説明

酸素濃縮装置

【課題】吸着剤の吸湿劣化を防止する酸素濃縮装置を提供する。
【解決手段】吸着剤を充填した2つの吸着床A,Bと、該吸着床へ空気を供給する空気供給手段と、該空気供給手段からの空気を該吸着床へ順次供給し濃縮酸素を取出す吸着工程、該吸着床を減圧し吸着剤を再生する脱着工程を一定タイミングで繰り返すための流路切替手段と、該吸着床の製品端同士を連通する均圧弁を備えた均圧流路と、生成された濃縮酸素の供給流量を制御する流量制御バルブ手段と、脱着空気の排気配管と、各要素を接続する配管とを具備し、該流路切替手段が2方弁4個からなり、それぞれ空気供給手段‐吸着床A間、吸着床A‐排気配管間、空気供給手段‐吸着床B間、吸着床B‐排気配管間に設置され、該酸素濃縮装置の運転開始時に設置された全ての2方弁を開く弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動させる起動制御を行なう制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気中の酸素を分離濃縮し使用者に供給する酸素濃縮装置に関する。さらに詳細には、酸素濃縮装置の停止時や低温保管時に生じる凝結水を運転開始時に系外に自動的に排出する機能を具備した長期耐久性を有する装置を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、肺気腫、肺結核後遺症や慢性気管支炎などの慢性呼吸器疾患に苦しむ患者が増加する傾向にあるが、かかる患者に対する治療方法として、高濃度酸素を吸入させる酸素吸入療法が行われている。酸素吸入療法とは前記疾病患者に対して酸素ガス若しくは酸素濃縮気体を吸入させる治療法である。治療用の酸素ガス或いは濃縮酸素気体の供給源としては、高圧酸素ボンベ、液体酸素ボンベ、酸素濃縮装置等の使用が挙げられるが、長時間の連続使用に耐えることができ、また使い勝手がよいなどの理由により、酸素濃縮装置を使用するケースが増加している。
【0003】
酸素濃縮装置は空気中の酸素を分離し、濃縮することを可能にした装置である。かかる酸素を分離濃縮する装置としては、90%以上の高濃度の酸素が得られるという観点で、空気中の窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を吸着床に充填し、圧力変動装置としてコンプレッサを用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置が広く世の中に広まっている。かかる装置は、通常、窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填させた吸着床に対して、コンプレッサから圧縮空気を供給し、吸着床内を加圧状態にして窒素を吸着させ、未吸着の高濃度の酸素を得る吸着工程と、吸着床内を減圧して窒素を脱着させる脱着工程とを有し、これを一定サイクルで繰り返すことにより高濃度の酸素を得る装置である。
【0004】
圧力変動吸着法には、吸着した窒素成分を取り除き吸着剤を再生させる脱着工程を大気圧まで行うPSA:Pressure Swing Adsorption法や、真空ポンプで吸着床を真空まで減圧させるVPSA:Vacuum Pressure Swing Adsorption法がある。また、吸着床を加圧するために必要な動力の削減や、得られる酸素の純度の向上を図るため、吸着工程と脱着工程の間に、2個の吸着床を配管で接続することにより、両吸着床の圧力を均等化する均圧工程を行なう場合もある。
【0005】
【特許文献1】特開2002-273143号公報
【特許文献2】特開2006-8464号公報
【特許文献3】特開昭61-187916号公報
【特許文献4】特開昭63-315504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般にPSA型酸素濃縮装置を起動させる際には、早期運転の安定化や吸着剤の吸湿劣化防止など、多くの事に留意する必要がある。装置の長期運転性能を担保する為には吸着剤の吸湿劣化対策が重要な要素となる。停止状態で放置しておいた装置を再度運転させる場合には、管路に結露が発生している可能性がある。特にコンプレッサなどで圧縮された空気を吸着筒に送り込む場合、暖められた水蒸気を含む加圧空気が供給されるコンプレッサ―吸着筒間の配管で結露が発生する可能性が高い。
【0007】
特開2002-273143号公報には、装置の起動時に2筒式の一方の吸着筒を吸着工程の開始筒として固定し、装置の停止時には当該吸着筒は脱着工程が、もう一方の吸着筒は吸着工程が行われ、完了時点で運転を停止すること、停止時には濃縮ガスの供給口を閉じた状態で運転すること、などが記載されている。本方法によれば、常に脱着工程が終了し吸着剤の再生が完了した吸着筒から運転が開始されるので、立ち上がり時の窒素吸着特性が良好になる。
【0008】
結露対策は想定されておらず、この装置の場合には、常に同一の筒から吸着工程が始まるため、一方の吸着筒に結露水が常に送り込まれることになり、吸着剤の水分劣化が片側の筒のみ進行するという問題を抱える。
【0009】
特開2006-8464号公報には、運転開始時に加圧する吸着筒を均等にすることにより、吸着剤の寿命を向上させる技術について記載されている。毎回同じ吸着筒から加圧を行なう場合、管路内の結露した水分や高湿度な空気が送り込まれることにより、決まった吸着筒内の吸着剤の劣化が加速されてしまう。しかし、本技術では運転開始時に最初に加圧する吸着筒を切り替えるため、特定の吸着筒の吸着剤のみが劣化することを防ぎ、酸素濃縮器の性能の劣化を抑制できるとされている。
【0010】
本技術により各吸着筒の吸着剤の劣化が均等になり、酸素濃縮器全体として吸着剤の寿命が向上するが、管路内の水分や高湿度な空気が系外に排出されることなく吸着筒内へ送り込まれるため、吸着剤が吸湿することによる劣化は避けられない。
【0011】
特開昭61-187916号公報には、2筒式PSAにおいて、運転停止の際に両筒が大気圧以上となること、および一方の吸着筒が再生工程を終えた状態となるように運転停止工程を制御し、再度運転開始の際には必ず再生が終わった吸着筒から吸着工程が始まる酸素濃縮器の制御法が記載されている。この方法であれば、再起動時には再生工程が終了した吸着筒から窒素及び水分の吸着を開始することとなる。しかし、例え再生工程が終了した状態であっても、水分に対する圧力スイングが十分でないことは十分考えられるため、本方法を採用した場合、再生工程終了後も吸着剤に残った水分が、再運転時に更に筒内部に押し込まれるような運転となる可能性がある。
【0012】
特開昭63-315504号公報には、装置の終了工程においてバッファタンクから酸素濃縮ガスを吸着筒に供給した状態で停止することにより、再起動後直ちに酸素濃縮ガスが生成可能となる運転方法が記載されている。この方法は運転再開直後から高濃度の酸素が生成できる利点があるものの、管路内の水分についてはなんら明記されていない。
【0013】
上記のごとく、従来の公知技術として吸着剤が吸湿すれば性能が低下することが知られていたにもかかわらず、開始技術で水分を排除する運転が十分に検討されていたとは言えず、いまだ検討の余地のある技術といえる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するものであり、装置の起動時に、管路内に滞留している水分を系外に排出した後、吸脱着工程を開始する圧力変動吸着型酸素濃縮装置を提供する。
本発明は各吸着筒の加圧/減圧工程の切替えに際して独立して制御可能な弁を用いたPSA吸着プロセスの開始過程において、コンプレッサと排気管路とを連通させた状態で空気を供給する事により、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を外部に排出させ、その後に吸着工程・脱着工程の酸素生成運転を開始する圧力変動吸着型酸素濃縮装置を提供する。
【0015】
また、運転を開始する過程において、上記した運転方法の他、前回運転時に吸着筒を加圧した状態で運転を終了させ、運転開始時に各吸着床と排気管路を連通させる事により吸着筒内の加圧状態の空気と共に吸着筒内及び吸着筒―排気管路間の水分を外部に排出する。その後、更にコンプレッサと排気管路を連通させた状態で原料空気を供給する事により、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を外部に排出させた後に通常の吸脱着工程の運転を開始する圧力変動吸着型酸素濃縮装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の圧力変動吸着型酸素濃縮装置は、運転開始時にコンプレッサと排気管路を連通させた状態でコンプレッサを起動することにより、供給される空気と共にコンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を外部に排出する事が出来る。また、加圧状態に保たれた吸着床内の空気を外部に排出する事により、吸着床―排気管路間及び吸着床内に滞留している水分を外部に排出する事が出来る。管路に残留している水分を吸着床に送り込まずに運転を開始する事により、残留水分による吸着剤の吸湿劣化を防止する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の圧力変動吸着型酸素濃縮装置の実施態様例を、以下の図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態である圧力変動吸着型酸素濃縮装置を例示した概略装置構成図である。圧力変動吸着型酸素濃縮装置は、外部空気取り込みフィルタ(図示せず)、コンプレッサ、切替弁である二方電磁弁(電磁弁1、電磁弁2、電磁弁3、電磁弁4)、吸着床A、B、均圧弁、逆止弁、製品タンク、調圧弁(図示せず)、流量設定手段であるコントロールバルブ(CV)、加湿器(図示せず)およびフィルタ(図示せず)を備える。これにより外部から取り込んだ原料空気から酸素ガスを濃縮した酸素富化空気を製造することができる。
【0018】
先ず、外部から取り込まれる原料空気は、塵埃などの異物を取り除くための外部空気取り込みフィルタなどを備えた空気取り込み口から取り込まれる。このとき、通常の空気中には、約21%の酸素ガス、約77%の窒素ガス、0.8%のアルゴンガス、水蒸気ほかのガスが1.2%含まれている。かかる装置では、呼吸用ガスとして必要な酸素ガスのみを濃縮して取出す。
【0019】
この酸素ガスの取出しは、原料空気を酸素ガス分子よりも窒素ガス分子を選択的に吸着するゼオライトなどからなる吸着剤が充填された吸着床A、Bに対して、二方弁の電磁弁1、電磁弁3によって、対象とする吸着床A、Bを順次切替えながら、原料空気をコンプレッサにより加圧して供給し、吸着床内で原料空気中に含まれる約77%の窒素ガスを選択的に吸着除去する。
【0020】
前記の吸着床A、Bとしては、前記吸着剤を充填した円筒状容器で形成され、通常、1筒式の他、連続的かつ効率的に酸素富化空気を製造するために2筒式や3筒以上の多筒式が用いられるが、本発明は筒数に関わらず用いる事が可能である。また、前記のコンプレッサとしては、揺動型空気圧縮機が用いられるほか、スクリュー式、ロータリー式、スクロール式などの回転型空気圧縮機が用いられる場合もある。また、このコンプレッサを駆動する電動機の電源は、交流であっても直流であってもよい。
前記吸着床A、Bで吸着されなかった酸素ガスを主成分とする酸素富化空気は、吸着床へ逆流しないように設けられた逆止弁を介して、製品タンクに流入する。
【0021】
なお、吸着床内に充填された吸着剤に吸着された窒素ガスは、新たに導入される原料空気から再度窒素ガスを吸着するために吸着剤から脱着させる必要がある。このために、コンプレッサによって実現される加圧状態から、電磁弁2、4により減圧状態(例えば大気圧状態又は負圧状態)に切替え、吸着されていた窒素ガスを脱着させて吸着剤を再生させる。この脱着工程においてその脱着効率を高めるため、吸着工程中の吸着床の製品端側から酸素富化空気を、均圧弁を介してパージガスとして逆流させるようにしてもよい。
【0022】
原料空気から酸素富化空気が製造され、製品タンクへ蓄えられる。この製品タンクに蓄えられた酸素富化空気は、例えば95%といった高濃度の酸素ガスを含んでおり、調圧弁や流量設定手段(コントロールバルブCV)などによってその供給流量と圧力とが制御されながら、加湿器へ供給され、加湿された酸素富化空気が患者に供給される。
かかる加湿器には、水分透過膜を有する水分透過膜モジュールによって、外部空気から水分を取り込んで乾燥状態の酸素富化空気へ供給する無給水式加湿器や、水を用いたバブリング式加湿器、或いは表面蒸発式加湿器を用いることが出来る。
【0023】
その他、流量設定手段CVの設定値を検知し、制御手段によりコンプレッサの電動機の回転数を制御することで吸着床への供給風量を制御する。設定流量が低流量の場合には回転数を落とすことで生成酸素量を抑え、且つ消費電力の低減を図る。
【0024】
図1に示す流路切替手段が二方電磁弁4個からなる圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、運転開始時に以下に示す工程1から工程3の順に行われるシーケンスを実施することにより、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を排出することができる。
【0025】
かかる装置は、酸素よりも窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した2つの吸着床A,Bと、該吸着床へ空気を供給する空気供給手段と、該空気供給手段からの空気を該吸着床へ順次供給し濃縮酸素を取出す吸着工程、該吸着床を減圧し吸着剤を再生する脱着工程を一定タイミングで繰り返すための流路切替手段と、該吸着床の製品端同士を連通する均圧弁を備えた均圧流路と、生成された濃縮酸素の供給流量を制御する流量制御バルブ手段と、脱着空気の排気配管と、各要素を接続する配管とを具備し、空気中の酸素を分離し濃縮酸素ガスを生成する圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、
該流路切替手段が2方弁4個からなり、それぞれ空気供給手段‐吸着床A間、吸着床A‐排気配管間、空気供給手段‐吸着床B間、吸着床B‐排気配管間に設置され、
該酸素濃縮装置の運転開始時に設置された全ての2方弁を開く弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動させる起動制御を行なう制御手段を備えることを特徴とする酸素濃縮装置である。
本運転開始方法について図4を用いて説明する。
[工程1] 電磁弁1、電磁弁2、電磁弁3、電磁弁4を開き、コンプレッサ―排気管路を連通させる。
[工程2] コンプレッサを起動し、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を外部に排出する。
[工程3] 電磁弁1、電磁弁4を開き、電磁弁2、電磁弁3を閉じることにより吸着床Aに加圧空気を供給し窒素を吸着し未吸着の酸素を逆止弁を介して製品タンクに取り出す吸着工程、吸着床Bと電磁弁4を介して排気管路を連通させ、吸着剤に吸着した窒素を吸着床Bを減圧排気すると共に均圧弁を介して製品酸素ガスの一部をパージすることで脱着再生する脱着工程を順次切り換え酸素を生成する運転を開始する。
【0026】
また、図1に示す流路切替手段が二方電磁弁4個からなる圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、運転停止時に吸着床A、B内を加圧状態で運転を終了させ、運転開始時に以下に示す工程1から工程4の順に行われるシーケンスを実施する事により、吸着床−排気管路間、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を排出することも可能である。
【0027】
すなわち、かかる装置は前記制御手段が、該酸素濃縮装置の運転停止時に該吸着床A,B内を加圧状態で運転を終了させる該流路切替手段及び均圧弁の弁開閉制御及び該空気供給手段の停止制御を行なう手段であり、且つ運転開始時に、吸着床A‐排気配管間及び吸着床B‐排気配管間に設置された流路切替手段を開き吸着床と排気管路を連通し、その後、空気供給手段‐吸着床A間及び空気供給手段‐吸着床B間に設置された2方弁を開く弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動する起動制御を行なう手段であることを特徴とする酸素濃縮装置である。
本運転開始方法について図5を用いて説明する。
[工程1] 電磁弁2、電磁弁4を開き吸着床―排気管路間を連通させ、両吸着床内に加圧状態で蓄えられていた空気を排気管路より排出する。この工程により吸着床―排気管路間及び各吸着床内に滞留している水分を外部に排出する。
[工程2] 電磁弁1、電磁弁3を開き、コンプレッサ―排気管路を連通させる。
[工程3] コンプレッサを起動し、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を外部に排出する。
[工程4] 電磁弁1、電磁弁4を開き、電磁弁2、電磁弁3を閉じることにより吸着床Aに加圧空気を供給し窒素を吸着し未吸着の酸素を逆止弁を介して製品タンクに取り出す吸着工程、吸着床Bと電磁弁4を介して排気管路を連通させ、吸着剤に吸着した窒素を吸着床Bを減圧排気すると共に均圧弁を介して製品酸素ガスの一部をパージすることで脱着再生する脱着工程を順次切り換え酸素を生成する通常運転を開始する。
【0028】
次に図2に示す流路切替手段が二方電磁弁6個からなる圧力変動吸着型酸素酸素濃縮装置について説明する。かかる装置は図1の装置の吸着床A,Bの原料空気入口側に電磁弁5,電磁弁6を備え、起動時の排出動作時に吸着床入口側を閉じることにより、水分の吸着床側への一部流入を防止するものである。すなわち、本装置は、酸素よりも窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した2つの吸着床A,Bと、該吸着床へ空気を供給する空気供給手段と、該空気供給手段からの空気を該吸着床へ順次供給し濃縮酸素を取出す吸着工程、該吸着床を減圧し吸着剤を再生する脱着工程を一定タイミングで繰り返すための流路切替手段と、該吸着床の製品端同士を連通する均圧弁を備えた均圧流路と、生成された濃縮酸素の供給流量を制御する流量制御バルブ手段と、脱着空気の排気配管と、各要素を接続する配管とを具備し、空気中の酸素を分離し濃縮酸素ガスを生成する圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、
該流路切替手段が2方弁6個からなり、それぞれ空気供給手段‐吸着床A間、吸着床A‐排気配管間、空気供給手段‐吸着床B間、吸着床B‐排気配管間、吸着床A直下、吸着床B直下に設置され、
該酸素濃縮装置の運転開始時に空気供給手段‐吸着床A間、吸着床A‐排気配管間、空気供給手段‐吸着床B間、吸着床B‐排気配管間に設置された2方弁を開く弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動する起動制御を行なう制御手段を備えることを特徴とする酸素濃縮装置である。
【0029】
かかる装置において、運転開始時に以下に示す工程1から工程3の順に実施することにより、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を排出する。本運転開始方法について図6を用いて説明する。
[工程1] 電磁弁1、電磁弁2、電磁弁3、電磁弁4を開き、コンプレッサ―排気管路を連通させる。
[工程2] コンプレッサを起動し、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を外部に排出する。この工程において電磁弁5及び電磁弁6は閉じられているため、コンプレッサより供給された空気によって運ばれた水分は、各吸着床に送られることなく外部に排出される。
[工程3] 電磁弁5、電磁弁6を開き運転を開始する。運転開始後、電磁弁5及び電磁弁6は常に開いた状態とする。
【0030】
また、図2に示す流路切替手段が二方電磁弁6個からなる圧力変動吸着型酸素酸素濃縮装置において、運転停止時に吸着床A、B内を加圧状態で運転を終了させ、運転開始時に以下に示す工程1から工程4の順に行われるシーケンスを実施する事により、吸着床−排気管路間、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を排出することも可能である。
【0031】
本運転開始方法について図7を用いて説明する。
[工程1] 電磁弁2、電磁弁4、電磁弁5、電磁弁6を開き、吸着床―排気管路間を連通させ、両吸着床内に加圧状態で蓄えられていた空気を排気管路より排出する。この工程により吸着床―排気管路間及び各吸着床内に滞留している水分を外部に排出する。
[工程2] 電磁弁1、電磁弁3を開き、電磁弁5、電磁弁6を閉じることによりコンプレッサ―排気管路間を連通させる。
[工程3] コンプレッサを起動し、コンプレッサ―排気管路間に滞留している水分を外部に排出する。この工程において、電磁弁5及び電磁弁6は閉じられているため、コンプレッサより供給された空気によって運ばれた水分は、各吸着床に送られることなく外部に排出される。
[工程4] 電磁弁5、電磁弁6を開き運転を開始する。運転開始後、電磁弁5及び電磁弁6は常に開いた状態とする。
【0032】
図3に流路切替手段が三方電磁弁2個からなる圧力変動吸着型酸素濃縮装置を示す。かかる装置は、酸素よりも窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した2つの吸着床A,Bと、該吸着床へ空気を供給する空気供給手段と、該空気供給手段からの空気を該吸着床へ順次供給し濃縮酸素を取出す吸着工程、該吸着床を減圧し吸着剤を再生する脱着工程を一定タイミングで繰り返すための流路切替手段と、該吸着床の製品端同士を連通する均圧弁を備えた均圧流路と、生成された濃縮酸素の供給流量を制御する流量制御バルブ手段と、脱着空気の排気配管と、各要素を接続する配管とを具備し、空気中の酸素を分離し濃縮酸素ガスを生成する圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、
該流路切替手段が3方弁2個からなり、それぞれ空気供給手段‐吸着床A間、空気供給手段‐吸着床Bに設置され、
該制御手段が該酸素濃縮装置の運転停止時に吸着床A,B内を加圧状態で運転を終了させる該流路切替手段及び均圧弁の弁開閉制御及び該空気供給手段の停止制御を行なう制御を行なうと共に、該酸素濃縮装置の運転開始時に吸着床と排気管路を連通させるように3方弁を開く弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動する起動制御を行なう制御手段を備えることを特徴とする酸素濃縮装置である。
【0033】
運転停止時に吸着床A、吸着床B内を加圧状態で運転を終了させ、運転開始時に以下に示す工程1、工程2の順に行われるシーケンスを実施する事により、吸着床―排気管路間に滞留している水分を排出する。本運転開始方法について図8を用いて説明する。
[工程1] 電磁弁1、電磁弁2を吸着床と排気管路を連通するように開き、両吸着床内に加圧状態で蓄えられていた空気を排気管路より排出する。この工程により、吸着床−排気管路間及び各吸着床内に滞留している水分を外部に排出する。
[工程2] 運転を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の圧力変動吸着型酸素濃縮装置の実施態様例を示す概略フロー図。
【図2】本発明の圧力変動吸着型酸素濃縮装置の別の実施態様例を示す概略フロー図。
【図3】本発明の圧力変動吸着型酸素濃縮装置の別の実施態様例を示す概略フロー図。
【図4】本発明の運転シーケンスの一態様を示すパターン図。
【図5】本発明の別の運転シーケンスの一態様を示すパターン図。
【図6】本発明の別の運転シーケンスの一態様を示すパターン図。
【図7】本発明の別の運転シーケンスの一態様を示すパターン図。
【図8】本発明の別の運転シーケンスの一態様を示すパターン図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素よりも窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した吸着床と、該吸着床へ空気を供給する空気供給手段と、該空気供給手段からの空気を該吸着床へ順次供給し濃縮酸素を取出す吸着工程、該吸着床を減圧し吸着剤を再生する脱着工程を一定タイミングで繰り返すための流路切替手段を具備し、空気中の酸素を分離し濃縮酸素ガスを生成する圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、
該酸素濃縮装置の運転開始時に、該空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動させる起動制御を行なう制御手段を備えることを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
該吸着床が2つの吸着床A,Bからなり、該吸着床の製品端同士を連通する均圧弁を備えた均圧流路と、生成された濃縮酸素の供給流量を制御する流量制御バルブ手段と、脱着空気の排気配管を具備し、
該流路切替手段が2方弁4個からなり、それぞれ空気供給手段‐吸着床A間、吸着床A‐排気配管間、空気供給手段‐吸着床B間、吸着床B‐排気配管間に設置され、
該酸素濃縮装置の運転開始時に設置された全ての2方弁を開く弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動させる起動制御を行なう制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
該制御手段が、該酸素濃縮装置の運転停止時に該吸着床A,B内を加圧状態で運転を終了させる該流路切替手段及び均圧弁の弁開閉制御及び該空気供給手段の停止制御を行なう手段であり、且つ運転開始時に、吸着床A‐排気配管間及び吸着床B‐排気配管間に設置された流路切替手段を開き吸着床と排気管路を連通し、その後、空気供給手段‐吸着床A間及び空気供給手段‐吸着床B間に設置された2方弁を開く弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動する起動制御を行なう手段であることを特徴とする請求項2記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
該吸着床が2つの吸着床A,Bからなり、該吸着床の製品端同士を連通する均圧弁を備えた均圧流路と、生成された濃縮酸素の供給流量を制御する流量制御バルブ手段と、脱着空気の排気配管を具備し、
該流路切替手段が該吸着床A及び該吸着床Bの入側に更に備えた2方弁6個からなり、それぞれ空気供給手段‐吸着床A間、吸着床A‐排気配管間、空気供給手段‐吸着床B間、吸着床B‐排気配管間、吸着床A直下、吸着床B直下に設置され、
該酸素濃縮装置の運転開始時に該吸着床A直下、及び吸着床B直下に設置され2方弁を閉じた状態で、空気供給手段‐吸着床A間、吸着床A‐排気配管間、空気供給手段‐吸着床B間、吸着床B‐排気配管間に設置された2方弁を開く弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動する起動制御を行なう制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
該制御手段が該酸素濃縮装置の運転停止時に吸着床A,B内を加圧状態で運転を終了させる該流路切替手段及び均圧弁の弁開閉制御及び該空気供給手段の停止制御を行なう手段であり、且つ運転開始時に吸着床A‐排気配管間、吸着床B‐排気配管間、吸着床A直下、吸着床B直下に設置された2方弁を開き、吸着床と排気管路を連通させ、その後、空気供給手段‐吸着床A間及び空気供給手段‐吸着床B間に設置された2方弁を開き、吸着床A直下、吸着床B直下に設置された2方弁を閉じる弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動する起動制御を行なう手段であることを特徴とする請求項4記載の酸素濃縮装置。
【請求項6】
該吸着床が2つの吸着床A,Bからなり、該吸着床の製品端同士を連通する均圧弁を備えた均圧流路と、生成された濃縮酸素の供給流量を制御する流量制御バルブ手段と、脱着空気の排気配管を具備し、
該流路切替手段が3方弁2個からなり、それぞれ空気供給手段‐吸着床A間、空気供給手段‐吸着床Bに設置され、
該制御手段が該酸素濃縮装置の運転停止時に吸着床A,B内を加圧状態で運転を終了させる該流路切替手段及び均圧弁の弁開閉制御及び該空気供給手段の停止制御を行なう制御を行なうと共に、該酸素濃縮装置の運転開始時に吸着床と排気管路を連通させるように3方弁を開く弁開閉制御、及び空気供給手段と排気管路を連通させた状態で空気供給手段を起動する起動制御を行なう制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の酸素濃縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−142380(P2009−142380A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320920(P2007−320920)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)