説明

重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置

【課題】真球度が良好な重ウラン酸アンモニウム粒子を製造することができる重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置を提供すること。
【解決手段】 前記課題を解決するための手段としては、アンモニア水溶液を貯留する貯留槽2と、前記貯留槽2を搖動させる搖動手段3とを有することを特徴とする重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置に関し、特に詳しくは、真球度が良好な重ウラン酸アンモニウム粒子を製造することができる重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1〜5によると、高温ガス炉用燃料は、一般的に以下のような工程を経て製造される。まず、酸化ウランの粉末を硝酸に溶かして、硝酸ウラニル溶液とする。次に、この硝酸ウラニル溶液に純水及び増粘剤等を添加し、攪拌して硝酸ウラニル含有原液とする。調製された硝酸ウラニル含有原液は、所定の温度に冷却され、粘度を調製後、細径の滴下ノズルを用いてアンモニア水溶液に滴下される。
【0003】
このアンモニア水溶液に滴下された液滴は、アンモニア水溶液表面に達するまでの間に、アンモニアガスを吹きかけられる。このアンモニアガスによって、液滴表面がゲル化され、これにより、アンモニア水溶液表面到達時における変形が防止される。アンモニア水溶液中における硝酸ウラニルは、アンモニアと十分に反応し、重ウラン酸アンモニウム粒子(以下、「ADU粒子」と略する場合がある。)となる。
【0004】
この重ウラン酸アンモニウム粒子は、乾燥された後、大気中で焙焼され、二酸化ウランよりも酸素を多く含み、酸素:ウランのモル比が2を超える酸化ウラン、例えば、三酸化ウランとなり、さらに還元及び焼結されることにより、高密度のセラミックス状の二酸化ウラン粒子となる。この二酸化ウラン粒子を篩い分け、すなわち分級して、所定の粒子径を有する燃料核を得る。
【0005】
この燃料核を流動床に装荷し、被覆ガスを熱分解させることにより被覆を施す。被覆層は、燃料核表面から第一層、第二層、第三層、および第四層を被覆することにより形成されている。第一層の低密度炭素の場合は、約1400℃でアセチレン(C)を熱分解して得られる。第二層および第四層の高密度熱分解炭素の場合は、約1400℃でプロピレン(C)を熱分解して得られる。第三層のSiCの場合は約1600℃でメチルトリクロロシラン(CHSiCl)を熱分解して得られる。
【0006】
一般的な燃料コンパクトは、以上のようにして得られた被覆燃料粒子を黒鉛粉末、粘結剤等からなる黒鉛マトリックス材とともに、中空円筒形状または円筒形状にプレス成型またはモールド成型した後、焼成して得られる。
【0007】
【非特許文献1】S.Kato ”Fabrication of HTTR First Loading fuel”,IAEA-TECDOC-1210,187 (2001)
【非特許文献2】N.Kitamura ”Present status of initial core fuel fabrication for the HTTR” IAEA−TECDOC−988,373(1997)
【非特許文献3】林 君夫、”高温工学試験研究炉の設計方針、製作性及び総合的健全性評価”JAERI−M 89−162(1989)
【非特許文献4】湊 和生、”高温ガス炉燃料製造の高度技術の開発”JAERI−Reseach 98−070(1998)
【非特許文献5】長谷川正義、三島良績 監修「原子炉材料ハンドブック」昭和52年10月31日発行 221−247頁、日刊工業新聞社
【0008】
一方、ウランなどの核燃料物質を使用して核燃料を製作する場合、臨界事故を防ぐための方法としては、一般的に、取り扱うウラン量を臨界質量以下とする「質量制限」と、ウラン量には関係なく臨界が生じない形状・寸法内でウランを取り扱う「形状制限」とが挙げられる。
【0009】
「質量制限」の場合には、濃縮度10%以下のウランに対する取扱最大量は、9.6kgであり、濃縮度20%以下のウランに対する取扱最大量は、4.0kgである。したがって、各製造工程におけるバッチサイズは、これらの値以下にする必要がある。さらに、安全性の観点から、誤って2重装荷した場合を考慮すると、各製造工程におけるバッチサイズは、これらの値の1/2以下にする必要がある。そのため、核燃料の生産性は悪くなり、量産設備に対する臨界管理方法として適しているとはいえない。
【0010】
一方、「形状制限」の場合には、ウランの濃縮度や形状によって規定される大きさも異なってくる。例えば、濃縮度10%以下のウランに対する製造設備の大きさが、製造設備の形状が円筒形状である場合、円筒の直径で19.8cm以下であり、製造設備の形状が平板状である場合、平板の厚みで8.3cm以下である。
【0011】
また、濃縮度20%以下のウランに対する製造設備の大きさが、製造設備の形状が円筒形状である場合、円筒の直径で17.4cm以下であり、製造設備の形状が平板状である場合、平板の厚みで6.7cm以下である。
【0012】
これらの製造設備で取り扱うウランの量には制限がないため、「形状制限」は、量産設備に対する臨界管理方法としては好ましい。しかしながら、上記したように、高濃縮度のウランになるに従い、「形状制限」での寸法制限値は小さくなるため、燃料核を製造する設備は、細長い円筒形状や薄い平板状にならざるを得ない。
【0013】
例えば、上記したように、アンモニア水溶液に滴下された硝酸ウラニル含有原液の液滴は、反応し、硝酸ウラニルを生成する。このアンモニア水溶液中における硝酸ウラニルは、アンモニアと十分に反応し、重ウラン酸アンモニウム粒子となる。
【0014】
生成した重ウラン酸アンモニウム粒子が、さらに上に積載されていく。このため、先に滴下され、生成した重ウラン酸アンモニウム粒子は、上に載った重ウラン酸アンモニウム粒子の重みにより、変形する。この変形により、生成した重ウラン酸アンモニウム粒子の真球度が悪くなるという問題点がある。
【0015】
上記した問題点を解決するための手段として、例えば、アンモニア水溶液を重ウラン酸アンモニウム粒子の下方から上方へ循環させることにより、重ウラン酸アンモニウム粒子を流動させる方法を挙げることができる。
【0016】
しかしながら、上記の方法を行う場合には、高濃縮度のウランを原料として使用すると、アンモニア水溶液を貯留する槽が、上記した形状制限に対応するために、細長い円筒形、または薄い平板状となる。したがって、使用する槽が形状の制限を受けるため、アンモニア水溶液を下方から上方へ循環させるだけでは、重ウラン酸アンモニウム粒子を十分に流動させることができない。それゆえ、重ウラン酸アンモニウム粒子が変形することによる真球度の悪化が再度、問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような従来の問題点を解消し、真球度が良好な重ウラン酸アンモニウム粒子を製造することができる重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、アンモニア水溶液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽を搖動させる搖動手段とを有することを特徴とする重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置であり、
請求項2は、前記貯留槽は、鉛直方向に所定の間隔で配置された複数の仕切板を有し、
前記複数の仕切板は、前記貯留槽と前記複数の仕切板とで区画された隣接する空間同士を連通する連通部をそれぞれ有し、
前記連通部は、隣接する仕切板で形成される空間を流通する流体の流通方向が、隣接する空間における流体の流通方向とは反対になるように、各仕切板に形成されてなる前記請求項1記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置であり、
請求項3は、前記連通部は、隣接する仕切板の連通部とは、鉛直方向に平行な前記貯留槽の中心軸線に対して反対側の位置に形成されてなる前記請求項2記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置であり、
請求項4は、前記貯留槽は、形状制限を満足する前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置であり、
請求項5は、前記仕切板は、中性子吸収材を含んでいる前記請求項2〜4のいずれか1項に記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置であり、
請求項6は、前記貯留槽の外周面には、中性子吸収材を含んでなる板状部材が、前記貯留槽を挟み込むようにして設けられている前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アンモニア水溶液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽を搖動させる搖動手段とを有することにより、真球度が良好な重ウラン酸アンモニウム粒子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1を参照しながらこの発明の一実施形態に係る重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置(以下、「ADU粒子製造装置」と称することがある。)について説明する。ただし、図1に記載されたADU粒子製造装置は、この発明の一例であり、この発明に係るADU粒子製造装置は、図1に記載されたADU粒子製造装置に限られることはない。
【0021】
図1に示されるように、ADU粒子製造装置1は、図示しない滴下装置と、貯留槽2と、搖動手段3とを有する。
【0022】
滴下装置は、硝酸ウラニルを含有する硝酸ウラニル含有原液を貯留槽2に滴下する装置である。この滴下装置は、ノズルを有している。このノズルは、所定の内径を有しているものであればよく、硝酸ウラニル含有原液を滴下する際には、図示は略すが、各々のノズルを硝酸ウラニル含有原液の滴下方向および/または滴下方向に対する直交方向に振動させることにより、後述する硝酸ウラニル含有原液を滴下させるようになっている。
【0023】
滴下装置の配置としては、貯留槽2に滴下することができれば、特に制限はないが、例えば、鉛直方向に平行である貯留槽2の中心軸線X1上に配置されていることが好ましい。このようにすれば、滴下された前記硝酸ウラニル含有原液が生成してなるADU粒子が貯留槽2に衝突することが少なくなり、ADU粒子の変形を少なくすることができる。
【0024】
貯留槽2は、図示しない滴下装置の下方に設けられ、滴下される硝酸ウラニル含有原液と反応するアンモニア水溶液を貯留する。貯留槽2は、例えば、全体として、平板形状を有している。貯留槽2の断面形状としては、多角形状、円形状、楕円形状等を挙げることができる。
【0025】
なお、貯留槽2は、滴下装置の配置される箇所と対応する上面部分のみ開口してなる投入部2Aを有し、密閉形状に形成されてなることが好ましい。このようにすれば、貯留するアンモニア水溶液が気化することによる濃度の変動を抑えることができる。
【0026】
さらに、貯留槽2は、ADU粒子を排出する排出部2Bを有する。排出部2Bは、貯留槽2の下面側に形成されていればよく、下面側端部に形成されていることが好ましい。このようにすれば、ADU粒子を貯留槽2内に残すことなく排出することができる。
【0027】
貯留槽2は、形状制限を満足することが好ましい。貯留槽2の鉛直方向寸法としては、例えば、濃縮度10%以下のウランに対する場合には、8.3cm以下であり、濃縮度20%以下のウランに対する場合には、6.7cm以下である。このようにすれば、臨界状態になることがなく、安全に、重ウラン酸アンモニウム粒子を大量生産することができる。
【0028】
貯留槽2の上下の外周面には、中性子吸収材を含んでなる板状部材4が、前記貯留槽2を挟み込むようにしてそれぞれ設けられていることが好ましい。ここで、中性子吸収材を構成する物質としては、ホウ素、カドミウム、キセノン、ガドリウム、ハフニウム等を含むものであればよい。
【0029】
なお、板状部材4が設けられる位置は、貯留槽2の上下の外周面に限定されることはなく、後述するように、臨界状態を生じさせる中性子を吸収するのであれば、例えば、貯留槽2の側壁側に設けられていてもよい。
【0030】
このようにすれば、中性子吸収材を含んでなる板状部材4が、前記貯留槽2を挟み込むようにして設けられていることにより、臨界状態を生じさせる中性子を吸収するので、例えば、いわゆる「形状制限」における寸法制限値を大きくすることができる。したがって、貯留槽2自体の寸法を大きく形成できるので、重ウラン酸アンモニウム粒子の生産量を増加させることができる。
【0031】
搖動手段3は、前記貯留槽2を搖動させる。具体的には、搖動手段3は、前記貯留槽2の鉛直方向および水平方向の中心部に設けられ、水平方向に延びる支軸3Aと、図示しない支軸3Aを回動させる回動動力手段とを備えてなる。この回動動力手段としては、例えば、モータ等を挙げることができる。本実施形態において、搖動手段3は、この支軸3Aを中心として、貯留槽2の端部を鉛直方向に上下動させる。また、支軸3Aを回動させる際の角度は、貯留槽2の水平方向寸法および生成する重ウラン酸アンモニウム粒子の量等に応じて、適宜、設定可能である。
【0032】
上記したADU粒子製造装置1の使用方法および作用を以下に述べる。なお、本発明のADU粒子製造装置でADU粒子1を製造するときに用いられる硝酸ウラニル含有原液は、酸化ウランと硝酸とを混合して得られる硝酸ウラニルに水溶性ポリマーを添加し、次いで純水を添加することにより粘度を調節して調製される。
【0033】
前記酸化ウランとしては、二酸化ウラン、三酸化ウランまたは八酸化三ウラン等を挙げることができ、特に八酸化三ウランが好ましい。
【0034】
前記水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリエチレンオキシド等の合成ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、及びエチルセルロース等のセルロース系ポリマー、可溶性でんぷん、及びカルボキシメチルでんぷん等のでんぷん系ポリマー、デキストリン、及びガラクタン等の水溶性天然高分子等を挙げることができる。
【0035】
これら各種の水溶性ポリマーは、その一種を単独で使用されても、また、それらの二種以上が併用されていても良い。これらの中でも、水溶性ポリマーとして前記合成ポリマーが好ましく、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0036】
まず、貯留槽2に所定濃度、所定量のアンモニア水溶液を貯留する。次に、図示しない滴下装置に所定の硝酸ウラニル含有原液を流通させ、図示しない滴下装置より、投入部2Aを経て、貯留槽2内に硝酸ウラニル含有原液の液滴を滴下する。
【0037】
図示は略すが、滴下される各々の液滴に対して、適宜アンモニアガスを吹きかけるようにしてもよい。このようにすれば、液滴の表面ではゲル化が進み、アンモニア水溶液表面に衝突する際の液滴の変形を抑制することができる。
【0038】
その後、各液滴は、貯留槽2の内のアンモニア水溶液内に沈降していき、このアンモニア水溶液より、さらにアンモニアを吸収する。そして、各液滴は、表面だけでなく、内部までもゲル化が進み、ADU粒子へと反応が進む。
【0039】
この際、搖動手段3によって、貯留槽2を搖動させる。搖動している貯留槽2内部のADU粒子は貯留槽2内部を一箇所にとどまることなく、転がる。ADU粒子が転がっている間にも、次々と硝酸ウラニル含有原液の液滴が滴下され、ADU粒子が貯留槽2内部で生成する。生成したADU粒子は、先のADU粒子と衝突することが少なくなるので、ADU粒子が変形することを最小限に抑えることができる。また、生成したADU粒子は、先のADU粒子の上に堆積しつづけることも少なくすることもできるので、ADU粒子が変形することを防ぐことができる。したがって、真球度が良好な重ウラン酸アンモニウム粒子を製造することができる。
【0040】
所定量のADU粒子の生成が終了した後、排出部2Bを経て、ADU粒子は、貯留槽2外部へ排出される。外部へ排出されたADU粒子は、洗浄、乾燥して、その後、所定の条件で焙焼、還元・焼結の各工程を経て、二酸化ウラン粒子となる。
【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。例えば、ADU粒子製造装置の変形例として、以下に示されるようなADU粒子製造装置11を挙げることができる。図2に示されるように、ADU粒子製造装置11は、図示しない滴下装置と、貯留槽12と、搖動手段13とを有する。
【0042】
図示しない滴下装置の配置としては、貯留槽12に滴下することができれば、特に制限はないが、例えば、鉛直方向に平行である貯留槽12の中心軸線X2上に配置されていることが好ましい。このようにすれば、滴下された前記硝酸ウラニル含有原液が生成してなるADU粒子が貯留槽12に衝突することが少なくなり、ADU粒子の変形を少なくすることができる。
【0043】
貯留槽12は、図示しない滴下装置の下方に設けられ、滴下される硝酸ウラニル含有原液と反応するアンモニア水溶液を貯留する。貯留槽12は、例えば、全体として、平板形状を有している。
【0044】
なお、貯留槽12は、滴下装置の配置される箇所と対応する上面部分のみ開口してなる投入部12Aを有し、密閉形状に形成されてなることが好ましい。このようにすれば、貯留するアンモニア水溶液が気化することによる濃度の変動を抑えることができる。
【0045】
さらに、貯留槽12は、ADU粒子を排出する排出部12Bを有する。排出部12Bは、貯留槽12の下面側に形成されていればよく、下面側端部に形成されていることが好ましい。このようにすれば、ADU粒子を貯留槽12内に残すことなく排出することができる。
【0046】
また、貯留槽12は、複数の仕切板15を有している。複数の仕切板15は、鉛直方向に所定の間隔で配置されている。また、貯留槽12は、前記貯留槽12と前記複数の仕切板15とで区画された互いに隣接する空間16を有している。前記複数の仕切板15は、隣接する空間16同士を連通する連通部17をそれぞれ有している。
【0047】
前記連通部17は、隣接する仕切板15で形成される空間16を流通する流体の流通方向が、隣接する空間16における流体の流通方向とは反対になるように、各仕切板15に形成されてなる。
【0048】
具体的には、前記連通部17は、隣接する仕切板15の連通部17とは、鉛直方向に平行な前記貯留槽12の中心軸線X2に対して反対側の位置に形成されてなる。すなわち、各連通部17は、中心軸線X2に対して互い違いの位置に形成されている。本実施形態においては、連通部17は、仕切板15の端部に形成された貫通孔である。
【0049】
ここで、仕切板15の大きさ、枚数、および区画された空間16の大きさ、数は、生成する重ウラン酸アンモニウム粒子に応じて適宜設定される。なお、前記仕切板15は、中性子吸収材を含んでいることが好ましい。中性子吸収材としては、上記と同様の材料を挙げることができる。
【0050】
このようにすれば、臨界状態を生じさせる中性子等の貯留槽12内への侵入を防止するので、例えば、いわゆる「形状制限」における寸法制限値を大きくすることができる。したがって、貯留槽12自体の寸法を大きく形成できるので、重ウラン酸アンモニウム粒子の生産量を増加させることができる。
【0051】
貯留槽12の上下の外周面には、中性子吸収材を含んでなる板状部材14が、前記貯留槽12を挟み込むようにしてそれぞれ設けられていることが好ましい。ここで、中性子吸収材を構成する物質としては、ホウ素、カドミウム、キセノン、ガドリウム、ハフニウム等を含むものであればよい。
【0052】
なお、板状部材14が設けられる位置は、貯留槽12の上下の外周面に限定されることはなく、後述するように、臨界状態を生じさせる中性子を吸収するのであれば、例えば、貯留槽12の側壁側に設けられていてもよい。
【0053】
このようにすれば、中性子吸収材を含んでなる板状部材14が、前記貯留槽12を挟み込むようにして設けられていることにより、臨界状態を生じさせる中性子を吸収するので、例えば、いわゆる「形状制限」における寸法制限値を大きくすることができる。したがって、貯留槽12自体の寸法を大きく形成できるので、重ウラン酸アンモニウム粒子の生産量を増加させることができる。
【0054】
搖動手段13は、前記貯留槽12を搖動させる。具体的には、搖動手段13は、貯留槽12の水平方向の中心部であり、かつ貯留槽12に設けられ、水平方向に延びる支軸13Aと、図示しない支軸13Aを回動させる回動動力手段とを備えてなる。この回動動力手段としては、例えば、モータ等を挙げることができる。本実施形態において、搖動手段13は、この支軸13Aを中心として、貯留槽12の端部を鉛直方向に上下動させる。また、支軸13Aを回動させる際の角度は、貯留槽12の水平方向寸法および生成する重ウラン酸アンモニウム粒子の量等に応じて、適宜、設定可能である。
【0055】
上記したADU粒子製造装置11の使用方法および作用を以下に述べる。なお、本発明のADU粒子製造装置11でADU粒子を製造するときに用いられる硝酸ウラニル含有原液は、上記同様の原料、条件で調製される。
【0056】
まず、貯留槽12に所定濃度、所定量のアンモニア水溶液を貯留する。次に、図示しない滴下装置に所定の硝酸ウラニル含有原液を流通させ、図示しない滴下装置より、投入部12Aを経て、貯留槽12内に硝酸ウラニル含有原液の液滴を滴下する。
【0057】
その後、各液滴は、貯留槽12における図2中最上段の空間16内のアンモニア水溶液内に沈降していき、このアンモニア水溶液より、さらにアンモニアを吸収する。そして、各液滴は、表面だけでなく、内部までもゲル化が進み、ADU粒子へと反応が進む。
【0058】
この際、搖動手段13によって、貯留槽12を搖動させる。搖動している貯留槽2内部のADU粒子は貯留槽12における図2中最上段の空間16内部を一箇所にとどまることなく、転がる。転がったADU粒子は、図示左側の連通部17を経て、次段の空間16に達する。
【0059】
次段の空間16に達したADU粒子は、引き続き貯留槽12の搖動によって、図2中次段の空間16内部を一箇所にとどまることなく、転がる。転がったADU粒子は、図示右側の連通部17を経て、さらに次段の空間16に達する。したがって、ADU粒子が転がっている間にも、次々と硝酸ウラニル含有原液の液滴が滴下され、ADU粒子が貯留槽12内部で生成する。生成したADU粒子は、先のADU粒子と衝突することが少なくなるので、ADU粒子が変形することを最小限に抑えることができる。また、生成したADU粒子は、先のADU粒子の上に堆積しつづけることも少なくすることもでき、ADU粒子が変形することを防ぐことができる。したがって、真球度が良好な重ウラン酸アンモニウム粒子を製造することができる。
【0060】
一方、空間16から隣接する空間16へ各連通部17を経て、ADU粒子は移動を繰り返し、最下段の空間16に達する。所定量のADU粒子の生成が終了した後、排出部12Bを経て、ADU粒子は、貯留槽12外部へ排出される。外部へ排出されたADU粒子は、洗浄、乾燥して、その後、所定の条件で焙焼、還元・焼結の各工程を経て、二酸化ウラン粒子となる。
【0061】
なお、上記したように、搖動手段3、13は、それぞれ鉛直方向に貯留槽2、12を揺動させるものであったが、これに限られず、搖動手段は、貯留槽を水平方向に揺動させるものであってもよく、鉛直方向および水平方向の両方に揺動させるものであってもよい。搖動手段が貯留槽を水平方向に揺動させる例として、図3に示す変形例を挙げる。図3に示されるように、ADU粒子製造装置21は、図示しない滴下装置と、貯留槽22と、図示しない搖動手段とを有する。貯留槽22は、上面の中央部分に開口してなる投入部22Aを有している。ADU粒子製造装置21を使用して、重ウラン酸アンモニウム粒子を製造する手順は以下の通りである。まず、この投入部22Aから貯留槽22内に硝酸ウラニル含有原液の液滴を滴下する。そして、貯留槽22を図示しない搖動手段により、水平方向に揺動させる。
【0062】
搖動している貯留槽22内部のADU粒子は貯留槽22内部を一箇所にとどまることなく、転がる。ADU粒子が転がっている間にも、次々と硝酸ウラニル含有原液の液滴が滴下され、ADU粒子が貯留槽22内部で生成する。生成したADU粒子は、先のADU粒子と衝突することが少なくなるので、ADU粒子が変形することを最小限に抑えることができる。また、生成したADU粒子は、先のADU粒子の上に堆積しつづけることも少なくすることもできる。したがって、真球度が良好な重ウラン酸アンモニウム粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明に係る重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の鉛直方向の断面を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明に係る重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の変形例の鉛直方向の断面を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明に係る重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置の変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ADU粒子製造装置
2 貯留槽
2A 投入部
2B 排出部
3 搖動手段
3A 支軸
4 板状部材
11 ADU粒子製造装置
12 貯留槽
12A 投入部
12B 排出部
13 搖動手段
13A 支軸
14 板状部材
15 仕切板
16 空間
17 連通部
21 ADU粒子製造装置
22 貯留槽
22A 投入部
X1 中心軸線
X2 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア水溶液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽を搖動させる搖動手段とを有することを特徴とする重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置。
【請求項2】
前記貯留槽は、鉛直方向に所定の間隔で配置された複数の仕切板を有し、
前記複数の仕切板は、前記貯留槽と前記複数の仕切板とで区画された隣接する空間同士を連通する連通部をそれぞれ有し、
前記連通部は、隣接する仕切板で形成される空間を流通する流体の流通方向が、隣接する空間における流体の流通方向とは反対になるように、各仕切板に形成されてなる前記請求項1記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置。
【請求項3】
前記連通部は、隣接する仕切板の連通部とは、鉛直方向に平行な前記貯留槽の中心軸線に対して反対側の位置に形成されてなる前記請求項2記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置。
【請求項4】
前記貯留槽は、形状制限を満足する前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置。
【請求項5】
前記仕切板は、中性子吸収材を含んでいる前記請求項2〜4のいずれか1項に記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置。
【請求項6】
前記貯留槽の外周面には、中性子吸収材を含んでなる板状部材が、前記貯留槽を挟み込むようにして設けられている前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の重ウラン酸アンモニウム粒子製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−37132(P2010−37132A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201148(P2008−201148)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000165697)原子燃料工業株式会社 (278)
【Fターム(参考)】