説明

酸素富化空気導入装置

【課題】酸素富化空気の流量を調整することができる酸素富化空気導入装置を提供する。
【解決手段】通水管6の水流で発生する負圧を導入配管1から酸素富化手段2に作用させて酸素富化手段2で生成された酸素富化空気を導入配管1から通水管6に導入する酸素富化空気導入装置において、通水管6の流量を調整する流量調整手段3と、導入配管1内の圧力または酸素富化空気の流量を検知するセンサ4、および酸素富化手段2の酸素富化膜21の温度またはその近傍の雰囲気温度を検知するセンサ5のうち少なくともいずれか一方のセンサが設けられており、前記センサ4,5で検知した導入配管1内の圧力もしくは酸素富化空気の流量または酸素富化膜21の温度に応じて、通水管6の流量を流量調整手段3で調整することにより通水管6の水流で発生する負圧を変化させて導入配管1から通水管6に導入される酸素富化空気の流量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素富化空気導入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸素富化装置で生成した酸素富化空気を浴槽の浴槽水をポンプで循環させる管路に導入して浴槽水に酸素富化空気を混入し、これを再び浴槽内に吐出する酸素富化給湯装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この酸素富化給湯装置は、管路に絞り部を設けてこの絞り部で生ずる負圧により酸素富化装置で生成した酸素富化空気を管路に導入している。酸素富化装置では酸素富化膜が使用されており、この酸素富化膜において酸素を選択的に透過させて酸素富化空気を生成している。酸素富化膜の特性上、環境温度によって透過流量が変動するため、上記酸素富化給湯装置では、管路に導入される酸素富化空気の流量にバラツキが生じ、このバラツキが管路のポンプ内部での気液混合比を変動させ、気体の比率が高い場合にはポンプがエアロックしてしまう等の問題が生じるおそれがあった。そこで、所望の気体流量を確保するために、真空ポンプを設け、酸素富化膜に真空ポンプによる真空圧を作用させて酸素富化空気を過剰に吸引し、全部もしくはその一部を管路に導入することが考えられる。すなわち、想定される最悪温度条件(低温条件)下でも所望の流量が得られるように流量設定しておき、高温条件下において空気が多すぎる場合には余剰空気を他へ排出することが考えられるが、真空ポンプおよび別経路が必要になる等のコスト高になるという問題があった。
【特許文献1】特開2004−350932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、酸素富化空気の流量を調整することができる酸素富化空気導入装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0006】
第1には、酸素富化膜を有し酸素富化空気を生成する酸素富化手段と、この酸素富化手段で生成された酸素富化空気を通水管に導入する導入配管を備え、通水管の水流で発生する負圧を導入配管から酸素富化手段に作用させて酸素富化手段で生成された酸素富化空気を導入配管から通水管に導入する酸素富化空気導入装置において、通水管の水流で発生する負圧を可変させる、通水管の流量を調整する流量調整手段と、導入配管内の圧力または酸素富化空気の流量を検知するセンサ、および酸素富化手段の酸素富化膜の温度またはその近傍の雰囲気温度を検知するセンサのうち少なくともいずれか一方のセンサが設けられており、前記センサで検知した導入配管内の圧力もしくは酸素富化空気の流量または酸素富化膜の温度もしくはその近傍の雰囲気温度に応じて、通水管の流量を流量調整手段で調整することにより通水管の水流で発生する負圧を変化させて導入配管から通水管に導入される酸素富化空気の流量を調整する。
【0007】
第2には、上記第1の発明において、流量調整手段が、液送ポンプである。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明によれば、導入配管内の圧力もしくは酸素富化空気の流量または酸素富化膜の温度もしくはその近傍の雰囲気温度に応じて通水管の水流で発生する負圧を流量調整手段で調整し、導入配管から通水管に導入される酸素富化空気の流量が大きく変動しないように予め設定した範囲内に調整することができる。したがって、環境温度の変動による酸素富化空気の流量のバラツキが抑制され、通水管に酸素富化空気を安定した流量で導入することができる。また、真空ポンプおよび余剰空気を排出する別経路を設置せずに酸素富化空気の流量のバラツキを抑制することができるためコスト安になるほか、真空ポンプと別経路の設置空間を確保することが不要になり、装置としての小型化設計が可能になる。
【0009】
流量調整手段が液送ポンプである第2の発明によれば、高圧水流を発生させることができ、酸素富化空気を通水管に容易に導入することができる。また、通水管に導入される酸素富化空気の流量のバラツキが抑制されるため、液送ポンプ内部での気液混合比の変動が抑制されて液送ポンプにエアロックが生じる問題が解消し、酸素富化空気導入装置を快適に駆動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は前記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である浴槽用の酸素富化空気導入装置の概略構成図である。
【0012】
浴槽20の側壁には、吸入口8と吐出口9が設けられており、吸入口8において浴槽20内の浴槽水Wを吸入し、吐出口9においてその浴槽水Wに酸素富化空気を溶解させた気体溶解水を吐出するようになっている。
【0013】
吸入口8と吐出口9は浴槽20の外部に配設された浴槽水循環用の通水管6で連通されており、その通水管6の途中には流量調整手段3を構成する液送ポンプ31が配設され、液送ポンプ31の駆動により浴槽20内の浴槽水Wを吸入口8から吸入し、通水管6を経由して吐出口9から浴槽20内に吐出するようになっている。
【0014】
液送ポンプ31の上流側の通水管6には気体導入部10が設けられ、この気体導入部10に導入配管1が接続されている。さらに、この導入配管1の上流側には酸素富化手段2が配設されており、酸素富化手段2で作り出された酸素富化空気が導入配管1を経由して気体導入部10から通水管6に導入されるようになっている。
【0015】
通水管6の気体導入部10はエジェクタ構造となっており、液送ポンプ31の駆動により発生した水流が通過すると負圧が発生し、この負圧を導入配管1から酸素富化手段2の酸素富化膜21に作用させることで、酸素富化手段2で生成された酸素富化空気を導入配管1から通水管6に導入するようにしている。この気体導入部10で発生する負圧は通水管6の水流の強さによって変動し、水流が強いほどより負圧の圧力が発生する。
【0016】
酸素富化手段2は、窒素と酸素を分離して酸素を選択的に透過させる酸素富化膜21で構成されており、大気圧よりも低い負圧をこの酸素富化膜21の酸素が透過する側(酸素富化膜21の下流側)に作用させることにより酸素富化膜21の上流側の空気から酸素が選択的に多く取り込まれて相対的に酸素濃度の高い空気(酸素富化空気)が生成されるようになっている。酸素富化膜21の近傍には透過しにくい窒素が富化された空気が滞留する。このため本実施形態では酸素富化膜21の表面を換気する換気ファン22が設けられている。
【0017】
この酸素富化膜21は一般に次のような特性を有している。すなわち、酸素富化膜21に作用させる負圧を一定とした場合、酸素富化膜21の温度が高くなればその透過流量は増大し、酸素富化膜21透過後の空気の酸素濃度は低下する。逆に温度が低くなれば透過流量が低下し、酸素富化膜21透過後の空気の酸素濃度は高くなる。そして酸素富化膜21透過後の空気の酸素濃度と透過流量との積で決定される酸素富化空気の供給量は、一般的に温度が高いほど増大する傾向にある。また、より負圧の圧力を酸素富化膜21に作用させると、透過流量が増大し、酸素富化膜21透過後の空気の酸素濃度が高くなり、酸素富化空気の供給量は一般的に増大する傾向にある。
【0018】
本実施形態では、このような酸素富化膜21の特性に基づき、通水管6に導入する酸素富化空気の流量を予め設定した範囲内に調整するようにしている。具体的には、導入配管1内の圧力や酸素富化空気の流量を検知するセンサ4、もしくは酸素富化手段の酸素富化膜の温度やその近傍の雰囲気温度を検知するセンサ5、またはそれら両方のセンサ4,5を設け、前記センサ4,5で検知した導入配管1内の圧力、酸素富化空気の流量、酸素富化膜21の温度やその近傍の雰囲気温度等の情報に基づいて液送ポンプ31の出力電圧(ポンプ能力)を変化させて通水管6内を流れる浴槽水Wの流量を調整する。通水管6内を流れる浴槽水Wの流量が変わると水流の強さも変わり、上述したように気体導入部10で発生する負圧も変わる。負圧が変われば、酸素富化膜21の特性上、酸素富化空気の流量が変わるため、液送ポンプ31のポンプ能力を変化させることで通水管6に導入する酸素富化空気の流量を予め設定した範囲内に調整することができる。
【0019】
次に酸素富化空気の流量が具体的にどのように変化するのか、図2を参照して説明する。図2は、酸素富化空気の流量−負圧特性を示す図であり、(a)は液送ポンプのポンプ能力が一定の場合、(b)は本実施形態を想定したものであり、液送ポンプのポンプ能力が可変する場合を示している。縦軸は酸素富化空気の流量を示し、横軸は負圧を示している。横軸に示す負圧はグラフの右側にいくほどより大きな負圧の圧力になっている。酸素富化膜のP−Q特性は膜の材料ロットや環境温度の変化によって変わり、直線AおよびBはそれぞれ想定される酸素富化膜のP−Q特性のバラツキの上限値と下限値を示している。酸素富化空気の流量は、酸素富化膜のP−Q特性と液送ポンプのP−Q特性とのつりあうポイントで決まる。例えば、図2(a)では液送ポンプのP−Q特性を示す直線Cと酸素富化膜のP−Q特性を示す直線Aとが交差するポイントaの横軸から読み取れる負圧が酸素富化膜に作用する圧力であり、そのときの酸素富化空気の流量が縦軸から読み取れるようにQU1となる。同様に、液送ポンプのP−Q特性を示す直線Cと酸素富化膜のP−Q特性を示す直線Bとが交差するポイントbの横軸から読み取れる負圧が酸素富化膜に作用する圧力であり、そのときの酸素富化空気の流量が縦軸から読み取れるようにQL1となる。したがって酸素富化膜のP−Q特性のバラツキを考慮した場合の酸素富化空気の流量変化はQL1〜QU1の範囲となる。
【0020】
図2(b)の直線Dおよび直線Eは、それぞれ想定される液送ポンプのP−Q特性の上限値と下限値を示している。液送ポンプの出力電圧を変化させてポンプ能力を変化させたときのP−Q特性は、その上限値と下限値の間において直線Dまたは直線Eを平行移動させた直線で決定される。液送ポンプのポンプ能力を変化させると、(a)における酸素富化空気の流量変化であるQL1〜QU1の範囲よりもさらにその流量変化を小さくすることができる。例えば、液送ポンプのP−Q特性を示す直線Eと酸素富化膜のP−Q特性を示す直線Aとが交差するポイントcでは酸素富化空気の流量がQU2となり、液送ポンプのP−Q特性を示す直線Dと酸素富化膜のP−Q特性を示す直線Bとが交差するポイントdでは酸素富化空気の流量がQL2となる。すなわち、酸素富化膜のP−Q特性のバラツキを考慮した場合でも酸素富化空気の流量変化を、QL1〜QU1の範囲よりも小さいQL2〜QU2の範囲にすることができる。
【0021】
本実施形態では、図1に示すように、導入配管1内の圧力や酸素富化空気の流量を検知するセンサ4として導入配管にダイヤフラム型の圧力センサ41を設けている。この圧力センサ41は導入配管1内の圧力を検知するものであるが、導入配管1の内径が分かれば導入配管1内の酸素富化空気の流量も容易に算出することができる。なお、圧力センサ41の代わりに酸素富化空気の流量を検知するセンサを設けてもよい。また、酸素富化手段2の酸素富化膜21の温度やその近傍の雰囲気温度を検知するセンサ5として酸素富化膜21および換気ファン22を収納するケース23の内部にサーミスタ51を設置し、酸素富化膜21近傍の雰囲気温度を常時検知するようにしている。圧力センサ41、サーミスタ51および液送ポンプ31はそれぞれ制御ユニット30に接続されており、制御ユニット30では圧力センサ41やサーミスタ51で検知した情報に基づき、図2(b)に示したような酸素富化空気の流量範囲QL2〜QU2になるように液送ポンプ31の出力電圧を変化させて、通水管6内を流れる浴槽水Wの流量を調整するようにしている。酸素富化膜21の温度を検知する場合には、例えば酸素富化膜21にサーミスタ51を接触させて設ける。これら導入配管1内の圧力または酸素富化空気の流量を検知するセンサ4と、酸素富化手段2の酸素富化膜21の温度またはその近傍の雰囲気温度を検知するセンサ5は、少なくともいずれか一方が設けられていればよい。
【0022】
そして通水管6に酸素富化空気が導入されると、通水管6内を流れる浴槽水Wに酸素富化空気が混入して気液混合水が生成する。この気液混合水は予め設定した範囲内の流量の酸素富化空気が導入されるため、液送ポンプ31にエアロックが生じるような高い気体比率とはならない。
【0023】
液送ポンプ31と吐出口9の間の通水管6には溶解タンク7が配設されており、溶解タンク7内において蛇行した経路に気液混合水を通過させたり、気液混合水を攪拌したりすることで浴槽水Wに酸素富化空気を溶解させて気体溶解水を生成している。
【0024】
溶解タンク7で生成された気体溶解水は、吐出口9から浴槽20内に吐出される。
【0025】
以上の構成の酸素富化空気導入装置は、環境温度の変動による酸素富化空気の流量のバラツキを抑制しつつ、酸素富化空気を安定した流量で通水管6に導入することができる。また、酸素富化空気の流量のバラツキの抑制にあたり、真空ポンプおよび余剰空気を排出する別経路を設置する必要がなくコスト安になるほか、真空ポンプおよび別経路の設置空間を確保することも不要になり、装置としての小型化設計が可能になる。
【0026】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、本発明の酸素富化空気導入装置を浴槽に適用した場合を説明したが、シャワー装置等に適用してもよい。シャワー装置に適用する場合には、例えば、通水管を水道管に連結して水道管からの水道水に酸素富化空気を導入し、溶解タンクを経てシャワーヘッドから気体溶解水を吐出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態である浴槽用の酸素富化空気導入装置の概略構成図である。
【図2】酸素富化空気の流量−負圧特性を示す図であり、(a)は液送ポンプのポンプ能力が一定の場合、(b)は液送ポンプのポンプ能力が可変する場合を示している。
【符号の説明】
【0028】
1 導入配管
2 酸素富化手段
21 酸素富化膜
22 換気ファン
23 ケース
3 流量調整手段
31 液送ポンプ
4,5 センサ
6 通水管
W 浴槽水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素富化膜を有し酸素富化空気を生成する酸素富化手段と、この酸素富化手段で生成された酸素富化空気を通水管に導入する導入配管を備え、通水管の水流で発生する負圧を導入配管から酸素富化手段に作用させて酸素富化手段で生成された酸素富化空気を導入配管から通水管に導入する酸素富化空気導入装置において、通水管の水流で発生する負圧を可変させる、通水管の流量を調整する流量調整手段と、導入配管内の圧力または酸素富化空気の流量を検知するセンサ、および酸素富化手段の酸素富化膜の温度またはその近傍の雰囲気温度を検知するセンサのうち少なくともいずれか一方のセンサが設けられており、前記センサで検知した導入配管内の圧力もしくは酸素富化空気の流量または酸素富化膜の温度もしくはその近傍の雰囲気温度に応じて、通水管の流量を流量調整手段で調整することにより通水管の水流で発生する負圧を変化させて導入配管から通水管に導入される酸素富化空気の流量を調整することを特徴とする酸素富化空気導入装置。
【請求項2】
流量調整手段が、液送ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の酸素富化空気導入装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−104433(P2010−104433A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277259(P2008−277259)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】