説明

重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置

【課題】重ウラン酸アンモニウム粒子を効率よく熟成、洗浄および乾燥処理することができ、しかも変形または破損のない高温ガス炉用燃料の燃料核の製造に有用な重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置。
【解決手段】硝酸ウラニルとアンモニアとを反応させる反応槽で形成された重ウラン酸アンモニウム粒子を受け入れ、重ウラン酸アンモニウム粒子が直線的に移動することのできる直線移動面と、前記重ウラン酸アンモニウム粒子が前記直線移動面から隣接する直線移動面へと曲線的に移動することのできる曲線移動面とを有する後処理槽(A)と、前記後処理槽を回転させる回転手段(B)と、前記反応槽から前記後処理槽へと重ウラン酸アンモニウム粒子を移送し、前記後処理槽の回転時に前記反応槽と前記後処理槽とを分離可能にする重ウラン酸アンモニウム粒子移送手段(C)とを有して成ることを特徴とする重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置に関し、さらに詳しくは、硝酸ウラニルのゲル粒子とアンモニアとを反応させて得られる重ウラン酸アンモニウム粒子を効率よく熟成、洗浄及び乾燥処理することのでき、しかも後処理操作中に変形又は破損させることなく重ウラン酸アンモニウム粒子を得ることのできる、例えば高温ガス炉用燃料の燃料核の製造に有用な重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高温ガス炉の燃料を投入する炉心は、熱容量が大きく高温健全性に優れた黒鉛により構成されている。この高温ガス炉においては、冷却ガスとして、高温下でも化学反応を起こすことがなく、安全性の高いヘリウムガス等の気体が用いられているので、出口温度が高い場合でも冷却ガスを安全に取り出すことができる。したがって、炉心の温度が約900℃程度まで上昇したとしても、高温に加熱された前記冷却ガスは、発電はもとより、水素製造装置、その他の化学プラントなど、幅広い分野で安全な熱利用を可能としている。
【0003】
また、この高温ガス炉に投入される高温ガス炉用燃料は、一般的に、燃料核とこの燃料核の周囲を被覆する被覆層とを備えて成る。燃料核は、例えば、二酸化ウランをセラミックス状に焼結して成る直径約350〜650μmの微小粒子である。
【0004】
前記被覆層は、4層構造をなし、燃料核表面側より、第一層、第二層、第三層及び第四層を有している。第一層は、密度約1g/cmの低密度熱分解炭素により形成され、ガス状の核分裂生成物(FP)のガス溜めとしての機能を有すると共に、燃料核のスウェリングを吸収するバッファとしての機能をも有している。第二層は、密度約1.8g/cmの高密度熱分解炭素により形成され、ガス状FPの保持機能を有している。第三層は、密度約3.8g/cmの炭化珪素により形成され、固体FPの保持機能を有し、被覆層の主要な強度部材である。第四層は、密度約1.8g/cmの高密度熱分解炭素により形成され、ガス状FPの保持機能を有すると共に、第三層の保護層としての機能をも有している。これら被覆層を構成する被覆粒子の直径は、通常は、約500〜1000μmである。
【0005】
前記4層の被覆層により被覆された燃料核(被覆燃料粒子)は、黒鉛マトリックス中に分散され、一定形状の燃料コンパクトの形態に成型加工され、さらにこの燃料コンパクトは、黒鉛により形成された筒に一定数量入れられ、上下に栓をして、燃料棒の形態とされる。最終的には、この燃料棒は六角柱型黒鉛ブロックが有する複数の挿入口に入れられ、この六角柱型黒鉛ブロックを多数個、ハニカム状に配列し、複数段重ねて炉心が構成される。
【0006】
このような高温ガス炉用燃料は、一般的に、以下のような工程を経ることによって製造される。まず、酸化ウラン粉末を硝酸に溶解して硝酸ウラニル溶液を調製する。次に、この硝酸ウラニル溶液に純水及び増粘剤を加えて攪拌混合して原液を調製する。増粘剤は、原液の粘度を向上させ、滴下される硝酸ウラニルの液滴が落下中に自身の表面張力により真球状になるように添加される物質である。
【0007】
前記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、アルカリ条件下で凝固する性質を有する樹脂、ポリエチレングリコール、及びメトロースなどを挙げることができる。このようにして調製された原液は、所定の温度に冷却され、粘度が調整された滴下原液とされた後、細径の滴下ノズルからノズルを振動させることによって反応槽内のアンモニア水溶液中に滴下される。
【0008】
アンモニア水溶液中に滴下される液滴には、アンモニア水溶液表面に達するまでの空間において、アンモニアガスが吹きかけられる。このアンモニアガスによって液滴表面がゲル化して被膜が形成されるので、ゲル被膜が形成された液滴粒子は、アンモニア水溶液表面に落下する際の衝撃による変形が防止される。上に乗った液滴粒子の荷重により下の液滴粒子が変形しないよう、反応槽内のアンモニア水溶液は反応槽の下側から上側に向かって循環されている。この反応槽内において、硝酸ウラニルとアンモニアとが反応して重ウラン酸アンモニウム粒子が形成される。
【0009】
反応槽において形成された重ウラン酸アンモニウム粒子は、反応槽に後続の後処理装置に移送される。この重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置への移送は、通常は、反応槽と後処理装置とを繋ぐ配管の弁を開放し、自重によりアンモニア水溶液と共に落下させることによって行われる。この後処理装置は、後処理槽を回転させながら、加熱により粒子の中心まで完全に硝酸ウラニルとアンモニアとを反応させて重ウラン酸アンモニウムを生成させる処理(熟成処理)、温水などにより重ウラン酸アンモニウム粒子を洗浄する処理(洗浄処理)及び乾燥する処理(乾燥処理)を施す装置である。
【0010】
熟成、洗浄及び乾燥処理された重ウラン酸アンモニウム粒子は、大気中で焙焼され、三酸化ウラン粒子となる。さらに、この三酸化ウラン粒子は、還元及び焼結することにより、高密度のセラミック状の二酸化ウラン粒子となる。このようにして形成された二酸化ウラン粒子は分級され、所定の粒子径を有する燃料核微粒子として取得される(非特許文献1及び2参照)。
【0011】
【非特許文献1】「原子炉材料ハンドブック」p221−p247,昭和52年10月31日発行、日刊工業新聞社発行
【非特許文献2】「原子力ハンドブック」p161−p169,平成7年12月20日発行、株式会社オーム社
【0012】
ところで、前記熟成、洗浄及び乾燥処理を施す重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置に用いられる後処理槽は、図1に示すように、当初、その縦断面形状が円形であった。図1に、従来の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の一例を示す。図1において、1は原液の滴下ノズルを、2は原液の液滴を、3は反応槽を、4はアンモニア水溶液を、5は重ウラン酸アンモニウム粒子を、6は接続配管を、7は三方弁を、8は接続部材を、9は後処理槽を、10は回転軸を、11は弁を、12はアンモニア水溶液及び洗浄水の排出管を表す。重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置は、接続配管6−3、接続部材8、後処理槽9、接続配管6−4、弁11及び回転軸10から構成されている。
【0013】
当初、後処理槽9の縦断面形状を円形としたのは、回転させることが容易となることから、重ウラン酸アンモニウム粒子5の後処理槽9内における回動が良好となり、重ウラン酸アンモニウム粒子5の熟成、洗浄及び乾燥処理が効率的に行われることを期待したからである。しかし、実際には、後処理槽9内の底部に重ウラン酸アンモニウム粒子5が滞留することが多く、いわば後処理槽9が空回りして、事実上、重ウラン酸アンモニウム粒子5に十分な回動を生じさせることができないという不都合があつた。
【0014】
後処理槽9の縦断面形状を円形としたことによる不都合を解消するため、その後、図2に示すように、後処理槽9の縦断面形状を矩形とした後処理装置が採用された。図2に、従来の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の他の例を示す。この後処理装置は、後処理槽9の縦断面形状を矩形とし、かつ、図2に示す状態、すなわち、前記矩形の対向する角部をそれぞれ上下方向及び水平方向として設置した状態で接続することによって、重ウラン酸アンモニウム粒子5に十分な回動を与えると共に、重ウラン酸アンモニウム粒子5の臨界管理を容易にすることを企図した装置である。しかしながら、最初に又は前に落下して後処理槽9の下方の角部に貯留している重ウラン酸アンモニウム粒子5の上に、後に落下してきた重ウラン酸アンモニウム粒子5やアンモニア水溶液4の衝撃荷重が加わり、重ウラン酸アンモニウム粒子5が押しつぶされて、変形又は破損するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明は、このような従来の問題を解消し、重ウラン酸アンモニウム粒子を良好に回動させることができ、効率よく熟成、洗浄及び乾燥処理することができ、しかも変形又は破損のない重ウラン酸アンモニウム粒子を得ることのできる、高温ガス炉用燃料の燃料核の製造に有用な重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、前記課題を解決するために、後処理装置に用いられる槽の内面形状に着目して種々検討を重ねた結果、重ウラン酸アンモニウム粒子を移動させる内面に、直線移動面と曲線移動面とを交互に形成することにより、前記課題が解決できるということを見出し、この知見に基づいてこの発明を完成するに到った。
【0017】
すなわち、この発明の前記課題を解決するための手段は、硝酸ウラニルのゲル粒子とアンモニアとを反応させる反応槽で形成された重ウラン酸アンモニウム粒子を受け入れ、受け入れられる重ウラン酸アンモニウム粒子が直線的に移動することのできる直線移動面と、前記重ウラン酸アンモニウム粒子が前記直線移動面から隣接する直線移動面へと曲線的に移動することのできる曲線移動面とが、交互に形成された内面を有する後処理槽(A)と、前記後処理槽を回転させる回転手段(B)と、前記反応槽から前記後処理槽へと重ウラン酸アンモニウム粒子を移送し、前記後処理槽の回転時に前記反応槽と前記後処理槽とを分離可能にする重ウラン酸アンモニウム粒子移送手段(C)とを有して成ることを特徴とする重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置である。
【0018】
この発明の前記手段における好ましい態様としては、前記反応槽から前記後処理槽へと重ウラン酸アンモニウム粒子を移送するに際し、前記重ウラン酸アンモニウム粒子を前記後処理槽内面の接線方向から移送する重ウラン酸アンモニウ粒子の後処理装置を挙げることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、反応槽から重ウラン酸アンモニウム粒子移送手段(C)を通じて後処理槽(A)内に重ウラン酸アンモニウム粒子を受け入れる場合に、反応槽から送り込まれてくる重ウラン酸アンモニウム粒子を、後処理槽(A)における直線移動面又は曲線移動面に送り出す。例えば、直線移動面に送り込まれた重ウラン酸アンモニウム粒子は、その直線移動面上を、又はその直線移動面に沿って移動し、重ウラン酸アンモニウム粒子の移動速度に応じて前記直線移動面から曲線移動面に移行し、移行した重ウラン酸アンモニウム粒子はその勢いに応じて曲線移動面から次の直線移動面に移動する。一方、最初に曲線移動面に送り込まれた重ウラン酸アンモニウム粒子は、その曲線移動面上を、又はその曲線移動面に沿って移動し、重ウラン酸アンモニウム粒子の移動速度に応じて前記曲線移動面から直線移動面に移行し、移行した重ウラン酸アンモニウム粒子はその勢いに応じて直線移動面から次の曲線移動面に移動する。かくして、重ウラン酸アンモニウム粒子移送手段(C)から後処理槽(A)内に移送される重ウラン酸アンモニウム粒子は、後処理槽(A)内で何かに激突することなく直線移動面及び曲線移動面を転動ないし滑動していくのであるから、重ウラン酸アンモニウム粒子が破損、又は毀損することがない。
【0020】
また、後処理槽(A)に所定量の重ウラン酸アンモニウム粒子が装填された後には、重ウラン酸アンモニウム粒子移送手段における反応槽と後処理槽(A)との結合状態が解除される。その後に、後処理槽(A)を回転手段(B)により回転させる。通常、この後処理槽(A)の回転は、水平に配置された回転軸により行われる。
【0021】
後処理槽(A)に収容されている重ウラン酸アンモニウム粒子の集合が、例えば、水平状態となっている直線移動面に貯まっているとする。この後処理槽(A)が回転手段(B)により回転させられると、例えば、水平状態となっている直線移動面が垂直状態へと変化し、これによって直線移動面に貯留している重ウラン酸アンモニウム粒子の集合も直線移動面の傾斜と共に直線移動面に随伴するが、直線移動面が垂直状態に成る途中で重ウラン酸アンモニウム粒子の集合が崩れて垂直状態になりつつある直線移動面に隣接する曲線移動面に移動する。後処理槽(A)の回転に伴って、重ウラン酸アンモニウム粒子の集合を貯留する曲線移動面が回転における最低位置からより高い位置へと変化する。そうすると曲線移動面に貯留されている重ウラン酸アンモニウム粒子の集合が曲線移動面から隣接する直線移動面に向かって崩れ、その直線移動面に重ウラン酸アンモニウム粒子の集合が貯留されることになる。直線移動面に貯留されるに至った重ウラン酸アンモニウム粒子の集合は、後処理槽(A)の回転により、前述した動作を繰り返す。
【0022】
したがって、この発明に係る後処理装置においては、回転する後処理槽(A)内で重ウラン酸アンモニウムが混ぜ返されるので、この後処理槽(A)における熟成操作、乾燥操作及び洗浄操作を良好に行うことができるようになる。
【0023】
その結果、この発明によると、重ウラン酸アンモニウム粒子を効率よく熟成、洗浄及び乾燥処理することができ、しかも、変形又は破損のない重ウラン酸アンモニウム粒子を得ることのできる重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置が提供され、高温ガス炉用燃料の製造分野に寄与するところはきわめて多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明の重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置(以下、単に「後処理装置」ということがある。)は、下記後処理槽(A)、回転手段(B)及び重ウラン酸アンモニウム粒子移送手段(以下、単に「移送手段」と称することがある。)(C)を有して成る装置である。
【0025】
以下、図面に基づいて、この発明の重ウラン酸アンモニウム粒子の後処理装置を説明する。図3は、この発明の後処理装置を備えた重ウラン酸アンモニウム粒子の製造装置の一例を示す図である。図3において、13−1、13−2、13−3及び13−4は直線移動面を、14−1、14−2、14−3及び14−4は曲線移動面を、それぞれ表す。
【0026】
図3に示されるように、後処理槽9に供給される重ウラン酸アンモニウム粒子5は、反応槽3にて形成される。反応槽3は、アンモニア水溶液を貯留する槽であり、この反応槽3の上部開口部の上方には、図示しない振動付与手段により振動させられる滴下ノズル1が配置される。滴下ノズル1と反応槽3におけるアンモニア水溶液の液面との間には、図示しないアンモニアガス供給手段によりアンモニアガスが供給されるように成っている。滴下ノズル1には、図示しない原液供給槽から滴下原液が供給される。この滴下原液は、酸化ウラン粉末を硝酸に溶解し、得られた硝酸ウラニル溶液に純水及び増粘剤を加えて攪拌混合することにより調製される。この滴下原液は、所定の温度に冷却され、粘度が調整されてから、滴下ノズル1に供給される。滴下ノズル1を振動させることによって、滴下原液は液滴2となって反応槽3内のアンモニア水溶液4中に滴下される。このとき、アンモニア水溶液4中に滴下される液滴2には、アンモニア水溶液4の表面に達するまでの空間において、前記アンモニアガス供給手段によりアンモニアガスが吹きかけられる。液滴2にアンモニアガスが吹きかけられることにより、液滴2の表面がゲル化して被膜が形成される。
【0027】
反応槽3には、その底部に結合された接続配管6−1と接続配管6−2との間に介装された三方弁7を通じて図示しないアンモニアガス又はアンモニア水溶液送出手段が結合されている。前記送出手段としてアンモニアガス送出手段を採用する場合、このアンモニアガス送出手段により反応槽3の底部からアンモニア水溶液にアンモニアガスを噴出させることにより、アンモニア水溶液4が反応槽3の中心部においてその下側から上側に向かって上昇し、上昇したアンモニア水溶液4が反応槽3の内壁に沿って上から下へと下降し、結果としてアンモニア水溶液が循環するようになっている。この反応槽3内において、滴下された液滴中の硝酸ウラニルとアンモニアとが反応して重ウラン酸アンモニウム粒子5が形成される。形成された重ウラン酸アンモニウム粒子5は、この発明の後処理装置に移送される。
【0028】
この移送は、三方弁7の作動により、接続配管6−1と接続配管6−2とを連通させ、重ウラン酸アンモニウム粒子5の自重により、アンモニア水溶液4と共に落下させることによって行われる。
【0029】
この発明の一例である後処理装置は、接続配管6−3、接続部材8、後処理槽9、接続配管6−4、弁11及び回転軸10を有する。前記後処理槽9は、接続配管6−2と後処理槽9の上端部に設けられた接続配管6−3とを接続する接続部材8によって、反応槽3に続設されている。接続部材8は、後処理槽9を回転させるときに、後処理槽9と反応槽3とを分離させ、また接続する部材でもある。この例においては、接続部材8と接続配管6−3とにより、重ウラン酸アンモニウム粒子5を後処理槽9に移送する重ウラン酸アンモニウム粒子移送手段が形成されている。
【0030】
前記後処理槽9は、図3に示すように、その縦断面形状が矩形(正方形又は長方形)であることが好ましいが、必ずしも矩形に拘束されることはなく、後処理槽9内面に直線移動面と曲線移動面とが形成されている限り、三角形、五角形又は六角形であってもよい。この後処理槽9の内面には、後処理槽9内に存在する重ウラン酸アンモニウ粒子5が直線的に移動することのできる直線移動面13−1、13−2、13−3及び13−4と、前記重ウラン酸アンモニウ粒子5が前記直線移動面から隣接する直線移動面へ曲線的に移動することのできる曲線移動面14−1、14−2、14−3及び14−4とが、交互に形成されている。
【0031】
前記直線移動面は、後処理槽9内に移送され流入してきた重ウラン酸アンモニウ粒子5が、回転手段、例えばモーターなどの駆動手段で回転する回転軸10により回転する後処理槽9内を、直線的に移動するよう形成された後処理槽9の内面である。また、前記曲線移動面は、重ウラン酸アンモニウ粒子5が回転する後処理槽9内を曲線的に移動するよう形成された後処理槽9の内面である。この曲線移動面の曲線状態としては、後処理槽9内に角部が形成されていない状態である限り特に制限はないが、円弧状に形成されていること、すなわち、アール(R)が形成されていることが好ましい。この円弧状の大きさにも制限はないが、前記後処理槽9の断面形状が正方形である場合、前記円弧状から想定される円の径が、前記正方形の一辺の1/3以下であることが好ましい。
【0032】
また、重ウラン酸アンモニウム粒子5を後処理槽9に移送する移送手段の一要素でもある接続配管6−3は、その開口部が直線移動面13−1に臨み、開口部から排出される重ウラン酸アンモニウム粒子5の集合が直線移動面13−1に円滑に移送され流入するように、直線移動面13−1に平行に配設されていることが好ましい。つまり、前記反応槽3から前記後処理槽9へと重ウラン酸アンモニウム粒子5を移送するに際し、前記重ウラン酸アンモニウム粒子5を前記後処理槽9内面の接線方向から移送することが好ましい。この好ましい移送態様としては、図3に示す態様であってもよいが、より好ましい態様としては、図4又は図5に示す移送態様を挙げることができる。
【0033】
反応槽3から落下し、後処理槽9に移送される重ウラン酸アンモニウム粒子5は、後処理槽9における直線移動面に滑るように供給され、次いでこの直線移動面に連続して形成されている曲線移動面上を走行する。したがって、接続配管6−3の開口部から排出され、落下してきた重ウラン酸アンモニウム粒子5やアンモニア水溶液4の衝撃荷重が、前に落下した重ウラン酸アンモニウム粒子5に加わり、重ウラン酸アンモニウム粒子5が押しつぶされて、変形又は破損するという不都合は回避される。
【0034】
移送が終了した重ウラン酸アンモニウム粒子5の集合とアンモニア水溶液4とを内蔵する後処理槽9は、反応槽3から分離され、後処理槽9をモーターなどの駆動手段で回転軸10を回転させることにより回転させる。回転する後処理槽9内において、重ウラン酸アンモニウム粒子5とアンモニア水溶液4とが撹拌処理される。後処理槽9を回転させ撹拌処理すると、内部に存在する重ウラン酸アンモニウ粒子5は、後処理槽9内面における直線移動面から曲線移動面へと順次、回動しながら移動する。
【0035】
後処理槽9の内部に存在する重ウラン酸アンモニウ粒子5が回動しながら移動する状態を模式的に図6に示す。図4において、15−1又は15−2は重ウラン酸アンモニウ粒子5が接続配管6−3又は6−4内に移入することを防止する粒子移入防止部材である。図中の矢印は後処理槽9の回転方向を表す。
【0036】
反応槽3から分離され、予め粒子移入防止部材15が嵌入された後処理槽9を回転させることによって、重ウラン酸アンモニウ粒子5は、図6(a)から(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)及び(h)に示されるように、回動しながら移動する。この重ウラン酸アンモニウム粒子5の回動は、重ウラン酸アンモニウム粒子5が直線的に移動することのできる直線移動面13−1、13−2、13−3及び13−4と、前記重ウラン酸アンモニウ粒子5が前記直線移動面から隣接する直線移動面へ曲線的に移動することのできる曲線移動面14−1、14−2、14−3及び14−4とが、交互に連続的に形成されていることから、きわめて円滑、かつ強力に行われる。その結果、重ウラン酸アンモニウム粒子5を効率よく熟成、洗浄及び乾燥処理することができる。
【0037】
前記重ウラン酸アンモニウム粒子5の熟成処理は、加熱下、後処理槽9を回転させて撹拌処理することにより、重ウラン酸アンモニウム粒子5の中心まで完全に硝酸ウラニルとアンモニアとを反応させて重ウラン酸アンモニウムを生成させる処理である。この熟成処理の条件に特に制限はないが、通常は50〜100℃、30分以上である。後処理槽9の回転数は、通常は1〜20rpmである。
【0038】
また、前記重ウラン酸アンモニウム粒子5の洗浄処理は、温水などにより重ウラン酸アンモニウム粒子5を洗浄し、アンモニアを除去する処理である。この洗浄処理は、粒子移入防止部材15を取り外し、接続部材8により後処理槽9を反応槽3に接続して、三方弁7から後処理槽9内に40〜100℃の水を供給した後、再び後処理槽9を反応槽3から分離して、後処理槽9を回転させて撹拌処理することにより行うことができる。また、脱着式のホースにより、温水を供給してもよい。洗浄処理した後は、弁11を開放し、排出管12からアンモニア水溶液及び洗浄水を排出する。排出液が中性となるまで、前記洗浄と排出とが繰り返される。
【0039】
さらに、前記熟成処理及び洗浄処理が施された重ウラン酸アンモニウム粒子5は、乾燥処理される。この乾燥処理は、例えば、回転軸10を二重管として、内管に加熱気体を導入し、後処理槽9を加熱下、回転させて、重ウラン酸アンモニウム粒子5を後処理槽9内で回動させることにより行われる。加熱気体は外管から排出される。乾燥条件に特に制限はないが、通常は80℃以上、2時間以上である。乾燥処理が終了した重ウラン酸アンモニウム粒子5は、接続配管6−3又は排出管12から取り出される。
【0040】
図7に、この発明の後処理装置を備えた重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の他の例を示す。この発明の後処理装置における後処理槽9の取付態様を、図3に示す取付態様に代えて、図7に示すようにしてもよい。この場合は、重ウラン酸アンモニウム粒子5を後処理槽9に移送する移送手段でもある接続配管6−3が、後処理槽9の左端部に設けられ、重ウラン酸アンモニウム粒子5が直線移動面13−1に円滑に移送され流入するよう、直線移動面13−1に対し、斜方に配設されている。作用及び効果は、図3に示す場合と変わるところはない。
【0041】
前記熟成、洗浄及び乾燥処理が施された重ウラン酸アンモニウム粒子5は、従来から公知の手法により大気中で焙焼され、三酸化ウラン粒子となる。焙焼されて得られた三酸化ウラン粒子は、さらに還元及び焼結され、高密度のセラミック状の二酸化ウラン粒子となる。このときの還元条件、及び焼結条件としては、従来から公知の条件が採用される。このようにして形成された二酸化ウラン粒子は分級され、所定の粒子径を有する燃料核微粒子として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の一例を示す図である。
【図2】従来の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の他の例を示す図である。
【図3】この発明の後処理装置を備えた重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の一例を示す図である。
【図4】この発明の後処理装置を備えた重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置(部分)の他の例を示す図である。
【図5】この発明の後処理装置を備えた重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置(部分)の別の例を示す図である。
【図6】重ウラン酸アンモニウ粒子が回動しなが移動する状態を示す図である。
【図7】この発明の後処理装置を備えた重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 滴下ノズル
2 液滴
3 反応槽
4 アンモニア水溶液
5 重ウラン酸アンモニウム粒子
6 接続配管
7 三方弁
8 接続部材
9 後処理槽
10 回転軸
11 弁
12 排出管
13 直線移動面
14 曲線移動面
15 粒子移入防止部材
16 (矢印)重ウラン酸アンモニウム粒子の移動方向



【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸ウラニルのゲル粒子とアンモニアとを反応させる反応槽で形成された重ウラン酸アンモニウム粒子を受け入れ、受け入れられる重ウラン酸アンモニウム粒子が直線的に移動することのできる直線移動面と、前記重ウラン酸アンモニウム粒子が前記直線移動面から隣接する直線移動面へと曲線的に移動することのできる曲線移動面とが、交互に形成された内面を有する後処理槽(A)と、前記後処理槽を回転させる回転手段(B)と、前記反応槽から前記後処理槽へと重ウラン酸アンモニウム粒子を移送し、前記後処理槽の回転時に前記反応槽と前記後処理槽とを分離可能にする重ウラン酸アンモニウム粒子移送手段(C)とを有して成ることを特徴とする重ウラン酸アンモニウ粒子の後処理装置。
【請求項2】
前記反応槽から前記後処理槽へと重ウラン酸アンモニウム粒子を移送するに際し、前記重ウラン酸アンモニウム粒子を前記後処理槽内面の接線方向から移送する請求項1に記載の重ウラン酸アンモニウ粒子の後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−151724(P2006−151724A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343024(P2004−343024)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000165697)原子燃料工業株式会社 (278)
【Fターム(参考)】