の調整と同様に行って、テトラヒドロフラン−3−カルボアルデヒド25重量%と複合されたシリカのペースト(サンプル3)を得た。
【0096】
[比較合成例1] 汎用シリカ複合体サンプルの調製
エイコサペンタエン酸エチル4.0gを、脱気したヘキサン150mlに溶解し、汎用シリカ粉末(メルク社製、SI−60)16.0gを加え、窒素雰囲気下、室温で1時間攪拌し、バス温80℃でヘキサンを留去した。次に、窒素雰囲気下、バス温度110℃で粉末を攪拌しながら3時間加熱した。次に、得られた粉末を1mmHg、80℃で減圧乾燥し、エイコサペンタエン酸エチル20重量%が複合されたシリカの粉末(汎用シリカ複合体:比較サンプル1)を得た。なお、上記汎用シリカゾルを使用した場合、エイコサペンタエン酸エチルの添加量を増やしても、20重量%以上をシリカ粉末に添着させることはできなかった。
【0097】
[実施例1] 酸素吸収体サンプル1の作製
合成例1で合成した微粒子複合体(A)サンプル1を40gと、ステアリン酸コバルト0.34g(Coの量は微粒子複合体(A)の重量を基準にCo金属換算で約800ppm)とをドライブレンドした後、150℃で5分間ブレンドした。ブレンドは雰囲気を窒素でパージしながら行った。次に、得られた固形物を、ミキサーを用いて粉砕し、粉末(酸素吸収体サンプル1)を得た。
【0098】
[比較例1]
微粒子複合体(A)サンプル1に代えて、比較合成例1で調製した汎用シリカ複合体比較サンプル1を使用した以外は上記合成例5と同様にして酸素吸収体比較サンプル1の粉末を得た。
【0099】
[実施例2〜5] 酸素吸収体サンプル2〜5の作製
合成例1〜4で合成した各微粒子複合体(A)サンプル4g、ステアリン酸コバルト0.34g(Coの量は微粒子複合体(A)の重量を基準に約8000ppm)、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)36gをドライブレンドした後、200℃で5分間溶融ブレンドした。溶融ブレンドは雰囲気を窒素でパージしながら行った。次に、得られた各種組成物を200℃に加熱してプレスし、約200μmの厚さのフィルムを得た。このようにして、微粒子複合体(A)サンプル1を含むフィルム(酸素吸収体サンプル2)、微粒子複合体(A)サンプル2を含むフィルム(酸素吸収体サンプル3)、微粒子複合体(A)サンプル3を含むフィルム(酸素吸収体サンプル4)、および微粒子複合体(A)サンプル4を含むフィルム(酸素吸収体サンプル5)を作製した。
【0100】
なお、実施例2〜5においては、以下の組成および物性を有するEVOHを使用した。以降の実施例および比較例においてEVOHを使用する場合も同様である。
全構造単位に占めるエチレン単位の割合:32モル%
ケン化度:99.6%
MFR(210℃、2160g荷重):3.1g/10分
リン酸化合物含有量(リン酸根換算):100ppm
ナトリウム塩含有量(ナトリウム換算):65ppm
融点:183℃
酸素透過速度(20℃、65%RH):0.4ml・20μm/(m・day・atm)
【0101】
これらのフィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、各種微粒子複合体(A)サンプルにおいて、微粒子複合体(A)粒子は集合体として樹脂中に分散しており、集合体の平均の直径は0.5μm以下であり、分散性は良好であった。
【0102】
[比較例2] 酸素吸収体比較サンプル2の作製
上記実施例2の微粒子複合体(A)サンプル1に代えて汎用シリカ複合体比較サンプル1を使用した点以外は上記実施例2と同様にして、酸素吸収体比較サンプル2を得た。
【0103】
[実施例6](酸素吸収体サンプル6の作製)
EVOH36gの代わりにポリカプロアミド(ナイロン−6、宇部興産株式会社製、商品名:1030B)36gを用いることを除き、サンプル2と同様の方法でフィルム(サンプル6:厚さ約200μm)を作製した。このフィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、微粒子複合体(A)サンプル1は平均直径1μm以下の集合体として分散しており、分散性は良好であった。
【0104】
[実施例7](酸素吸収体サンプル7の作製)
EVOH36gの代わりにポリアクリロニトリル(三井化学株式会社製、商品名:バレックス1000)36gを用いることを除き、サンプル2と同様の方法でフィルム(サンプル7:厚さ約200μm)を作製した。
【0105】
[実施例8](酸素吸収体サンプル8の作製)
EVOH36gの代わりにポリ塩化ビニル(積水化学工業株式会社製、商品名:エスメディカV6142E)36gを用いることを除き、サンプル2と同様の方法でフィルム(サンプル8:厚さ約200μm)を作製した。
【0106】
[実施例9](酸素吸収体サンプル9の作製)
EVOH36gの代わりに低密度ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名:F9725)36gを用いることを除き、サンプル2と同様の方法でフィルム(サンプル9:厚さ約200μm)を作製した。
【0107】
[実施例10](酸素吸収体サンプル10の作製)
ステアリン酸コバルトの代わりに二酸化チタン粉末(日本アエロジル株式会社製、商品名:P−25(アナターゼ型73.5%、ルチル型26.5%を含む)0.4gを用いることを除き、サンプル2と同様の方法でサンプル10のフィルムを作製した。具体的には、まず、微粒子複合体(A)サンプル1を4g、二酸化チタンを0.4g、およびEVOH36gをドライブレンドした後、200℃で5分間溶融ブレンドした。溶融ブレンドは雰囲気を窒素でパージしながら行った。次に、得られた組成物を200℃に加熱してプレスし、約200μmの厚さのフィルム(サンプル10)を得た。このフィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、微粒子複合体(A)サンプル1は平均直径0.5μm以下の集合体として分散しており、分散性は良好であった。
【0108】
[実施例11](酸素吸収体サンプル11の作製)
水/メタノール(=30/70wt%)混合溶液40.5gと、EVOH4.5gとをビーカーに採取し、よく攪拌しながら80℃まで加熱し、10wt%濃度のEVOH溶液を作製した。その溶液に、微粒子複合体(A)サンプル1を0.5gおよびN−ヒドロキシフタルイミド(NHPI)を0.05g加え、窒素雰囲気下で室温にてNHPIを均一に溶解させた。得られた溶液を、コロナ処理を施した市販のPETフィルム上にバーコートにて塗布した後、真空乾燥機にて溶媒を除去した。このようにして、約10μmの厚さの塗膜が形成されたフィルム(サンプル11)を得た。このフィルムの塗膜部分の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、微粒子複合体(A)サンプル1は平均直径0.5μm以下の集合体として分散しており、分散性は良好であった。
【0109】
[実施例12](酸素吸収体サンプル12の作製)
N−ヒドロキシフタルイミドの代わりに酢酸コバルトを用い、サンプル11に準ずる方法でサンプル12のフィルムを作製した。具体的には、水/メタノール(=30/70wt%)混合溶液40.5gと、EVOH4.5gとをビーカーに採取し、よく攪拌させながら80℃まで加熱し、10wt%濃度のEVOH溶液を作製した。その溶液に、微粒子複合体(A)サンプル1を0.5g、および市販の酢酸コバルト標準溶液を、Coの重量がCo金属原子換算で微粒子複合体(A)重量を基準に4000ppmとなるように加え、窒素雰囲気下で室温にて均一に溶解させた。得られた溶液を、コロナ処理を施した市販のPETフィルム上にバーコートにて塗布したのち、真空乾燥機にて溶媒を除去した。このようにして、約10μmの厚さの塗膜が形成されたフィルム(サンプル12)を得た。このフィルムの塗膜部分の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、微粒子複合体(A)サンプル1は平均直径0.5μm以下の集合体として分散しており、分散性は良好であった。
【0110】
以上の実施例、比較例のサンプルについて表1にまとめて掲載する。
【0111】
【表1】

【0112】
[実施例13]
[酸素吸収能力の評価]
酸素吸収体サンプル1の粉砕品0.3gを、23℃で50%RH(相対湿度50%)の室内で、容量260ccの瓶に入れて瓶を密閉し、保管サンプル(1)を作製した。また、同じサンプルを同じ室内で水5ccとともに、ただし水には接触しないように容量260ccの瓶に入れて瓶を密閉した保管サンプル2個(保管サンプル(2)、および(3))を作製した。保管サンプル(1)および(2)は23℃で保管し、(3)は60℃で保管した。この操作により瓶の中は、保管サンプル(1)は23℃で50%RHに、(2)は23℃100%RHに、(3)は60℃100%RHに保たれたことになる。そして、一定期間ごとに瓶の中の酸素濃度を測定し、吸収された酸素の量を算出した。
【0113】
酸素吸収量の測定結果を図1、図3、図4、および表2に示す。
【0114】
[臭気評価]
サンプル1の粉砕品1gを精秤し、23℃、50%RHの空気を満たしておいた内部容量85mlの瓶に入れた。これらの瓶に、水を1ml加え、アルミニウム層を含む多層シートとエポキシ樹脂とを用いて瓶の口を封じてから、60℃で2週間放置した。その後、パネリスト5人が試料のヘッドスペースガスを評価した。結果を表2に示す。若干の臭気を検知したが、後述の比較サンプルに比べ臭気は少なかった。
【0115】
[実施例14〜17]
[酸素吸収能力の評価]
実施例13において、酸素吸収体サンプル1の粉砕品0.3gに代えて酸素吸収体サンプル2〜5のフィルム0.3gをそれぞれ使用した以外は実施例13と同様にして、吸収された酸素の量を算出した。酸素吸収量の測定結果を図2〜図4、および表2に示す。
【0116】
[臭気評価]
実施例13の酸素吸収体サンプル1の粉砕品1gに代えてサンプル2〜5のフィルム1gを精秤し、シート成形の5時間後にロール状に巻いて、23℃、50%RHの空気を満たしておいた内部容量85mlの瓶に入れた。これ以降は実施例1と同様に処理し、臭気評価を行った。ほとんど臭気を検知せず、これらの臭気は、後述の比較サンプルに比べて低かった。
【0117】
[溶出試験]
酸素吸収体サンプル2〜5のフィルムの両面に、厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社製OP−#20 U−1)を、接着剤を用いて積層した。接着剤には、ウレタン系接着剤(東洋モートン製、商品名:AD335A)と硬化剤(東洋モートン製、商品名:Cat−10)とを、トルエン/メチルエチルケトン混合溶液(重量比1:1)との混合物を用いた。このようにして、延伸ポリプロピレンフィルム層/ウレタン系接着剤層/上記樹脂組成物層(酸素吸収性フィルム層)/ウレタン系接着剤層/延伸ポリプロピレンフィルム層という層構成の積層シートを作製した。
【0118】
次に、得られた積層シート2枚を重ね合わせてヒートシールし、30cm×30cmのパウチを作製した。パウチ内部には水を入れた。このパウチを、60日間、30℃で80%RHの雰囲気下で保管したのち、パウチ内部の水をガスクロマトグラフ質量分析法(GC−MS)で分析した。結果、各サンプルにおいて無機酸化物に添着した反応性有機化合物の溶出は確認されなかった。
【0119】
[比較例3]
酸素吸収体比較サンプル1を用いた点以外は、実施例13と同様に、酸素吸収能力の評価、臭気評価を実施した。酸素吸収能力評価結果を図1、図3、図4及び表2に、臭気評価の結果を表2に記載する。臭気評価の結果、いずれも実施例13のサンプルに比べはっきりした臭気、いわゆる魚臭が感じられた。
【0120】
[比較例4]
酸素吸収体比較サンプル2のフィルムを用いた点以外は、実施例14〜17と同様に、酸素吸収能力の評価、臭気評価、溶出試験を実施した。酸素吸収能力評価結果を図2〜4及び表2に、臭気評価、溶出試験の結果を表2に記載する。臭気評価の結果、いずれも実施例14〜17のサンプルに比べはっきりした臭気、いわゆる魚臭が感じられた。溶出試験の結果、両サンプルともエイコサペンタエン酸エチルの溶出が確認された。
【0121】
いずれのサンプルも酸素吸収能を示した。同一の反応性有機物を用いる酸素吸収体サンプル1と比較サンプル1、あるいは酸素吸収体サンプル2と比較サンプル2の酸素吸収能を比較すると、いずれの条件においても実施例の方が若干酸素吸収能力が高かった。
【0122】
[実施例18〜24] 酸素吸収体サンプル6〜12の酸素吸収能の評価
酸素吸収体サンプル6〜12のフィルムの酸素吸収能を上記実施例14と同様の手法によって評価した。その結果、どのサンプルも酸素吸収を示すことを確認した。
【0123】
[実施例25〜28](実施例14〜17に対応する製造過程における揮散の評価)
実施例2〜5の酸素吸収体サンプル2〜5調製と同様に、微粒子複合体(A)、ステアリン酸コバルトおよびEVOHとをドライブレンドした後、200℃で5分間溶融ブレンドした。ただしここでは溶融ブレンドは、不純物を除去するために、ベント部から真空ポンプを用いて脱気してブレンド装置内部が266Pa(2mmHg)になるように減圧しながら行った。このようにして作製した組成物を用いてフィルムを作製し、酸素吸収能を測定した。その結果、これらのサンプルは、窒素でパージしながら溶融ブレンドして作製したサンプルと同等の酸素吸収能を示し、製造過程での反応性有機化合物の揮散がなかったことが確認された。
【0124】
[比較例5](比較例4に対応する製造過程における揮散の評価)
比較例2と同様に汎用シリカ複合体比較サンプル1、ステアリン酸コバルトおよびEVOHをドライブレンドした後、上記実施例25と同様に減圧しながら溶融ブレンドした。このようにして作製した酸素吸収体を用いてフィルムを作製し、酸素吸収能を測定した。ここで得られた酸素吸収体はほとんど酸素吸収能を示さず、製造過程でエイコサペンタエン酸エチルが揮散したことが示唆された。
【0125】
【表2】

【0126】
[実施例29] (一括処理による酸素吸収体サンプルの製造)
上記シリカゾル(イソプロパノール70%含有)53.0gに、エイコサペンタエン酸エチル4.0gとステアリン酸コバルト0.17g(Coの量はシリカ分とエイコサペンタエン酸エチルの合計重量を基準として金属換算で800ppm)とを加え、窒素雰囲気下、室温で1時間攪拌し、バス温度100℃でイソプロパノールおよび生成するエタノールを留去した。次に、100mmHgに減圧し、バス温度110℃で残留する有機溶媒を除去し、粉末化させた。得られた粉末を1mmHg、80℃で減圧乾燥し、エイコサペンタエン酸エチル25重量%が複合されたシリカの粉末とCoとを含む酸素吸収体を得た。これをさらにミキサーを用いて粉砕し、粉末状のサンプル(酸素吸収体サンプル13)を得た。
【0127】
上記酸素吸収体サンプル13の酸素吸収能および臭気を実施例13と同様にして確認した。その結果、酸素吸収能、臭気ともに酸素吸収体サンプル1とほぼ同程度であり、この方法においても実施例1と同等の酸素吸収体が製造できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の酸素吸収体は、酸素吸収性を有するフィルム、シート等の成形体、容器本体や蓋、包装材料として、あるいはペレットや粉状、板状の形態で容器や袋中に存在させて脱酸素剤として、特に、酸素に対して感受性が高く劣化しやすい製品、中でも食品、飲料、医薬品、化粧品などに対して有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明及び比較例の酸素吸収体について酸素吸収能の一例を示すグラフである。
【図2】本発明及び比較例の酸素吸収体について酸素吸収能の別の一例を示すグラフである。
【図3】本発明及び比較例の酸素吸収体について酸素吸収能の別の一例を示すグラフである。
【図4】本発明及び比較例の酸素吸収体について酸素吸収能の別の一例を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性有機化合物と、粒径が100nm以下の無機酸化物とからなる複合体および酸素吸収促進剤を含有することを特徴とする酸素吸収体。
【請求項2】
粒径が100nm以下の無機酸化物が酸化ケイ素である請求項1に記載の酸素吸収体。
【請求項3】
反応性有機化合物がカルボン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の酸素吸収体。
【請求項4】
反応性有機化合物がアルデヒドおよびその誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の酸素吸収体。
【請求項5】
反応性有機化合物がケトンおよびその誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の酸素吸収体。
【請求項6】
反応性有機化合物がアルコールおよびその誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の酸素吸収体。
【請求項7】
反応性有機化合物がアミンおよびその誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の酸素吸収体。
【請求項8】
反応性有機化合物が炭素−炭素不飽和二重結合を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸素吸収体。
【請求項9】
反応性有機化合物が環状エーテル構造を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸素吸収体。
【請求項10】
さらに重合体を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸素吸収体。
【請求項11】
前記反応性有機化合物と、粒径が100nm以下の無機酸化物とからなる複合体が、重合体に分散された請求項10に記載の酸素吸収体。
【請求項12】
反応性有機化合物と無機酸化物とからなる複合体および酸素吸収促進剤を含み、該複合体が重合体に分散された酸素吸収体であって、該重合体中に分散する該複合体粒子の集合体の平均直径が1μm以下である酸素吸収体。
【請求項13】
前記重合体がエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む請求項10〜12のいずれか1項に記載の酸素吸収体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の酸素吸収体からなる層を少なくとも1層含む積層体。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の酸素吸収体を含む包装材。
【請求項16】
反応性有機化合物と、粒径が100nm以下の無機酸化物とから、無機酸化物−反応性有機化合物複合体を製造する工程(工程1)と、該複合体と酸素吸収促進剤とを混合する工程(工程2)とを含む、酸素吸収体の製造方法。
【請求項17】
上記工程1において、反応性有機化合物と、粒径が100nm以下の無機酸化物ゾルとを混合し、次いで溶媒を除去する請求項16に記載の酸素吸収体の製造方法。
【請求項18】
上記工程2において、無機酸化物−反応性有機化合物複合体と酸素吸収促進剤との混合を溶媒の存在下に行い、混合後に溶媒を除去する請求項16または17に記載の酸素吸収体の製造方法。
【請求項19】
上記工程2において、上記反応性有機化合物と無機酸化物との複合体と、酸素吸収促進剤と、重合体とを混合する、請求項16〜18のいずれか1項に記載の酸素吸収体の製造方法。
【請求項20】
平均粒径が100nm以下の無機酸化物と、反応性有機化合物と、酸素吸収促進剤とを溶媒の存在下に混合し、混合後に溶媒を除去する酸素吸収体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−6204(P2009−6204A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292033(P2005−292033)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】