説明

重合体ポリオールの製造方法

【課題】 重合時に生成する粗大粒子の量が少なく、濾過性に優れた、連続重合による重合体ポリオールの製造方法を得る。
【解決手段】 ポリオール(a)および必要により希釈溶剤(d)中でエチレン性不飽和モノマー(b)を、ラジカル重合開始剤(i)の存在下、分散剤(c)の存在下または不存在下、連続重合させて重合体ポリオールを製造する方法において、重合槽に供給される直前の下記混合液(E)中の(b)の含有量が5〜12質量%であることを特徴とする製造方法。
混合液(E):(a)、(b)、(i)、および必要により(c)と(d)から選ばれる1種以上からなる原料混合液(G)、並びに重合槽から回収した反応液の一部(Z)からなる混合液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体ポリオールを製造する方法に関する。さらに詳しくは、ウレタンフォームおよびウレタンエラストマーの原料として好適な重合体ポリオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体ポリオールは、例えばポリウレタンフォームの、圧縮硬さのアップ、耐久性向上といった物性向上を目的に用いられ、ポリオール中で重合開始剤の存在下、エチレン性不飽和モノマーを重合させて得られる。製造された重合体ポリオールを用い、ポリウレタンフォームを機械発泡にて生産する場合には、粗大粒子が存在すると、物性が低下したり、発泡機中の吐出ヘッド内での詰まりによる発泡機の運転停止が頻繁に起こるため、重合体ポリオール中の粗大粒子は濾過金網やストレーナーなどにより十分に除去されなければならない。重合体ポリオール中の粗大粒子を除去する方法としては、重合後に粗大粒子を機械的に強制粉砕する方法(特許文献1参照)などが知られている。
【特許文献1】特開平6−199929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の製法では、粉砕工程が新たに必要となり、重合体ポリオールの生産性が著しく低下するなどの問題点があった。また、近年、ポリウレタン成形物の物性改良や成形システムの合理化のために使用される重合体含有量の多いポリオールの生産プロセスでは、重合時に粗大粒子が発生しやすくなり、ストレーナーの目詰まりによって生産性が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の問題点を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、連続重合プロセスで製造する際の、圧入混合液中のエチレン性不飽和モノマーの濃度を特定範囲に調整することにより、上記の問題点を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、ポリオール(a)および必要により希釈溶剤(d)中でエチレン性不飽和モノマー(b)を、ラジカル重合開始剤(i)の存在下、分散剤(c)の存在下または不存在下、連続重合させて重合体ポリオールを製造する方法において、重合槽に供給される直前の下記混合液(E)中の(b)の含有量が5〜12質量%であることを特徴とする製造方法である。
混合液(E):(a)、(b)、(i)、および必要により(c)と(d)から選ばれる1種以上からなる原料混合液(G)、並びに重合槽から回収した反応液の一部(Z)からなる混合液。
【発明の効果】
【0006】
本発明の重合体ポリオールの製造方法によれば、重合時に生成する粗大重合体粒子の量が十分少なく、濾過性に優れる。
本発明の方法により、原料供給速度を速くしても重合時に生成する粗大重合体粒子濃度の量が少なく、かつ濾過性が良好な重合体ポリオールを製造することができるため濾過に要する時間が短縮可能となり生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、ポリオール(a)は、通常、重合体ポリオールの製造に用いられる公知のポリオールが使用できる。例えば、少なくとも2個(好ましくは2〜8個)の活性水素を含有する化合物(多価アルコール、多価フェノール、アミン類、ポリカルボン酸、リン酸等)にアルキレンオキサイドを付加した構造の化合物(a1)およびこれらの混合物が挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、多価アルコールにアルキレンオキサイドが付加された構造の化合物である。
【0008】
多価アルコールとしては、炭素数2〜20の2価アルコール(脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール;および脂環式ジオール、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルキレングリコール)、炭素数3〜20の3価アルコール(脂肪族トリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオールなどのアルカントリオール);炭素数5〜20の4〜8価またはそれ以上の多価アルコール(脂肪族ポリオール、例えば、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトールなどの、アルカンポリオールおよびそのもしくはアルカントリオールの分子内もしくは分子間脱水物;ならびにショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシドなどの糖類およびその誘導体)が挙げられる。
【0009】
多価フェノールとしては、ピロガロール、ハイドロキノンおよびフロログルシン等の単環多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびビスフェノールスルホン等のビスフェノール類;フェノールとホルムアルデヒドの縮合物(ノボラック)等が挙げられる。
【0010】
アミン類としては、アンモニア;脂肪族アミンとして、炭素数2〜20のアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミンおよびアミノエチルエタノールアミン)、炭素数1〜20のアルキルアミン(例えば、n−ブチルアミンおよびオクチルアミン)、炭素数2〜6のアルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン)、ポリアルキレンポリアミン(アルキレン基の炭素数が2〜6のジアルキレントリアミン〜ヘキサアルキレンヘプタミン、例えば、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミン)が挙げられる。
また、炭素数6〜20の芳香族モノもしくはポリアミン(例えば、アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリンおよびジフェニルエーテルジアミン);炭素数4〜20の脂環式アミン(イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミンおよびジシクロヘキシルメタンジアミン);炭素数4〜20の複素環式アミン(例えば、アミノエチルピペラジン)等が挙げられる。
【0011】
ポリカルボン酸としては、炭素数4〜18の脂肪族ポリカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸など)、炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)、およびこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0012】
上記活性水素含有化合物に付加させるアルキレンオキサイドとしては炭素数2〜8のものが好ましく、エチレンオキサイド(以下、EOと略記する。)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記する。)、1,2−、1,3−、1,4−および2,3−ブチレンオキサイド(以下、BOと略記する。)、スチレンオキサイド(以下、SOと略記する。)等およびこれらの2種以上の併用(ブロックおよび/またはランダム付加)が挙げられる。好ましくは、POまたはPOとEOとの併用(EO含量が25%以下)である。なお、上記および以下において、%はとくに断りのない限り、質量%を意味する。
【0013】
上記ポリオ−ルの具体例としては、上記活性水素含有化合物にPOを付加したものおよびPOと他のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する。)、好ましくはEOを下記の様式で付加したもの、またはこれらの付加化合物とポリカルボン酸若しくはリン酸とのエステル化物等が挙げられる。
(1)PO−AOの順序でブロック付加したもの(チップド)
(2)PO−AO−PO−AOの順序でブロック付加したもの(バランスド)
(3)AO−PO−AOの順序でブロック付加したもの
(4)PO−AO−POの順序でブロック付加したもの(活性セカンダリ−)
(5)POおよびAOを混合付加したランダム付加物
(6)米国特許第4226756号明細書記載の順序でランダムまたはブロック付加したもの
また、(a1)の水酸基当量は、好ましくは200〜4,000、さらに好ましくは400〜3,000である。2種以上の(a1)を併用して水酸基当量がこの範囲内としたものも好ましい。
【0014】
ポリオール(a)として、前記活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドを付加した構造の化合物(a1)と共に他のポリオール(a2)を併用することもできる。この場合、(a1)/(a2)の使用比率(質量比)は、好ましくは、100/0〜80/20である。
(a2)としては、ポリエステルポリオール、ジエン系ポリオール等の高分子ポリオール並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、前記の多価アルコールおよび/またはポリエーテルポリオール〔エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコールまたはこれらとグリセリン、トリメチロールプロパン等の3価またはそれ以上の多価アルコールとの混合物、並びにこれら多価アルコールのアルキレンオキサイド低モル(1〜10モル)付加物〕と、前記ポリカルボン酸もしくはその無水物、低級アルキル(アルキル基の炭素数:1〜4)エステル等のエステル形成性誘導体(例えば、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テレフタル酸ジメチル等)との縮合反応物、または前記の多価アルコールおよび/またはポリエーテルポリオールと、前記カルボン酸無水物およびアルキレンオキサイドとの縮合反応物;それら縮合反応物のアルキレオンキサイド(EO、PO等)付加反応物;ポリラクトンポリオール、例えば前記多価アルコールを開始剤としてラクトン(ε−カプロラクトン等)を開環重合させることにより得られるもの;ポリカーボネートポリオール、例えば前記多価アルコールとアルキレンカーボネートとの反応物;等が挙げられる。
【0016】
さらには、ポリブタジエンポリオール等のジエン系ポリオールおよびその水素添加物;アクリル系ポリオール等の水酸基含有ビニル重合体;ヒマシ油等の天然油系ポリオール;天然油系ポリオールの変性物等が挙げられる。
これらのポリオール(a2)は、通常2〜8個、好ましくは3〜8個の水酸基と、通常200〜4,000、好ましくは400〜3,000の水酸基当量を有している。
ポリオール(a)の数平均分子量〔ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による、とくに記さない限り以下の数平均分子量についても同じ〕は、通常500以上、好ましくは500〜20,000、特に好ましくは1,200〜15,000、最も好ましくは2,000〜9,000である。数平均分子量が500以上であるとポリウレタンフォームの発泡性の面で好ましく、20,000以下であると低粘度となりポリマーポリオールの取り扱い性の面で好ましい。また(a)の水酸基当量は、好ましくは200〜4,000、さらに好ましくは400〜3,000である。
【0017】
重合体ポリオールの製造に用いられるエチレン性不飽和モノマー(b)としては、不飽和ニトリル(b1)、芳香環含有モノマー(b2)、(メタ)アクリル酸エステル(b3)、数平均分子量が160〜490で、SP値が9.5〜13〔(cal/cm31/2、以下同じ〕ある末端エチレン性不飽和基モノマー(b4)、その他のエチレン性不飽和モノマー(b5)、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
(b1)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
(b2)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、クロルスチレンなどが挙げられる。
(b3)としては、C、H、およびO原子のみで構成されるものが挙げられ、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類(アルキル基の炭素数が1〜24);ヒドロキシポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜8)モノ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0018】
また、とくに重合体含量が高くても粘度が低い重合体ポリオールを得たい場合には、(b4)を含有するのが好ましい。(b4)の数平均分子量は、下限は、好ましくは170、さらに好ましくは180、とくに好ましくは182、最も好ましくは185であり、上限は、好ましくは480、さらに好ましくは450、とくに好ましくは420、最も好ましくは400である。数平均分子量が160以上であると、重合体ポリオールの粘度が低粘度となり取り扱い性の面で好ましく、それから得られるポリウレタンフォームの硬度も良好である。(b4)の数平均分子量が490以下であると、それを用いて得られるポリウレタンフォームの硬度が良好である。
【0019】
(b4)のエチレン性不飽和基の数は、平均1個以上有すればよい。好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜2個、とくに好ましくは1個である。エチレン性不飽和基数が平均1個未満であると、ポリオールの可溶成分が多くなり得られる重合体ポリオールの粘度が増大するばかりでなく、これらを使用して製造されるポリウレタン樹脂の物性が著しく劣る。なお、(b4)のエチレン性不飽和基は、少なくとも(平均)1個を末端に有するものであれば、残りの不飽和基は、末端に存在しても、末端で無い位置に存在してもよい。
上記のエチレン性不飽和基の具体例としては、(メタ)アクリロイル基、およびアリル基などのα−アルケニル基等が挙げられる。
【0020】
また、(b4)の二重結合1個あたりの分子量(X)は、好ましくは490以下である。下限は好ましくは160、さらに好ましくは180、とくに好ましくは185であり、上限はさらに好ましくは480、とくに好ましくは450、最も好ましくは400である。490以下であるとこれらを使用して製造される重合体ポリオールの粘度低下効果が大きい。
ここで、(b4)の二重結合1個あたりの分子量(X)は次式で定義されるものである。
X=1000/N
N:JIS K−1557(1970年版)に規定された測定法で測定した(b4)の不飽和度
【0021】
また、(b4)の溶解度パラメーターSPは通常9.5〜13である。下限は好ましくは9.8、さらに好ましくは10.0である。上限は好ましくは12.5、さらに好ましくは12.2である。(b1)のSPが9.5以上であると、これらを使用して製造される重合体ポリオールの粘度が低くなる。また、SPが13以下である、重合体ポリオールを使用して得られるポリウレタンフォームの硬度が上昇する。
SP値とは、下記に示した様に凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表されるものである。
[SP値]=(△E/V)1/2
ここで△Eは凝集エネルギー密度を表す。Vは分子容を表し、その値は、ロバート エフ.フェドールス(Robert F.Fedors)らの計算によるもので、例えばポリマー エンジニアリング アンド サイエンス(Polymer engineering and science)第14巻、147〜154頁に記載されている。
【0022】
(b4)の具体例としては、それを用いると重合体ポリオールの粘度が低くなり、得られるポリウレタンフォームの硬度が高くなることから、下記(b41)〜(b45)が好ましく、2種以上を併用してもよい。
(b41):末端不飽和アルコール(炭素数3〜24)の(ポリ)オキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜8)エーテル
(b42):下記一般式〔1〕で示される化合物
(b43):下記一般式〔2〕で示される化合物
(b44):下記一般式〔3〕で示される化合物
(b45):下記一般式〔4〕で示される化合物
CH2=CRCOO(AO)kCOCH2COCH3 〔1〕
CH2=CRCOO(AO)k〔CO(CH2)sO〕m(AO)nH 〔2〕
CH2=CRCO〔O(CH2)sCO〕mO(AO)nH 〔3〕
CH2=CRCOO(AO)k〔QO(AO)p〕r(QO)tH 〔4〕
[上記各式中、Rは水素原子またはメチル基;Aは炭素数2〜8のアルキレン基;Qはジカルボン酸から2個のOHを除いた残基;kは数平均分子量が490を越えない1以上の整数、nおよびpは0または数平均分子量が490を越えない1以上の整数、sは3〜7の整数、mおよびrは数平均分子量が490を越えない1以上の整数、tは0または1]
なお、ここで「数平均分子量が490を越えない」の数平均分子量とは、当該化合物の数平均分子量を指すものである。
【0023】
上記(b41)における炭素数3〜24の末端不飽和アルコールとしては、アリルアルコール、1−ヘキセン−3−オールなどが挙げられる。(b41)のオキシアルキレン単位の数は、通常1〜9、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3である。
上記一般式〔1〕〜〔4〕において、Aは炭素数2〜8のアルキレン基であり、AO単位は、通常、炭素数2〜8のアルキレンオキサイドの付加により形成され、k、nおよびpはそれぞれアルキレンオキサイドの付加モル数に相当する。また、(b41)のアルキレン基の炭素数が2〜8の(ポリ)オキシアルキレン単位も、通常、炭素数2〜8のアルキレンオキサイドの付加により形成される。
上記アルキレンオキサイドとしては、前述のポリオール(a)の項において、活性水素含有化合物に付加させるアルキレンオキサイドとして例示したものと同様のものが挙げられる。好ましくは、POおよび/またはEOである。
kは、好ましくは1〜7、さらに好ましくは1〜5、とくに好ましくは1である。nは、好ましくは0または1〜7、さらに好ましくは0または1〜5、とくに好ましくは0である。pは、好ましくは0または1〜6である。
【0024】
Qとしては、ジカルボン酸から2個のOHを除いた残基が挙げられる。ジカルボン酸としては、炭素数4〜10のものが好ましく、具体的には、フタル酸(イソフタル酸およびテレフタル酸を含む)、マレイン酸、フマル酸およびコハク酸などが挙げられる。好ましくはフタル酸およびコハク酸である。
〔CO(CH2)sO〕および〔O(CH2)sCO〕単位の部分は、通常、ラクトンの付加により形成される。sは、好ましくは4〜6であり、さらに好ましくは5である。mは、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3、とくに好ましくは2である。
また、rは、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1または2、とくに好ましくは1である。
これら(b41)〜(b45)の中でも、さらに好ましいものは、(b41)および(b42)であり、とくに好ましいものは(b41)である。
【0025】
(b41)〜(b45)の具体例としては、例えば、(b41)としては、アリルアルコールのPOおよび/またはEO1〜5モル付加物が挙げられる。
(b42)としては、(メタ)アクリル酸1モルにPOおよび/またはEOを1〜5モル付加させた化合物のアセト酢酸エステルなどが挙げられる。
(b43)としては、(メタ)アクリル酸1モルにPOおよび/またはEOを1〜5モル付加させた化合物にε−カプロラクトンを1〜5モル付加させた化合物、およびこの化合物1モルにさらに1〜5モルのPOおよび/またはEOを付加させた化合物などが挙げられる。
(b44)としては、(メタ)アクリル酸1モルにε−カプロラクトンを1〜5モル付加させた化合物、およびこの化合物1モルにさらに1〜5モルのPOおよび/またはEOを付加させた化合物などが挙げられる。
(b45)としては、(メタ)アクリル酸1モルにPOおよび/またはEOを1〜5モル付加させた化合物と等モルのコハク酸とのモノエステル、(メタ)アクリル酸1モルにPOおよび/またはEOを1〜5モル付加させた化合物と等モルのマレイン酸もしくはフマル酸とのモノエステル、(メタ)アクリル酸1モルにPOおよび/またはEOを1〜5モル付加させた化合物と等モルのフタル酸とのモノエステル1モルにさらにEOおよび/またはPOを1〜5モル付加させた化合物、およびこの化合物と等モルのフタル酸とのモノエステルなどが挙げられる。
【0026】
上記以外の、その他のエチレン性不飽和モノマー(b5)としては、(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸などのビニル基含有カルボン酸およびその誘導体;エチレン、プロピレンなどの脂肪族炭化水素系モノマー;パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレートなどのフッ素含有ビニル系モノマー;ジアミノエチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレートなどの上記以外の窒素含有ビニル系モノマー;ビニル変性シリコン;ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状オレフィン化合物;などが挙げられる。
【0027】
さらに(b)中に少量(好ましくは0.01〜20%、とくに0.05〜1%)の2官能以上の多官能モノマー(b6)を用いることにより、重合体ポリオールの分散安定性をさらに向上させることができる。多官能モノマーとは、例えば、ジビニルベンゼン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、国際公開WO01/009242号公報に記載の、数平均分子量が500以上の不飽和カルボン酸とグリコール類のエステルおよび不飽和アルコールとカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0028】
本発明において、エチレン性不飽和モノマー(b)中のスチレン含量は、20%以上が好ましい。さらに好ましくは50%以上、とくに好ましくは60%以上である。スチレン含量が20%以上であると、着色の少ない白色の重合体ポリオールが得られ、またこの重合体ポリオールを使用して発泡したポリウレタンフォームの難燃性が良好である。
また、(b)としては、(b1)、スチレンを含む(b2)、および必要により(b3)と(b4)から選ばれる1種以上からなるものが好ましく、アクリロニトリルおよびスチレンと、必要により(b3)と(b4)から選ばれる1種以上からなるものがさらに好ましい。(b)中のアクリロニトリルおよびスチレンの合計量は50%以上が好ましい。下限は、さらに好ましくは60%、とくに好ましくは80%であり、上限は、さらに好ましくは98%である。
【0029】
上記重合時に分散剤(c)を併用してもよい。分散剤の種類としては、とくに限定されず、重合体ポリオールで使用されている通常の分散剤等を使用することができる。
例えば、〔1〕エチレン性不飽和基含有変性ポリエーテルポリオール(例えば特開平08−333508号公報)等のポリオールとエチレン性不飽和化合物を反応させたマクロマータイプの分散剤;〔2〕ポリオールとの溶解度パラメーターの差が1.0以下のポリオール親和性セグメント2個以上を側鎖とし、ビニル単量体からの重合体との溶解度パラメーターの差が2.0以下の重合体親和性セグメントを主鎖とするグラフト型重合体(例えば特開平05−059134号公報)等のポリオールとオリゴマーを結合させたグラフトタイプの分散剤;〔3〕ポリオールの水酸基の少なくとも一部をメチレンジハライドおよび/またはエチレンジハライドと反応させて高分子量化した変性ポリオール(例えば特開平07−196749号公報)等の高分子量ポリオールタイプの分散剤;〔4〕重量平均分子量が1000〜30000であり、その少なくとも一部がポリオールに可溶性であるビニル系オリゴマー、およびこのオリゴマーと上記〔1〕のエチレン性不飽和基含有変性ポリエーテルポリオールを併用する分散剤(例えば特開平09−77968号公報)等のオリゴマータイプの分散剤;等が挙げられる。
これらの中で好ましいものは〔1〕および〔4〕のタイプである。いずれの場合も数平均分子量が1,000〜10,000であることが好ましい。
また、これら通常の分散剤を用いる場合の使用量は、(b)の質量に基づいて、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。
【0030】
分散剤(c)として、これらの通常の分散剤以外に、以下に述べる特開2002−308920号公報に記載の反応性分散剤(c’)を用いることができ、上記好ましい分散剤と同様に好ましい。
反応性分散剤(c’)は、実質的に飽和のポリオール(p)と、少なくとも1個の重合性不飽和基を有する単官能活性水素化合物(e)が、ポリイソシアネート(f)を介して結合されてなり、1分子中のNCO基に由来する含窒素結合の数に対する不飽和基数の比の平均値が0.1〜0.4である含窒素結合含有不飽和ポリオールである。
ここで実質的に飽和とは、JISK−1557(1970年版)で規定された測定法で測定された不飽和度が0.2meq/g以下(好ましくは0.08meq/g以下)であることを意味する。
【0031】
反応性分散剤(c’)を構成する(p)としては、前記(a)として例示したものと同様のものが使用できる。(p)と(a)とは同一であっても異なっていてもよい。
(p)の1分子中の水酸基の数は、少なくとも2個、好ましくは2〜8個、さらに好ましくは3〜4個であり、(p)の水酸基当量は、好ましくは1,000〜3,000、さらに好ましくは1,500〜2,500である。
【0032】
(c’)を得るのに用いる(e)は、1個の活性水素含有基と少なくとも1個の重合性不飽和基を有する化合物である。活性水素含有基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、SH基などがあるが、特に水酸基が好ましい。
【0033】
(e)の重合性不飽和基は重合性二重結合が好ましく、また1分子中の重合性不飽和基の数は1〜3個、とくに1個が好ましい。即ち、(e)として好ましいものは、重合性二重結合を1個有する不飽和モノヒドロキシ化合物である。
上記不飽和モノヒドロキシ化合物としては、例えば、モノヒドロキシ置換不飽和炭化水素、不飽和モノカルボン酸と2価アルコールとのモノエステル、不飽和2価アルコールとモノカルボン酸とのモノエステル、アルケニル側鎖基を有するフェノール、不飽和ポリエーテルモノオールなどが挙げられる。
【0034】
モノヒドロキシ置換不飽和炭化水素としては、炭素数3〜6のアルケノール、例えば(メタ)アリルアルコール、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブテン−1−オールなど;アルキノール、例えばプロパギルアルコールなどが挙げられる。
不飽和モノカルボン酸と2価アルコールとのモノエステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の炭素数3〜8の不飽和モノカルボン酸と、前記2価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の炭素数2〜12の2価アルコール)とのモノエステルが挙げられ、その具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。
【0035】
不飽和2価アルコールとモノカルボン酸のモノエステルとしては、例えば、ブテンジオールの酢酸モノエステルなどの、炭素数3〜8の不飽和2価アルコールと炭素数2〜12モノカルボン酸とのモノエステルが挙げられる。
アルケニル側鎖基を有するフェノールとしては、例えばオキシスチレン、ヒドロキシα−メチルスチレンなどのアルケニル基の炭素数が2〜8のアルケニル側鎖基を有するフェノールが挙げられる。
不飽和ポリエーテルモノオールとしては、前記モノヒドロキシ置換不飽和炭化水素もしくは前記アルケニル側鎖基を有するフェノールのアルキレンオキサイド(炭素数2〜8)1〜50モル付加物〔例えばポリオキシエチレン(重合度2〜10)モノアリルエーテル〕などが挙げられる。
【0036】
不飽和モノヒドロキシ化合物以外の(e)の例としては、以下のものが挙げられる。 アミノ基、イミノ基を有する(e)としては、モノ−およびジ−(メタ)アリルアミン、アミノアルキル(炭素数2〜4)(メタ)アクリレート〔アミノエチル(メタ)アクリレートなど〕、モノアルキル(炭素数1〜12)アミノアルキル(炭素数2〜4)(メタ)アクリレート〔モノメチルアミノエチル−メタクリレートなど〕;カルボキシル基を有する(e)としては、前記不飽和モノカルボン酸;SH基を有する(e)としては、前記不飽和モノヒドロキシ化合物に相当する(OHがSHに置き換わった)化合物が挙げられる。
重合性二重結合を2個以上有する(e)の例としては、前記3価、4〜8価またはそれ以上の多価アルコールのポリ(メタ)アリルエーテルまたは前記不飽和カルボン酸とのポリエステル〔例えばトリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンジ(メタ)アクリレートなど〕が挙げられる。
【0037】
これらのうち好ましい化合物は、炭素数3〜6のアルケノール、炭素数3〜8の不飽和モノカルボン酸と炭素数2〜12の2価アルコールとのモノエステルおよびアルケニル側鎖基を有するフェノールであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸と、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはブチレングリコールとのモノエステル;アリルアルコール;およびヒドロキシα−メチルスチレンであり、とくに好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
また、(e)の分子量は特に限定されないが、1000以下、特に500以下であるものが好ましい。
【0038】
ポリイソシアネート(f)は、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基またはオキサゾリドン基含有変性物など)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0039】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物などが挙げられる。具体例としては、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノジフェニルメタン{ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)またはその混合物との縮合生成物:ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5〜20%)の3官能以上のポリアミンとの混合物}のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)など]、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0040】
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数4〜16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族イソシアネートとしては、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、ショ糖変性TDIおよびひまし油変性MDIなどが挙げられる。
これらのうちで好ましいものは芳香族ジイソシアネートであり、さらに好ましくは2,4−および/または2,6−TDIである。
【0041】
反応性分散剤(c’)の含窒素結合は、イソシアネート基と活性水素含有基との反応によって生じるものであり、活性水素含有基が水酸基である場合、主にウレタン結合が生成し、アミノ基である場合、主に尿素結合が生成する。カルボキシル基の場合はアミド結合、SH基の場合はチオウレタン結合が生成する。これらの基以外に、他の結合、例えば、ビューレット結合、アロファネート結合などが生成していてもよい。
この含窒素結合は実質的に飽和のポリオール(p)の水酸基とポリイソシアネート(f)のイソシアネート基との反応で生じるものと、不飽和単官能活性水素化合物(e)の活性水素含有基と(f)のイソシアネート基との反応で生じるものとがある。
【0042】
(c’)は、下記式によって求められる、1分子中の(f)のNCO基に由来する含窒素結合に対する不飽和基数の比の平均値:Kが0.1〜0.4となるような割合で、(p)、(e)および(f)を反応させたものである。
K=[(e)のモル数×(e)の不飽和基数]/[(f)のモル数×(f)のNCO基数]
Kの値は、さらに好ましくは0.1〜0.3であり、とくに好ましくは0.2〜0.3である。Kの値が上記範囲内であると、重合体ポリオールの分散安定性がとくに良好となる。
【0043】
次に、(b)の重合に用いるラジカル重合開始剤(i)としては、遊離基を生成して重合を開始させるものが使用でき、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−アルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネイト)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]及び1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等のアゾ化合物;ジベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド及び過コハク酸等の有機過酸化物;過硫酸塩及び過ホウ酸塩等の無機過酸化物等が挙げられる。尚、これらは2種以上を併用することができる。
【0044】
ラジカル重合開始剤の使用量は、(b)の質量に基づいて、好ましくは0.05〜20%、さらに好ましくは0.1〜5%、とくに好ましくは0.2〜1.5%である。重合開始剤の使用量が0.05〜20%の範囲で重合体ポリオール中の(b)の重合率が十分高くなり、また、分子量も大きくなるため、ウレタンフォームにした際に十分なフォーム圧縮硬さが得られる面で優れている。
【0045】
上記ラジカル重合に必要により希釈溶剤(d)を添加してもよい。(d)としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、ノルマルデカンなどの炭素数5〜15の飽和脂肪族炭化水素系溶剤;などが挙げられる。
希釈溶剤(d)の使用量は、(b)の使用量に基づいて、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。用いた(d)は、重合反応後に減圧ストリッピング等により除去するのが好ましい。
【0046】
また(d)を、必要により本発明の方法により得られる重合体ポリオールに添加して、さらに低粘度とすることもできる。重合体ポリオール中に含有させる(d)としては、上記不飽和脂肪族炭化水素系溶剤;芳香族炭化水素系溶剤;および低粘度(100mPa・s/25℃以下)の難燃剤、例えばトリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート;などを挙げることができる。
得られる重合体ポリオール中の(d)の含有量は、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0047】
また、必要により連鎖移動剤(h)を本発明の重合体ポリオールの製造方法に使用でき、例えば、ドデシルメルカプタンおよびメルカプトエタノール等のアルキルメルカプタン類;等が挙げられる。(h)の使用量は、(b)の使用量に基づいて、通常2%以下、好ましくは0.1%以下である。
【0048】
本発明において得られる重合体ポリオール中の(b)から形成される重合体の含量は10〜65%が好ましい。下限は、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%、とくに好ましくは30%、最も好ましくは40%であり、上限はさらに好ましくは60%である。(b)の含量が10%以上であると、ポリウレタンフォームの原料として用いた場合に十分なフォーム圧縮硬さが得られ、65%以下であると、粘度が高くならず、取り扱いが容易である。
【0049】
本発明において、原料混合液(G)の作成方法は、ポリオール(a)、エチレン性不飽和モノマー(b)、ラジカル重合開始剤(i)、および必要により添加する分散剤(c)や希釈溶剤(d)を、スタティックミキサー等のラインブレンダー、あるいは攪拌羽根付きの配合槽等を用いて、特定比率に混合することで得られる。
【0050】
本発明において、原料混合液(G)におけるポリオール(a)、エチレン性不飽和モノマー(b)、分散剤(c)、希釈溶剤(d)の含有比率(%)は、好ましくは、(a):(b):(c):(d)=(7〜90):(10〜65):(0〜35):(0〜48)、さらに好ましくは、(a):(b):(c):(d)=(30〜60):(30〜50):(5〜26):(5〜15)である。(G)中のエチレン性不飽和モノマー(b)の比率が10〜65%であると、得られる重合体ポリオールは高粘度にならず取り扱いが容易となる。
【0051】
本発明の製造方法において、連続重合は、反応液取り出し口(オーバーフロー部)から原料仕込みラインの重合槽への原料供給口の手前まで通じ、反応液の一部(Z)を回収し、原料仕込みラインに戻すための循環ラインを有する連続重合槽を用いて行う。原料仕込みラインと循環ラインの合流点で、(Z)と上記原料混合液(G)とが合流して混合液(E)が形成され、これが原料供給口から重合槽に供給される。
原料仕込みラインと循環ラインの合流点から原料仕込みラインの重合槽への原料供給口までの長さは、とくに限定されないが、(G)と(Z)の混合が十分に行われ、かつ装置が大きくなりすぎないことから、3〜150cmが好ましく、5〜120cmがさらに好ましい。
【0052】
本発明において、(E)中のエチレン性不飽和モノマー(b)の含有量は、5〜12%である必要がある。上限は好ましくは11%であり、下限は好ましくは8%である。(b)の含有量が5%未満であると、得られる重合体ポリオールの量が少なく、生産効率に問題があり、12%を越えると、重合体ポリオール中の粗大粒子の含有量が増大し、ろ過工数を要し、生産性が低下する。
【0053】
(E)中の(b)の含有量(%)に対する、得られる重合体ポリオール中の重合体の含有量(%)の比は、1:(3〜10)が好ましく、1:(4〜8)がさらに好ましい。
重合体の含有量の比が3以上であると、重合体ポリオール中の粗大粒子の含有量が減少し、10以下であると生産性が良好である。
【0054】
本発明において、(E)中のエチレン性不飽和モノマー(b)の含有量を5〜12%の範囲とする方法としては、原料混合液(G)の供給速度〔Gv〕と重合槽から回収した反応液の一部(Z)を(G)に合流させる速度〔Zv〕の比を調整する方法がある。また、このときの重合槽に供給される直前の混合液(E)の重合槽への供給速度〔Ev〕とGvおよびZvの関係は以下の式(1)の関係にある。
Ev=Gv+Zv (1)
【0055】
本発明において、重合槽(オーバーフロー部)から回収した反応液の一部(Z)が原料混合液(G)に合流する直前の温度は、50〜120℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは60〜90℃、特に好ましくは70〜80℃である。(Z)の温度が120℃以下であると、重合槽に入るまでに重合して、原料供給口が閉塞したり、重合熱の除熱が困難になる恐れが無いので、(G)の供給速度を高くでき、生産性が向上する。また、50℃以上であると、(Z)の粘度が低く、配管中の圧力損失により所定の流量がでなくなる恐れが無いので、重合体ポリオール中の粗大粒子の含有量が少なくなり、生産性が向上する。
【0056】
本発明において、重合温度は90〜150℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは100〜140℃、特に好ましくは120〜135℃である。重合温度が90℃以上であると、重合体ポリオールの粘度が低下し、150℃以下であると、エチレン性不飽和モノマー(b)の重合率が上がり、得られる重合体ポリオールは、ウレタンフォーム原料に用いた場合、フォーム圧縮硬さを十分発現させることができる。
【0057】
本発明の方法で製造された重合体ポリオールは、必要により金網およびストレーナーを用いて粗大粒子を除去することが可能である。用いる金網およびストレーナーの目開きの大きさは、好ましくは30〜500μm、さらに好ましくは70〜300μm、とくに好ましくは100〜150μmである。
【0058】
本発明の製法において、得られる重合体ポリオール中の、重合過程で生成する直径100μm以上の粗大重合体粒子の含有量は、1〜20ppmの範囲が好ましい。上限はさらに好ましくは15ppm、特に好ましくは10ppmである。粗大重合体粒子が20ppm以下であると、金網またはストレーナーにより濾過を行う際に目開きを閉塞させにくいため、生産性が著しく向上する。本発明の製法によれば、このような粗大重合体の含量が少ない重合体ポリオールを容易に得ることができる。
【実施例】
【0059】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において部、および比は、それぞれ質量部、および質量比を示す。
【0060】
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次の通りである。
(1)ポリオール(a)
ポリオール(a1):グリセリンにPO−EO−POの順に付加した、水酸基価=56、内部EO含量=9%のポリオール。
(2)エチレン性不飽和モノマー(b)
アクリロニトリル
スチレン
ジビニルベンゼン
【0061】
(3)分散剤(c)
分散剤(c1):ポリオール(a1)1モルを、ジクロロメタン2モルでジョイントしたのち、グリシジルメタクリレートを0.35モル付加して得られた、水酸基価45の分散剤
(4)希釈溶剤(d1)
ノルマルデカン
(5)ラジカル重合開始剤(i1)
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
【0062】
<実施例−1>重合体ポリオール(P1)の製造
連続重合装置を用意し、重合槽にあらかじめ、ポリオール(a1):2400部を充液し、130℃に昇温する。ついで、ポリオール(a1):34部、アクリロニトリル:10部、スチレン:42部、ジビニルベンゼン:0.03部、分散剤(c1):7部、希釈溶剤(d1):7部およびラジカル重合開始剤(i1):0.5部の原料混合液(G)をスタティックミキサーを用いてラインブレンドした後、200部/分の速度で重合槽へ連続的に送液した。一方重合槽からオーバーフローさせた重合体ポリオールを含む反応液の一部(Z)は、冷却しながら重合槽へ入る直前の混合液(E)に2000部/分の速度で合流させて重合槽へ送液し、130℃にて重合させた。さらに未反応モノマーを20〜30torrで2時間減圧下ストリッピングして重合体ポリオール(P1)を得た。
【0063】
<実施例−2>重合体ポリオール(P2)の製造
反応液の一部(Z)の(E)への供給速度が4000部/分である以外は、上記実施例−1と同じ方法によって重合体ポリオール(P2)を得た。
【0064】
<実施例−3>重合体ポリオール(P3)の製造
原料混合液(G)の供給速度が150部/分である以外は、上記実施例−1と同じ方法によって重合体ポリオール(P3)を得た。
【0065】
<実施例−4>重合体ポリオール(P4)の製造
反応液の一部(Z)の(E)への供給速度が4000部/分であり、かつ、原料混合液(G)の供給速度が150部/分である以外は、上記実施例−1と同じ方法によって重合体ポリオール(P4)を得た。
【0066】
<比較例−1>重合体ポリオール(P5)の製造
反応液の一部(Z)の(E)への供給速度が1000部/分である以外は、上記実施例−1と同じ方法によって重合体ポリオール(P5)を得た。
【0067】
<比較例−2> 重合体ポリオール(P6)の製造
反応液の一部(Z)の(E)への供給速度が500部/分である以外は、上記実施例−1と同じ方法によって重合体ポリオール(P6)を得た。
【0068】
<比較例−3> 重合体ポリオール(P7)の製造
反応液の一部(Z)の(E)への供給速度が800部/分であり、かつ、原料混合液(G)の供給速度が150部/分である以外は、上記実施例−1と同じ方法によって重合体ポリオール(P7)を得た。
<比較例−4> 重合体ポリオール(P8)の製造
反応液の一部(Z)の(E)への供給速度が400部/分であり、かつ、原料混合液(G)の供給速度が150部/分である以外は、上記実施例−1と同じ方法によって重合体ポリオール(P7)を得た。
【0069】
重合体ポリオール(P1〜P4)を製造した場合の各実施例とその評価結果を表1に、重合体ポリオール(P5〜P8)を製造した場合の各比較例とその評価結果を表2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1および2における評価方法は下記の通りである。
<Cb値>:重合槽に供給される直前の混合液(E)中の(b)の含有量の計算値

Cb={Gv×〔(G)中の(b)の質量(%)/100〕+Zv×〔1−(b)の
重合率(%)/100〕}/Ev
Gv:原料混合液(G)の供給速度(単位:部/分)
Zv:重合槽からオーバーフローした反応液の一部(Z)を(G)に合流させる 供給速度(単位:部/分)
Ev:重合槽に供給される直前の混合液の供給速度 (Ev=Gv+Zv)
(単位:部/分)
<重合体含有量>: 重合体ポリオール/メタノール=1/3(比)になるように重合体ポリオールをメタノールで希釈する。冷却遠心分離機(18000rpm×60min.20℃)にてポリマーを分離し、上澄み液を除去する。これを3回繰り返した後、ポリマーを減圧乾燥し(60℃×1hr)質量を測定し、重合体ポリオールに対する割合を求める。
【0073】
<粗大粒子濃度>: 脱モノマー、脱希釈溶剤を実施した重合体ポリオール300gに、あらかじめ100μm金網で濾過し、異物を除去しておいたメタノール300gを加え、均一溶液とする。100μm金網にて均一溶液を濾過し、金網上に残留した異物を少量のメタノールで洗浄した後、60℃に加温した減圧乾燥機にて30分間乾燥した後、重量測定し、重合体ポリオールに対する粗大粒子濃度を算出する。
<金網濾過性>:3LスケールSUS製コルベンに重合体ポリオール2000gおよびポリオール(a1)430gを加え、攪拌速度300rpmで攪拌下、60℃に温度調節する。窒素で0.1MPaに加圧し、コルベン下のサンプル抜き口(内径5mm、長さ50mmのSUS製パイプ)の先端に100μm金網を付けて濾過を行い、重合体ポリオールが金網を通過する秒数を1gあたりの秒数に換算した値(Q値)により、濾過性の指標とする。
金網濾過性 ○:濾過性良好(Q値:0.30秒/g未満)
×:濾過性不良(Q値:0.30秒/g以上)
【0074】
表1および表2の結果から、重合槽に供給される直前の混合液(E)中の(b)の含有量<Cb値>を、8.6〜11.1%に調整した実施例1〜4と、14.1〜19.9%に調整した比較例1〜4を比べると、実施例1〜4では、得られた重合体ポリオールに含まれる粗大粒子濃度が7〜13ppmと少ないため、Q値が0.21秒/g以下となり、濾過性が良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の製造方法により、粗大重合体粒子の含量の少ない重合体ポリオールを生産性よく製造でき、得られた重合体ポリオールは、ポリウレタン原料、とくに樹脂物性に優れたポリウレタンフォーム用原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(a)および必要により希釈溶剤(d)中でエチレン性不飽和モノマー(b)を、ラジカル重合開始剤(i)の存在下、分散剤(c)の存在下または不存在下、連続重合させて重合体ポリオールを製造する方法において、重合槽に供給される直前の下記混合液(E)中の(b)の含有量が5〜12質量%であることを特徴とする製造方法。
混合液(E):(a)、(b)、(i)、および必要により(c)と(d)から選ばれる1種以上からなる原料混合液(G)、並びに重合槽から回収した反応液の一部(Z)からなる混合液。
【請求項2】
得られる重合体ポリオール中の重合体の含有量が10〜65質量%である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
(E)中の(b)の含有量(%)に対する、得られる重合体ポリオール中の重合体の含有量(%)の比が、1:(3〜10)である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
(b)中にスチレンを少なくとも20質量%含有する請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
重合中に生成する直径100μm以上の粗大重合体粒子の含有量が、得られる重合体ポリオールに対して1〜20ppmである請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−104236(P2006−104236A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289334(P2004−289334)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】