説明

醗酵処理用空気供給装置

【課題】空気の噴出口を詰まらせることなく供給管からの醗酵処理用空気の供給を円滑に行って、積層された腐敗性廃棄物の醗酵処理を迅速かつ的確に行う。
【解決手段】床面に形成したピット3内に、圧送空気の供給源に連通されるとともに表面に醗酵処理用の空気を噴出する多数の噴出孔5が形成された空気供給管4を配置する。空気供給管の周りのピット内空間部に、噴出孔に侵入不能な粒径を有する無機質系の充填材を、圧送空気がピット外に通過可能な程度の密度に充填し、ピットの上部開口を格子状の蓋9によって覆い、この蓋の上に腐敗性廃棄物を堆積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、地面などの床面上に堆積させた腐敗性廃棄物を予備醗酵等させるために床面から醗酵処理に供する空気を効率良く堆積層内に供給させる醗酵処理用空気の供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物性スラッジと必要に応じてスラッジ焼却灰や凝集材を腐敗性廃棄物に加え、これを醗酵槽に投入して醗酵させる技術が知られている(特許文献1)。ところで、腐敗性廃棄物の堆積したものを醗酵堆肥化させる場合、適量の水分と十分な空気の供給が必要である。特に、空気は堆積層の内部にまで十分に行き渡らせる必要があるが、堆積領域の床面積が限られた小面積しかない場合には、数100Kgから数トンもの腐敗性廃棄物を堆積させると小山のようになり、切返しによる空気供給はほとんど不可能である。
【0003】
このため、通常は、図2に示すように、堆積領域の下方からの供給、すなわち地面あるいは床面に空気の供給管Aを敷設し、供給管内に加圧空気供給源Bから加圧空気を吹き込んで腐敗性廃棄物の堆積層Cの内部に空気が浸透するようにしている。供給管Aは、堆積領域に複数列A1−A4配置され、長さ方向に所定の間隔をおいて空気吹き出し口が多数穿設されている。各供給管A1−A4の基端は、高圧空気の供給源Bに接続されている。
【特許文献1】特公平8−744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、供給管Aを床面などに直置きした場合には勿論のこと、予め供給管を収納するピットを掘ってその内部に配置した場合であっても、次のような題が生じる。
【0005】
腐性廃棄物Cの醗酵が進行し、品温が上昇するにつれ、内部の水分が水蒸気となって蒸散し、水分含有率が低下してゆく。空気供給管Aの空気吹き出し口近傍の廃棄物ほど乾燥化し易い。また、こうした吹き出し口近傍の廃棄物は堆積層廃棄物の全重量を受ける位置にある。従って、空気吹き出し口近くの廃棄物は脆くなり、吹き出し口からの空気流の勢いが何らかの理由によって低下したり、空気流の吹き出し方向が微妙に変わったりすると、粒径が吹き出し口の開口径よりも小さくなった廃棄物が吹き出し口から管内に入り込んだり、吹き出し口縁に引っかかって吹き出し口を詰まらせる要因となる。
【0006】
一旦、吹き出し口が詰まると、堆積層に十分な空気が供給できなくなる。吹き出し口は空気供給管Aの長さ方向に沿って多数穿設されているので、中途の吹き出し口から入った廃棄物粒子が管内を移動し、一箇所に集積すると、管の中途で閉塞部を生じ、それより下流には空気が供給されなくなるといった事態をも生じる。
【0007】
こうした醗酵処理用空気の欠乏は、堆積層内に醗酵ムラや嫌気性醗酵域もしくは腐敗域を生じさせ、悪臭発生の要因となるばかりでなく、全体の醗酵処理に時間がかかることになる。
【0008】
また、ピット内に供給管Aを配置した場合には、ピット内の供給管Aの周囲空間に上記した廃棄物が同様に入り込み、これらが圧密状になって周囲空間を充たし、周囲空間に向けて開口する他の吹き出し口を塞いでしまうばかりでなく、成長して供給管の上部噴出し口をも結果的に塞いでしまうことになる。
【0009】
吹き出し口の閉塞を防止するには、圧送空気の供給圧力を高めるのも一手法であるが、その分、さらに高圧なポンプが必要となり、廃棄物処理プラントの建設及び維持費用が嵩む。堆積層底部からの空気供給管によるこの種の醗酵処理用空気の供給は、この他、醗酵槽でも同様に行われるが、同じような問題を生じる。
【0010】
本発明は、上記した従来技術の抱える問題点に鑑み、吹き出し口を詰まらせることなく空気供給管からの醗酵処理用空気の供給を円滑に行って、積層された腐敗性廃棄物の醗酵処理を迅速かつ的確に行うことに寄与する、醗酵処理用空気の供給装置を提供することを目的するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は次の構成を備える。
すなわち、腐敗性廃棄物を堆積させた床面から腐敗性廃棄物の堆積層内に醗酵処理用の空気を吹き込み、堆積した腐敗性廃棄物の醗酵処理を促すようにした醗酵処理用空気供給装置において、床面にピットを穿ち、このピット内に、圧送空気の供給源に連通されるとともに表面に醗酵処理用の空気を噴出する多数の噴出孔が形成された空気供給管を配置してある。そして、空気供給管の周りのピット内空間部に、上記噴出孔に侵入不能な粒径を有する無機質系の充填材を、上記噴出孔から噴出された圧送空気がピット外に通過可能な程度の密度に充填し、ピットの上部開口を格子状の蓋によって覆い、この蓋の上に前記腐敗性廃棄物を堆積させるようにしてある。
【0012】
本発明では、ピットに供給管を配置したところまでは、従来例と同様である。本発明が従来と異なる点はピット内に無機質系の充填材を所定の要領で予め充填した点にある。
【0013】
充填材は、非分解性もしくは難分解性で比較的軽量な無機質系資材が選択される。例えば、ゼオライト、砂利、籾殻、活性炭などであるが、これらに限定されるものではない。無機質系であるために、腐敗性廃棄物とは異なり、微生物による分解が不能もしくは著しく困難で、変形や変質を起こしにくい。これらの資材は、いずれも供給管の噴出孔から内部には入りにくい粒径に設定される。
【0014】
また、充填材は、ピット内の空き空間に圧送空気がピット外に通過可能な程度の密度に充填してある。充填材自体が異形状をしているために、互いの接触状態においてかなりの空隙部を有するが、ものによっては圧密状態になるのを避けて空気流路を確保する必要がある。供給管は、従来のものと同様なものが利用できるが、表層部をメッシュ材によって被覆したものを用いるようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次の効果を奏する。
醗酵用空気の供給管をピット内に収納し、ピット内の空き空間に無機質系の充填材を所定の要領で予め充填してあることから、供給管上方に位置する腐敗性廃棄物は、充填材に遮られて供給管との直接接触はおろか、ピット内にも侵入することができない。一方、供給管からの空気は、充填材間に形成される入り組んだ隙間を通ることにより、多数方向に分散してピットの上部開口面積の全ての領域から蓋体をすり抜けて腐敗性廃棄物の堆積層内に侵入する。
【0016】
このため、供給管の噴出孔が詰まることがないばかりでなく、一つの噴出孔からも醗酵用空気の多数の流れを生み出すことができ、ピット全体を空気の噴出孔として活用することができる。この結果、腐敗性廃棄物の迅速で確実な醗酵処理を行うことができる。
【0017】
また、本発明によれば、充填材として使用する無機質系資材(例えばゼオライトや活性炭など)によっては、その多孔質な構造によって臭気成分の吸着を行うことができ、腐敗性廃棄物の脱臭にも寄与できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図1及び図2を参照しつつ詳説する。図1は、本発明の一実施形態に係る空気供給装置の要部となる供給管配置部分の断面図である。
【0019】
図中、符合1は、醗酵棟内の腐敗性廃棄物の堆積領域となる床面であり、符号2はその上に堆積された腐敗性廃棄物である。この廃棄物は、例えば水分が50%〜70%程度に予め調整されており、この堆積領域において一次処理としての予備醗酵が行われる。
【0020】
符号3は、床面に掘られたピットであり、その内部に空気供給管4が敷設されている。ピット3は、図2の従来例と同様に一定間隔をおいて複数列設けられている。
【0021】
空気供給管4には、その長さ方向及び周方向に所定の間隔をおいて多数の空気噴出孔5が穿設されている。図1の供給管では、周方向に3箇所の空気噴出孔5aから5cが形成されている。供給管4の表層は、メッシュ地の被覆層8によって覆われ、後述する充填材6との接触による破損を防止している。空気供給管4の基端部は、図2の従来例と同様に高圧空気供給源に接続されている。
【0022】
空気供給管4はピット内にゆとりを持って配置され、その周囲には空き空間7が形成されている。空き空間7は、粒状のゼオライトから成る充填材6によって充たされている。各ゼオライト(充填材)6は、空気噴出孔5の径よりも大径もしくは噴出孔内に侵入不能な大きさを持ち、互いの接触表面になるべく隙間が生じるようにゆったりとした密度で空き空間内に充填されている。また、充填材6は、各噴出孔5が隠れるように供給管4の外側を覆っている。
【0023】
図中、符合9はピット3の開口部を覆う蓋体であり、格子状の板材によって形成されている。蓋体9は、所要長さのものを多数直列に配置してある。格子の開口径や大きさは別段制限されるものではない。
【0024】
本装置の使用状態を説明する。
図2の従来例と同様に高圧空気供給源から各供給管に空気が送られると、空気は供給管4の噴出孔5より勢い良く噴出される。噴出された空気は、供給管4の周囲が充填材6によって覆われているとはいえ、充填材間にはかなりの隙間Sがあるので、この隙間Sを通って流れる。隙間Sは、幾通りも枝分かれするようにして空き空間内に発生しているので、噴出空気は多数の気流路を形成しながら、解放された上方へと向かい、蓋体9の格子開口を潜り抜けて、蓋体上に堆積された腐敗性廃棄物2の堆積層内へと侵入する。進入した空気は、腐敗性廃棄物の醗酵に必要な空気源となる。
【0025】
堆積層底部の腐敗性廃棄物は、ピット内の空き空間7がすでに充填材によって充たされているので空き空間内に落下進入することはできず、蓋体9の格子枠開口を通してピット内の充填材層の上部表面と接触する。この充填材層の上部表面には上記した多数の気流路が開口し、その径や大きさは多種多様であるため、腐敗性廃棄物の粒子がこれらの全てを閉塞することはない。
【0026】
また、腐敗性廃棄物の粒子は、充填材層に遮られて供給管4と直接接触することがないので、供給管4の噴出孔5、特に上向きの噴出孔5aから腐敗性廃棄物の粒子が入り込むおそれは全くない。このため、長期間使用しても、供給管内部には閉塞因子が溜まることもない。
【0027】
ピット3の空き空間内の充填材6は、ゼオライトによって構成されているので、廃棄物2から生じる臭気を部分的に吸着し、悪臭発生を抑制する機能を持つ。充填材6は、無機質系資材なので頻繁に取り替える必要はなく、長期間使用することができる。このようにして一次醗酵処理された被処理物は、醗酵槽などの最終醗酵処理過程に移送される。
【0028】
上記実施形態では、醗酵棟の床面に載置した廃棄物の堆積層に空気を供給する例について説明したが、本発明は、この他、醗酵槽の底面に配置される空気供給手段についても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る装置要部の断面図。
【図2】従来例を示す概念構成図。
【符号の説明】
【0030】
1−床面
2−腐敗性廃棄物
3−ピット
4−空気供給管
5(5a〜5c)−噴出孔
6−充填材
7−空き空間
8−被覆層
9−蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐敗性廃棄物を堆積させた床面から腐敗性廃棄物の堆積層内に醗酵処理用の空気を吹き込み、堆積した腐敗性廃棄物の醗酵処理を促すようにした醗酵処理用空気供給装置において、上記床面にピットを穿ち、このピット内に、圧送空気の供給源に連通されるとともに表面に醗酵処理用の空気を噴出する多数の噴出孔が形成された空気供給管を配置し、空気供給管の周りのピット内空間部に、上記噴出孔に侵入不能な粒径を有する無機質系の充填材を、上記噴出孔から噴出された圧送空気がピット外に通過可能な程度の密度で噴出孔が隠れるようして充填し、上記ピットの上部開口を格子状の蓋によって覆い、この蓋の上に前記腐敗性廃棄物を堆積させるようにしたことを特徴とする醗酵処理用空気供給装置。
【請求項2】
前記ピットが床面に所要の間隔をおいて複数設けられ、各ピット内に空気供給管と充填材が装填されている請求項1記載の供給装置。
【請求項3】
前記充填材が籾殻である請求項1記載の供給装置。
【請求項4】
前記充填材がゼオライトである請求項1記載の供給装置。
【請求項5】
前記充填材が砂利である請求項1記載の供給装置。
【請求項6】
前記供給管は表層部がメッシュ材によって被覆されている請求項1記載の供給装置。

【図1】
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【図2】
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