説明

酸素検知体

【課題】貫通孔を備えた被包部材で酸素検知材を包装する形態の酸素検知体において、優れた酸素検知能を長期に維持可能な酸素検知体を提供することを目的とする。
【解決手段】酸素検知溶液を吸収体に含浸させて雰囲気中の酸素濃度に反応して変色する酸素検知材を被包部材で包装した酸素検知体において、前記被包部材には、包装の内外に通じる貫通孔を少なくとも1箇所に備え、前記酸素検知材の25℃における水分活性がAw=0.30〜0.70である酸素検知体を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気中の酸素量の変化を、色の変化によって視認可能とする酸素検知体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や薬剤等の保存品において、無酸素状態での保管が好ましい場合に、包装容器内部の酸素状態を管理するために酸素検知体が用いられている。酸素検知体は、雰囲気中の酸素濃度に応じて変色する酸素検知材を、フィルム等の被包材内に収容したものであり、酸素検知材が雰囲気中の酸素濃度の変化に応じて変色して、雰囲気中の酸素の有無を表示する。具体的には、酸素検知材に含まれるメチレンブルー等の酸化還元性色素が、雰囲気中の酸素によって酸化して色調が変化する仕組みを利用して酸素を検知するものである。
【0003】
酸素検知材の形態は、錠剤、粉末、シート類に溶液を吸収させたものがある。そして、酸素検知体は、酸素検知材を酸素透過可能なフィルムパッケージ等に包装して、酸素検知材の成分が保存品の品質に影響を与えることを防いでいる。
【0004】
例えば、特許文献1には、製品の長期流通や長期にわたる品質保証を図るため、太陽光などの光が照射されても劣化しない酸素インジケーターに関する技術が開示されており、紫外線による酸素インジケーターの酸素検知能力の低下を防ぐために、被包部材であるフィルムに紫外線吸収剤を備えた酸素インジケーターが開示されている。
【0005】
そして、酸素検知体における酸素検知材の包装形態としては、貫通孔を備える被包部材に封入する例と、一定の酸素透過性を備えるフィルムからなる被包部材に封入する例が挙げられる。酸素透過性の被包部材は、酸素透過性能や、耐薬品性等を考慮する必要があり、材料設計の制約がある。一方、貫通孔タイプは、被包部材の種類の選択肢が広く、製造工程も簡便であるが、酸素透過性の被包部材に比べて通気性が高いため、被包部材内部が乾燥しやすい。
【0006】
【特許文献1】特開2000−275235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長期保存性が望まれる食品、薬品その他の保存品に用いられる酸素検知体には、長期使用に耐える性能が望まれている。被包部材に封入された酸素検知材は、保存雰囲気中の酸素を検知する性質上、水分量が必要であるが、酸素検知材と保存雰囲気との通気性を確保する必要もあるので、被包部材内部の乾燥に伴う酸素検知材の乾燥は避けられない。そして、酸素検知材が乾燥すると酸素検知時の変色速度等の検知機能が劣化するため、酸素検知能力の長期保持が課題となる。また、貫通孔タイプの酸素検知体は、保存雰囲気の影響を受けやすいために、適用可能な範囲に限界があった。
【0008】
そこで、本発明は、優れた酸素検知能を長期に維持可能な酸素検知体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件発明者は鋭意研究の結果、前記課題を解決するため、以下のような手段を採用した。
【0010】
本発明に係る酸素検知体は、酸素検知溶液を吸収体に含浸させて雰囲気中の酸素濃度に反応して変色する酸素検知材を、被包部材で形成した袋部に封入した酸素検知体において、前記被包部材には、包装の内外に通じる貫通孔を少なくとも1箇所に備え、前記酸素検知材の25℃における水分活性がAw=0.30〜0.70であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る酸素検知体は、より好ましくは、前記貫通孔の総開口面積は、前記袋部の表面積に対して1×10−4%〜1%である。
【0012】
本発明に係る酸素検知体は、前記被包部材は、水蒸気透過率が100g/[m・24hr](40℃、90%RH)以下であることがより好ましい。
【0013】
本発明に係る酸素検知体は、より好ましくは、前記酸素検知材の吸収体がシート状の有機高分子吸収体からなるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る酸素検知体は、酸素検知材の水分活性を好適化して、酸素検知能を安定化し、酸素検知能力保持の長期化を図ることができる。特に、包装の内外に通じる貫通孔によって酸素透過手段を得る形態の酸素検知体であっても、酸素検知材が乾燥しにくく、酸素検知能力の保持期間の長期化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る酸素検知体の最良の実施の形態に関して説明する。
【0016】
本発明に係る酸素検知体は、酸素検知溶液を吸収体に含浸させることにより雰囲気中の酸素濃度に反応して変色する酸素検知材を、被包部材で形成した袋部に封入したものであり、特に、前記被包部材には、包装の内外に通じる貫通孔を少なくとも1箇所に備え、酸素検知材の25℃における水分活性がAw=0.30〜0.70である点に特徴を有する。なお、本明細書において示す水分活性は25℃下での値である。
【0017】
酸素検知材は、液体を保持可能な吸収体に、酸素検知溶液を含浸させることにより、雰囲気中の酸素濃度に応じて変色するものである。吸収体の形態は、粉体、錠剤、インキ、シート状等が挙げられる。
【0018】
なお、製造工程ならびに製品使用時の利便性を考慮すると、薄型の吸収体が望ましい。酸素検知体の外形状は、酸素検知材の形状に依るところが大きい。そして、酸素検知材を使用する場合、無酸素状態が必要な保存品であるので、真空パック等の形態で保存する場合が多い。そのため、薄型の吸収体とすると、酸素検知体の外形状も薄型にすることができ、保存品に同封して真空パックされた場合に、保存品の外形に影響を与えることがない。また、粉体等に比べて、簡便な方法で酸素検知材を包装できるのである。
【0019】
吸収体の材質は特に限定されないが、吸収体の体積に比して充分な表面積を持つ材質が好ましく、具体的には、シート、メッシュ、紙、フィルム、塗膜等の形態が考えられる。吸収体の材料は、酸素検知材としての吸収性、含浸状態の安定性等を考慮すると、有機高分子からなるものが好ましく、有機高分子の中では特にイオン交換樹脂又はセルロース材料が好ましく、更に、セルロース材料の中ではサラシクラフト紙が好ましい。イオン交換樹脂は、イオン交換できる酸性基または塩基性基を持ち、不溶性で多孔質の合成樹脂である。そして、サラシクラフト紙からなる吸収体であれば、酸素検知溶液を望ましい状態で保持可能であるとともに、漂白されているので、酸化還元性色素が鮮明になる。なお、吸収体は、上記外形状と、液吸収性能を考慮すると、厚さ200μm〜350μmのものが好適である。
【0020】
酸素検知溶液は、酸化還元性色素と還元性物質と塩基性物質とを含む液体である。そして、酸化還元性色素はメチレンブルーであり、還元性物質はD−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−エリスロール、D−アラビノースのうちのいずれか1種または2種以上であることが好ましく、塩基性物質はアルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物のいずれか1種または2種以上であることが好ましい。メチレンブルーは、水溶液中で還元剤を作用させると無色のロイコメチレンブルーとなるが、酸素などの酸化剤によって酸化され、復色する。還元性物質は、色素を還元状態に保持するために用い、常用では色素の還元性が低く、且つ、空気内の酸素によって酸化されにくい弱還元剤が好ましく、D−グルコースやD−フルクトースを用いると、還元性糖類であり、食品と同封する酸素検知体の構成成分としても好適である。そして、塩基性物質は酸素検知材を還元状態に保つために用いられ、メチレンブルーを還元状態、即ち、無色状態に維持するためのものであり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0021】
また、酸素検知溶液は食紅、サフラニンT、フェノサフラニンのうちのいずれか1種または2種以上を含むものである。食紅、サフラニンT、フェノサフラニンは、いずれも赤色の色素であり、酸素量に拘わらず変色しない。これらの赤色色素とメチレンブルーとを含んでいる酸素検知溶液は、無酸素状態の場合はメチレンブルーが無色となって赤色色素が現れる。一方、有酸素状態ではメチレンブルーが青く発色して、酸素検知溶液が青色に変色して見える。また、赤色色素を含有することにより、変色の過渡期に、単にメチレンブルーの青色が薄くなっていく場合に比べて色調変化が視認しやすい効果がある。
【0022】
更に、酸素検知材はアルコール成分を含む。アルコール成分は、酸素検知材が酸素を検知した際に呈する色を、鮮明且つ速やかな発色となるように酸素検知材の変色反応を促進させる発色助剤である。
【0023】
アルコール成分としては、エタノール、多価アルコール等のアルコール系化合物や、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子が好ましい。
【0024】
そして、酸素検知材は、このような酸素検知溶液を上述の吸収体に含浸させた状態における水分活性がAw=0.30〜0.70である。
【0025】
水分活性Awは、その物に含まれる自由水の割合を示す値であり、一定温度、密閉状態における、その物の蒸気圧Pと、純水の蒸気圧Pとの比Aw=P/Pである。酸素検知材の水分活性Awの場合、酸素検知材中に含まれる自由水の割合であり、水分活性Awの値が0に近付く程、自由水の含有率が少ない。自由水は、酸素検知材から袋部内に蒸発し、被包部材の水蒸気透過性によって、袋部から消失してしまうと酸素検知材の乾燥が進む。したがって、水分活性Awを低く抑えることにより、酸素検知材から蒸発する水分量(自由水の量)を抑制することができ、酸素検知材が乾燥しにくくなる。しかし、酸素検知機能を発揮するために酸素検知材は、ある程度の水分量が必要となる。
【0026】
以上より、酸素検知材の水分活性Aw=0.30未満であると、酸素検知材の還元反応に必要な水分量が不足し、酸素検知能力が鈍化する上、変色の視認性が低下するため、酸素検知材としての本来の機能を発揮できない。一方、酸素検知材の水分活性Aw=0.70を上回る場合は、酸素検知材から蒸発し得る水分量(自由水の量)が多くなるため、その分酸素検知材の乾燥が進行しやすくなり、酸素検知能力の品質が安定せず、長期使用が望めない。
【0027】
水分活性の調整は、酸素検知溶液の調整により行う。即ち、酸素検知能力を発揮すべく、酸化還元性色素、還元性物質、塩基性物質、色素、水分等を配合して酸素検知溶液を設計する際に、更に、水分活性が上記範囲内となるような材料選定並びに配合比を調整するのである。
【0028】
本件明細書における水分活性Awは、ロトロニック社製、バイグロスコープDT型を用いて、25℃環境下で測定した。
【0029】
被包部材は、酸素検知材を密閉包装する袋部を形成し、且つ、袋部の内外に酸素が流通可能な貫通孔を少なくとも1箇所に備えるものである。袋部は、被包部材によって、酸素検知材を封入するために形成された空間であり、酸素検知材を収容して封入する。
【0030】
貫通孔は、被包部材の厚さ方向に貫通する微細孔であり、袋部の内外が通気可能に設けられ、この貫通孔を通じて酸素検知体外部の雰囲気が袋部内に及んで酸素検知材に触れる。酸素検知体外部が一定濃度以上の酸素が含まれている雰囲気となり、その雰囲気が袋部内の酸素検知材に触れた場合に酸素検知材が変色する。
【0031】
貫通孔は、袋部の内外に貫通するものであればよく、針状のもので穿通させたり、熱、レーザー等で孔を形成する方法等、従来公知の方法で形成することができる。そして、貫通孔は少なくとも1箇所にあれば良いが、貫通孔の総開口面積が、被包部材により形成された袋部の表面積に対して1×10−4%〜1%の範囲となるように設けることが好ましい。なお、より好ましくは、5×10−4%〜1×10−2%の範囲とする。
【0032】
袋部の表面積とは、酸素検知材を収容するための内部空間が形成された袋部の外表面の総面積を指す。例えば、2枚のフィルム(被包部材)を重ね合わせて、その周囲を熱圧着することにより形成された袋部の場合、平面視において、その熱圧着部分より内側であり、2枚のフィルム(被包部材)が密着せずに内部に空間を形成している部分が袋部であり、その袋部を形成する両面の被包部材(フィルム)の面積の合計を示す。また、開口部の総開口面積は、袋部の外表面に設けられた全ての貫通孔の開口面積の総和である。
【0033】
総開口面積が、袋部の表面積の1×10−4%未満である場合、気体の流通性が悪く、酸素検知体外部の気体が充分に流入せず、酸素検知能力が低下する。一方、貫通孔の総開口面積が、袋部の表面積の1%を上回ると、酸素検知体の内外の気体の流通量が多くなる。この結果、酸素検知体を入れた保存容器中の成分が酸素検知体内に流入して、酸素検知材の酸化還元反応に影響を及ぼす。また、酸素検知材の成分が酸素検知体外に流出する可能性が高くなるため適さない。
【0034】
総開口面積に関する参考例: ここで、総開口面積を説明するための参考例を示す。厚みが約270μmのシート状のサラシクラフト紙からなる吸収体に酸素検知溶液を含浸させ、水分活性Aw=0.55とした酸素検知材を、貫通孔の総開口面積を袋部の総面積に対して約1×10−5%となるよう調製した被包部材に封入した酸素検知体を用意した。この酸素検知体を脱酸素剤とともにガスバリア袋に封入して、酸素濃度が0.1vol%未満の雰囲気にすると、酸素検知材はピンク色を呈したが、この後ガスバリア袋を開封して酸素検知体を空気中に晒すと、ピンク色から青色に変色するのに4時間を要した。
【0035】
一方、貫通孔の総開口面積を、袋部の総面積に対して約3%となるよう調製した被包部材に上記参考例と同じ酸素検知材を封入した酸素検知体と、脱酸素剤と、水分活性Aw0.96である餅200gとをガスバリア袋に封入した場合、酸素検知材はピンク色を呈した。しかし、その後1ヶ月間保管する中で、酸素検知材は次第に湿った状態となり且つ色調が赤味を帯び、3週間目には酸素検知体袋部の貫通孔の一部から、酸素検知材に含浸されていた色素(食紅)などが外へ滲み出る状態が観察された。更に1ヶ月後にガスバリア袋を開封して酸素検知体を空気中に晒した場合、1時間以上が経過しても変色が小さく、明確に変色を視認するのが困難であった。すなわち、酸素検知体の袋部における貫通孔の総開口面積が大きいために、餅を保存し、高湿である外部環境から酸素検知材が影響を受けて、酸素検知能が低下したことが示唆される。
【0036】
本発明に係る酸素検知体は、貫通孔を介して酸素を検知するので、被包部材は比較的にバリア性の高い材料を用いる。即ち、フィルムを透過する気体を抑制し、貫通孔の開口率で気体の流通量を制御して、酸素検知材の検知能力を調整するのである。被包部材の材料としては、水蒸気透過率が低い材料が望まれる。好ましくは、水蒸気透過率が100g/[m・24hr](40℃、90%RH)以下である。また、本発明に係る酸素検知体は、貫通孔により酸素を袋部内外の通気を得るので、被包部材の酸素透過性は、300cc/[m・atm・24hr]以下のものが好ましい。また、酸素検知材の色が外部から視認できるように、被包部材は、酸素検知材が配置される部分の少なくとも一部は透明となっている。即ち、被包部材は、上記条件を満たすものであり、且つ、内部視認性を有する材料からなるものであれば良い。
【0037】
被包部材は、上記をふまえ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(NY)等のバリア性の高い材料からなる外層フィルムと、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリロニトリル(PAN)等の中から耐薬品性に優れた内層フィルムとからなる積層フィルムを採用することが好ましい。例えば、PET/PANの積層フィルムが挙げられる。
【0038】
上記貫通孔を備えた被包部材で包装する場合、貫通孔により酸素が流通する構成となるので、被包部材の材料設計の選択肢が広く、製造工程が簡略化できる。また、水分活性を低い範囲に抑え、且つ、被包部材の水蒸気透過率を低く抑えたので、酸素検知材の乾燥を抑制することができるだけでなく、酸素検知体外部への水蒸気の流出を抑制することができる。
【実施例】
【0039】
酸素検知溶液を予め用意しておき、この酸素検知溶液に吸収体を浸して、酸素検知溶液を吸収体に含浸させた。この時の吸収体の水分活性Awは0.90であった。なお、酸素検知溶液は、メチレンブルー(酸化還元色素)0.1重量部、D−グルコース(還元性物質)25重量部、水酸化ナトリウム(塩基性物質)0.5重量部、エタノール15重量部、水60重量部と更に食紅とを含む。吸収体は、サラシクラフト紙からなり、厚みが約270μmのシート状のものを使用した。
【0040】
次に、酸素検知溶液を含浸させた吸収体を徐々に乾燥させ、吸収体の水分活性Awが0.55となるように調製し、この吸収体を15mm×20mmの寸法に裁断して酸素検知材とした。
【0041】
そして、被包部材は、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと厚さ30μmのポリアクリルニトリル(PAN)フィルムとを積層した二層ラミネートフィルムからなるものを用い、被包部材の内層側(PAN)同士が対向し、酸素検知材を両面から挟むようにして重ね合わせ、その周囲を熱圧着した。この段階で、寸法19mm×22mmであり、内部の酸素検知材の色調を視認できる透明部を有した袋部が形成された。更に袋部には、内外に通じる貫通孔を備えるものとした。貫通孔の総開口面積は、袋部の総面積に対しておよそ1×10−3%となるよう調製した。こうして、外寸法が30mm×43mmであり、袋部内に酸素検知材を封入した酸素検知体を作製した。
【0042】
作製した酸素検知体を脱酸素剤(パウダーテック株式会社製商品名ワンダーキープLP−50)とともに、厚さ25μmの塩化ビニリデンコートナイロンフィルムと厚さ80μmのポリエチレンフィルムとを積層したフィルムからなるガスバリア袋(袋内寸法が200mm×200mmの平袋)に入れ、同時にガスバリア袋に250mlの空気を注入して封入し、速やかに25℃環境下に放置した。そして、ガスバリア袋内の酸素濃度を酸素濃度計(東レエンジニアリング株式会社製LC−700F)を用いて経時的に測定しながら観察した。その結果、25℃下の放置を開始してから10時間後に、ガスバリア袋内の酸素濃度は0.1vol%未満となり、12時間後に酸素検知材は鮮やかなピンク色を呈した。続いてガスバリア袋を開封して酸素検知体を空気中に晒すと、5分後には酸素検知材は濃い青色を呈した。すなわち、酸素検知が鋭敏であり且つ視認性の高い酸素検知体であると言える。
【0043】
更に、実施例の酸素検知体と脱酸素剤をガスバリア袋に封入して25℃環境下に放置すると、酸素検知材はピンク色を呈した。続いて、酸素検知体と脱酸素剤を封入したガスバリア袋をそのまま25℃環境下で6ヶ月間保管した。6ヶ月の保管中、酸素検知材はピンク色を呈していた。そして、6ヶ月後にガスバリア袋を開封して酸素検知体を空気中に晒すと、5分後には酸素検知材は青色を呈した。すなわち、実施例の酸素検知体は、酸素検知能を長期にわたって維持可能であると言える。
【0044】
次に、高水分食品の長期保存下における酸素検知体の耐性について検証した。すなわち、本実施例の酸素検知体と、脱酸素剤(パウダーテック株式会社製商品名ワンダーキープX−50)と、高水分食品としての餅200g(水分活性Aw0.96)を、上述と同じガスバリア袋に封入して25℃環境下で1ヶ月間保管した。ガスバリア袋を密封してから、およそ10時間後に酸素検知材はピンク色を呈し、その後1ヶ月間、酸素検知材はピンク色の色調を維持した。更に1ヶ月後にガスバリア袋を開封して酸素検知体を空気中に晒すと、5分後には酸素検知材は青色を呈した。すなわち、本実施例の酸素検知体は、高水分食品等に用いても高い湿度の影響を受け難く、酸素検知能を維持できる。
【比較例】
【0045】
[比較例1]
比較例1は、実施例1の酸素検知材の水分活性値が異なる。すなわち、実施例1と同じ酸素検知溶液及び吸収体を用い、吸収体に酸素検知溶液を含浸させ、乾燥させ、酸素検知材の水分活性Awを0.1となるよう調製した。それ以外は、実施例1と同様に酸素検知体を脱酸素剤とともにガスバリア袋に封入した。
【0046】
比較例1の酸素検知材では、ガスバリア袋内の酸素濃度が0.1vol%未満となって7日経過しても、酸素検知材は明確な変色を示さなかった。続いて、ガスバリア袋を開封して酸素検知体を空気中に晒しても、明確な変色は観察されなかった。
【0047】
[比較例2]
比較例2は、実施例1の酸素検知材の水分活性値が異なる。すなわち、実施例1と同じ酸素検知溶液及び吸収体を用い、吸収体に酸素検知溶液を含浸させ、酸素検知材の水分活性Awを0.9となるよう調製した。それ以外は、実施例1と同様に酸素検知体を脱酸素剤とともにガスバリア袋に封入した。
【0048】
比較例2の酸素検知体では、酸素検知体を酸素濃度0.1vol%未満の雰囲気に置いた場合と空気中に晒した場合で変色は観察されたものの、酸素検知材に色ムラが生じて一定の色調を維持できなかった。
【0049】
酸素検知材の水分活性Awを0.1及び0.9に調製したいずれの比較例の場合も、工業上の使用には困難な状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の酸素検知体は、酸素検知材の水分活性を好適化したので、酸素検知能が安定化し、酸素検知体の使用期間の長期化を実現できる。加えて、被包部材について、貫通孔の総開口面積ならびに水蒸気透過率を好適な範囲としたことにより、貫通孔を備えた被包部材で酸素検知材を包装する形態の酸素検知体においても、酸素検知材の乾燥を抑制することができる。この結果、貫通孔により気体の流通を図る形態の酸素検知体において、酸素検知体が利用される雰囲気に対する耐性を向上させることができ、適用可能な保存品の範囲を広げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素検知溶液を吸収体に含浸させて雰囲気中の酸素濃度に反応して変色する酸素検知材を、被包部材で形成した袋部に封入した酸素検知体において、
前記被包部材には、包装の内外に通じる貫通孔を少なくとも1箇所に備え、
前記酸素検知材の25℃における水分活性がAw=0.30〜0.70であることを特徴とする酸素検知体。
【請求項2】
前記貫通孔の総開口面積は、前記袋部の表面積に対して1×10−4%〜1%である請求項1に記載の酸素検知体。
【請求項3】
前記被包部材は、水蒸気透過率が100g/[m・24hr](40℃、90%RH)以下である請求項1または請求項2に記載の酸素検知体。
【請求項4】
前記酸素検知材の吸収体がシート状の有機高分子吸収体からなるものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の酸素検知体。